大学における教師教育実践研究 : 試験答案からみた「小学国語」の実際
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(2) . 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第47巻 第1号. 平成 8年8月. lo f Hokka i Journa do Un i i Se i i fEduca 1 t t t )VO ver s on( c on1C yo ‐47 .1 , No. 1996 Au t ≦鶏s ,、. 大学における教師教育実践研究 -- 試験答案からみた 「小学国語」 の実際 --. 村 井 万里子. 1. 大学教育における授業研究 教員養成学部にお ける 「教科教育科目」 担当者にとっ てつねに頭からはなれぬことは, その講義内容が「実 践に役立つか」 ということである‐ 同時に, 授業実践を考察する学問 (教科教育学) の研究者として 絶え , ず自らの 「授業」 が問われているという思 いがある. 「実践即研究」 をいかに具体化するかが授業そのもの の課題になっ ているのである‐ 実際, 教科教育担当者に対する学生の目は厳しく とりわけ教育実習を目前 , に控えた3年生前期の授業は, 講義内容への要求度がいやがうえにも高まっ てくるのが 授業中の小さな反 , 応からも感じ取れるようになる‐ その要求に可能なかぎり応えていけるよう 努力を払わな ければならない , . 大学における授業改善に向けての気運は, 今, とみ に高まっ ているが 歴史的 にその端緒をなしたのは , , 19 60年代後半の大学紛争である. 海外 (欧米, 東南アジア) では, 70年代初めには多くの高等教育研究セン ターが設立され, 研究成果を発表し始めた. その研究物を翻訳・紹介するものとして1982 「大学教授法入門 -大学教育の原理と方法」 (ロン ドン大学教育研究所大学教授法研究部著 広島大学研究センター・喜多村 , 和之, 馬越徹, 東曜子訳) や, 198 5年 「大学の講義法」 (D. A‐ ブライ著, 山口栄一訳) が刊行された. 前著にきびすを接するようにして, 日本科学者会議教育問題委員会が 「大学にお ける教育実践」 (全3巻) を刊 行 ( 1983 ) した. 私 は, 1988年 3月 当 教 育 大 に赴任 して 間も なく 図 書館 の 書 架 にこ の5 冊 を . 10~12 , 見 つ け, 手 に と っ て見 た‐ 「科学 者 会 議」 か ら の 3 冊 は ま さ に 「大 学 にお ける 実 践 記 録 集 と も いう べ き 」 ,. もので, 大変おもしろく読んだが, こういうものは 駆け出しの新米教師には一種の圧迫感をもたらすのも , ” ” 事実である. まがりなりに 自分の授業 ができてはじめて この種の実践記録は落ち着いて読めるように , なるものらしい‐ イギリスの本の翻訳も, 今回, 自分の実践記録を書こうという段 になってはじめて読み返 し, 啓発 さ れる と ころ が多 か っ た‐. 一方, 国語教育学界でも, 教師教育への関心は80年代半ばから特に高まってきた 大学の国語科教育法を ‐ 担当する教員と附属学校教官を中心とする全国大学国語教育学会では 1987年 第7 0回学会のシンポジウム , , 「 で 国語科教師教育の改善」 をとりあげ, 1990年から4年間, 毎年秋の学会で 「国語科教師教育の課題と方 法」 をテーマに課題研究が募集された. 各年の題目は 「国語科教育学の目的と方法」 「教育実習指導のあり かた」 「国語科教材研究のありかた」 「教師の資質としての表現力」 であっ た いずれもそれぞれの大学にお . ける, またそれ ぞれの大学教師における実践的研究が発表された‐ 課題研究以外でも 多くの学会員 により , , ミニティ ーチン グの試みや模擬授業の導入などの研究発表が相次いだ 私もこれらの駿尾 に付して 199 1 年 ‐ , 秋78回学会で 「九・十歳変革期の評価と批正の特質」 と題して 大学の講義の中で学生を対象に試みた 「作 , 文の評価実験」 の考察を発表した‐ 本稿は, この 「評価実験」 を基礎としてようやく枝葉を広 げて生長したひとまとまりの 「講義」 (前期2 単位) の実践報告である‐ 今回はま ず授業の概要を述べ 期末試験に焦点をあてて 「授業研究」 の具体的な , 135.
(3) . 村 井 万里子. 一 歩 に した い.. ロ.95年度 「小学国語」 の概要 1988年4月, 教育大学旭川分校に赴任した折り, この授業は 「国語科教育工」 という通年4単位の授業で あった‐ 初めの3年間は, 作文評価実験と作文学習個体史を2本柱に何とか責めをふさいだが, 「個体史」 のレポートは読むのは面白いものの, 採点に莫大な時間がかかり, 評価実験の方は実験材料として戦前の芦 92年度から 「国語 田恵之助の実践記録を使ったため何やら時代錯誤的な印象を学生に与えたらしかっ た‐ 19 科教育工」 は 「小学国語」 前期2単位, 「小学国語科教育法」 後期2単位の2つの授業科目に分離した. 94年 まではいずれも約2 40名の学生を2つのクラスに分け, 同じ授業を同一曜日に2回ずつ講義した. 今年95年 度は3クラス編成となり, 中学課程のクラス と小学課程のうち半分のクラス とを現在担当している‐ 受講者 は, 小学課程が88名, 中学課程が72名で出発したが, 最終試験の受験者は, 中学課程クラス が57名に減じた‐ 中学課程クラスで受講者が減ったのは, この授業が卒業の必須条件ではないせいがある かもしれないが, 毎回の授業でも明らかに2つのクラスの違いを感じていた‐ 両クラス とも極力同じように講義しよう と努力 するが, 中学課程クラスの方が先にある せいか相対的に私の失敗が多く, 後の小学課程クラス は大変気持ち よく授業するということが度重なっ た‐ これが試験結果に どう出るか気がかりだっ た‐ 1枚1枚採点してい る最中はあまり差が感 じられず胸をなでおろしたが, この実践記録を書くために改めて得点の分布をとっ て みると, 明らかに中学課程クラスの得点の方が低いことが判明して厳粛な気持ちにさせられた. 授業は試験を含めて15回で計画したが,途中授業者が風邪が原因で2週間にわたって声が全く 出なくなり, 3回実際に行った講義題目と授業 やむなく 2回休講, 全13回で前期 「小学国語」 の授業を終えた‐ 以下は, 1 概要一覧である. キス ト, 試験, 評価 法) 1‐ 4‐ 11 ‐ オリ エ ンテー シ ョ ン (講義 の進め 方, テ. 1. 学習指導研究への出発-学習個体史O実践個体史 自らの国語学習をふりかえり, 「国語学習観」 を吟味する. ミニレポート①私の国語学習個体史 2. 4‐ 18 ‐ 韮. 学習 指 導 の 基本 構造- 問 題 は どこ にある か- ( 1 ) ミ ニ レポー トか ら代 表例 を とり あ げ, 「国 語科」 の 問 題点 を明 らか にする‐ 2 ) 国 語 科 の 目 標 で あ る 「言 葉 の力 (働 き)」 と は どう いう も の か, 言 語 モ デ ル を用 ( い て 解 説 す る.. 3. 4. 25‐ nつ づき. 言語モデルを題材にした 「国語科入試問題」 を示し, 考察する‐ 4‐ 5. 2. 皿. 国語 科 の目標 の 表 し方. ( 1 ) 学習指導要領の法的位置づけと作られ方, 簡単な歴史を紹介する. 2 ( ) 現行の学習指導要領の中身をとらえるため, 学年間の系統図を作る. 授業では表 現の系統図を作って解説する‐ ミ ニ レポー ト② 「理解 の系 統 図」 5‐. 136. 5. 9. ◇自分の研究課題 (案) 中間整理 これからの学習の目標を鮮明にし, 具体化する. 1 ) 国語科指導のための課題全体像見取り図 (.
