Kobe Shoin Women’s University Repository
Title
家政学よりみた江戸時代(八)
Edo period judging from Home Economics(8)
Author(s)
高尾 こいし(Koishi Takao)
Citation
生活科学論叢(Review of Living Science)
,
No.8:27-41
Issue Date
1975
Resource Type
Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
URL
Right
家 政 学 よ りみ た 江 戸 時 代(八)
高 尾 こ い し 衣 は下 よ り上 に うつ り,食 は上 よ り下 に流 れ る と い わ れ る。 上 流 貴 族 社 会 の 荘 厳,華 麗,複 雑,豪 華 な 衣 服 服 装 は,そ の着 装 の わ ず らわ し さ と,動 作 の 不 自 由,窮 屈 さ とを い とい,下 層 社 会 の 衣 服 の単 純,簡 便 さを もと め,自 分 た ちの 衣 生 活 に と り入 れ た。 食 生 活 では 一 般 庶 民 は 飢 を しの ぐに や っ と と い う時 代 か ら脱 却 して,生 活 が 向上 す る の に つ れ て,上 流 社 会 の 食 生 活 の 内容,形 式 よ り食 事 の あ りか た,方 法 な どを手 本 として これ に な ら うよ うに な る もの で あ る。 我 が 国 に お い て は,江 戸 時 代 平 和 がつ づ い て町 人 が 巨富 を あ つ め る よ うにな った 頃 か らこの 傾 向 が あ らわれ,後 期 に な っ て一 般 庶 民 に及 ん だ。 食 事 の 料 理 は も とよ り,食 事 の マ ナ ーで あ る食事 の と きの行 儀,食 法 な どの心 得 につ い て も一 般 庶 民 の 子 女 に教 え られ る よ うにな った。 客 を招 い て 飲 食 す る こ と を 「あ る じ」,「あ る じ も うけ」 な ど とい い,饗 の字 を あ て た。 馳 走 と もい い,酒 宴,酒 盛 と い うよ うに 酒 が つ き もの で あ った。 えん の ざ おん の ざ も も ど の ざ 平 安 時 代 朝 廷 の 饗 宴 には 宴 座 と穏 座 が あ った。 あ とで 飯 が で るの を百 度 座 とい う。 宴 座 は威 儀 の 座 とあ り,後 世 の 儀 式 で 厳 粛 な もの で あ る。 群 臣 が 饗 宴 に 与 った こ と を感 謝 し,拝 礼 して 殿 上 の間 に着 座 す るの を謝 座 とい う。 上 座 の 者 か ら順 次下 座 の 者 に 盃 が 一 巡 し終 るの を一 献 とい う。 更 に上 座 か ら下 座 に二 献,三 献 で 宴 座 は おわ り,座 をあ らた め て穏 座 につ く。 穏 座 で は管 絃 の楽 が は じま り,皆 う ち くつ ろ い で歓 をつ くす の で あ る。 大 饗 略 次 第 で は 五 献 の あ とで一 同 円座 に うつ り音 楽 に入 る とあ る。 江 家 次 第 石 清 水 臨 時祭 に 「一 献,二 献,大 臣著 穏 座,三 献 公 卿 著 垣 下 座 」 とあ る。 垣 下 座 とは,名 目抄 に 「えん が の ざ」 とあ り,源 氏 物 語 に 「えが の ざ 」 とあ る。 饗 応 の時 に 正 客 の 外 の 人,相 伴 の座 とあ るの で,楽 人 な どの 居 る座 に な お り,一 座 を やわ らげ,歓 を つ くせ る よ うに した の で あ る。 西 宮記 に よ る と,天 慶4年8月10日(941)上 卿 以下 寮 饗 を うけ,三 盃 が 終 っ たが 大 炊 寮 が百 度 を進 め な か った の で,下 役 人 を召 して 調 べ さす と,大 炊 寮 の 官 人 は一 人 も残 って な く,百 度 の 用 意 もして な か っ た。 そ こで 外記 に 先 例 を調 べ さす と 「饗 宴 事 以 酒 食 為 先 一 とあ り,今 日其 飯 を進 めな い の は 不 可 で あ る と い うの で,急 いで 大 炊 寮 の 者 を召 出 して 用 意 させ た と あ る。 饗 宴 の 様 式 は 次 第 に と との っ た が,後 に室 町 時 代 に近 代 の招 宴 形 式 が 始 ま り,戦 国 時 伏の豪 将 の 出 陣,元 服 祝 な どを経 て 江戸 時代 に幕 府 や諸 大 名 の 招 宴,祝 宴 も式三 献 七 五 三膳 とな り,江 戸 中後 期 よ り一 般 庶 民 の 食生 活 に と りい れ られ た名 残 が現 在 の 結 婚 式 で あ る。 三 三 九 度 の 盃 と披 露 宴 に分 れ るの は,宴 座 と穏 座 の 流 れ で あ る。 七 五 三 膳 に飯 が つ くの は も もど の ざ 百 度 座 の な ぐ りで あ り,飯 のか わ りに湯 漬,芳 飯 がつ くこ と もあ る。 湯 漬 は 湯 を す す ぎか け た飯 で あ り,芳 飯 は法 飯 苞 飯 と もか き,盛 っ た飯 の 上 に種 々の 煮 物 や き ざみ 物 を の せ て,汁 を か け た もの で,現 在 の五 目飯 に にて い る。 菓子 はつか な い。 えんの ざ え んむん の ざ 名 目抄 宴 座 宴 穏 座 江 家 次第 穏 座者,非 威 儀 之 座,自 他野 懐,故 日穏, 西 宮記 上 卿 著,次 次 入 著,辮 以下 各 相 分著,一 ・献 次 辮 執 ヒ令 飲,献 盃 辮 及 六 位 復座,二 央 又 立令 飲 献 盃 史,二 献 … … 三 献 … … 穏 座(先 撤 宴 座,敷 穏 座),上 卿 以下 著 穏 座,辮 少 納 言 著 座 三 献 畢 召 史 生, 召近 辺 諸 司,召 雅 楽 西 宮記 王 卿 起 座2著 廟 門,次 著 百 度 座, 天 慶 四年 八 月 十 日論 議 了,上 卿 以下 著 寮 饗 … …他 事 己了,但 大 炊 寮 未進 百 度 者,召 大 史令 催 行,史 申云,彼 寮 官 人,一 人 不 候 不 儲 百 度 者,又 召 外 記 … …外 記 帰 局 勘 先 例, 此 間 問 件 宰 相 云,饗 宴 事 以 酒飯 為 先,而 今 日不 進 其 飯 為 之 如 何,宰 相 云,左 右 宜 被 定 行,又 問 朝 綱 維 時 両 大 夫,即 云,従 昔 至 今,不 見無 飯 行 宴 之 例,今 初 有 此事,後 代 可 遺 物 誹,… … 又 令 召 勘 大炊 寮 云, 三 中 口伝 居 肴 物 無 菓 子 事 大 饗 座 事,居 肴 物,無 菓 子, 大 饗 略 次 第 大 府 饗 仰録 事 之後,又 一 献 了敷 円座 於 賓 子,主 人 及 諸 卿 下 居,五 献 了敷 穏 座 円 座 発綜 竹声, 饗 宴 は 酒 宴 とか 酒盛 とか い わ れ る よ うに酒 に 関す る語 が多 い。 