高等学校家庭科における「家族・家庭生活」及び「保育」教材の研究
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第 6 4巻 第 1号 J o u r n a lo fHokkaidoU n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n( E d u c a t i o n ) Vo . l6 4,No. l. 平 成 25{ I 8月 ご. August,2 0 1 3. 高等学校家庭科における「家族・家庭生活」及び「保育」教材の研究 池田有香・増淵哲子. 北海道教育大学札幌校家庭科教育学研究室. TeachingM a t e r i a l sf o r“F a m i l i e sandF a m i l yL i f e "and“C h i l d c a r e "o f S e n i o rHighS c h o o lHomeEconomicsE d u c a t i o n IKEDAYukaandMASUBUCHIS a t o k o Departmento fHomeEconomicsE d u c a t i o n,SapporoCampus,HokkaidoU n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n. 概要 高等学校家庭科の「家庭基礎」における「家族・家庭生活」と「保育」分野の内容を,「働くこと」の視 点から再構成したオリジナルテキストを作成しこれを活用した授業を実践した。本稿は,テキストと授業 の概要を示しながら,テキストを使用して学習した高校生の意識の変容や考察の内容を明らかにしテキス トの評価をおこなったものである。「家庭基礎」の検定教科書は,女性が働き続けることに対する記述が必 ずしも十分とはいえない。オリジナルテキストは,高校生の実態を考慮しながらこの点を改善したものであ り,授業によって一定の効果が得られたことが確認できた。. 問題の所在 著者の池田は,高等学校の家庭科教諭としての勤務歴が 1 9年になるが,前回改訂学習指導要領 ( 1 9 9 9改訂, 2003実施)以降,「家族・家庭生活」分野と「保育」分野の学習内容が生徒に伝わらない,現実のこととし. て理解されないという感覚を持つようになった。特に「男女共同参画」に関わる学習内容であり,その原因 は大きく 2つあると考えている。 1つは,生徒は学校卒業後まず働くはずだが,教科書の構成は,働いてい る人聞が結婚し家庭を築き子どもを育てるという人生におけるつながりが感じられないものとなっているこ と。もう 1つは,生徒の約 8割が幼少期に専業主婦の母親のもとで生活し,その大半の母親が子どもの成長 後にパートタイム労働に就いているという点である。生徒の育った家庭は「性別役割分業」が当然であり,「男 女共同参画」という言葉を現実のこととして受け入れにくい状況にある。 一方,近年は女性のみでなく若年男性の非正規雇用も増加し,「非婚化J, i未婚イヒ」が進行している。い まや「経済的自立」は男女ともに希望する人生を送るうえで不可欠な要素なのである。家族や子育てについ ての学習を,生徒自身の現実の人生とつなぐためには,「働くこと」と関連した視点が欠かせない。 そこで教科書の弱点を補うべく,「結婚・家族・子育て」と「働くこと」をつなぐオリジナルテキストを. 349.
(3) 池田有香・増淵哲f. 作成した。テキスト作成にあたり,池田の勤務する北海道立 E高等学校の生徒を対象に「男女の地位」や「働 くこと J, 1子育て J, 1性差」などについて内閣府などの調査と同項目の意識調査を実施して実態の把握に務 め,それらの結果をテキスト内容に反映させた。本論は,オリジナルテキストの概要を紹介しながら,テキ ストを使用した授業後の生徒の理解度や将来に対する意識の変容を明らかにし,「結婚・家族・子育て」と「働 くこと」をつなぐ家庭科学習の意義を提起することを目的としたものである。. 2. 1家庭基礎」の教科書の問題点. ( 1 ) 高等学校学習指導要領等の記述. はじめに,「家族・家庭生活J, 1保育 J, 1働くこと」が2009年 3月告示の学習指導要領と 2010年 1月発行 の学習指導要領解説でどのように扱われているのかを整理しておく。 ( 1 )人の一生と家族・家庭及び福祉」の中に「ア 「家庭基礎」では,「 2 内容」の 1. 家庭」と「イ. 青年期の自立と家族・. ( 1)人の一生と家族・家庭」の中に「イ 子どもの発達と保育」がある。「家庭総合」では 1. ( 2 ) 子どもや高齢者とのかかわりと福祉」の中に「ア 家族・家庭と社会 J, 1. 子どもの発達と保育・福祉」が. ある。そのため「家庭基礎」も「家庭総合」も,教科書では「家族・家庭生活 J,1保育」は別の章立てになっ ており,授業でも一般には別々に扱われる。 「教科の目標」については,「「人間の生涯にわたる発達と生活の営みを総合的にとらえ JJ の解説として, 「家庭や地域の生活は,個人,家族,社会及び環境との相互関係によって成り立っており,多面的,総合的 であるといえる。社会の変化に対応しつつ主体的に生活を営む力を身につけるためには,生活上の知識や技 術を断片的に習得させるだけでなく,生活資源や生活活動などを生涯の生活設計やキャリアプランニングな どと関連付けて取り扱うことが重要である。このような取扱いをすることによって,生徒自身が現在及び将 来の生活を自立的に営み,男女が共に協力して家庭を築いていくという実践的な態度を育てることができる」 と書かれている。 さらに Ir男女が協力して主体的に家庭や地域の生活を創造する能力と実践的な態度を育てる』とは,男 女共同参画社会の推進を踏まえて,これまで示した家族・家庭の意義,家族・家庭と社会とのかかわりにつ いて理解させるとともに,生活に必要な知識と技術の習得を通して,共に支え合う社会の一員として主体的 に行動する意思決定能力を身につけ,男女が協力して家庭を築いていくことを認識させ,家庭や地域の生活 を創造する能力と実践的な態度を育てることを示している。実践的な態度とは,学習で得たものを実際の生 活に活用する態度であり,生活の各場面で課題を見いだし,その解決を図りながら,家庭生活や地域の生活 の充実向上を果たす態度である。このように家庭科では,知識・技術の習得のみではなく,意思決定や問題 解決をも含めた能力の育成を目指している」とあり,男女が協力して家庭を築くことや,生活や生涯を総合 的にとらえ,主体的に行動することの重視が誕われている。. ( 2 ) 教科書構成の問題点 「家庭基礎」の検定教科書の構成は,学習指導要領の項目立てをそのまま踏襲し「人の一生と家族.家 庭及び干 おこなわれており,ほとんどの教科書で「人の一生と家族・家庭及び、福祉」の第 1章の最初に,「家族・家 庭生活」が置かれている。第 1章にある「職業生活」や「仕事J, 1働くこと」の記述が「結婚・子育て」の 記述につながる箇所は少なく, E高等学校で使用している教育図書の教科書は,現教科書,新学習指導要領 に対応した新教科書の双方が,「家族・家庭生活」の最後は「家族と法律」であり,次の「保育」とのつな がりが感じられにくい構成となっている。. 3 5 0.
