GNSS自動操舵田植機による無落水移植が水稲の生育および収量に及ぼす影響
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(2) 加藤・進藤・佐山・齋藤・長坂・近藤・藤原・矢治 GNSS自動操舵田植機による無落水移植が水稲の生育および収量に及ぼす影響. 価は行わなかった.. 様に推移しており(第6図,現地Bデータ省略) ,無. 2)生育について. 落水移植によって還元が極端に進む可能性は低いと考. 2017年の現地Aでは,無落水区の剪根苗の平均根. えられた.. 長は落水区に比べ有意に短く,発根数に有意な差は無. 3)収量・品質について. かった.2017年の現地Bおよび2018年の現地A,B. 無落水区と落水区で収量に差が認められたのは. では両区の発根数と平均根長は同等であった(第1. 2018年の現地Bのみで,無落水区の収量は落水区に. 図).. 比べ有意に少なかった(第2表).2018年の現地Bに. 2017年の現地Aにおける無落水区の茎数は,6月. おける無落水区の収量低下は,7月中旬まで両区の生. 2日が84本 / ㎡(落水区比83%),6月9日が123本 /. 育は同等であったことから7月26日以降の葉色の低. ㎡(同85%),6月27日が411本 / ㎡(同88%)と少. 下が影響したと考えられ,無落水移植の影響では無い. ない傾向がみられた.また,7月10日以降は同等で. と推察された.玄米品質は,無落水移植による低下は. あった(第2図).2017年の現地Bおよび2018年の. 認められなかった(第2表).. 現地A,Bでは両区の茎数は同等であった(第2図).. 以上のことから,無落水移植による水稲の生育は落. なお,2018年の現地Aでは表層剥離が発生したため,. 水移植と同様の経過を示し,収量および品質への影響. 両区とも移植2日後と6日後に水の入れ替えを行っ. は小さいと考えられた.なお,今回の試験では,減水. た.. 深の違いが生育に影響した事例はあったが,無落水に. 移植7日後までの平均地温(深さ5cm)は,2017. よる保温効果が生育に及ぼす影響については判然とし. 年の現地Aでは無落水区に比べ落水区が0.4℃高く,. なかった.ただし,移植後に強風が吹くなど,移植後. 現地Bでは無落水区に比べ落水区が0.2℃低く(第3. の天候が悪い場合に無落水移植では代枯れが減少する. 図),2018年の現地A,Bでは両区は同様に推移した. などして生育が促進される可能性があること,2018. (データ省略) .2017年の供試ほ場の減水深は,現地. 年の現地Aでは無落水区で表層剥離の発生が多かった. Aの無落水区5mm / 日,落水区14mm / 日と無落水区. ことから,無落水移植による表層剥離の発生状況など,. に比べ落水区の減水深が大きく,現地Bは同等であっ. 今後も知見を積み重ねる必要がある.. た(第4図).八郎潟干拓地水田は過湿軟弱な強粘質. 謝 辞. 土壌から成り,田面水の降下浸透が少ないことが初期. 本研究は生研支援センター「革新的技術開発・緊急. の地温が低く経過する原因と推察されている(平野・. 展開事業(うち地域戦略プロジェクト)「GNSS汎用. 樋渡1978)が,2017年の現地Aはこの知見と同様の. 利用による近未来型環境保全水田営農技術の実証研. 結果を示し,これが発根や初期茎数に影響したと考え. 究」の支援を受けて実施した.. られた.. 現地試験のほ場を提供していただいた菅野正史氏,. 草丈,葉齢は,2か年とも両区で概ね同様に推移. 桑原秀夫氏には心より感謝申し上げます.. した(データ省略).葉色は,2017年の現地A,Bお. 引用文献. よび2018年の現地Aでは両区は同様に推移したが,. 近藤正 2010.八郎湖の水文・水環境特性の変遷と課 題.水環境学会誌33(9) :292-298.. 2018年の現地Bでは7月26日以降に無落水区の葉色. 農林水産省生産流通消費統計課 2018.農林水産関係. 低下が大きかった(第5図).2018年の現地Bでは中 干し後のほ場の乾燥程度が無落水区で強かったため,. 市町村別データ平成29年産市町村別データ.. 無落水区は落水区に比べ窒素吸収が抑制され,葉色が. 平野哲也・樋渡公一 1978.八郎潟干拓地水田におけ. 低下したと推察された.ほ場の乾燥程度が異なった原. る水稲の生育の特徴について 第1報 初期生育につ. 因は特定できなかったが,ザリガニによる漏水が疑わ. いて.秋田県立農業短期大学研報 4:1-21.. れた. 移植後のEhは,2017年の現地Aでは無落水区に比 べ落水区の低下が早い傾向がみられ(第6図),地温 が高かったことが影響したと考えられた.2017年の 現地Bおよび2018年の現地A,Bでは両区のEhは同. -6-.
