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トカラ列島近海におけるカツオの漁場構成に関する研究(第1報) : 漁場水温と漁況について

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(1)

トカラ列島近海におけるカツオの漁場構成に関する

研究(第1報) : 漁場水温と漁況について

著者

盛田 友弌

雑誌名

鹿児島大学水産学部紀要=Memoirs of Faculty of

Fisheries Kagoshima University

8

ページ

121-129

別言語のタイトル

Studies on the Constitutional State of

Skipjack Fishing Ground over the Waters near

the Tokara Retto (I) : On the Relation between

the Water-temperature and the Catching

Condition in the Fishing Ground

URL

http://hdl.handle.net/10232/13470

(2)

トカラ列島近海におけるカツオの漁場

構成に関する研究(第1報)

漁 場 水 温 と 漁 況 に つ い て

盛 田 友 = 6

StudiesontheConstitutionalStateofSkipjack*Fishing

GroundovertheWatersneartheTokaraRett。(1)

OntheRelationbetweentheWater-temperatureandthe

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d当卜 Z −1 この図において,カツオの漁獲水温は(表面)最高30℃,最低20°C位であり,この水温 間にあってその季節的変動がみられており,この状況は年によって夫為多少異っている. 叉,カツオは年間を通じ20,∼30℃の範囲内のいずれの水温においても多少漁獲されてい るが,その内特に好漁となる時季は,水温がほぼ最高,最鋤低となる頃であり,その中間水 温を示す時季は概して不漁となっている.即ち,トカラ海域のカツオ漁場の水温と漁況の 関連性は単に水温そのものの絶対値だけで論ずることは極めて困難であると考える しかして,Fig.1においてカツオの好漁となっている時季には,水温の時間的変動が比 較的少なく,概して恒温状態にあることが指摘される.この状態は年によって異なり,カ ツオ漁況もこれに関連しているようである.即ち,1955年の夏季は7∼10月の間ほぼ恒 水温状態であり,カツオ漁はこの期間に概して好況を示している.しかし,1957年の夏季 にはほとんどこのようなj恒水温伏態がみられず,そのためカツオの漁況は夏のpeakが消 失し,8月末頃から秋漁に移行している.なお,その他の年や時季にもこのような現象が 夫々観察される.

トカラ海域の水温上昇季にはカツオの期別総漁獲鐘は非常に減少しているが,単位操

業当りの漁獲量は余り減少せず,引続き夏漁となっている.即ち,この時季のカツオ群は なおその漁場附・近に滞泳しているのであるが,後述するようにこの季には表面海況が急変 して,魚群が一時的に沈降するので,その発見が困難になるものと想像される.しかし,

一度魚群を発見すれば,その漁獲は概して活況を呈し,単位操業当りの漁獲量を維持する

ものと考える. −3−:Averagewater-temperature,…−・ Metrictons),……:Catchperonetime Fig、1.Showingthetimevariationof andthatoftheskirjackcatch Long、128L30'∼1290-30'Einthe ‘3'4151611‘ヅ・3F4.516凸r2'3P4.5 Sep.o【、f・ A u g N p Ⅵ D e c Totalcatchinaterm(Unit: fishing(Unit:100kg). theaveragewater-temperatul・e attheareaofLat、29。∼30。N, TokaraSea. Jan.

(5)

:MIO 鹿 児 脇 大 学 水 産 学 部 紀 要 鮒 8 巻 1956 124 水温の鉛直分布の時間的変動と漁況

Fig.1において,漁場水温の変動季には概してカツオの漁況は不振になっており,』侍に

春の昇温季後半は毎年不漁となっている.これについて水温の鉛直分布の時間的変動を

Fig・2のように図示して検討・を試みた. 即 ち , 冬 季 に は 19認 即 ち , 冬 季 に は 水深150m層附・近ま で21℃位の等水温 状態を示しており, Fig.3にみられるよ う に 大 型 の カ ツ オ が 比 較 的 多 く 漁 獲 さ れ ている. 春の昇温季は前期 と後期とに区分して 考えられる.前期(4 ∼5月頃)は通常そ の昇温が緩慢で深層 に 及 ん で お り , そ の 水温が沖縦海域の冬 季 の 水 温 を 示 す 頃 に な る と , 中 型 カ ツ オ の漁獲が極めて好況 を 呈 す る . こ れ は Fig.3に示されるよ うに体長組成的5)に もこの頃のトカラ海 域のカツオは沖細海 域 の 冬 季 の も の と ほ J1、。1.,1PID.lWnr.AIlr.ハInvJuncJlll)・‘1【唯.S叩.OEI.N、,..nfMP. 一 il 、

