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カリキュラムの計量化に関する一考察 利用統計を見る

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(1)

カリキュラムの計量化に関する一考察

(昭和57年8月31日受理)

保坂桂子

武藤真三

伊藤千秋

A Consideration of Computization of Curriculum

KeikoHOSAKA ShinzoMUTO ChiakiITO

      Abstract  The calculation methcd of the promotion probability to the fourth year grade as a func− tion of the“ability”of a student, which is defined as the probability of passing an ex・ amination in the first challenge, is proposed. It is obtained that the theoretical value of this probability goodly fits the practical one. By using this method, it is able to surmise the number of promotion to the fourth year grade from the ability distribution cf the students in the second year grade. 1. まえがき  学問・技術の進歩に伴い,大学教育内容も常に新し いものを導入し,古いものとの調和・体系化を図って ゆかねぽならない。そのためにカリキュラムの改善が 図られ,またその実をあげるために必修科目,履修順 序,進級条件などいわゆる履修条件が課せられる。こ の履修条件を適切に設定できるかどうかはカリキュラ ムの死活にかかわってくる。従来,この履修条件の設 定において難易あるいは厳しさなどが直感的にとらえ られてきたが,それを数量的に表現できればカリキュ ラムの改善の指針として有益である。本論文では履修 条件などの‘‘厳しさ”をはじめカリキュラムの数量的 表現を行うため,まずある学生の“実力”pを“申告 した科目数のうち一度で合格する科目数の割合”と定 i義した。また,この実力pと履修条件を満足する確率 R(p)との関係などを理論的に明らかにした。また, X年度,Y年度入学の本学電気工学科および電子工学

科学生:XE生+XD生,およびYE生+YD生を例に

とり4年次進級確率の理論と実際とを比較した。その 結果両者は非常によく一致し,理論の有効性が確かめ られた。 2. 4年次進級確率の計算方法  カリキュラムは科によってさまざまだが,しかし, どの科でも同じように4年次進級条件を「ある部門 (たとえぽ基礎科学部門,基礎工学部門など)から最 低○○単位以上取得しなけれぽならない」というよう に定めている。そこで,表一1のように4年次進級条 件に関わる部門ノ(科目総数N」)に属する科目に番 号iをつけ,その科目の単位数をUゴ(i)で表わし, また,学生はこの部門∫中の全科目を履習するものと 仮定する。また,一般にどの科目においても再受験の 機会を認めているのでその可能な再受験回数をr(の で表わす。ここでは「ある科目はとりわけ合格しやす いが,ある科目はむずかしくて合格しにくい」などの ような科目に対する重みは考えないことにする。すな わち,ある科目iの合格確率p。(のは学生の実力(後 表一1諸量の説明 部門」中の科目名i   同 単位数 U」(i) 可能な再受験回数 r(i) 各科目の合格確率p。(の  同 不合格確率q。(i) 部門元における進級条件 1   2・・・・・・・・・… i−・・・・・・・…NJ 〔ノ」(1)乙ノ」(2)… こノ」(i)・一… Uj(Nj) r(1)r(2)・・… 一・・r(i)・・・…  r(Nj) Pe(1)Po(2>・・… Po(i戊・・Po(Nj) 90(1)90(2)・・・… qo(i)・・・… 90(Nj) ΣU」(の≧U」(U」:       最小必要単位数)

(2)

で定義される)とr(のにのみ影響されると仮定する。 r(のが各科目で同一であれぽp。(1)=……=p。(N」) である。さて,この部門∫中での4年次進級のための 必要最小単位数をUゴとすると,進級条件は   部門∫の総取得単位数≡Σ砺(i) ;) Uゴ  (1)       i       (部門∫の合格科目) である。ところで,学生の単位のとり方(合否の組合 わせ)は表一2中の例で示すようにいく通りも存在す る。その中で,式(1)の条件を満たす組合わせに番号le (=1,2……1)をつけることにする。ここで科目ゴが 合格する確率をp。(の,不合格となる確率をqo(i)と すると,le=1と番号をつけた全科目が合格する組合 わせ