(4) . 試験答案からみた 「小学国語」 の実際. 2 ( ) 問題解決のための切り口 (入り口) ▽表現 (作文) 指導から入る (理解指導からでなく) 意義 ▽子 どもの発達のみちすじと実態をとらえる. 6‐ 5‐ 16 ‐ W‐ 実践 記 録紹 介① - 日記 による 入 門期 の 指 導. 小 学 校 6 年 間の 発 達 の みち す じの 中 で, 2つ の 関 門 があ る. 1 つ は 「入 門期」 , もう 1つ は 「9 歳 の壁」 (3 -4 年 生 の節 目) 実践 記 録 によ り, (1) 2 つ の 関 門 の 意 味 を つ か む‐. 2 ( ) 各 発達 段 階の 具 体 的な 姿 を とらえ, そ れ に応 じた 指 導と は どう いう もの か, 批判 力 を 身 に つ け る‐. ー入門期の実践l ○池嶋ちえ 「昭和5 3年度入学当初の読字力調査の能率的方法J. O亀村五郎の入門期の指導 ○子どもの絵日記-4枚の実例. 7‐. こ な がい と し ひと. 4/14. しみ ず きよ し. 5/ 4. こま っ ひる あ き. 6/14. す ず きの ぼる. 6/18. 6. 6‐ V. 実践記録紹介②-2年生の作文指導 新旧2つの実践 (古藤洋太郎と芦田恵之助) の比較 2 人 の 実 践 者 は, 「2 年 生」 と いう 発 達 段 階 を どの よう に と ら え て いる か‐ そ れ にも と づ い て どんな指 導 を して いる か‐. ミ ニ レポー ト③あ な た は どち らの指 導. を良しとするか 8. 6. 13 1 ) ‐ 班‐ 実践 記 録紹 介③ - 3 ・4 年 生 の作 文 指 導 - 9歳 の節 目(. この3・4年生の間の作文の変化の重大な意義を述べ, 現代の作文指導がこの変化に 十 分 応 じき れて い ない こ と を明 らか にする ‐ 1) (. 3年生 (2~3年生, 変化の前) までの作文. ○ 「にい か っ ぷ の 山 での さ かなっ り」. M‐ Y. 0 「自 然 館 ( t‐)」 「自然 館 (二)」 の比 べ 読 み ミ ニ レ ポ ー ト ④ 2 つ の 「自 然 館一 比 べ. ( 2 ) 3年生の特徴 (芦田恵之助 「綴り方教授」 中の説明) プリント ( 3 ) 4年生の特徴 (芦田恵之助 「綴方教授書」 中の説明) 聴写 9‐ 6. 20 2 ) ‐ W‐ 実践 記 録紹 介④ - 9 歳 の節 目(. 4年生の子どもの作文の読み取り演習 ( 1 ) 「家の田んぼ」 (田中孝吉) / 「田中の家の前」 (二俣三郎) 2 ( ) 「つなわたり」 (内山英三) / 「サーカス」 (福島博文) ミ ニ レポー ト⑤ どち ら が “変イど しつ. つある作文か 10 7 ‐ 6‐ 2 ‐ Wつ づき - 4 年 生 の変 化 の 本質. ミ ニ レポー トをふ ま えつ つ, 「ち がい」 の 解 説‐ 137.
(5) . 村 井 万里子. 「主題 の 発 生 「構成 の 出 現 」 」 . ,. ◇ “変イど の後のみちすじ-目的に応じた書き分け, 「文種」 の成長‐ ◇予習‐ 教育実習に向けて 「指導案」 演習 (3年教材 「雪舟」 を用いて, 宿題) 11 ‐ 7‐. 4. 皿‐ 国語科授業批評分析 「雪舟」 の授業についての古田拡の批評から学ぶ . 教材本文批評, 授業の組み立て, 発問と問答, 板書,. 「 12 ‐ 7‐ 11 ‐ 狐つ づき - 指導 案」 の 問題 点. ◇来週の試験の準備について ( 20分早く講義終了) 13‐. 7‐ 18 ‐ 前期試験 (記述式選択問題) 試験開始前に未返却のレポート及び指導案を返す‐. m. 試験問題の実際 1. 試験問題の実際 B4横書き罫紙-問題用紙1枚, 解答用紙1枚 (計2枚配布) 1995 (平 成 7) 年 度前期. 1995 ‐ 7. 18 (火). 小 学 国語 試 験 問題. 以 下 のA B C D 4つ の 問 い か ら1つ を選 んで 論 じな さ い.. その際, 必ず具体的な講義内容, 配布プリント資料, あるいは自分の書いたミニレポートの内容を引 用 したり, 参照したりして論じること. 資料プリントから引用するばあいは (②ー3) のように出所を ) の よう に書く‐ 自 分の ミ ニ レ ポー トの 場 合 は (4/11分) の よう 示 し, テ キス トの場 合 は (テ P‐ 55 に書く. 分量 は, B 4所定用紙1枚以内. 裏に書かれた部分は採点しない‐ A‐ こ の 講義 を通 して, 自 分 が 課題 と してつ か んだこ と, も しく は課題 の 答え が明 らか にな っ た こ と を 3 つ, 具 体 的 に述 べ よ‐. B. 国語科の目標, 学習指導要領, 実際の授業, の3者の関わりについて考えたことを述べよ‐ C. 子どもの主体性・主体的学習力・自己学習力 (どの表現でも可) を育てるとはどういうことか, 具 体 的な 実 践 を 通 して考 え たこ と, 気 づ い た こ と, 課 題 と して見 い 出 した こ と を述 べ よ.. D. 講義で紹介した中で最も印象に残っ た授業, 指導実践, 子どもの作文, 子どもの発言をとりあげ, そ れ (ら) を自 分 が どの よう に受 け 取 っ た か につ い て 論ぜ よ.. 採点の観点‐ ABCDとも共通 ( 50点満点) a‐ 各 問 い の 条 件 を 満 た し て い る‐. 10点‐ (6 ~10). ‐ b‐ 内 容 が 具 体 的 で あ る.. 10点‐ (6 ~10). c. 一 定 の原則, 普 遍 的真 理 を取 り 出 している‐ / 理解 が正 確 であ る.. ) 10点‐ (6 ~10. d. 自 分の 考え, 意 見 と して こな れて いる‐. ) 10点. (6 ~10. e. 構成 が整 っ て いる (段 落意 識 の 明確 化).. ) 10点‐ (7 ~10. f. 表 記や 文 法 に誤 り がな い‐. 138. (減 点 法. 大 きな 誤 り -2, 小 さ な誤 り - 1).
(6) . 試験答案からみた 「小学国語」 の実際. 2‐ 問題の選択状況と得点分布 得点 の ラ ンク を, 50~47…a, 46~42…b, 41以 下… c, とする‐ 最 低 点 は32点 であ っ た.. 小学課程クラス ( 88名). 中学課程クラス (57名). 全体 ( 145名). 〈 〉 は満点. 問 題A 選 択 者 (9 人). a … 4 〈1>, b … 4, C … 1,. 問 題B 選択 者 (6 人). a …1,. b … 2, c … 3,. 41%) a…36 (. 問 題C 選択 者 (5 人). a … 2,. b …1, c …10 ,. b …36 ( 41%). 問題D 選 択 者 ( 68人). a …29 〈 11 〉, b …29 , c …lo. C …16 ( 18%). 問 題 A選 択 者 (5 人). a … 1 〈1〉, b …3, c …1. a-・ 17 ( 30%). 問 題B 選 択者 (4 人). a … 0,. b … 0, c … 4. b・‐21 ( 37%). 問 題C 選 択 者 (3 人). a … 0,. b … 2, c …1. c-・ 19 ( 33%). 45人) 問題 D 選 択 者 (. a …16 <4〉, b …16 , c…13 ,. a …52 ( 40%), c …35 ( 36%), b …58 ( 24%) こ のう ち, 満点50点 の 者 …17名. 期 末 評価 は, ミ ニ レポー ト5 回 分 を50点, 最 終試 験 を50点, 合計100点 で 出 し, こ れを10段 階 に換算 する‐. 3‐ 問題Dの特性 以上 のよう に, 145名 中, 113名 がD を 選 ん だ‐ D は, 授 業 中3 回 に わた っ てミ ニ レポー トで 書 い た児 童 文. 批評, 実践批評の延長に位置する問題である‐ Dの選択者によって取り上げられた資料の多いものを上から 拾うと以下のようになる (重複を含む) ‐ (レポ) はミニレポートでとりあげたものである‐ 1位. … 全体 で33名. 絵日 記 (入 門期). (a13 , b12 , c 8,). (しみ ず きよ し 18名, その 他15名,) (レポ) 2 位 (指 導 案) 3位. 自然館 (一) (二), (3 年). …28名. (a12 , b13 , c3,). 「雪舟一 の授 業. …12名. (a. 7, b. 4, cl,). …9名. (a. 2, b. 5, c2,). .. …8名. (a. 4, b. 2, c 2,). 「つ な わ た り と 「サー カス (4 年) 」 」. …8名. ‐(a. 3, b. 5,). … 8名. (a. 3, b. 3. 7名. (a. 3, b. 3, cl,). …7名. (a. o, b. 4, c3,). (3年). 4位. 亀 村五郎 氏 の 入 門期 の 指 導. 5位. 池嶋ちえ氏入門期文字調査 (1年). (レポ) 5位 (レポ) 5 位 (レポ) 8 位. (1 年). 古藤 実 践 と 芦 田 実 践 の 比 較 (2年). 「家 の 田 ん ぼ と 「田 中の 家 の 前 (4 年) 」 」. c 2,). 8位. 古藤 実践 中の 作 文. 10位. に い か っ ぷ の 山 で の さ か なつ り (2 年). … 6名. (a. l, b. 5,). 11位. 小 樽 緑小 の芦 田授 業. … 4名. (a. 3, b. o, c l,). (2年). (4年). この期末試験問題のねらいは, 学生の課題意識の成長ぶりと, 児童文や実践記録を批評する力を見るとこ ろにある. それを正面からたずねる問いは, AとDである. BとCは, 答案を書くときの学生の頭の中に問 題意 識 を 覚 醒さ せる た め の も の でも ある‐ むろ ん, こ れ を選 ん でよ い レポー トが書 ける にこ した こ と はな い. が, 現時点で, 彼らがBやCの問いに直接答えを出すことはむずかしい‐ 両クラスとも, 50点の取れた学生 139.
