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鹿児島の陸生ヘビ類の分布と生態

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Academic year: 2021

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(1)

著者

鮫島 正道, 中村 正二, 中村 麻理子

雑誌名

Nature of Kagoshima

40

ページ

247-256

別言語のタイトル

Review of distribution and ecology of

terrestrial snakes in Kagoshima Prefecture,

Japan

(2)

 はじめに

 生態系の中で動物は被食者と捕食者の関係でつ

ながり,食物連鎖や食物網をつくっている.ヘビ

類はその中で,二次もしくは三次消費者として重

要な位置を占めている.また環境の変化に敏感に

反応するため,その生息状況は環境の自然度をは

かる目安になっており,生態調査では重要な指標

生物である.そのこともあり環境影響評価のため

の生態系調査には,欠かせない分類群の一つであ

る.

 ヘビ類は種別にみて生息密度に大きな違いがあ

り,生態学的に未知の部分が多い.また調査時に

遭遇する機会が少なく偶然性が強いため,詳細な

情報が得にくく,定量的な調査が困難な分類群と

いえる.現在のところ便宜上やや多い,普通,や

や少ない,極小という表現が一般的である.

 陸生の日本産爬虫類相は日本列島と琉球列島

(南西諸島)で大きく変わる.琉球列島と日本列

島の 2 つの地域の生物の分布境界は,奄美大島と

九州の間のトカラ列島(悪石島と宝島・子宝島の

間)にあり,渡瀬線という名称で知られている.

区系生物地理学では,この渡瀬線から北側の日本

列島を旧北区,これより南の琉球列島側を東洋区

としている.旧北区と東洋区にまたがる鹿児島県

は,両区のヘビ相をもつため,国内最多の種(4

科 10 属 16 種 2 亜種)が生息する地域といわれて

いる.また鹿児島県は南北 600 km,東西 300 km

と広範囲で島嶼が多いのも特徴といえる.

 国内のヘビ類を含む爬虫類相については,中村・

上野(1976),疋田(1989),環境庁(1993)が詳

しく,鹿児島県内のヘビ相については,鮫島(1983,

1985, 1986, 1989, 1991, 1994, 1995, 1996, 1997,

1998, 1999)がある.

 鹿児島県内のヘビ相を把握し,これらの種の地

域絶滅の要因を究明し対処することは,生物多様

性の保全に貢献することにつながる.

 今回は鹿児島県内に生息するヘビの仲間で,海

に棲むウミヘビ類を除いた陸生のヘビ類を対象と

した.

 材料と方法

陸生小動物の生態調査は,両生類,爬虫類,哺

乳類を一括りにして,両・爬・哺調査として環境

調査の対象にする慣例がある.本論文でのヘビ類

に関する記録のほとんどは両・爬・哺調査時のも

のである.

調査方法は見つけ取り法である.目視だけに

よる種名の決定は誤同定の要因となるため,捕獲

し詳細に検索することが義務付けられている.調

査では調査地をくまなく歩き,発見したら必ず捕

獲し,種の同定や特徴を確認した後に放逐した.

ヘビ類は種によって生息密度に差があり,そ

の発見には偶然性も強いため,本報告のデータは

第一著者の調査活動期間である昭和 44 年(1969

年)から平成 25 年(2013 年)までの 44 年間の

鹿児島の陸生ヘビ類の分布と生態

鮫島正道

1

・中村正二

1

・中村麻理子

2 1

〒 899–4395 鹿児島県霧島市国分中央 1–12–42 第一幼児教育短期大学内鹿児島県野生生物研究会本部

2

〒 890–0065 鹿児島市郡元 1–21–30 鹿児島大学総合研究博物館 

   

Sameshima, M., S. Nakamura and M. Nakamura. 2014. Review of distribution and ecology of terrestrial snakes in kagoshima Prefecture, Japan. Nature of Kagoshima 40: 247–256.

MN: The Kagoshima University Museum, 1–21–30 Korimoto, Kagoshima 890–0065, Japan (email: naka_tatsu@ po3.synapse.ne.jp).

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集積である.また著者らが未調査の島嶼や地域は

文献調査により補足した.報告したヘビ類の種名,

学名および分類体系は「日本産野生生物目録」

(環

境庁,1993)に準拠した.鹿児島県内の島嶼の位

置関係については図 1 に示した.

 結果

鹿児島県内には 4 科 10 属 16 種 2 亜種のヘビ

類が生息する.鹿児島県内におけるヘビ類の分布

概況を表 1 に示す.ここでは既存の文献記録も反

映されるように配慮した.筆者らが確認した種は

●印,文献記録は白抜きの○印,生息の可能性は

あるが確かな記録がない種は?印にした.かつて

生息していても何らかの原因で激減,絶滅した種

や,古い文献資料の一部には信憑性に欠けるもの

があるため,これからの作業で改善を進めたい.

