人権教育と道徳教育の関連性に関する分析的研究
―人権課題に関わる道徳教科書教材に着目して―
河野辺 貴則
四国大学短期大学部 本研究の目的は,道徳教科書における人権課題に関わる教材の掲載傾向を検討することを通して,人権教 育と道徳教育の関連性を考察していくことにある.調査対象とする資料は,小学校と中学校の道徳教科書 (72 冊)としている.調査結果として,道徳教科書には人権課題に関連している教材が数多く掲載されてい ることを確認した.人権教育と道徳教育は,それぞれが別の世界に位置づいているかのような認識を乗り越 えて,児童生徒に人権課題について向き合う機会を提供し,人権課題の解消を前に進めていることに寄与し ている.本稿による分析結果から,道徳教科書には人権課題に対する理解や問題の解消に向けた取組として 寄与しており,人権教育と道徳教育は統合的な関係へ向かっている傾向にあることが考察できる.一方で, 相補的な関連性といえる部分もあることから,人権教育と道徳教育の関連性を意識しながら,計画的に教育 活動を推進していくことが肝要であり,両者の関連性は益々密になっていくことだろう. キーワード/人権教育 , 道徳教育 , 人権課題 , 道徳教科書Ⅰ 問題の所在と目的
1.問題の所在 本研究の目的は,道徳教科書に掲載されている 人権課題に関連している教材の傾向や特色を整理 することを通して,人権教育と道徳教育の関連性 を検討していくことにある. 1958 年に「道徳」が特設されてから,60 年 を経て小学校では 2018 年度に「特別の教科 道徳」 (以下,「道徳科」と表記する)が新設されると共に, 中学校においては 2019 年度から道徳科が新設さ れた.道徳の教科化は,2011 年に滋賀県大津市 の中学校で起きたいじめによる痛ましい人権侵害 による事案を二度と起こしてはならないという, いじめ防止や解消に向けての取組でもある.「人 権の世紀」と呼ばれる現代において,道徳科は人 権侵害を防止することにも大きな期待がかかって いるといえよう. 国内における人権侵害の解消に向けた教育活 動としては,文部科学省(2008a) や地方自治体 の教育委員会が中心となり国際的な動向をふま えて人権教育が推進されている.背景には,「人 権教育のための国連 10 年国連行動計画」(国連, 1994)により,人権教育を共通した教育活動と して推進していくことが国際的に合意され,社会 から人権教育を充実することが要請されているこ とがある. 国内においては,「人権教育及び人権 啓発の推進に関する法律」(2000 年 12 月 6 日 法律第 147 号)が策定され,人権教育及び人権 啓発に関する施策の推進については,国や地方公 共団体及び国民の責務が明示されている.社会の 根底を支える人権尊重の理念の実現に向けて推進 されている人権教育と,児童・生徒がよりよく生 きるために道徳性を育成していくことを念頭に置 き,いじめ防止や解消の取組である道徳教育は密 接な関係にあるといえる. 一方で,学校教育の実践の場では,人権教育と 道徳教育が重なっていたり,境界線が見えなかっ たりするために,人権教育に関心がある教員は道 徳教育を語ることにとまどいがあったり,道徳教育に熱心な教員が人権教育と距離をおいたりして いることが懸念されている(平沢,2010).また, 「反差別」と「道徳」が,それぞれ別の世界に位 置づいているかのような認識を乗り越える必要性 が指摘されており,人権教育と道徳教育の関連性 について具体的に整理していくことが課題として 挙げられている(平沢,2013). 2019 年には,日本政府が差別や偏見のない社 会を目指して人権教育を強化していく声明を発表 しており,学校教育においては,人権課題の解消 に向けた教育活動の充実が求められている.人権 教育と道徳教育の関連性を整理していくことは, 学校教育における喫緊の課題だといえる. 2.人権教育と道徳教育の関連性 人権教育と道徳教育の関連性については,これ までに福田(1996)や,岩田(2004),林(2009), 平沢(2013),島(2013) ,柴原(2013)によっ て「相補的な関連性」や「統合的な関連性」につ いて考察されてきた(注 1).「相補的な関連性」に ついては,人権教育と道徳教育の特質や独自性を ふまえた上で,両者の既存の特質を生かし,相補 的に実践していく重要性について考察している点 に特徴がある.一方で,「統合的な関連性」につ いては,グローバル化する社会という視点をふま えて,国際的な観点を取り入れる重要性や,人権 を基軸に道徳教育を捉える重要性について考察し ている点に特徴がある. このように先行研究の考察が二分されている 中,2015 年 3 月学習指導要領一部改正を契機に, 多様な価値観が存在することを前提として,道徳 的な問題を他者と対話し,協働しながら問題解決 的な道徳授業,すなわち「考え,議論する道徳」 への転換を目指して道徳科が新設された.