(4) 高等学校家庭科における「家族・家庭生活」及び「保育」教材の研究. 「保育」は学習指導要領の標記では「子どもの発達と保育」となっており,内容の主たる部分は「保育」 よりも「子どもの発達」である。したがって,教科書の内容でも「保育」の前半は「子どもの育ち J,1 " 子 ど もの成長・発達」である。「保育」の前に位置付いている「家族・家庭生活」との関連はほとんどなく,保 育学習の目的として「いずれ親になる,大人として子どもとかかわる」というような一文が記載されるのみ である。生徒の現在にとっては,親になることは遠い話で,現実感には欠けてしまう。「保育」後半の「子 どもの生活と福祉」も同様の問題があるが,まだしも「子どものいる生活と福祉」という要素を強めた方が, 生徒自身が主体となり得,現実感をもちやすいと思われる。 現在の「家庭基礎」の教科書では「子ども」が突如として登場する感が否めず,その結果,生徒は「いき なり子どもの発達と言われでもまだ、先の話」だと思い,「性」や「妊娠・出産」が扱われないままでは特に 男子生徒にとっては「産むのも母乳をあげるのも女子だから男子はあまり関係ない」という意識になりやす い。「子育ての問題=母親の問題」という捉え方が残っている以上,男子が想定する子どもに対する父親の " 子 ど 関わり方は,「子どもの遊び相手J,1"息子とキャッチボール」や,「進路など重要な問題の相談相手 J,1 もの教育費を稼くコといったものになる。母親と同様に子どもの世話をする,というよりは,空いている時 間には手伝わなければならない,という程度のものである。女子生徒にとっても,「保育」の学習をスター トする時点で学習意欲や意識が高まっているわけではない。 高校に入学したばかりの生徒にとっては,就職や結婚も実感があまりもてない中,自分が新たにつくる家 庭生活とのつながりを欠いたまま子どもがいきなり出てきても,あくまでも遠い将来の話で今の自分とはつ ながらない。今とのつながりが薄いまま学習しでも,真剣に考えようという気持ちになりにくい,もしくは 考えたり想像することができないというなかでの一方的な授業になりかねない。 教科書の章構成もまた,親になるという人生の節目に合わせて区切られ,それ以前の学習内容と,それに 続く学習内容のつながりが弱くなっている。学校卒業後には働いているはずの女性の職業が,親になるとき には継続されていない(あるいは不明)という印象が強くなっている。ところで E高等学校の生徒は,「女 性の就労」に関して出産後に再就職を希望する者が多い。すなわち生徒は「保育」に入った時点で母親は働 いていないことを前提に授業を受けていると予想される。教科書の構成によっては,逆に男女共同参画を後 退させてしまうという問題を指摘しておきたい。 ( 3 ) 学習の重点をどこにおくべきか. 「子どもの成長・発達」を理解することは,学習指導要領の記述にあるような「子どもの発達のために親 や家族及び地域や社会の果たす役割について認識させる」うえで不必要とはいえないが,生徒の現状を考え ると,「子どもの発達を支えるために親の果たす役割や子育てを支援する環境が重要なのでよく理解して考 えましょう」と,親としての自覚の形成を促すのは現実的で、はない。 乳幼児の発達のしくみや流れに重点をおいた記述では,その乳幼児を育て発達を支えている親(=生徒) の姿や状況は見えにくい。子どもを育てながら働いている親の状況はわからない。これでは現実に対しての 主体性がもてない。より具体的に,現在の少子化問題,経済状況,虐待も含めた「親がかかえる課題」や「子 どもの育つ環境の課題」を現実感をもって生徒が認識し,その課題の解決を考え,支援策を知ることが重要 である。生徒たちが 1 0年後, 1 5年後に親になるときに,現在の課題がどうなっているのか,どう支援され解 決されていくべきなのか,どのような社会ならば親になりたいと思い,親をやっていけるのか,子どもを育 てていけるのか,を考えることが必要なのである。結婚するかどうか,親になるかどうかは選択の自由だが, 大人として少子化や虐待などの社会問題をどのように考え関わるか,という視点は必要であり,そういった 視点にも結びつけやすい。主眼を「子どもの成長・発達」ではなく「子育ての課題と解決・支援」にするこ とにより,「家族・家庭生活」で学習し考えた「就職 J,1 " 結 婚J,1"職業労働と家庭生活J,1"生活時間」など. 3 5 1.
(5) 池田有香・増淵哲f. の諸課題のもとで子どもを育てる生活がどうなるのか,を想定していくのである。教科書のなかで,「人の 生涯 j, i自分の一生」がひとつながりになっていることが必要だ、と思われる。 そして「働くこと」の現状がどうなっているのか,「働くこと」と「結婚」や「親になること=子育て」 はどう関わっているのか,どうつながっているのか,どのような課題があるのか,それに対する支援はどう なっているのか,といったことを考えられるようにする必要がある。 以上の問題点を押さえつつ,生徒が「性別役割分業意識」や「職業観 j, i女性の就労観」を再考し,「働 くこと」への意識を高め,男性の家事育児分担の必要性と重要性を認識できることを意図したテキスト「ラ イフプランを考えよう. 3. 結婚・家族・子育て・仕事 」を作成した。. r 結婚」 ・「家族・子育て」・「働くこと」を総合したテキストの概要. テキストの概要と授業実施時数を表 1に示す。本テキストは,「第 1章 結 婚j,i第 2章 家 族 ・ 子 育 て j, 「 第 3章. 働く」の 3章で構成されている。各種調査資料のほかに,自分の考えを記入する欄,教科書の内. 容についてまとめる欄があり,ワークシートの形態になっている。 掲載資料は,内閣府男 k共同参画局の調査や,内閣府調査と同項目で実施した E高等学校生徒への調査結 果,新聞記事の抜粋が中心であり,データとして提示する内容もあれば,考えるヒントのための内容もある。 また,観点別評価の「思考・判断」や「表現」に該当する,生徒が自分で考え,考えたことや感想を書く 力をつけることも重視したため,関連する諸問題についての自分の考察や,その理由を書く欄も多い。 テキストは,まず「結婚」から始まり,次に,結婚後の「家族・子育て」の学習に続く。生徒にとっての 現在の家庭・家族についてもふれるが,視点としては生徒がこれからつくる家庭・家族を重視している。そ して働きながら子育てをする,という視点を核にして,乳幼児のいる生活とは,おむつ吸水実験と離乳食実 習,男性の育児休業,子育て支援等について学習し,最後に「働く」を前面に据えて,身近な人への「仕事 インタビュー j,女性の就労問題,ワーク・ライフ・バランス等を学習する内容となっている。各章の最後 に「学習して考えたことや疑問に思ったこと」を記入する欄を設けており,学習当初の考えは最終的にどう なったか,. 1 可が印象に残ったか,さらにどのようなことを知りたいと思ったか,などがわかるようになって. いる。授業ではこのテキストの他に,教育図書の検定教科書「新家庭基礎 ( 2 0 1 2年発行)と資料集「生活学 Navi 資料集+成分表 j (実教出版. ともに生きる. くらしをつくる」. 2012年発行)を必要に応じて使用し. た 。. 4 授業の実施と実践検討 ( 1 ) 授業の実施 作成したテキストを使用し, 2012年 4月から 9月まで,北海道立 E高等学校 1年生 7クラスの計 268名(男 子 149名,女子 119名)を対象に,池田が授業を実施した。なお「家庭基礎」は 1年生で週 2時間おこなうが, これらは連続の時間枠ではない。 生徒は概ね授業に真面目に取り組み,テキストのワークシートには自分の考察や感想をきちんと記入して いた。. ( 2 ) 実践結果の検討 ここでは男女共同参画の視点から,「①生徒の性別役割分業意識 j,i②「働くこと」をどう考えるか j,i③ 男性の「家事育児責任」をどう考えるか」について生徒の意識のありょうを検討する。具体的には,次の方. 352.
