職業教育の有効性 : バングラデシュ・ダッカ地域
の事例
著者
内田 智大
雑誌名
研究論集
巻
77
ページ
199-217
発行年
2003-02
URL
http://doi.org/10.18956/00006328
職業教育 の有効性
バン グ ラ デ シ ュ ・ダ ッ カ 地 域 の 事 例 内 田 智 大 1.は じ め に 人 材 育 成 とい う言 葉 は 、 人 的 資 源 開 発 や 人 的 資 本 投 資 と 同 じよ うな意 味 合 い で 用 い られ て い る。 人 材 育 成 とは 、 個 人 に 社 会 か ら の要 請 に 応 じた 知 識 や 技 能 を 学 校 、 企 業 、 コ ミ ュニ テ ィー、 家 庭 を 通 じて 身 に 付 け させ て 、 経 済 発 展 に 寄 与 す る こ とを 目的 とす る も ので あ る。 教 育 と経 済 発 展 の関 係 に 関 す る議 論 は 、 ア ダ ム ・ス ミス以 来 今 日まで 様 々 な経 済 学 者 を 中 心 に 行 わ れ て き た 。 多 くの実 証 研 究 は 、 教 育 部 門 の投 資 が 経 済 成 長 に プ ラ スに 寄 与 す る とい うこ とを 結 論 付 け て きた 。 しか し、 一概 に 教 育 と言 って も、 普 通 教 育 、 職 業 教 育 、 宗 教 教 育 、 企 業 内教 育 、 家 庭 内教 育 な ど様 々 な分 野 に 分 か れ て お り、そ の段 階 も幼 児 教 育 か ら高 等 教 育 ま で、そ して 教 育 サ ー ビス の供 給 者 も政 府 、 非 政 府組 織(NGO)、 企 業 、 家 庭 な ど多 岐 に渡 って い る。 また 、 教 育 は 人 的 資 源 開 発 の中 心 的 な役 割 を 果 た して い る と考 え られ て きた こ とか ら、 資 金 面 や 人 材 面 な ど 教 育 投 資 資 源 の不 足 して い る国 、 特 に 開 発 途 上 国 に は 援 助 機 関 か ら のサ ー ビス も非 常 に 大 き な ウエ イ トを 占め て い る。 本 稿 は ア ジ ア の最 貧 国 の1つ で あ るバン グ ラ デ シ ュの教 育 、 中 で も職 業 教 育 に 焦 点 を 当 て て 、 そ の是 非 、 問 題 点 、 そ して 対 応 を 考 察 す る こ とを 目的 と して い る。 本 稿 は4節 か ら構 成 され て い るが 、第2節 で は 、バン グ ラデ シ ュの 人 的 資 源 開 発 政 策 を概 観 した 上 で 、第3節 で は アン ケ ー ト調 査 を 通 じて そ の国 の職 業 訓 練 校 の実 態 調 査 を 試 み る。 そ して 、 第4節 で は 前 節 の実 態 調 査 を 踏 まえ て 、 バン グ ラ デ シ ュの職 業 教 育 が 抱 え て い る問 題 点 とそ れ を 改 善 す るた め の政 策 提 言 を 行 い た い 。2.バ ン グ ラ デ シ ュの 教 育 制 度 (1)教 育 制 度 の 概 観 バン グ ラ デ シ ュは1971年 に パ キ ス タン か ら独 立 した 後 す ぐに 、 政 府 は 憲 法 に よ って 国 民 の教 育 を 受 け る権 利 を 保 障 し、 国 力 強 化 の一 貫 と して 教 育 の大 衆 化 を 推 し進 め よ うと した 。 政 府 は 教 育 制 度 を 再 建 す る 目的 で 、73年 に 国 家 教 育 委 員 会(NationalEducationCommission: NEC)を 設 立 し、 全 国 の87%の 初 等 学 校 は政 府 の管 轄 下 に 置 か れ た 。NECは 、 教 育 に よ る人 材 開 発 が 国 家 発 展 と生 産 力 向上 の重 要 な鍵 で あ る と勧 告 した 。 これ に 伴 い 、 政 府 顧 問 の教 育 学 者 で あ るKhuda博 士 は 教 材 や カ リキ ュ ラム の統 一 化 を 図 り、宗 教 科 目は選 択 科 目 と して 位 置 付 け られ る よ うに 政 府 に 提 言 した 。 こ の よ うに 、 バン グ ラ デ シ ュの教 育 制 度 は 独 立 後 順 調 に 整 備 され た 。 しか し、80年 代 に 入 って 軍 事 政 権 で あ るエ ル シ ャ ド政 権 が 国 家 を 統 治 す る よ うに な る と、 政 府 は 大 衆 か ら の反 政 府 運 動 を 引 き起 こ させ ない よ うに 意 図 的 な無 知 化 政 策 を 敷 い た 。 これ に よ り、70年 代 後 半 の初 等 教 育 の就 学 率 は74%を 記 録 した に も拘 わ らず 、 そ の後80年 に は 62%に 下 が り、 軍 事 政 権 が 崩 壊 す る90年 代 の最 初 まで 、 こ の数 字 は ほ とん ど変 わ ら なか った 。 こ の よ うに 、 バン グ ラ デ シ ュに お い て 教 育 政 策 の取 り組 み は 早 か った も の の、 国 民 の識 字 率 は 低 い 水 準 に 止 ま って い た 。 表1は 、 南 ア ジ ア諸 国 の教 育 に 関 す る基 本 的 指 標 を 示 した も ので あ るが 、 バン グ ラ デ シ ュの 教 育 に よ る人 的 資 源 開 発 は 他 の南 ア ジ ア諸 国 よ りもか な り遅 れ て い る のが わ か る。 中 等 教 育 の 就 学 率 は 南 ア ジ ア の他 の ど の国 よ りも低 く、 バン グ ラ デ シ ュが 今 後 持 続 的 な経 済 成 長 率 を 達 成 で き るか に 関 して の赤 信 号 を 灯 して い る。 また 、 これ か ら国 を 担 って い か なけ れ ば な ら ない 青 年 の識 字 率 が 他 の南 ア ジ ア諸 国 と比 べ て 低 い こ と も、 同様 な問 題 を 引 き起 こす 原 因 に な る こ と を 示 唆 して い る。 表1南 アジア諸国の教育の基本指標 成 人 識 字 率 (15歳 以 上) (1998) 青 年 識 字 率 (15-24歳) (1998) 初 等 教 育 就 学 率 (1997) 中 等 教 育 就 学 率 (1997) バン グ ラ デ シ ュ 40.1 49.6 75.1 21.6 パ キ ス タン 44.0 61.4 n。a. n。a. イン ド 55.7 70.9 77.2 59.7 ス リ ラン カ 91.1 96.5 99.9 76.0 ネ パ ー ル 39.2 57.3 78.4 54.6 (出 所)UNDP(2000)、195-196ペ ー ジ 。 (注)n.a.は 調 査 該 当 年 の デ ー タ を 入 手 で き な か っ た こ と を 意 味 す る 。
バン グ ラ デ シ ュの学 校 教 育 制 度 は 図1に 示 され て い る よ うに 、初等学校5年 間、下級中等学 校3年 間 、 中 級 中 等 学 校(ま た は 職 業 訓 練 学 校)2年 間 、 大 学 、(ま た は工 業 高 等 専 門学 校)、 大 学 院 な ど の高 等 教 育 が 続 く。91年 、 カ レダ ・ジ アに よ って 民 政 政 権 が 擁 立 され た 後 、92年1 月 に 初 等 教 育 義 務 化 計 画 が 実 施 され 、 初 等 教 育 の5年 間 が よ うや く義 務 教 育 と して 制 定 され た 。 政 府 は 最 近 に な って 国 民 の人 的 資 源 開 発 を 向上 させ る 目的 で 、 初 等 学 校5年 間 と下 級 中 等 学 校 3年 間 の計8年 間 を 義 務 教 育 に 定 め よ うとす る動 き もあ る。 しか し、 義 務 教 育 期 間 の延 長 は 財 政 上 の制 約 もあ って 、 未 だ に 暗 礁 に 乗 り上 げ た ま ま の状 態 で あ る。 高 等 教 育 に お い て は 第5次5力 年 計 画(1997-2002年)の 中 で、 大 学 施 設 の 充 実 、 優 秀 な 大 学 教 員 の教 育 ・確 保 、 大 学 の教 育 内容 の改 善 、 私 立 大 学 の整 備 ・拡 充 、 大 学 間 の格 差 是 正 に 重 点 を 置 くな ど して 、 国 家 開 発 へ の貢 献 を 目的 と した 高 等 教 育 の量 的 拡 大 ・質 的 向上 と制 度 改 革 に 関 す る施 策 が 盛 り込 まれ た 。 しか し、 現 実 に は 財 政 予 算 に も限 りが あ る こ とか ら、 政 府 は 高 等 教 育 に も っ と多 くの資 源 を 配 分 した い とい う願 望 と、 配 分 先 を 高 等 教 育 まで 広 げ る と初 等 ・ 中 等 教 育 へ の配 分 が 少 な くな って しま うとい うジ レン マに 直 面 して い る。 