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(1)

論   文

バイブレーションラッピングマシンの運動解析

向山芳世

山口政義

(昭和50年8月30日受付)

Motion Analysis of Vibration Lapping Machine

YoshitsuguMUKOYAMA MasayoshiYAMAGUCHI

       Abstract  Motion analysis of the work is the Very important subject for the precision work of hard and brittle materials by means of loose abrasives.  In this report, the observation of motion loci and theoretical analysis of lappiog speeds were made on the lapping machine, that machine vibrates a under plate(lap−plate)and processes the work by making use of eccentrically driving shaft and a few springs set on the circle of the fitting part of under plate. The results are as follows. 1)The loci are drew by use of proper value in analytical result was the same result with   the obselvation. 2)The adapted loci and lapPing speeds are clearly obtained for variable working condtions. 1. まえがき  水晶,サファイヤー,セラミックスなどの工業用硬 脆材料に対する高精度加工の要求はますます増大して きており,これに付随して加工法および加工装置の開 発,改善が重要な課題になってきているが,加工法, 加工装置の開発,改善を阻害する事項として加工機構 の解明が十分でないことがあげられる。加工機構を明 確にするには,・砥粒の運動とともに工作物の運動解析 が必要かつ重要な課題の一つとなる。しかし,遊離砥 粒を使用する加工法において,ラップ上の工作物の運 動はできるかぎり,複雑で広範囲に分散する軌跡を描 くことが,加工精度加工特性向上のうえから有効で あるとされていることもあって,この点の検討が遅れ ている。  本報告は,下皿(ラップ)が振動する方式のラヅピ ソグ装置における運動軌跡の観察と,工作物の運動解 析を行ったものである。 2. バイブレーションラッピング装置について バイブレーショソラッピソグマシソは,通常研摩皿 として使用する下皿の取付部駆動主軸の軸偏心と,下 皿取付部の周辺にセットしたバネを利用して,下皿 (研摩皿)を振動させ,加工するラッピング装置であ る。この装置は,主に硬脆材料の精度の高い加工に多 く使用され,優れた効果をあげつつあるものである。  装置の概略は図一1に示す。主軸はモーターAからプ ーリをへて回転駆動される。主軸の軸方向直角にウエ イトBが取付けられ,主軸とともに回転する。また, Cの部分に偏心軸がセットされ,その上部に遊びがあ り,下皿取付部が強制回転しないようになっており, 下皿取付部周辺の3箇所に取付けられたバネEととも に下皿をゆさぶる。このバネは同時に,下皿の回転, D C 図一1装置の概略図