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Fig.2.Showingthetimeveriationoftheverticaldistrlbutionofとんど同一魚群に属

water-temperatureattheposition(about28L50N,128L40'E)するもののようであ

nearthenshillgground・ り,即ち,同海域か らの来遊群であると考察される.叉,春の後期には気温の上昇に伴い漁場の表面水温が急 昇している,この場合海水の鉛直混合が余り旺盛でないので,Fig.2で観察されるように 鉛直的に顕著な成層状態が漁場に構成されるようになる.このため,この期にはカツオ群 は一時的に沈降する傾向となり,魚群の捜索に当りその発見が極めて困難になるものと考 えられる,従って,漁船の操業回数は総体的に減り,その総漁獲量も減少するようになる ものと思考する.なお,1956年には冬季の水温が比較的寒冷であったため,春の前期に一 時的な成層状態がみられており,カツオの漁事はこの時すでに不振となっている. 夏の恒温季には春以来の表面水温の上昇が7月頃に29°C位で止まり,この水温が鉛直に 伝播し,表層(0∼50m層)に高温水帯が構成される.しかして,この水帯が時間的に持続

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126 鹿 児 島 大 学 水 産 学 部 紀 要 第 8 巻 さ れ て い る よ う な 場 合 , カ ツ オ の 漁 獲 は 再 び 活 況 を 呈 し て い る . な お , こ の カ ツ オ 群 は 体 長 組成的には春漁のものと何ら変りなく同一魚群の移行であると考えられる(Fig.3参照), 即ち,春の昇温季において一時的に沈降したカツオ群は時間の経過に従って逐次その環境 に順応し,自然に前記高温水帯に移行するようになったものと考えられる. 秋の降温季には,気温の降下に従って表面水温も低下する.この場合には海水の鉛直混合 が比較的旺盛となるので,表層における成層状態はほとんど構成されず,Fig.2で観察さ れるように100m層附近までほとんど等水温状態である.しかし,時間的には鉛直的等水 温状態を保持しながら総体的な水温降下がみられている.このため,夏季の高温水帯に慣 ら さ れ た カ ツ オ 群 は 暖 水 を 求 が 比 較 的 旺 盛 と な る の で , 表 層 に お け る 成 層 状 態 は ほ と / れるように100m層附近までほとんど等水温状態である. 温状態を保持しながら総体的な水温降下がみられている.

Nめて南下移行するもののよう

で あ る . 故 に , ト カ ラ 海 域 に お け る カ ツ オ の 秋 漁 は , 漁 場 鉛直的等水温状態の時間的な

32・の持続状況がその漁況と漁期

の 長 短 に 影 響 す る も の と 考 え る. Q e 。 [■ 曲 。 X X $ 。 。 'メチ 31◎ 30o 29c 28o

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(8)

G⑨ 127 0 ,0 . 0 , ○ 0, 盛田:トカラ列島近海におけるカツオの漁場構成に 関する研究(第1報) ○ Catchingtemperature

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(9)

128 鹿 児 島 大 学 水 産 学 部 紀 要 第 8 巻 し,周囲の冷水帯との間に水温による顕著な潮境7〕を形成するようになる.この頃たまた ま南部海域から北上来遊したカツオ群はその温暖な舌状水帯内に滞泳して好漁場を構成す るようになったものと考えられる. 以上のように水温の水平的な分布においてもカツオ群は比較的等温の水帯を撰択し,そ の漁場を構成している.しかし,この場合カツオの好漁場の構成には水温傾度の大きい顕 著な潮境によって三方囲まれるような極めて非開放的な等温水帯がその重要な前提条件と して考えられるのである. 漁 獲 水 温 範 囲 と 等 漁 獲 水 温 期 間 トカラ海域と沖細海域とにおける年間のカツオの漁獲水温(表面水温)を各期(1ケ月 を6期とする)毎に温度別に整理してplotし,これをFig.5に示した.

この図によれば,毎年春の昇温季にはわずか1期内の漁獲水温範囲8)でも比較的大きく

なって,カツオの広温.性が考えられる.このことは前述の等温.水帯における漁場構成を反

論することになるので,これについて次のような検討を試みた.

Fig.5において,沖細海域における冬季の漁獲水温はトカラ海域における春季漁獲水温

の高温部に相当しており,叉,Fig.3において体長組成的にもトカラ海域の春漁のカツオ

と沖柵海域の冬漁のものとほぼ同一魚群であるかと思われる.故に,沖細海域のカツオ群

は時間の経過に伴ない,同一水温帯を求めてトカラ海域に来遊するものと考えるのが妥当

であろう.なお,トカラ海域における春季漁獲水温の低温部は,低水温帯の残存により冬以

来滞泳残留しているカツオ群の漁獲によって記録されるものであると考えられ,叉,体長

組成的にもこの春季には,同海域の冬季のものと同様な大型魚群の混在しているのが観察

され’この魚群が主として前記の残留カツオ群となるのであろう(Fig.3参照).