表2で 示 され て い る よ うに 、 バン グ ラ デ シ ュに お け るGDPに 対 す る教 育 予 算 比 率 は 他 の南 ア ジ ア諸 国 に 比 べ る と 非 常 に 低 い の と 同時 に 、 高 等 教 育 に 対 す る予 算 配 分 も低 い 。 高 等 教 育 を 中 心 と した 人 的 資 源 の 高 度 化 は1つ に は 産 業 構 造 の高 度 化 、 も う1つ に は 外 国 資 本 の誘 致 を 促 進 させ るた め の必 要 条 件 に な る と考 え られ る こ とか ら、 政 府 は ど こに 人 的 資 本 へ の投 資 を 行 うべ きか を 産 業 界 の要 請 な どを 考 慮 した 上 で 、 効 率 的 、 か つ 効 果 的 な人 的 資 源 開 発 に 関 す る計 画 を 立 案 ・実 施 して い く こ とが 望 まれ て い る。 図1バ ング ラデ シ ュの 学 校 教 育 大 学 (3-4年) 上級 中 等 学校 (2年) 中級 中等 学 校 (2年) 工業 高等 専門 学校(3年) 職 業訓練 学校 (2年) 下級中等学校(3年) 初等学校(5年) 宗教系 高等教 育 機 関(2年 以 上) イ ス ラ ム後 期 中等 学 校(2年) イ ス ラ ム前 期 中等 学 校 (5年) イ ス ラム 初 等 学 校(5年) (出 所)豊 田 俊 雄(1998)『 発 展 途 上 国 の 教 育 と学 校 』、84ペ ー ジ 。
表2南 アジア諸国の教育予算配分 (単位%) GDPに 対 す る 教 育 予 算 比 率 (1995-97) 政 府 支 出 に対 す る 教 育 予 算 比 率 (1995-97) 教 育 予 算 に対 す る 初 等 ・中等 教 育 予 算 比 率 (1994-97) 教 育 予 算 に対 す る 高 等 教 育 予 算 比 率 (1994-97) バン グ ラ デ シ ュ 2.2 n.a. 88.6 7.9 パ キ ス タン 2.7 7.1 79.8 13.0 イン ド 3.2 ll.6 66.0 13.7 ス リ ラン カ 3.4 8.9 74.8 9.3 ネ パ ー ル 3.2 13.5 64.1 19.0 (出 所)表1に 同 じ。 (注)n.a.は 調 査 該 当 年 の デ ー タ を 入 手 で き な か っ た こ と を 意 味 す る 。 (2)職 業 教 育 の 状 況 バン グ ラ デ シ ュに お い て は 、 職 業 訓 練 行 政 を 管 轄 す る 単 一 の 政 府 機 関 は 存 在 して い な い 。 表 3が 示 す よ うに 、 正 規 の 職 業 教 育 は 主 に 労 働 ・人 材 省 、 お よ び 教 育 省 に よ っ て 管 轄 さ れ て い る 。 しか し、 実 際 の 職 業 教 育 に 係 る 政 策 の 策 定 は 、 そ れ ら の 省 の 下 部 組 織 で あ る 職 業 教 育 局(The TechnicalEducationBoard:TEB)お よ び 国 家 技 能 開 発 ・訓 練 理 事 会(TheNational CouncilforSkillDevelopmentandTraining:NCSDT)に よ っ て 行 わ れ て い る 。 後 者 の 機 構 は1979年 に 大 統 領 の 認 可 に よ っ て 設 立 さ れ 、 労 働 ・人 材 大 臣 を 筆 頭 に 各 省 の 政 府 高 官 な ど25 名 の メン バ ー か ら 構 成 さ れ て い る 。 しか し、NCSDTは1984年 か ら 開 か れ て お ら ず 、 全 く機 能 し て い な い の が 現 状 で あ る 。 そ れ ゆ え 、 パ キ ス タン か ら の 独 立 前 の1969年6月 に 設 立 さ れ た TEBが 職 業 教 育 の 運 営 を 一 手 に 担 当 し て い る 。 表3政 府管轄の職業教育の制度 管轄 省 学校数 学生数 学生教員比率 (DegreeLevel) Textile&LeatherInst 教育 省 2 800 15:1 (DiplomaLevel) Polytechnics 教育 省 20 17000, 17:1 Monotechnics 教育 省 3 900 ll:1 AgricultureTrainingInst 農業 省 12 7,000 n。a. (Certificate) VTIs 教育 省 51 5,800 ll:1 TTCs 労 働 ・人 材 省 12 5,100 ll:1 CommercialInst 教育 省 16 4,200 39:1 (TeacherTraining) TTTC&VTTI 労 働 ・人 材 省 2 100 3:1 (出 所)WorldBank(2000)、5ペ ー ジ 。 (注)n.a.は 調 査 該 当 年 の デ ー タ を 入 手 で き な か っ た こ と を 意 味 す る 。
TEBは 教 育 省 の管 轄 に置 か れ て い るが 、 そ の上 位 の メン バ ーは 、 技 術 教 育 局 長 、 中 等 ・高 等 教 育 局 長 、 バン グ ラデ シ ュ技 術 研 究 所(BangladeshInstitutesofTechnology)、 技 術 指 導 員 研 修 カ レ ッジ校 長 、 バン グ ラデ シ ュ工 科 大 学(BangladeshUniversityofEngineeringand Technology)副 学 長 、 ポ リテ ク ニ ッ ク校 長 、 技 術 教 育 国 家 委 員 会(NationalCouncilof TechnicalEducation)か らの 代 表 、 産 業 界 か らの 代 表 な ど総 勢14名 で 構 成 され て い る。 構 成 メン バ ー の職 業 を 見 て もわ か る よ うに 、NCSDTと 違 って 、 政 府 関 係 者 、 学 識 者 、 産 業 界 代 表 な ど均 衡 の取 れ た メン バ ー構 成 に な って い る。TEBの 機 能 は 、 訓 練 コー ス の規 定 、教 材 の開 発 、 非 政 府 組 織 の職 業 訓 練 校 と の提 携 認 可 、 職 業 訓 練 校 の活 動 の管 理 、 試 験 の実 施 と規 定 、 学 位 の授 与 基 準 審 査 な ど多 岐 に 渡 って お り、 こ の組 織 のバン グ ラ デ シ ュの職 業 教 育 行 政 に お け る 役 割 は極 め て大 きい 。 しか し、 世 銀 の職 業 教 育 に 関 す る報 告 書(2000)に よれ ば 、TEBは 以 下 の よ うな問 題 を 抱 え て い る。 1)TEBは 、 産 業 界 の経 営 者 との効 果 的 な コ ミュ ニケ ー シ ョンチ ャン ネ ル が未 だ に弱 い。 2)TEBの 産 業 界 か らの代 表 は14名 の 内、 僅 か2名 で あ る。 3)改 訂 まで に 費 や す 期 間 は 平 均5年 と長 く、 技 術 の変 化 に 応 じて カ リキ ュラ ムを 迅 速 に 改 訂 す る こ とが で き ない 。 4)TEBに よ って 決 め られ た カ リキ ュ ラ ム の標 準 化 は 、 全 国 ど こで も一 律 に共 通 の カ リキ ュ ラ ム に よ っ て教 え られ る こ とを 意 味 す る。 そ れ ゆ え、 指 導 員 の指 導 方 法 に 関 す る融 通 性 を 狭 め た り、 地 域 の労 働 市 場 との関 連 を 等 閑 視 す る恐 れ が あ る。 政 府 は 現 在 の職 業 教 育 が 技 能 労 働 者 の育 成 に 十 分 に 機 能 して い ない こ とに 鑑 み て 、 第5次5 ヵ年 計 画 の中 で 職 業 教 育 の強 化 と多 様 化 を 目標 に 掲 げ た 。 そ の 目標 を 達 成 す るた め に 、 以 下 の 原 則 に 従 って 職 業 教 育 を 行 うこ とが 定 め られ た 。 1)そ の国 の社 会 経 済 発 展 に 資 す る知 的 、 熟 練 技 能 を 持 った 人 材 を 輩 出す る こ と。 2)職 業 訓 練 校 の定 員 に 関 し、 現 在 の中 等 教 育 レベ ル 就 学 人 口 の3.3%か ら2002年 に は20%ま で 引 き上 げ る こ と。 3)日 本 、 韓 国 、 シン ガ ポ ール の職 業 教 育 の経 験 を 活 か して 、 現 場 実 習 を 強 化 す る こ と。 4)訓 練 プ ログ ラ ム の実 施 に あ た って の民 間 部 門 か ら の協 力 を 要 請 す る こ と。 5)職 業 教 育 の効 果 の評 価 、 お よび 労 働 市 場 の調 査 を 実 施 し適 切 な政 策 立 案 を 実 施 す る こ と。 6)職 業 訓 練 校 の財 政 負 担 を 緩 和 す るた め に 、 受 益 者 の財 政 的 負 担 を 求 め る こ と。 7)技 術 指 導 員 訓 練 カ レ ッジ(TechnicalTeacherTrainingcollege)で の指 導 員 研 修 を 強 化 す る こ と。 開 発 計 画 の究 極 的 な 目標 は 、 人 材 育 成 を 通 じた 貧 困 緩 和 お よび 雇 用 機 会 の創 出で あ る。 貧 困 者 や 社 会 的 弱 者 は 国 家 に と って 足 枷 で は な く資 産 で あ り、 開 発 プ ロセ ス の周 辺 部 か ら中 心 部 へ と捉 え られ るべ きだ と述 べ て い る。 バン グ ラ デ シ ュに お け る労 働 市 場 の現 況 は 、 深 刻 な失 業 率 、