(7) . 村 井 万里子. は いな か っ た.. 今回の試験問題の特徴は, 問題Dである‐ この問題は, 題材も, テーマも, 書き方も, 学生の判断に任せ て 書 かせる, いわ ば “随意 選 題” の 問い であ る‐ こ れま では, 学生 に勉 強 して 欲 しか っ た場 所 を複 数 (3 ~ 4箇 所)こち らか ら選 定 し,そ の1つ 1 つ にす べ て記 述 式 で 答 えさ せ て い た.(答案 はB 4 罫紙 2 枚 にな っ た‐) こ れ は, 採 点する とき に, 大 きな 苦痛 が伴 っ た. つ ま り, 「よく わ か っ てい な い」 と き に学 生 がよく やる 方 策,. すなわちプリントやテキストの記述内容を部分的にアレンジして, (したがっ て, 自分の考えか他人の考え かの区別も明確でない書き方で) 解答欄を埋める, という方法に悩まされたのである. このような答案から は, 彼 ら が何 を どこ ま で わか っ て いる か ほと ん ど捉 える こ とが で きな い‐ そこ に “0点” と付 け た い衝 動 を. おさえ, “鉛筆を動かした ご苦労賃” と しての一定の点を与えるというのは, 空しい作業である. またよく 考 え てみる と, こ こ と ここ はわ かり ま した か, と いう 問 い に万 遍 なく 答 えさ せる と いう の は, 出題 者 と 同 じ レベ ルの 問 題 意 識 や知 識 を 要 求す る よう な 倣 慢 な 仕業, と い える かも しれな い. む しろ 謙 虚 に, 「メ ニ ュ ー は い か が で した か」 「お い しい と ころ (ま ず い と ころ) は どこ で した か」 と た ず ね て, 学 生 の 率 直 な 答 え を. 待つ方が, “答案をよむ” という作業はずっ と実り豊かなものになる. この度の学生たちの書きぶりは, 何 かはつらつとしていた. 今回の答案のなかでは, 「亀村五郎氏の入門期の指導」 をそのまま引き写したよう な もの が2つ, 芦 田 の 述べ た “3 年 生 の特 徴” を現代 風 にア レン ジ した だ けのも の が1つ あ っ た‐ 本 人 は, 「こ こ は大 事 な と ころ だ と 判 断 して 選 ん だつ も り であ ろう が こ れで は 「考 察」 にな っ て い な い こ と をぜ 」 ,. ひ自覚させねばならない‐ 学生たちが, 「最も印象深かったもの」 として何を取り上げるか-これは, 授業者としては興味津々 の情 報である‐ 極度に対象が片寄れば, 「食べられるのはそこしかなかっ た」 という批判になり, 書きぶりに力 のないものが多けれ ば, 彼らを動かす力が薄弱だっ た, という証拠になる. (先の “引き写し” などはその 13名が選んだものを見ると, ミニレポートの課題以外に題材を 最たるものである.) 今回, 問題Dの解答者1 求め た 者 が50名 いて, 採点 が面 白 か っ た‐ 自 分 が前 に書 い た レポー トに寄 り か か っ て書 いた よう な も の は,. 「自然館 (一) (二)」 を選んだ中でb cレベルの得点しか取れな かっ た者の中に若干めだっ た. , 採点 にかかっ た時間は, 中学課程クラス57名が約6 .8分) ‐5時間 (1枚平均6 , 小学課程クラス88名が約14 時間 (平均9 .5分かけていることになる‐ ミニレポート (B 6 カ .5分), 全体をならすと1枚の答案に平均8 ー ド) 1枚 を見る の に3~ 4 分 か かる か ら, そ の 倍 の 分量 と して穏 当 な所 とい える‐ ミ ニ レポー トを書 かせ. 2分くらいをあてる‐ (実際はもっ と短いことも多い-) る ときは, (多くの授業者と同じく) 講義時間の最後1 この ミ ニ レポー トをつ ぎの 時 間の 冒頭 で,全 体の 傾 向や 目 に付 い た 問題点 に触 れる 程 度 の使 い方 をす る な ら,. 1時間ほどで目を通すことができる. しかし, これを学生に返して意味のある作業, すなわち傍線を引いた 40人=420分=7時間かか り必要な場合には書き込みをしたりして読む 「精読」 をしようとすると, 3分×1 る‐ 怠け心に勝てず1週間ではこの時間がどうしてもひねりだせない. 今回も, 直前の2週間前に出された 「指 導案 と 返却 しな い でため て い た2 回 分のミ ニ レポー トを試 験当 日 返 す ため 徹夜 に近 い状態 にな っ 」 , , “ ” 「 た- しか し 随意 選 題 の 問題 D」 を 出す た め に は, 彼 らの 書 い たミ ニ レポー トと指 導案 を どう しても 彼. らの手元において参照させる必要があっ た‐. W. 答案にみられる学生の学習状況 1. 答案に見られる 「意欲」 の指標 自分で問題を選び, 材料を選んで答える今回の試験の答案には, 生き生きした生気の感じられるものが多 か っ た. そ の “生気” が どう いう と ころ によく 現 れる か 敢え て 取り 出 して みる と, 1)‐ 具 体的 である こ と, 140.
(8) . 試験答案からみた 「小学国語」 の実際. 2) ‐ 自分や家族の経験と結び付いていること, 2) . 自分の専 門領域 (心理学, 教育学など) と照らし合わ さ れて いる こ と, 4). 他 の授 業や 講 義 で知 っ た 知 識, 自 分 で 読 ん だ 本 の 内 容 な どを 使 っ て いる こ と, の 4. つがあげられる‐ また, これらとは別の力として, 児童文や実践記録の読み取りの中で, 子どもがそれを書 き 綴 っ て いる 心 理 的 プロ セス, 教 師 が子 ども に 向か い 合 っ て指 導 して いる 現場 な どを リ ア ル に想 像 し, そ れ を自 分 の 言葉 で 表現 して いる こ とも そ の 要因 に な っ ている‐ しか し, こ れら の 「力」 を武 器 に して, 自分 自身 の 「課題」 を仕上 げる こ と は用 意 で は ない‐ 問題A を選 び, a ラ ンク の 得 点を得た学生は 自ら 「課題」 を仕上げ 宣言した学生である‐ , , 問題 A. 7305 1‐. 中学 書道. K‐ S‐ (女性). 4年生の転換期について. わたし自身が4年生から始まっ た日記, 手紙 (文通) などで各分量が急激に増えたことについての疑 問 があ り, ま た そう であ っ た こ と が当 時 に記 憶 と して 鮮 明 に残 っ て いる‐ こ の こ と につ いて の 課題 (疑. 問) 解決の糸口. 6/13の板書 (図) 引用 (省略) 作文の質的変化の時期が4年生であり, 子供の心理的発達の見られるよう になるのも4年生である. また4年生になると, 表現意欲が出てくる (プライ ドもある) ‐ わたし自身文を書くことに興味を抱き 始めたのは小3の後半からであり, 心理的変化も大きくあったことが記憶にある‐ 4年生になると手紙 を書きはじめ, 文通相手が5人以上はいた‐ 返事を待ちきれずに書いたこともある‐ 交換日記も友達と の 間 で した. 強烈 に自分 の 中 で何 か が変 わ っ て いく の を 実感 してい た‐ 今 こ の講 義 で初 め て知 っ た 「9 ,. 歳の節目」 に当たる時期に, まさしく私自身の変化があっ たことに驚き, また理解できた‐ また 入門 , 期 「文字を書くことそのものに非常に興味を示す」 (テP‐ 21 ) とあっ たが, 1年生の頃文字を書く の が好 き で たま らな か っ た こ とを 思 い 出 し, ま た 驚 い た‐ 読 ま れて いる 気 が して 少 しお そろ しい .. 2. 雪舟の指導案作製を通して 「発 問 につ い て 私 が作 っ た指 導案 で は 「気 持ち は どう であ っ た か と いう こ と に重点 を置 いた が 」 」 , , , “ ” 意 味を は きち がえ てい たよ う に思う. 同 じ 考 えさせ る こ と でも 表面 的な こ と に しか触 れる こ と がで き な か っ た, と いう の が反省 で ある. 要する に書 か れてあ る 中 か ら抜 き 出 す の で はなく て 書 か れて い , な い こ と を問う, こ と がよく 理解 で き てい な か っ た‐ 課題 と して は 「メ タ 思 考」 できる よう な 発 問 を教. 師が気づき, どのように子どもたち に与えていくかということ, また出てきた答えを認め まとめるこ , とをどう行うか, ということ‐ 実習へ行くにあたっ て1番大きな課題である . 3‐ よい文章の見分け方について よ い 文 章 と は, 言葉力江ちみ であ る こ と (語 葉力 があ る こと) と 思 っ てい た 実 際 私 も 辞 書 を ひ っ . , , ぱっ て は難 しい 言 葉 を使 おう と 考 え て い た 頃も あ っ た だ がそ れだ けで は ダメ だと いう こ と に気 がつ , ‐. いた‐ 筋道が通っ ていて (論理性がある) , 描写力がある (具体性がある) ことがよい文章である, と 学んだ‐ 課題としては, よみとる力=質をみる力 を養うこと また文章スタイルなど分析できる力を , つ ける こ と, そ れ らの方 法 で ある‐ こ の 学 生 は, 1‐ 発達 の みち す じを と らえる 2 授 業 構築 の ポイ ン トを 考 察する 3 文章 の読 解力 . , . , ‐ 分析力 をつ ける, と いう 3つ の 重 要 な柱 を 選 びと っ て いる ‐. つぎの学生は実践資料から, 実践現場を生き生きと再現している.. 141.