  ⇔㊨㊨……㊨……㊨

が生ずる確率は,積事象であるから   Po(1)・Po(2)・Po(3)・・・・・… Po(i)・・・・・… Po(Nj) となり,このときの取得単位数は   Uj(1)+U」(2)+Uゴ(3)+……+U」(i)+……         NJ    +Uj(N」)=Σσゴ(の(〉σゴ)         i=1 である。 また,le・== 2と番号をつけた科目1が不合格で残りの 科目はすべて合格となる組合わせ   ⇔ ㊨ ㊨……㊨……㊨ が生ずる確率は積事象   q・(1)・P・(2)・P・(3)・……・P。(i)・……・P。(N」) であり,このときの取得単位数は   0十Uゴ(2)一}−Uプ(3)十・・・… 十UJ(i)十一・… →−Uj(Nj)  =Σu,(i)(>U」)   (Uj(1)は除く) 同様に,le・・1と番号をつけた合格の組合わせが生ず る確率は   q・(1)・Po(2)・q・(3)・……・P。(i)・……・q。(N」) で与えられ,また取得単位数は   0+Uゴ(2)+0+……+Uゴ(i)+……+0  =ΣU」(の(〉σゴ)   (不合格科目の単位数は除く) となる。このように,条件式(1)を満たすすべての合否 の組合わせを選び出し,それらの組合わせの生ずる確 率を求めて和をとれば,すなわち,ある“実力”をも つ学生の部門∫の進級条件を満たす確率Rゴは   R」=〔P・(1)・P・(2)・Po(3)・…・P。(の・…・P。(N」)〕       (le=1)     +〔qo(1)・Po(2)・Po(3)・・…Po(i)一        ・Po(N」)〕(le=2)     十……… 表一2部門∫における単位取得の際の合否の組合わせ例

科目名li2

3・・… −i・会・…Nj 合否の組合わせ (取得単位数) Σu,(の〉σゴ ΣU」(のくUj ⇔  ㊨  ㊨……⇔……㊨k=1 [ノ」(1)十Uj(2)十UJ(3)十…    +U」(i)+…+U」(N」) ⇔  ㊨  ⇔…・・⇔・・…⇔ k・=2 0十UJ(2)十t/j(3)十・一一…  +Uj(の+……+Uj(N」) ⇔ ⇔ ㊨一・㊨…・・⇔k=1 0+U」(2)十〇十…+U」(i)+…+0 ⇔  ⇔  ⇔…・㊨・・…⇔ Uj(1)十Uj(2)十〇十…十〇十…        +UJ(N」) ⑧  ③  ⇔:・・@…・㊨ 0十〇十〇十……十〇十……十〇     +〔q・(1)・P・(2)・q・(3)一・…P・(i)−q。(N」)〕        (k=1)    (2) となる。この式(2)を整理すると     l  Nj   Rゴ=Σ(∬Pik)         (3)     k=1‘=1 と書きあらわせる。ただし      p。(i):式(1)の条件を満たす組合わせ(番

    f

         号le)において,科目tが合格の   Pih=

    1

         とき      qo(の:式(1)の条件を満たす組合わせ(番          号le)において,科目iが不合格          のとき       (4) である。結局全部門に課せられている条件を満足する 確率,つまり,4年次進級確率Rは式(3)を用いて次式 のように表わせる。   Rテ(IL.R」      (5部門)) また,Po(の, qo(のは学生の“実力”と関連する量で ある(3.4.参照)。 3. 学生個々の実力の定義  ある科目ゴが合格するか否かは,つまり,Po(の, qo(のは学生個々の“実力”によってきまる。したが って,式(5)の4年次進級確率の計算を実行するには学 生個々の実力を数量化しておく必要がある。この“実 力”の定義のしかたはいくつか考えられるが,筆者等 は「申告した科目数のうち一度で合格した科目数の割 合」を以ってその学生の実力と定義した。

(3)

