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総説 無脊椎動物におけるバイオミネラル形成のタンパク質による制御と機能性材料への応用

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Academic year: 2021

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(1)Mem. Institute of Advanced Technology, Kinki University No. 10 : 1 ∼ 11(2005). 1. 総説 無脊椎動物におけるバイオミネラル形成のタンパク質 による制御と機能性材料への応用 宮 下 知 幸 1 生物は骨に代表されるように無機材料を主成分として様々な形態と機能を持つ硬組織を形成することが できる。無脊椎動物が合成するバイオミネラルの中には形態が極めて精巧であり、ナノメートルサイズで 微細加工されたものもある。これらは最先端の技術をもってしても人工的に模倣することは不可能といえ る。この形成過程はタンパク質により制御されており、遺伝的にプログラミングされたものである。ここ 数年、バイオミネラルの形態制御に関与するタンパク質が報告され、これらのタンパク質を利用すること によりバイオミネルの形態を人工的に制御できる可能性がより現実的となった。さらに、最近、これらバ イオミネラルを模倣した機能性材料の開発が盛んに研究されている。本総説ではバイオミネラルの形態を 制御するタンパク質を中心にを解説し、様々な分野への応用の現状を述べる。 1.序 論 現在の工業的技術を用いて作られる素材合成は、無機的材料を用いて高い活性化エネルギーを与え、高 温下で作られたものである。したがって合成には膨大なエネルギーを消費するとともに地球温暖化の原因 の一つと言われる二酸化炭素を放出する。一方、生物は体の内外に屈曲性および強度に優れた硬い組織 (硬組織)を合成することが知られている。この硬組織形成反応をバイオミネラリゼーションといい、細 菌から植物および動物まで広範囲に観察される。哽組織の合成は常温、常圧下、ほぼ中性の条件下で行わ れ、環境調和型の材料合成といえる。この点は工業的素材合成と大きく異なる。これらの多くはカルシウ ムに代表される無機質を主たる材料とし、少量の有機質を含んだ複合材料であり、生物に応じたさまざま な形態や機能を持ち、極めて多様性がある。タンパク質を媒介として行われる合成は遺伝的にプログラミ ングされたもので、ナノメートルオーダーでサイズが制御されており、生物のナノテクノロジーといえる。 現在のナノテクノロジーの興隆は LSI(Large Scale Integration:高集積回路)の発展に負うところが大 きい。集積回路は大きなシリコン単結晶を用いて微細加工技術により作られるものであり、トップダウン方 式で開発が行われてきた。代表的なものとして光リソグラフィーによる微細加工技術があり、現在の集積技 術の中心となっている。これに対し、分子ナノテクノロジーでは分子デバイスを規則正しく集合させ、より 複雑な超高分子複合体を作り上げるというボトムアップ方式を使用している。このようなことは生物がバイ オミネラルを合成するときには普通に行っていることで、 生物の持つ超微細加工技術である。 生物はナノメー トルサイズの微小無機結晶を作り、それら無数の結晶を規則正しく整列配位し、組み立てるという作業を常 温・常圧で行っているのである。これらの工程はタンパク質を媒介として行われ、自己組織化プロセスと言 える。これを模倣することにより、環境調和型のさらに発展した材料合成が可能となる。今後、バイオミネ ラル合成の制御機構が解明され、タンパク質が同定されれば、これらを人工的に利用することにより、様々 な分野での応用が期待される。幾つか例を上げると、新しい光学材料や半導体材料の作製。哽組織の持つ 高い硬度、屈強度および弾性の大きい性質を模倣した無機ー有機の複合材料の作製による医学的インプラ ント(生体適合材料)の開発や骨や歯の治療・修繕への応用。さらには、バイオミネラルの形成の分子機 構の解明により胆石や尿路結石などの形成を抑制する方法の開発が期待される。酵素化学的分野では触媒 保持材料、酵素固定化担体の製造などがある。また、磁性細菌を利用あるいは合成過程を制御することに よりサイズおよび形状が一定も磁性粒子を作成すれば、ドラッグデリバリーや酵素固定等に利用できる。 1. 近畿大学生物理工学部遺伝子工学科  近畿大学先端技術研究所.