新設さ れた道徳科では,「現代的な課題」(例えば,情報 モラル,生命倫理,障害者教育など)を積極的に 取り上げて,児童・生徒が諸課題に対して多面的・ 多角的に考え,諸課題に対して問題解決していく 資質・能力を養うことが重要であることが強調さ れている(柳沼・梅澤・山田,2018). また,道徳の教科化は,「いじめ問題」への防 止や解消の取組だけでなく,グローバル化による 価値観の相対化を見据えながら諸課題に適切に対 応できる力を育成することも指摘されている(渡 邉,2017).例えば,『小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編』(文部科学省,2018)には, 情報モラルに関する指導や,国際理解等の現代的 な課題を身近な問題と結び付けて取り扱うことが 明示されており,多様な見方や考え方があること を理解させ,答えが定まっていない問題を多面的・ 多角的視点から考え続ける姿勢を育てることが明 示されている.価値観相対化の中において,道徳 科は,地域,家庭,学校あるいは学級の課題や一 人一人の子どもたちの状況を考慮しつつ,「現代 的な課題」に関する教材を活用しながら,異質の 他者と協働しながら展開していく授業実践が求め られている. 一方,梅野(2013)は,国際的な動向をふま えつつ,現代的な課題に対応する教育活動である 人権教育に着目し,国内における人権課題に関わ る指導例示の動向を調査している.調査結果から, 教育委員会等によって刊行されている人権教育資 料は,児童生徒が人権課題を国民的課題として共 有していくために道徳の時間や特別活動,社会科 等の多様な教科等で活用できる指導例示を提供し ている役割を果たしていることが明らかになっ た.このことから,教育委員会が人権課題を取り 扱った学習を道徳教育で推進していくことを期待 していることが分かる.これまで,文部省は,『小 学校道徳の指導資料』(文部省,1966)を刊行す ると共に,子どもが日常生活の生活経験をもとに 道徳的問題と取り組むための補助教材として『心 のノート』(文部省,2002)を全国の小中学校に 無償配布し,導入してきたが,道徳教育において 使用義務が生じる「主たる教材」は存在しなかっ た.このような背景をふまえれば,使用義務が生 じる道徳教科書に人権課題に関する教材が掲載さ れているのか,また,教科書会社ごとにどのよう な傾向や特色があるのかを検討することは,人権
教育と道徳教育の関連性を考察していく上で,新 たな知見を提供することが期待できる. 以上のことから,本稿では,道徳科が新設され て初めて採用された道徳教科書を対象とし,教科 書会社ごとに人権課題と関連性がある教材の傾向 や特色を検討していく.
Ⅱ 研究方法
1.人権課題の取り扱いに関する観点 人権課題に関する教育活動は,国際的な動向を 踏襲しながら国内における人権侵害に関する重要 課題として確認された後,推進されている.具体 的には,人権教育の対象として「人権教育のため の国連 10 年行動計画」(国連 1994)において,「女 性,子供,高齢者,少数者,難民,先住民,極貧 の人々,HIV 感染者あるいはエイズ患者,並びに 他の社会的弱者の人権」があげられた.その後, 国際連合は,「人権教育のための世界計画(第 1 フェーズ 2005-2007 年)」(国連,2004)を採択し, 初等中等教育における人権教育行動計画として, 「世界人権会議は,教育が人権及び基本的自由の 尊重を強化することを目的とするよう国が確保す る義務を負うことを再確認し,これは国家の,ま た,国際的な教育政策に組み入れられるべきであ る」と明示している.また,「差異の尊重及び認識, 人種,性別,言語,宗教,政治若しくはその他の 意見,国家的,民族的及び社会的出自,身体的及 び精神的状態,並びにその他に基づく差別への反 対を促進する」ことや,「人権の基準に一致した, 慢性的及び新種の人権問題(貧困,暴力紛争,差 別を含む)の,解決を導く分析を奨励する」こと も明示している.つまり,初等中等教育によって 差別を否定していく教育活動を推進していくこと は国際的に合意されたといえよう. 日本政府は,国際的な動向をふまえつつ,「人 権 教 育・ 啓 発 に 関 す る 基 本 計 画 」( 閣 議 決 定 2002 年)において,国内における人権及び人権 教育上の課題(以下,人権課題と記す)として, ①「女性」,②「子ども」,③「高齢者」,④「障 害者」,⑤「同和問題」,⑥「アイヌの人々」,⑦「外 国人」,⑧「HIV 感染者」,⑨「刑を終えて出所し た人」,⑩「犯罪被害者等」,⑪「インターネッ トによる人権侵害」,⑫「北朝鮮当局による拉致 問題等」などを国の「重要課題」として位置づ けた(注 2).