(6) 高等学校家庭科における「家族・家庭生活」及び「保育」教材の研究. 法によった 0 ・テキストを使用した授業終了後に生徒からテキストを回収し,テキストの中に設けた記述欄の記述内容 を抽出,それらを比較検討した。なお,これらの記述は授業を受けながら生徒が考察した結果や感想を あらわしたものであり,性別役割分業意識や女性の就労,家事分担などについて,学習時,あるいは学 習後の意識として検討対象とした。 表 1 テキスト「ライフプランを考えよう 2 0 1 2 実 施 H程 タイトル・内容(項目). ページ(各章毎). 月. 時数. 4. 0 . 5 第 1章 結 婚 「結婚」についての考え方 1. 結婚しない理由 未婚率. 結婚・家族・子育て・仕事 」の概要 口的・意図. 「結婚」に対する近年の意識の変化を知り, 1 ・2 自分の結婚観を考える。. 「結婚の利点」. 結婚のために必要なこと. まとめ(感想) 「結婚」の現状を知り,経済的な問題との 3 .4 関連を考察する。また,結婚にあたり必要 平 均 初 婚 年 齢 晩 婚 化 と 婚 姻 率 の 低 下 年 収 と の 関 連 等 な施策が欧米とは異なることを理解する。 資料 1~4. 1. 第 2章家族・子育て. 「家族とは J '印象に残っている家族J '家族の形態」. 1 .5 5. 6. 3. 家族の問題と法律・制度(民法他) 憲法・民法抜粋 スウェーデンの「婚姻法」・ 「サムボ法」. 家族の問題や日常生活と関連する法律や制 度を理解する。また,現状と法律が希離し ていなし、か考える。他│玉│の制度や日本の民 日本女性の地位等 資料 1~ 3 法の歴史的背景を理解する。 4~7. 法律資料 1~4. 4. 「子どもの成長・発達 J '胎児を取り巻く危険要凶」 「リプロダクテイブヘルス・ライツ」等 資料 5 ・6 「おむつはいつ取り替える?J (おむつの吸水実験) 実験 「離乳食実科 J (固さ・味付けなどの変化と市販品の利用) 実 子 守. 4. 胎児の健康にも配慮する必要性や,乳幼児 の成長・発達について理解する。実験・実 習により適切な育児や子育ての忙しさなど についても考察する。. 「児童虐待」と「了ー育て支援」 1 1 「児童虐待」の現状を知り,虐待の背景か 児童虐待 イクメン・イクジイ 男 性 の 育 児 休 業 子 育 て 支 援 ら現代の子育て事情を考える。虐待に限ら ず,社会的な子育て支援の必要性を理解し 「男性にとっての男女共同参画」に関する意識調査報告書 資料 7~16 望ましい支援について考察する。 子どもと貧困 子どもの向殺世界の子どもたち 「子どもが育つ魔法の言葉」を読んで. 1 2 親のあり方について考える。. 「集団保育」と「家庭保育」. 1 3 集団保育の志義と現状を理解する。. 1. ビデオ視聴「さくらんぼ坊や」. 1 4 幼児の成長・発達に何が重要か考える。. 1. ' 1 0 代の後輩におくる僕の性教育 J (北村邦夫著)を読んで まとめ(感想). 性的自立と親になることの関連を考える。 1 5 家族観,子ととも観を再考する。. 2. 1. 第 3章 働 く. 1 ・2 3 資料 4. ' l f :i 舌を支える 2つの労働 J (家事労働と職業労働). 職業労働と家事労働のおもな担い手と男 5 女の家庭内での地位」の関連を理解し,向 資料 1 分はどのようにしたいのかを考える。 6 家族の生活時間の問題と解決を考える。. 1. 「女性と職業労働 J 'M字型就労」. 1. 「パートタイム労働」. 1. 1 .5 0 . 5 計2 8. 現段階での自分の「職業観」を考える。「働 くこと」に閲する意識調査や,身近な人へ のインタビューを通し「働くこと」を考え る。現代の若者の状況と問題点,背景,望 ましい社会のあり方を考える。. 「働く」ということ(重要度・働き方) 「仕事インタビュー」 「仕事インタビ、ユー」から回答を抜粋 「若者の 4 犬況J (フリーター・ニートなど) "性別役割分業 J '家事労働の社会化と機械化」 家庭内での男女の地位 ' l f :i 舌時間調査J (課題). 9. 8 ・9 子どもと経済的な問題の関連について理解 資料 4 する。乳幼児のいる牛一活のリズムや,親が 1 0 しなければならないことを考える。. 「理想の子ども数J '理想の子ども数をもたない理由」 「子どもの学習費」 「乳幼児のいる生活」. 1. 8. 「家庭の役割 J '家族・家庭の問題」 3 「家庭の機能」を理解する。現代家族にど 課題「家族・家庭で起きている問題 J (新聞記事からレポート) のような問題が起きているか考える。. 1. 1. 7. 「家族」の定義や家族形態の多様化につい 1 .2 て理解する。. 他国の「パートタイム勤務」. 「ワーク・ライフ .J¥ランス」 他国の育児政策 最低賃金労働契約法労働問題就職支援等. 7~9. 女性の労働の現状を理解しその背景や,こ れからはどうあるべきかを考える。. 1O ~13. パートタイムの現状と問題点を理解する。. 14~17. 仕事と家庭生活と地域・個人の生活の望ま しいあり方を考える。他国の政策や労働問 題にも口を向け,広い視野で考える。. 資料 2~5. ライフプランの作成. 1 8 学習内容を踏まえ,生活設計を行う。. まとめ(1惑想). 1 9 これまでの学宵内容のつながりや,向分が どうすべきかなどについて考察する。. 3 5 3.
(7) 池田有香・増淵哲f. -抽出した記述内容は,質問項目への回答形式になっているものと,自由記述形式になっているものがあ る。前者については,次の通りに扱った. 0. ・2012 年のテキストを使用した生徒の意識と,従来の教科書のみを使用した生徒の意識の比較をおこなっ. た。比較したのは E 高等学校の 2009年度 2年生と 2010年度 1年生の意識調査結果である。 2009年度と 2010年度は検定教科書の内容をほぼ踏襲した授業を行い,関連分野の授業がすべて終了した時点で意識. 調査を実施している。調査項目は, 2012年のテキストに掲載したものとほぼ同様である。 ①. 生徒の性別役割分業意識について ア性別役割分業に対する考え方 表 2は,いわゆる「男は外,女は内」に対する考え方を尋ねたものである。比較対象は 2009年度の 2年生. である。. 表 2 性別役割分業意識(回答数:男子 1 0 9名 女 子 1 1 1名 計 2 2 0名) 下段(. )内は 2 0 0 9 { 1度. 21 '一生(男子 1 2 5名 女 子 1 3 0 名 計2 5 5名). 性別. 賛成. どちらかと いえば賛成. どちらかと いえば反対. 反対. その他. わからない. 男 子. 4 . 6 ( 9 . 6 ). 3 3 . 9 ( 4 0 . 0 ). 3l .2 ( 1 9 . 2 ). 1 4 . 7 ( 1 1 . 2 ). 1 0 . 1. 5 . 5 ( 2 0 . 0 ). 1 0 0 . 0. 女子. l .8 ( 5 . 4 ). 3 8 . 7 ( 3 3 . 8 ). 3 2. 4 ( 2 7 . 7 ). 1 7 . 1 ( 2 0 . 8 ). 2 . 7. 7 . 2 ( 1 2 . 3 ). 1 0 0 . 0. 全体. 3 . 2. 4 3 6.. 3l .8. 1 5 . 9. 6 . 4. 6 . 4. 1 0 0 . 0. ( % ). 計. 2009年度 2年生に意識調査を実施した際は,「その他」がなかったこともあり,「わからない」という回答. が多くなっている。生徒の実態から判断すると「わからない」には,「現在の段階では本当にどちらがいい のかわからない」という生徒のほか,「賛成だが,世の中の流れや建前を考えると,大っぴらに賛成と表明 したくない」という生徒が含まれる可能性が高いため,「隠れた賛成派」が「わからない」と回答した生徒 のうち相当数はいたと思われる。このときの調査では,「隠れた賛成派」を除いても男子では「賛成派」の 方が多かった。今回の調査の「その他」の理由は「人それぞれJ, Iどちらかが仕事,どちらかが家事の方が 良いと思うが,性別で決めなくてもよい」というものが多かった。これも,分業自体は肯定しているため, 結果として男女どちらが家事育児を行うケースが多くなるかというと現状では女性であり,「賛成派」に近 い生徒が含まれていると考えられる。そもそも,今回の調査では,質問の際に,「自分はそのような生活ス タイルを送りたいと思うならばそれは『賛成」になる」という説明をしているため,「性別で決めなくて良い」 や「人それぞれ」という回答は質問に対して正しく答えていることにはならない。一般論としてではなく, 自分自身の生活の仕方としてどう思うか,ということで答える質問なので,そのような答え方ができていな いということは,「賛成派」である可能性が高い。 「賛成」と「どちらかといえば賛成」を合わせた「賛成派」は, 2009年度に比べ,男子は 11.1%減少して いる。女子は「賛成」が減り,その分「どちらかといえば賛成」が増え,結果として「賛成派」が 1.3%増 ということになる。全体では約 40%が賛成と回答している。 「反対」と「どちらかといえば反対」を合わせた「反対派」は,男子は 45.9%であり, 2009年度に比べ 15.5% 増加している。女子は「どちらかといえば反対」が増え,「反対」が減っているため, 2009年度より合計で 1 % 増加しただけだが,「反対派」が49.5%で男子より高い割合である。「その他」や「わからない」と回答した 生徒もいるが,「賛成」か「反対」では「反対」する生徒の方が多く, 2009年度 2年生との比較では「反対」 する生徒が男子で増加したといえる。生徒の傾向としては,はっきりと「賛成」や「反対」を表明する生徒. 3 5 4.