この 中 に は,(イ)習 慣 の 変 化 な どに よ って 使 わ れ な くな った もの,㈲ 本 来 あ らわ して い る意 味 が か わ った り,意 味 が 加 わ った りした もの,(・9も とつ か わ れ て い た 用法 が ま ぎ らわ し くな った もの の,一 部 の 人 に は古 い用 法 に 固 執 し よ う とす る もの,←)後 世 に な って 使 わ れ る よ うに な っ た返 盃,盃 洗 な どが あ る。 天皇 か ら賜 わ る盃 を天 盃 とい う。 恩 賜 の盃 で 戴 い た酒 は,別 の か わ らけ に うつ して 飲 み,拝 舞 す るの が な らわ しで あ る。 天 皇 が御 酌 をされ るの を天 酌 とい う。 古 くは 御 酌 とい 一28
った よ うで,基 煕 公 記 に東 山天 皇 が即 位 の 時 仙 洞(霊 元 〉 が 「天 酌 儀 後 花 園 院 以来 之事 也, 自今 以 後 可 被停 天 酌 之 由被 仰 」 とあ るの に よ る と室 町 時代 以降 の こ とと思 わ れ る。 正 式 の 饗 宴 で な い と,こ の 事 実 は古 くよ りあ り,こ れ 以 後 もあ って,徳 川 禁 令 考 に よ る と,将 軍 家 茂 が 参 内 し,常 御 殿 で 御 対 面 あ り,「天 盃 頂戴 天 酌 有 之 」 とあ る。 空 蓋 とい うは 「未 盛 酒 之 蓋 也 」と あ る。 宮 中 で 酒 を下 され る と き,ま ず 空蓋 を授 け られ,酒 正 が本 日恩 酒 を賜 わ る由 をの べ,一 同拝 礼 して御 酒 を うけ,上 座 よ り次 々 に乾 盃 す るの で あ る。 人 に盃 を さ し出 して 酒 をす す め る こ とを勧 盃 と い う。 「か ん ぱ い」 と もよ むが 「け ん ぱ い」 とよ むの が な らわ しで あ る と貞 丈 雑 記 に あ る。 敬 意 を もって 人 に 盃 を さす こ と を献盃 とい う。 西 宮 記 に 献 盃 は 「不過 三献,三 献 過 時 成 大 飲 」 とあ る。 又 「主 客 献 酬 之 儀,見 酒 式,世 俗 往 来 之 法,錐 無 所 見,大 体 依式 文 所 行 」 とあ り,献 盃 は 法 式 にの っ とっ て行 うべ きで あ る として い る。 献 盃 や 盃 を うけ る と きの 心 得 が次 第 に で きあ が っ て い くの で あ る。 貴 人 よ り下 ざ ま の 人 に酒 を下 され る こ とを 賜 盃 とい う。 その 盃 を うけ る心 得 に つ い て は,礼 容 筆 耕,宗 五 聞 書,天 文 日記 な どに か かれ て い る が,後 世 小笠 原 諸 礼大 全 の 「御 盃 頂 戴 の事 」 に その 型 式 の と との っ たの をみ る。 饗 宴 の席 で一 座 の 人 に酒 をつ ぎま わ る こ とを行 酒 とい っ た。 銚 子 の持 ち方,つ ぎ方 につ いて の心 得 うべ き こ とが あ った 。 宮 中 饗 宴 の 時,酒 を酌 す るの に,大 臣 や 上 卿 な どに は特 に 五位 以 上 の 人 が,中 途 で酌 人 か ら銚 子 を うけ と って酌 をす るの を続 酌 とい う。 取続 い で 酌 をす るの を略 し た もの で あ る。 鎌 倉 時 代 中 期 頃 の書 とい わ れ る三 中 口伝 には 「摂 政 家如 諸 定 事 無 次 酌 事 」 とあ る。 酒 を飲 み ほす こ とを乾 盃 とい う。 新 儀 式 に 乾盃 「奉 賀 天 皇 御 算,欲 献 御 酒 之 時,親 王進 脆 唱平 」 とあ る。 唱 平 につ い て は,錦 所 談,安 斎 随 筆 な ど に い ろ い ろ と説 か れ て あ る が, 江家 次 第 に 「平 者 称 寿 之 意 歎 」 とあ り 「寿 酒 とは 寿 長 くめ で た きこ とを祝 ひ て酒 をす す む る也,酒 を の む と きの祝 言 也 」 な ど とあ る。 現 在 の 乾 杯 の 形 式 は最 近 の もの で,外 来 の 風 習 か,あ るい は そ れ に模 して 行 わ れ るよ うに な っ たの で あ ろ う と思 うが,そ の意 は遠 く平 安 時 代 に さか の ぼ る こ とが で き る。 酒 は一 献,二 献,三 献 ま で上 座 か ら下 座 へ と順 々 に巡 酒 して い くの が例 で あ る。 四献 す る こ とを闘 巡 とい う。 これ は 三 献 ま で に遅 れ た り,そ の他 の理 由 で 飲 ま な か った あ ま りを ま わ す とい う意 で あ る。 五献 以 上 す る こ と もあ る。 藍 尾 酒 とい う語 が あ る。 類 聚 名 物 考 に 「占人 の 説 もあ れ ど もた しか な らず 」 とあ り,い ろ い ろの 説 が あ る。r末 座 の人 の仕 舞 と して三 盃 飲 む こ とな り」 と安斎 随 筆 に あ る。 上 座 よ り末 座 ま で 盃 が まわ って くる には 時 間 が か か り,な か な か 待 遠 しか っ た こ とで あ ろ う。 通 俗 篇 に末 座 は 酒 が 巡 っ て来 る こ とが お そ い の で 三 杯 連 飲 して これ を な ぐさ め るの で あ る。 これ が 後 に 遅 酒 三 杯 と いわ れ る よ うにな っ た とあ る。 ま た一 説 で は藍 尾 酒 とは宴 会 の