(9) . 村 井 万里子. 問 題 D 7413. 中学 音 楽. S. M. (男 性). 私が最も印象に残った授業は, “池嶋ちえ先生の入学当初の指導の仕方” の授業である‐ 私ごとだが, 私はあまり子 どもをあいてにするのは得意ではない (好きではない) ので, このように入学当初の指導 の仕方な ど考えたことがなかっ た‐ だが, 考えてみれ ば私の入学当初はどのようにして文字を覚えたの だろうかという疑問が生じ, まして現代では早期教育で入学前から子どもに差が生じる中で, 指導者は い っ た い どう す れがい いの か? という 壁 にぶ ち あ た っ た. ゆ え に, こ の 池 嶋ち え先 生 の指 導の 仕 方 に は. ただただ感心する ばかりであった‐ その指導だが, 池嶋先生は, まず入学当初数日で読み取り調査をするという‐ このくらいなら私にも できる と思 っ た が, そ れ が大 間違 い であ っ た‐ そ のや り 方 に は見 事な 工 夫 がさ れて いる‐ ま ず調 査す る. 時間だが1年生が緊張して登校し, 他の子とも馴染みがないのでだまって座っている時にする. しかも 調 査 の しな い子 に は自 由 にノ ー トに絵日 記 を書 かせる という 工 夫ま でさ れ ている‐ ま ず, こう い っ た 子. どもの情緒面も考え, 調査の時間帯にまで配慮することに私は驚かされた‐ このような工夫により子 ど もは学校に対するはじめのイメージもよくなるだろう し, 心身ともに安定したものになっていくと私は 考えた‐ 次にその調査用紙だが,五十音をわざと逆さにして子どもが機械的に文字を覚えることをさけている‐ こ の工 夫 も す ばら しい と思う が, さ ら に, 調 査 方 法 がす ご い. (⑥ ー 1 の プリ ン トの 右 半 分 の ② の 所 に 書 いてあ る ので省 略す る が,) ← この よう に子 ども 一 人一 人の文 字 を読 むス ピー ドを しっ かり 把 握 して,. 投げかける言葉も 「指した字をす ぐ読んで」 や, 「早いね早いね, 先生負けそう」 など, 子 どもの意欲 を喚起する言葉を (たぶん) ぴっ たりの間合いで投げかける. こういっ た点が実に見事だと思う. この ことによって子 どもは, 自分が調査されている という意識ではもたず, ゲーム感覚で知らず知らずのう ちに学習することができるのだろうと私は考える. そしてこのよう な 「子どもの差」 を考えて行くこと については亀村五郎氏も, 「入学前から文字を勉強している子に入学してから文字を教えるのは, 知ら ない子に教えるよりはるかに難しい」 と言っている. (⑥-2のプリントより) 私も全く同感 だが, 池 嶋先生はこの差をちぢめる ために, 少しでも早い時点に差を見つけ出すため調査をする, と言うことで この問題の解決に一歩も百歩も踏み出したわけである‐ しつこいようだがこの調査の仕方に対する工夫はこの上なく素晴らしいものである. 私は小学1年生 を指導するということは今後ない と思うが, あれ ば是非池嶋先生を真似させてもらいたい, と思う‐ 中 学高校の教師は小学校から学べとよく言われる が, この実践方法はまさしくその通りである. 私ももち ろん池嶋先生から上記のようなことを学び感じたが, “得に今の中学・高校の先生たちにこの方法を知 ” っ て も らい た い と思う ほ どに, 私 に と っ て 印象 深い も の にな っ た.. a ~ e 各10点, f - 1. 6年3月に旭川市立東町小学校を退職なさった先生で, 私も参加している 「旭川地 池嶋ちえ先生は, 昭和5 方作文教育研究会」 OBのお一人である. 私が旭川に赴任してまもなく, この研究会でお会いし, お話しを 伺ううち, 小学校低学年, 特に1年生の ご指導に並々ならぬ手腕をふるわれた方だとわかった. 先生から 『小 学校入学当初からの低学年国語の重要な基礎 (作文その他) 教育, 玉手箱』 という, 実践記録8冊の収めら ‘玉手箱” をお預かりした 授業で紹介した資料は 先生の手書きの解説と3 れた段 ボール紙製の文字通り ‘ , . 名分の調査表実物コ ピーである‐ 142.
(10) . 試験答案からみた 「小学国語」 の実際. 第6回の授業の最後に示したのが, 1年生1学期 に書かれた4人の子どもの 「絵日記」 である. 黒薮豊子 氏と亀村五郎氏の実践記録から引用 した‐ 答案の中でこの絵日記に言及した学生は33名にのぼり, なかでも 「しみ ず き よ し と いう 児 童 の 絵 日 記 に引 き 付 け ら れた 者 が 多 か っ た (ち な み に村 井 の一 番 気 に 入 っ て い 一 . る 絵 日 記 は 「こ な がい と しひと」 と いう 児童 のも の である.). ○特にしみずくんの作文は本当に理解がむずかしい‐ だが逆に愛着がわいた‐ 彼が1番書きたかっ た事, 場 所 がう か がえる か ら である. 教 師 にな っ たら, こう いう 作 文 に赤 ペ ンを 入 れる 作業 がま っ て いる‐ 7078. 小学音楽. T. j. (女 性). ○私は最初, プリントが配布されてこの絵日記を見たとき, 正直言って何が書いてあるのかほとんど理 解することができなかっ た‐ 1年生の文章を書く能力は, このくらいなのかとがく然としてしまっ た. 先 生 がこ の 日 記 を どう 読 ん で いく か を説 明 してく ださ っ た が, 上 か ら下 にう つ っ た り, い きな り 横 書 き にな っ て た り, とや はり私 の 理解 を こ えた も の だ っ た‐ 最 後 の 「マ グマ た い しを見 た」 ま でた どりつ い て ほ っ と した が, 1 年 生 は か わい い なあ, と思う 反面, も し私 が 教 師を してい て子 ども がこ の 絵 日記 を 持 っ て き た ら, どう しよう, と いう 気 持ち にな っ て しま っ た‐ 子 ども は, はり き っ て 絵 日記 をも っ てく る の だか ら, 教 師 はそ れ にこ た えて, 赤ペ ンで 何 か返 事を か. いてあげるべきである. 読めない文章でも, 何とか読める 部分を探して書かなければならない‐ 先生(村 井) は 赤ペ ンの例 と して, 「かみ な り こわ か っ た ね」 「ひとり で か え っ てえ らか っ た ね」 と 言 っ てお ら れ た が, なる ほ どと思 っ た‐. 7132 小 学音 楽. M. A. (男 性). ○ ま ず 読 みは じめ を見 つ ける の に時 間 が かかり ま した‐ 初 め の 文 はよ むこ と ができま した. しか し, そ の 後 はま っ たく と 言 っ て い い ほ どわ かり ま せ ん で した‐ 先生 が読 ん だの を 聞い て驚 きま した‐ ま た, 笑 えま した. 子 ども と は, 独 自 の文 法 を 持 っ ている ん だと思 いま した‐ 1年 生 はま だ 「っ」 という 促 音 と , ば の す 音を使 い きる こ と がで きな い の です‐ 7135 小 学 保 体 M‐ M‐ (女 性). ○しかしこの絵日記のような記述を見ると私は, その子がどれだけ熱中してその絵日記を書いたのかを 思 わ ず に はい ら れな い. お そ らく そ の子 は, 自 分 の予 定 した以 上 に(ある い は前 も っ て の見 通 しを立 て れ. なかっ たか) 書きたいことがあっ て, このような書き方になったのだろうと思う‐ 実を言うと, 私も幼 い頃にこのような書き方をした記憶がある‐ そしてこのような記述のしかたは, 日記の内容よりも先に 正 さ れて しまう の が常 の よう な の だ ろう か‐ その よう な 記憶 が多 い‐ しか し私 は 日 記 を 書 い た そ の子 , の思 いや, つ た え たい こ と な どを 本当 に考 えよう とす る な ら, 書 き 方 を最 初 か らと がめる も の では な い. のではないかと考える‐ なぜならば, その子の持っているせっ かくの感性が, 記述方式を気にかけるば かり に発揮 しき れな か っ たり, も しく は, 日 記 を かく こ と そ のも の がお っ くう にな っ たり 嫌い にな っ た り して しま わな い かと 懸 念する か ら である.. 7525 幼 稚 園. H‐ Y. (女 性). 資料を配ったときの学生たち の困惑ぶりを楽しんだ (?) 覚えはあるが, これほど強いインパクトがあっ た と は意 外 だ っ た‐. これら入門期の “第1関門” を突破したあとの 「2年生の作文指導」 では, 戦後の実践者古藤洋太郎氏と 戦前の芦田恵之助の大正6年の実践とを並べて出した‐ この2人は, 2年生の発達段階上の特徴をとらえる 所 ま で は 表面 上 同 じよう に見 える の だ が, 「指 導 の 実 際」 の 段 にな っ て, 実 は 全く ち がう 理解 に 立 っ て いる 143.