鹿児島県内に生息するヘビ類について,観察

事例などを加え分布,形態,生態について表 2 に

示し,生態写真を図 2 に示した.

鹿児島県内に生息するヘビ類の分類について,

科・属・種・亜種の分類階級別に以下に整理した.

Typhlopidae メクラヘビ科 本科は全世界の熱帯

地方に広く分布する.日本では琉球列島全域と鹿

児島県本土の南部地域の無霜地帯に 1 属 1 種が分

布する.

Ramphotyphlops メクラヘビ属 この仲間は熱帯

域を中心に,汎世界的に分布する.

 R. braminus (Daudin, 1803) メクラヘビ

Colubridae へビ科 本科は現生のヘビの総種数

のほぼ 2/3 を含む大きい科である.鹿児島県内に

は 6 属 11 種が分布する.

Achalinus タカチホヘビ属 本属は東アジア地域

に分布している.ヘビ類の中では日本本土と琉球

列島に共通する数少ない属の 1 つといえる.

 Achalinus spinalis Peters, 1869 タカチホヘビ

 A. Werneri van Denburgh, 1912 アマミタカチホヘビ

Elaphe ヘビ属 本属は分類学的に混乱しており,

将来いくつかの属または亜属に細分される可能性

がある.

Elaphe quadrivirgata (Boie, 1826) シマヘビ

E. conspicillata (Boie, 1826) ジムグリ

E. climacophora (Boie, 1826) アオダイショウ

Opheodrys アオヘビ属 本属は分類学的に混乱し

ている.日本産のアオヘビ類はアオヘビ属の 1 属

にまとめられている.

Opheodrys semicarinatus (Hallowell, 1860) リュウ

キュウアオヘビ

Dinodon マダラヘビ属 本属は 10 種近くが知ら

れ,日本,中国,インドシナの北部,ヒマラヤ東

部などに分布する.

Dinodon semicarinatus (Cope, 1860) アカマタ

D. orientalis (Hilgendorf, 1880) シロマダラ

Natrix ユウダ属 本属は東南アジアを中心に広域

に分布し,北は朝鮮,樺太にまで分布域が広がる.

Natrix vibakari vibakari (Boie, 1826) ヒバカリ

N. pryeri pryeri (Boulenger, 1887) ガラスヒバァ

Rhabdophis ヤマカガシ属 本属は日本,朝鮮半

島,シベリア東南部,中国,フィリッピン,イン

ドシナ,マレーシア,ヒマラヤ東南部などに分布

し,10 種ほどが知られている.日本には次の 1

種が分布する.

Rhabdophis tigrinus tigrinus (Boie, 1826) ヤマカガシ

Elapidae コブラ科 本科はアジアの熱帯地方と

オーストラリアに多くの種が生息するが,アフリ

カや南北アメリカなどにも広く分布し,コブラの

ような毒蛇を含む.日本には 1 属 2 亜種が分布し

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表 1.鹿児島県における陸生ヘビ類の分布概要. 鹿児島県本土 南西諸島 大隅諸島 トカラ列島 奄美群島 鹿児 島県 本土 本土属島 竹島 硫黄 島 黒島 種子 島 屋久 島 口永 良部 島 口之 島 中之 島 臥蛇 島 諏訪 之島 平島 悪石 島 宝島 ・ 小宝 島 横当 島 喜界 島 奄美 大島 奄美大島属島 徳之 島 沖永 良部 島 与論 島 甑島 長島 加計 呂麻 島 与路 島 請島 メクラヘビ ● ? ? ? ? ? ? ? ? ○ ○ ○ ○ ○ ○ ● ? ● ● ○ ○ ○ ● ● ○ タカチホヘビ ● ? ? アマミタカチホヘビ ● ? ? ? ● シマヘビ ● ● ● ● ● ● ○ ○ ジムグリ ● ● ● ● ● アオダイショウ ● ● ● ● ● ● ○ リュウキュウアオヘビ ● ● ● ● ● ○ ● ○ ● アカマタ ● ● ● ○ ● ○ ○ シロマダラ ● ? ? ● ● ヒバカリ ● ? ? ○ ● ガラスヒバァ ● ● ● ● ○ ● ● ○ ヤマカガシ ● ● ● ● ● ヒャン ヒャン ● ○ ○ ○ ハイ ● マムシ ● ● ● ● ヒメハブ ● ● ● ○ ● ハブ ハブ ● ● ● ○ ● トカラハブ ● ●:筆者らが確認した種;○:文献記録;?:生息の可能性はあるが確かな記録がない種.