名 残 酒 の よ うな もの で あ ろ う と も い う。 ま ちあぶ ら 待 油 とい うの は,貴 人 を待 って い る間 に勧 盃 す る こ とで あ る。 行 事 の は じま る前 に,下 役人 の 飲 む 酒 で,現 在 の 前 祝 で あ る。 賭 弓 に負 けた者 や宴 会 に遅 参 し た者 に 罰 と して 酒 を飲 ませ る こ とを罰 酒 とい う。 西 宮記 に 「新 定 酒 式王 卿 飲 罰 酒 事 」 と あ り,饗 宴 に お け る勧 盃 の 一 つ の 型 とな って い る。 酒 を飲 む と き、 一 盃 二 盃 を一 献 二 献 とい うの は誤 で あ る。 昔 は一 杯,二 杯 を一 度 二度 と い った。 一 度 せ させ よ とい うの は 一 杯飲 ま せ とい う こ とで あ り,三 三 九 度 とは 三 つ重 ね の 杯 を三 回 飲 む こ とで あ る。 江 家 次 第 に 二献 給 饒 餉,三 献 給 飯 汁 とあ るが,一 献 と い うこ と は何 で もよいが 肴 を出 して三 杯 酒 をす す め る こ とで あ る。列 座 の ときは,上 座 の者 か ら順 次 こ の よ うに して 末座 ま で一 巡 す る と一 献 お わ る。 次 に別 の肴 で 同 じ よ うに して 二 献,三 献 で おわ る。 四季 草 献 数 献 数 の 事,一 こ ん といふ は,何 にて も肴(す い物 も肴 な り)を 出 し,盃 て うし(ひ さ げ も銚 子 に付 て 出 るな り)を 出 して,三 度(三 盃 の事 な り)す す め て,其 肴 の 膳 もど り,盃 もて う し も入 る。 是 一 こん な り。 次 に又肴 を出 し,盃 銚 子 を 出 し,三 度 す す め て,肴 も酒 も入 る,是 二 献 な り,幾 こん 進 る と も,皆 同 じ事 な り,唯 肴 ばか り出す に もあ らず。 雑 煮 な ど も,初 献 には 必 ず 出 す な り。 餅 は 酒 の 肴 に な らぬ 煮 物 な る ゆ ゑ, そへ 肴 と名 づ け て,魚 物 を一 色 そへ 出 して,其 肴 に て 酒 を進 る,是 一 こ んな り。 飯 に て も,ま ん ぢ う,や うか ん,さ うめん,む し麦,う どん な どの 類 に て も酒 をす す むれ ば 一 こん な り。 今世 一 盃 二 盃 の事 を,一 こん 二 こん とい ふ 人 あ り,あ や ま りな り。 一 こん 二 こん の事 は,前 に いへ る が ご とし,一 盃 二盃 とい ふ は,古 き詞 に あ らず。 古 は 一 度 二 度 とい ひ しな り。 つ れ づ れ 草 に,迎 に馬 をつ か は し けれ ば,は るか な る程 な り,口 つ きの を の こに,一 度 せ させ よ とて,酒 を 出 した れ ば 云 云,一 度 せ させ よ と は,一 盃 の ま せ よ とい ふ事 な り。 三 三 九 度 といふ も,九 盃 の事 な り。 古 書 に は皆 幾 度 とい ひ て,幾 盃 とは い は ず。 松 の 落 葉 酒 の む さほ ふ 三 度 三 献 の 事 ひ と杯 の 酒 の む を一 度 とい ひ,三 度 の む を一 献 とい ひ き。 な み ゐ た る座 に て,さ か づ きを一 た び め ぐら しの む を ば,一 巡 といへ り。 さて もの の 儀 式 に うる は し くの む は, 三 度 と一 献 とに ぞ あ りけ る。 西 宮記 の一 の巻 に 「薬 子 嘗 之 次供 御 第 三度 」 と見 え,大 鏡 六 の巻 に 「御賀 加 茂 詣 の 日は,社 頭 に て三 度 の御 か は らけ,定 に て ま ゐ らす るわ ざ な るを、 そ の 御 時 に は,禰 宜 神主 も心 え て,大 か は らけ を ぞ ま い らせ しに 云 云 」 とあ るな どを み れ ば,三 度 は酒 の む さ ほ ふ にな む。 西 宮 記 一 の 巻,臣 下 大 饗 の くだ りに は,三 献 の 間,客 人不 動 座,四 献 以後,諸 卿起 座献 盃 と見 えて,三 献 もう るは し く酒 一・30一
の む さほふ にぞ あ りけ る。 又 同 記五 の巻,定 考 の くだ りに,「 三 献 後,居 粉 熟 飯,数 巡 後 居 餅 飲 」 と見 え,北 山抄 一 の巻,二 官大 饗 の くだ りに は,「 三 献 後 有 音 楽,数 巡 之後 云 云 」 とあ る をみ れ ば、 三 巡 うるは し くの み を は りての ち,度 々 盃 め ぐ らす こ と もあ り しな り。 酒 は三 度(三 杯)す す め るの が 礼 で あ り,三 献 ま で は座 を 乱 さず端 然 と して 飲 む の が な らわ しで あ った。 これ が後 に儀 式 的 の 宴 会 の 時 に用 い られ るよ うに な っ たの が 式 三 献 で あ る。 酒宴 で は奇 数 が めで た い として よろ こば れ て,五 献,七 献,九 献 まで 献 数 を重 ね るよ うに もな った。 海 人 藻 介 に よ る と 「近 比 ハ 酒 ノ名 ヲ九献 トゾ 申合 ケ ル 」 とあ り,増 補 下 学 集 に は 「日本 世 話 酒 名 也 」 と もあ る。 狂 言 に 結 婚 式 に三 三 九献 をす る とあ り,多 聞 院 日記 の天 文11年 正 月 朔 日(1542)地 蔵 講 に初 こ ん ざ うに,い も こん に ゃ くな ど,二 こん,ま め の こ いろ りな ど,三 こん め,く き,な つ な な どで,三 三 九 こん,次 第 有 之 とあ り,当 時宴 会 の 常 例 とな って い た よ うで あ る。 室 町 時 代 に三 三 九 こん と よば れ て い た こ とば は 江 戸 時 代 に な り昔 の三 三 九度 とな った。 三 献 ま では 礼 儀 正 し くあ るべ きで,式 三 献 とい わ れ る よ うに な り,一 般 庶 民 の結 婚 式 に用 い られ る よ うに な って は 形 式 が定 ま る よ うに な っ た。 結 婚 式 で 酌 人 が一 人 は銚 子 で酒 をつ ぎ,他 の者 が,「 お さか な これ に お さか な これ に 」 と称 す る所 作 は、 一 献 をあ らわ す の で 三三 九 献 とい ったの で あ ろ う。 広 辞 苑 に あ る 「新 郎 新 婦 が三 つ 組 の 盃 で,三 度 ず つ 三 回盃 を献 酬 す る こ と」 とあ るよ うに,式 三 献 の 形 式 に もとず く もの で浄 瑠 璃 に三 三 九 度 とで て くる よ うに,三 三 九度 の方 が正 しい よ び方 で あ ろ う。 式 正 秘伝 書 第 十 式 三 献 式 敬 也 制 也,尊 卑 貴 賎,百 官 有 司,所 所 常 常 之 酒 食 礼 儀,必 以 三 献 為 常,因 謂 式 三 献,考 工記 云,主 人 三 度 献 而 三 酬, 躾 方 明記 式 三献 の 次 第,是 は 三 膳 な が ら,す へ 並 て 置 くべ し。 