ティーチャーズセンターとしての指導力を高めるFaculty Developmentと教師教育のPDCA
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(2) 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 創刊号. ティーチヤーズセンターとしての指導力を高める. FacultyDevelopmentと教師教育のPDCA 鈴 木 富士雄*. 1 本実践専攻のFD活動の基本的な考え方 「FD(FacultyDevelopment)」の定義は、「教員が授業内容・方法を改善、向上させるための組 織的な取組の総称」(中央教育審議会大学分科会)とされている。FD活動の範囲は非常に広く多岐 にわたっているが、この活動は大学の運営に当たって必要不可欠とされている。したがって、全ての. 教員が大学院の理念や教育目標をいかに実現するのかという課題を念頭に置き、協力して職能向上の ためのFD活動に組織的に取り組むことが必要となってくる。. 本実践専攻では、教授会(教職大学院長)のもとに授業改善・FD委員会を設置している。本委員会 では、院生に必要な教育内容や指導方法を追究(研究・実践)し、教員個々の職能向上と開発を課題 としている。具体的には、院生による授業評価と講座アンケートや教員の自己評価(教育課程、教育 内容、教育方法)を実施(自己評価委員会の取組)し、この結果を教員による授業改善をはじめ、シ. ラバスの見直し、カリキュラム改善等に貴重な資料を提供している。このような活動を恒常的に推し 進めることは、本実践専攻の教育を院生中心の内容に転換させることを可能にするものである。 また、この院生の授業評価は、各教員が院生の声や評価を真撃に受け止めて授業改善を促進させる にとどまらず、院生自身が自らの学びを振り返る契機となり、教員と院生が協働で学びをつくりだす 意識と意欲を高めることにつながるものである。. 2 これまでの授業改善・FDの活動状況 本実践専攻は創設して2年を経過した。この2年間のFD活動(自己評価委員会及び授業改善・F D委員会の活動)の結果が授業科目・シラバス及びカリキュラムの改善に反映されている。(平成23 年度より改善カリキュラムヘ移行)また、本実践専攻の授業の質を確実に向上させてきている。 (1)設置計画書に示すFD活動 本実践専攻のFD活動は、「設置計画書」において、「従来の大学院教育、教員研修との差異を意 識し、その授業方法の開発、研究、研修に取り組む必要がある。」としている。 そして、具体的に、以下の方法を掲げている。 (∋ 双方向遠隔授業システムを活用した授業についての研修会・検討会の実施。. ② 附属校・連携協力校の担当教員を交えて授業・実習の改善についての研究会の実施。 *北海道教育大学教職大学院(大学院教育学研究科高度教職実践専攻)札幌. 57.
(3) 鈴 木 富士雄. ③ 国内の他の教職大学院、専門職大学院の授業を視察し、その報告会の実施。 ④ 海外の先進的な教職大学院の授業内容・方法の視察・研究。 ⑤ 教職大学院での授業及びその裏付けとなる研究を促進するための紀要の刊行。. また、「大学院生による日常評価により常に改善を図るとともに、大学院生評価・自己評価・外 部評価を含む総括的評価により、全体的な見直し・改善を図っていく」ことを評価・改善として位 置づけている。〈設置計画書「ソ教員の資質の維持向上の方策」〉. (2)これまでの具体的な授業改善・FD活動とその成果. 北海道教育大学の「学部・研究科等の現況調査」に示す本実践専攻のFD活動状況及びその成果 は以下の内容である。. ① 院生に対しての授業評価(「授業評価票」)の実施とその考察. 各授業終了時に受講生に「授業評価票」(資料1)を記入させ、その集計結果を各授業担当者 にフィードバックし、日常の授業内容・方法の改善に役立てている。これが日常的に実施してい. る授業評価である。具体的には、各セメスター終了後の各講義担当者間会議、各コース会議(学. 級経営・学校経営、生徒指導・教育相談、授業開発の3コース)、教員会議における検討会(研 修会)等における検討、改善である。 この授業改善にかかわるFD活動の成果は、本年度(平成22年度)実施した授業(授業内容及 び授業方法)においても、院生の高い満足度として表れている。その一例を示すと、「子どもの 学びを拓く授業づくり」における授業内容(シラバス、難易度、興味、力量形成)の満足度は、 A(75%∼100%)と評価した院生の割合が全体の80∼90%と非常に高い数値を示している。 