飼育水温の変化がホンモロコ性分化関連遺伝子の発現に与える影響
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(2) 農. 学研究科. 平成肪年度. (課程修了による). (平成 26年3月). 芦. 田裕史. ASDAN 即SLIANAH BINTI. 川瀬成吾.
(3) 学位論 文審査結果 の報告書 氏. 名. 生 年 月 日. 本 籍(国. 芦. @・. 史. 平成61年7月13目. 大阪府. 籍). 学位 の種類. 博. 士(農. 学位 記番 号. 農. 第194号. 学位 授 与 の条 件. 田 裕. 学). 学位 規程 第5条 該 当. (博士の学位) 論 文 題 目. 飼 育水 温 の 変化 が ホ ンモ ロ コ性 分 化 関連. 遺伝子 の発 現 に与 える影響. 審 査 委 員. (主 査)小. 林. (副主査)太. 田 博巳 教授1. (副主査) 一 (副 査)㊥ (副 査)㊥. 徹. 教授. ㈱. 加藤 容子 教授 む.㊥.
(4) 巷△. 文内. ゲマ. の. E二. 飼育水温の変化がホンモロコ性分化関連遺伝子の発現に与える影響 農学研究科. 水産学専攻水産生物学研究室 博士後期課程芦田裕史. ホンモロコ(G加功Opogo"cae地lesce那)は,琵琶湖固有の小型コイ科魚類である.本種 はコイ科魚類の中で最も美味とされており,素焼きや甘露煮として主に高級料亭で消費 されている.近年では,食味の良さによる需要の増大と近年の漁獲量の激減から,滋賀 県だけでなく各県で養殖生産が活発化している.ホンモロコは特に雌の価値が高く,全 雌生産などによる養殖生産魚の性統御が望まれている.本種の性決定機構は遺伝的性決. 定XX雌ⅨY雄(雄へテロ型)によることが示唆されているが,さらに,性分化までの仔 稚魚期に過ごす環境水の温度が性決定に影響する,温度依存型性決定様式(TSD)を持つ ことも知られている. TSDは昶虫類で発見され,硬骨魚類においても,ペヘレイ,ティ ラピア,ヒラメ,トラフグなどで明らかにされてきた. TSDは一定の温度域のみ雌雄混. 合となり上下で雄もしくは雌どちらかに偏るもの,低水温で雄の割合が増加するものな ど,種によっていくつかの現象が報告されており,ホンモロコでは高水温で雄の割合が 増加するものとして報告されている.. 一般的な全雌生産は,性分化期に雄性ホルモン(ステロイド)を飼育水に添加する,ま. たは飼料に混合し,経口投与することによって,人為的に偽雄(XX)を作出し,これを通 常雌(XX)と交配することによって達成するとされる. TSD を持つ魚種においては高温 処理を用いることによって,従来のステロイド投与法を用いず,安全で効率的な偽雄の. 作出が可能になると予想、される.また,本種の性分化機構にっいての実際の温度処理が 遺伝子に及ぼす影響は未解明のままである. そこで,本研究では,本種の全雌生産技術の確立を見据え,ステロイドホルモン投与. 法を用いず,TSDを利用した温度処理のみで効率的に偽雄を作出するため,飼育水温の 変化が,TSDを持つホンモロコの性分化とそれに関与する遣伝子の発現動態に及ぽす影 響について調ベた. ホンモロコ性分化関連遺伝子の単離と発現 ホンモロコの性分化に関連する遺伝子の動態を調ベるため,他魚種において性分化に. 関与することが報告されている F0χ12, C)P19a,¥2卵50およびD形rU を単離し,その発 現を調ベた.他魚種における類似遺伝子の共通配列からプライマーを作成し,雌雄それ ぞれの生殖腺からt0伽RNAを抽出し,逆転写によってCDNAを合成したのち,作成し たプライマーを用いて PCR を行った(RT、PCR).得られた増幅産物を解析した結果,卵. 巣由来のCDNAから f0永・head ドメインを持っ 1606 塩基対価P), CⅥOC駈omeP450 領域 を持つ2282bp, Gn結合ドメイン, E町U/E"A ドメイン2, EπU/EFIAC.ターミナ. - 30 -.