また,文部科学省(2008b)は,生命・ 身体の安全に関わる事象や不当な差別など,今日 においても様々な人権問題が生じていることを指 摘しつつ,学校教育においては,様々な人権課題 の中から,児童・生徒の学年に配慮し,それぞれ の学校の実情に応じ,より身近な課題,児童生徒 が主体的に学習できる課題,児童生徒の心に響く 課題を選び,時機を捉えて,効果的に学習を進め ていくことを求めている(文部科学省,2008b). なお,梅野(2013)は,都道府県及び政令指 定都市教育委員会により作成された人権教育資料 に掲載されている人権課題ごとの指導例示を分類 し,人権課題ごとの学習内容の特色や傾向を考察 している(注 3).また,梅野(2013)の調査結果 から,人権課題に関する指導例示が道徳の時間に 設定されていることが確認できる.一方で,道徳 教科書に各人権課題に関わる教材が掲載されてい ることや,どのような傾向や特色があるのかにつ いては,これまでに検討されてこなかった.本研 究では,国内における小学校・中学校の道徳科の 検定教科書(東京書籍,学校図書,教育出版,光 村図書,日本文教出版,学研,廣済堂あかつき, 光文書院,日本教科書)の計 72 冊(表 1)を対 象とし,「人権教育資料における指導例示の分類」 (梅野,2013)に関連している道徳教科書教材を 抽出していくことを試みる. 2.道徳教科書教材の分類方法 分類方法の手順としては,道徳教科書や教師用 指導書等の資料から教材ごとに掲載されている 「主題名」,「内容項目」,「ねらい」,「現代的な課 題との関連や他教科・領域との関わり,テーマや 重点事項等」に関する記述を基にして,「人権教 育資料における指導例示の分類」(梅野,2013)と関連している教材を抽出していく(注 4).具体的 な手順に関しては,光村図書「道徳 5 きみがい ちばんひかるとき」(以下,【光村図書小 5】と表 記)を分類した結果を基に説明していく(表 2). 表 2 の教材番号⑤「どうすればいいのだろう」は, 「いじめや差別問題に関する指導例示」(人権課題 : 子ども)に位置づくことが妥当であることを総合 的に判断した.初等中等教育における人権課題「子 ども」に対する取組に当たっての基本的な考え方・ 観点として,「我が国における子どもたちを取り 巻く環境は,いじめ・校内暴力や,児童虐待,児 童買春・児童ポルノなど,懸念すべき状況にある. …中略… このような中,学校においては,人権 尊重の意識を高める教育の一層の推進に努めると ともに,幼児児童生徒の人権に十分配慮し,一人 一人を大切にした教育指導や 学校運営が行われ 表1 道徳教科書の一覧
るように努める.」 (文部科学省,2008c)と明示 されている内容と関連している箇所に下線を引い て強調する.【光村図書小 5】⑤では,主題名「公正・ 公平な態度とは」,内容項目「C(13)公正,公平, 社会正義」が設定されている.ねらいとしては,「友 達とのやり取りの中で,迷ったり悩んだりする 3 つの事例を通して,公正・公平に行動するために は,どんな心が必要かを考えさせ,自分の意志を 強くもち,周囲の雰囲気や人間関係に流されずに 判断し,自分自身に誠実に,正義の実現に努めよ うとする実践意欲と態度を育てる.」と記述され ていると共に,現代的な課題や他教科・領域との 関わりとして,「いじめ問題」と「共生」への取 組であることが確認できる.下線の箇所を鑑みて, 【光村図書小 5】⑤は,「いじめや差別問題に関す る指導例示」(人権課題 : 子ども)に位置づくこ とが妥当であることを総合的に判断した. 上記の手順で【光村図書小 5】を分類していく と,子ども「いじめや差別問題に関する指導例示」 は,(【光村図書小 5】④,⑤,⑥,㉛)が該当する. 女性「学校における性的役割分業について考えさ せる指導例示」では,【光村図書小 5】⑭が該当し, 高齢者「高齢者に関する指導例示」(【光村図書小 5】⑧),障害者「バリアフリー,ノーマライゼー 表2 光村図書「道徳 5 きみがいちばんひかるとき」を対象にした分析結果 (下線は筆者が記した)
ションに関する学習の指導例示」(【光村図書小 5】 ㉘),外国人「相互理解を目的とする指導例示」(【光 村図書小 5】㉗),HIV 感染者・ハンセン病患者・ 元患者等「ハンセン病問題に関する指導例示」(【光 村図書小 5】㉛),インターネットによる人権侵 害「インターネットによる人権侵害に関する指導 例示」(【光村図書小 5】⑦)が該当する. なお,【光村図書小 5】㉛は,「ハンセン病の歴 史や,ハンセン病患者であるきみ江さんの思いを 通して,誰もが幸せになれる社会とはどんなもの か考えさせ,正しい知識をもち,誰に対しても差 別や偏見をもつことなく,公正・公平な態度で接 し,正義の実現に努めようとする実践意欲と態度 を育てる」と明示されていると共に,現代的な課 題や他教科・領域との関わり,テーマや重点事項 として,「いじめ問題」への取組として設定され ている.そのため,子どもの「いじめや差別問題 に関する指導例示」と,HIV 感染者・ハンセン病 患者・元患者等「ハンセン病問題に関する指導例 示」の両方の要素が確認できた場合には,重複し て分類した.上記の手順によって,道徳教科書か ら人権課題と関連している教材を抽出・整理して いく.