また、授業方法(教材・資料、双方向遠隔システム、授業形態)については、双方向遠隔シス テムに関する満足度において課題を残しながらも、授業内容同様の高い満足度を示している。こ のような傾向は、各セメスターに開講した全ての授業の評価に表れており、職能向上・開発に向 けた本実践専攻の教員の強い熱意の表れを読み取ることができる。(各授業における院生の授業 評価の集計結果は教授会にて報告). ② 院生に対しての講座アンケートの実施とその考察 1年次終了予定者(共通科目)と本実践専攻修了予定者(共通科目・選択科目・実習等)に対 して実施した「院生講座アンケート」(資料2)の結果を整理・分析し(各講義担当者間及び各コー. ス会議、さらには教授会等の教員会議)、授業の内容■方法の改善、授業科目の見直しと改善に 生かしてきている。. 本実践専攻開設2年目に当たる平成21年度において、これまでのカリキュラムを検討し部分改 訂を実施した。(平成23年度より完全実施)その内容は、院生の取得単位の見直し、夏期・冬期 集中講義の縮小・廃止、さらには、授業科目「事例研究」(*)の新設など、院生の授業評価や 声を十分に反映させながらも本実践専攻の理念や目的等、将来的な展望に立脚した改善となって いる。(詳細 平成21年 カリキュラム委員会 「授業科目一覧」参照) * 新設「事例研究」 選択科目 学級経営・学校経営事例研究Ⅰ・Ⅱ 各2単位 生徒指導・教育相談事例研究Ⅰ・Ⅱ 各2単位. 58.
(4) (−チャーズセンターとしての指導力を高めるFaculty Developmentと教師教育のPDCA. 授業研究事例研究Ⅰ、Ⅱ 各2単位 これらの改善は、院生個々の指導(実習指導、事例研究、MOBの指導等)の充実の必要性を 指摘する教員からの評価に基づいて具体化したものである。また、夏季休業・冬季休業(部活等 の指導、各種大会の運営等)の多忙さや、春季休業中(年度末の学校業務との重複)の過重にな りがちな現職教員(院生)の負担軽減を図るものである。. (3)双方向遠隔システムに関する研修会(講習会)の開催. 札幌・旭川・釧路の3キャンパスを結ぶ双方向遠隔授業システムは、本実践専攻の授業の特徴で ある。開設1年目の平成20年度は、多くの授業において本システムの機器等に不具合等が生じ、改 善の必要性が院生と教員の双方から指摘された。 これらの問題を克服するために、機器の再整備(音響効果等の改善)や電子黒板の導入(平成21 年度)などを進めると共に、これらの機器の活用に向けての研修会(講習会)を開催し、教員個々 の指導方法の改善・向上を試みてきている。 一方、各授業においてはパワーポイントや書画カメラ等を活用した資料提示の工夫、また、本シ. ステムを活用した院生の発表や討論、電子黒板の長所を生かした資料提示など院生と教員双方の努 力により、授業改善に向けて多くの成果を収めている。実施した研修の内容は、以下の通りである。. 「文書管理」「キャビネット」の使い方、本システムによる講義資料の配付の仕方及びレポート の提出の仕方、PDFの作成の仕方、電子黒板のマニュアルの配付、電子黒板の起動と回線の接続、 電子黒板の機能の説明及び実習 等。. (4)TA研修会の開催. TA(Teaching Assistant)を対象にした研修会を実施し、双方向遠隔システムの充実を図って きている。本システムは、TAの協力を得てその効果をあげるものであり、この研修は毎年、計画 的に実施すべき内容であるという認識に立っている。. (5)附属校及び連携協力校との連携強化. 附属学校・連携協力校の担当教員との連携は、院生の担当教員の学校訪問(巡回)の中での意見 交流を通して実施している。これらの内容を各キヤンパスの教員会議等で共有し、院生指導(個別 指導、実習セミナー等)に反映させている。 以上のように、本実践専攻のFD活動では、授業改善に活動の重点化を図り、とくに「理論と実践 の往還」を目指す授業について、その間いを教員自らに向けながら改善を進めてきている。. く資料1〉 「授業評価票」における評価内容(項目)記述式 1 受講者自身について. 1−1 あなたはこの授業に意欲的に取り組めましたか。取り組めなかったとすればそれはなぜですか。そ の場合、どのような改善が必要だと考えますか。 1−2 あなたはこの授業にかかわって事前・事後の自主的な学習を充分に行いましたか。行えなかったとす. 59.