(5) ルドメインを持つ 1729bp,精巣由来のCDNAからはDM ドメインを持っ2328如を得 た. NC別による類似性検索の結果,単離した遺伝子は他魚種における各遺伝子とそれ. ぞれ最も高い類似性を示した.また系統解析の結果から,各遣伝子はぞれぞれの相同遺 伝子と同じクラスターに属していた.さらに,単籬した4種の遺伝子にっいて成魚各組 織における発現を調ベた結果,本種の雌雄成魚においてもこれらの遺伝子は雌雄それぞ れの生殖腺で発現していた.また, DnlrUは卵巣での微弱な発現も観察され,これは他. 魚種における結果と一致していた.1hsi加hyb点diZ血onによるRNAプローブの結果から はF砥口が卵巣の穎粒膜細胞, C炉汐aが同じく卵巣の莢膜細胞,42δ少づ0が卵黄蓄積以 前の卵母細胞で発現が見られ, D柳rUほ精細管壁での発現が観察された.. これらのことから,ホンモロコより単雛した遺伝子はF0χ12, cyP19α,42卵50および D加π1の相同遺伝子であった.また,※且織発現の結果から,単離した4 種の遺伝子は雌 雄それぞれのマーカー遺伝子として使用できることが確認され,作成された配列特異的 プライマーおよびm si地 hybd価Za廿on用のRNAプローブは本種の性亊拐11において使用 できるものであった.. ホンモロコ性分化関連遺伝子の発現プロファイル. ホンモロコより単離された4種のCDNAはそれぞれがF0χ12, C)P19α,事2卵50, D加ru の相同遺伝子であり,成魚組織における,その遺伝子発現は性特異性を示した.. 本研究では,後の温度ストレスによるTSDの遺伝子に与える影響を調査するための, 基準することを目的とした.すなわち,本種のTSDの影響のない20てにおいて,遺伝 的な要因のみによって起こる,性分化時の性分化関連遺伝子の発現プロファイルを作成 した.これまでに得られた性分化に関与することが示唆される雌マーカー遺伝子F0χ12, CyP19a,42卵50,雄マーカー遺伝子D柳π1の4 種の性分化関連遺伝子にっいて遺伝子. 定量実験によって,供試魚は温度依存型性決定様式(TSD)の影響のない20ヤで飼育した 仔稚魚を使用し,遺伝的性決定のみの条件下における遺伝子発現プロファイルを作成し た.各遺伝子の発現量の変化は,仔稚魚それぞれ 1 尾の躯幹部のみからCDNAを合成 し,β・ad加を内在性コントローノレとして用いたddcT式りアルタイムPCRによって相対. 定量的に調ベた.分析に用いた稚仔魚は 1,3,5,フ,10d加と,それ以降 10日毎に50dph までの各発育段階のそれぞれ10 尾,計90尾とし,それぞれの発育段階の10尾の各個 体における発現量として測定した。. リアルタイムPCRの結果からはどの性分化関連遺伝子においても,5叩hにおいて発 現のピークが見られた.これは本種の後期仔魚期ヘの移行期と一致していた.その後, D抗rUのみ3 如h および7dphにも高い遺伝子発現は見られたものの,3種の雌マーカ. 一遺伝子については5如h以降,発現量が速やかに減少した.分析対象としたすべての. 遺伝子において,形態的な性分化期間(20-40如h)を含む,調査期間内において遺伝子 発現量が再び上昇するととはなかった.また,4種の遺伝子の発現量は,アロマターゼ. を産生する遺伝子であるC即汐αが最も多く,次いで, C沙汐a を制御するFのn,精巣. - 31.