(8) 高等学校家庭科における「家族・家庭生活」及び「保育」教材の研究. は少なく,「どちらかといえば」がついている言葉の方を選択する傾向が見られる。 次は「性別役割分業意識」についての考え方がより具体的に表われる「女性の就労」と「家事育児分担」 でどのようになったかを比較する。ただし「性別役割分業意識」については 2010年度 1年生の調査では質問 項目にいれなかったため, 2009年度 2年生の調査結果と比較したが,「女性の就労」と「家事育児分担」は 2010 年度 1年生の調査結果と比較する。 イ 女性の就労に対する考え方 女性が職業をもつこと,あるいは継続していくことについての回答を表 3に示す。なお比較対象の 2010年 度調査では,「理想、のあり方」と「現実はどうなりそうか」を質問している。. 表 3 女件ーの就労について(回答数:男子 1 0 9名 女子 1 1 1名 計 2 2 0名) 中段( )2 0 1 0年理想,卜段( ) 2 0 1 0 年現実(男子 1 7 2名 女 子 1 3 6名 計3 0 8名). ( % ). ( ア ) 女性は職 ( ウ ) 子どもが ( エ ) 子どもが ( オ ) 子どもが (カ)その他・ イ ) 結婚する (. 性別. 業をもたない までは職業を できるまでは できてもず、つ できたら職業 わからない 方がよい もつ方がよい 職業をもっ方 と職業を続け をやめ,大き がよい る方がよい くなったら再 ぴ職業をもっ 方がよい. 計. 男子 2012 理想 2 0 1 0 2 0 1 0 現実. 2 . 8 ( 2 . 3 ) ( 1 . 2 ). 1 3 . 8 ( 9 . 9 ) ( 5 . 8 ). 1 4 . 7 4 ) ( 1 3. ( 13. 4 ). 1 7 . 4 ( 1 6 . 3 ) ( 16 . 9 ). 4 3 . 1 ( 3 3 . 1 ) ( 2 3 . 8 ). 8 . 3 ( 2 5 . 0 ) ( 3 9 . 0 ). 1 0 0 . 0. 女子 2012 2 0 1 0理想 2 0 1 0現実. 4 . 5 ( 9 . 6 ) ( 5 . 9 ). 1 0 . 8 ( 1 6 . 3 ) ( 1 1 . 8 ). 3 6 . 9 ( 2 3 . 5 ) ) ( 3 3 .1. 4 5 . 9 ( 4 0 . 4 ) ( 3 7 . 5 ). 1 .8 ( 1 1 . 0 ) (9 . 6 ). 1 0 0 . 0. ( 1 . 5 ) ( 2 . 2 ). 全体2012 理想 2 0 1 0 2 0 1 0 現実. 1 .4 ( 2 . 0 ) ( 1 . 6 ). 9 . 1 ( 9 . 7 ) ( 5 . 8 ). 1 2 . 7 ( 1 3 . 6 ) ( 12 . 7 ). 2 7 . 3 ( 1 9 . 5 ) ( 2 4 . 0 ). 4 4 . 5 4 ) ( 3 6. ( 2 9 . 9 ). 5 . 0 ( 1 8 . 8 ) ( 2 6 . 0 ). 1 0 0 . 0. 。. まず 2010年度 1年生との違いは, I ( カ)わからない」を選択した生徒が非常に少ないことである。性別役割 分業意識を一番持っていないと思われる I ( エ)継続型」は,男女ともに 2010年度 1年生の数字を上回っている o. k子では,. I ( ア)持たない j, I ( イ)結婚まで、 j, I ( ウ)出産まで、」という「専業主婦志向型」も減少している。男子. では,「専業主婦希望」が増えているが, 2010年度 1年生の調査では,男子は「理想」でも 25%,1 現実」で も39%が I ( カ)わからない」を選択しているため,専業主婦を望む生徒の割合は,実際のところあまり変わら ( オ)再就職型」を妻に望む生徒が43.1%と高く,これを選択した理由は 2010年 ない可能性もある。男子では I. 度 1年生の調査結果と同じく「子どものため j, 1育児は大変だから j, 1子どもが成長したらお金がかかるか らj,1子どもが成長したら時聞ができるから」が大半であった。ただ男子の回答には,「自分一人の収入でやっ ていけるのが理想だけど」という記述も複数見られた。 女子は I ( オ)再就職型」も増加しており,一番多い回答はこのタイプであるが, I ( カ)わからない」と「専業 主婦志向」が減少したことから,増加するのは当然でもあり,特に 12010理想」と比較すると, I ( エ)継続型」 より増加割合は少ない。 I ( オ)再就職型」の想定がパートである場合,「女性は仕事も家事育児も」という「二重役割」を負うこと. が当然視される。生徒の実体験と合わせると,暗黙のうちに「子育て=母」となっている。女子生徒は,「家 事や育児を夫にも手伝ってもらいたいが,おもにやらなければならないのは女性である自分だろう」と思っ ( オ)再就 ており,「フルタイム勤務での二重役割は厳しいが,パートなら可能かもしれない」と考えている。 I. 職型」を選択した全ての生徒に当てはまる訳ではないが,実際には性別役割分業状態をある程度肯定してお り,さらに経済面から考え,女性は仕事もした方がいいと思っている層が少なからずいる。これは I ( エ)継続. 3 5 5.
(9) 池田有香・増淵哲f. 型」であっても同様の傾向があると予想される。このことは,次の「家事育児分担」から推測できる。 しかし,「わからない」と回答する生徒が減少したことは,生徒がこういったことについて,授業を通し てよく考えてきた結果であるといえよう。. ウ 家事育児分担に対する考え方 以 下 の 表 4から表 1 3に示す計 1 0項目の日常的な家事育児の仕事を,それぞれおもに誰がするべきと思うか を 質 問 し た 。 な お 表 の ( )内の数字は全て 2010年 度 1年生の調査結果である。. ( % ). 表 4 掃除をする(回答数:男子 1 1 1名 女 子 1 0 6名 計2 1 7名) 性別. おもに犬. おもに妻. 同じくらい. その他. 計. 男. 子. 4 . 5 ( 1 1 .1 ). 4 0 . 5 ( 4 2. 4 ). 5 2 . 3 ( 3 8 . 4 ). 2 . 7 ( 8 . 1 ). 1 0 0 . 0. k. 壬. 0 . 0 ( 1 2 . 5 ). 5 0 . 0 ( 3 4 . 6 ). 4 9 . 1 ( 4 3 . 4 ). 0 . 9 ( 9 . 5 ). 1 0 0 . 0. 全体. 2 . 3 ( 1 1 . 7 ). 4 5 . 2 ( 3 9 . 0 ). 5 0 . 7 ( 4 0 . 6 ). 1 .8 ( 8 . 7 ). 1 0 0 . 0. 表 5 食事をつくる. ( % ). (回答数:男子 1 1 0 名 女 子1 0 6名 計2 1 6名). おもに夫. おもに妻. │司じくらい. その他. 計. 0 . 9 ( 0 . 0 ). 7 3 . 6 ( 7 0 . 9 ). 2 5 . 5( 2 4 .4 ). 0 . 0 ( 4 . 7 ). 1 0 0 . 0. 0 . 0 ( 0 . 0 ). 8 3 . 0 ( 7 2 . 8 ). 1 6 . 0 ( 2 4 . 3 ). 0 . 9 ( 2 . 9 ). 1 0 0 . 0. 0 . 5 ( 0 . 0 ). .8 ) 7 8 . 2 ( 71. 2 0 . 8( 2 4 .4 ). 0 . 5 ( 3 . 8 ). 1 0 0 . 0. 表 6 食後に食器を洗う(回答数:男子 1 1 0名 女 子 1 0 6名. ( % ). 計2 1 6名). おもに夫. おもに妻. 同じくらい. その他. 計. 1 9 . 1( 1 3 . 4 ). 31 .8 ( 3 0 . 8 ). 4 6 . 4 ( 4 5 . 4 ). 2 . 7( 10 . 4 ). 1 0 0 . 0. 1 0 . 4 ( 2 2 . 1 ). 3 4 . 9( 2 7 . 9 ). 5 3 . 8 ( 3 8 . 2 ). 0 . 9( 1 1 .8 ). 1 0 0 . 0. 1 4 . 8 ( 1 7 . 2 ). 3 3 . 3 ( 2 9 . 6 ). 5 0 . 0 ( 4 2 . 2 ). 1 .9( 1 1 .0 ). 1 0 0 . 0. ( % ). 表 7 洗濯をする(回答数:男子 1 0 8 名 女 子1 0 6名 計2 1 4名) おもに夫. おもに妻. 同じくらい. その他. 計. 1 1 . 1( 5 . 2 ). 4 8 . 1 ( 5 7 . 0 ). 3 8 . 9 ( 2 7 . 9 ). 1 .9 ( 9 . 9 ). 1 0 0 . 0. 1 0 . 4 ( 2 . 9 ). 4 7 . 2 ( 5 9 . 6 ). 4 2 . 5( 2 7 . 9 ). 0 . 0 ( 9 . 6 ). 1 0 0 . 0. 1 0 . 7 ( 4 . 2 ). ) 4 7 . 7 ( 5 8 .1. 4 0 . 7 ( 2 7 . 9 ). 0 . 9 ( 9 . 8 ). 1 0 0 . 0. 表 8 赤ちゃんのミルクや離乳食を準備して与える(回答数:男子 1 0 9名 久 ー 子1 0 6名 計2 1 5名) おもに夫. おもに妻. │司じくらい. その他. 計. 0 . 9 ( 2 . 3 ). 5 8 . 7 ( 5 0 . 0 ). 3 9 . 4 ( 4 3 . 6 ). 1 .0 ( 4 . 1 ). 1 0 0 . 0. 2 . 2 ( 2 . 9 ). 6 0 . 3 ( 5 9 . 6 ). 3 5 . 3( 2 7 . 9 ). 2 . 2 ( 9 . 6 ). 1 0 0 . 0. 1 .6 ( 2 . 3 ). 5 9 . 5 ( 5 4 . 6 ). 3 7 . 4 ( 3 9 . 9 ). 1 .5 ( 3 . 2 ). 1 0 0 . 0. 表 9 赤ちゃんのオムツを取り替える(回答数:男子 1 0 9名. 3 5 6. おもに犬. おもに妻. 同じくらい. 6 . 4 (4 .1 ). 2 2 . 9 ( 2 6 . 2 ). 6 . 6( 1 2 . 5 ). 2 9 . 2 ( 2 3 . 5 ). 6 . 5 (7 . 8 ). 2 6 . 0 ( 2 5 . 0 ). ( % ). ( % ). 久 ー 子1 0 6名 計 2 1 5名) その他. 計. 6 8 . 8 ( 6 5 . 1 ). 1 .8 ( 4 . 6 ). 1 0 0 . 0. 6 4 . 2( 6 0 . 3 ). 0 . 0 ( 3 . 7 ). 1 0 0 . 0. 6 6 . 5( 6 3 . 0 ). 0 . 9 ( 4 . 2 ). 1 0 0 . 0.
