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室温および高温環境下で球体高速衝突を受ける遮熱コーティングの損傷評価

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Academic year: 2021

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(1)研究論文. 室温および高温環境下で球体高速衝突を受ける 遮熱コーティングの損傷評価※ 伊藤 潔洋*,†,荒井 正行*. Damage Evaluation of Thermal Barrier Coatings Subjected to a High-Velocity Impingement of a Solid Sphere Under Room and High Temperature Conditions※ Kiyohiro ITO*,†, Masayuki ARAI*. Thermal barrier coatings(TBC)applied to turbine blades in a jet engine or a gas turbine face a threat of a high-velocity impingement of various foreign objects, which induces serious damage with delamination of TBC. In this study, in order to understand the delamination mechanism of TBC under actual operation conditions, a high-velocity impingement test system under a high temperature condition was developed. In this system, a spherical impactor with a diameter of 1 to 8 mm can be impinged onto a TBC specimen at various temperature up to 900℃ . The high-velocity impingement test was conducted to atmospheric plasma sprayed TBC specimens with 8wt.%YSZ topcoat(TC)under room temperature(R.T.)and 900℃ conditions. As a result, a hemispherical indentation was formed at 900℃ , which indicates the plastic deformation of TC, in contrast to the brittle deformation observed at R.T.. In addition, vertical and interfacial cracks were formed at both R.T. and 900℃ . The cross-sectional observation revealed that the formation process of the interfacial crack at 900℃ was different from that at R.T.. In particular, the interfacial crack tended to become significantly longer at more than 170 m/s at 900℃ . Keywords : Thermal barrier coatings, Foreign object damage, High velocity impingement, Delamination, Crack. . る 3).また,Itoらは,BC 表面の研磨・グリットブラスト処理. 1. 緒 言. により未溶融粒子の除去と界面粗さを制御することで界面破 壊靱性値を向上可能であることを報告している 4).. 航空機のジェットエンジンや発電用ガスタービンのタービ. このような経年劣化のみならず,異物の衝突などに起因し. ン動翼には,高温の燃焼ガスから金属基材を保護する遮熱 コーティング(TBC)の適用が必要不可欠となっている 1).. た突発的な損傷も問題となっている.ジェットエンジンやガ. TBC は,セラミックス遮熱層のトップコート(TC)および基. スタービン内部に砂や火山灰,微小金属片などの異物が吸引. 材との熱膨張係数差を緩和させるボンドコート(BC)の2層で. された場合,これら異物が動翼表面に高速衝突することで. 構成される 2).TCの成膜方法として主に大気プラズマ溶射. TBC にはく離などの損傷が生じる.このような損傷は FOD. (APS)とEB-PVD(Electron beam-physical vapor deposition). (Foreign object damage)と呼ばれており,特にジェットエン. があり,発電用ガスタービンには APS,ジェットエンジンには. ジンにおいて問題となっている 5,. 6) .FOD によりTBC にはく. EB-PVD が採用されている.. 離が発生した場合,ジェットエンジンやガスタービンの重大 な損傷に繋がる恐れがある.そのため,FOD による TBC の損. これらの TBC は,高温環境に長期間曝されることによりBC. 傷メカニズムを明らかにする必要がある.. の酸化などの経年劣化が生じ,はく離に至ることが懸念され ている.そのため,耐はく離性を改善するための研究が精力. FOD による TBC の損傷メカニズムに関する研究が国内外. 的に行われている.片柳らは,BC に一般的に使用される. で精力的に行われている 7-9).Chenらは,バーナーリグ試験. CoNiCrAlY に CeO2 や ZrO2 を微量添加することで BC の内部. に基づいて EB-PVD により成膜された TBC の損傷メカニズム を評価している 10).この試験では,直径 50~560 μm のアルミ. 酸化を積極的に促進させる耐はく離性向上手法を提案してい . ※原 稿 受 付 2020 年 10 月 5 日 「日本溶射学会第 112 回(2020 年度秋季)全国講演大会(2020 年 10 月 27 日)にて発表」 ※原稿受理日 2020 年 12 月 7 日 *東京理科大学 工学部機械工学科(〒 125-8585 東京都葛飾区新宿 6-3-1) * Graduate School of Mechanical Engineering, Tokyo University of Science(6-3-1, Niijuku, Katsushika-ku, Tokyo 125-8585, Japan) †Corresponding author, E-mail:[email protected]. 4. 溶 射 Vol.58,No.1.