多 くの不 完 全 雇 用 、 産 業 界 か ら の ニ ー ズを 充 足 させ て い ない 多 くの労 働 力 人 口が 同時 に 存 在 し て い る。 こ の こ とか ら、 国 内お よび 海 外 の労 働 市 場 に お い て の雇 用 機 会 を 創 出す るた め 、 生 産 的 労 働 者 を 創 出す る こ とに 資 す る人 的 資 源 開 発 は 同国 の開 発 計 画 の最 も基 本 的 な問 題 で あ る。 政 府 もそ の辺 りの事 情 を 認 識 して お り、 こ の開 発 計 画 を 通 じて 職 業 教 育 に51億 タ カ(全 教 育 予 算 の3.9%)が 配 分 され る予 定 で あ った 。 しか し、97年 の ア ジ ア金 融 危 機 、 そ して2001年 に 起 きた 同時 テ ロ以 降 の世 界 経 済 の低 迷 に よ る外 的 シ ョ ッ クが バン グ ラ デ シ ュ経 済 に も マイ ナ ス の 影 響 を 与 え 、 政 府 は 深 刻 な財 政 難 に 直 面 して い る。 こ の よ うに 政 府 の職 業 教 育 へ の プ レゼン スが 低 くな ら ざ るを 得 ない 状 況 の中 で 、 そ れ を 補 完 す る行 動 主 体 はNGOで あ る。 現在200以 上 のNGOが 職 業 教 育 の分 野 に お い て イ ニ シ ア テ ィブ を 発 揮 して お り、 そ れ ら の受 益 者 の 大部 分 は貧 困層 で あ る。 教 育 省 技 術 教 育 局 は 約160校 の職 業 訓 練 校 を認 可 し補 助 金 を供 与 して い る が 、1校 当 た りの 平 均 の補 助 金 額 は 年 で7,000タ カ と 僅 か で あ る。NGOの 職 業 教 育 の規 模 も政 府 の もの に 比 較 す れ ば 小 さ く、 世 銀(2000)に よれ ば 、 訓 練 生 の総 数 は3,600人 と推 定 され て い る。 この 結 果 、 多 くのNGOは 職 業 教 育 の要 請 の増 大 に 未 だ 応 え られ ない のが 現 状 で あ る。 3.職 業 訓 練 校 の 実 態 調 査 前 節 で は 、 バン グ ラ デ シ ュ の 職 業 教 育 を 含 め て の 教 育 制 度 の概 要 を 述 べ て き た 。 本 節 で は 、 職 業 訓 練 校 の シ ス テ ム や 問 題 点 に 関 して 現 地 調 査 を 通 じて 明 ら か に した い 。 調 査 対 象 校 は3校 で あ り、 そ の 内 の2校 は 政 府 系 訓 練 校(ダ ッ カ 技 術 訓 練 セン タ ー 、 バン グ ラ デ シ ュ ・ジ ャ ー マ ン 技 術 訓 練 セン タ ー で あ り、 残 り の1校 は 非 政 府 系 訓 練 校(UnderprivilegedChildren's EducationProgram)で あ っ た 。 (1)被 調 査 訓 練 校 の プ ロ フ ァ イ ル (イ)ダ ッ カ 技 術 訓 練 セン タ ー(TechnicalTrainingCenter:TTC) TTCは 、 労 働 ・人 材 省 の 管 轄 下 に あ る 雇 用 ・訓 練 局(TheBureauofManpower、Em-ploymentandTraining:BMET)に よ っ て 運 営 さ れ た 政 府 系 の 職 業 訓 練 校 で あ る 。 ダ ッ カ TTCの 訓 練 生 数 は850名 で あ る が 、 現 在 、TTCは 全 国 にllヶ 所 あ り、 年 間8,000-9000人 の 訓 練 生 が 就 学 し て い る 。 そ の 内 、 女 性 の 訓 練 生 数 は800人 程 度 に 過 ぎ な い 。 非 正 規 訓 練 生 を 対 象 と した 夜 間 コ ー ス も 開 講 さ れ て い る 。 訓 練 プ ロ グ ラ ム 数 は 地 域 に よ っ て 多 少 異 な る が 、 最 も 多 い 訓 練 校(ダ ッ カTTC、 チ ッ タ ゴンTTC)で12プ ロ グ ラ ム 、 最 も 少 な い 訓 練 校(ボ グ ラTTC、 マ イ メン シンTTC)で6プ ロ グ ラ ム で あ る 。 正 規 プ ロ グ ラ ム は2年 制 で あ り、 非 正 規 プ ロ グ ラ ム は 約 半 年 で あ る 。 教 員 と 訓 練 生 の 比 率 は1対9で あ る 。TTCの カ リキ ュ ラ ム は 職 業 教 育 局(TEB)に よ っ て 管 理 さ れ て お り、 全 国 す べ て のTTCの 訓 練 内 容 は 一 律 で あ る 。TTCの
組 織 は 、 校 長 、 副 校 長 、 チ ー フ 指 導 員 、 シ ニ ア 指 導 員 、 指 導 員 か ら構 成 され て い る 。TTCの 校 長 は 労 働 ・人 材 省 出 身 者 が 多 く 、 平 均 の 任 期 は3年 で あ る 。 正 規 訓 練 生 は 月200タ カ の 給 付 金 と 無 料 の 宿 泊 所 を 提 供 さ れ 、 イン タ ーン シ ッ プ 期 間 中 は 月450タ カ の 給 付 金 が 与 え ら れ る 。 正 規 プ ロ グ ラ ム の 入 学 資 格 は 中 等 教 育3年 を 修 了 し た 者 に 限 ら れ お り、TTCで の2年 間 の 修 学 期 間 を 終 え た 後 に は 、 通 常 教 育 を 受 け て い る 学 生 と 同 じ よ う にSSC(SecondarySchool Certificate)の 受 験 資 格 が 与 え られ る 。1人 当 た り の 訓 練 生 に か か る経 常 費 用 は50,000-60,000 タ カ と 推 定 さ れ て お り、 そ れ は 一 般 教 育 の 経 常 費 用 の25倍 で あ る 。 そ の よ う な 費 用 の 高 さ は 、 教 員1人 当 た りの 訓 練 者 数 の 少 な さ(1人 当 た り10-12人)、 設 備 の 購 入 ・維 持 費 用 の 高 さ な ど が 原 因 で あ る(世 銀2000)。 (ロ)バン グ ラ デ シ ュ ・ジ ャ ー マン 技 術 訓 練 セン タ ー(Bangladesh-GermanTTC:BGTTC) BGTTCも 全 国 にllあ るTTCの 内 の1つ で あ り、TTC同 様 に 労 働 ・人 材 省 の 管 轄 下 に あ る BMETに よ っ て 運 営 さ れ て い る 。BGTTCは ダ ッ カ の 中 心 部 で あ る ミル プ ー ル に あ り、 訓 練 生 数 は760名 、 訓 練 プ ロ グ ラ ム 数12と ダ ッ カTTCに 次 い で 大 規 模 な 訓 練 校 で あ る 。 教 員 と 訓 練 生 の 比 率 は1対14で あ る 。 修 学 期 間 は 、 正 規 プ ロ グ ラ ム で2年 、 非 正 規 プ ロ グ ラ ム で 約 半 年 で あ る 。BGTTCの 名 前 の 由 来 は 、 そ れ が 設 立 さ れ る に あ た っ て ドイ ツ 政 府 か ら の 大 規 模 な 資 金 援 助 や 技 術-協力 を 受 け た 経 緯 に よ る 。 現 在 、BGTTCの 経 常 費 用 は 主 に バン グ ラ デ シ ュ政 府 に よ っ て 捻 出 さ れ て い る こ と か ら 、 組 織 、 制 度 、 カ リキ ュ ラ ム 内 容 な ど 他 のTTCと ほ と ん ど 同 じで あ る 。 (ハ)UnderprivilegedChildren'sEducationProgram(UCEP) UCEPは70年 代 初 期 、 貧 し い 子 ど も や そ の 家 族 の 生 活 水 準 の 向 上 を 目 的 と して 設 立 さ れ た 現 地NGOの 機 関 で あ る 。 現 在 、UCEPの 訓 練 校 は 全 国 に3ヶ 所(ダ ッ カ 、 チ ッ タ ゴン 、 クル ナ)に あ り、 約1,400人 の 訓 練 生 が 就 学 し て い る 。 そ の 内 、 男 性 と女 性 の 比 率 は6対4で あ り、 政 府 系 の 訓 練 校 に 比 べ れ ば 女 性 の 比 率 が 高 い 。 訓 練 プ ロ グ ラ ム 数 は 地 域 に よ っ て 異 な っ て お り、 ダ ッ カ7プ ロ グ ラ ム 、 チ ッ タ ゴン3プ ロ グ ラ ム 、 クル ナ3プ ロ グ ラ ム で あ る 。 