(10) 高等学校家庭科における「家族・家庭生活」及び「保育」教材の研究 表1 0 子どもの遊び相手をする(回答数:男子 1 0 9名. 女子 1 0 6名. ( % ). 計2 1 5名). おもに夫. おもに妻. 同じくらい. その他. 4 3 . 1( 4 0 . 1 ). 4 . 6 (l .2 ). .4 ( 5 0 . 6 ) 5l. 0 . 9 ( 8 . 1 ). 2l .7 ( 3 3 . 1 ). 2 . 8 (l .5 ). 7 5 . 5 ( 5 8 . 8 ). 0 . 0 ( 6 . 6 ). 1 0 0 . 0. 3 2 . 6 ( 3 7 . 0 ). 3 . 7 (l .3 ). 6 3 . 3 ( 5 4 . 2 ). 0 . 5 ( 7 . 5 ). 1 0 0 . 0. 0 9名 表1 1 子どものしつけをする(回答数:男子 1. 計. 1 0 0 . 0. ( % ). 1 5名) 女子 1 0 6名 計 2. おもに犬. おもに妻. 同じくらい. 9 . 2 ( 1 9 . 2 ). 1 1 . 9 ( 7 . 6 ). 7 8 . 0 ( 6 7 . 4 ). 0 . 9 ( 5 . 8 ). 1 0 0 . 0. l .9 ( 1l .0 ). 6 . 6 ( 9 . 6 ). 9l .5 ( 7 6 . 5 ). 0 . 0 ( 2 . 9 ). 1 0 0 . 0. 5 . 6 ( 1 5 . 6 ). 9 . 3 ( 8 . 4 ). 8 4 . 7 ( 7l .4 ). 0 . 5 ( 4 . 6 ). 1 0 0 . 0. 表1 2 子どもに勉強を教える(回答数:男子 1 1 0 名. その他. 女子 1 0 6名. 計. ( % ). 計2 1 6名). おもに夫. おもに妻. │司じくらい. その他. 計. 1 5 . 5 ( 1 6 . 9 ). 8 . 2 ( 5 . 2 ). 7 0 . 0 ( 6 2 . 2 ). 6 . 4( 15 . 7 ). 1 0 0 . 0. 8 . 5 ( 1 4 . 0 ). 3 . 8 ( 5 . 9 ). 8 6 . 8( 6 8 .4 ). 0 . 9 ( 1 1 . 7 ). 1 0 0 . 0. 1 2 . 0 ( 1 5 . 6 ). 6 . 0 ( 5 . 5 ). 7 8 . 2 ( 6 4 . 9 ). 14 . 0 ) 3 . 7(. 1 0 0 . 0. 表1 3 子どもの進路などの相談にのる(回答数:男子 1 1 0名. 女子 1 0 6名. ( % ). 計2 1 6名). 性別. おもに夫. おもに妻. 同じくらい. その他. 男 子 女子. 6 . 9 ( 1 2 . 2 ). 3 . 6 ( 4 . 1 ). 8 4 . 5 ( 7 4 . 4 ). 5 . 5 ( 9 . 3 ). 1 0 0 . 0. l .9 (4 . 4 ). 5 . 7 ( 3 . 7 ). 9 2 . 5 ( 8 2 . 4 ). 0 . 0 ( 9 . 5 ). 1 0 0 . 0. 全体. 4 . 2 (8 . 8 ). 4 . 6 ( 3 . 9 ). 8 8 . 4 ( 7 7 . 9 ). 2 . 8 ( 9 . 4 ). 1 0 0 . 0. 計. 女子は「洗濯をする」を除く全ての項目で「おもに夫」が減っている。「子どものしつけをする」は,「お もに夫」が男女とも減り,「同じくらい」が増加している。授業時の生徒からは,男子は建前で「同じくらい」 を選択し,!;;.子は男子に家事育児を期待しないという印象をうけた。仮に性別役割分業に反対で,自分はそ のような生活スタイルにしないと思っているのであれば,家事育児分担は「同じくらい」とするか,ある項 目は「おもに妻」であっても,別の項目は「おもに夫」とし,バランスをとるようにするべきであろう。し かし性別役割分業に反対する生徒の割合から見ても,その結果が反映されているとはいえない。「気持ち のうえでは性別役割分業に反対だが,現実を考えるとそうはできない,もしくは,そうはならない」と判断 していることが推測される。または,男子は女子(妻)に仕事を辞めてくれとは言いにくいし,働いて収入 を得て家計を補助してくれればありがたいが,だからといって自分も家事育児を女性並みにしたくはないと 思っていると考えられる。 授業で「育児休業制度」を扱った際,女性でも実際に「働く→妊娠・出産→育児休業→職場復帰」という ケースは出産する女性全体の約 2割であり,出産前に仕事を辞めたり,育児休業取得後退職する人の方が多 いことを学習している。また,男性の育児休業取得割合は非常に低いことや,なぜ取得しにくいかについて も学習している。そういったことが影響し,男性が家事育児をおもに行うことは難しいと考えた可能性もある。 工. 「性別役割分業意識」と「家事育児分担」の考え方の矛盾について. 「性別役割分業」には約半数が反対しているのに,なぜ「家事育児分担」では前述のように矛盾する結果 となったのか,進度の速いクラス(男 23名 , ! ; ; . 1 5名)の生徒に,このことを考える時間を設けた。今回の調 査結果のうち,「性別役割分業意識」と「家事育児分担」の結果をグラフで示し,なぜこのように矛盾が生. 3 5 7.
(11) 池田有香・増淵哲f. じたのか自分たち自身で理由を考えるという形でおこなった。理由は大きく分けると下記のように大別され た(複数回答あり)。 「男性は仕事,女性は家事育児」という考え方が残っているから。(男子 4名,女子 3名) ・現実的に夫は仕事をしているため家事育児はできないから。(男子 6名) ・男性は家事ができないため結局女性任せになるから。(男子 2名,女子 3名) -親の様子や世の中の傾向を見て育ちそれが当然だと思っているから。(男子 3名,女子 4名) 「性別役割分業」に反対というのはあくまで理想だから。(男子 5名,女子 2名) ・その他(男子 4名,女子 3名) 生徒自身の考察によれば,性別役割分業に「反対」とした生徒のなかには,理想、や建前で「反対」と回答 した生徒も多数いたということになる。現実を考えたときに性別役割分業や女性の二重役割を肯定した回答 になるのは,いかに性別役割分業意識が強固に存在しているかを物語るものであろう。また近年の就職難の 状況で,就職できない,経済的自立は難しいといった理由により,女性の専業主婦志向が増加しているとも いわれる。性別役割分業に賛成する女子生徒の一部にも,こうし社会状況が反映しているとみることができ るだろう。 ②. 「働くこと」をどう考えるか 授業では,特に女子生徒の「働く意識の向上 J,1"経済的自立の重要性の理解」を目指した。学習後の生徒. の感想、の一部を記載する(本稿に掲載した生徒の感想、は,すべて原文のままである)。. -今,若者の就識不が低いということは知っていたが, どのくらい低いとか詳しい原因を知らなかった。私が思っている以 上にひどい現状だと分かった。それは,記事にあった「今春大卒25% 仕事安定せず」の見出しの記事からで,私は大学を 卒業したら試験受けてめでたく仕事に就いて…なんて考えていた荷分の考えが日一いんだと分かったし,その25%にならな をするべきなのか考えることができた。私が患ったできる事は,雇用や働くことに関する法律や企業 いためには自分がやi. _ j が求める人材がどんな人なのかリサーチしたりすることならできると思う。また資搭をとったり今の内から「絶対なる ! という目標をたてることも大切だと思う。r:働く」を通して育児休暇の申請の仕方や有期契約の申し込みについて具体的 に知りたいと思った。もし将来結婚をして子供ができたらそれは仕事だけでなく家庭の事もきちんとしたいという考え方 に学習して変わった。そのために育児について相談できる施設を知っておいたり,知識などきちんとつけておくことが大 事なんだと分かったので私も「ライフ・ワーク・バランスj をできるようにしたい。戦場でも不当な扱いや理不尽なこと をうけないように法律もわかっておきたい。(女子) ・勉強する前までは「働く」ということをもっとカンタンに考えていたけれど,子育てのことだ、ったり,一度,会社を辞め / jのようにあった。子育てのために,育児休業など てしまうと,再就殺するのが太変など,考えたこともなかった問題がj. をとると,会社の雰囲気が変わってしまったりと,よくないこともたくさんあって,会社を選ぶなら,積極的に育児のこ とをサポートしてくれたりするようなところに就職したいと思った。子供を産むタイミングなども重要で、,早すぎず,還 すぎないような時に産んだほうがいいということも学んで, どのくらいの年齢で一人目を産んでいるのか,結婚後, どれ くらいで子供を産んでいるのか,そういうことも資料などをみながら, さらに学習したいと思った。女性は,子供が産ま れるくらいで会社を辞める人が多いと勉強したが,私は,子供が産まれても,仕事を辞めないでいきたいと思った。(女子) ・自分は高校生になるまで将来について考えたことが全くなかった。でも家庭科の授業を通して将来について考えることが できた。「働く j について今は不景気で就職が困難である。だからそのためには今から将来の目標をしっかり立てそれに 向かっていかないとダメだと思う。今の時代はフリーターなど就職できない人も多く,そのような人はなぜこんなふうに なってしまったのか,それは時代のせいなのか,更に知りたくなった。結婚は最近では,独身の人も多く,子供が少なく なっている詩代だ。少子高齢化を止める一番の方法は独身者を減らしより多くの命を誕生させ豊かな社会生活を歩んで、い. 358.