七i

OYE

●YD     ●o ●o     te§・・

4。°548。

  ●Oo

°紳゜

   0     0.2    0.4    0.6    0.8    1.0       実力P 図一1 3年終了時点での実力と換算点との相関   。Σ(一度で合格した科目) ρ=@i(申告した科目) (6) 以後はこの定義による実力をpで表わすことにする。 ここで従来本学の電気工学科・電子工学科(略してE ・D科と呼ぶ)で採用していた実力を示す量とみられ ていたもの,すなわち,取得した科目の優,良,可の 単位数にそれぞれ3点,2点,1点という荷重を掛け て和をとった“換算点”と実力pとの相関をYE生+ YD生を例にとって図一1に示す。この図から明らかな ように,筆者らの定義した実力pと従来の実力を示す 量との間には比較的よい相関関係がある(相関係数 0.73)ことがわかる。このことからもこのpは学生の 実力を表わす有効な数量の一つであるといえる。 4. 実力と合否確率との関係  さて,科目間の単位の取得の差は科目に対する重み は考えず再試験回数r(i)の違いだけで生ずると仮定 したので,まず,ある科目iを一回目で合格する確率 はそのままpで与えられる。しかし,この時は不合格 でも一・回目の再受験時に合格する場合がある。この場 合実力もある程度増加していると考えられる。その実 力増進割合をaで表わすと実力は (1+a)pになるの でこの時の合格確率は(1−p)・(1十a)pとなる。二回 目の再受験時に実力は(1+2a) pに増加するので合格 確率は〔(1−p)・(1−(1十a)p)〕・(1十2a)p となる。 同様にしてn回目の再受験時に合格する確率は   n−1   {∬〔1−(1十ra>1り〕}●(1十na)1り      (7)   ア=0 と表わせる。したがって,ある科目iの合格確率p。(の と不合格確率qo(のは        r(i) n−1   P。(の=カ+Σ{〔π(1−(1+ra)P)〕・(1+na)カ}          r=O        n=1        (8)   qo(i)=1−Po(i)      (9) で与えられることになる。ただしPo(i)≧1の時には   P。(i):1,q。(i)=0         ⑩ とする。この式(8),式(9)を式(5)に代入すれば,実力p である学生に対する4年次進級確率1ぞが計算できる。 なお,ここで導入した実力増進割合a(0≦a≦1)の値 としては過去数年間の学生の成績データを参考にする とa ・O.4付近が適当のようである。 5. E・D科における4年次進級確率の計算例   (1日カリキュラムの場合)  〔1〕 4年次進級確率の理論計算  カリキュラムは各学科によって異なるがここでは本 学のE・D科を例にとって示す。昭和49年度から昭和 54年度の入学生に適用したカリキュラム(以後このカ リキュラムを旧カリキュラムと呼ぶ)によると,E・ D科の学生が卒業論文を履修するためには,基礎科学 部門および基礎工学部門のうちからそれぞれ25単位以 上,合計55単位以上を修得し,かつ,その中にE・D 科で固有に課している卒業論文履修条件である基礎科 学部門の必修6科目18単位中14単位,基礎工学部門の 必修10科目18単位中15単位以上含まなければならな い。しかし,過去の事例ではE・D科固有に課してい る卒業論文履修条件を満たす者は他の条件もほとんど 同時に満たしている。それ故,「4年次進級の条件」 としてはE・D科固有に課している卒業論文履修条件 (表一3参照)のみを考慮すれぽ充分である。この表一3 で示したE・D科旧カリキュラムの進級条件下におけ る実力pの者の4年次進級確率を式⑤から計算した結 果を図一2に示す。図一2の計算結果はpが0.6以上であ れぽ4年次に進級できる確率がきわめて高いことを示 § 100 αニ0.5   0.3   0.1

陪[〆

    O.2      0.4       0.6       0.8      1.O       P 図一2 4年次進級確率の理論値(a:実力増進割合)

(4)

表一3 E・D科旧カリキュラムにおける4年次進級の条件 部門 ノ 1 基 礎 科 学 部 門 2 基 礎 工 学 部 門 科   目   名    (i) 代数学および幾可学 微分積分学第一   同  第二 解  析  学 微分方程式第一   同  第二 電 気 学 甲 電気磁気学第一・    同 第二 電気磁気学第一演習    同 第二演習 電気工学基礎実験 電気回路第一 電気回路第一・演習 電子現象論 電子回路第一一 単位数 U」(i) 4 4 2 4 2 2 2 2 2 1 1 1 2 1 4 2 履修年次 1 1 1 2 2 2 1 1 2 1 2 2 2 2 2 3 可能な再受験 回数 rj(i) 2 2 2 1 1 1 2 2 1 2 1 1 1 1 1 0 科目数  Nj 6 10 4年次進級の条件 (最小必要単位数UJ) 14単位以上 U,=14, Σσ、ω≧σ、 15単位以上 U2=15, Σu、(i)≧Lr2 している。また,このR(p,のの曲線の上側の面積 が大きいほど(斜線部の面積が小さいほど)進級しに くいことを表わす。つまりカリキュラムの履修条件ま たは進級条件が厳しいことを表わすので,ここで,カ リキュラムの履修条件の厳しさの程度を示す量として 次式の留年指数RSを導入する。

  RS−・一∫IR(P・ a)dP    ao

従来,カリキュラムに課せられている履修条件の“厳 しさ”を漠としてとらえていたが,上式によりそれを 一数量的に把えることができる。この式⑪を用いてE・ D科の旧カリキュラムにおける留年指数を求めると O. 47となった。   〔2〕 理論と実例との比較検討