Ⅲ 人権課題に関する教材の分類と考察
1.人権課題に関わる教材の傾向と特色 前述の諸点を条件として,人権課題と関連性が あると判断した道徳教科書に掲載されている教材 を抽出・整理した結果が表 3 である. 第一列から右に出版社の名称を示し,複数の教 科書を区別するために小学校と中学校の学年を表 示した.また,小学校と中学校ごとに小計欄を設 けた.更に右の列には,人権課題ごとに掲載され ている「人権教育資料における指導例示の分類」 (梅野,2013) (注 5)と教材番号(注 6)を示している. なお,人権課題ごとに教材の総数を最下部に表示 した. 表 3 から,人権課題「子ども」に関連してい る教材は,東京書籍が 32 編,学校図書 68 編, 教育出版 41 編,光村図書 58 編,日本文教出版 57 編,学研 54 編,廣済堂あかつき 29 編,光 文書院 35 編,日本教科書 13 編であり,合計で 387 編を確認できる.とりわけ,「いじめや差別 問題に関する指導例示」に関連している教材が大 部分を占めており,全ての教科書に掲載されてい ることがわかる.「児童の権利に関する条約に関 する指導例示」に関連している教材は,東京書籍 表3 道徳教科書における人権課題の取扱いに関する教材一覧1 編,光村図書 1 編,日本文教出版 1 編,学研 1 編,光文書院 1 編が確認できるとともに,小学 校の高学年以上の教材として掲載されている傾向 にあり,各社によって掲載の有無が分かれている. なお,「児童虐待問題に関する指導例示」に関す る教材は確認できなかった. 人権課題「外国人」に関連している教材は,東 京書籍が 13 編,学校図書 14 編,教育出版 12 編, 光村図書 16 編,日本文教出版 20 編,学研 19 編, 廣済堂あかつき 12 編,光文書院 9 編,日本教科 書 5 編であり,合計で 120 編を確認できる.なお, 「相互理解を目的とする指導例示」に関連してい る教材が大部分を占めており,児童・生徒の学年 に応じて,計画的に教材を掲載している傾向にあ る.また,「外国人差別に関する学習の指導例示」 に関連している教材としては,光村図書 1 編と 廣済堂あかつき 2 編の教材が確認できる.これ らの教材は,内容項目「C 公正,公平,社会正義」 が設定されており,人種差別や外国人への差別や 偏見を是正していく内容が掲載されていることが 共通点としてあげられる. 人権課題「インターネットによる人権侵害」の に関連している教材は,東京書籍が 10 編,学 校図書 16 編,教育出版 16 編,光村図書 11 編, 日本文教出版 18 編,学研 13 編,廣済堂あかつ き 13 編,光文書院 6 編,日本教科書 4 編の合計 で 107 編の教材を確認でき,児童・生徒の学年 に応じて,計画的に教材を掲載している傾向に ある.『小学校学習指導要領解説 特別の教科 道 徳編』(文部科学省,2018)と『中学校学習指 導要領解説 特別の教科 道徳編』(文部科学省, 2018)には,児童や生徒の発達の段階や特性等 を考慮し,情報モラルに関する指導を充実させる ことが強調されていることから,情報モラルに関 する指導としてインターネットや情報機器の操作 に関するトラブルの事例が教材として取り上げら れている傾向にあることが確認できる.上記のこ とから,道徳教科書教材には,人権課題「子ども」, 「外国人」,「インターネットによる人権侵害」に 関する教材は,児童・生徒の学年に応じて,計画 的に教材を掲載している傾向にあり,児童生徒が 人権課題と向き合う機会が設定されていることが 考察できる. 次に,教科書会社ごとに掲載数に軽重がある人 権課題「女性」,「高齢者」,「障害者」の教材に注 目をする.人権課題「女性」に関連している教材 は,東京書籍が 4 編,学校図書 3 編,教育出版 3 編,光村図書 3 編,日本文教出版 7 編,学研 4 編,廣済堂あかつき 5 編,光文書院 4 編,日本 教科書 3 編であり,合計で 36 編の教材が確認で
きる.小学校と中学校の掲載数に注目してみると, 小学校で 21 編,中学校で 15 編であり,全ての 学年ではないが,小学校と中学校で取り扱われて いる傾向にある.なお,光文書院と廣済堂あかつ きは,「家庭における性的役割分業について考え させる指導例示」や,「学校における性的役割分 業について考えさせる指導例示」,「社会における 性的役割分業について考えさせる指導例示」の 3 つを網羅的に扱っている. 人権課題「高齢者」に関連している教材は,東 京書籍が 9 編,学校図書 11 編,教育出版 9 編, 光村図書 9 編,日本文教出版 11 編,学研 6 編, 廣済堂あかつき 14 編,光文書院 7 編,日本教科 書 6 編の合計で 82 編の教材が確認でき,各教科 書会社の教材の掲載数はおおよそ均衡している. その多くは高齢者理解に関する内容であり,高齢 者を尊敬することや,介護を行うこと等,多様な 観点に基づいた教材が掲載されている.小学校と 中学校の掲載数に注目してみると,小学校で 47 編,中学校で 35 編であり,人権課題「女性」と 同様に,小学校と中学校の教科書に高齢者に関す る教材の内容が必ず取り扱われている傾向にあ る. 人権課題「障害者」に関連している教材は,東 京書籍が 12 編,学校図書 9 編,教育出版 9 編, 光村図書 10 編,日本文教出版 13 編,学研 14 編, 廣済堂あかつき 12 編,光文書院 3 編,日本教科 書 8 編の合計で 90 編の教材が確認できる.