(5) 鈴 木 富士雄. ればそれはなぜですか。自主的学習を促すためにどのような働きかけが必要だと考えますか。 1−3 あなたは実践例・事例の提供などを通してこの授業に貢献できたと思いますか。貢献できなかったと すればそれはなぜですか。事例の収集法など、授業貢献をしやすくなるバックアップの在り方等につい て意見があれば記してください。 2 授業の内容について 2−1 授業内容についてシラバス通りに進めることだけではなく、柔軟に対応することもありますが、主題 や到達目標についてはシラバスに掲げた目標もあります。授業内容は、シラバスに示された主題に沿っ ていたと思いますか。 2−2 授業の内容に興味をもつことができましたか。もてなかったとすれば、それはなぜですか。興味をも たせる授業の在り方などについて意見があれば記してください。 2−3 授業内容は、あなたの仕事や人生にとって役立つものでしたか。選択肢としては、「教師としての力 量形成」「新しい考え方の獲得」「役立たなかった」等で記入してください。 3 授業の方法について 31 授業担当者の話し方は、明瞭で聞き取りやすかったですか。 3−2 教材・資料は、授業の理解を助けるように工夫されていたと思いますか。 3−3 授業担当者は、学生が質問をしたり意見を述べたりできるような配慮をしていましたか。 3−4 授業担当者は、一人一人の学生に対して公平に接していましたか。 4 全体的な判断 (授業の感想、自分が獲得できたもの、満足度、要望などについて自由記述). く資料2〉. 第4セメスター終了時「院生講座アンケート」における質問内容(項目)記述式 [Ml 院生講座アンケート] 1−1 各講座はシラバスを基に実施されたが、示された計画と実際に受講された内容についてどうであった か。 1−2 遠隔キャンパスの双方向システムという講座方式が採用されていますが、この方法についてはどうで あったか。 1−3 講座内容は、講義・演習・討議等を中心に行ったが改善すべきことがあれば出してほしい。 1−4 院生として学ぶ上で、運営など全般的な部分(時間や場所の在り方、通学方法、講師の活用等々. [M2 院生講座アンケート] 2−1 各講座はシラバスを基に実施されたが、示された計画と実際に受講された内容についてどうであった か。(M2の共通科目との関連性についてとくに意見を伺いたい。) 2−2 遠隔キャンパスの双方向システムという講座方式が採用されていますが、この方法についてはどうで あったか意見を伺いたい。 2−3 講座内容について、選択科目としての内容を満たすものであったか、各講座間で内容的に重なりが見 られなかったか等々ご意見をいただきたい。 2−4 院生として学ぶ上で、運営など全般的な部分(時間や場所の在り方、通学方法、講師の活用等々につ いてどうであったか意見を伺いたい。 2−5 MOBの作成について意見を伺いたい。. 60.
(6) (−チャーズセンターとしての指導力を高めるFaculty Developmentと教師教育のPDCA. 3 本年度(平成22年度)の授業改善・FD活動 授業改善・FD委員会では、平成20年度から2年間にわたって自己評価委員会が実施した院生の授 業に対する評価結果等(各講義終了の「授業評価票」※)を検討し、その中で指摘された問題点や課 題等について可能な範囲で改善を図ってきていることはすでに述べた通りである。. また、同様に、第2セメスター終了時(中間)と第4セメスター終了時(年度末)には、受講生と 教員に対して講義内容の理論性、実践性、満足度等のアンケート調査を実施し、その結果を教育内容・ 方法の改善等に生かしてきている。. このような経過をふまえて、本年度は、 ① 授業内容の理解や授業に対する満足等(これらの調査は「自己評価委員会」の活動の重点)院生 の期待に応える教育への転換を一層進めるための研修を推進する。 (釘 同様に、本実践専攻の指導方法の特徴の一つである双方向遠隔システムの活用について実践的に. 研修を深め、教育方法の向上に努める。 ③教育内容(理論性、実践性等)や教育方法(討論や作業、双方向遠隔システム等)についての研 修を計画的に実施し、院生に提供する授業の充実(授業改善)を図る。 の3点に重点をかけて授業改善■FD活動を進めることとしている。. 授業内容・方法の改善(授業改善)に関する研修に重点をかけたFD活動は以下の通りである。こ れらの活動は、自己評価委員会が院生と教員に実施する評価やアンケート等との連携のもとに推進し ている。. (1)院生に対しての授業評価(「授業評価票」)の実施とその考察 各授業終了時に実施してきている院生の授業評価であるが、これまでの評価項目及び内容に一部. 修正を加えて実施している。. 一つ目の修正は、各項目・内容を一層具体的にするとともに、授業に対する満足度及び達成度に ついて3段階による評定を求めたことである。評価内容の概要は、1受講者自身(授業への積極 的・意欲的な取組、授業に対する準備・整理、追究意欲等に対する達成度)2 授業内容(シラバ スとの対応、難易度、興味、力量形成などへの満足度)3 授業方法(教材・資料等の効果、双方 向遠隔システムの活用、授業形態の工夫等に対する満足度)4 総合的な満足度の4項目、11の内 容となっている。. また、この3段階評定を一層具体化するために、A(十分)及びC(不十分)評定について、そ の根拠と改善に向けての課題等について記述による回答を求めている。. これらの数値化された資料と記述内容から明らかになった状況をもとに、3キャンパスの授業担 当者間で検討したり、教授会で課題を共有したりしながら授業改善を進めている。(詳細は教授会 に提示した資料参照). 二つ目は、院生に対する「講座アンケート」の質問内容の部分修正である。これまで同様に第2. セメスター終了時(中間)、第4セメスター終了時(年度末)に自由記述式で実施しているが、院 生が自由に多様な視点から記述できるように、質問内容・項目等を修正している。(これまでは、 双方向遠隔システム、講義■演習■討論の形態、内容等の重なり……というように質問内容を焦点. 化したものを用いていた). 61.