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ている.

Calliophis ワモンベニヘビ属 本属は台湾,フィ

リピン,中国南部,東南アジアなどに分布する.

コブラと同じ神経毒をもつ.奄美大島にはヒャン,

徳之島と沖縄諸島にはハイが分布しており,それ

ぞれ亜種として扱われている.

Calliophis japonicas japonicas Günther, 1868 ヒャン

C. j. boettgeri Fritze, 1894 ハイ

Viperidae クサリヘビ科 本科はオーストラリア

を除く全世界に広く分布する.

Agkistrodon マムシ属 本属は 10 種ほどが知られ

ており,インドから東南アジアにかけての地域が

分布の中心である.その他にはヨーロッパ東部か

ら日本まで分布しているマムシ,北アメリカから

中央アメリカにかけて分布しているアメリカマム

シがある.

Agkistrodon blomhoffii (Boie, 1826) マムシ

Trimeresurus ハブ属 本属は東南アジアを中心に

分布し,北は琉球列島の小宝島まで広がっている.

また琉球列島の地史と深い関わりのある動物とし

て,地質学の分野でもよく引用される.

Trimeresurus okinavensis Boulenger, 1892 ヒメハブ

T. flavoviridis flavoviridis (Hallowell, 1860) ハブ

T. f. tokarensis Nagai, 1928 トカラハブ

 考察

 生息分布の特異性 分布特性によって現在の鹿

児島産のヘビ類は次の 4 グループに区分される.

①タカチホヘビ,ヤマカガシ,マムシおよびヒメ

ハブは,日本列島と中国大陸でなんらかの系統的

な関連をもつ種(大陸にも同亜種が分布するもの,

別亜種が大陸に分布するもの,姉妹種が大陸に分

布するもの)である.②シマヘビ,ジムグリ,ア

オダイショウ,ヒバカリおよびシロマダラは,日

本列島(旧北区系)の固有種.③リュウキュウア

オヘビ,アカマタ,ガラスヒバァ,ヒャン,ハイ,

ハブ,トカラハブおよびアマミタカチホヘビは,

奄美群島(東洋区系)の固有種.④メクラヘビは

汎世界的分布を示す種である.

 蛇の体型 ヒメハブやマムシは体型が太短型,

ガラスヒバァは普通のヘビ型,細長型,そしてメ

クラヘビ,ヒャン,ハイは頸のくびれのない蛇で

ある.

 尾の形態 メクラヘビ,ヒャン,ハイは,尾が

短く,その先端は円錐状(ボールペンの先のよう

な形)に尖る.これらの種は尾部先端をスルスル

と土の中へ潜り込ませ,体を後方へ推し進め,土

の中に潜り込むのに大変有利な形態と能力をも

ち,ミミズを餌としている.尾部の形態は食性と

行動によく適応している.

 幼体と成体の模様の違い シマヘビ,アオダイ

ショウ,ジムグリは成長に伴い体の模様が著しく

変化する.シマヘビやアオダイショウの幼蛇の体

には,はしご状の斑紋が並ぶ.これはマムシの模

様に擬態していると思われる.またジムグリの幼

蛇は鮮やかな色彩の模様をもち,これはわざと目

立つことで身を守る警告色といえる.

 体色の個体変異 ヘビ類には体色の個体変異が

みられるため,外形や色彩による目視だけの同定

は当てにはならない.黒化型の変異がでる種はシ

マヘビが最も多く,次いでトカラハブ,稀ではあ

るがハブやヤマカガシでみられる.成体の模様や

色彩の変異が多いのはシマヘビである.

 食性と生息環境の関係 ヤマカガシ,ガラスヒ

バア,ヒバカリ,ヒメハブおよびマムシは,湿地

や水辺を好む.いずれの種もカエルを捕食する.

シマヘビ,ジムグリおよびシロマダラなどは,や

や乾燥した環境を好み,ネズミもしくはトカゲな

どを食する.当然のことであるが食性と生息環境

は密接に関係する.

 樹上性と地上性 奄美大島産のハブは地上でみ

られることが多いが,徳之島産のハブは樹上が多

い.その理由としては,奄美大島は地上を這う餌

生物が豊富であるが,徳之島はやや乾燥気味で地

上を這う餌生物が少なく,樹上の小鳥類が主な餌

であるからと思われる.またトカラ列島の宝島に

生息するトカラハブは,鳥類の渡りの時期(春の

渡り・秋の渡り)に樹上に登る傾向がある.