 図一3,図一4には,XE生+XD生,およびYE生+

YD生を対象とした3年終了時点での実力pをもつ学 生数の分布A(p)(白棒グラフ)と実際に現役で4年 次に進級した学生数の分布(斜線棒グラフ)をρに対 して表わした。また,図中にはこれらから得られる実 際の4年次進級確率(×印),および式(5)による理論 値(破線)とを合わせて示した。図一3,図一4から明ら かなように,理論値R(p,のの曲線(破線)と実際 の4年次進級確率(×印)とはかなりよく一致してい る。また,再受験時の実力増進割合は40%(a=0.4) 程度とみてよいこともわかる。さらに,この4年次進 級確率R(p,のとクラスの実力分布A(p)とからそ のクラスの4年次進級割合PRが次式によって与えら れる。    PR≡2Vp/N¢       ⑫ 40 2 30 ) rd 20 <  10 [:コ実力分布 ロ実際の4年次  進級人数分布  実際値 理論値 R (α==0.4)1”一一St−一一x− 100 80 60蕊  ) 40 20 0   0  0.11 0.21 0.31 0.41 0.51 0.61 0.71 0.81 0.91   1  ∼  ∼  1  ∼  ∼  l  l  ∼  ∼  0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 0.60 0.70 0.80 0.90  1.0       実 力 P 図一3実力分布,4年次進級分布および4年次進級確率    (XE生+XD生)    〔]実力分布    IZZ171実際の4年次  40   進級人数分布   こ≦30   実際値 彗・・  10 理論値 R(・=O.4)/一゜「一一一ve−’x 100 一80 60蕊 40 20   0  0.11 0.21 0.31 0.41 0.51 0.61 0.71 0.81 0.91   1  ∼  ∼  ∼  ∼  ∼  ∼  ∼  l  l  OJO O.20 0.30 0.40 0。50 0.60 0.70 0.80 0」9e  1.0       実力P 図一4実力分布,4年次進級分布および4年次進級確率    (YE生+YD生) ただし,   N,≡クラスの人数    一∫:A(P)dP≒iA(P・)dP・   Np=4年次進級人数

(5)

   一∫IR(P・ a)・A(P)dp   ⑬

   ≒ΣR(Pt,の・A(Pt)AP

    l

そこで,図一2のa=0.4の時の4年次進級確率R(p, a)と図一3のA(p)の分布より式a2)を用いてXE生+ XD生(114名)の4年次進級割合1)Rを理論的に割り 出すと61.4%となり,この値は実際の4年次進級割合 56.7%と比較してかなりよく一致している。同様に YE生+YD生(112名)の場合には図一2と図一4より 式a2)を用いて理論値70.2%が得られ,この場合も実際 値66.1%と比較的よい一致がみられ,この計算方法の 有効性が実際に確かめられた。 6. 2年次終了時点での4年次進級割合の推定  5で述べたように,あるクラスの実力分布A(p)が わかれば式⑪によってそのクラスの4年次進級割合 PRを求めることができる。ところでE・D科の場合, 進級条件に関連する科目はほとんど1,2年次に開講 されているので,2年次終了時点でクラスの実力分布 A(p)がほぼ確定する。それ故,2年次終了時点で4年 次に進級できる学生数を推定することが可能である。 たとえぽ,YE生+YD生の2年次終了時点での実力分 布A(p)を図示すると図一5の白棒グラフのようになっ ている。この実力分布A(p)と図一2のa=O.4の時の R(p,のとから式a2) ULよって4年次進級人数の割合 PRを推定すると65.8%となり,この値は1年後の実 際の4年次進級人数の割合66.1%と非常によく一致し た。このように,3年次終了を待たずに2年次終了時 点で得られるクラスの実力分布と図一2とから4年次 進級人数割合(現役)を推定することができる。 30

ス20

<10

0 口実力分布(2年次) ォ推定の4年次進級人数分布   0  0.11 0.21 0.31 0.41 0.51 0.61 0.71 0.81 0.91   ∼  1  ∼  ∼  1  ∼  ∼  ∼  1  ∼  0.10 0.20 0.30 0.40  0.50  0.60 0.70 0.80 0.90  1.0         実 力 P 図一5 2年次終了時点での実力分布と4年次進級人数の   推定(YE生+YD生) 7. あとがき  本論文ではカリキュラムを数量的に取り扱うために 実力pを導入し,これと履修条件を満足する確率(進 級確率)との関係,および,同条件の“厳しさ”との 関係(:留年指数)などを明らかにした。また,XE 生+XD生, YE生+YD生を例にとり,4年次進級確 率などに関し理論と実際とを比較検討した。その結 果,両者は非常によく一致し,本論文の方法の有効性 が確かめられた。また,本論文の方法の応用として, ほぼクラスの実力分布が判明する2年次終了時点の段 階で4年次に進級してくる人数を推定することも可能 である。  以上のように,本論文の方法はカリキュラムの計量 化,進級人数の予測などに有効なばかりでなく,合理 的なカリキュラムの編成など教育方法改善に関する有 益な指針を提供するものと考えられる。

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