(6) 分化に関与するD柳π1が多く発現していた,このことからも,ホンモロコの遺伝的要因 によって引き起こされる,遺伝的な性分化は本種の騨化後3如hから7如hにかけて, 非常に短期間で起こることが示唆された.. ホンモロニにおける飼育水温の変化は性分化関連遺伝子の発現を抑制する. ホンモロコの温度依存型性決定様式(rsD)に影響しない 20叉)における遺伝子発現プ ロファイルより,本種の性分化関連遺伝子の遺伝的な性分化が綱化後5日齢より開始さ れることが示唆された.次に,本種の遺伝的な性分化期を含む,発育初期における飼育 水温の変化が,本種の形態的な性比と遺伝子発現ヘ与える影響を調ベた.受精直後20C. から 1日 2゜Cずっ水温を変化させ,解化日(受精後4-6日)から 15,20,25,30Cでそれ ぞれ飼育した購化 1日前,綱化後 1,3,5,フ,10日の仔稚魚各 10尾をRNA・1磁釘で固疋し た後,各個体の躯幹部から総RNAを抽出した.抽出したRNAはそれぞれ逆転写の後,. 雌マーカー遺伝子 42卵50, F0χ12, C〕P汐a,雄マーカー遺伝子D抗rU の各塩基配列に 特異的なプライマーを用いたりアルタイムPCRに供し,それぞれの遺伝子の発現量を. 測定した.また,各試験区のフケ月齢稚魚を顕微鏡下で解剖し,生殖巣の形態から各個 体の性を判別した. 雌雄判別の結果は20%)区の雄の比率が66%@→6),温度処理区では15ヤ:フフ%@=44), 25て:71%(n=89),30゜C:75%(n=89)であり, 15叉)区・30゜C区においては有意に雄の比率. が高くなっており,使用したホンモロコの系統は温度依存型の性決疋様式を示した. 各遺伝子の発現量はいずれの遺伝子も対照区の遺伝子発現に対して,極めて低レベル であった.既報と合わせて考えると,飼育水温の変化によるストレスが本種の各性分化. 関連遺伝子の発現を抑制し,雌方向ヘの分化を抑制しているのではないかと考えられた・ 本研究によって,ホンモロコの性分化関連遺伝子の発現ピークは,本種の形態的な性. 分化(生殖細胞の増殖)よりも早期に存在することが明らかとなった.また,温度処理に よって性分化に関連する,4 遺伝子の発現が減少し,15气)区,30で区においては雄の比. 率が増加した.これらの結果は,本種の性分化に対する水温の影響を分子的な知見から 明らかにした初めての報告である.これまで,ホンモロコは,高水温で飼月されること でTSDを引き起こし,遺伝的雌が機能的雄(偽雄)に分化することが知られてきた・この. 中で,全雌生産に必須な,偽雄の作出のための温度処理期間は既報によると10dphか. ら40dphまでの30日間とされていた.しかしながら,本研究の性分化関連遺伝子の発 現動態にっいての結果から,20ヤにおけるホンモロコの遺伝的な性分化の々0まりと考え. られる5如bを含む期間に温度調整を行えば,性分化に関連する遺伝子の発現が抑制さ れることが示唆された.すなわち本研究において,従来よりも,遺伝的な性分化期間を. 含む温度調整期間を設定することによって,偽雄を作出するための調整期間を短縮でき る可能性を示した.これらは,本種の性統御技術開発の方向を示す,重要な足がかりと なるに違いない.. - 32 -.
(7) 号△. 文. イ. 査. 、. の. を二'. ホンモロコは日本に生息、するコイ科魚類の中で最も美味とされ、現在も高級料亭で珍 重されているが、近年漁獲量が激減したこともあり、各地で養殖生産が盛んとなってい る。本種は小型であることから、素焼きや甘露煮として魚体全体を皿に盛る調理法をと リ、そのためもあって特に雌の価値が高いことから、生産魚の全雌化が釖望されている。. 本種の性決定様式は基本的に雄へテロ型(X刃XY)によることが示唆されているが、卵巣、 もしくは精巣を発達させる機能的性の決定には、性分化時期までに過ごす環境水の温度 が影響し、特に高温で遺伝的雌が精巣を形成することが頻発する。このような性決定様. 式は温度依存型性決定様式(TSD)といわれているが、このような現象は他の硬骨魚類に おいても様々報告されている。一般的に全雌生産は、雌性発生などで遺伝的雌を作出し. たのち、それらの性分化期に雄性ホルモン(ステロイド)を飼育水ヘの添加、あるいは経 口投与によって、人為的偽雄(XX予)を作出し、これと通常雌(XX早)との交配によって 達成される。そこで著者は、本種のように TSD を持つ魚では性分化期までの仔稚魚期. に高温水温で飼育するととによって、従来のステロイド投与法を介さず、偽雄の作出を 安全で効率よいものにするために、本種の性分化機構の解明に向け、特に実際の温度飼. 育が遺伝子の発現に及ぽす影響を調ベようとした。 著者は、ホンモロコの性分化に働く遺伝子の動態を調ベるに先だって、まず第1章で 本種のF0χ12、C)P19a、42勘50およびD柳π1の単離を行い、その発現部位を調ベている。 他魚種における類似遺伝子の共通配列から作製したプライマーと、生殖腺から抽出した tot田 RNA を鋳型に合成した CDNAを用いて、 PCR(RT.PCR, RACE.PCR)を行っている。 得られた増幅産物を解析し、卵巣由来の CDNA・から fork.be加ドメインを持つ 1606 塩. 基対(bp)、 cytoC血omeP450 領域を持っ2282bp、 GTP結合ドメイン、 EFTU/EFIA ドメ イン2、 E町U/EFIA C・ターミナノレドメインを持つ 1729bp、精巣由来の CDNAからは DM ドメインを持つ2328如をそれぞれ解読し、これら4種遺伝子の塩基配列の類似性 検索および系統解析の結果と、成魚各組織における発現を調ベた結果から、これらのホ. ンモロコから単離した遺伝子がそれぞれFO×12、 cyP19a、 42SP50およびD如t1の相同 遺伝子であることを確認している。また、その中で精巣分化に働くとされるD加rt1が本 種の卵巣でも微弱な発現が検出されたりするような興味深い結果も報告しており、著者 はこのことがホンモロコの特異的な性分化メカニズムに大きく影響をおよぽしている. のではないかと推定している。また、組織発現観察の結果から、単離した 4 種の遺伝 子は雌雄それぞれのマーカー遺伝子として使用できることが確認され、作成された配列. 特異的プライマーおよびm sim hybd伍閥疲伽用のRNAプローブを本種の性翠拐11に有用 なツールとして、以下の分析に進んでいる。 2章では、本種においてTSDの影響なく遺伝的な要因のみによって起こる性分化関連. - 33 -.