 夜行性と昼行性 動物の習性を現す用語に昼行

性と夜行性がある.一般的にシマヘビ,アオダイ

ショウ,ジムグリ,リュウキュウアオヘビおよび

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表 2 . 鹿児島県内に生息する陸生ヘビ類について. 種(亜種) 分布 形態 生態 備考 メクラヘビ 琉球列島全域に分布してい るが,鹿児島県本土南部地 域の海岸線沿いの無霜地帯 では普通にみられる. 体色は黒色から濃褐色.大きさ・形・体の色はミミ ズそっくりである.体長 20cm 足らずの世界最小の 蛇.体全体が極めて細く,首のくびれがない.一般 の蛇と異なり,頭骨をなすそれぞれの骨がしっかり 結合して箱状になっている. 地面に潜っていることが多く,体の構造は地中生活 に適応し,自力で土の中を動き回る.尾の先をスル スルと土の中へ潜り込ませ,体を後方へ推し進める のに大変有利な体形と能力を持っている.地表に出 し観察すると,蛇の移動方法,いわゆる蛇行をし, 舌をペロペロと出す. メクラヘビは雌だけで単為生殖が できることも手伝って,土中に紛 れ込んで分布を広げることができ る.別名,植木鉢蛇とも呼ばれる. 土つきの植木等で分散する. タカチホヘビ 本州, 四国, 九州に分布し, 中国の東南部に分布してい る. 小さな蛇で,全長 25–46cm ,全身は紫がかった褐色 で背の中央に褐色の筋が走っている.鱗はビーズ状 で,光沢がある.尾部の腹面の尾下板・肛板ははし ご状. 夜行性で, 主に森林の林床や石の下などでみつかる. 車に引かれた個体がみつかることもある.地面によ く潜り,主にミミズなどを食べている. 鹿児島県本土の確認事例は,①渓 流沿いの堆積した落ち葉の下.② 林道沿いの土砂崩れ現場の砂礫の 下であった. アマミタカチホヘビ 固有種.奄美大島 ・ 徳之島 ・ 沖縄島・渡嘉敷島だけに分 布. 全長は 20–55cm で,スマートな体形をしている. 体色は,灰色がかった黒で,腹面は黄色になってい る. 著者らの幼蛇の観察では白灰色がかった黄色で, 尾下板・肛板ははしご状. 陰湿な森林の中などを好んですみ,朽木や腐植物質 などの下でみつかる. 地面に潜っていることが多く, ミミズを食べているようである. 徳之島の確認例では,湿地の周縁 部の堆積した落ち葉の下で確認し た. シマヘビ 日本列島固有種.北海道, 本州,四国,九州とその周 辺の島々に分布する. 全長は 80–180cm で,シマヘビの名のように,地色 の淡褐色に黒褐色の 4本の筋が走る.体色の変異は 広く,全身真っ黒な個体もある.幼蛇の体色は,親 とかなり異なり,背中側の地色は灰色ないし赤みが かった茶色. 食性は幅が広く,主にカエル類とトカゲ類を食べる が,鳥類や哺乳類も捕食する. 7–8 月に 4–15 個を 産卵する.子蛇は 40–50 日で孵化する.アオダイシ ョウやジムグリと比較し,攻撃性の強い種である. 鹿児島県内の農耕地・河川敷・原 野での確認が最も多い種である. 全身真っ黒な個体はカラス蛇とよ ばれる. ジムグリ 日本列島固有種.北海道, 本州,四国,九州と周辺の 島々に分布する.対馬にも 分布する. 全長 80–120cm で,背面は淡褐色で,小さな黒い点 が散在し,腹面はクリーム色の地に黒い斑紋がチェ ック状に並ぶ.幼蛇の背面は,鮮やかなオレンジ色 ないし赤褐色の地に,黒褐色の斑点や横帯が並び, 頭には逆Ⅴ字型の模様. 人家のそばには出没せず,草地や笹原,畑,山地に 生息.食性は鼠食いで,ジムグリの名のように,鼠 の巣穴に潜りこんで,ハタネズミやヒミズ・モグラ などの小型哺乳類を捕食している. 5–6 月が交尾期 で, 7–8 月に 2–8 個の卵を産む.幼蛇は 47–55 日で 孵化する. 鹿児島県本土・屋久島の調査では 農耕地・河川敷・原野で稀にみら れるが,シマヘビ・アオダイショ ウと比較して,多い蛇ではない. アオダイショウ 日本列島固有種.北海道, 本州,四国,九州と周辺の 島々に分布する.対馬にも 分布する. 日本列島産では最大の蛇で,全長 100–200cm .全身 の地色はオリーブ色で,暗褐色の不明瞭な 4本の縞 がある.幼蛇は成体と体色が異なり,はしご状の斑 紋が並んでいるため,マムシやシロマダラと間違え られる. 主にネズミなどの哺乳類と鳥類を捕食する.このた め,人家にも棲みついている.人間の一番身近にい る蛇で,木にもよく登る. 5–6 月が交尾期で, 7–8 月に 4–17 個の卵を産む. 幼蛇は約 2ヵ月で孵化する. 孵化したばかりの幼蛇は全長 40cm 程度である. 鹿児島県本土では,人間の生活域 での確認である.生息数は,近年 は減少傾向にあり,調査では,ほ とんどみられなくなった.