(12) 高等学校家庭科における「家族・家庭生活」及び「保育」教材の研究. きたい。白分が将来おとなになった時にはちゃんとした職業につけるように今,自分ができること(勉強)をがんばって 将来の白分が後悔しないようにがんばりたい。(男子). 「就職が厳しい」というニュースなどを耳にしても,「自分は何とかなる」と漠然と考えていたり,「大人 になったら働くのは当然=当然働けるもの」ととらえている生徒も多い。あえて教科の学習の中で「働くこ と」の現実を意図的に組み入れたことには,意味があったと考えられる。. ③ 男性の「家事育児責任」をどう考えるか 女性の就労にともない,家庭責任を男性も担う必要性があることを理解させたいと考えたが,前述した「① 生徒の性別役割分業意識について」の結果から判断すると,「家事」に関してはこの目標は達成できていない。 「育児」は児童虐待から男性の育児参加の重要性を考えさせたが,虐待の印象が強烈で,「妻に虐待をさせ ないために育児をする」と考える生徒もおり,「自分の子どもを自分が育てることは当然である J, I子ども を育てることは男性自身にとってもプラスである」ということが薄れてしまった。生徒は,「子どもは二人 の子どもだから育児は二人で」という意識は最初から持っているため,男性の「育児責任」は認識しやすかっ たといえる。以下に生徒の感想を記載する。. -日本には,外国の社会のような男性にも女性 l こも,子育てのしやすくなる周りの理解や協力,対策が必要であるんではな いかと思う。女性に対する仕事・子育ての環境も表面だけ出来ているとは思うが真剣に取りくんでもっと女性が仕事・子 台ーてができやすくする環境を整えることが,少子化対策にもなるし, これからの行本をより良くすることができると患っ た。将来,結婚して,子どもができたときに自分も家事や育児を手伝える環境ができあがっていたらいいと患った。苦か らの,男は仕事で女は家での家事育児と言う考えが伐っていると思うが,そんな意識をすこしでも変えていけるようにす るのが,大事だと思う。(男子). まとめとして実施したライフプラン作成のなかで,将来「どんな生活をしているか」という箇所に「仕事 と育児を頑張る」と書いた男子生徒も少なからずおり,「ワーク・ライフ・バランス」の片鱗はあらわれて いるように見える。女性(妻)には無理に働いてほしくない,自分(男性)の収入だけで生活できるように したい,という気持ちが多数の男子生徒にあるが,女性の就労状況とは別に子育てには関わっていきたいと の思いを抱いているようだ。 働くこと,子育てをつないだ学習については,下記のような感想もあった。育児休業が男性にも保障され ていることを知らなかったことも記している。性別役割分業の克服は,知ることがまず第一歩であることを 実感させる。. -働くということは,白分が予想してた以幻こ大変だということが分かったし. ; r 難しい. j. ということが分かった。将来白. 分が大入になって働く持,必ず役に;夜っしょり「仕事」というのが分かるから学んで良かったと思う。子育ては,育児休 暇で女性だけが休むと恋っていたが男性も女性も,どちらも休むことが出来ると,新たな知識を得ることができた。結婚 して子育てをする時になったら,この学んだことを活かしてやっていきたい。「結婚J,「家族・子育てj, 0 働く_/ (.ま全て が一本につながっていることを実感した。今までやってきてこの授業を役に立ててこれからの人生に役立てていきたい。 (男子). 次節では,以上の検討を手がかりとしながら,テキストを総括する。. 359.
(13) 池田有香・増淵哲f. 5 テキス卜の総括とまとめ 本研究の目的は,「家族・家庭生活」と「保育」の学習内容を「働く」をベースとして統合した教材(テ キスト)を使い,生徒が自分事として,よりよく内容を理解できるようにすることにあった。 前述したが,生徒が内容を理解できない,自分のこととしてとらえられない原因の一つは教科書の構成に ある。「家族・家庭生活」と「保育」のつながりを自分自身の人生のつながりとして生徒が受け取ることが できるものでなければ,内容に対する理解や思考が深まらない。また 2分野の不十分なつながりが,育児担 当者を「働いていない母親」と生徒に思わせてしまう。「男女共同参画」という言葉が「保育」分野におい ては影が薄れ,その結果 ,y: 性は家事育児をおもに担い,男性ほどには経済的自立を果たさず,男性は生活 的自立をしないままの状態が継続されることが暗に肯定され,「男女共同参画」はますます生徒にとって現 実感のない言葉となる。児童虐待等の社会問題については,「親がかかえる課題」であり,「社会のなかの一 人の大人として看過できない課題」であるが,一般論で問題とするのではなく,生徒が大人・親になったと きの状況をより現実感をもって認識できるようにしたうえで,解決策や支援策を考えることが必要である。 これらの状況を改善することが,「人間の生涯にわたる発達と生活の営みを総合的にとらえる J, I家族・家 庭の意義,家族・家庭と社会とのかかわりについて理解するお「男女が協力して主体的に家庭や地域の生活 を創造する能力と実践的な態度を育てる」の家庭科の教科目標を達成することにつながるはずである。テキ スト作成にあたっては,これらの目標に対応させて「授業内容と自分自身の生活や人生におけるつながりを 理解する J, I児童虐待や少子化など社会問題への視点をもち個人的・社会的解決を考える J, I男女共同参画 社会の実現に向け経済的自立と生活的自立を目指す」の 3点のねらいを設け,これらを核に教材を構成して いった。 最後に,この 3つの観点から,作成したテキストを使用した授業はどのような成果があったのかを総括す る。テキストを使用した授業進行の詳細と授業時の生徒の様子を紹介しながら述べていく。 I授業内容と自分自身の生活や人生におけるつながりを理解する」. ( 1 ). テキストの構成では「結婚」を第 1章に置いた。生徒は「結婚すること」が「金銭的な理由で難しいこと」 だと認識しておらず,「結婚はしてもしなくても個人の自由」だが,「大人になるとほとんどの人が当然のよ うに結婚している」と考えていた。「結婚」と「収入」は結びついていなかった。資料で非正規雇用者と年 収と結婚の関連が示され,更に非正規雇用者は交際経験がない人の割合も高い(北海道新聞 2011年 7月 3日 付朝刊記事)というデータにより,「安定した収入がなければ結婚もできない」という認識を持った。この ことは生徒の感想にも同様の記述が見られる。 教育図書の教科書には,「青年期の課題」としての「結婚」が記載されているが,そこに「あなたの人生 観や職業観を考え合わせ,自分の人生における結婚の意味を考えてみよう」とある。高校生がそれを考える には,「家族・家庭生活」や「保育」の学習なしでは難しい。家事育児,仕事も含めた夫婦の生活や問題点 を学習し結婚観も確立されていくと考えられる。いきなり,「考えてみよう」では考えようがない。学習 後に,「自分は好きな仕事を出産後も続けたいので育児を手伝ってくれる人と結婚しようと思う J, I自分の ことで精一杯なので結婚しようとは思わない」などと考えることができる。職業生活や家庭生活(家事育児) と関連させた結婚観を,現実的に確立することにつながる。 次に,「結婚」後のステップとして「家族・子育て」の学習に入ったが,おもに前半は教科書の内容を中 心に行った。ただし,「家事労働と職業労働」や「男女共同参画」に関する箇所は「働く」に組み入れた。 「子育て」では,「理想の数の子どもを持てない理由」として,再度「金銭的な理由(教育・養育費がか かるから ) J が出てくる。ほとんどの生徒はきょうだ、いがおり,. 360. 3人以上という生徒も少なくない。自分が.