(7) 鈴 木 富士雄. この院生からのアンケートについても、自己評価委員会が整理して教授会に報告し、院生による 授業評価とともに、個々の教員の授業改善の資料としている。また、本実践専攻の理念や目的に関. するものも含むことから、同時期に(第2セメスター終了時)実施する教員自己評価を考察する際 の、院生の視点からの評価として参考にされる内容にもなっている。 (2)教員に対する「教員自己評価」の実施と考察. 教員自己評価を第2セメスター終了時に実施している。評価項目と内容は、1大学院の目標(存 在意義・使命)2 教育課程(授業科目・シラバス、日課表・時間割)3 教育内容(理論性、実 践性、理論と実践の往還、ポートフォリオ・MOB)4 教育方法(セメスター制、複数教員によ る指導、双方向遠隔システム)5 その他(連携協力校、実習、施設設備、教育機器、その他)の 5項目、16の内容にわたっている。それぞれの満足度、達成度について4段階で評定し、成果、問 題点・課題、改善策についても文章で記述することとしている。 本年度9月に実施した教員自己評価には、授業改善にかかわる課題はもとより、多くの視点から. 本実践専攻の将来像をも問う貴重な内容が提出されている。これらの内容を自己評価委員会及び授 業改善・FD委員会が論点を整理し、教員全体のFD研修の中で考察を加えていく予定である。 (3)各種FD研修の実施. 各種FD研修(シンポジウム、講演会、ワークショップ等)を企画している。 ① 研修会(「理論と実践の往還」を意図する授業等)の開催 本実践専攻の全教貞を対象にした研修会(教職大学院の課題、「理論と実践の往還」を意図す. る授業、MOBの指導、双方向遠隔システムの活用等)を開催した。(平成22年4月14日) 本研修の目的は、本実践専攻の使命や理念、期待される授業像、MOBの指導の在り方、双方 向遠隔システムの活用等についての研修会を開催し、教員の教育職能向上を図るものである。研. 修の概要は以下の通りである。 ○ 教職大学院の使命及び理念(大久保和義理事) ○ 教職大学院長挨拶(福井雅莫大学院長). O 「理論と実践の往還」を実現する授業の創造(福井 雅英). O MOB(院生の学びの集大成)の作成(渡部 英昭) ○ 双方向遠隔システムの活用と操作(全体:森 省造) ○ 授業参観(各キヤンパス) 「学級の主体性を育む教育実践活動」. (福井大学院長「理論と実践の往還」 を実現する授業の創造). 62. (札幌キャンパス).