故に,春季にトカラ海域に出現する中型のカツオ魚群の漁獲水温について,沖縦,トカ

ラの両海域を通じて時間的に観察する場合,Fig.5に示されるようにその漁獲水温範囲は

余り大きくなく,約3℃以内で相当長期にわたって継続しているのがわかる.しかして,

秋の降温季には,春季の場合と逆に時間的に遅れて等漁獲水温が沖細海域において観察さ

れている.(Fig.5参照)

叉,夏季,冬季においては水温の昇降転換期となり,通常この水温転換には相当の日時

を要しており,このような場合,漁場は比較的長期間にわたり等水温状態となる.この時

季を前節では恒温季として考えた.即ち,この季におけるカツオの漁獲水温は時間的迄等

温状態を保持することになる.Fig.5に染られるように,トカラ海:域だけでもこの時季に

おけるカツオの等漁獲水温期間は相当長期に及んでいるのがわかる.

以上に:おいて,カツオ類の特定魚群(例えば同一体長群)は比較的狭温,性で相当長期間

にわたり時間的に変化の少ない等水温帯を撰択して,出現するもののように考察される.

要 約

トカラ海域におけるカツオの漁獲水温(表面)はほぼ20。∼30°C位の範囲であるが,そ

の最高,最低を示す時季においてカツオ漁が好況を呈しており,その水温の顕著な昇降過

程にある時季には概して漁況不振となっている.

(10)

なお,カツオの漁場附近における水温の鉛直分布の年間変動をみると,その恒温季には 比較的深層まで等水温状態となり,その状態が持続されている.かかる海況においてカツ オ漁の好況が期待されている.しかし,春の昇温季の後半には表面水温の急昇により表層 における成層状態が極めて顕著となり,カツオの沈降が想像され,このためその漁況は総 体的に不振となる.叉,秋の降温季は比較的深層までの総体的な降温が時間的に顕著にな るので,カツオ群は適温水帯を求めて南下移行するようになる.故に,この降温現象の遅 速による等水温帯の時間的出現状況が秋季のカツオ漁況とその漁期の長短に相当影響して いるものと考えられるのである. しかして,トカラ海域では水温の水平的な分布状況においてもカツオ群は概して等温な 水帯を撰択し,その漁場を構成している.ただ,この場合水温.による比較的顕著な潮境で 包囲される非開放的な等水温帯がカツオの好漁場の構成要件となっているものと考える. トカラ海域におけるカツオの漁獲水温を温度別,期別にみると,春季にはその水温範囲 が概して大きくなっているが,これは漁場水温の上昇に伴い高温水帯から移行した魚群と 残存低温水帯における残留魚群との混獲によって記録されるようになったものと考える. 叉,同海域におけるカツオの等漁獲水温.期間は夏冬の恒温季には当然比較的長期にわたる が,春秋の昇降温季においても魚群の往来が想定されている沖細海域を通じて承ると,相 当長期に及んでいるのである. 以上更に要約すれば,トカラ海域におけるカツオ漁況は,その漁場が時間的に空間的に 比較的等温な状態を示し,しかも,それが常に顕著な相対的状態にある場合においてその 好漁が期待されるものと考察される. 129 1 ) 2 ) 3 ) 盛田:トカラ列島近海におけるカツオの漁場構成に 関する研究(第1報) 終りに臨み,この研究のために貴重な調査資料の提‘供と御教示を賜った東北海区水産研 究所,鹿児島県水産試験場,鹿児島海上保安部水路課の関係各位に対して深甚なる敬意と 謝意を表する次第である. 文 献 鹿児島県水産試験場:対馬暖流開発調査報告書I,(1957) 鹿児島海上保安部:海洋概報(九州近海),(1955∼1957) JapanMeteorologicalAgency:TheResultsofMarineMeteorologicalandOceanographcal ObservationsNo.16∼19,(1955∼1957) 盛田友=C:対馬暖流開発調査報告書1輯(水産庁),(1958) 川崎健弓東北海区水産研究所報告4号(1955) 東北海区水産研究所を東北水研叢書1号(カツオに就いて),(1952) 盛田友犬:鹿児島大学水産学部紀要第7巻,(1959) 相川広秋:水産資源学総論,(1949)

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