なお, 全ての教科書会社が障害者に関する教材を取り 扱っている.その多くは障害者理解に関する教材 であるとともに,パラリンピックに出場した選手 の生き方や,障害を乗り越えていく生き方を取り 上げて,バリアフリーやノーマライゼーションに 関する理解と関連している教材が多く取り扱われ ている.また,小学校で 39 編,中学校で 51 編 の教材が確認できる.人権課題「女性」,「高齢者」, 「障害者」に関連している教材は,全ての教科書 会社が小学校と中学校の両方で一定数の教材を掲 載していることが確認できる. 一方,表 3 から,人権課題「同和問題」と 「北 朝鮮当局による拉致問題等」に関連している教材 は確認できなかった.また,人権課題「アイヌ の人々」,「HIV 感染者・ハンセン病患者・元患者 等」,「出所した人」,「その他」は,前述した人権 課題と比較すると掲載数が極端に少ない傾向にあ るが,上記の人権課題に関連している教材を確認 できる.例えば,人権課題「アイヌの人々」に関 連している教材を教育出版が掲載しており,「HIV 感染者・ハンセン病患者・元患者等」に関連して いる教材は,光村図書が掲載している.また,「刑 を終えて出所した人」は,教育出版や学研の教科 書から確認できるとともに,「犯罪被害者等」も 教育出版から確認できる.そして,「その他」(性 同一性障害や性的指向・性自認,水俣病被害者に 関する差別や偏見,ホームレスの人権,原発事故 の放射能による風評被害)に関連している教材は, 学校図書や教育出版,日本教科書が掲載しており, 様々な人権課題に関連している教材が道徳教科書 に掲載されていることを確認することができた. 道徳教科書には,社会状況を加味しながら多様な 人権課題に関連している教材が掲載されていると いえよう. 2.人権教育と道徳教育の関連性 本稿の調査結果から,人権教育と道徳教育は統 合的な関係へと着実に歩みを進めている傾向にあ ることが考察できる.理由として 2 点挙げたい. 1 点目は,道徳科の新設により,人権課題に関 連している教材が掲載されている道徳教科書を 主たる教材として使用する義務が生じたことにあ る.表 3 から,道徳教科書には,人権課題「子ども」, 「外国人」,「インターネットによる人権侵害」に 関連している教材が,児童・生徒の学年に応じて, 計画的に教材が掲載されている.また,人権課題 「女性」に関連している教材が全ての教科書会社 で 3 編以上掲載されていることが確認できると ともに,「高齢者」に関連している教材は 6 編以上, 「障害者」に関連している教材は 3 編以上掲載さ れていることが確認できる.また,人権課題「ア
イヌの人々」,「HIV 感染者・ハンセン病患者・元 患者等」,「出所した人」,「その他」のように様々 な人権課題に関連している教材が道徳教科書に掲 載されていることも確認できる.人権課題に関す る学習については,必ずしも道徳科で扱うことが 定められているわけではない.しかしながら,使 用義務が生じる道徳教科書に「人権教育資料にお ける指導例示の分類」(梅野,2013)に関連して いる教材が掲載されていることは,道徳科の新設 によって人権課題と関連性がある道徳授業の機会 が普及する傾向にあることが考察できる. 2 点目は,道徳教科書には,社会状況を加味し ながら新たに生起する人権問題に関連している教 材が導入されている点にある.表 3 から,道徳 教科書には,「性同一性障害や性的指向・性自認 について」(LGBT)に関する教材等が掲載されて おり,新たに生起する現代的な差別や偏見に関す る人権問題に関する教材が掲載されていることが 確認できる.文部科学省(2008c)は,「新たに 生起する人権問題など,その他の課題についても, それぞれの問題状況に応じて,必要な取組を行っ ていくことが求められる」と明示しており,社会 の変化に伴い,人権教育を常に更新していく必要 性を指摘している.道徳教科書に,新たに生起す る現代的な差別や偏見に関する人権問題への取組 に関する教材が掲載されていることは,道徳科が 社会状況を加味しながら,人権教育の推進に寄与 しているといえよう.以上のことから,道徳科が 新設されて初めて採用された道徳教科書を対象と し,教科書会社ごとに人権課題と関連性がある教 材の傾向や特色を検討した結果として,人権教育 と道徳教育は「統合的な関連性」を前に進めてい る傾向にあることが考察できる. 一方で,両者には「相補的な関連性」の部分が 残されていることも指摘しておきたい.例えば, 人権課題「同和問題」や,「北朝鮮当局による拉 致問題等」に関する教材は,道徳教科書に掲載さ れていない.このことから,道徳教科書を使用す れば人権課題の全てを網羅した指導ができること にはならず,人権教育の独自性を生かした授業実 践も重要であることを留意する必要がある.なお, 上記の留意点に関しては,人権教育資料が道徳教 科書を補完する役割を果たすことを指摘しておき たい.梅野(2013)の調査報告によれば,人権 教育資料には,人権課題「同和問題」と,「北朝 鮮当局による拉致問題等」を道徳授業として展開 していく際の指導例示が掲載されている.また, 他にも多様な人権課題に関する道徳授業の指導例 示が豊富に掲載されている.つまり,人権教育資 料を活用することによって,道徳教科書に掲載さ れていない人権課題に関する道徳授業を展開する ことが可能となる.道徳教科書だけで人権課題に 関する取り組みを推進するだけではなく,人権教 育資料を計画的に活用しながら,地域や学校,児 童生徒の実態に合わせて人権課題に関する学習を 展開することも肝要である.