(11) . 村 井 万里子. こ と が露 わ になる の である‐ この, 古 藤 -芦 田の 資料 を とりあ げた答 案 は8つ あ っ た が, こ のう ち 2つ の答 案 は, そ の 「ち がい」 を 理解 して いな い こ とを 露呈 して いる‐ 私 の説 明 が不 十 分 だ っ た の か, 2 人 がよく 聞 い て い なか っ たの か, よく 聞 いて い た がわ か らな か っ た の か は不 明であ る. 2つ の 実践 のち がい をと らえ て. いる残り6人の中から答案を引用してみよう. 問 題D 7034 小 学 教心. T. 0. (男 性). 私が最も印象の深いものといえば, プリント⑦の古藤氏と芦田氏それぞれの作文指導の実践記録紹介 だった‐ 古藤氏と芦田氏の年代は違うが, 同じ小学2年生の実践記録だっ た. しかし同じ作文指導でも こ んな に相 違 がある とは, な かな か 興 味深 い 内 容 だ っ た.. 両氏の作文指導を読んでまず思っ たことは,私もこういう作文指導を受けたかっ たということである‐ 私は今まで作文はかなりの枚数を書いてきたと思っているが, 作文指導をしっ かりと受けた記憶がない の である. 作 文 は集 団 指 導する も の だと, こ の講 義 の と き は じめ て知 っ たく らいで ある.. 古藤氏と芦田氏との相違は作文を書かせる際に顕著にあらわれる. 古藤氏は⑦ー2で 「書く前に相当 こ ま かく 指 示 し, 書 き方 を説 明 した…」 と述 べ てお り, 芦 田氏 は⑦ ー5 で 「~ 文 はこう 書く べ きも の で. あると説いてはならぬ」 と述べている. 古藤氏は豊かな表現を用いて, 子供自身の感動が十分伝わるよ うに書くように指導し, 芦田氏は, 自分の生活を真面目に書けばよいと指導している‐ 私はどちらかというと, あまりどう書くのかいちいち説明するよりも, 芦田氏のように, 見聞きした ことを素直に書かせた方がよいと考える. 自分の文章観で子どもの作文の書き方を拘束するのは, 子ど もが窮屈に感ずるだけで無理矢理書かされる と感じるだけではないか‐ 実際, 私の小学校時代は, うまく書かなけれ ばみたいな強迫観念を持っていたし, 先生も表現が豊か な も の を 求め てい た. その せ い か, 今 でも私 は文 章 を書 く こ と に抵 抗 を感 じて いる.. そういう過去がある せいか, 私は, 表現がつたなくても, すなおに作文を書いている子どもをほめて あ げたい し, み んな に発 表 してあ げたい と思う‐ 表 現 につ い て は, も っ と高 学年 にな っ て か ら 求める べ. きと考える‐ 低学年のうちは, 文を書くことの楽しさ, 自分のことを表現する楽しさを子どもを伝えれ ば良いのではないかと 古藤氏と芦田氏の作文指導を読んで感じた‐. 問 題D 7406 中 学 化 学. Y‐ Y‐. (女 性). 私 が最 も 印象 に残 っ て いる も の は, 子供 の作 文 であ る. ⑦ -1 ~ 6. ま だ低 学年 の 作 文 は, 序 文 があ っ て, ク ライ マ ッ ク ス があ っ て, と いう よう な も の には とう てい 程遠. く, ひらがなも下手くそで何を言いたいのかも良く読み取れない有り様である. しかし, 出来事を正確 に順序立てて書こう とし, 子 どもなりに頭の中で編集して書いていることが読みとれる. ⑦-1~2で, 古藤先生が 「書く前にそうとうこまかく指示し, 書き方を説明したつもりであったが, ことがらの大まかな説明になってしまい, その場面をこまかくとらえて描写することができない.」 と 言っているがその通り だとも思っ た‐ 大人の気持ちで作家の文章を読むように子どもの作文を読むと, 確かに大した意味もないような行動まで書かれている. 「だからどうした」 と言ってしまいそうである. もう少し,「その時の自分の気持ち」 や 「その場でのく わしい行動」 を聞きたいと思うこともある. また, 私でさえ, 読み直して書き直すということはおっくうで最近はしなくなっ たのだが (この文章も の, 子どもにとっ てもそれは同じことだと思う‐ (⑦-3‐ D) はじめに書くときに全力を使っ てしまい, 後で見直すという力 はないだろう‐ だから, 書く前に計画を立て, 学習しておく. -これも必要だと思 144.