就 学 期 間 は6ヶ 月 のPara-tradeProgramと 呼 ば れ て い る 短 期 プ ロ グ ラ ム と1-2年 の 長 期 プ ロ グ ラ ム に 分 か れ て い る 。 後 者 の プ ロ グ ラ ム は1年 間 のUCEPに お け る 訓 練 、 そ し て3ヶ 月 か ら1年 のUCEP と 提 携 関 係 に あ る 企 業 で の 実 地 訓 練 か ら 構 成 さ れ て い る 。 カ リキ ュ ラ ム は 民 間 の 企 業 家 お よ び UCEPの 職 員 に よ っ て 構 成 さ れ て い る産 業 諮 問 委 員 会(TheIndustrialAdvisoryCouncil) に よ っ て 決 定 さ れ て お り、 カ リキ ュ ラ ム の 内 容 が 産 業 界 か ら の ニ ー ズ に 合 致 し易 い 。 訓 練 生 は 月200タ カ の 給 付 金 を 提 供 され 、 イン タ ーン シ ッ プ期 間 中 は 月450タ カ の 給 付 金 が 与 え ら れ る 。 入 学 資 格 は 政 府 系 の 訓 練 校 と 違 い 、 学 歴 に よ っ て ス ク リ ー ニン グ さ れ て お ら ず 、 訓 練 生 の 多 く はUCEPの4年 半 の 基 礎 教 育 を 受 講 し た 卒 業 生 やUCEPと ネ ッ ト ワ ー クを 持 っ て い る 他 の NGOで 教 育 を 受 け た 学 生 で あ る 。1人 当 た りの 訓 練 生 に か か る 経 常 費 用 は14,000タ カ で あ り、
政 府 系 の 訓 練 校 の約4分 の1で あ る。 そ の よ うに 低 い 経 費 で 抑 え られ る 理 由 と して 、 世 銀 (2000)の 報 告 書 は 教 員1人 当 た りの 訓 練 者 数 の 多 さ(1人 当 た り16人)、 修 学 期 間 が短 くて 済 む よ うに 集 中 的 な カ リキ ュラ ム構 成 を 指 摘 して い る。 (2)調 査 目的 と方 法 調 査 方 法 は 、 職 業 訓 練 校3校 の校 長 に 質 問 票 を 配 布 して 、 後 日そ れ を 直 接 回 収 す る方 法 を 採 った 。 質 問 表 を 回 答 して も ら う前 に 、 校 長 に 学 校 の運 営 に 関 す る問 題 点 に 関 しイン タ ビ ュー調 査 も行 った 。 調 査 期 間 は 、2002年3月18日 か ら23日 まで の5日 間 で あ り、1校 に 付 き要 した イ ンタ ビ ュー の時 間 は 約1時 間 で あ った 。 質 問 内容 は 、 訓 練 校 の概 要 、 現 在 抱 え る問 題 点 、 他 の 訓 練 校 との 比 較 、 日本 を 含 め て の援 助 機 関 へ の要 望 な どで あ る。 質 問 票 は英 語 版 と現 地 語 版 (ベン ガル 語)の 両 方 を 用 意 して お い た が 、 回 答 者 の優 れ た 英 語 能 力 、 か つ 彼 ら の希 望 に よ り 英 語 版 を 用 い た 。 また 、 各 訓 練 校 の問 題 点 や 特 徴 を よ り明 らか に す るた め に 、 教 員 お よび 訓 練 生 を 対 象 と した 調 査 も実 施 した 。 訓 練 生 の全 数 調 査 は 時 間 お よび 費 用 的 な制 約 もあ る こ とか ら、3校 と も調 査 対 象 者 を 修 業 年 限 半 年 の縫 製 業 訓 練 プ ログ ラ ムに 参 加 して い る訓 練 生 に 限 定 した 。 そ れ ら の訓 練 生 に 限 定 した 理 由 と して 、3つ の こ とが 挙 げ られ る。1つ 目の理 由は 、 調 査 対 象 の3校 が 共 通 して 開講 して い る訓 練 プ ロ グ ラ ムが 自動 車 修 理 、 電気 、溶 接 、縫 製 業 の4つ の プ ロ グ ラ ムに 限 定 され て い た こ と、2つ 目は 、 被 調 査 者 の性 別 の偏 りを で き るだ け 小 さ くす るに は 、4つ の プ ログ ラ ム の 内、 縫 製 業 を 選 択 す る こ とが 最 も適 当 で あ った こ と、3つ 目は 、 修 業 年 限2年 の 訓 練 生 の1年 生 が7月 の初 め(調 査 時 期 は7月 末)に 入 学 した 新 入 生 で あ る のに 対 し、 修 業 年 限 半 年 の訓 練 プ ログ ラ ムは3校 と も4月 の初 め か ら既 に 始 ま って お り、 訓 練 生 は プ ログ ラ ムを よ り正 確 に 評 価 で き る立 場 に あ る と考 え られ るか らで あ る1)。BGTTCとUCEPの 縫 製 業 訓 練 プ ロ グ ラム を 受 講 して い る訓 練 生 の 総 数 は 昼 夜 合 わ せ て 約100人 に も上 る こ とか ら、学 生 名 簿 を 使 っ て対 象 者 を 無 作為 に 抽 出 した 。 一 方 で 、TTCに お い て は 、 縫 製 業 訓 練 プ ロ グ ラ ムに 参 加 して い る訓 練 生 数 が 他 の2校 と比 べ れ ば 少 ない た め 、 調 査 実 施 日に 出席 して い た 訓 練 者 を 全 て 調 査 対 象 と した 。 尚 、 教 員 へ の調 査 に 関 して はBGTTCの1人 を 除 く縫 製 業 訓 練 プ ロ グ ラ ム全 て の教 員 のサン プル を 得 る こ とが で きた 。 教 員 や 訓 練 生 を 調 査 対 象 者 に 含 め た 理 由 と して は 、 訓 練 校 の問 題 点 や 特 徴 を 別 の視 点 か ら考 察 で き る の と 同時 に 、 校 長 と 同 じ質 問 を 教 員 や 訓 練 生 に 尋 ね る こ とで 校 長 の回 答 の確 認 作 業 も兼 ね る こ とが で き るか らで あ る。 主 な質 問 内容 は 、 教 員 の属 性 や 労 働 条 件 、 教 員 に よ る訓 練 校 の評 価 、 そ して 訓 練 生 に 対 して は 、 そ の属 性 や 家 庭 環 境 、 訓 練 校 で 学 ぶ 動 機 や 将 来 の生 活 設 計 、 訓 練 生 に よ る訓 練 校 の評 価 な どで あ る。 調 査 期 間 は2002年7月31日 か ら8月8日 まで の9日 間 で あ った が 、 校 長 に 対 す る質 問 票 とは 違 って 、 質 問 票 は 現 地 語 版 を 用 い た 。 これ は 、 大 部 分 の訓 練 生 は 英 語 を 理 解 で き ない 上 に 、 高 等 教 育 を 受
け て い ない 中 級 中 等 教 育 修 了 者 程 度 の教 員 も何 人 か 含 まれ て い た か らで あ る。 後 に 判 明 した こ とで あ るが 、 現 地 語 版 の質 問 票 で さえ も、 そ の質 問 内容 や 回 答 の仕 方 に 戸 惑 って い る教 員 も何 人 か 見 られ た 。 質 問 内容 の誤 解 を 避 け るた め に 、 研 究 助 手2名 お よび 訓 練 校 の教 員 が 調 査 を 実 施 す るに あ た って サ ポ ー トを して くれ た 。 尚、 調 査 対 象 者 の人 数 、 特 性 、 属 性 は 表4、 表5に 示 され て い る。 表4被 調査訓練生の属性 TTC BGTTC UCEP 調 査 人 数 男6名 女18名 男29名 女6名 男15名 女20名 平 均 年 齢 15.8歳 22.8歳 15.5歳 本 人 の 学 歴 Primary:6SSC:16 HSC:2University:0 Primary:OSSC:7 HSC:llUniversity:17 Primary:OSSC:35 HSC:OUniversity:0 父 親 の 学 歴 Primary:14SSC:8 HSC:lUniversity:0 宗 教 学 校:1 Primary:5SSC:12 HSC:8University:9 宗 教 学 校:1 Primary:22SSC:5 HSC:lUniversity:1 宗 教 学 校:3不 明:2 就 業 経 験 有:1名 無:23名 有:7名 無:28名 有:7名 無:28名 (注)Primaryは 初 等 教 育(教 育 年 数5年)、SSCは 中級 中 等 教 育 修 了(教 育 年 数10年)、 HSCは 高 等 中等 教 育 修 了(教 育 年 数12年)で あ るが 、 未 修 了 者 も該 当す る カテ ゴ リー の 中 に 含 め た 。 表5被 調査教員の属性 TTC BGTTC UCEP 調 査 人 数 男3名 女1名 男2名 女ll名 男9名 女1名 平 均 年 齢 37.5歳 36.8歳 37.5歳 本 人 の 学 歴 SSC:OHSC:l University:3 SSC:6HSC:l University:6 SSC:3HSC:5 University:2 就 業 年 数 9.5年 11.'年 9.6年 平 均 給 料 5929タ, カ 5614タ, カ 8835タ, カ 過 去 の就 業 経 験 有:4名 無:0名 有:4名 無:9名 有:8名 無:2名