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表 2 .続き. 鹿児島県内に生息する陸生ヘビ類について. 種(亜種) 分布 形態 生態 備考 リュウキュウアオヘビ 固有種.宝島・奄美諸島か ら沖縄諸島,久米島まで, ほとんど各島に分布してい る. 体長は 60–90cm .背面は灰色かつた黄褐色で,尾方 に向かって色調が暗くなり, 2 条または 4 条の暗色 縦条をそなえている個体が多い.体色には変異が多 く,緑がかった個体から全体に黒っぽいものまであ る. 森林や草地にもいるが,特に水辺の草むらに多い. 昼間普通にみられる蛇の一つで,森林や草地にもい るが,とくに水辺の草むらに多い.食性はミミズを 食べる.宝島で道路に散在する落ち葉の堆積物に潜 り込んでは数分で出てきて,次の堆積物に潜り込ん でいく行動を観察した. 著者の観察事例では,宝島産の本 種は,成体のほとんどが 60cm 前 後であり,奄美本島 ・ その他の島々 との比較では矮性傾向がみられる. アカマタ 固有種.奄美諸島・沖縄諸 島に分布する. 体長は 80–200cm 前後の大型の蛇.背面は赤褐色で 大きな黒斑の列を備え,腹面は黄白色で赤と黒の大 きな文様が目立つ美しい蛇. ごく普通にみられる.夜行性で,地上で活動する. 食性は幅が広く,カエル類・トカゲ類・魚類・小鳥 類・ネズミ類などを食べる.性質は粗く地元ではマ ッタブと呼ばれ,ハブを食うヘビとして知られる. 本種の特徴の一つに独特の体臭が あり,強烈な腐敗臭を放つ.夜間 調査で確認される最も多い種であ る. シロマダラ 固有種.本州・四国・九州 に分布している. 体長は 30–70cm 前後の小型の蛇.背面は淡灰褐色 または灰褐色.胴に 40個内外,尾に 15–20 個ぐら いの黒褐色の横帯がある.体色・模様から,アオダ イショウの幼蛇が本種とよく間違われる. 食性は,主に爬虫類食で,トカゲ・カナヘビなどの トカゲ類と小型のヘビ類を食べる.夏に 2–9 個の卵 を産む.生態は夜行性で昼間は全く活動しない蛇で ある. 観察例として,盛夏の早朝,畦で 休息する個体.夜間の雨の中を移 動する屋久島の個体.古い倉庫の 敷板の下で分散した状態で,数個 体同時に確認した. ヒバカリ 日本列島固有亜種.本州, 四国,九州と周辺の島々に 分布する. 全長は 40–50cm で,おとなしい蛇である.背面は 褐色で,腹面は黄褐色,頭部はやや黒ずみがかって いて,頸の両側に黄色い斑紋がある.タカチホヘビ と間違われる. 田んぼや池などの水辺で,よくみられる.食性は, カエルやオタマジャクシ,魚,ミミズなど食べる. 7–8 月に 2–10 個の卵を産む. 亜種として長崎県の男女群島から ダンジョヒバカリ,朝鮮半島,沿 海州にタイリクヒバカリという亜 種が知られている. ガラスヒバァ 固有種.奄美・沖縄諸島に 分布.亜種として宮古島に はミヤコヒバア,八重山諸 島にはヤエヤマヒバアが生 息する. 全長 75–1 10cm 前後の中型の蛇.背面はやや緑がか った黒褐色に黄色の細い横帯がある.尾長指数 (31) で尾がかなり長い.尾が長いせいか,捕獲したとき 尾が切れている個体が多い. 森林から集落付近まで,どこでも普通にみられる. 特に湿地や田の畦など水のある場所を好むようであ る.昼でも夜でも活動する.水面を上手に泳ぐ蛇で ある.食性はカエル類でヌマガエル・リュウキュウ カジカガエルなどであり, オタマジャクシも食べる. ガラス (カラス )のように黒いヘ ビ (ヒバア )という意味の方言に ちなんだ名前である.生息地は, 鹿児島県本土のヤマカガシの生息 環境に似る. ヤマカガシ 本州,四国,九州と周辺の 島々に分布する.大陸では 沿海州,朝鮮半島,中国東 南部のタイリクヤマカガ シ,台湾のタイワンヤマカ ガシの亜種がある. 全長は 60–160cm で,背面は,褐色の地色に黒斑が 入り交じり,頸には大きな黒斑と黄色い帯がある. 若い個体では,この模様ははっきりしている.年齢 を重ねた成体では,模様は不明瞭になり,全体的に 褐色になる.また,この模様にも変異があって,赤 斑の出ないものなどがある. 頸の皮膚の下には,頸腺という毒腺があり,皮膚が 破れると毒液が出てくる.また,上顎の奥にナイフ 状の大きな牙があり毒液が傷口に入るようになって いる.頸の毒は,敵から身を守るため,牙の毒は, 餌を動けなくするのに役立っているとされている. 食性は,カエル食い,魚も食べる.交尾は春よりも 秋に多くみられ,初夏に 8–30 個の卵を産む. 鹿児島県本土では,田んぼや池, 川などの水辺で最も普通にみられ る蛇である. 自宅の犬小屋での 行動で,犬に追いつめられ頸の部 分を広げて,頭を下げる独特の威 嚇姿勢を観察した. ヒャン ヒャン 固有亜種.奄美大島とその 属島 (加計呂麻島 ・ 与路島 ・ 請島 )に分布.コブラ科の 毒蛇であり,毒性は中枢神 経毒である. 全長は 30–60cm 前後の小型で美しい蛇である.背 面はオレンジ色,腹面は黄白色,背面中央に一本の 細い縦条があり,さらに数個の幅広い黒色黄帯があ る.尾は短く,尾端は円錐状 (ボールペンの先のよ うな形 )に尖る.小型で美しい蛇だが,土地の人は この蛇を恐れている. 捕獲すると,尾の先端を押し付ける行動をとる.土 地の人はこの行動を,尾の先の毒針で刺すと恐れて いる.しかし,その機能はない.地中に潜っていく 行動は,メクラヘビに似て,尾の先をスルスルと土 の中へ潜り込ませ姿を隠す.文献では夜行性で昼間 は全く活動しないとある.食性は小型のトカゲ類や ミミズ等である. 極稀な蛇である.著者の観察例で は真昼に活動する個体をみている (13 時, 龍郷町の集落地の草地, 晴 天 ). これまでの 4 回の確認例から 生態は,山地から平地まで生息し, 昼でも夜でも活動する.