それ は 箸 を と り,う い た さい た と云 ひ,ひ れ有 べ し。 右 板 の ひれ の うつ む きた る を取 りて あふ の け,左 板 の ひ れ の あ ふ の きた る を と りて うつ む けて 食 な り。 是 陰 陽 和 合 な り。 別 の 子 細 な し。 献 立 之 次 第 1式 三 献 の 次 第如 斯 也 。 本 式 に は,先 一 番 に 式 三 献 た るべ し。 其 次 ざふ に 出 る也 。 酒 は 冷 酒 な り。 両 人 よ り外 は有 間敷 候 。 1式 三 献 如 斯 也 。 三 膳 と もに公 饗 にす へ て 出也 。 1三 膳 と もにす ゑ わ た して 、 掬 銚 子 を 出す も勿 論 也 。 乍 去 本 式 に は,先 盃 す は り, 両 人 へ す ゑ 渡 して 銚 子 出也 。 くはへ て三 度 の み候 時,酌 ひ ら きて,う ちみ を右 の 方 へ す ゑ さす べ し。 両 人 す ゑ わ た して,又 酌 よ りて,中 の盃 に て,両 人 三 度 の み は て かへ る。 酌 立 の き候 て,わ た い り をす ゑ させ,又 三 つ め の盃 に て 三 度 の むべ し。
1箸 は何 も三 膳 な が らす ゑ候 。箸 は絡 じて と ら ざるな り。 く ぎや うに,の しか ち ぐ りこぶ お きて,三 重 て 出 し候 事,式 三 献 を りや くし た る体也 。 よ め取 な どの 時,草 な る を用 て 能 也。 貞 丈雑 記 式 三 献 の 肴 術 様,式 日 に云 。 本 膳 引 わ た し也,二 の 膳 う ちみ な り,是 は 鯉 の うす み う ひ た さ ひ た を,さ しみ の 如 くつ く り,土 器 に弐 寸 計 高 く杉 な りに盛,右 組 左 組 の ひ れ を さ し,金 銀 の露 を置 く也 。(う す み とは,腹 もの 所,身 の うす き所 也 。 右 組 左 組 は左 右 の ひ れ な り,流 儀 に よ りて露 な し)三 の膳 わ た い り也 。 是 は鯉 の み ど ころ を 作 り,同 腸 を小 口切 に して,三 っ上 に お くべ し,右 組 左 組 を さす 也 。 鎌 倉 時 代 北 條 氏 は 質 素 な 食生 活 に あ ま ん じ,京 都 の 風 に染 ま なか った。 饗 応 に も,執 権 が 味 噌 を な めて 客 に す す め た 話 が あ るよ うに,極 め て簡 素な もの で あ った。 世 俗 立 要 集 に 「武 家 肴 ノス エ ヤ ウ」 に,う ちあ は び,う め ぼ し,く らげ をす え て 「承 久 以 後 武 家 ノ肴 ノ ス エ ヤ ウ ヲ ミル ニ如 此 」 とあ る。 三 中 口伝 「貴 賎 饗 応 事 」 に 公 卿 に高 圷4本,侍 臣 に高 杯2本 と して,こ れ は 元 服 な どの 非 常 に大 事 な 儀 式 の場 合 で,普 通 に は 机 とか折 敷 を用 い る こ とが多 か った。 しか し至極 の 饗 応 の 時 は 高圷12本 備 わ る と き もあ る と し,こ の 時 に は打 敷 高 圷 とす る とあ る。8本6本 4本3本 の と きは普 通 の 高杯 を用 い る こ と もあ る。 湯 漬,い も粥 な ど もす す め る。 門室 有 識 抄 に 「人 人 蓋 酒 飯 儀 」 に,先 ず御 飯 をす え て一 献,次 に比 目(や わ らか い ご飯)を す え て二 献,次 に汁 をす えて 三献,次 に冷 汁('9をす え,次 に 湯漬 をす え る とあ る。 宮 廷 公 卿 な どの料 理 の 内容 と して は,干 物 に干 鳥,楚 割,蒸 鞄,焼 蛸 が あ る。楚 割 は 鮭 で あ り,何 れ も干 して 削 って 供 した。 生 物 は鰭 で あ る。 鯉,鯛,鮭,鱒,櫨,雅 が あ り, 鮪 と推 は 特 に 上 等 の もの と され た。 汁 は 時 に よ って そ の実 は 同一 で な く,汁 の 実 は 別 の 高 杯 に盛 っ た。 汁 に は 温 汁 と冷汁 囚が あ る。 焼 物 と して は雅 足,堆 の 串焼,鯛 が あ る。 干 菓 子 には 松 実,栢 実,柘 榴,水 菓 子 に は栗,橘,杏,李,柑 子,桃,柿 が あ る。 唐 菓 子 には ば い し と う し かん こ けい しん てん せい ひ ら つい し だん き 梅 子,桃 子,錫 醐,桂 心,黍 胡斉,鐸 灘,鎚 子,団 喜 の 八種 が あ る。 近 代 饗 宴 の 料 理一 般 に つ い て,画 期 的 の 発 達 を もた らした の は 室 町 時 代 で あ る。 足 利 氏 の 隆 昌 期 を迎 えた 義 満 の 時 代 をへ た義 政 の 東 山時 代 か らで あ ろ。 世 阿 弥 を は じ め とす る優 れ た能 狂 言 師 を は じめ,文 化 の 向 上 と,国 内統 一,明 との 交 易 に よ り国 富 を ま した と き, 義 政 の 豪 奢 な生 活 は,豊 富 に な っ た料 理 材 料 と,優 秀 な 調 理 師 の 輩 出 と に よ って 非 常 な進 歩 を とげ た。 室 町 末 期 の 戦 国 時 代 とな り,各 地 の 豪 将 は これ をつ た え,各 自独 自 の料 理 を ひ ら き,徳 川 氏 に これ をつ た え た。 室 町 時 代 の 有 名 な 料 理 の 流 派 に は 四條 流,大 草 流 な どが で きた。 戦 国 時 代 に は各 豪 族 の も とにす ぐれ た料 理 人 が その 腕 を きそ うよ うにな っ た。 この 時 代 は古 今 伝 授 を は じめ とす 一32一