(2) 室温および高温環境下で球体高速衝突を受ける遮熱コーティングの損傷評価. ナ粉末を高温燃焼ガスフレーム中に投入し,1232℃に加熱保. mm)をステンレスパイプ内で加速し,減圧チャンバー内に設. 持された TBC 試験片表面に 10~170 m/s で衝突させている.. 置された試験片表面に衝突させる構造となっている.減圧チャ. また,有限要素解析によって得られた応力分布から推定され. ンバー内には円筒形状のセラミックスファイバーヒーター. たエネルギー解放率に基づいて TC / BC 界面に形成される. (VC401E06A,坂口電熱(株) )が備えられている.ヒーター. 界面き裂長さを推定している.その結果,推定された界面き. 内部には石英ガラス管が挿入されており,ガラス管の内径と. 裂長さは実験において観察された界面き裂長さと概ね一致す. ほぼ同一の外径を有する円柱形状試験片を設置可能な構造と. ることを示している.しかしながら,このような無数の粉末粒. なっている.試験片は減圧チャンバーの後部(図の左側)から. 子を衝突させる実験では,因果関係,すなわち,個々の粒子の. ヒーター内部に挿入される.ヒーターの温度制御には,卓上. 衝突とその結果生じる損傷を厳密に対応づけることが困難で. 型温度調節装置(DSSP23, (株)シマデン)および高温用 K 型. ある.. シース熱電対(1HKX325, (株)チノー)が用いられている.. Choiらは,単一球体の高速衝突試験によって EB-PVD によ. 熱電対は減圧チャンバーの後部から試験片の裏面に接触する. り成膜された TBC の損傷メカニズム解明を試みている 11).. まで挿入されている.本構造により,試験片の表面温度を最. 直径 1.6 mm の SUJ2 鋼球を 150 ~ 300 m/s で TBC 試験片状に. 大 900℃に加熱した状態で試験を行うことができる.なお,衝. 衝突させ,TC / BC 界面に形成される界面き裂長さ評価して. 突後に試験片から跳ね返った球体がヒーター内に衝突するこ. いる.また,球体の衝突前後のエネルギー保存則に基づいて. とを防ぐため,試験片をヒーターの中央よりもやや前方に配. 界面き裂長さの予測式構築を試みており,実験結果と概ね一. 置する構造となっている.その結果,試験片の表面および裏. 致することを報告している.このような単一球体による高速. 面には温度差が生じることには留意する必要がある.具体的. 衝突試験の場合,球体の衝突と損傷を厳密に対応づけること. には,表面を900℃とした場合,裏面は約 950℃まで加熱される.. が可能であり,損傷メカニズムを明らかにする上で有効な手. 開発した H-SPITS の減圧チャンバー部の外観写真を Fig.2. 段である.しかしながら,これらの試験の多くは室温環境下. に示す.減圧チャンバー内の圧力は真空ポンプ(GA50DA,. で行われており,より実機に近い高温環境下での損傷を評価. (株)アルバック)によって約 500 Pa まで減圧される.これに. することが必要不可欠である.. より,最大温度条件下でも試験片の酸化を抑制した状態で試. 著者らは,これまでに室温環境下において単一球体の高速. 験を行うことができる.また,減圧により空気抵抗が低下す. 衝突試験が可能な球体衝突試験装置を開発し,TBC の損傷評. ることから,球体の衝突速度の向上にも寄与している.なお,. 価や金属材料における圧痕寸法予測式の構築などを進めてき. 球 体 の 衝 突 速 度 測 定 には2つ の 連 続 発 振 半 導 体 レー ザ. た 12-14).本研究では,高温環境下において異物の衝突を受け. (LDU33,シグマ光機(株) )を用いている.レーザ間距離を 60. る TBC の損傷メカニズムを明らかにするため,最大 900℃の. mmとし,球体によってレーザが遮られる時間差をオシロス. 高温環境下で球体の高速衝突試験が可能な球体衝突試験装置. コープ(DCS-7506, (株)テクシオ・テクノロジー)により計測. (H-SPITS)を新たに開発した.本装置を用い,室温および. する.. 900℃環境下で TBC 試験片に対する球体高速衝突試験を行. 本試験機の仕様を Table 1にまとめる.直径 1 mm の球体. い,温度および衝突速度が TBC の変形・損傷挙動に及ぼす影. を用いた場合には最大 700 m/s,直径 3 mm の球体では最大. 響を評価した.また,有限要素法による TBC 上への球体衝突. 450 m/s で衝突試験を行うことが可能である.. 解析を行い,界面き裂形成要因を検討した.. 3. 球体高速衝突試験による TBC の損傷評価. 2. 高温環境下球体高速衝突試験装置の開発. 3.1 供試材および実験方法. 開発した H-SPITS の概略図を Fig.1に示す.図のように,本. 基材にはφ23.5×21 mm の Ni 基超合金 Hastelloy-X を用い. 装置は,高圧の N2 や He ガスによって単一球体(直径 1 ~ 8. た. 基 材 表 面 を ブ ラ ス ト 処 理 後,BC と し て CoNiCrAlY. Fig.1 Schematic illustration of the H-SPITS. 2021年 1月. 5.