(8)

ハイ 固有亜種.徳之島・沖縄諸 島に分布.ハイとヒャンは 分類学的には同一種とさ れ, 亜種として分けている. ヒャンと同じで,美しい蛇 である. 全長は 30–55cm 前後の小型で美しい蛇である.背 面はオレンジ色,腹面は黄白色. 3–5 本の黒い縦条 があり,さらに,その縦条を中断する細い横帯があ る.尾は短く,尾端は錐状 (ボールペンの先のよう な形 )に尖る.小型で美しい蛇だが,毒性は中枢神 経毒であり,土地の人はこの蛇を恐れている. 文献では夜行性で昼間は全く活動しないとあるが, 著者の観察例では真昼に活動する個体をみている (①夏, 15 時,晴天,徳之島井ノ川岳稜線・②秋, 10時,曇天,徳之島三京林道・③秋,徳之島町の 集落地の草地,晴天 ).これまでの 3 回の確認例か ら生態は,山地から平地まで生息し,昼でも夜でも 活動する. 食性は小型のトカゲ類やミミズ等である. 極稀な蛇である.著者の観察例 3 例とも晴天の昼間であるが,夜間, 森林内には調査に入らないので確 認例がないのであり,夜間,活発 に活動しているかもしれない. マムシ 北海道,本州,四国,九州 と周辺の島々に分布する. 大陸の沿海州,朝鮮半島と 中国南部には別亜種のタン ビマムシがいる. 全長 40–50cm,雌の方がやや大きくなる.太短い 蛇で,尾も短く,顎が張り出している.背面は,淡 褐色の地に黒褐色の銭形の模様が特徴的で,模様や 色彩には変異がある.幼蛇では尾の先端が黄色であ るが,成長するとこの色は失われる. 山地の草むらや林の中,谷間などでみられる.水辺 を好むようである. 食性の幅は広く, カエル ・ トカゲ ・ 鳥・ネズミなどを食べる.鼻孔と眼の間には,赤外 線を感じるピット器官という凹みがあり,餌の体温 を感じる.日本列島産蛇類で,唯一胎生で 2–13 頭 の子供を産む. 鹿児島県本土・屋久島では普通に みかけ,特に,種子島は生息密度 が高い.鹿児島県内では谷津田 ( 迫田 )環境や杉林などの人工林に 多い. ヒメハブ 固有種.奄美大島とその属 島・徳之島・沖縄諸島. 全長 30–80cm で,体型は,小さくてずんぐりして いる.体色は赤褐色 ・ 灰褐色 ・ 暗褐色と変異があり, 普通は体の背面が黄褐色または灰褐色で,暗褐色の 大きな斑紋があり, 腹面は暗褐色の斑点が散在する. 頭は三角形で口先は平たく突出. 生態は,山地森林の湿った場所や水辺に多く,特に 渓流沿いでみかける.食性は,小型の哺乳類 ・ 鳥類 ・ 爬虫類・両生類と幅広い.ハブ毒ほど強くないが注 意が必要.攻撃性も弱いこともあり,沖縄ではニー ブヤー (寝ぼけ者 )ともよばれている.山地から平 地にかけて生息する. 奄美大島・徳之島では普通にみか ける蛇であり, ハブより多い. 台湾, 南中国の近縁種は,高山地帯に分 布している.動物地理学的にも興 味深い種類である. ハブ ハブ 固有亜種.奄美大島とその 属島・徳之島・沖縄諸島. 毒性は血液毒である. 全長 100–220cm 前後,ハブ属でも最大級で攻撃性 が高い.体色は変異が多く,土地の人は体色によっ て金ハブ・銀ハブと呼んでいる.徳之島には黒いハ ブもいる.