Ⅳ 成果と課題
本研究では,道徳教科書に掲載されている人権 課題に関連している教材の傾向と特色を整理する ことを通して,人権教育と道徳教育の関連性を検 討してきた.本研究の成果として 3 点を整理し ておきたい. 第 1 に,道徳教科書に掲載されている教材の 分類・整理によって,人権教育と道徳教育が「統 合的な関連性」へと歩みを前に進めている傾向に あることを考察した点にある.人権課題に関する 学習については,必ずしも道徳科で扱うことが定 められているわけではないが,本稿によって道徳 教科書に多様な人権課題に関連している教材が掲 載されていることを確認した.道徳教科書には, 人権課題の解決や解消を前に進めるための役割を 期待できる側面があることは,道徳科の新設に よって人権教育と道徳教育は「統合的な関連性」 を前に進めている傾向にあるといえよう. 第 2 に,道徳教科書に掲載されている人権課 題に関連している教材の傾向と特色の基礎的な資料を提供した点にある.本稿の「道徳教科書にお ける人権課題の取扱いに関する教材一覧」(表 3) によれば,道徳科の新設という歴史的転換点を迎 え,新たに導入された道徳教科書には,人権課題 に関連している教材の掲載に関して教科書会社ご とに独自性が生じていることが考察できる.本研 究は,学校教育の実践の場において,人権課題の 観点から道徳授業を実践するための教材を選択し ていく際の基礎的な資料として,活用されること が期待できる. 第 3 に,道徳教科書だけで,人権課題に関す る学習を網羅的に推進していくことには限界があ ることを確認した点にある.道徳教科書を調査し た分析結果をふまえれば,道徳教科書教材を活用 して人権課題に関する学習を展開していくことは 可能であるが,本稿によって,全ての人権課題に 関する教材を網羅していることではないことが明 らかになった.日本政府が差別や偏見のない社会 を目指して人権教育を強化していく声明を出して おり,学校教育においては,人権課題の解消に向 けた教育活動の充実が益々求められている.人権 教育と道徳教育は,「統合的な関連性」へと歩み を進めている傾向にあるが,「相補的な関連性」 の部分も意識しながら,計画的に教育活動を推進 していくことが肝要であり,両者の関連性は益々 密になっていくことだろう. 最後に,今後の課題について述べておきたい. 本稿は,道徳教科書に掲載されている教材を中心 に人権教育と道徳教育の関連性について検討して きたが,『心のノート』(文部省,2002)や各出 版社や教育委員会によって作成された副教材に関 する分析には至っていない.道徳科における多様 な教材を対象として人権課題との関連性をより広 い視野から検討していくことが今後求められる. また,学校教育の実践の場における人権教育と道 徳教育の関連性をさらに具体化していくために は,道徳教科書を活用することで児童生徒にどの ような学習成果をもたらすのかを実証していく必 要がある.今後は,本研究の研究成果をふまえつ つ,道徳教科書に掲載されている人権課題に関わ る教材を使用した授業実践に関する実践的な研究 の蓄積に向けて研究を進めていきたい. 【付記】 本研究は,平成 31 年度日本学術振興会科学研 究費助成事業(奨励研究・課題番号 19H00136) による研究成果の一部である. 【注】 ⑴ 「相補的な関連性」に関する先行研究として は,林(2009),島(2013),柴原(2013) があげられる.林(2009)は,さまざまな 人権問題に対して,共通に必要とされる道徳 性を育むことが道徳教育の特徴であると共 に,人権教育において培われる人権意識は道 徳教育の基礎となることに言及している.島 (2013)は,人権教育と道徳教育の特質を考 察することを通して,両者は結合したり読み 替えたりすることはできないことを指摘す る.柴原(2013)は,人権教育と道徳教育 は並立の関係であり,両者の教育活動を実践 していくことが重要であることを指摘してい る.上記の研究者は,人権教育と道徳教育の 特質や独自性をふまえた上で,教育活動を実 践していくことが重要であることに言及して おり,両者の既存の特質を生かし,相補的に とらえていく重要性に関して考察している. 「統合的な関連性」に関する先行研究として は,福田(1996) や,岩田(2004),梅野 (2003),平沢(2013)が挙げられる.福田 (1996)は,国際化社会のなかで,他国の人々 と相互理解や平和的共存的に生きていくため には,人間としての尊厳を尊重しあい,差異 を肯定的に認め合いつつ,国際社会の建設に 協同できるような人間の育成が道徳教育の課 題であり,西欧諸国の理論を積極的に取り入 れて,憲法や教育基本法の根本精神を直接的 に教育において生かす領域としての人権教育
を堅固な基盤,あるいは中核となるべきこと を言及している.岩田(2004)は,道徳を 中核としながらも各教科,領域の構造を人権 教育としてのカリキュラムとして整理するこ とを課題としてあげている. 梅野(2003)は, 道徳教育における徳目に導かれた物語やモラ ルジレンマへの判断を通して,尊重されるべ き情意,判断力を育成することは人権侵害行 為に対するアプローチになることを整理した 上で,国際的な文脈をふまえた人権社会の安 定的秩序をもたらすための市民性教育のアプ ローチの一つとして道徳教育が位置づくこと を指摘している.平沢(2013)は,グロー バル化する社会において,自律した市民をと して生きていく主体性を育てるために国際的 な枠組みで,両者を統合的にとらえていく可 能性があることを指摘している.上記の研究 者は,グローバル化する社会という視点をふ まえて,人権教育が道徳教育を包含していく 可能性や国際的な観点を取り入れることに言 及している点に特徴があり,両者を未来志向 の中で,統合的な関係にあることを考察して いる. ⑵ 2011 年 4 月 1 日閣議決定により,「人権教育・ 啓発に関する基本計画」に「北朝鮮当局によ る拉致問題等」が追加され,学校教育におい て拉致問題等に対する理解を児童生徒に深め ることが明示された. ⑶ 梅野(2013)は,人権課題ごとの学習内容 の特徴を人権課題ごとに以下のようにカテゴ リー化している.