(2) 2. Memoirs of Institute of Advanced Technology, Kinki University No. 10 (2005). 本総説では、生物、特に無脊椎動物や細菌が合成する様々なバイオミネラルに焦点を当て、その形態形 成を制御するタンパク質について解説するとともに、バイオミネラル形成の人工的制御と材料分野への応 用について言及する。 2.Silica とシリコンバイオテクノロジー 2003 年 8 月 22 日の US News Flash に興味深い記事が掲載された。以下その訳である。 米ベル研が海綿動物から光ファイバ状物体を発見、 「曲げに強く、ファイバ製造コスト削減のヒントに」 米 Lucent Technologies の米 Bell Labs(ベル研)の研究チームは、深海に住む海綿動物の体内から、通信 ネットワークで使用する光ファイバとよく似た構造の物体を発見した。Lucent Technologies 社が米国時 間 8 月 21 日に明らかにしたもの。研究者らは英国の科学雑誌 Nature(同日版)の中で、 「この深海海綿 のガラス繊維は、工業製品である光ファイバよりも技術的に相当優れている可能性がある」と報告してい る。この発見について、ベル研材料科学者の Joanna Aizenberg 氏は「海綿の生体光ファイバーが、生物 から着想を得た新手法をもたらし、より良い光ファイバの素材やネットワークを実現する可能性がある」 と述べる。 「母なる自然が持つ、非の打ちどころのない素材を作り出す能力には驚かされる。生物の研究 をさらに進めれば、自然からいかに多く学べるか気付くだろう」 (同氏)。研究対象の生物は、海綿の一種 で熱帯の深海に住む“Euplectella(カオロウドウケツ) ”。英語では一般的に“Venus Flower Basket(ビー ナスの花かご) ”と呼ぶ。体長は 15cm ほどで、ガラス状シリカによる円筒形の網のような複雑な骨格を持 つ。骨格の根元はガラス繊維が束状になっており、それがちょうど王冠を逆さまにしたように外部に広がっ ている。このガラス繊維は 2 インチ∼ 7 インチ(約 5cm ∼ 18cm)の長さがあり、太さは人間の髪の毛 ほどという。ベル研の研究チームは、この海綿のガラス繊維が異なる光学特性を持つ複数の層に分かれて いることを発見した。その構造は通信用光ファイバと似ており、高純度のシリカ製ガラスの周囲を有機物 が包む筒状になっている。実験したところ、このガラス繊維は通信用光ファイバと同じ原理で光をよく通 すという。海綿の光ファイバの透過率は低く、現在の通信ネットワークには使えない。しかしベル研では、 「極めて柔軟性が高いので、折れて使用不能にならないという大きな長所がある」としている。一般的に 通信用光ファイバは曲げに弱く、折れると使えなくなってしまう。折れたファイバは交換するしかなく、 コストと手間がかかる。それに対し海綿の光ファイバは、 「硬い結び目を作れるほど柔軟で、通信用光ファ イバと違いその状態でも折れない」(Aizenberg 氏) 。研究チームによると、 「現在光ファイバの製造には非 常に高い温度と高価な設備が必要だが、海綿の光ファイバには海水の温度で生成できるというメリットが ある」という。 「こうした自然の生成プロセスをまねることができれば、光ファイバ製造にかかるコスト を削減できるだろう」 (ベル研) [Nikkei Business Publications. Inc IT Pro より引用](1)   この記事の内容はある種の海綿動物の合成するシリカ哽組織が光ファイバの素材として利用できる可能 性を示唆している。この特異的タンパク質が同定されれば、それを用いて有用なシリカを合成できる。最近、 シリカ合成に関与する有用なタンパク質・遺伝子が同定され、注目されている。 (a)Silaffin 高度に複雑な形態を持つシリカを合成している生物は海綿動物以外に幾つか知られている。植物性プラ ンクトンの一種である珪藻や放散虫はシリカ(珪酸:SiO4)からなる殻に覆われている。 この被殻には様々な形があり、電子顕微鏡で観察すると、ナノメートルオーダーの芸術的ともいえる微 細且つ巧妙な模様が存在しており(図 1 A ,B) 、複雑・精緻で、真に自然が作り出す最高の芸術作品の一 つである。則ち、これらの生物はナノテクノロジイーで微細加工されたガラスの殻に入った細胞といえる。.