(3)調 査 結 果 表6調 査 対 象 校 の 制 度 面 の 比 較 質 問項 目 TTC BGTTC UCEP 1.組 織 形 態 政府機 関 政府機 関 民 間機 関 2.教 員 数 男70名 女10名 男63名 女19名 男56名 女14名 3.生 徒 数 男601名 女99名 男1031名 女ll7名 男590名 女277名 4.給 付 金 200タ カ/月(企 業 実 習 期 間450タ カ/月) 200タ カ/月(企 業 実 習 期 間 に450タ カ/月) 200タ カ/月(企 業 実 習 間 に450タ カ/月) 5.授 業 料 100-120タ カ/月 100-200タ カ/月 無料 6.入 学 試 験 科 目 筆 記 、 面 接 筆 記 、 適 正 試 験 筆記、推薦状、身体検査 7.競 争 率 2-3倍 2-3倍 4倍 8.修 了 率 80% 85% 97.4% 9.就 職 率 50% 55% 95% 10.就 職 斡 旋 制 度 無 し 無 し 有 り ll.座 学 と実 習 の 割 合 45:55 44:56 20:80 12.企 業 実 習 期 間 2ケ 月 2ケ 月 3ケ 月 13.教 員 研 修 制 度 有 り 有 り 有 り 14.教 員 評 価 制 度 体 系 化 され て い ない 体 系 化 され て い ない 体系化 され た制度有 り 15.教 員 の平 均 給 料 5000タ カ 6000タ カ 5500タ カ (出所)質 問 票 よ り集 計 表6は 、 校 長 か ら の質 問 票 調 査 お よび 聞 き取 り調 査 を 通 じて 調 査 対 象 校 の制 度 面 の比 較 を ま とめ た も ので あ る。 彼 ら の回 答 は 教 員 や 訓 練 生 へ の調 査 や 文 献 調 査 を 通 じて 確 認 を 取 って お り、 事 実 に 近 い も ので あ る と推 測 で き る。 こ の中 で 、 幾 つ か の注 目す べ き結 果 を 以 下 に 述 べ て み る。 1)UCEPは 、 女 性 の就 学 率 が 政 府 系 の訓 練 校 と比 較 して 非 常 に高 い。UCEPの 学 校 方 針 の 1つ と して 、 「女 性 開発 を 通 じて の貧 困緩 和 」 が 挙 げ られ て い る。 も ち ろ ん、 プ ロ グ ラ ム の カ リキ ュ ラ ム も訓 練 生 の 性 別 比 に 影 響 を 与 え る大 き な 要 素 で あ る とは言 え るが 、3校 の訓 練 プ ロ グ ラ ム の種 類 は 非 常 に似 通 って お り、UCEPの 女 性 就 学 率 の 高 さ は 同校 の 方 針 を 反 映 した 意 図的 な も の で あ る と言 え る。 2)就 職 率 とい った プ ロ グ ラ ム の外 部 効 率 性 を 測 る指 標 を 見 る と、UCEP訓 練 生 の就 職 率 は 95%で あ る の に対 し、TTCやBGTTCは50%程 度 に 止 ま って い る。 勿 論 、 訓 練 プ ログ ラ ム に よ っ て そ の 率 は大 きな 開 き が あ る とは言 え 、 調 査 対 象 校 の訓 練 者 数 や プ ロ グ ラ ム の 類 似 性 か ら考 え て も、 政 府 系 の訓 練 校 の就 職 率 は 非 常 に 低 い と言 わ ざ る を 得 な い。 これ
は 、 政 府 系 の訓 練 校 に は 就 職 支 援 サ ー ビス とい っ た制 度 が 確 立 され て い な い 上 に 、 民 間 企 業 との ネ ッ トワー クがUCEPと 比 べ れ ば 弱 い こ とに よる要 因 が大 きい と考 え られ る。 そ の た め 、 カ リキ ュ ラム 自体 が 企 業 の 望 ん で い る よ うな 人 材 の輩 出 に寄 与 して い な い も の に な って い る可 能 性 が強 い2)。 3)修 了 率 で 測 られ る プ ログ ラ ム の 内部 効 率 性 に 注 目 して み る と、 政 府 系 の訓 練 校 は80%台 に 止 ま っ て い る の に対 し、UCEPは100%近 い修 了 率 を 維 持 して い る。 勿 論 、 この 数 字 は 訓 練 校 の持 って い る修 了基 準 の 高 さ に よ って 左 右 され る もの で あ る が 、 少 な く と もUCEP 訓 練 生 の ドロ ップ ア ウ ト率 は 低 く、 訓 練 生 は プ ログ ラ ム 自体 に 興 味 を 持 って 意 欲 的 に 学 ん で い る と言 え る。 こ の こ とは 、 後 で 示 す 訓 練 生 の質 問 票 調 査 の結 果 か ら も裏 付 け られ る。 また 、 ドロ ップ ア ウ ト率 の低 さは 、 訓 練 校 の設 備 や 教 員 を 遊 休 化 させ ず に そ の資 源 を 効 率 的 に 利 用 して い る と も解 釈 で き る。 他 方TTCの 縫 製 業 訓 練 プ ログ ラ ム の場 合 、 訓 練 者 数 が 定 員 を 満 た して い ない 上 に 、 訓 練 生 の 出席 率 もあ ま りよ くない こ とか ら調 査 当 日も教 室 の空 席 が 目立 って い た 。 こ の こ とは、TTCの 縫 製 業 訓 練 プ ロ グ ラム の質 が他 の訓 練 校 と 比 べ る と劣 って い る と解 釈 で き る。 4)座 学 と実 習 の割 合 に 注 目 して み る と、 政 府 系 の訓 練 校 はUCEPと 比 べれ ば 、 座 学 の割 合 が 非 常 に 高 い。 こ の理 由 と し て、 政 府 系 の訓 練 校 で は メン テ ナン ス 体 制 が 整 っ て お らず 、 実 習 に 必 要 な機 械 の多 くが 壊 れ て 使 え ない こ とが 一 番 に 挙 げ られ る3)。 5)教 員 の評 価 制 度 に 関 して 言 え ば 、UCEPは 政 府 系 訓 練 校 と比 べ て厳 密 に 実 施 して い る。 UCEPの 上 部 委 員 会 が定 期 的 に 各 教 員 を10段 階 で評 価 し、 そ れ に応 じて 昇 給 や 昇進 を 決 定 して い る。 そ れ に対 し、 政 府 系 訓 練 校 も教 員 の評 価 制 度 が 存 在 し て い る と回 答 して い る が 、 教 員 の 昇給 や 昇 進 は 公 務 員 に 準 じた 形 で 年 齢 と就 業 年 数 に よ っ て決 定 され て お り、 競 争 原 理 が働 く余 地 が少 な い と考 え られ る4)。 表7は 訓 練 生 か ら の質 問 票 調 査 を 通 じて 彼 ら の満 足 度 を ま とめ て お り、 表8は ウエ ル チ 検 定 を 用 い て 各 校 の満 足 度 の格 差 に 関 して の検 定 結 果 を 示 して い る。 また 、 表9は 教 員 の満 足 度 を 示 した も ので あ る。 満 足 度 は 訓 練 生 お よび 教 員 に そ れ ぞ れ の質 問 項 目に 対 し5段 階 で 評 価(満 足 度 が 高 くな るほ ど、 数 字 が 高 くな る)し て も らい 、 そ れ ら の値 を 訓 練 校 ご とに 平 均 して 算 出 した 。 前 褐 で 示 した 訓 練 生 や 教 員 の属 性 が3校 の間 で 統 一 され て い ない た め 、 そ の満 足 度 を 訓 練 校 の評 価 と直 接 結 び つ け て 解 釈 す るに は 無 理 が あ るが 、 そ れ ら の数 字 は 幾 つ か の興 味 あ る結 果 を 示 して い る。 そ れ を 以 下 に 述 べ て み る と、 1)UCEP訓 練 生 の 「教 員 の 質 」 に 関 して の 評 価 は4.5で あ り、BGTTC訓 練 生 の 同 項 目に 関 して の評 価3.9よ りも差 が 見 られ る(1%水 準 以 下 で 統 計 的 に有 意)。 あ るUCEP訓 練 生 は、 「授 業 は実 際 に機 械 を 用 い て の実 習 の 時 間 が 多 く、 非 常 に役 に 立 つ 」 と話 して い た 。 UCEPカ リキ ュラ ム は 実 習 の時 間 が 多 く配 分 され て い る の と同 時 に 、 教 員 の属 性 で も見