(12) . 試験答案からみた 「小学国語」 の実際. っ た‐ しか し, 果 た して小 学校 低 学年 にそ こ ま で できる の だ ろう か. ま だ発 想豊 か な こ の 時期 か ら, そ こま でさ せ て よ いも の だろう か‐. 芦田先生 (⑦ー5) の作文指導を読んで, 私は大きくうなずき, こんなに子どものことをとらえ, 子 ども の 立 場 に立 っ て指 導 が できる 先 生 がい た という こ と に 感慨を 覚 え た.そ れも 大 正 8 年 という 時代 に.. 「尋常2学年の綴方教授は 生活をそのままに想い起こして記述することを第一義としなければならぬ . 、 即 ち, 見 た こ と 聞い たこ と 等 をな ん ら工 夫 する ところ なく, そ の ま ま に記 述す る こ と をも っ て始 め な け れ ばな ら ぬ‐一 こ の文 章 が, ⑦ - 6 「尋 常 2 学 年 は, 文 字 の ま ち が い, 語 の重 複 な どを な お す と, き わ め て真 面 目 にきく が,想 にふ れる こ と は喜 ばな い.」と いう 事 実 か ら得 ら れたも の だ という こ と がわ かる. 芦 田先 生 の文 章 は, 大 正8 年 と いう だけあ っ て, とても 古 め か しいも の であ る‐ 現代 の文 章 ばか り 読 ん. でいると背筋が引き締まる思いがする‐ (古文, 漢文の好きな, 時代劇をよく見る私には現代文よりも, 端的でおもしろいと思うのだが‐) 話は戻るが, 私もよく作文を書かされた‐ 今読み返すと, 場面が思 い 出せ な いも の もある が, 自 分な り に, そ れな りの 書 き たい気 持ち をも っ て 臨 ん で い た. 作 文 を 書 き 終 え, 先 生 に見 せ に行 く と, 「こ の辺 を けず っ て, こ こ の所 をもう 少 しく わ しく 書 い た方 がい い.」 と いう. 私 が書 き たか っ たの は, その 場へ行 く ま で の 間であ っ て, 行 っ て か らの こ と で はな い かも しれな いの に. でも 先 生 が 「書 い た 方 がいい] と 言う ので, 書 き 直す‐ そ れ が自 分 で読 んでよ い 文章 にな っ たの な ら 良 い が, どう も思 いも しな い こ と を長々 と かく の は いや な こ と でも ある‐ 漢字 がわ か ら なく て, 先 生 に聞 く の は 良い が, 文 章 を 大きく 変 え ら れて しまう の は, 幼 心 な がら辛亥 ( ママ ) で ある‐ 私 は作 文 を かく こ と がと ても 好 き であ っ た‐ 全 国の コ ンク ー ルで, 佳 作 で はあ る が賞 をも ら っ た こ と も あ っ た. 今 で も こ の と き の 作 文 が, 私 の 人生 で 唯 一 の, 一 番 上 出 来 の 作 品 だと 思 っ て いる‐ (残 念な. がら, 作品は戻ってこなかっ た‐) しかし読書感想文はうまく書けないの だ‐ どう違うのかは私にはよ くわからぬ‐ が, 作文は子供の頃から好きだった. あとがきではあるが母が幼い時の私の作文をうれし そうに読んでいたことがあっ た‐ (ごく最近‐) 学校の教師になっ ても, 母のように子どもの作文をその 子 の 1 ペ ー ジと して 読 ん でい き た い‐ そう 思 っ て いる.. 文中ほぼ中央部, 芦田恵之助の言葉を引用 して, 「この文章が, …という事実から得られたものであるこ と がわ かる‐」 と述 べ た一節 は, ま こ と に鮮や か である‐ 「辛 亥」 と いう 誤 り は全 く の ケ ア レス だ ろう が や , は り文 章 は “読 み 返 さ ね ば’ な らな い. こ の 答 案 は, 良質の エ ッ セイ を読 ん でいる よう な 気 持ち にさ せ ら れ た‐. V‐ 作文読解のアポリア 学生たちは, 作文指導における大事な点と して, 「あらかじめ書き方を押しつ けない」 「伝えようとしてい る こ と を そ のま ま 受 け と める」 「欠点 をあ げつ らわ ず, 長 所 を み と め て ほめる」 と い っ た 表 現 で 自 ら の 学 , ん だこ と を 述べ て いる‐ そ れ自 体 は悪く な い. だ が, 一見 何 の 問 題も な さそう な こ れら の 表 現 の 中 に 実 は , ,. 理念と実践の間に横たわる アポリアのひそんでいることを今回の答案分析の中で気 づかされた‐ ま ず, 「書 き 方 を押 しつ けな い」 の は 「書く 内 容 を 考 え さ せ な い で も よ い」 こ と と は 違う こ と 「受 け と , . める」 と は 「鷹 揚 に容認 する こ と」 で はなく 深く 確 実 に 「わかる」 こ と で ある こ と そ の わ かり 方 の 質 は , . ,. わかっ たことの返し方に表現されて実体となること‐ 最後に, 多くの学生が 「ほめて育てる」 という 言葉を 安易 に使 い 過 ぎる こ と が気 に な っ た. 人 は ほめ ら れる か ら育 つ の で はなく 誰 か に わか っ ても らう こ と によ , っ て育 つ の で はな い か‐ ほめ ら れて 嬉 しい の は, その底 に相 手 か ら自 分へ の確 か な 理解 がある か らである‐ 145.
(13) . 村 井 万里子. 的確な理解の基礎をもたぬ 「ほめこと ば」 は, 結局有力な指導言にはなりえない. このことをもっとも端的 に示 した レポー トが, 2 年 生の 作 文 「にい か っ ぷ の 山 で のさ かなつ り」 の読 解 をテ ー マ に したも のの 中 に現 れた.. 2年生の作文 「にいかっぷの山でのさかなつり」 は, 市内の共栄小学校にお勤めの斎藤督先生が, 今年春, 旭川地方作文教育研究会の月例会に提出された作品である‐ にい かっ ぷの山でのき かなっ り. 2年. M. Y‐. 昼 ごは ん をた べ て か らお とう さ ん たち が 「さ か なつ り に行く よ.」 っ て 言 っ て, お 父 さ んと だ い す け にい ち ゃ ん と, しん じにいち ゃ ん とい とこの す ず きり ゅ う ち ゃ んたち が, さ か なつ りの え さ を かい に行 きま した. そのあ い だの こ っ て いる ひと たち がさ かなつ り にもつ も の を, じゅ ん び して いま した‐ お か しは, ポテ トとチ ョ コ レー トをも ち ま した. そ れと シー トも も ち ま した. つ り ざお も も ちま した‐ そ し てお とう さ んたち が, か え っ てき て, 車 の トラ ッ ク に, さ っ き のお か しや, シー トや, つ り ざお をつ ん で, り ょ う ち ゃ んの車 とお と う さ んの 車 にわ かれて, り ょ う ち ゃ んの 車 にのる の は, わ た しと, しん じ にい ち ゃ んと, り ょ う ち ゃ んの お じさ んと, り ょ う ち ゃ んで した. お とう さ んの 車 にのる の は, り ょ う ち ゃ んの お ばさ ん と, お かあ さ んと, だいす け にいち ゃ んと, ま さ き にい ち ゃ んで した‐ そ れで, 山の 上 に どん どん行 っ て, つ いて, 車 の トラ ッ ク か らつ り ざお と か を だ して 草 の 上 か らある い てお り て, つ り ざお に え さ をつ けてつ っ て, わ た しはシー トです わ っ てい ま した. どん どんさ むく な っ てわ た したち は車 にも どっ て ヤク ル トをの ん でい て, だい す け にいち ゃ ん がか え っ て き て, み んなも かえ っ て き て, お かあ さ ん が 「さ か な つ れ た か い‐」 っ て 言 っ て そ の さ かな は ねこ の あ か ち ゃ んよ り ち ょっ と 大 き いく らいで した‐ か えり に車 で ねて い きま した. こ の 作 文 は, 2 年 生 か ら3年生にかけて (即ち, 9歳の節目を迎える手前まで連続して) 明らかになる児. 童文の特徴を典型的に備えている例 として紹介した‐ その特徴とは, ○1文が接続助詞で連続してどんどん 長くなる傾向が激しく, 主述の呼応のおかしな文が出やすいこと‐ 0客観的な価値に意を介さず, 自分が面 白い と思 え ば何 でも 書く こ と. ○ 連 想 に任 せ て思 いつ い たこ とを書 き, 内容 上 の ア ン バ ラ ンス には 気 づ かな ” “ い こ と. ○ 全体 と して量 の ふく ら んでく る こ と, な どで ある. 芦 田恵之 助 は, こ の 時期 を 放 胆期 と名 づ け, そ のエ ネ ル ギー を む しろ 存 分に 発揮 させ よう と して いる‐ しか しこ れ ら の特 徴 を並 べ て みる と, ほと ん. ど文章の “欠点” である. 強いて言え ば “元気の良さ” が美点といえようか. だから, この時期の作文を 「受 けとめる」 には, 子どもの波動に自分を合わせるようにして 「力」 をとらえる必要がある‐ それがいかにむ ず か しい か, 次の 答案 にはよく あ らわ れてい る‐. 問題 D 7464 中 学家 庭. M‐ H‐. わ た しは, 3, 4年 生 の 作 文指 導 で, プリ ン ト⑧ - 1 のM Y さ んの にい か っ ぷ の 山での さ かなつ り の 作文 が 印象 に残 っ てい る. そ れ は, 2年 生 か ら 3年生にかけてこのような作文が書けることに驚いた か らであ る. 私 は, この 子 ども の作 文 を読 み, わ かり や す い と思 っ た. 思 いつ き で どん どん書 い ている の で はなく,. 見たこと経験したことを思い出して, 書く順番を考え整理して書いている文だと私は感じた‐ こ の子 ども は, つ り よ り もつ リ ヘ 行く じゅ ん びが強く 印象 に残 っ て いて は じめ の 方 で多く 書 い て いる. と考える‐ また, 自分以外の人の様子をしっ かりとらえていると思う. しか し, 人の 様 子 が ほと ん どで, こ の 子 どもの 感 想 がほと ん ど入 っ て い ない こ と に気 づ い た. 感 想 と 146.