(3) 3. 図 1 珪藻の殻. A. B. この殻は珪藻の種類により様々な形を持つため形と模様で珪藻は分類され、殻の形や構造の対称性によっ て円形や多角形を呈す中心珪藻と細長い羽状珪藻とに大きく 2 つのグループに分けられる。 このような構造がどのようにして作られるのかの多くはまだ未知であるが、最近ある種の珪藻において 珪酸塩の被殻形成を制御するタンパク質が幾つか同定された。一つはシリコントランスポーター分子の同 定であり(2) 、これにより細胞内にケイ酸を高濃度に蓄積する機構が解明された。さらに、シリカ形成を 直接制御するタンパク質が幾つか同定された。ドイツのクレーガーらはある種の珪藻の殻よりフッ化アン モニウムを用いてタンパク質を抽出し、酸化ケイ素(シリカ)の結晶形成を触媒する酵素 Silaffin を単離・ 同定した。Silaffin には幾つかの種類があるが、この内、Silaffin -1A1 は翻訳後修飾を受け、15 残基が機能 的なタンパク質として働く。Silaffin -1A1 を珪酸の溶液に加えると、シリカのナノメートルサイズの球が、 ほんの数秒で生成された(3) 。 遺伝子の構造から Silaffin 1- A 前駆体は 265 残基から構成されることが解っている。前駆体が合成され た後、翻訳後プロセッシングで切り出されたものが Silaffin 1- A であり、プロセッシング後さらにリジン 残基とセリン残基のそれぞれにポリアミンとリン酸の付加が起こり、図 2 に見られるような構造で機能し ている。珪藻の殻よりフッ素で抽出した場合は、リン酸存在下で反応を行わないと、シリカの合成は起こ らないことから、リン酸は Silaffin がその機能を発揮するうえで、必須であり、さらに、ポリアミンは酸 性下でのシリカ合成に必要である(3) 。. 図 2 Silaffin 1- A. この構造部分を参考にして米国のグループがこの配列を含む 19 個の合成ポリペプチドを合成し、ポリ マー合成時、ポリペプチドを混合させ、光重合反応でポリマーを合成を行った。すると、ポリペプチドが ポリマーの表面に規則的間隔で並んだものが合成され、次に、珪酸溶液に浸すと、ペプチドの濃度の高い 部分で、大きさが 450nm ぐらいのシリカのナノ球が生じた。シリカのナノ球は一定の間隔で並んでおり、 ホログラムが形成された(図 3)。反応は室温、常圧、ほぼ中性の pH で行われ、できあがったホログラム は新しいタイプの光学材料として使用できる可能性がある(4)。.

(4) 4. Memoirs of Institute of Advanced Technology, Kinki University No. 10 (2005). 図3 基盤上におけるシリカ球の形成    a:珪酸溶液との反応前    b:反応後. Silaffin はリン酸とポリアミンの持つ静電気で相互作用し、自己集合するものと考えられ、自己集合する ことがシリカ合成で重要であることが示された(5)。 Silaffin -1A は sil1 gene にコードされ、翻訳後修飾で、長さの異なる三つのポリペプチドが生じる。その 一つが Silaffin-1A1 であり、他に 18 残基からなる Silaffin -1A2 及び Silaffin -1B が生じる。Silaffin -1A1 あ るいは Silaffin -1A2 を用いて pH6.4 でシリカの合成を行うと、図 4 に見られるようなシリカ球が合成され た(6) 。. 図 4 silaffin -1A1 と silaffin -1A2 によるシリカの合成 A:silaffin -1A1(■)と silaffin -1A2(▲)の pH 依存性シリカ合成 B:at pH 6.4、3 mg/ml の silaffin -1A1 により合成されたシリカ球 C:H pH 6.4、3 mg/ml の silaffin -1A2 により合成されたシリカ球 さらに、珪酸溶液中の Silaffin - 2 と Silaffin -1A の相対的濃度を変化させることで、図 5 に見られるよ うに、球状とは異なる様々な形態のシリカの合成に成功している(7)。 以上のように、Silaffin を利用することで、ナノメートルサイズで、合成するシリカの形態を人為的に制 御する可能性が開けた。.