(3) 伊藤 潔洋,荒井 正行. Fig.2 Appearance of the section of the vacuum chamber in the H-SPITS. Fig.3 Laser microscope images of the surface of TBC specimens subjected to an impingement of a SUJ2 ball at 271 m/s under different temperature environments: (a)R.T. and(b)900℃ .. Table 1 Specification of the H-SPITS.. おり,圧痕周囲に大きな割れやはく離は認められない.この ことから,TC は室温において脆性的な変形・損傷挙動を示す のに対し,900℃の高温環境下では高い塑性変形能を示すこと がわかった.このような傾向は衝突速度によらず確認されて いる.Watanabeらは,EB-PVD によって成膜された 7YSZ(AMDRY 9954,エリコンメテコジャパン(株) )を高速フレー. TBC の高温下での球圧子押込み試験を行っている 15).その. ム溶射(HVOF,UnicoatLF/JP5000gun,エリコンメテコジャ. 結果,1137℃において圧痕周辺での柱状組織の顕著な変形と. パン(株) )により厚さ約 0.1 mm 施工した.その後,TC とし. 緻密化が起きることを報告している.一方,本試験では 900℃. て 8wt.%Y2O3-ZrO2(8YSZ,METCO 204NS,エリコンメテコ. という比較的低温で塑性変形が生じており,今後 APS により. ジャパン(株) )を大気プラズマ溶射(APS,Unicoat/F4gun,. 成膜された YSZ の高温下での機械的特性を評価していく必要. エリコンメテコジャパン(株) )により厚さ約 1 mm 施工した.. がある.. 以降,本試験片を TBC 試験片と呼ぶ.球体にはφ3 mm の. 衝突速度とレーザ顕微鏡により測定された圧痕深さの関係. SUJ2 鋼球(大橋鋼球(株) )を用いた.開発した H-SPITS を用. を Fig.4 に示す.いずれの温度においても衝突速度の増加に伴. い,室温(R.T.)および 900℃の温度条件下で TBC 試験片に対. い圧痕深さが単調増加していることがわかる.しかしながら,. する球体高速衝突試験を行った.900℃の条件では,500 Pa ま. その傾向は温度によって顕著に異なっている.衝突速度が比. で減圧,10℃ /min で 900℃まで昇温,900℃ で 10 min 保持後. 較的速い 200 m/s 以上の場合,900℃に比べ室温の方が圧痕が. に衝突試験実施,150℃まで炉冷後大気圧に解放,の手順で試. 深くなっている.これは,Fig.3(a)に示したように,圧痕内部. 験を行った.球体の衝突速度は 100~300 m/s の範囲とし,ガ. や周辺で割れやはく離が生じることで局所的に深い谷部が形. スの種類およびガス圧力によって制御した.試験後,試験片. 成されるためと考えられる.一方,衝突速度が比較的遅い 150. 表面に形成された圧痕形状および圧痕深さをレーザ顕微鏡. m/s 以下の場合,900℃において逆に圧痕が深くなっている.. (VK-X150, (株)キーエンス)により測定した.また,試験片 表面および断面を走査型電子顕微鏡(SEM,JCM-6000,日本 電子(株) )により観察し,垂直き裂および界面き裂長さを評 価した.. 3.2 実験結果および考察 室温および 900℃において,ほぼ同一の衝突速度である 271 m/s で球体の衝突を受けた TBC 試験片表面のレーザ顕微鏡像 を Fig.3 に示す.図の明暗は基準面からの高さを表している. 基準面は圧痕から十分離れた 4 点の平均として設定されてい る.室温の場合,圧痕は凹凸の激しい不規則な形状を示して おり,圧痕周辺で割れやはく離が生じている様子が確認でき. Fig.4 Relationship between impingement velocity and indentation depth measured by the laser microscope.. る.一方,900℃の場合,きれいな半球状の圧痕が形成されて. 6. 溶 射 Vol.58,No.1.