(14) . 試験答案からみた 「小学国語」 の実際. して 「どん どんさ むく な っ て …」 ぐらい である‐ 作 文 の 題 はさ かなつ り である の に, つ り に行く の がう れ しい と かつ り がた の しい と いう こ と がわ か らな い 文 で ある と思う‐ ま た, つ り を して いる 時 の様 子を. もう少し加えるともっ とよい文になると思う‐ 私 は, この文 の 中 でさ かな の 大 き さ を 「ね この あ かち ゃ んよ りち ょっ と大 き い ぐら い」 と 説 明 して い る‐ た だ大き い と か小 さ い で はなく こ のよう な 表現 をす る こ と で, さ かな の 大 きさ をイメ ー ジ しや すく して いる と ころ がよ い と ころ だと 思った. このような表現の仕方をもっ と伸ばす必要があると感じた‐ も し私 がこ の 子 の 担 任 で あ れ ば次 の よう にこ と ばを か けた い. 「ま わり の み ん な の 様 子 がよ く 書 けて いま す‐ つ り は たの しか っ た です か‐ 魚 をつ っ て いる とき の様 子 も 書 いた ら も っ とよ く な りま す ね.」 と‐ 私 は, 作文 の 指 導 で は, 良い部 分を さ が し, ま ず ほめる こ と が必 要 だと 考 えて いる‐ そう で な け れ ば. 子どもの意欲を失わせるからであると思う‐ 子どもにかけるべき言葉 (もしくは赤ペンの文面) をこのよう に具体的に記したのはこの学生1人だけで あ っ た‐ そ の 意 味で, 創 意 や 積 極性 は大 い に称揚 で きる. だが, この 中 にはいく つ か矛 盾 が含ま れて いる‐ ま ず3 文 で で き て いる 「言 葉 か け」 (赤 ペ ン) の 中 味 が, ほめ こ と ばに な っ て いる か. 結 び の 段 落 か ら み る と, 本人 は ほめ て いる つ もり の よう だ が, 第2 文 の 疑 問 形は, そ れが書 けてい ない よ, と いう メ ッ セー ジ であ り, 第3 文 はも っ とあ らわ に 「そ こ を も っ とく わ しく 書き 足 しな さいJ という指導である‐ 子どもがこ の作 文 を 書 い た 「原 動 力」 は 「先生」 に伝 わ っ て い な い こ と を, 子 ども は敏感 に感 じる だろう. で は, こ の 子 ども が書 こう と した こ と は何 か. こ の 学 生 は, 第 3 段 落 で, 「この 子 ども は, つ り よ り も つ り へ 行 く 準 備 が 強く 印象 に残 っ て い て は じめ の 方 で 多く 書 い て いる と 考 える‐一 と 述 べ てい る‐ 書 こう と した こ と の 1 つ は, こ の 「準 備 して いる と き の 楽 しさ」 で ある‐ な ぜ, そ の 肝心 な点 を 「赤 ペ ン」 で受 けとめ な い の か. ま た, 「ね こ の 赤ち ゃ んよ り ち ょ っ と 大 き い ぐら い」 と いう 比 壕 表 現 に目 を留 め て いる が 大 事 な こ と は ,. この表現が文中で果たしている役割である‐ みんなで大さわぎして準備して出かけたのに, 運悪くさかなは あまり釣れなかっ たらしい‐ その落差を示して, 言わば笑い話的に話を収めているのである‐ (村井ははじ め 「お さ かな」 はこ の1 匹 しか釣 れな か っ た, と 早 呑 み 込 み した‐ しか しよく 読 んで みる と 数 は 書 か れて , い な い‐ こ れ だ け は ぜ ひ作者 本 人 にた ず ね てみ たい と ころ である.) 「さ かな つ れた かい」 と いう お かあ さ ん の 言葉 も, 半 ばか ら かい の言 葉 と して よく効 い て いる‐ 作 者 本 人 は, 釣 り の 間 中 たぶ ん母 親 と一 緒 に シー , トに座 っ て い た の だろう か ら, 「つ っ て いる と き の 様 子 を も っ と く わ しく一 と 言 わ れ ても そ こ は詳 しく 書 ,. きようがないのだ‐ 強いて求められれば, うろ覚えの記憶をたどって実感のこもらぬ言葉をひねりだすこと に なる‐ こ れ は決 して作 文 を伸 ばす 道 でな い こ と, こ れま での いく つ かの レポー トで 学生 たち の 指摘 してい る 通 り である‐ こ の 答 案の 「赤 ペ ン一 例 に触 発 さ れて, 私 も 採 点 しな がら対 案 を考え て み た 村 井 な らこ のよう に書く . . 「つ れたお さ かな は小 さく と も み んな で じ ゅ う ぶ んた の しん だこ と が伝 わ て きま す 出 か ける ま で の っ , ‐ , わく わく して いる 気 持ち が, じ ゅ ん びのよう す か らよ く わ かりま す さ い ごの 方 で は “ね この 赤ち ゃ んよ . り ち ょ っ と 大き い ぐらい” のお さ か な を か こ んで, み んな でわ ら っ てい る 声 がきこ えてく る よう な 気 が し ま す‐」. こ の 「笑い 声」 は “深読 み” かも しれな い. た だ こ の子 ども は ま ち がい なく 非 常 に 楽 しか っ た の であ る , . 帰 り は 「ね て か え っ た」 こ と にも, 家 族 に 身 をゆ だ ねて 安心 しき っ て いる 幸 せ が みな ぎっ て いる で はな い か . 「 そ の幸福 を この 作 文 か ら 分 けて も らい, 心 か ら共感 する の が教 師の仕 事 であ る. 作 文 を ほめる」 こ とよ り. も, むしろそのことの方が大事な仕事ではなかろうか. 147.
(15) . 村 井 万里子. W. 「国語科教育学」 における 「実践記録」 の意義 1. 「自分の講義 (授業) は何だったのか」 -実践記録からの出発 今年の夏の学会で, 現職職員として大学院で学ぶ学会員の発表の冒頭に次のような一節があった‐ 「 国語科の教育 内容を検討しよう とする動きが盛んであり, 文学教育においても, 『何を目標として』 『ど の よう な 内容 を 教育 内 容 と して』 『どの よう に教 える べ き か』 と い っ た 問 い が繰 り 返 し浮上 して いる. 実. 際に授業に日々 向かうためには, その時間なりの暫定的な解答を胸に抱いていなければ, 授業行為そのも の を行う こ とは で き な い‐ しか し, 教員 は 同 時 にもう ひとつ 大き な疑 問 に日々 ぶつ か っ て いる. そ れ は 『自 分 の行 っ た授 業 とは何 だ っ たの か』 と いう 問 い である‐ こ れ は, い わ ゆる 反省 と は違 っ て いる‐ 『何 を 目標 と して』 『どの よう な 内容 を 教育 内容 と して』 『どのよう に教 える べ き か』 と いう 問い か ら は, 『授 業 は目 的 に沿 っ て行 え た か』 『伝 えた い こ と を伝 え得 た か』『や り方 はあ れ でよ か っ た か』 とい っ た類 いの 問 い が浮 かん で来る‐ しか し, 『自分 の 行 っ た授 業 と は何 であ っ たの か』 と いう 問 い は, 子 ども と共 に生 き て いる この 教育 現 場 にいて, 『自 分 は授 業 にお い て 本当 は何 を して いる の だろう か』 と いう こ と を問う ている 問 いな の であ る‐ 教 師が. 本当に自分の実践を新しくしていきたいのなら, そして子 どもという他者と教育の場で触れ合っていきた い と願 っ ている の な ら, この 問 い か ら は 決 して逃 れる こ と は で き な い. この 問 い に答 える ため に は, 授 業 を 『読ま』 な けれ ばな らない. 即 ち, 授 業 の 有効 性 の採 点 や, 巧拙 と い っ た, 授 業 を読 む前 か ら予 め用 意 さ れて いる チ ェ ッ クリ ス トに従う の で はなく, 授 業 そ のも のの な か か. ら授業の価値を見いだしてく解釈作業を行わなければならないのである‐ それが授業批評が必要とされる 最も大きな要因である‐ そしてその授業批評においては, 批評の結果よりも, 授業批評をしようとする行 為にこそ意義がある」 (注1) 授 業 者 に と っ て, 「実 践 記 録 を かく」 と いう 仕 事 は, こ の 「自分 の 行 っ た授 業 と は何 であ っ た の か」 を 追. 求するための第一段階の仕事である‐ 国語教育学界では, しばしば 「単なる実践記録にす ぎない」 というこ ,そ れ は 「した こ と」 よ りも 「しよう と した こ と」 の記 述 に傾 きす と ばで この仕 事 が不 当 に駁 め ら れてき た.. ぎた実践記録の善かれ方そのものに原因があったのかもしれない. しかし, 実践者の主張のとおり, むしろ 「研 究」 は 「実践 記 録」 の考 察 か らこ そ 出 発 しな けれ ばな らな い‐ 研 究 で 開発さ れる べ き は, 「実践 記 録 , , の 読 み方」 であ る.. 今回手探りながら, 初めて 「実践記録」 を書いてみて, その難しさと意義を改めて実感した. 「答案」 に 「 焦点を当てたのは, 私の創意ではない. 私の学んできたすぐれた実践者の多くが, みな何らかの形で 学習 者 の 書い た もの」 か ら 出発 して いる こ と に啓発 さ れての こ とである (注 2)‐ 「学習 者 の 書 い たも の」 は未熟 ” ” な授業研究者にもとらえやすく, 読み切れなかったことも そ の こ と と して 事 実 と して残 り, 他 日の 再解. 釈の客観的資料とすることができる‐ すなわち 「実践記録」 が研究の対象になり得るかどうかは, 学習者の 実態が何らかのかたちで確実にそこに記されている かどうかに左右される‐ 「実践記録」 の書き手がこのこ とに自覚的になれば, 毎年生み出される実践記録は文字通り “宝の山” になる はずだ‐. 2. 今回の実践記録から得られた成果. 「 私 は, こ の実 践 記 録 を 書く こ と で, 3つ の成 果 を得 た‐ 1つ め は, 自 分の 学 んで き た 随意 選 題」 と いう. 方法を, 試験の方法と成果の中に再発見したこと. この記録をまとめるまで実はこのことに全く気づかず, た だ 「今年 の 答案 はお も しろ か っ た」 という 実感 だ け があ っ た. D 章 で 「問 題D」 の特 徴 を記 そう と してい る とき, ふ い に 「随意 選題」 のこ と ばが 浮 か び上 がり, う れ しく なる と 同 時 にな ぜ そ れま で気 づ かな か っ た 148.