る秘 伝,伝 授,口 伝 で あ り,料 理 の世 界 もその 例 外 で は な か っ た。 「大 草 殿 よ り相 伝 の 聞 書」 の書 名 の ご と く,ま た四條 流庖 丁 書 を は じめ諸 書 に 「口伝 」,「口伝 有 之 」,「是 ヲロ伝 トスベ シ」,「是 ヲロ伝 ヲ知 ラザ ル推 量也 」,「是 ヲ当流 二秘 ス ル所 也 」 な どの 語 が 随 所 に あ らわ れ て い る。 これ らに関 す る書 の 奥書 な どを少 し く次 に あ げ る。 四條 流庖 丁 聞 書 右 此條 條 相 伝 之 趣 。 努 努 不 可 有 外 見者 也 。 干 時 長享 三 年 二 月 下 旬(1489) 多 治 見 備後 守 貞 賢 在 判 武 家調 味故 実 右一・冊 不 可 間外 者 也 天 文 四年 六 月 上 天(1535)判 書 之 天 文六 年 丁 酉 菊 月 中旬 書 之 四 條 流 隆 重 卿 ヨ リ伝 授 式三 献七 五 三 膳 部 記 銚子 の柄 をつ つ み候 事 。 当流 には な く候 。 公 卿 様 御 成 な ど。 其 外 きつ と し た る時 は 。 片 口に て参 り候 間 。 口 を もつ つ む事 な く候 。 自然 か た 口 な き時 。 もろ 口 に て 候 へ ば 。 口 のつ つ み様 有 之 。 他 流 には 木 の 葉 をゆ い 付 な ど色 色 の 事 候 。 一 向 な き事 に候 。 慶 長拾 一 年 六 月 廿 四 日(1606) 大 草 三 郎 左 衛 門 尉 公 以 判 有 食 物服 用 之巻 右一 巻 者 錐 為 当家 秘 術 書 。依 不 浅 御 懇 望 。口伝 等 無 残 令 伝 授 畢 。蓋 不 顧 外 口 欺。且 非 其 仁可 被 禁 見洩 者 也 。 永 正元 年 九 月七 日(1504) 小 笠 原 備 前 守 政 清 山内 料 理書 武 衛 御 門 山 内三 郎 左 衛 門尉 殿 相 伝 申料 理 事 明 応 六年 十 巳二 月 廿六 日(1497) 於 客 亭 書 之 式 三 献 は 元 服,袴 着,出 陣,結 婚 な ど も饗 宴 の は じめ に 行 う もの で あ る。 この 時,出 陣 なれ ばか ち栗(勝 つ),祝 事 で あれ ば昆 布(よ ろ こぶ),鯛(め で た い)な ど と言 葉 な どに あ やか る もの を 出す こ とに な って い た が,必 ず し も一 定 して い な く,食 べ る こ と もあ っ た。 甲陽 軍 鑑 には 次 の よ うにみ え る。 初 献 御 引 渡 勝 栗 五 昆布 五 漿 斗 五 二 献 御 雑 煮 焼 鳥 五 種 亀 甲 御 箸 三 献
こん ぎ り 御鰭 の物 小 禮 角 之 子 御 箸 鎌 倉 時 代 の武 家 の 宴 に は 梅干,海 月 をす え るの が 例 で あ ったの に ちな ん だ の か,式 三 献 は その 形式 は各 家 各 流 に よ って 小異 は あ る が,ほ とん ど1司じよ うな 形 とな って い る。 式 三 献 七五 三 膳 部 記 は 大 草 流 の もの で あ る。 1海 月 か は らけわ な し 梅 干 五 つ 梅 干 は 四つ も りて,其 上 に一 つ も りて 以上 五 つ 也 。 三 盃 は しの 台 あ り 女房 衆へ は まわ し も りな り。 引 わ た し 2し ほ しほ の も りや う 杉 な り,高 さ1寸 ほ ど也。 は じか み は じか み の も りや うは 杉 な りに 高 さ1寸 ほ ど也 。 う ち身 婚 入 に は鯉 を用 い ず,鯛 を用 也 。口伝 有 之,ひ ば の 枝 を さす 。 3わ たい り 鯛 を用 ゆ る也 。 式 三献 は 食 物 服 用 之 巻 に 「式 三 献 は いつ れ も くは ざ る もの也,は し を もい ろは ず 」 とあ る よ うに,料 理 が 主 で な く,儀 式 の もの で あ る。 大 諸礼 に 「此 三 献 を略 して 公 卿 に の し, く り,こ ぶ を お きて,か は らけ三 重 て 出 来 は 略 儀 の 式 也 。 か や うの 時 も,の み 様 は 同 前 也。 三 方 にか くの 折 敷 に くみ つ け に て候 」 と あ る。 江 戸 時 代 に 広 く一 般 庶 民 の 参 考 書 と し て よ まれ た 女重 宝 記 に は,こ れ が 図示 され て い て,広 く行 わ れ て い た こ とが わ か る。 室 町 時 代 の は じめ 頃 で きた とい わ れ,初 学 教 科 書 と して 室 町 時 代,江 戸 時 代 を通 じて 一 般 に親 しまれ て い た庭 訓 往来 に も式 三献 がの っ て いて,こ れ に よ り一 般 庶 民 生 活 に広 く普 及す るよ うにな った 。初 献 の 料 と して 海 月,婁 斗飽,梅 干 を あ げ,献 数 の 次 第 を の べ て い る。 饗 宴 の 膳 で 室 町 時 代 よ り,各 家 各 流 に お い て,料 理 に贅 をつ くし,技 を きそ っ たの は本 膳 料 理 で あ る。 七 五 三 とい うの は,後 に一 の膳 に七 菜,二 の 膳 に五 菜,三 の 膳 に三 菜 を供 して 出す こ とをい うよ うに な った が,も とは膳 の数 で あ っ た。 膳 の 数 もは じめは 必 ず し も 七 と限 って い な か っ た。 甲 陽 軍 鑑 の 料理 を か い た 図 には 七 つ 膳 を 出 して い るの や,十 膳 ま で 出 して い るの が あ る。奉 公 覚 悟 の事 に は 八膳 出 して い る し,山 内料 理 書 に は三 膳 と引 物 三 膳 が あ げて あ る。 尺 素 往 来 に は 本 膳,追 膳,三 膳,大 汁,小 汁,冷 汁,山 海 苑 池 の菜 の珍 味 を盛 る よ うに と あ る。 大 内 家 壁 書 に は,本 膳 に は お菜 六 つ,二 の 膳 に は御 さ い三 つ,三 の 膳 には 御 さい 三 つ,御 汁 は 本 膳 に一 つ,精 進 二 の前 に二(一 つ ひ や し る)た る べ し とあ る。 宗 五 大 草 紙 に 「本 膳 に お ま は り,七 ぐごす は る。 二 の膳 に御 ま は り五,御 汁 二 つ,又 三 膳 に 御 まは り三 つ,四 の 膳 に御 ま は り三,御 汁 二 つ,五 に お ま は り三 つ,御 汁 一 つ,六 同,七 同 同 」 と あ る。 四條 庖 丁 書 に は,本 膳 に は必 ず な ま す を用 い,魚 の焼 物 を す え,二 の 膳 に は 鳥 の 焼 物 をす え るの が 当 流 の 法 で あ る との べ て い る。 -34