(5) 5. 図 5 Silaffin - 2 と Silaffin -1A 混合物から形成されるシリカ A:Silaffin - 2;0.5 units/ml - Silaffin -1A 0.3 mM, B:Silaffin - 2;5 units/ml - Silaffin -1A 0.3 mM, C:Silaffin - 2;2 units/μl - Silaffin -1A 0.3 mM, D:Silaffin - 2;1.6 units/μl - Silaffin -1A 0.2 mM (b)Silicatein バイオミネラル形成を制御するタンパク質として応用面で最も早く実用化の可能性があるのは海綿動物 の一種である Tethya aurantia の針骨に存在する Silicatein である。針骨はシリカと少量のタンパク質より 構成されるマイクロナノメートルほどのサイズを持つガラスの針である。この針骨より精製された Silicatein はシステインプロテアーゼスーパーファミリーに属するタンパク質で、カテプシンと高い相同性 があるが、活性中心に置換があるためプロテアーゼ活性は有していない(8) 。Silicatein は中性条件下でテ トラエトキシシランに作用し、シリカを合成する機能がある(9)。このことから、Silicatein はテトラエト キシシランの加水分解反応を触媒し、生じたケイ酸に作用してシリカ合成を促進する機能があると考えら れている。通常、シリカの合成は酸あるいはアルカリ条件下で行われる。これに対し、生物由来のタンパ ク質は、中性条件で常温・常圧下でシリカの合成を行う。. Silicatein はこの反応以外に、エトキシシランからシリコンポリマーを合成する機能もあり、有機シリコ ン化合物の温和な条件下での合成が期待される。また、Silicatein の C 末端側長い疎水性領域に続いて同様 な長さの親水領域が存在している。この構造を模倣して、(L - Alanine)30 -(L - Lysine)200 あるいは (L - Cystein) )30 -(L - Lysine)200 といったポリアミノ酸を合成し、同様な実験を行ったところ、前者に 対し後者は非常に効率的にシリカを合成できることが解った。これはシステイン部位が求核基となり、エ トキシシランを加水分解し、ケイ酸を産生したものと推定している。また、長い Lysine 残基はシリカ合成 に関与したと考えている。さらに、疎水領域であるポリシステイン同士で疎水結合し、自己集合している と予想される。(10)Silicatein、や Silaffin、さらに、今後発見されるであろう新規のタンパク質はケイ素 化合物を利用したナノテクノロジー分野に新しい展開・発展をもたらすであろう。 3.Calcium Carbonate(炭酸カルシウム) 無脊椎動物が作るバイオミネラルの多くは炭酸カルシウムを無機材料としている。結晶は方解石とアラ レ石の二つがあり、生物はこのどちらかを利用しているが、真珠貝のように両方作り分けているものもあ る。方解石を利用している例で、最近の US News Flash(2001 年 8 月 23 日)に興味深い記事が掲載さ.

(6) 6. Memoirs of Institute of Advanced Technology, Kinki University No. 10 (2005). れた。ヒトデには目はないが、方解石のマイクロレンズを利用している例である。棘皮動物は体表面に存 在する光受容器官により光を捉えているとされてきたが、この報告は骨格を形成している方解石の結晶が 光感覚受容体としても機能していることを示している。 米 Bell Labs の研究者が、光通信などに応用可能なヒトデの“レンズ”を発見 米 Lucent Technologies の米 Bell Labs(ベル研究所)の研究者が、クモヒトデ類の骨に含まれる石灰と 似た方解石の結晶が、無指向性の光受容器として機能することを発見した。Lucent 社が米国時間 8 月 22 日に明らかにしたもの。詳細を英国の科学雑誌「Nature」の 8 月 23 日号に掲載するという。この発見に より , より優れた光通信機器用マイクロレンズを開発できる可能性があるという。この発見はベル研とイ スラエルの Weizmann Institute of Science、米 Natural History Museum of Los Angeles County の研究 者による国際的な共同研究によってなされた。 クモヒトデ類は蛇尾類とも呼ばれる無脊椎の海洋生物で、小さな円盤状の体から通常 5 本の細長い腕が 伸びており、ヒトデやウニといった棘皮門に属する生物である。今回の研究で、クモヒトデ類の腕の骨は レンズのように光を収束させる球状の物体が連なった構造をしていることが判明した。レンズ表面からの 焦点距離は 5μm で、骨のなかにある神経で光信号を検知できる。神経と数千ある方解石の結晶が組み合 わさることで体表面の広い部分が複眼として機能するため、天敵を発見し逃げるのに役立っているという。 この方解石のマイクロ・レンズでは、複屈折や球面収差(通常のレンズで発生する歪み)をうまく補正で きる。この構造に模倣したレンズを作ることで、光通信機器向け部品や、LSI 設計・製造の EUV(Extreme Ultra Violet: 超 紫 外 線 ) リ ソ グ ラ フ ィ ー 技 術 と い っ た 分 野 で 応 用 で き る と い う。 [Nikkei Business Publications. Inc IT Pro より引用] (11) 数千個の方解石結晶を析出させ、組み立てるという工程は遺伝的にプログラミングされているもので、こ の作業を遂行するタンパク質・遺伝子は同定されていないが、炭酸カルシウムの結晶形態を制御するタン パク質・遺伝子については幾つか報告がある。 (a)Ansocalcin 方解石の結晶形態を制御するタンパク質として Ansocalcin が報告されている。Ansocalcin はガチョウの 卵殻より精製された 15kDa タンパク質である。カルシウム結合能があり、カルシウム非依存的に自己集合. 図 6 カルシウム存在下(A)非存在下(B)における Ansocalcin のゲル濾過クロマ トグラフィー 垂直の点線は、(a)ウシ血清アルブミン(66 kDa) 、(b)卵白 アルブミン(44 kDA) 、 (c)ニワトリリゾチーム(14 kDa).