(4) 室温および高温環境下で球体高速衝突を受ける遮熱コーティングの損傷評価. この速度域では室温においても大きな割れやはく離が生じな. と考えられる.. いため,軟化により塑性変形し易い 900℃で圧痕が深くなる.. 室温および 900℃において様々な速度で球体の衝突を受け. 室温および 900℃において,同様に約 271 m/s での球体の衝. た TBC 試験片断面 SEM 像を Fig.8 に示す. (a)および(b)は. 突を受けた TBC 試験片表面 SEM 像を Fig.5 に示す.図から,. 実験範囲内における低衝突速度, (c)および(d)は中衝突速度,. いずれの温度においても,圧痕から周囲に向かって放射状に. (e)および(f)は高衝突速度による結果を示している.まず低. 延びるき裂が多数形成されていることが確認できる.以降,. 衝突速度の結果に注目すると,室温では,圧痕直下の TC 中央. これらのき裂を垂直き裂と呼ぶ.衝突速度と垂直き裂数の関. 部から界面に向かって斜め方向に延びる円錐型のき裂が形成. 係および衝突速度と最大垂直き裂長さの関係をそれぞれ Fig.6. されている.この円錐型き裂は界面近傍で界面と平行方向に. および Fig.7 に示す.これらの図から,ばらつきはあるものの. 偏向している様子が確認できる.また,圧痕直下の TC / BC. 衝突速度の増加に伴い垂直き裂数および最大垂直き裂長さは. 界面に界面き裂が形成されている.一方,900℃では円錐型き. 増加することがわかる.一方,温度については明確な影響は. 裂の形成は認められず,圧痕直下に界面き裂のみが形成され. 認められなかった.このような垂直き裂の形成は,円柱の圧. ている.中衝突速度の場合, 室温では円錐型き裂が界面に沿っ. 入問題によって定性的に説明することができる.すなわち,. て進展するとともに,圧痕底から水平方向に延びる水平き裂. 球体が TC 表面に衝突し内部に侵入していく過程で TC 内には. が形成されている.900℃では,圧痕直下の界面き裂が TC 内. 半径方向に圧縮応力が生じる.一方,周方向には引張応力が. に進展するとともに,圧痕から離れた TC / BC 界面で新たな. 生じるため,このような放射状の垂直き裂が形成されるもの. 界面き裂が形成している様子が確認できる.高衝突速度の場. Fig.7 Relationship between impingement velocity and maximum length of vertical crack radially formed in the vicinity of indentation.. Fig.5 SEM images of the surface of TBC specimens subjected to an impingement of a SUJ2 ball at 271 m/s under different temperature conditions:(a)R.T. and(b)900℃.. Fig.8 Cross-sectional SEM images of TBC specimens subjected to an impingement of a SUJ2 ball under various conditions:(a)118 m/s at R.T.,(b)110 m/s at 900℃ (c) , 182 m/s at R.T.,(d)196 m/s at 900℃ (e) , 271 m/s at R.T. and(f)271 m/s at 900℃.. Fig.6 Relationship between impingement velocity and number of vertical cracks radially formed in the vicinity of indentation. 2021年 1月. 7.