(16) . 試験答案からみた 「小学国語一 の実際. の か とあ き れも した‐ 「随 意 選 題」 の 本 質 は 「意 に 随 っ て一 にあ る が, ま ず そ の 「意」 -意 志 ・ 意 欲 ・ 意 図 を も たせる こ と か ら 始め なく て は な らない‐ その 「意 (こころ)」 に随う こ と で は じめ て 主 体 に自 覚を促 し,. さらに, 「意 (こころ)」 を耕し育てることをねらう方法なのである. それは指導方法というよりも, 人間が 自分で自分を育てていく本性を発見していく営みである. わたしの授業は未熟だが, 試験に選択性を2重に 取り入れたことで自分でも気づかぬうちに 「随意選題」 の本領がちらりと姿をみせてくれたらしい‐ 2 つ め の 成 果 は, こ の 記 録 を書く た め に読 ん だ 『大 学 教授 法 入 門』 に 啓 発 さ れ, 「実 践 学」 の 「講 義」 の. 出発点を示唆されたことである‐ この本の終末部に近い第9章に次のような1節がある. (下線引用者) 「 いく つ かの 教育 目標 は 学 生 に 一 連 の 事物 を順序 だて て習 得 する こ と を 要求する こ のよう な場 合に は . , ,. 学習の順序は単純なものから複雑のものへと上がっていく方式ではなくて, 時系列的順序となる‐ たとえ ば科学的実験や調査におけるさまざまな段階がそれにあたる‐ こういう例の場合には, 学生が実際に遂行 する手順とは逆の順序で, さまざまな段階の操作を学習させるとたいへん効果的なことが多い‐ こう したや り 方 によ っ て, 学生 にそ れ ぞれの段 階 がな ぜこう いう 形態 にな っ て いる か はっ き り した概 念 を も たせ る こ と がで きる‐. こうして学生はまず最初に実験データの解釈のしかたを学 び, ついで検査のしかたを学び, それから検 査の方法を考察することを学び, そして仮説を立てることを学び最後にそれらの科学的問題の本質につい て 考 察す る, と いう 段 取り になる わ けである.(こ れ はい わ ば “逆 方 向連 鎖 法”ba ckword chaining で あ る)」. (注3) 「そ れ ぞ れの 段 階 がな ぜ こう いう 形態 にな っ て いる か は っ き り した 概 念 を も たせ る 「ま ず最 初 に実 験 デ 」 、 ー タ の 解 釈 の しか た を 学 び, つ い で 検 査 の しか た を 学 び, …」 の 一 節 に は は た と 膝 を打 つ 思い が した ‐ , 「実 践 記 録の 読 み 方 から 入る と いう の はこ の こ と だ っ たの だ と気 づ かさ れた こ の 本 で はわ かり や すく 」 . ,. 科学実験の技術の習得を例として説明がなされているが, これを国語科教育学にひきつけて 「逆連鎖法」 を 図示 して みよう‐. 〈大学での勉強〉 実践記録の解釈のしかた 0 [講義・演習]. 実践 (授業) の方法. 0. [模擬授業・教育実習]. 実践理念の学習 [卒業論文]. 〈教師の仕事> 実践記録を書く. 中. 実践 (授業) をする. や. 実践理念に基づき授業を構想する. いずれも, 始めの段階と最後の段 階とが密接な関わりをもつのが 「実践学」 の特徴である. 3つ め の成 果 は, 「児 童 文 読 み 取 りの ア ポリ ア」 を 書 い て いる と き に生 ま れた そ れ は 「9歳 の節 目 を . 」 ,. 迎える前の児童文の読み取りに, ゆるみ (あまさ?) のあ っ た こ と に気 づ かさ れた こ とであ る‐ そ れ は 「に い か っ ぷ 山 での さ かなつ り」(2 年 生 の 作 文) を視 写 して いる と き に起 こ っ た 前 半 分 の発 端 か ら 人名 の列 挙 ‐ ,. 準備にお菓子と持ち物を数え上 げる ところから, 着いてからのあっさりした書きぶり 「かえりに車でねて , いきま した」 の結 びま で, 子 ども に と っ て 余 分な 言 葉 は ひとつ も 書 か れてい な い と いう こ と に気 づ い たの , である. 視 写 しな がら子 ども の 心 に な っ た‐ 一 般 的 な1 編の 文 章 と して で はなく 書 き手 の心 を反 映 した , , 文 章 と して, のム ダの な さ である‐. 芦田が, 実践記録の中で 「2年生はこと に随意選題が面白く行われる」 と述べ 「平凡とか奇抜とかいう , 批評 的の 考 え が乏 しい から, 自 分の 面 白 か っ たこ と はす べ てよ い文題 である と思っ て いる」 と 指摘 して いる こ と, ま た, 青 山鷹 志 によ っ て 忠実に再現されたいくつかの授業記録の中で 児童文を全級に聴写させると ,. き, 「00くんの文をかく と, みんな00くんと同じ気持ち になるから面白い」 と子 ども に語っ ているのを 思 い 出 した‐ 149.
(17) . 村 井 万里子. 私は無意識のうちに 「2年生の子どもはま だ未熟だから, 何が余分なことで何が大事なことかわからない か ら, ア ン バ ラ ンス な文 章 を書く の だ」 と思 っ て い た‐ そう で はな い. 2 年 生 のあ の 大 人のま ね がたい 文 章 は, そ の とき の自 分の意 識 にあく ま で 忠 実 だか らこ そ, 生 じる の であ る‐ 私 の 「2 年 生 の 文章 の 読 み 方」 は 的確 でな か っ た. その 意 味で, 本稿 の 中で私 が 「ほめ て いる つ も り で ほめ て いな い」 と批 評 した学生 の レポー トと 同罪 である. こ の こ と に気 づ かせ てく れた こ の 学生 に は心 か ら. 感謝しなければならない‐ 「 今 回 の 「答案 分 析」 で は, 「3 ・ 4 年 生 の 変 化 につ い て の 解 釈 状 況」 と 「授 業」 お よ び 授 業 批評」 につ い ての 答案 に は ほと ん どふ れな か っ た. 機会 をみ て 考 察 したい.. 最後に, 貴重な実践成果を大学生のための教材として用いさせていただいた池嶋ちえ氏, 斉藤督氏, あわ せて, 日 ごろの研究会活動で有形無形に様々な支援をいただいている 旭川地方作文教育研究会の先生方に心 から感謝を申し上げる.. 199 5 8回全国大学国語教育学会 ( 注1, 佐々木秀穂;文学の授業構造の検討- 「故郷」 の場合, 第8 , 8, 3, ②会場, 研究発表資料 「 「 「 「 ことのわかる実践者 などから出発した 帳面 答案 作文 すなわち 注2, 子どもの書いたもの」 . 」 」 」 98年8月/尋常小学作文科 9号, 18 ○芦田恵之助;日用文の初歩教授法, 教育時論449号, 1897年10月/作文教授法に就いて, 教育時論47 98年, 教授法案, 京都府懸賞論文, 18 1年7月, ゴ ○山口喜一郎; アン氏の言語教授法によって二年間教授せし成績, 台湾教育会雑誌1号, 190 93 8年5月, 2年5月/国語筆記帖について, 同志同行7巻2号, 1 4号, 193 ○大村はま;綴方の中に表れた先生, 信濃教育会57 79年4月, ○向山洋一; (実践報告) 分析批評による文学教育と子どもの成長, 国語教育研究83集, 19 P 2 5 2 1 ~ 16 82 注3, ロンドン大学教育研究所;大学教授法入門-大学教育の原理と方法, 19 , (旭川 校助 教授). 150.
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