(14) 高等学校家庭科における「家族・家庭生活」及び「保育」教材の研究. 親になることを考えても,子どもは 2~3 人ほしいという生徒が多い。しかし,これからは,自分の親が当. 然のように 2人 , 3人産み育ててきたとしても,安定した収入がなければそれが叶わない。また,「児童虐待」 についての学習でも,虐待の背景に「経済的問題」があることが分かり,生徒はますます「お金(安定した J を得るためには「働くこと=仕事」 収入)がないとだ、め」という意識が強くなる。「お金(安定した収入 ). が非常に重要だと認識する。「自分が」安定した収入を得られる職業に就けなければ,結婚もできないし子 どもも持てない。当たり前だと思っていたことすらできない現実に改めて気づくことになる。 そこで「働く」の学習になる。生徒の「働くこと」への意識は以前の生徒より強くなっていることが分か る。表 14は,「将来働くということはどの程度重要か」を尋ねた結果である (2009年度 2年生との比較)。 4 仕事の重要度についての意識(回答数:男子 1 1 5名 女子 1 0 4名 計2 1 9名) 表1 ( )内は 2 0 0 9 { 1一 度 2イ │ 一 生. 性別. 男 子. ( ア ) 希望と違 ( イ ) 希望の仕 (ウ)働いても (エ)働きたく ( オ ) その他 う仕事でも働 事があれば働 働かなくても ない よ し ミ きたい きたい 4 7 . 8 ( 4 4 . 0 ) 4 8 . 7 ( 5 2 . 0 ) 0 ( 0 . 8 ) 0 ( 0 . 8 ) 2 . 6 ( 0 . 0 ). 女子. 4 8 . 1( 2 8 .5 ). .9 ( 6 6 . 9 ) 5l. 全体. 4 7 . 9. 5 0 . 2. 。. 0 ( 2 . 3 ). 。. 0 ( 0 . 8 ). ( カ ). 、 し. (%). わからな. 0 . 9( 2 . 4 ). 計. 1 0 0 . 0. 0 . 0 ( 0 . 0 ). 0 . 0 (l .5 ). 1 0 0 . 0. l .4. 0 . 5. 1 0 0 . 0. 2009年調査に比べ,「同希望と違う仕事でも働きたい」が男女とも増加し特に女子生徒で顕著である。 ( イ)希望の仕事があれば働きたい」であり,現在の不況による就職難も相まって「仕事を選ぶ」 減少したのは i. 余裕はなくなり,「働かなくてはいけない」という思いが強くなっている。男子の 2.6%が選択した i ( オ)その. f 也」は「希望の仕事で働きたい」という(ア)と(イ)の中間のような回答であった。「附希望の仕事があれば働き たい」を選択した生徒の多くも,内心は「希望の仕事があれば」ではなく,「希望の仕事で」という意味合 いが強かったと思われる。全体としては若干(ア)よりも(イ)が多いが,「働くこと」と「自分の人生」のつなが り方をより理解することができたから, 2009年度 2年生に比べ例の回答が増加したといえるだろう。また, 2009年度 2年生に対する調査実施時期は 2月であり,そろそろ進路を本格的に考えなければならない時期で. あった。今回の 1年生は高校に入学して半年の 9月に記入しており,約 1年半の違いがある。「働く」こと を考えるにあたって,この 1年半は高校生にとっては大きい。社会の経済状況に関しては,前回調査をおこ なった 2年半前も不況による就職難の状況はあった。そういったことからも,この結果は「結婚」や「家族・ 子育て」と関連して「働くこと」の重要性を説いてきたテキストによる学習の効果によるものだといえる。 「自分が就職するとき J, i自分が親になったときには」という表現で感想を書いていたことや,「『結婚J], 『家族・子育てJ], ~働く」は全てが一本につながっていることを実感した」という生徒の言葉に成果が表わ れていたと考える。. ( 2 ) r児童虐待や少子化など社会問題への視点をもち個人的・社会的解決を考える」 生徒の学習前の認識としては,「児童虐待」は「一部の少し頭のおかしい人がすること」で,「自分のスト レス解消のために子どもに暴力をふるっている」というものである。新聞やニュースで報道される子どもの 死に至るケースしか知らないためだと思われる。児童相談所に寄せられた件数だけで 2010年で 55.000件を超 えている(前掲資料集「生活学 Navi 資料集+成分表」実教出版, 2012,厚生労働省「福祉行政報告例」 より)状況を「一部」の問題として良いのか,ということである。仮に件数ではなく割合で表せば,全体の 中のごく一部かもしれないが,実際にそれだけの「虐待が疑われている子ども」がいるということであり, 今はたまたま自分の周囲にいないか,自分が気付いていないだけであり,今後,そのような子どもに気付い たら対応できる人になってほしい,そういった社会問題を見過ごさないでほしいという思いがあった。また,. 3 6 1.
(15) 池田有香・増淵哲f. 「虐待の芽は全ての人が持っている」とよく言われる。一方で「自分が子どもを虐待するかもしれない」と 思って親になる人はいないはずで、ある。本人の努力や意識と社会的な援助があれば,虐待をしなくて済んだ かもしれないケースや,虐待されている子どもが救えたケースがあるかもしれないのである。虐待した個人 を加害者として責めても解決はしない。生徒が子どもの立場で虐待に憤りを感じるのは当然だが,「将来自 分が虐待をしないためには」と「社会的にどのような援助があれば良いのか」を考える必要がある。社会問 題を別の世界の出来事と生徒はとらえがちだが,新聞記事を用い,虐待の原因(背景)から,対策を考える 学習を行った。 対策は,個人が気を付けるべきこととしては,精神面はもちろんだが,経済面でも親をやっていけるだけ 安定していること,など生徒の自覚を促す内容も確認したが,むしろ,「支援」という面を強調した。育児 を母親だけが孤立して行わないこと=父親(夫)が関わること・関われる状態であること,国や地域,企業 が社会全体として子どもを育てる意識と体制をつくること,などを柱にした。そのように学習した後の生徒 の感想の一部を記載する。. -今の時代,子育ては,母親にとても負担をかけていることがわかった。その背景に,幼稚園,保育題などの集団保育施設 の不足や,仕事場なと守での環境が整っていないことなどが,母親へのストレスの対象であることがわかった。だから,父 親や家族,近所や地域の協力が必要だと患った。 母親へのストレスは, 子への虐待をまねき子への負担になる O 現在の環 境のままだと,裁は子へ,その子は,他の子や,大人になってからその子に出来た子へと負の連鎖が続いてしまうことが ある。だから,まわりや,環境の整備,家族などでの協力が必要になってくると患った。虐待をしないために,まず母親 ばかりに育担や家事をさせない,そのためには父親も仕事を少しでも休む,それでも仕事仲間や,上司の日や会社のしく みが厳しくて休めない。ということは,最終的には会社や,世間的にもっと子どもを育てるために協力することが一番大 切なのではないのかと,思いました。(男子) ・子育てには母親にだけ負担をかけるのではなく,父裁や家族,地域の人の協力や配慮が必要だと患います。子どもを育て る上で周りや社会の環境が整っていなければ,. さまざまな問題が起こりうるので,見声しゃ改善が必要になってくると思. います。安易に子どもを産むので、はなく,産まれた後のことも考えて産まなければならないと患います。一人一人の意識 が虐待防止につながり,苦しむ子どもを減らすことができると思います。子育ては母親が子どもとふれ合う持問が長いの で,一番負担がかかってしまい,子育てが嫌になったり,自分の時間が減ってしまうなど,いろいろなことがあるけれど, 子どものことを思ってなるべく子どもとふれ合う時間を増やしてあげることが大切だ、と思います。家族の支えが母親や子 どもを助け,これからの社会を変えていくのにとても大切なことだと患います。(女子). 児童虐待が 100%他人事で自分には無縁であるという認識から,「安易に親になるべきではない J, I将来の ことを考えるべき」という視点を持つようになり,虐待する親(特に母親)がどのような状況に置かれてい るかを考え,当初の目的通り,虐待者の個人責任だけを取り上げるのではなく,社会的にも支援が必要だと いう考えに至ることができた。また,男子生徒が家事や育児への責任を持つことも目標の一つであり,その 意味からも「児童虐待」については一定の効果があった。. (結婚した)女性が働くようになり忙しくなって子どもを産まなくなった」 「少子化」に関しては,生徒は I というとらえ方をしている。しかし,理想の数の子どもを持てない理由が経済面であるということから考え ると,むしろ,夫(男性)の収入しかない家庭の方が少子化の原因につながっていることになる。「子ども をほしいと考えていたが無理かもしれない J, I大人になれば普通に結婚して子どもがいると思っていたがそ うとは限らない」とこれまでの見方を変え,「少子化」と「働くこと」の現状を関連させて記述する生徒も 多く見られた。「少子化」の問題を単に「子どもが少なくなって税金や社会保障費,日本社会,経済が大変」. 3 6 2.