(5) 伊藤 潔洋,荒井 正行. 合,室温では円錐型き裂を起源とする界面き裂がさらに進展 するとともに,圧痕直下の TC に無数の割れが生じ大きな損傷 が生じている.900℃においても界面き裂がさらに進展してい る様子が確認できる.また,圧痕直下の TC 内に円錐型き裂や 水平き裂の形成が確認できる.これらの観察結果は,球体衝 突による界面き裂や TC 内部に生じるき裂の形成過程が室温 および 900℃で顕著に異なることを示している. 室温および 900℃における衝突速度と界面き裂長さの関係 を Fig.9 に示す.本研究では,Fig.8 に示したき裂先端間の水 平方向距離を界面き裂長さと定義した.図から,いずれの温 度においても衝突速度に伴い界面き裂長さは増加する傾向に あることがわかる.一方,温度による明確な差は認められな いものの,900℃において 170 m/s を境に界面き裂が急激に増. Fig.10 Schematic of an axisymmetric finite element analysis model of a TBC specimen subjected to a high-velocity impingement of a spherical projectile.. 加する傾向が確認できる.前述のように,170 m/s 以下では圧 痕直下で界面き裂が形成・進展するのみであるに対し,170 m/s 以上では圧痕から離れた位置に新たな界面き裂が形成す. Table 2 Mechanical properties of TC, BC and substrate used for analysis.. ることによるものと考えられる.. Table 3 Johnson-Cook parameters of substrate used for analysis.. Fig.9 Relationship between impingement velocity and length of interfacial crack.. 行った.φ3 mm の球体が 200 m/s で衝突する際の TC / BC 界面近傍の z 方向応力分布を評価した.. 4. 有限要素法による TBC 上への球体衝突解析. 4.2 解析結果. 4.1 解析モデルおよび解析条件. 有限要素解析によって得られた衝突過程における TBC 試験. 球体衝突試験において確認された界面き裂の形成要因を明. 片中の z 方向応力σ zz 分布を Fig.11に示す.引張応力につい. らかにするため,有限要素法による TBC 試験片上への球体衝. てのみコンター図として示されており,圧縮応力は全て白で. 突解析を行った.解析には汎用有限要素解析コード Marc (Ver.. 表わされている.Fig.11(a)より,球体が最大侵入深さに到達. 2020,MSC software)を用いた.Fig.10 に軸対称有限要素モ. した時点では,圧痕直下の TC,BC および基材には圧縮応力. デルの模式図を示す.球体は弾性体,TC および BC は弾完全. が生じ,圧痕から離れた位置の TC / BC 界面には数 10 MPa. 塑性体,基材は Johnson-Cook(JC)モデル 16)に従う弾塑性体. 程度の引張応力が生じている.ところが,Fig.11(b)に示すよ. とした.球体,TC,BC および基材の機械的特性を Table 2 に,. うに,球体が反発する瞬間,圧痕直下の TC / BC 界面に 100. 基材の JC モデルの材料定数を Table 3 に示す.900℃におけ. MPa を超える引張応力が生じていることが確認できる.また,. る圧痕深さの実験結果と本解析によって得られる圧痕深さが. 圧痕縁近傍では 300 MPa を超える引張応力が生じている.. 一致するように TC の降伏応力を決定した.球体は SUJ2,BC. Fig.11(c)より,反発後の圧痕直下の界面は再び圧縮応力と. は CoNiCrAlY,基材は Hastelloy-X を想定し,BC および基材. なっている.一方,圧痕から離れた位置の TC / BC 界面には. の物性値については文献値を用いた 17,. 18) .球体と TBC 試験. 最大侵入深さ時よりも高い引張応力が生じていることがわか. 片の接触界面の摩擦はないものとし,塑性変形による発熱の. る.. 影響も無視できるものとした.最小要素サイズを 25 µm とし,. これらの結果から,Fig.8 において確認された圧痕直下の界. 圧痕近傍の TC に対して 1 インクリメント毎にリメッシュを. 面き裂は,反発直後の引張応力によって形成されたものと考. 8. 溶 射 Vol.58,No.1.