られ る よ うに、UCEP教 員 はBGTTC教 員 よ りも企 業 で の就 業 経 験 を も って い る割 合 が は るか に高 い。UCEPの 校 長 も面 談 の 中 で 、 「教 員 採 用 の条 件 と して企 業 で の 実 務 経 験 を 持 って い る 人 を 優 先 的 に採 用 した い 」 と述 べ て い た 。 また 、 「訓 練 生 と教 員 の 関係 」 に 関 して の評 価 に お い て も、UCEPは4.9、BGTTCは4.0と 差 が 見 られ る(1%水 準 以 下 で 統 計 的 に有 意)。そ れ ゆ え 、これ ら2つ の項 目の 間 に は何 らか の相 関 関係 が あ る と推 察 され る。 2)政 府 系 訓 練 校TTC、BGTTCの 学 生 の 「就 職 情 報 」 に 関 して の評 価 は それ ぞれ2.3、2.4と 、 UCEP訓 練 生 に よ る評 価 の4.0と 比 べ れ ば低 い(ど ち ら も1%水 準 以下 で統 計 的 に有 意)。 こ の結 果 は 、 既 に 指 摘 した 政 府 系 訓 練 校 の企 業 と の ネ ッ トワー クの脆 弱 性 や 就 職 支 援 サ ー ビス の欠 如 を 反 映 した も ので あ る と言 え る。 3)UCEP訓 練 生 の 「訓 練 期 間 」 に 対 す る評 価3.3は 、政 府 系 訓 練 校TTC、BGTTCの 数 字3.5、 3.6と 比 べ て 低 い よ うに 思 え るが 、UCEPの 何 人 か の訓 練 生 に直 接 聞 い てみ る と、 「学 校 が 好 きで も っ と勉 強 した い ので 、 訓 練 期 間 を 延 ば して ほ しい 」 とい う答 え が 返 って きた 。 4)「 学 校 全 体 の評 価 」 に 関 して も、UCEP訓 練 生 の評 価4.8が 最 も高 く、BGTTCの 評 価3.7 と比 較 す れ ば か な りの 差 が 見 られ た(1%水 準 以 下 で 統 計 的 に 有 意)。 ま た 、 同項 目の 評 価 に 関 して 、TTCとBGTTCの 訓 練 生 の 間 に お い て も差 が 見 られ る(1%水 準 以 下 で 統 計 的 に 有 意)。 但 し、 この数 字 が 単 にBGTTCの 訓 練 シス テ ムが 他 の2校 よ りも劣 る とは 言 い 切 れ ない 。 なぜ な らば 、BGTTC訓 練 生 は高 等 教 育 を 受 け て か ら訓 練 校 に 入学 して き た 学 生 もか な りい る こ とか ら、 彼 らの訓 練 校 に 対 す る評 価 は 他 の2校 の学 生 に よ る評 価 よ りも必 然 的 に厳 し くな って い る と考 え られ る。 5)TTC教 員 の 「設 備 の質 や 量 」 に 対 す る評 価 は、2.7と 他 の2校 よ りも低 い 。 これ は 、表10 に示 され て い る訓 練 校 で 使 用 さ れ て い る機 械 の 種 類 を 見 れ ば 一 目瞭 然 で あ る よ うに 、 TTCの 設 備 は他 の2校 に比 べ れ ばか な り劣 って い る。 「設 備 の量 や 質 」 の問 題 は 「コ ー ス 内容 」 に もマ イ ナ ス の 影 響 を 与 え る こ とが考 え られ 、TTC教 員 に よる 「コー ス 内 容 」 の 満 足 度 も2.5と 低 い 数 字 を 示 して い る5)。 6)TTC教 員 やUCEP教 員 に よる 「訓 練 生 の基 礎 能 力」 の満 足 度 は 、 それ ぞれ3.0、2.7と 低 い 数 字 で あ っ た。 こ の数 字 は 訓 練 校 の 問 題 点 を 示 す もの で は な く、 バン グ ラ デ シ ュの 教 育 制 度 自体 の改 善 を 提 議 す る も の で あ る。 今 回 の被 調 査 対 象 者 は 最 低 で も初 等 教 育 を 終 了 して い るが 、 そ れ に も拘 らず 、 基 本 的 な 「読 み 」、 「書 き」、 「算 術 」 の で き な い訓 練 生 は 多 い 。 こ の よ うな 基 礎 能 力 の欠 如 は 訓 練 プ ロ グ ラ ム の 効 率 性 を 低 下 さ せ る こ とに つ な が る こ とか ら、 入 学 の ス ク リーン ニン グを 厳 し く した り、 入 学 生 の 基 礎 学 力 の充 実 を 図 るた め に 訓 練 校 サ イ ドで の プ レス クール を 開 講 す る こ と も思 案 され る必 要 が あ る。
表7訓 練生の満足度の比較 質 問項 目 TTC BGTTC UCEP 1.設 備 の 質 や 量 3.5 3.6 3.8 2.教 員 の 質 4.2 3.9 4.5 3.教 員 の 数 3.4 3.4 3.6 4.就 職 情 報 2.3 2.4 4.0 5.訓 練 期 間 3.5 3.6 3.3 6.コ ー ス 内 容 3.8 3.8 3.8 7.訓 練 生 間 の関 係 4.3 4.1 3.9 8.訓 練 生 と教 員 の関 係 4.7 4.0 4.9 9.学 校 全 体 の評 価 4.6 3.7 4.8 (出所)質 問 票 よ り集 計 表8項 目 ご との 訓 練 校 間 に お け る格 差 の 統 計 量 質 問項 目 BGTTC・UCEP TTC・UCEP TTC・BGTTC 1.設 備 の 質 や 量 一1.076 一1.404 一.0252 2.教 員 の 質 一2 .705*** 一1.070 1,368 3.教 員 の 数 一〇.820 一〇.937 0,346 4.就 職 情 報 一5 .342*** 一7.912*** 一〇.324 5.訓 練 期 間 1,309 0,818 一〇.640 6.コ ー ス 内 容 0,121 一〇 .109 一〇.306 7.訓 練 生 間 の関 係 0,512 2.338** 1,503 8.訓 練 生 と教 員 の関 係 一5 .Ol9*** 一2.020* 6.885*** 9.学 校 全 体 の評 価 一7.850*** 一1.489 7.820*** (出 所)質 問 票 よ り集 計 (注)***、**、*は そ れ ぞ れ1%、5%、10%の 水 準 で 統 計 的 に 有 意 で あ る こ と を 示 す 。
表9教 員の満足度の比較 質 問項 目 TTC BGTTC UCEP 1.設 備 の 質 や 量 2.7 3.5 3.9 2.教 員 の 質 3.3 4.7 4.1 3.教 員 の 数 4.5 4.1 3.6 4.就 職 情 報 2.5 3.7 3.7 5.就 職 率 3.8 3.8 4.3 6.訓 練 期 間 2.3 3.2 3.1 7.コ ー ス 内 容 2.5 4.0 4.0 8.訓 練 生 間 の関 係 4.0 3.6 4.6 9.訓 練 生 の基 礎 能 力 3.0 3.6 2.7 (出所)質 問 票 よ り集 計 。 表10訓 練 校 で 用 いて い る機 械 の 種 類 の 比 較 機械の種類TTCBGTTCUCEP (一般 的 な機 械) 1.PlainMachine ○ ○ ○ 2.5TOverLock ○ ○ ○ 3.3TOverLock ○ ○ ○ 4.MultiNeedle ○ 5.Bartack ○ ○ 6.ButtonHole ○ ○ 7.ButtonStitch ○ ○ 8.SteamBoiler ○ ○ 9・CuttingMachine ○ ○ (高 度 な機 械) 1.AutoTreamers 2.DNLockStitch ○ 3.BlindStitch 4・SnapBin ○ 5・FlatLocking ○ 6・KansaiSpecial ○ ○ 7.VacuumTable ○ 8・SnapButton ○ 9.Generator 10・TopFusing ○ ○ (出所)教 員 か ら の聞 き取 り調 査 に よ り作 成 。 (注)○ 印は 、 訓 練 校 で そ の機 械 を 使 用 して い る こ とを 意 味 す る。
表llは 、 訓 練 生 の入 校 動 機 、 就 職 す るに あ た って の必 要 な情 報 、 訓 練 修 了 後 の希 望 進 路 を ま とめ た も ので あ る。 そ れ を 以 下 に 述 べ て み る と、 1)入 校 動 機 に 関 して は 、3校 の訓 練 生 と も 「高 い 地 位 と資 格 」 を 一 番 の動 機 に 挙 げ て い る。 恒 常 的 に 高 い 失 業 率 を 記 録 して い るバン グ ラ デ シ ュの労 働 市 場 に お い て 、 訓 練 生 が 職 業 、 特 に 組 織 化 され て い る よ うな フ ォー マル 部 門 に お い て 職 業 を 得 るた め に は 、 彼 らが 企 業 の 発 展 に 将 来 貢 献 で き る可 能 性 を 示 す 資 格 の取 得 が 重 要 に な って くる。 そ のた め に は 政 府 の 側 も、 そ れ ら の資 格 が 国 家 資 格 と して 認 知 され る よ うな制 度 を き ちん と整 備 して い く必 要 が あ る6)。 2)TTCお よびBGTTC訓 練 生 の 「家 族 の奨 め 」 の動 機 が そ れ ぞ れ2番 目、3番 目に 多 い 動 機 と して挙 げ られ て い る。 「親 は 訓 練 校 に通 って い る こ とに賛 成 して い るか 」 とい う問 い に 対 し、 ほ とん ど の訓 練 生 が 「は い 」 とい う回 答 を した 。 こ の こ とか ら も、 多 くの訓 練 生 の親 は 子 ど もに 技 能 を 身 に 付 け て も ら って 、 安 定 的 な就 職 先 を 見 つ け て ほ しい と考 え て い る。 