一般的に,背面が黄褐色で,暗褐色の不 規則な独特の斑紋がある.頭は大きく長い三角形を している. 生態は山地・平地・海岸線の岩場にも姿を現す.食 性は,幼蛇時はトカゲ類などを餌とし,成蛇になる と哺乳類や鳥類などの温血動物を好んで食べる.そ の他いろいろな脊椎動物を食べる.夜行性.著者の 観察では,奄美大島では地上を這う個体を,徳之島 では樹上での確認例が多いようである. 著者の観察では,秋,徳之島で 13 時頃, 2 m大のハブが,大木を上 手に上り,枝伝いに水平に泳ぐよ うな動きで 5 m移動し,枯れ枝に 体重がかかった瞬間,枝が折れ, 枝もろとも落下してきた.ハブは 頭上も注意. トカラハブ 固有亜種.小宝島と宝島だ けに分布. 体長は 60–115cm で,ハブに比べやや小型である. 体色は,白色 (淡桃色 )の地に黒い文様を備えたも のと,体全体が黒化したものとの二型がある.白と 黒の出現率は九対一の割合で白色系のほうが多い. 捕獲した場所は,いずれも沢沿いや湧水池であり, 餌となるリュウキュウカジカガエルの生息域と重な る.地域の人の話では,春と秋の渡り鳥の季節は地 上よりも,樹上のハブが多く,渡り鳥の小鳥を捕食 するためである.また,その年の気温にもよるが 12月から 3月まで冬眠する. 著者らの二時間の調査 (1998 年・ 盛夏・夜間 )で白色型だけ 4頭捕 獲した.このことから島内の生息 状況は白色が多く,絶対数も多い ことが推察される. 分布,形態および生態の内容には,中村・上野(1976) ,疋田(1989)の情報を含む.

(9)

図 2.鹿児島県のヘビ類.A:メクラヘビ,1992 年 10 月 1 日,宝島;B:タカチホヘビ,2007 年 8 月 25 日,さつま町;C:ア マミタカチホヘビ,2012 年 12 月1日,徳之島;D:シマヘビ,2007 年 7 月 9 日,薩摩川内市;E:ジムグリ,2002 年 9 月 10 日,屋久島;F:アオダイショウ,2007 年 8 月 9 日,伊佐市;G:リュウキュウアオヘビ,2007 年 8 月 29 日,奄美大島;H: アカマタ,2007 年 6 月 11 日,奄美大島;I:シロマダラ,1995 年 4 月 10 日,旧山川町.

(10)

図 2.続き.鹿児島県のヘビ類.J:ヒバカリ,1995 年 6 月 1 日,南九州市;K:ガラスヒバア,2007 年 8 月 28 日,奄美大島;L: ヤマカガシ,2006 年 8 月 24 日,種子島;M:ヒャン,1986 年 9 月 1 日,奄美大島;N:ハイ,1985 年 9 月 3 日,徳之島;O: マムシ,2007 年 8 月 2 日,姶良市;P:ヒメハブ,2012 年 1 月 19 日,徳之島).Q:ハブ:1992 年 7 月 20 日,奄美大島;R: トカラハブ,1998 年 7 月 30 日,宝島.

(11)

ヤマカガシは昼行性が強く,シロマダラ,アカマ

タ,ハブ,ヒメハブおよびマムシは夜行性が強い

と考えられている.しかし習性は多様であり,昼

行性と夜行性をはっきり区別することは困難であ

るため,一般的な傾向として捉えるべきである.