(6) 室温および高温環境下で球体高速衝突を受ける遮熱コーティングの損傷評価. Fig.11 Contour plot of σzz in a TBC specimen during the impingement process;(a)at maximum penetration depth,. (b)at the moment of a rebound and(c)after a rebound.. えられる.このような反発直後に瞬間的に生じる引張応力は,. BC 界面に比較的大きな引張応力が瞬間的に生じることが. TC 単層体への球体衝突解析では確認されなかった.このこ. 確認された.また,球体侵入時および反発時に圧痕から離. とから,各層の機械的特性の違いが引張応力の発生要因と考. れた位置の TC / BC 界面に引張応力が生じることが確認. えられる.しかしながら,その発生メカニズムは明らかでは. された.これらの引張応力が界面き裂の形成要因である. ないため,今後のさらなる調査や理論モデルの構築が必要で. ものと考えられた.. ある.一方,圧痕から離れた位置での界面き裂については,球 体侵入時もしくは反発後に界面に生じる引張応力によって形. 謝 辞. 成・進展するものと考えられる.なお,TC / BC 界面に予き 裂を導入した TBC モデルによる熱応力解析の結果,900℃か. 本研究は一般社団法人日本溶射学会 2019 年度研究助成を受. ら室温まで冷却した場合の界面き裂先端の応力拡大係数は約. け実施されたものである.また,TBC 試験片はトーカロ株式. 0.1. MPa·m0.5 と評価された.TC. / BC 界面の界面破壊靱性値. 会社にて施工いただいたものであり,ここに感謝の意を表す.. は約 1.0 MPa·m0.5 であることから 19),冷却時に界面き裂が進 展する可能性は低いことが確認された. 文 献. 1)A.G. Evans, D.R. Mumm, J.W. Hutchinson, G.H. Meier and F.S. Pettit: Mechanisms Controlling the Durability of Thermal Barrier Coatings,Prog. Mater. Sci.,46,5(2001),505553. K. Ogawa, K. Ito, T. Shoji, D.W. Seo, H. Tezuka and H. Kato: 2) Effects of Ce and Si Additions to CoNiCrAlY Bond Coat Materials on Oxidation Behavior and Crack Propagation of Thermal Barrier Coatings, J. Therm. Spray Technol., 15, 4 (2006),640-651. 3) 片柳豪太 , 市川裕士 , 小川和洋 , 田附匡 , 多田学 , 柴崎由貴 : ボ ンドコートへの内部酸化を利用した遮熱コーティングの耐は く離特性改善 , 溶射 , 57, 2(2020),97-104. K. Ito, T. Shima, M. Fujioka and M. Arai: Improvement of 4) Oxidation Resistance and Adhesion Strength of Thermal Barrier Coating by Grinding and Grit-Blasting Treatments, J. Therm. Spray Technol., 29,(2020),1728-1740. 5) C.B. Meher-Homji and G. Gabriles: Gas Turbine Blade Failures-Causes, Avoidance, and Troubleshooting, Proc. of The 27th Turbomachinery Symposium, 1998, Houston, (1998),129-180. X. Chen, M.Y. He, I. Spitsberg, N.A. Fleck, J.W. Hutchinson 6) and A.G. Evans: Mechanisms Governing the High Temperature Erosion of Thermal Barrier Coatings, Wear, 256,(2004),735-746. 7) J. Kadkhodapour, A. Pourkamali Anarakia and B. Taherkhani: Mechanism of Foreign Object Damage and Investigating Effect of Particle Parameters on Erosion Rate of a Rough Surface Using Experimental and Numerical Methods, J. Fail. Anal. and Preven., 15,(2015),272-281. 8) W. Zhu, Y.J. Jin, L. Yang, Z.P. Pi and Y.C. Zhou: Fracture. 5. 結 言 高温環境下で異物の高速衝突を受ける遮熱コーティング (TBC)の損傷メカニズムを明らかにするため,高温環境下球 体高速衝突試験装置(H-SPITS)を開発した.本装置を用い, 室温および 900℃環境下で直径 3 mm の SUJ2 鋼球を 100~300 m/s の範囲で TBC 試験片に衝突させ,表面および断面観察に よりTBC の損傷状態を評価した.また,有限要素法による TBC 試験片上への球体衝突解析を行った.得られた知見を以 下にまとめる. 球体高速衝突試験の結果,温度によってトップコート (1) (TC)の変形挙動が顕著に異なり,室温では脆性的な変形 挙動を示すのに対し,900℃では塑性変形に近い変形挙動 を示すことが確認された. いずれの温度においても圧痕から周囲に向かって放射状 (2) に延びる垂直き裂が形成された.垂直き裂数および最大 垂直き裂長さは衝突速度に伴い増加するが,温度の影響は 認められかった. いずれの温度においてもTC / BC 界面に界面き裂が形成 (3) され,温度によって界面き裂の形成過程は顕著に異なるこ とが明らかとなった.また,衝突速度に伴い界面き裂長さ が増加し,900℃では 170 m/s 以上で急激に界面き裂長さ が増加することが確認された. 有限要素法による球体衝突解析の結果,反発直後の TC / (4) 2021年 1月. 9.