(3) 日作東北支部報(Tohoku Journal of Crop Science)№62(2019). 第1表 移植時の苗質および植え付け精度等. 移植条件および移植時の苗質,水深・植え付け精度について 施肥量 (N-P205-K2O/kg/10a). 調査 試験区 場所. 年次. 現地A 2017 現地B 現地A 2018 現地B. 基肥. 追肥①. 追肥②. 無落水 6.0-2.3-2.3(全層) 1.5-0-0 無 うちN3.6は育苗箱施肥 (7月24日) 落水 無落水 1.7-1.5-1.0(全層) 2.2-0-0 0.24-0.24-0 ぼかしを現物64kg/10a (7月9日) (8月2日) 落水 無落水 6.9-2.8-2.8(全層) 1.5-0-0 無 うちN4.1は育苗箱施肥 (7月23日) 落水 無落水 3.8-0-0(育苗箱施肥) 1.4-0-0 0.4-0.1-0.1 落水 自家有機肥料を現物41kg/10a(7月6日) (8月3日). 代かき日 移植日 5月6日 5月7日. 5月17日. 5月21日 5月13日 5月20日 5月5日 5月21日 5月4日 5月16日 5月23日 5月15日 5月22日. 移植時の苗 苗丈 葉齢 充実度 cm 葉 mg/cm 11.2 4.8. 1.55. 10.4 4.6. 2.33. 11.8 4.4. 1.52. 16.1 4.0. 1.64. 移植時水深. 植込本数. cm. SD. 本/株. 4.3 3.0 2.4 0.9 3.8 1.0. (0.76) (1.14) (0.81) (0.44) (1.27) (0.66). 5.4 4.7 8.8 8.0 5.7 5.3 5.0 5.6. SD. 植え付け深 cm. SD. 欠株率 %. SD. (0.84) 3.3 (0.34) 0.7 (0.21) (0.55) 2.9 (0.55) 0.6 (0.28) (1.01) 3.8 (0.64) 0.3 (0.26) (0.38) 3.7 (0.25) 0.2 (0.21) (1.30) 4.4 (0.44) 0.3 (0.16) (0.82) 4.3 (0.57) 0.2 (0.12) (0.45) (0.52) -. 1)移植時の水深,植込本数,植え付け深,欠株率は6地点の平均値(ただし,移植時水深は,2017年の現地Aは5地点,2018年の現地Bの落 水区は4地点の平均値).移植時の水深は株間を計測.欠株率は1000株×6地点を調査. 2)葉齢には不完全葉を含む.苗丈および葉齢は100個体を調査.充実度は1個体の1cm当たりの乾物重を示す. 3)「-」は値が無いことを示す. 4)SDは標準偏差を示す.. 発根数 本/個体. *. 4. 平均根長 cm/本. 3. 12. 2 8. 1. 平均根長(cm/本). 発根数(本/個体). 16. 0. 4 無落水 落水 無落水 落水 無落水 落水 無落水 落水 現地A. 現地B. 現地A. 2017年. 現地B 2018年. 第1図 剪根苗の発根状況. 1)試験に供試した苗の根を全て切り取り使用. 2)2017年:現地Aは5月18日に移植し4日後に回収.現地Bは5月22日に移植し4日後に回収(4反復). 2018年:現地Aは5月22日に移植し5日後に回収(4反復).現地Bは5月24日に移植し7日後に回収(3反復). 3)*は5%水準で有意差があることを示す(t-test).図中のバーは標準偏差を示す.. 800. 700. 2017年. 600. 600. 茎数(本/㎡). 茎数(本/㎡). 700 500 400. 現地A 現地A 現地B 現地B. 300 200 100 0 5/17. 6/6. 6/26 7/16. 8/5. 無落水 落水(慣行) 無落水 落水(慣行). 2018年. 500 400 300 200 100. 8/25 9/14 10/4 (月日). 0 5/21. 6/10. 6/30. 7/20. 現地A 現地A 現地B 現地B. 無落水 落水(慣行) 無落水 落水(慣行). 8/9. 8/29. 第2図 茎数・穂数の推移(左:2017年,右:2018年). 1)各区20株×4地点を調査. 2)図中のバーは標準偏差を示す.. Copyright 日本作物学会東北支部 THE. TOHOKU BRANCH, THE CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN. -7-. 9/18 (月日).