(7) 7. する性質がある(図 6)。in vitro 結晶形成系を用いて実験したところ図 7 に見られるように Ansocalcin 濃 度に依存して炭酸カルシウムの結晶形態が変化することが解った。Ansocalcin は濃度に依存的に、モノ マーからダイマーさらにはトリマーになる。これは疎水性の部分で会合し、炭酸カルシウム結晶の形態的 変化はこの凝集状態に依存しているてものと考えられる(12)。. 図 7 Ansocalcin の濃度依存的な炭酸カルシウム結晶形態の変化 A:0.0μg/ml;B 50μg/ml;C 100μg/ml;D 250μg/ml;E 500μg/ml; F 1,000μg/ml  Scale bar is 50 ?m; inset scale bar is 10 ?m... (b)N16、Pearlin N16(13)および Pearlin(14)はアラ石構造の結晶から構成されるアコヤ貝真珠層 EDTA 不溶性分画 より抽出・同定された糖タンパク質である。同一のファミリーに属するタンパク質であり、発見当初は真 珠層特異的と考えられたが、方解石構造の結晶から構成される陵柱層においても遺伝子の転写が確認され た(15) 。N16 は不溶性分画より調製した WISM(Water Insoluble Membrane)に付着した状態では平板 状のアラレ石結晶を析出させる(16)。Pearlin を用いた実験でも繊維性タンパク質に固定された状態では 平板状結晶を析出させ、さらに、複合体(17)はこの平板状結晶を成長させる(18)(図 8)。また、 Pearlin は遊離状態では結晶形成阻害機能がある(19)。このような機能は炭酸カルシウムの結晶形態を人 工的に制御するうえで利用できる。. 図 8 シルクフィブロイン上に固定された Pearlin により析出した平板状アラレ石結晶.

(8) 8. Memoirs of Institute of Advanced Technology, Kinki University No. 10 (2005). 4.Iron Oxides(酸化鉄) 磁性細菌は細胞内に小さな鉄をバイオミネラルとして取り入れ、鉄の結晶を細胞内に合成する能力があ る。このため菌体内に 50 ∼ 100nm のマグネタイトの微粒子を 10 ∼ 20 個合成保持している(図 9)。結 晶を構成する物質は酸化鉄の一つで、鉱物学的にはマグネタイト(Fe3O4)、則ち磁石である。これらマグ ネタイトは、菌体内で磁気を感知するコンパスとなっていると考えられる。実際、磁性細菌は地磁気を感 知できるため北半球では北(S 極)に、南半球においては南(N 極)に向かって泳ぐ。細胞内の磁石の粒 子は全体が脂質を含む有機質の膜で覆われている。磁気微粒子形成には幾つかの遺伝子が関与しており、 その一つに magA 遺伝子がある。magA がコードするタンパク質は鉄トランスポーターで、局在部位は細 菌細胞膜では外側にあり、磁性粒子膜上では内側(取り込み)に存在する。このことは磁性粒子は逆転膜 小胞の中に酸化鉄が結晶化したものであることを示唆している(20)。. 図9. 磁性細菌(Magnetospirillum magneticum) (応用物理 67 巻 10 号より引用 ). Mms6 Mms6 は鉄イオンと結合する機能があり、磁気微粒子の結晶化に直接関係している。硫酸第一鉄と塩化 第 2 鉄の溶液を用いた in vitro 結晶形成系で組み替え Mms6 の影響を観察した結果、鉄の結晶表面と結合 相互作用して結晶形態を制御することが解った(21)。Mms6 を加えることにより磁性菌で合成される磁 気微粒子と同様な形態を持ち、サイズが整った多くの結晶が形成された(図 10A)。一方、Mms6 を加え ない場合は形態が様々で不均一なサイズの結晶が形成された(図 10B)。. 図 10 Mms 存在下(A) 、非存在下(B)で合成された磁気微粒子の形態の違い。 矢印は針状の結晶を示す。Scale bar:100 nm.