(7) 伊藤 潔洋,荒井 正行. Mechanism Maps for Thermal Barrier Coatings Subjected to Single Foreign Object Impact, Wear, 414-415,(2018), 303-309. 9) X. Chen, R. Wang, N. Yao, A.G. Evans, J.W. Hutchinson and R.W. Bruce: Foreign object damage in a thermal barrier system: mechanisms and simulations, Mater. Sci. Eng. A, 352,(2003),221-231. 10) M.W. Crowell, T.A. Schaedler, B.H. Hazel, D.G. Konitzer, R.M. McMeeking and A.G. Evans: Experiments and Numerical Simulations of Single Particle Foreign Object Damage-like Impacts of Thermal Barrier Coatings, Int. J. Impact Eng., 48,(2012),116-124. 11) S. R. Choi, J. M. Wright, D. C. Faucett and M. Ayre: Phenomena of Foreign Object Damage by Spherical Projectiles in EB-PVD Thermal Barrier Coatings of Turbine Airfoils, J. Eng. Gas Turbine Power, 136,(2014),102603. 12) 伊藤潔洋 , 市川裕士 , 小川和洋 : コールドスプレー模擬単粒子 衝 突 試 験 装 置 の 開 発 と 粒 子 付 着 挙 動 の 評 価 , 溶 射 , 52, 4 (2015),141-146. 13) K. Ito, F. Gao and M. Arai: Damage Analysis of Thermal Barrier Coatings Subjected to a High-Velocity Impingement of a Solid Sphere, Key Eng. Mater., 827,(2019),349-354.. 14) K. Ito and M. Arai: Expanding Cavity Model Combined with Johnson-Cook Constitutive Equation for the Dynamic Indentation Problem, J. Eng. Mater. and Technol., 142, (2020),021005. 15) M. Watanabe, C. Mercer, C. G. Levi and A. G. Evans: A probe for the high temperature deformation of thermal barrier oxides, Acta Mater., 52,(2004),1479-1487. 16) G. R. Johnson and W. H. Cook: A Constitutive Model and Data for Metals Subjected to Large Strains, High Strain Rates and High Temperatures, Proc. of the 7th International Symposium on Ballistics, Hague,(1983),541-547. M. Arai, H. Katori and K. Ito: Numerical simulation of 17) inelastic deformation and crack propagation in TBCmultilayered Ni-based superalloy subjected to thermomechanical loadings, Surf. Coat. Technol., 399,(2020), 126159. A. Sandeep: Dynamic Response of Aerospace Materials 18) under Extreme Environments, Open Access Dissertations, Paper 31,(2013). 荒井正行 : 押し込み試験法に基づくセラミック遮熱コーティ 19) ングの界面破壊靭性評価法 , 材料 , 58, 11(2009),917-923.. 10. 溶 射 Vol.58,No.1.

(8)

Table 1 Specification of the H-SPITS.
Table 2  Mechanical properties of TC, BC and substrate used  for analysis.

参照

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