(8) 42勘50、雄マーカー遺伝子D"1ri1の計4 種の性分化関連遺伝子の発現量の発月の進行 に伴う変化をりアルタイムPCR法を用いて調ベている。仔稚魚 1 尾ずっの躯幹部t0捻1. RNA のみから CDNA を合成し、β、adm を内在性コントローノレとして用いたムゴCT式リ アルタイムPCRを使用してぃる。本方法は既報のZebra丘Shゼブラフィッシュにおける. 同様の解析にも同様に用いられている方法であるので、発現プロファイルの作成には充 分であると考えられる。その結果、どの性分化関連遺伝子においても、本種の後期仔魚. 期ヘの移行期と一致する5如hにおいて発現のピークが検出され・、その後は速やかに減 少し、さらに分析対象としたすべての遺伝子において、形態的な性分化期間(20-40郎h). を含む、調査期間内において遺伝子発現量が再び増加しなかったという。これらのこと. は、ホンモロニの性分化の誘導は、瓣化後3即hから7如hの非常に短期間に起こる遺 伝子発現のサージによっていることを示唆するものとしている。. 著者は第3章として、本種の遺伝的な性分化期を含む発育初期における飼育水温のレ. ベルが、本種の形態的な性比と遺伝子発現ヘ与える影響を調ベている。著者は、一糸統 のホンモロコを綱化日から 15、 25、 30゜Cでそれぞれ飼育し、各試験区のフケ月齢稚魚 の性を判別した結果、 15气)区・30气)区では 20%)区に比較して雄の比率が高く、使用し た系統が温度依存型の性決定様式を示したことを確認している。そのうえで、これらの 実験区における遺伝子発現の違いを調ベている。購化 1日前、辧化後 1、 3、 5、フ、 10日の仔稚魚躯幹部のtotalRNAからCDNA を合成後、上記の雌マーカー、雄マーカ ーの4つの遺伝子発現量を測定したところ、20ヤ以外のいずれの温度で飼育した場合も 20OCの遺伝子発現に対して、極めて低レベルに推移したという。著者は、との現象を既. 報と考え合わせ、飼育水温の変化によるストレスが本種の各性分化関連遺伝子の発現を 抑制し、雌方向ヘの分化を抑制しているのではないかと考えている。 本研究は、ホンモロコの性分化に対する水温ゐ影響を分子生物学的な見地から解明を. 試みた初めての報告である。高水温で飼育されることでTSD を誘発し、遺伝的雌が機 能的雄(偽雄)に分化することが知られる本種において、全雌生産に必須な偽雄の作出の ための温度処理期間は、既報では10 40如hの30日間とされてきたが、本研究結果か ら、20ヤにおけるホンモロコの性分化を誘導する遣伝子発現と考えられる5叩hを己む. 期間に飼育温度を調整することで、性分化に関連する遺伝子の発現が抑制されることが 示唆され、偽雄を作出するための調整期間はさらに短縮できる可能性を示した。これら は、本種の性統御技術開発の方向を示す、重要な礎となる。. よって、本論文は博士(農学)の学位論文として価値あるものと認める。な諮、審査 にあたっては、論文に関する専攻内審査および公聴会など所定の手続きを経たうえ、平. 成26年2月7日、農学研究科教授会において、論文の価値ならびに博士の学位を授与 される学力が十分であると認められた。. - 34 -.
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