(9) 9. Mms6 は 133 個のアミノ酸から構成される、12.5 kDa のタンパク質である。長い親水性領域の後に、C 末端に疎水性領域が存在しており、この疎水性領域で自己集合するものと予想される。 磁気微粒子は機能性材料として以下に述べるように様々な可能性を有している。 1.酵素の固定化   磁気微粒子はタンパク質を含む薄い被膜で覆われており、このタンパク質を利用して酵素を結合させ ると通常の固定化と比較して多量の酵素を固定化できる。 2.磁性細菌を利用したバイオレメディエーション   磁性細菌は鉄を取り込む性質がある。遺伝子工学的に他の重金属を取りこめるようにして、環境中の 重金属を取り込み除去する。 3.ドラッグデリバリーシステムの開発   磁気微粒子はタンパク質を含む薄い脂質の被膜で覆われているため分散性に優れ、大きさが 100nm と小さく血管を通過できるサイズである。また、磁気を帯びているため、誘導が可能であり、ドラッ グデリバリーとしては条件が揃っている。. お わ り に 幾つかのバイオミネラルについて、それらの結晶形態を制御するタンパク質・遺伝子が同定され、形態 を制御する条件についても解りつつある。結晶形態制御においては特定の領域間における疎水性相互作用、 静電気的相互作用あるいは分子間ジスルフィド結合により自己集合し、機能しているものと考えられる。 これらのタンパク質の中には制御領域についても同定されたものもあり、この領域のポリペプチドを人工 的に合成し、それらを用いて結晶形態を制御することも行われている。さらに、結晶形態を制御する新規 のポリペプチドを合成する試み(22)や、様々な合成ペプチドをラムダファージのコートタンパク質と融 合させ、ファージデイスプレイにより半導体表面や金属と結合するものを選択することも行われている (23) 。選択されたペプチド中には、半導体材料と結合し、その結晶化、結晶成長を制御し、半導体フィル ム作製に使用できるものや金属の表面に結合し、結晶化や結晶成長を制御するペプチドなどが発見されて いる。これはバイオミネラル形成を模倣した材料合成といえる。今後、結晶の微妙な形態形成を制御でき るようになれば、全く新しい機能を持った物質の創製が可能になるであろう。. 文  献 1 .Sundar, VC., Yablon, AD., Grazul, J., Ilan, M., Aizenberg, J. Fibre-optical features of a glass sponge. Nature 424 : 899-900(2003) 2 .Hildebrand M., Dahlin K., Volcani BE. Characterization of a silicon transporter gene family in Cylindrotheca fusiformis : sequences, expression analysis, and identification of homologs in other diatoms. Mol Gen Genet. 260(5): 480-486(1998) 3 .Kroger N., Deutzman R., Sumper M Polycationic peptides from diatom biosilica that direct silica nanosphere formation. Science 286 : 1129-1132(1999).