貞 丈 雑 記 七 五 三 の 膳 と云 事,七 と は め し に て もあ れ,七 の 膳 ま で 出 す な り。 五 と は 初 献,ざ う に,そ へ 肴 鯉 の あ つ もの,二 献,ま ん ぢ う,そ へ 肴 うづ らの 羽 も り,三 献 ,た い の あ つ もの,四 献,む し 麦,そ へ 肴 た ち ば な や き ,五 献,や う か ん,又 は す い せ ん か ん, そ へ 肴 一 こ ん 煮,三 と は きや らの 膳 な り,三 の 膳 ま で 出 す な り,料 理 調 様 庖 丁 人 の 家 に 定 法 有,右 は 大 草 流 也,流 に よ り て 替 る べ し,五 五 三 と 云 は 七 五 三 を 略 し て,め し に て も,湯 漬 に て も,五 の 膳 ま で 出 す な り。 四 季 草 七 五 三 の 膳 と云 を,今 世 知 ら ぬ 人 は,本 膳 に さ い 七 つ,二 の 膳 に 菜 五 つ,三 の 膳 に 菜 三 つ くみ 付 る事 と お もへ り,そ れ は 七 本 立,五 本 立,三 本 立 と て 菜 の 数 の 事 な り,七 五 三 の 膳 部 に は あ ら ず,七 五 三 と い ふ は,先 づ 三 と は 式 三 献 な り(引 わ た し ,う ち み,わ た い りな り),五 と は 五 献 出 す を 云,其 五 献 と は ,初 献,雑 煮,添 肴 あ り,二 献,ま ん ぢ う,添 肴 あ り,三 献,あ つ 物1吸 物 の 事 な り 、,四 献,む し 麦,添 肴 あ り, 五 献,や う か ん,添 肴 あ り,右 の 膳 何 れ も組 付 物 あ り,七 と は 飯(湯 漬 に て も 同 じ) 七 の 膳 ま で 出 す を 云 な り。 是 等 の 食 物 の 調 様 は 庖 丁 の 家 家 に 伝 へ て 故 事 あ る 事 な り。 式 三 献 七 五 三 膳 部 記 本 何 もか は ら け の 分 に は わ な り し ほ 引 そ ぎは む た こ や き鳥(か く足 あ り) か うの もの え り き り 鯛 の あ つ 作 し ぎ の つ ぼ 也 え りぬ きは,す る め を 長 さ1寸 程 に 切 て,け づ りて,一 片 づ つ も る 也 ,あ つ 作 と は,鯛 の さ か び て 也,酒 も不 付,は な か つ を もせ ぬ 也, 二 ま き す る め こ の わ た に し(つ ば め 口 を さ す)け づ り こ ぶ か ま ぼ こ か は ら け二 つ か さ な る,下 の か は ら け に て は 湯 を 参 申 候 也,御 し る か け 食, ま きす る め と は,す る め を 巻 て 縄 に て ゆ ひ て い つ る 也,さ て ち と す ち か え て 切 也, 三 小 く し さ し(か く)ひ しほ い り(山 の い も を す き て,一 寸 ば か り に 切 て ,さ じを 作 て,た れ み そ に て し た た め 候 て,上 に あ ま の り を 置 也)ふ な も り え び 也(か く)さ し く ら げ上 に く り花 か つ う ほ す わ た い り さ し く ら げ に か は る 事 な し,只 其 ま ま も る な り, 1注〕 「か く」 とは 折 敷 の か どの 角 を と っ た もの で あ り,一 か く,足 あ り一 とは 折 敷 に あ し の つ い た もの で,現 在 の 三 方 の よ うな もの で あ る。 一一 し ほ び き や き もの 三 つ こ の わ た あ へ ま ぜ 御 か ゆ づ け か うの もの か ま ぼ こ 五 つ ふ くめ 鯛
二 は む た こ 御 汁(何 に て も魚 た るべ し)か いわ ら び か らす み さか び て 御 汁(何 にて も鳥 た るべ し) 三 いか 御 汁(ゑ い)鴨 の 羽 盛 小 くし さし 御 汁(あ つ め) 四 す し 海 月 巻 す るめ 御 汁(ふ な か た いか) 五 い りこの ふ とに に し や き鳥 御 汁(く じ ら) 六 や きあゆ さ しみ ゑ い 七 うち ま る ひ ば り す ず き 四條 家 法 式 七 五 三 本 塩 引 香 物 和 交 蛸 海 月 蒲鉾 小桶 手 塩 食 二 唐 墨 す し 貝 盛 た り 巻 蜴 御 汁(集) 三 羽 盛 舟 盛 栄 螺 御 汁(鯉)御 汁(鰭 物) 四條 家法 式 五 三 三 本 塩 引 香 物 和交 焼 物 蒲鉾 御 汁(集)食 二 巻蜴 鮎 鮨 貝盛 御 汁(鳥) 三 羽 盛 舟盛 辛螺 御 汁(鯛) 四條 家 法 式 五三 二 本 塩 引 香物 和 交 焼 物 蒲 鉾 御 汁(集1食 二 巻賜 鮎 鮨 栄 螺 御 汁(鳥) 三 羽盛 舟盛 御 汁(鯉 〉 徳 川氏 が1603年 に天 下 を統 一 し,平 和 が う ちつ づ き,文 教 を奨 励 した の で,文 化 は大 い に 向上 した。 口伝,伝 授 の 思 想 は うちや ぶ られ,料 理 の 世 界 で も,従 来 の 秘 伝 ,口 伝書が 相 つ い で公 開 され た。 た くま し い知 的 探 究 と技 術 の 修 練 は,豊 富 多 様 に な っ た材 料 と相 ま って,急 速 に 進 歩 した 。 さ きに あ げ た 書 の 外 に,庖 丁 聞 書,和 歌 食 物 本 草(寛 永7年 1630),式 正 庖 丁 料 理 切 形 秘 伝(寛 永19年1642),料 理 物 語(寛 永20年1643) ,料 理献立集(寛 文 14年1971)・分 類 日用 料 理 抄 〔元禄2年1689),茶 湯 献 立指 南(元 禄9年1696)な ど相 つ い で刊 行 され た。 古 料 理書 の 中 で の 名 著 と され る料 理物 語 は,第 一 海 の魚 の 部 ∼第7青 な の部 は 料 理 の材 料 別 に よ る もの,第 八 な ま だ れ い り酒 の 部 ∼第 十 六 さか な(魚 で な く,酒 の さか な の意)は 料 理 の 方 法 に よ る もの,第 十 七 後 段 之 部(う どん,す い とん ,に ゅうめん な ど),第 十 八 菓 子 の部,第 十 九茶 の 部,第 二 十 萬 聞 書 の 部 とな って い て,料 理 万 般 に わ た っ て いて 口伝 とあ る もの もあ り,各 流 に わ た り,更 に新 しい料 理 に も及 ん で い る。第九汁 の 部 の 中 に は 南攣 料 理 に つ い て ものべ て い る。 大 草 流 料 理 書 に は な ん ば ん や きが か か れ て い る。 当流 節用 料理 大 全(正 徳4年17141は 四 條 流 の 流 れ を ひ いて い る書 で あ るが ,こ れ まで 一36一