(4) 加藤・進藤・佐山・齋藤・長坂・近藤・藤原・矢治 GNSS自動操舵田植機による無落水移植が水稲の生育および収量に及ぼす影響. 24. 24. 23 地温・水温(℃). 地温・水温(℃). 23. 現地A. 22 21 20 19 18 無落水(地温5cm) 無落水(水温). 17 16 5/17. 5/19. 5/21. 5/23. 5/25. 落水(地温5cm) 落水(水温). 5/27. 5/29. 現地B. 22 21 20 19 18 無落水(地温5cm) 無落水(水温). 17. 5/31 (月日). 16 5/20. 5/22. 第3図 2017年の移植後の地温,水温の推移(左:現地A,右:現地B). 1)地温は深さ5cm,水温は田面の約1cm上を各区2地点測定(T&D社製TR-71wfを使用).. 減水深(mm/日). 25. *. 20 15 10 5 0 無落水. 落水 (慣行). 無落水. 現地A. 落水 (慣行). 現地B. 第4図 供試ほ場の減水深の比較(2017年). 1)減水深は降雨や入排水の無い時間の水深を測定して日減水深に換算. 現地Aは5月9日~6月14日の間に4回測定.現地Bは5月15日~5月23日の間に3回測定. 2)*は5%水準で有意差があることを示す(t-test).図中のバーは標準偏差を示す.. 葉緑素計値(SPAD502). 50 45 40 35 30 25 20 15 6/26. 現地A 現地A 現地B 現地B 7/10. 無落水 落水(慣行) 無落水 落水(慣行). 7/24. 8/7. 8/21. 9/4. 9/18. 10/2. 第5図 葉色の推移(2018年). 1)各区10株×4地点を調査(コニカミノルタ社製SPAD502を使用) . 2)現地Aでは8月15日以降,現地Bでは8月21日以降は止葉を測定.. -8-. 5/24. 5/26. 落水(地温5cm) 落水(水温). 5/28. 5/30 6/1 (月日).
(5) 日作東北支部報(Tohoku Journal of Crop Science)№62(2019). 400. 500. 2017年. 400. 無落水. 300. 無落水 落水(慣行). 200. 200. Eh(mV). Eh(mV). 2018年. 300. 落水(慣行). 100 (月日). 0 5/8. 5/15. 5/22. 5/29. 6/5. 6/12. 6/19. 6/26. 100 (月日). 0 5/6. 5/13. 5/20. 5/27. 6/3. 6/10. 6/17. 6/24. -100. -100 -200. -200. -300. -300. 第6図 現地Aの土壌の酸化還元電位(Eh)の推移(左:2017年,右:2018年) . 1)各区4地点(深さ5cm)を測定(藤原製作所製EP-201型,PRN-41を使用). 2)図中のバーは標準偏差を示す.. 第2表 収量および収量構成要素,玄米品質. 年次. 試験 ほ場. 現地A 2017 現地B 現地A 2018 現地B. 坪刈 玄米 玄米タンパク 外観品質 質含有率. 全刈. ㎡当た り 粒数. 本/㎡. 粒/穂. 千粒/㎡. g. %. kg/a. 1-9. %. kg/a. 等. 444 431 556 572 459 461 394 400. 83.9 76.1 95.0 98.5 79.2 78.5 91.2 96.1. 37.2 32.8 52.8 56.4 36.3 36.2 35.9 38.4. 23.3 23.3 20.9 20.7 22.9 23.0 21.1 21.3. 85.5 90.2 59.6 55.4 81.8 81.8 86.0 77.1. 63.3 61.8 64.5 61.1 55.8 57.3 58.4 62.0. 5.0 5.0 7.8 8.0 3.0 3.8 5.3 6.3. 6.8 6.9 6.5 6.5 7.0 7.0 6.5 6.7. 66.9 64.6 55.7 55.1 -. 2 2 2 2 -. 穂数. 0-5. 1.0 1.2 0.6 1.1 2.8 3.0 0.1 0.1. 無落水 落水 無落水 落水 無落水 落水 無落水 落水. 千 粒 重. 1穂 粒数. 倒伏 試験区 程度. 登熟 歩合. 収量. ns ns ns *. 収量 等級. 1)坪刈収量、千粒重および玄米タンパク質は水分15%換算値。 ふるい目は、坪刈り収量は1.9mm、全刈収量は目1.85mm。. 1)坪刈収量,千粒重は水分15%換算値.ふるい目は,坪刈り収量は1.9mm,全刈収量は1.85mm. 2)玄米外観品質は、1(1等上)、2(1等中)、3(1等下)、4(2等上)、5(2等中)、6(2等下)、7(3等上)、8(3等中)、9(3等下)で分類。 2) 玄米外観品質は,一般財団法人日本穀物検定協会東北支部に依頼し,1(1等上),2(1等中),3(1等下),4(2等上),5(2等中), 3)*は5%水準で有意差があることを示す、nsは有意差なし( t -test)。 6(2等下),7(3等上),8(3等中),9(3等下)で分類. 3)*は5%水準で有意差があることを示す,nsは有意差なし(t-test). 4)玄米タンパク質含有率は,玄米の全窒素をケルダール法により測定し,タンパク質換算係数5.95を乗じて玄米水分15%換算で算出した.. (令和1年12月13日受理). Copyright 日本作物学会東北支部 THE. TOHOKU BRANCH, THE CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN. -9-.
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