(16) 高等学校家庭科における「家族・家庭生活」及び「保育」教材の研究. と影響についてのみ結論づけて終るのではなく,「日本は外国のように育児休業を取って女性が出産後働き 続けることが当たり前ではないところに問題がある j, 1男性が育児に関わりにくいから子育てが大変になり あまり子どもを産めない」といった産めない背景や,「政府が「少子化」を問題とするなら,現在の不景気 で若者が就職できない状況を何とかするべき」という雇用や景気問題,国の対策についても広く考えること ができた。これらはもちろん新聞記事等の資料の読みとりによるともいえるが,「自分が働くときにはこの 問題が解決されていれば良いと思う」という記述も多く,これらの問題を自分自身に関わる問題ととらえた 上で,考察していたことに意味がある。 現在,問題とされている「非婚化や未婚率の上昇 j, 1少子化 j, 1児童虐待 j, 1景気・雇用問題 j, 1労働環 境」について,生徒自身がこれらを関連させ自分なりの考えをもつことができたのではないだろうか。 ( 3 ). 1 男女共同参画社会の実現に向け経済的自立と生活的自立を目指す」. 「働く」では「働くことと子育て」に関わる内容も扱っている。この部分は教科書に記載はあるものの, 深くは書かれていない。特に「保育」の内容で,母親が働いていることに関するものは「育児休業の取得率」 と「保育所」の記載だけである。生徒の実体験と合わせると,暗黙のうちに「子育て=母」となっている。 女子生徒は「家事育児と仕事の両立は自分には無理だし,子育ては自分がしなくては」と思いがちだが,外 国では必ずしもそうではないことを資料によって理解する。自分の人生のなかでも,希望する職業に就き, 制度や職場環境,結婚相手や家族のサポートによっては,出産後も好きな仕事を続けられる選択肢がある, ということになる。職種や職場選択,結婚相手,家族との関係など全てが将来の自分の生き方に関連するの は当然のことだが,進路選択とも関係する職種・職場選択,ライフプランを考えるこの授業には「キャリア 教育」の側面もある。 高校 1年生の段階では,まだ明確に将来何をしたいのか決まっていない生徒も多い 0 -1;:.子生徒の場合,「出 産後は仕事を辞めて育児に専念して,子どもが成長したらパートに再就職で、いい」と考えがちだが,「パー トタイム労働」が好条件,好環境なのか,という問題がある。ここでは「パートタイム労働」の現状におけ る問題点を指摘し,それならば「フルタイム労働」を続けられるようにした方が,結果的にプラス面が大き いのではないかという投げかけをした。生徒にとっては「パートも楽ではないことは分かるが,環境が整わ ない限りフルタイムはもっと大変そう」と感じたかもしれない。環境とは,職場の雰囲気や育児休業などの サポート体制や家庭の状況も含まれるが,それはそもそもの職業・職場選択,配偶者選択と関わってくる。 職業選択につながる進路をどうすべきか考えたとき,単に「好きなこと j,1得意なこと」で決めようとせず, 「続けられる仕事とは」という視点も持って考えることになるだろう。女性が「続けられる仕事」を選択し, 仕事を続けることは経済的自立につながり,社会の一員として男性と対等に社会に参加することにつながっ ていくはずで、ある。 働き続けること ( 1 継続型 j ) を志す生徒は,比較的自分の就きたい職業が明確になっている傾向にあった。 職種は,看護師,保育士,パティシエが多かった。看護師希望の生徒では,自分の親が看護師という生徒も いた。「継続型」を希望する生徒は,母親が「継続型」という家庭環境の影響を受けている生徒も複数いた。 家庭環境の影響が大きいことは「再就職型」でも否定できないが,現在,希望は「再就職型」であっても, 不況の影響によりそれが叶わないかもしれない状況にある。授業でも不況による「結婚」や「少子化」の問 題を繰り返し扱っている。そういったこともあり,最初から積極的に「再就職型」を希望するのではなく,「希 望の職業に就ければ仕事を続ける」という意識を持ちつつ,「希望の職じゃない場合や夫の収入だけではやっ ていけない場合も仕事をするが,できれば専業主婦か再就職でパート」くらいのモチベーションに変わらざ るを得なくなったといえる。 男子生徒には,自分の収入の多少に拘わらず家事育児への責任を持つような意識付けをできないかと考え. 3 6 3.
(17) 池田有香・増淵哲f. ていたが,育児については「児童虐待」をきっかけとしてある程度達成された。高校生は「自分の子どもだ から子育てするのは当然」という意識を最初から持っている。そこへ,「母親だけに育児をさせ,育児が孤 立することの弊害」や「父親が関わることの子どもへの影響と父親自身への影響」をプラスした。子どもが 小さいうちは母親についていてほしいという気持ちは強固にあるものの,育児と家事を同時に行うことがい かに大変かについて理解が進んだ、ことなどから,妻の就労状況を問わず育児に関わろうと思い,「可能であ れば家事も手伝う」と考えるようになった。しかし男子生徒は,家事のために仕事を効率よく進め早く帰宅 しようとすることに共感する者はほとんどおらず,家事より仕事を優先する意識が強かった。男子生徒にとっ て「自分が仕事をすることは当然」であり,女性の就労については,「妻は仕事を続けたければ続けてもいい J, 「自分の収入だけでやっていけない場合はパートなどしてもらう」という認識である。妻が働いているなら ば,家事育児を自分も担うことが当然であるとまではなかなか考えない。これに関しては,結婚した相手(妻) からの働きかけが重要であり,そういった現実に直面したときにどうするか,ということになるが,家事の 技術的な面が伴えば,妻からの要求を受け入れるだけの下地はできたのではないかと思われる。 「男女共同参画」の意味を生徒に質問した際に,「男女平等」という答えが返ってきた。「女性が家事をし ていること=家庭の中で男性が優遇されている」と生徒はとらえているが,そのこととなぜ男 k共同参画が 目指されているのか,また,ワーク・ライフ・バランスとの関連についても理解できた生徒も少なからずい た 。 以上,「働くこと」あるいは「働き続けること」を一貫してとりあげたテキストには,一定の成果が得ら れたと考えられる。テキストによる授業の後には,高齢者や消費生活などの学習がヲ│き続いておこなわれる。 これらの学習においてもなお一層現実の社会と密接に関連する内容が求められる。. 1 4 授業の実施と実践検討」で述べたように,生徒の性別役割分業意識は予想以上に強固であった。授 業で親世代のような分業は現状では厳しいということを何度も示してきたが,そこに一定の理解を示すもの の,「理想は男性だけの収入でやっていけること」であり,男子は「そうできるように頑張りたい J,女子は 「希望の職業に就けたら働き続けたいが無理なら妊娠・出産で家庭に入り夫の収入でやっていきたい,夫の 収入だけでやっていけないのならば再就職する」とする生徒が学習のまとめの感想でも少なからず見られた。 根底にあるのは「男性が生活費を稼ぐもの」という意識であり,女性が働くのは「男性だけの収入ではやっ ていけない場合」と「女性が働きたい場合」である。生徒は「親のパートタイム労働」を肯定する意識が強 いため,「家計補助のパートタイム労働」に違和感を持たず,現状のパートタイム労働の厳しさを示しでも 大きな影響力とはならなかった。女子では看護師を希望している生徒が働き続ける意志をもっており,明確 な職業意識との関連が見られた。具体的な目標がない生徒は「働き続けよう」とは思わず,働くことの大切 さや経済的自立の重要性を頭では理解できても自分自身の人生にはつながっていかない。進路指導,キャリ ア教育との関連性が求められ,家庭科の授業だけではなく,「進路講話」や「職業に関するガイダンス」な どさまざまな機会が生徒に影響を与え相乗効果をもたらすものとなるよう働きかける必要がある。 (本稿の執筆にあたっては,共同討議を経て,池田が全体の稿を起こし,それをもとに増測が稿を加え, 改めて両者で検討するという手続きを取った。). (池田有香札幌校大学院生) (増淵哲子札幌校准教授). 364.
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