に出 た料 理 書 を取 捨 選 択 して 編 集 した もの で 武 家 や上 流 町 人 社 会 の人 々 の指 南 とな っ た も の で あ り,当 時 の饗 応 の料 理 につ い て系 統 だてて とかか れ てあ る。 ま ず 本 膳 式正 之 図,七 五 三 式 」E,五 五三 式⊥ll,五三=二式1E,蓬 莱 嶋 台 な どの 図 と注 を あ げ,つ ぎに 御 式正,精 進 式 」E,四 季 常 体,鳥 一 色 な どの献 立 あ り,さ らに献 立 十 二 月節 分 と して 魚,鳥,精 進 な どの 各 料 理 の 取 合 せ につ い て述 べ て あ る。 ヒ五 三,五 五三 御 膳 式lE図 の は じめ に,は ば の しを三 方 にの せ て 出 し,次 に か ち栗5 つ,こ ん ぶ5つ,5本 の の しの引 渡 し,御 雑 煮,御1吸 物 がの って い る。 この の しあ は び は江 戸 時 代 に な って か らの もの で あ る。 四 季草 台 婁 斗 の しあわ び 台慰 斗 の事,今 世 三 方 に伸飽 をす ゑ て客 に供 す るを台 慰 斗 とい ふ な り,古 代客 に 饗 応 の 最 初 に の し あ は び を 供 す る は な し,手 掛 とい ふ もの を供 す るな り,手 掛 は 檜 木 に て,折 敷 の ご と く・Fく六 角 に して,少 しふ ちを付 る,是 上 の 台 な り,其 下 は 六 角 に折 曲 て,細 長 き茎 を 立 る,其 下 に其 茎 を受 くる分 あ り,上 の 台 の 大 き さほ どに して,六 角 に折 曲 げ て,小 し高 き物 な り,以 上 六 角 の物 三 重 の 物 な り,其 の 台 の 上 に 五 色 の 削 り物 を高 盛 とす るな り,此 手掛 を略 し,の しあ は び を台 に 載 て,一 番 に 客 に供 す は しかつ お まるあわび ほ しだ こ うをの ゐ い り な ま こ る な り,削 り物 と は 干 鰹,円 飽,干 鯖,魚 鮒,煎 魚 鼠 を さす, 七 五 三 本 膳 に は,塩 引,あ へ ま ぜ,か うの 物,ふ くめ,や き もの,小 桶,か ま ぼ こ に 湯 く ら げ 漬,二 の 膳 に は,そ き物 こ ん 切,た こ,か ら す み,海 月,が ざ め 御 汁2つ,三 の 膳 に は, 海 老,鰹 さ しみ,鴨,御 汁1つ が あ る 。 五 五 三 本 膳 に は,塩 引,青 鱈,香 の 物,焼 物,か ま ぼ こ と汁 に 飯,二 の 膳 に は,た こ,巻 す る め,酒 び て,そ き もの,に し に 汁,三 の 膳 に は 海 老,し ぎ,指 身 に 汁 が あ る 。 五 三 二 本 膳 に は,か うの もの,青 鰭,か らす み,や き も の,か ま ぼ こ に 汁 と飯,二 の 膳 に は,こ ん 切,三 つ さ さ,た り に 汁,三 の 膳 に は 海 老,小 桶 に 汁 が 三 方 の 上 に の せ て あ る の が 図 示 し て あ る。 祝 事 に は この よ う に し て 饗 応 し た も の で あ る。 故 実 礼 節 聞 書 七 五 三 の こ と,こ れ は 本 膳 に 食,菜 七 つ,二 膳 に 汁 二 つ,菜 五 つ 、 三 の 膳 に 汁 一 つ, 菜 三 つ あ る を祝 の 膳 と もい い て,規 式 の と き に は 必 ず 用 ひ る こ と な り,本 膳 七 菜 とは 翻,鵬 蒲 鎗 焼 物,蔽,香 物,塩 弓1な り,融 は 土 器 に高 立 を して 輪 に 据 ゑ,鼠 桶 は 曲 物 にて 高 三 寸 五 分,経 二 寸 三 分 蓋 の 上 に板 を附 た る な り,蒲 鉾 は板 の 儘 盛 るな り,和 交 は昆 布 を賜 とを交 て盛 る な り,塩 引 は そ の ま ま土 器 にす ゑ,香 の物 は 細 か に 切 りて並 べ 盛 に して,土 器 に据 ゑ る な り,何 れ も土 器 は大 重 輪 に据 ゑ るな り, 公 卿,将 軍 家,大 名 な どの饗 宴 は七 五 三 の様 式 に よ り,常 の招 宴 や宴 会 に は 五五 三,五 三 二 な どに よ っ た。 富裕 な町 人 な どが客 を招 い て 宴 会 を 開 くと きは,種 々 の料 理 をつ ぎか
らつ ぎへ と出 し,食 を供 し,茶,菓 子 をす す め て,終 日,長 夜 の 歓 をつ くす こ とが あ っ た。 節 用 料理 大 全 に で て い る一 例 を あ げ る。 料 理 を もって 出 す鉢,皿,重 箱,へ ぎの 類 な どは省 略 す る。 何 月 何 日 御 式 正 献 立 本膳 鯖 和 物 香 物 汁 食 二之 膳 煮 物 焼 物 汁 三 之 膳 刺 身 汁 直 い り酒 1大 鮒(白 焼)1焼 鳥(鴨) 中酒 1吸 物(か き) 肴 1む き身(か に)1あ は びで ん が く1吸 物(こ み そ) 1か らす み1焼 錐子1吸 物(田 に し) 1小 板 か ま ぼ こ1か らし鱈(は ま ぐ り)1吸 物(ご ま め,水 仙 寺 の り) 1巻 す る め 茶 菓 子 うず ら も ち に しめ ぎん な ん 水 栗 茶 初 むか し 惣 菓 子 大 和 柿 大 梨 後 段 胡 椒 の 粉 温 餉 か らみ 大 根 汁 吸 物(こ も りふ な,あ らめ,つ ぶ さん せ う) 食 煮 物 和 交 1小 鳥 焼1わ た りに し焼 1吸 物(と り,小 え び,は った け)1伊 勢 海 老 1ふ と煮 牛 房1吸 物(こ み そ,山 の い もす りお と し) さかび て 1酒 漸1い り黒 作 り 1た い ら ぎ(小 串)1吸 物(た うふ の うば) 1酢 もつ く1め ざし色 付 焼 1た た き菜 の塩 ず1あ は び の酢 貝 こ も り 1子 籠 の鮒 の鮨1小 葉 か れ い 1吸 物(鳥 の も もげ)1酒 麩(切 こん ぶ,む め ぼ し) 1五 島す るめ1こ の わ た 一38一