著者らはシマヘビやリュウキュウアオヘビが昼間

に,アカマタが夜間に寝ているところを観察して

おり,一般的な習性とは真逆な事例もあった.

睡眠中のヘビの共通点としては,①地上より

20–30 cm の高さの小灌木または落枝の上,②眼

(瞼はないため)は開いたまま,体全体が脱力状態,

③目覚めは視覚や聴覚からではなく,触覚からの

刺激であった.

 人為的な移入種によるヘビ相の攪乱と地域絶滅 コ

イタチはかつて奄美群島への地域外移入種(鼠害

対策)として導入された.喜界島,沖永良部島,

与論島などのヘビ類の激減はコイタチが原因であ

ると考えられている.奄美大島では外来生物マン

グース(ハブ害対策)によって生態系の攪乱が起

こり,現在大きな環境問題を起こしている.

 毒蛇 ヤマカガシ,ヒャン,ハイ,マムシ,ヒ

メハブ,ハブおよびトカラハブは毒蛇である.種

により毒成分の違いはあるが,いずれの種も取扱

いに十分な注意が必要である.

 引用文献

疋田 努.1989.日本の両生爬虫類相 — 分布のなりたち, pp. 3–13.大阪市立自然史博物館(編),日本の両生類 と爬虫類.大阪市立自然史博物館,大阪. 環境庁.1993.日本産野生生物目録 — 本邦産野生動植物の 種の現状.自然環境研究センター,東京.80 pp. 中村健児・上野俊一.1976.原色日本両生爬虫類図鑑.保育社, 大阪.214pp. 鮫島正道.1983.沖永良部の動物,pp. 115–135.鹿児島短 期大学付属南日本文化研究所(編),南日本文化第 16 号. 鹿児島短期大学付属南日本文化研究所,鹿児島. 鮫島正道.1985.徳之島の動物,pp. 115–143.鹿児島短期 大学付属南日本文化研究所(編),南日本文化第 17 号. 鹿児島短期大学付属南日本文化研究所,鹿児島. 鮫島正道.1986.奄美大島の動物,pp. 89–120.鹿児島短期 大学付属南日本文化研究所(編),南日本文化第 18 号. 鹿児島短期大学付属南日本文化研究所,鹿児島. 鮫島正道.1989.加計呂麻島・与路島の動物,pp. 83–97. 鹿児島短期大学付属南日本文化研究所(編),南日本文 化第 21 号.鹿児島短期大学付属南日本文化研究所,鹿 児島. 鮫島正道.1991.与論島の動物,pp. 71–84.鹿児島短期大 学付属南日本文化研究所(編),南日本文化 24 号.鹿 児島短期大学付属南日本文化研究所,鹿児島. 鮫島正道.1994.脊椎動物,pp. 136–137.鹿児島県立博物 館(編),鹿児島の自然調査事業報告書 I— 南薩の自然. 鹿児島県立博物館,鹿児島. 鮫島正道.1994.湯湾岳の動物,pp. 59–65.鹿児島短期大 学付属南日本文化研究所(編),南日本文化第 27 号. 鹿児島短期大学付属南日本文化研究所,鹿児島. 鮫島正道.1995.喜界島の動物,pp. 83–95.鹿児島短期大 学付属南日本文化研究所(編),南日本文化 28 号.鹿 児島短期大学付属南日本文化研究所,鹿児島. 鮫島正道.1995.下甑島の両生類・爬虫類相,川内川の両生類・ 爬虫類相,pp. 153–158.鹿児島県立博物館(編),鹿児 島の自然調査事業報告書 II— 北薩の自然.鹿児島県立 博物館,鹿児島. 鮫島正道.1995.東洋のガラパゴス — 奄美の自然と生きも のたち.南日本新聞社,鹿児島.177 pp. 鮫島正道.1996.奄美の両生類・爬虫類,pp. 68–79.鹿児 島県立博物館(編),鹿児島の自然調査事業報告書 III— 奄美の自然.鹿児島県立博物館,鹿児島. 鮫島正道.1997.大隅の両生類・爬虫類相,pp. 60–63.鹿 児島県立博物館(編),鹿児島の自然調査事業報告書 IV— 大隅の自然.鹿児島県立博物館,鹿児島. 鮫島正道.1998.熊毛の両生類・爬虫類相,pp. 78–83.鹿 児島県立博物館(編),鹿児島の自然調査事業報告書 IV— 熊毛の自然.鹿児島県立博物館,鹿児島. 鮫島正道.1999.鹿児島の動物.春苑堂出版,鹿児島.229 pp.

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