(8) (−チャーズセンターとしての指導力を高めるFaculty Developmentと教師教育のPDCA. この研修会は、教員の大幅交替のあった本年度、教員が本実践専攻の理念や目標、授業像、指. 導観等の課題を共有する上で、研修内容の一つ一つが大きな意味を持つものであった。 研修会終了時に、参加教員にアンケートを実施したが、 ・新任として本専攻の目的、授業、MOB、さらには、双方向遠隔システムの活用など理解 できた。 「理論と実践の往還」を目指す授業の内容、方法についての講話は分かり易くよく理解で きた。 ・早い時期にこのような内容の研修を今後も続けたい。. など、多数の参加者からの声が寄せられた。一人一人の本実践専攻の教育活動充実に向けての 意欲と意気込みも読み取れる内容になっている。. ② 高度教職実践発表会・交流会の開催. 平成22年9月11日に開催した第2回FD研修の目的は、(「高度教職実践発表会・交流会」企画 :準備委員会)、第1期生の実践発表の場の提供と、卒業生が大学院で学んだ教育実践構想等を 教員や在学院生と意見交流することにある。また、この実践発表・交流から授業改善の課題を把 握するという、私たち教員自身の研修(授業改善)も意図している。 札幌市教育委員会の金山正彦氏の講演(「これからの教職大学院の学びに求められること」)、 栗山町立角田小学校 箕田裕教諭、旭川市立近文小学校 山川 美千代教諭、釧路市立青葉小 学校 照井 貴幸教諭からの実践発表(「私が教職大学院で学んだこと」)とFD委員長の司会に よる実践交流で、この交流会の充実を図った。なお、詳細については、本教育大学のホームペー. ジに掲載されている。(資料3). く資料3 掲載内容(抜粋)〉. この交流会は、教職大学院が創設3年目を迎えたことから、第1期生の実践発表の場の提供と、卒業生が大 学院で学んだ教育実践構想等を教員や在学院生と意見交流することを目的として、初めて開催されました。 交流会では、冒頭、大久保和義理事が「教職大学院のねらいは、院生一人ひとりが現場で生起する諸課題を 自覚し、その課題解決に向けた力量や技量を身につけることである。OBには現場で大きな力を発揮していた だき、大学院の良さを存分に伝えてほしい。また、このような会は教員や院生にとっても大きな学びの場とな り、OB交流会ができたことの意義は大きい」と挨拶されました。 続いて、福井雅英教職大学院長が挨拶に立ち、この交流会を「①実践発表・交流の場、②ネットワークの場、 ③ティーチヤーズセンターとしての場」として位置付け、教職大学院の研究紀要とともに、その両輪を担う大 変重要なものであると指摘しました。 講演会では、昨年度まで本学の教授で、現札幌市教育委員会指導担当部長の金山正彦氏が、「教員養成(免 許取得)」「教員採用(採用試験)」「教員研修」の三つの視点から、『これからの教職大学院の学びに求められ ること』について具体的に提言されました。 最後に、3キャンパスの卒業生代表が『私が教職大学院で学んだこと』について自分の思いを語り、75名の 参会者からも活発な意見や質問が出される中、交流会は3時間ほどで盛況のうちに終了することができました。. この実践発表・交流会の講演とOBの実践発表の内容には、本実践専攻が目指す「理論と実践 の往還」の授業の課題、現職院生とストレート院生それぞれの満足度を高める授業内容等、本実. 63.
(9) 鈴 木 富士雄. 践専攻の授業内容や運営に関する課題についても提起されている。これらの内容は、本年度実施. した教員自己評価の中で多くの教員が指摘していることと共通していることから、今後のFD研 修に位置付けて解明を図っていく必要がある。. (4)教員相互の授業参観の実施. 本実践専攻では、必修・選択科目の授業を複数の教員の協働によって実施している。複数の担当 教員の協働による授業構築、効果的な指導方法の検討、院生の授業評価の読み取りと授業改善への 試行などが具体的な内容である。この授業形態は、授業を客観的にとらえたり、受講院生の学びの 状況を多面的に把握したりする上で効果をあげている。. また、このような取組の一環として担当外の授業を参観する機会を持つようにしている。様々な 機会に相互の授業を参観し、個々の授業改善(授業内容の透明性や客観性が図られる)に生かすた めである。. (5)双方向遠隔授業システムの効果的な活用に関する研修会の開催. 双方向遠隔授業システムの効果的な活用に関する研修会を開催している。双方向遠隔システムは、 札幌、旭川、釧路の3キャンパスに在籍する院生に対して、教育効果を高めることを目的として(期. 待して)採用した指導体制である。しかし、対面で行う授業に比べて多くのデメリットも存在する。 これらを克服するための研修会の実施が不可欠である。. 前述の第1回FD研修では、双方向遠隔システムの機器の操作及び本システムを取り入れた授業 の可能性等について研修を行った。とくに、本システムの有効活用については、私たち教員自身の 授業に対する考え方(本専攻の特色ある授業として)をどう確立するのかという課題でもある。さ らには、また、選択科目「学級の主体性を育む教育実践活動」の授業参観を実施し、双方向システ. ムを有効活用した授業の基本的な形態及び方法について学び合ったことは、この課題の解明に向け て重要なことである。. (6)MOBの指導に関する研修会を開催 MOBの指導に関する研修会を開催している。MOBの作成は本実践専攻の学びの集大成であり、 また特徴の一つでもある。この指導について、教員間の課題の共有化に向けた研修が必要であり、 その過程で本実践専攻独自のMOBについての考え方を確立していくことが大切である。. 本年度は、第1回FD研修の中で、MOBの作成に関する教員側の課題を共有した。今後も MOB指導を進める中で生じた問題を整理しながら、院生が学びの集大成として意欲的に取り組む ことのできる活動にしていかなければならない。. 5 FD活動の一層の充実に向けて 学校において教育に携わる教員の資質向上に関する課題は一層多様化、そして、複雑化している。. この教員の養成に当たっては、大学における教員養成の在り方についても、自らが根本的に問い直す ことを求められている。. 本実践専攻の理念(目的)は、「学校現場に生起する諸課題に対して、問題解決への力量、技量を. 64.