1吸 物(小 さ ざ い か ら共 に,小 し い た け) 茶 菓 子 く り こ も ち,に し め,川 た け, 茶 は ば む か し 菓 子 ら く が ん,春 の み ど り,白 雪 か う,か る や き,丸 せ ん べ い (注)料 理 物 語 に よ る 生 垂 な ま だ れ は,味 噌1升 に 水3升 入 もみ た て,ふ くろ に て た れ 申 候 也 い り酒 煎 酒 は,か つ ほ1升 に梅 干15∼20入,古 酒2升 水 ち と た ま り少 入,1升 に せ ん じ こ し さ ま し て よ し,又 酒2升,水1升 入,2升 に せ ん じつ か ふ 人 も あ り, 冷 汁 い つ れ も に ぬ き に て 仕 立 候,も つ こ,あ ま の り,の ろ ふ じ に て も 入 よ し イ 生 蓋,め う が,か ま ぼ こ,あ さつ き な ど も入 よ し, あ つ め 汁 中 味 噌 だ し くは へ よ し,又 す ま し に も仕 候,大 こ ん,ご ぼ う,い も,た う ふ,竹 の 子, く し あ は び,ひ ふ く,い り こ,つ み 入 な ど も入 よ し,其 外 色 色, 酒 び て 鯛,あ は び,た ら,さ け,あ ゆ の 塩 引,か らす み,か ぶ ら ほ ね,鶴,膓,鴨,右 の 内 い か に も塩 め よ き を 取 あ は せ つ く り も り候,け ん くね ん ぼ,其 外 作 次 第,だ し 酒 か け て よ し, 小 鳥 や き ふ な の3∼4寸 ば か り あ る を,3枚 に お ろ し く し に さ し,山 椒 み そ を つ け や く 事 な り, こ い,な よ し な ど も よ し, に し 辛 螺 か ひ や き,こ ろ ば か し,か しみ は ひ や し るに入 ま きす るめ す るめ を洗 ひ,く ず の粉 を少 しふ りま き,わ らに て ゆ ひ候 て,湯 煮 を し さま し候 也 。 ふ くめ ふ くめ の 仕 様,干 鯛 を あぶ り,板 の上 にて そ と た た き,む し りす り候 て よ し,か ます, 鮫,塩 引,き す ご何 にて もい た し候 。 青 あへ
青 あへ はい りこ を よ くゆ に て だ し,た ま りに て よ く煮 候 て,あ を まめ をす り,塩 か げん に して あへ 申事 也 。 (注)大 草 家料 理書 に よ る 酒 びて 酒 びて とは何 魚 に て も出 し酒 許 に塩 を入 て 酢 を少 し加 ふ る也 。 (注)四 條 流庖 丁 書 に よ る 海 月 海 月 ノ事,差 ミ海 月 ノ時 モ,酷 ハ クル ミ酷 ニテ参 ラ スベ シ,ア へ 海 月 ノ時 モ クル ミ酢 ニ テ ア エ テ可 参 候,花 鰹 能 入 ベ シ,カ ラ ミニ ハ生 姜 ヲ可 用 也, (注)庖 丁 聞書 に よ る そ ぎ物 そ ぎ物 とは干 鯛,こ ん き らた らふ と くそ ぐ事 也 。 こん 切 こ ん切 と いふ は干 鰹 の事 也,和 交,削 物 に も用, あへ 青 鮪 青 鮪 は青 ぬ たに て 和 た る を いふ 也,春 三 月 の う ち は賞 翫 也 。(大 草 殿 よ り相 伝 之 聞書 に もあ り) (注)大 草 殿 よ り相 伝 之 聞 書 に よ る か ま ぼ こ か ま ぼ こは 五 つ 又 三 つ も も り候,う を を能 す りて す りた る時 い り塩 に 水 をす こ し くは へ,一 つ にす り合 板 に付 る也,付 や うは,か さ を たか く本 う らお な じや うに付 べ し,又 五 つの 時 は か さを ひ き く付 て よ く候,あ ぶ りや うは 板 の 方 よ りす こ しあ ぶ り,能 酒 に鰹 を けづ り煮 て,た し候 て魚 の上 にな んべ ん も付 あぶ るな り。 料 理 物 語 第 十 七 後 段 之 部 に,う どん,切 麦,葛 素 麺,し よ よ め ん,水 せ ん,水 とん,き ん とん,蕎 麦 き り,麦 き り,に うめ ん,す ず りだ ん ご,雑 煮 の つ く り方 が か い て あ る。 江 戸 時代 の婦 人 百 科 事 典 と して 代表 的 の もの で あ る女重 宝 記 に,饗 宴 の 図,ひ きわ た し の 図 が で て お り,結 婚 式 の一 般 心 得 に つ い てか い た女 子 の参 考 書 の 女 訓 蒙 図 彙 には,結 婚 式 の と きの 湯 漬粥 な どの 食 い や う,給 仕,膳 陪 の次 第,膳 陪 の あ げや うな どにつ いて の べ て い る。 現 在 の 本 膳 料 理 は菜 の 種 類 に よ り一 汁 一 菜,一 汁 五 菜,二 汁 七 菜,三 汁 七 菜,三 汁 九 菜,三 汁十 一 菜 まで あ る。 菜 の 種 類 に よ って 膳 の 種 類 を ます 。 配 膳 の 順 序 を三 汁 七 菜 の例 に よ って の べ る と,ま ず 客 の 正 面 に 本 膳,二 の 膳 を本 膳 の 右,三 の膳 を左,与 の膳(四 を 一40一
い み与 の字 を つ か ふ)を 本 膳 と二 の 膳 の 向 側(膳 向 と い う),五 の 膳 を 本 膳 と三 の 膳 と の 間 に お く。 本 膳 に は 一 の 汁(み そ 仕 立)飯,香 の 物,な ま す,つ ぼ(魚 の す りみ の 蒸 し もの の く ず 引 な ど),二 の 膳 に は 二 の 汁(す ま し 仕 立),ひ ら(煮 し め な ど),ち よ く(あ え も の な い り しゆ ど),三 の 膳 に は,三 の汁(う しお仕 立),さ し み,繋 酒,な ど与 の 膳 に は焼 物(鯛 の姿 焼 な ど),焼 物 に そ えて鰹 節,引 物 な どを供 し客 は 持 ち帰 るの が習 慣 とな って い る。 五 の膳 は 台引 とい い,組 肴,口 取,硯 蓋 と もい う。 膳 は祝 事 に は蝶 足 膳 をつ か うが,略 式 に は猫 足 膳 をつ か う よ うに な っ た。 「茶 人 が客 を招 待 して,茶 よ り前 に飲 食 を 出 す の を惟 石 とい ふ 」 と倭 訓栞 に あ る が,江 戸 流 行 料理 通 大 全 に 「茶 事 会 席 料 理 心 得 之 事 」 に 「会 席 料理 は庖 丁 の 花 美 を好 まず,食 す る もの の 味 は ひ を本 意 とす 」 とあ り,「 会 席 は二 菜 三 菜 に 限 り数 菜 な らね ば,塩 梅 の 宜 き を元 とす 」 と あ り,鮪,汁,椀 盛,焼 物,す ま し吸 物 な どに つ いて のべ て い る。 料 理 早 指 南 大 全 には,1飯,2汁,3膳4附 合,5手 塩 皿(香 物),6平 皿,7 大 ちよ く,8茶 碗 をあ げて あ る。嬉 遊 笑 覧 に よ る と 「会 席 料 理 とい ふ は,薬 研堀 の 川 口 忠 七 鳴竹 始 な り」 と あ る。 会 席 料 理 は 江戸 時 代 に茶 人,文 人 は じめ 風 流人 の 間 に 愛 好 され て い たの が一 般 の 人 人 の 間 に 行 わ れ る よ うに な り,後 に は簡 便 さか ら広 く庶 民 の 招 宴 に 用 い られ る よ うにな り現 在 に及 んで い る。 参考 資料 占事類苑 正,続 群書類従 家政学 資料集成(江 戸期) 故 実叢 書 日本風俗史 雄山閣