①「女性」(「家庭における 性的役割分業について考えさせる指導例示」, 「学校における性的役割分業について考えさ せる指導例示」,「 社会における男女共同参 画について考える指導例示」,「DV 等につい て考えさせる指導例示」),②「子ども」(「い じめや差別問題に関する指導例示」,「児童の 権利に関する条約に関する指導例示」,「児童 虐待問題に関する指導例示」),③「高齢者」 (「高齢者に関する指導例示」),④「障害者」 (「障害者問題を考える学習の指導例示」,「バ リアフリー,ノーマライゼーションに関する 学習の指導例示」,「体験を通した学習の指導 例示」,「特別支援学校,特別支援学級との交 流学習に関する指導例示」,「特別支援学校に おける人権教育」),⑤同和問題(「歴史的学 習に関する指導例示」,「社会的差別等に関す る指導例示」),⑥「アイヌの人々」(「アイヌ の人々に関する指導例示」),⑦ 「外国人」(「相 互理解を目的とする指導例示」,「外国人差別 に関する学習の指導例示」,「在日韓国・朝鮮 人等に関する学習の指導例示」),⑧「HIV 感 染者・ハンセン病患者・元患者等」,(「HIV 感染病問題に関する指導例示」,「ハンセン病 問題に関する指導例示」),⑨「刑を終えて出 所した人」,(「刑を終えて出所した人に関す る指導例示」),⑩「犯罪被害者等」(「犯罪被 害者等に関する指導例示」),⑪「インターネッ トによる人権侵害」,(「インターネットによ る人権侵害に関する指導例示」),⑫「北朝鮮 当局による拉致問題等」(「北朝鮮当局による 拉致問題等に関する指導例示」),⑬「その他」 (「その他の人権課題に関する指導例示」).詳 細に関しては,梅野(2013)を参照にされ たい. ⑷ 本研究では,各教科書会社が刊行している各 学年の教科書や,各学年の教師用指導書,内 容解説資料を主な資料として調査した (東京 書籍「新しい道徳 6 教師用指導書 研究編」 2018 年/「新しい道徳 3 教師用指導書研 究編」2019 年,学校図書「かがやけみら い 6 年 小学校道徳 読みもの活動 教師 用指導書解説編」2018 年/「輝け未来 中 学校道徳 3 年 教師用指導書展開編」2019 年,教育出版「小学道徳 6 はばたこう明日 へ 教師用指導書 解説・展開編」2018 年 /「とびだそう未来へ 中学道徳 教師用指 導書 解説・展開編」2019 年,光村図書出
版「小学校道徳学習指導書「特別の教科 道 徳」の授業をはじめよう! 6」2018 年/「中 学校道徳 学習指導書「特別の教科 道徳」 はじめの一歩」2019 年,日本文教出版「小 学校道徳 生きる力⑥教師用指導書研究編」 2018 年,/「中学校道徳 あすを生きる③ 教師用指導書 解説編」2019 年,学研「み んなの道徳 6 年 教師用指導書 研究編」 2018 年/「中学生の道徳 明日への扉 3 年 教師用指導書 研究編」2019 年,廣済 堂あかつき「みんなで考え,話し合う小学生 の道徳6教師用指導書 実践編」2018年/「中 学生の道徳 自分をのばす 3 教師用指導書 実践編」 2019 年,小学 道徳 ゆたかな心 6 年 教師用指導書研究編,日本教科書「道 徳中学校 3 年 生き方を創造する 教師用 指導書 研究編」 2019 年等.)また,現代的 課題との関連に関する表記や他教科・領域と の関わり,テーマや重点事項に関する記載事 項について,東京書籍では,「いじめ問題対 応教材」や,「情報モラル対応教材」,「国際 理解教育」,「福祉教育」,「人権・いじめ」,「福 祉・ボランティア」等に関する記載事項を主 に参照した.学校図書では,「いじめの防止」, 「福祉に関する教育」,「国際理解教育」,「情 報モラル」,「共生・共助」等の記載事項を主 に参照した.教育出版では,「いじめ問題へ の対応」,「いじめ防止」,「情報モラル教育」, 「国際理解教育」,「福祉教育」,「生命尊重」 等に関する記載事項を主に参照した.光村図 書では,「いじめ問題」,「共生」,「国際理解 教育」,「情報モラル」,「福祉に関する教育」 等に関する記載事項を主に参照した.日本文 教出版では,「いじめ対策」,「情報モラル」,「国 際理解」,「持続可能社会」,「人権教育,障害 者理解,高齢者福祉」等の記載事項を主に参 照した.学研では,「いじめ防止」,「情報モ ラル」,「福祉に関する教育」,「国際理解教育」 等に関する記載事項を主に参照した.廣済堂 あかつきでは,「いじめ防止の指導,人権教 育」,「福祉教育」,「国際理解教育」,「情報モ ラル教育」等に関する記載事項を主に参照し た.光文書院では,「いじめ」,「情報モラル」, 「人との共生」等を参照した.日本教科書では, 「いじめ防止」,「情報モラル」,「LGBT」等を 参照した. ⑸ 紙幅の都合上,「人権教育資料における指導 例示の分類」(梅野,2013)を以下のように 表記した.①「女性」(「家庭における性的役 割分業について考えさせる指導例示」→「家 庭」,「学校における性的役割分業について考 えさせる指導例示」→「学校」,「 社会にお ける男女共同参画について考える指導例示」 →「社会」,②「子ども」(「いじめや差別問 題に関する指導例示」→「いじめ」,「児童の 権利に関する条約に関する指導例示」→「権 利」),③「高齢者」(「高齢者に関する指導例示」 →「高齢者」),④「障害者」(「障害者問題を 考える学習の指導例示」→「障害者」,「バリ アフリー,ノーマライゼーションに関する学 習の指導例示」→「バリアフリー」),⑥「ア イヌの人々」(「アイヌの人々に関する指導例 示」→「アイヌ」),⑦ 「外国人」(「相互理解 を目的とする指導例示」→「相互理解」,「外 国人差別に関する学習の指導例示」→「外国 人」),⑧「HIV 感染者・ハンセン病患者・元 患者等」(「ハンセン病問題に関する指導例示」 →「ハンセン病」),⑨「刑を終えて出所した 人」(「刑を終えて出所した人に関する指導例 示」→「出所」),⑩「犯罪被害者等」(「犯罪 被害者等に関する指導例示」→「犯罪被害者」) ⑪「インターネットによる人権侵害」,(「イ ンターネットによる人権侵害に関する指導例 示」→「ネット」),⑬「その他」(「ホームレ スの人権」→「ホームレス」,「性的指向(異 性愛,同性愛,両性愛)を理由とする偏見・ 差別,性同一性障害者の人権」→「LGBT」,「水 俣病に関する差別」→「水俣病」,「福島原子