3)「 高 い教 育 を受 け る経 済 的 余 裕 が な い」 はUCEP訓 練 生 に と って2番 目に 多 い 動 機 に な っ て い る が、 この こ とはUCEP訓 練 生 の親 の低 い 学 歴 、 そ れ と関 連 した 家 計 の所 得 水 準 の低 さを考 慮 す れ ば、 納 得 の い く回答 で あ る と言 え る。 4)「 就 職 す る際 の必 要 な 情 報 」 と して、3校 の 訓 練 生 と も順 位 に は そ れ ぞ れ 違 い が あ るに せ よ、 「給 料 水 準 」、 「将 来 の 昇 進 の可 能 性 」、 「職 場 環 境 」、 「技 能 の 活 用 の可 能 性 」 を 上 位 に 挙 げ て い る。 特 に、BGTTC訓 練 生 の平 均 年 齢 は他 の2校 と比 較 して高 い の に 加 え て 、 何 人 か は就 業 経 験 もあ る。BGTTCの あ る訓 練 生 は、 「以 前 縫 製 工 場 に 就 職 した こ とが あ るが 、 当初 考 え て い た もの と職 場 環 境 が 異 な って い る。 現 在 、 自分 の 能 力 を 活 か せ る職 業 に 就 け る よ うに 訓 練 校 で学 ん で い る。 誰 で もで き る よ うな単 調 な仕 事 で は な く、 専 門性 を 必 要 と す る仕 事 に就 きた い」 と答 え た。 5)BGTTC訓 練 生 及 びUCEP訓 練 生 は 「将 来 の希 望 進 路 」 とい う質 問 に対 し、 「外 国 系 企 業 で 働 きた い 」、 「現 地 系 企 業 で 働 きた い 」 とい う回 答 が8割 か ら9割 を 占め て い る。 他 方 、 TTC訓 練 生 の 回答 もそれ ら2つ の 回答 が 上 位 を 占 め て い る も の の、 か な りの ば らつ きが 目立 つ 。TTCお よびBGTTCに は 、 「進 学 した い 」 を 将 来 の進 路 と して希 望 した 訓 練 生 もか な り見 られ た 。 た だ し、BGTTC訓 練 生 の属 性 で もわ か る よ うに 、 高 等 教 育 を 修 了 し た 訓 練 生 で も訓 練 校 で 学 び 直 して い る よ うに 、 果 た して 彼 ら の高 等 教 育 へ の進 学 が どれ だ け の収 益 率 を 上 げ られ るか は 疑 問 で あ る。 そ れ ゆ え 彼 らが た とえ 進 学 す るに して も、 収 益 率 を 期 待 で き る よ うな教 育 機 関 お よび 分 野 を 慎 重 に 選 ぶ 必 要 が あ る。
表11訓 練 生 の 入 校 動 機 、 必 要 な 情 報 、 希 望 進 路 の 比 較 (単位%) 質 問項 目 TTC BGTTC UCEP (入校 動 機) 1.高 い 地 位 と 資 格 41 31 34 2.高 い 給 料 13 12 12 3.家 族 の 奨 め 15 14 7 4.友 人 の 奨 め 0 3 0 5.知 的 好 奇 心 ll ll 9 6.高 い教 育 を受 け る経 済 的 余 裕 が な い 13 15 32 7.高 い 教 育 を 受 け る能 力 が な い 7 14 6 (就職 す るに あ た って の 必 要 な 情 報) 1.給 料 水 準 23 ll 14 2.将 来 の 昇 進 の 可 能 性 23 18 26 3.職 場 環 境 ll 16 29 4.人 間 関 係 13 ll 6 5.労 働 時 間 9 6 10 6.技 能 の 活 用 の 可 能 性 16 22 13 7.会 社 の 場 所 2 9 3 8.労 働 倫 理 4 8 0 (将来 の 希 望 進 路) 1.外 国系 企 業 で働 きた い 21 34 51 2.現 地 系 企 業 で働 きた い 17 43 37 3.自 分 で企 業 を始 め た い 17 0 0 4.家 族 の 仕 事 を 手 伝 い た い 13 0 3 5.海 外 で 働 き た い 4 6 0 6.国 営 企 業 で 働 きた い 8 0 3 7.進 学 した い 21 ll 6 8.不 明 0 6 0 (出所)質 問 票 よ り集 計 。 (注)「 入 校 動 機 」 お よび 「就 職 す る に あ た って の 必 要 な情 報 」 の 質 問 の 回 答 は、 複 数 回 答 も 可 と した 。 4.結 び 80年 代 初 め か ら約10年 間 軍 政 を 敷 い た エ ル シ ャ ド政 権 の崩 壊 後 、 バン グ ラ デ シ ュ政 府 は 本 格 的 な 自 由化 政 策 を 通 じて 経 済 を 軌 道 に 乗 せ よ うと試 み た 。 国 内お よび 外 国 企 業 は 質 の高 い 労 働 力 を 求 め る よ うに な り、 バン グ ラ デ シ ュ政 府 は そ の対 応 策 の一 端 と して 職 業 教 育 の拡 充 を 図 っ
て きた 。 そ の結 果 、 ポ リテ クニ ッ クの よ うに 優 秀 な技 術 ・技 能 を 持 った 労 働 者 を 輩 出 し、 産 業 界 で 高 い 評 価 を 得 て い る職 業 訓 練 校 もあ る。 今 まで バン グ ラ デ シ ュの職 業 教 育 の問 題 点 を 総 花 的 に 捉 え た 先 行 研 究 は あ って も、 訓 練 生 お よび 教 員 の視 点 か らそ の問 題 点 を 捉 え た 研 究 は 皆 無 で あ った 。 今 回 の調 査 対 象 は ダ ッカ地 域 の 限 られ た 職 業 訓 練 校 で あ り、 こ の国 に お け る職 業 教 育 全 体 の問 題 を 明 らか に した も ので は ない 。 しか し、 職 業 教 育 の効 率 的 か つ 効 果 的 な実 施 を 阻 害 す る要 因 を 明 らか に す るた め に は 、 今 後 こ の調 査 を き っか け と して 調 査 対 象 を 広 げ た 実 態 調 査 の実 施 が 望 まれ る。 最 後 に 前 節 の職 業 訓 練 校 の調 査 を 踏 まえ た 上 で 、 そ れ が 抱 え て い る問 題 点 を3つ に しぼ って 、 対 処 す るた め の方 策 を 検 討 して 結 び と した い 。 1つ 目の問 題 点 は 、 バン グ ラ デ シ ュの職 業 訓 練 プ ログ ラ ム の分 野 と 内容 に 帰 属 す る も ので あ る。 産 業 構 造 の高 度 化 に 伴 い 職 業 教 育 を 拡 充 して ゆ くこ とは 意 義 のあ る こ とだ が 、 労 働 市 場 に お け る需 要 と一 致 しない 人 材 を い くら教 育 ・訓 練 して も資 源 の無 駄 に 終 わ って しま う。 労 働 力 と して 人 材 開 発 を 考 え る際 に は 、 人 材 の教 育 ・訓 練 が 雇 用 確 保 と結 び つ く必 要 が あ る。 そ のた め に は 、 産 業 界 の ニ ー ズ と一 致 した 職 業 教 育 が 行 わ れ るべ く民 間 部 門 の職 業 訓 練 に 係 る政 策 決 定 過 程 へ の参 加 、 座 学 中 心 の カ リキ ュラ ム の見 直 し、 そ の国 の近 代 化 ・工 業 化 を 進 め る上 で 労 働 力 需 要 の多 い 分 野 で の職 業 教 育 の強 化 とい った よ うな政 策 の転 換 を 進 め て い か なけ れ ば な ら ない 。 そ の際 、 先 進 国 や 中 進 国 の職 業 教 育 ・訓 練 の経 験 に 基 づ い た 技 術 協 力 が 大 き な役 割 を 果 た せ る可 能 性 を 持 って い る。 2つ 目の問 題 点 は 、 職 業 訓 練 校 に お け る教 員 の質 の低 さで あ る。 バン グ ラ デ シ ュの職 業 学 校 で は 、 教 員 資 格 を 持 って い ない 教 員 や 十 分 な訓 練 を 受 け て い ない 教 員 が 多 い 。 教 員 の質 に 関 し、 TEBは 大 学 学 部 卒 業 の教 員 が教 育 に 当 た る のが 望 ま しい と して い る。 しか し、 学 歴 以 上 に 職 業 教 育 の教 員 の資 質 と して 重 要 な のは 実 務 経 験 で あ る。 訓 練 生 に 理 論 に 関 す る知 識 を 教 え る こ と も軽 視 され るべ きで は ない が 、 技 能 に は 言 葉 で 説 明で き ない 暗 黙 知 的 要 素 が 多 くあ る。 豊 富 な就 業 経 験 を も った 教 員 が 実 際 に 彼 ら の技 能 を 訓 練 生 に 示 し、 訓 練 生 が そ れ を 学 び 取 る。 また 、 企 業 の生 産 現 場 で しば しば 起 こ る非 定 常 的 な問 題 に 対 し、 ど の よ うに 対 処 して い くべ きか を 教 授 す る。 実 際 の生 産 現 場 を 熟 知 して い る こ と、 技 能 の暗 黙 知 的 要 素 を 辛 抱 強 く教 え る こ とが で き る こ と、 訓 練 生 の適 性 や 性 格 を 読 み 取 る こ とが で き る洞 察 力 、 これ ら の能 力 を 持 った 教 員 が 訓 練 校 に 最 も求 め られ る人 材 な ので あ る。 勿 論 、 こ の よ うな優 秀 な教 員 を 産 業 界 か ら引 き抜 く に は 、 彼 ら の能 力 や 仕 事 ぶ りを き ちん と評 価 して 、 昇 給 や 昇 進 に 結 び つ け るた め の制 度 を 確 立 す る こ とが 必 要 条 件 で あ る。 3つ 目の問 題 点 は 、 学 校 設 備 の不 備 で あ る。 こ の問 題 は ほ とん ど の職 業 訓 練 校 が 直 面 して い る こ とで あ るが 、 特 に 開 発 プ ロジ ェ ク トか ら取 り残 され て い る農 村 地 域 で は 、 学 校 設 備 の不 備 は 深 刻 な問 題 と な って い る。 こ うい った 問 題 を 改 善 す るに は 外 国 か ら の資 金 援 助 や 技 術 協 力 を