(10) (−チャーズセンターとしての指導力を高めるFaculty Developmentと教師教育のPDCA. として、授業実践力、学級・学校経営力、生徒指導力、教育相談力、協働遂行力、地域教育連携力を 身に付けさせること」である。また、そのために、現職教員にあっては、「学校・地域の課題を自分 の課題とし、この課題解決に向けて研究する意欲」、また、ストレートマスターにあっては、「教職へ. の強い希望と情熱を持ち、将来学校を背負う中堅教員になることを自覚し、新しい学校づくりの有力 な一員となる意欲」を備えた、自律した学び手としての院生を期待している。. 本実践専攻のFD活動も、このような教育理念(目的)の実現に向けて組織的に取り組んできてい る。それは、これまで教員の判断で進めてきた授業改善(教育改革)の視点を、学び手である院生に 重点を移動することを課題としている。この取組の方向は、平成10年の大学審議会答申に明記された、. 「各大学は、個々の教員の教育内容・方法の改善のため、‥・それぞれの大学等の理念・目標や教育 内容・方法についての組織的な研究・研修(ファカルテイ・ディベロップメント)の実施に努めると する‥・」の趣旨に沿うものである。. 具体的な取組としては、既に述べたとおり院生の授業評価を実施し、その結果をそれぞれの授業者 に(複数教員による指導体制をとっている本実践専攻では各講義担当チームに)フィードバックし、 授業改善のための検討資料としてきている。同時に、自己評価委員会では、この院生の授業評価を整 理し(考察を加えて)、組織としての授業改善に反映させている。この取組によって、院生が求める(ニー ズに応える)教育とカリキュラム創造や教育方法の開発など本実践専攻の教員が求める教育との統合 が図られている。. 私たちは、同僚教員同士の議論を活発に行い、院生のためのカリキュラムや指導方法の開発に向け て計画を立て、それを実施し評価してきている。また、その結果を分析し、新しい課題に向けて改善. する、といった確かなFD活動を(マネジメントを意識した)模索してきている。今後、これまでの 活動を継続しながらも、以下の内容に一層重点をかけた取組によって授業改善は促進されると考える。 その一つは、個々の教員の授業を開くことである。個々の授業を積極的に開き、改善課題を議論し、. 協働で本実践専攻が求める教育を創造することである。それは、私たち教員の高い識見に基づいた確 かなカリキュラム開発力の形成につながる。また、すぐれた実践力を発揮する教師を育てるための力 量形成を可能にする。 二つ目に、院生と教員の双方が学びを創造する過程で、院生の学びを充実させることである。それ. は、院生自身の学びに対する意識や考え方を、与えられる教育から自ら探究する学びへ変換を求める ことによって実現するものである。. 以上、これまでのFD活動の成果と課題について授業改善を中心に述べた。今後、シラバスの開発、 様々な授業方法の開発、院生の授業評価の在り方の見直し、授業の「振り返り」の生かし方、院生の. 成績評価の仕方等、本実践専攻の教育の創造を組織的に進めていきたい。 また、間近に迫っている認証評価機関による評価にも、FD関連の点検・評価項目が位置づけられ ている。具体的には、「学生の学修の活性化」「教員の教育指導方法の改善を促進する」「シラバスの 作成と活用状況」「学生による授業評価の活用状況」「FD活動に関する組織的取組状況」といった項 目が示されている。この認証評価を視野に入れながら、これからのFD活動を進めていく必要がある。. 65.
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