力発電所の事故による風評被害」→「原発」). ⑹ 指導時期を適宜行う教材が巻末に掲載されて いる場合は,教材番号を連続させて表示する ようにした.また,複数の教材に同じ教材番 号が付されている場合があるため,教材番号 の後に(1),(2),(3)を示して表示している. 【引用文献】 福田弘:人権意識を高める道徳教育,学事出版, 1996. 林泰成: 新訂 道徳教育論,放送大学教育振興会, 2009. 平沢安政:「第三次とりまとめ」と「人権教育の 推進に関する取組状況の調査結果」が示唆す るもの, 部落解放研究, 188, 61-77,部落解 放研究所, 2010 /人権の視点に立った道徳教 育の推進 国際的な市民性教育の文脈のなかで, 部落解放研究, 198, 4-14,部落解放研究所, 2013. 法務省 : 人権尊重の理念に関する国民相互の理解 を深めるための教育及び啓発に関する施策の総 合的な推進に関する基本的事項について(答 申),1999. 岩田一彦:学校における人権・同和教育, 日本人 権教育研究学会編, 21 世紀の人権・同和教育 への展開―人権・同和教育と教師の力量形成―, pp.20-30, 学術図書出版社, 2004. 国際連合:1994,人権教育のための国連 10 年国 連 行 動 計 画,https://www.mofa.go.jp/mofaj/ gaiko/jinken/kyoiku/pdfs/k_keikaku3.pdf (外務省公式 HP 2020.1.11 検索),/ 2004,人 権教育のための世界計画第 1 フェーズ(2005-2007)行動計画, https://www.mofa.go.jp/ mofaj/gaiko/jinken/kyoiku/pdfs/k_keikaku. pdf(外務省公式 HP 2020.1.11 検索). 文部科学省:人権教育の指導方法等の在り方 について [ 第三次とりまとめ ]―指導の在り 方 編 ―, 2008a / 人 権 教 育 の 指 導 方 法 等 の 在 り 方 に つ い て ( 第 三 次 と り ま と め 実 践 編 ) , 2008b / 2008c, 人権教育の指導方法 等の在り方について [ 第三次とりまとめ ] 実 践編 ~個別的な人権課題に対する取組~, https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/ shotou/024/report/attach/__icsFiles/afieldfi le/2016/05/11/1370730_001.pdf( 文 部 科 学 省公式 HP 2020.5.5 検索 ). / 2016, 「特別の 教科 道徳」の指導方法・評価等について(報告), https://www.mext.go.jp/ component/ b _ m e n u / s h i n g i / t o u s h i n / _ _ i c s F i l e s / afieldfile/2016/08/15/1375482_2.pdf /(文 部科学省公式 HP 2020.5.5 検索 ). /小学校学 習指導要領 ( 平成 29 年告示 ) 解説 特別の教 科 道徳編, 2018. 文部省:小学校道徳の指導資料, 1966 /心の ノート, 2002. 柴原弘志:道徳教育と人権教育, 部落解放研究, 198, 36-43, 部落解放研究所, 2013. 島恒生:人権教育と道徳教育の関連, 部落解放研 究, 198, 15-27, 部落解放研究所, 2013. 梅野正信:判決書教材を通して「いのち」「人権」 「公共性」を学び合う市民性育成教育の原理と 方法(1)一市民社会に求められる規範意識一, 鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要, 13, 69-75, 2003 /人権教育資料の分析的研究 2 -人権課題に関わる指導例示の特色と傾向-, 上越教育大学研究紀要, 32, 59-74, 2013. 柳沼良太・梅澤真一・山田誠:「現代的な課題」 に取り組む道徳授業, 図書文化, 2018. 渡邉満:道徳科の授業づくりと教科書等の教材の 活用,「考え,議論する道徳」を実現する会 編, 「考え,議論する道徳」を実現する!主体的・ 対話的で深い学びの視点から, pp.118-127, 図書文化, 2017.
Analysis of the relationship between human rights and moral education through a
focus on moral textbooks
Takanori KAWANOBE
Shikoku University Junior College
This research aims to investigate the relationship between human rights education and moral education by considering the characteristics of teaching materials on human rights issues. The data utilized for this research were 72 elementary and junior high school moral education textbooks. Both human rights and moral education give pupils the opportunity to address human rights issues and overcome the perception that these things exist in different worlds, as well as contribute to the advancement of human rights issues. It can be said that promoting the resolution of human rights issues is a point that the two areas of education have in common. From the findings presented in this paper, it can be considered that moral education textbooks play a role in both promoting understanding of, and addressing, human rights issues. This shows an overlap between human rights and moral education. In fact, the complementary relationship between the two means it is important to systematically promote educational activities regarding human rights issues. This can help strengthen the relationship between the two.
Key Words / Human Rights Education, Moral Education, Moral Textbooks, Human Rights Issues