地 方 の教 育 機 関 に も配 分 して い くこ とが 不 可 欠 で あ るが 、 同時 に バン グ ラ デ シ ュ側 が 着 手 す べ き こ とは 抜 本 的 な財 政 改 革 を 実 施 し、 無 駄 な教 育 投 資 を 切 り詰 め て 地 方 の人 的 資 源 開 発 のた め に 資 源 を 配 分 して い くこ とで あ る。 そ のた め に 考 え られ る1つ の方 法 と して 、 政 府 が 職 業 訓 練 校 に 対 す る専 門 的 評 価 機 関 を 設 立 して 、 政 府 系 だ け で な な く非 政 府 系 訓 練 校 も対 象 に して 、 就 学 率 、 進 級 率 、 就 職 率 な ど資 源 の効 率 性 を 測 る量 的 内部 効 率 性 、 教 育 の質 の改 善 に よ り学 習 達 成 度 を 高 め る質 的 内部 効 率 性 、 教 育 費 用 と修 了 者 の収 入 と の関 係 か ら測 られ る外 部 効 率 性 な ど の要 素 を 通 じて 、 職 業 訓 練 校 の活 動 を 客 観 的 に 評 価 す る こ とで あ る。 そ して 効 率 性 の 良 し悪 し に よ って 、 訓 練 校 に 対 す る補 助 金 を 決 定 す る とい う競 争 原 理 を 職 業 教 育 に 導 入 す る こ とが 重 要 で あ る。 また 、 優 秀 な教 員 が 地 方 で も長 く勤 務 した くな る よ うに 、 都 会 で 勤 務 して い る教 員 よ りも雇 用 条 件 に 関 して 何 らか の誘 因 を 与 え る制 度 を 確 立 して 、 教 育 機 関 の間 の質 的 格 差 を 是 正 す る必 要 が あ る。 注 1)正 規 プ ロ グ ラ ムの2年 生 を調 査 対 象 とす る こ と も考 え た が 、UCEPの2年 生 が7月 か ら期 間3-12ヶ 月 の 企 業 実 習 に 行 って お り、 調 査 対 象 か ら除 か ざ るを 得 な か った 。 2)別 の調 査 で 面 談 した 縫 製 業 の 多 くの企 業 家 も、 「政 府 系 の訓 練 校 は 民 間 か らの要 望 に 対 して 聞 く耳 を もた ず 、 企 業 の ニ ーズ に 合 致 した 人 材 を 育 成 して い な い 」 と指 摘 して い た 。 3)こ の こ とは 、96年 か ら98年 までTTCに 派 遣 され た 国 際 協 力 事 業 団 の 専 門 家 坪 田(1997、8ペ ー ジ)は 「ほ と ん どの 機 工 具 は建 設 時 の物 ば か りで 、 国 際協 力 事 業 団(JICA)や 国 際 機 関 か ら本 当 に 僅 か の 機 工 具 しか 補 充 され て い な い 。・・一1年 間 に1回 で も使 用 され た よ うな 形 跡 も な く、 手 入 れ され た 痕 も見 あ た らな い こ とか ら、 ま と もに 動 か な い 物 が ほ とん どで あ る。」 と指 摘 して い る。 4)ま た 坪 田(1997、7-8ペ ー ジ)は 、 「指 導 員 階 級 は3つ の 階級 に ラ ン ク され てお り、 仮 に一 生 懸 命 努 力 した と して も高 学 歴 で な い以 上 、安 い給 料 や 低 い 地 位 に 変 わ りが な く、 そ の こ とが彼 らの や る気 を な くさせ て い る」 と指 摘 して い る。 5)TTCの 設 備 に 関 す る問 題 の 原 因 の1つ は 、6-7年 前 に 中 国製 の ミシ ンを購 入 した が 、 質 よ りも価 格 で 購 入 業 者 を 選 ん だ こ とに あ る。 あ るTTCの 教 員 の話 に よ る と、 「中 国 製 の ミシ ンは 日本 製 に 比 べ れ ば 性 能 も劣 っ て い る上 に 、壊 れ た と きの ア フ タ ーサ ー ビスや 取 り替 え部 品 が バ ン グ ラデ シ ュ国 内 で 利 用 で きな い 」 とい うこ とで あ った 。 他 方 、UCEPお よびBGTTCの ミシ ンは 全 て 日本 製 で あ り、 バ ン グ ラ デ シ ュ 国 内 に代 理 店 を持 っ て お り、 ア フ タ ーサ ー ビスや 取 替 え部 品 の調 達 は 万 全 で あ る。 また 、 BGTTCの 場 合 、7-8年 前 に 国際 労 働 機 関(ILO)に よ って 大 規模 な技 術 協 力 プ ロ ジ ェ ク トが そ こで 実 施 され た こ と も あ っ て 、 そ の 時 に 使 用 され て い た 最 新 の機 械 が 今 も訓 練 プ ロ グ ラム の 中 で 利 用 され て い る。 そ のた め 、BGTTCは 政 府 系 訓 練 校 の1つ とは 言 って も、 他 のTTCの 設 備 とは 全 く異 な っ て い る。
6)政 府 は 訓 練 校 の レベ ル に 応 じ て 、 ベ ー シ ッ ク コ ー ス 修 了 、 国 家 技 能 基 準(NSS)Grade-IIIコ ー ス 修 了(semi-skilled)、 国 家 技 能 基 準(NSS)Grade-IIコ ー ス 修 了(skilled)、 国 家 技 能 基 準(NSS) Grade-1コ ー ス 修 了(highly-skilled)、mastercraftsmanの 資 格 を 認 定 す る 動 き が あ る が 、 現 在 の と こ ろ 政 府 に よ っ て 認 定 さ れ た 制 度 と し て 確 立 し て い る の はNSSGrade-IIま で で あ る 。 参 考 文 献 1)Ahmed,N.「 バ ン グ ラ デ シ ュ 」、 海 外 職 業 訓 練 協 会 編 『海 外 調 査 員 報 告 一 一 技 術 訓 練 と そ の 周 辺 の 最 新 情 報 』、 海 外 職 業 協 会 、1993年 。 2)Alson,P,SudhirAnand,etal(ed).」 π π辮 α%Dω61砂 辮6窺1∼6ヵ07'.OxfordUniversityPress,Ox-ford,2000.
3)Muhith,A.Bα%gZα4揃i.伽Twenty-FirsC魏 π四 ・Towardα%加 伽s'磁1So6ガ
の,TheUniversi-tyPressLimited,Dhaka,1999.
4)PlanningCommissionMinistryofPlanning.Mid-Tern1∼ 爾 飾ofthF爺 〃F漉YearPla.1997-2002,GovernmentofthePeople'sRepublicofBangladesh,1996.
5)Rahman,M.飾7%6∬ 珈gCo柳6'露 漉s惚%8統 伽oπ8:〃E肋 α%66耀 窺(ゾT66伽010g∫oα1Capabilityl
Stud'o.Eκ ρ07'一〇7∫6短64ApparelS66'070;Bα%g1α46s乃,ReportPreparedfortheStudyon towardsIndustrialcompetitivenessinBangladesh:AddressingtheTechnologicalFactor,March l999. 6)豊 田 俊 雄r発 展 途 上 国 の 教 育 と 学 校 』 明 石 書 店 、1998年 。 7)坪 田 満 夫 『バ ン グ ラ デ シ ュ 人 的 資 源 雇 用 訓 練 局JICA専 門 家 業 務 報 告 書 』、 国 際 協 力 事 業 団 ダ ッ カ 事 務 所 、1997年6月 。 8)WorldBank.BangladeshEducationSectorReviezVolumeIl',TheUniversityPressLimited, Dhaka,2000. (うち だ ・と もひ ろ 国 際 言 語 学 部 講 師)