(10) 10. Memoirs of Institute of Advanced Technology, Kinki University No. 10 (2005). 4 .Brott LL., Naik RR., Pikas DJ., Kirkpatrick SM., Tomlin DW., Whitlock PW., Clarson SJ., Stone MO. Ultrafast holographic nanopatterning of biocatalytically formed silica. Nature. 413 : 291-293(2001) 5 .Kroger N., Lorenz S., Brunner E., Sumper M. Self-assembly of highly phosphorylated silaffins and their function in biosilica morphogenesis. Science. 298 : 584-586(2002) 6 .Kroger. N., Deutzmann. R., Sumper. M. Silica-precipitating peptides from diatoms. The chemical structure of silaffin-A from Cylindrotheca fusiformis. J Biol Chem. 276 : 26066-26070(2001) 7 .Poulsen. N., Sumper. M., Kroger. N. Biosilica formation in diatoms : characterization of native silaffin-2 and its role insilica morphogenesis. Proc Natl Acad Sci U S A. 100 : 12075-12080(2003) 8 .Shimizu. K., Cha. J., Stucky. GD., Morse. DE. Silicatein alpha : cathepsin L-like protein in sponge biosilica. Proc Natl Acad Sci U S A. 95 : 6234-628(1998). 9 .Cha. JN., Shimizu. K., Zhou. Y., Christiansen. SC., Chmelka. BF., Stucky. GD., Morse. DE. Silicatein filaments and subunits from a marine sponge direct the polymerization of silica and silicones in vitro. Proc Natl Acad Sci U S A. 96 : 361-365(1999) 10.Cha. JN., Stucky. GD., Morse. DE., Deming. TJ. Biomimetic synthesis of ordered silica structures mediated by block copolypeptides. Nature. 403 : 289-292(2000) 11.Aizenberg, J., Tkachenko, A., Weiner, S., Addadi, L., Hendler, G. Calcitc microlenses as part of the photoreceptor system in brittlestars. Nature 412 : 819-822(2001) 12.Lakshminarayanan. R., Valiyaveettil. S., Rao. VS., Kini. RM. Purification, characterization, and in vitro mineralization studies of a novel goose eggshell matrix protein, ansocalcin. J Biol Chem. 278 : 2928-2936(2003) 13.Samata. T., Hayashi. N., Kono. M., Hasegawa. K., Horita. C., Akera. S. A new matrix protein family related to the nacreous layer formation of Pinctada fucata. FEBS Lett. 462 : 225-229(1999) 14.Miyashita. T., Takagi. R., Okushima. M., Nakano. S., Miyamoto. H., Nishikawa. E., Matsushiro. A. Complementary DNA Cloning and Characterization of Pearlin, a New Class of Matrix Protein in the Nacreous Layer of Oyster Pearls.Mar Biotechnol(NY).2 : 409-418(2000) 15.Tsukamoto. D., Sarashina. I., Endo. K. Structure and expression of an unusually acidic matrix protein of pearl oyster shells. Biochem Biophys Res Commun. 320 : 1175-1180(2004) 16.Kono, M., Hayashi, N., Samata, T. Molecular mechanism of the nacreous layer formation in Pinctada maxima. Biochem Biophys Res Commun. 269 : 213-218(2000) 17.Matsushiro A, Miyashita T, Miyamoto H, Morimoto K, Tonomura B, Tanaka A, Sato K(2003) Presence of protein complex is prereguisite for aragonite aystallization in the nacreous layer. Mar Biotechnol 5:37-44 18.Miyashita, T et al. in preparation 19.in preparation 20.Arakaki A, Webb J, Matsunaga T. A novel protein tightly bound to bacterial magnetic particles in Magnetospirillum magneticum strain AMB-1.J Biol Chem. 278 : 8745-87450(2003). 21.Yoshino. T., Takahash.i M., Takeyama. H., Okamura. Y., Kato .F., Matsunaga. T. Assembly of G proteincoupled receptors onto nanosized bacterial magnetic particles using Mms16 as an anchor molecule. Appl Environ Microbiol. 70 : 2880-2885(2004) 22.Shiba. K., Honma. T., Minamisawa. T., Nishiguchi. K., Noda. T. Distinct macroscopic structure developed from solutions of chemical compounds and periodic proteins. EMBO 4 : 148-53(2003)..

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図 4 silaffin ‑1A 1 と silaffin ‑1A 2 によるシリカの合成
図 5 Silaffin ‑ 2 と Silaffin ‑1A 混合物から形成されるシリカ    A:Silaffin ‑ 2;0.5 units/ml ‑ Silaffin ‑1A 0.3 mM,  B:Silaffin ‑ 2;5 units/ml ‑ Silaffin ‑1A 0.3 mM,  C: Silaffin ‑ 2;2 units/μl ‑ Silaffin ‑1A 0.3 mM,  D:Silaffin ‑ 2;1.6 units/μl ‑ Silaffin ‑1A 0.2 mM

参照

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