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バイブレーションラッピングマシンの運動解析 ,Fy汀 移動を阻止する役目をも果している。このように軸偏 心とバネとの相対的な運動によって,下皿を振動させ る。  この振動により,上皿に張りつけた工作物は下皿上 を適宜移動しながら加工が進行する方式であり,この 点に他と異なる大きな特長をもつラッピング装置であ る。 3.運動軌跡の観察  3. 1観察方法  遊離砥粒使用によるこのラッピング装置において, 研摩皿の振動に関連して,研摩皿上の工作物の移動, 回転運動の様相と速度は,工作物の運動軌跡として研 摩皿上に描かれる。一方,工作物の運動軌跡はできる 限り複雑であり,分散したものであることが加工上重 要であり,有効であることになるが,これは加工にあ ずかる砥粒の摩耗に関係する加工能率の問題と,研摩 皿の摩滅に関係する加工精度への影響などがあり,工 作物が研摩皿上を適度に回転しながら,広い領域を平 均に,くまなく移動することが良好な結果を得ること につながる。この装置では上皿(工作物)の重さ,大 きさ,バネの強さ,主軸回転数,取付けウエイトBな どにより,研摩皿上の工作物の運動が影響を受けるこ とになる。もち論ここで加工の主役である砥粒の存在 を考慮する必要があるが,実際の加工において,研摩 皿にルーズな形で存在する砥粒は,平均的には同一粒 径の砥粒が均一に分布していると考えて良く,このこ とは他の条件による運動軌跡への差異には影響がきわ めて少なく,また,砥粒の存在は軌跡の観察を困難に することもあって,検討から除外した。  観察に当り,下皿の平面度,上皿および工作物(試 片)の精度とこれらの取付け精度なども重要である。 この点表面測定機,空気マイクロ,ダイヤルゲージな 、/u’〉   ,.↓ご⊥ 」一 glaSS pen = sprlng weight 図一2 軌跡の観察方法 どにより,十分な測定を行い,実際に加工する大きさ に相当する試片においては,軌跡への影響がない精度 であることを確かめて実験を行った。  観察方法は図一2に示すように,油煙のついたガラス 板を下皿Dの上に固定し,試片の中心から半径r.の円 周上に,等角度(120°)でかつ同一高さの鉄ペンを取 付け,これを下皿上にあるガヲス板の上にのせ,装置 を駆動してガラス板に軌跡を描かせた。装置の駆動時 間は軌跡観察を容易にするために短時間(数秒∼数十 秒)で打切った。この場合,鉄ペソの取付け精度には 十分な注意を払うとともに,観察回数を多くして,鉄 ペン取付けなどによる誤差の影響を少なくした。な お,実際の加工の際はこの試片が上皿となり,これに 工作物がつけられることになる。  3. 2 観察結果  観察結果の一部を図一3∼6に示す。説明の各記号は それぞれ次のようになる。W(kg);工作物(試片)の 重量,r。(mm);試片の中心から鉄ペソ取付け中心まで の距離F(kg);バネに加わる力, t(s);軌跡観察のた めの装置駆動時間,」V(rpm);主軸回転数。  軌跡図にみられるように,軌跡はトロコイド曲線を ある方向に圧縮した形と考えられる。これらの軌跡図 において,曲線が密になっているところでは,試片の 動きが鈍くなり,逆に,曲線が疎になっているのは試 片の動きが早く,移動が活発であることを示してい る。また,図一3のような軌跡を描く場合は,試片が下 皿上で飛びはねながら移動していることになる。試片 の回転は軌跡が方向転換するところで起こっており, 図一4は回転のない軌跡であり,図一5は回転をともなう 軌跡を示している。  実際の加工の際に問題となる工作物の大きさ,すな わち,試片の大きさ(鉄ペソの位置)および重量と軌 跡との関係をみると,試片の大きさによっては軌跡の 差異はほとんど認められない。試片重量(W)はバネに 加わる力との関係もあるが,一般にある程度重量が大 きい方が運動領域は広くなる。試片の回転は試片重量 が小さい方が多くなる。  軌跡に大きく関係する要素はバネに加わる力であ り,バネに加わる力(F)が増加すると,運動領域は狭 くなり,試片は回転しなくなってくる。さらにバネの 力を増していくと,試片が下皿上で飛びはねるように なり,加工には好しい結果が得られなくなる。試片の 回転がなくなる限界および試片の飛びはねが起こり出 す限界は,試片重量が小さくなるにつれて,バネの力 の大きい方に移動する。しかし,この装置で通常加工

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昭和50年12月 山梨大学工学部研究報告 第26号 1. e,  ・べ厚  ・…’、,−i・ウ.         撒:娠・・ 1言 ’ 鮮  ’ が  び了 図一3 運動軌跡 (1) N=1150,・pm rα=15mm IV=151.309 1; −15kg t =20sec ・、・碇いべ戚 N=1150rpm ra=15mm lル㌧=81.42g F=10kg t二・30sec 竃 パ\、、.“一.・) ’ 図一4運動軌跡 (2) N=1150rpm r。=15mm W=151.30g F=10kg t:=15sec すると考えられる工作物重量(上皿重量も含む),す なわち,試片重量の範囲(10∼2009)では,バネに加 わる力が2Gkg以上になると必ず飛びはねが起こるよう になる。  主軸回転数が増すと,軌跡の分散度と回転の度合い が増してくるが,加工に適当な軌跡,すなわち分散 度,回転回数,飛びはねの有無などからみるとある限 界があり.本装置では大体1200rpm近辺が最適のよう である。図一6は加工に最適であり,良好な結果が得ら れる軌跡の一例である。

4.運動解析

 下皿の1点の動きと,試片の1点の動き(試片に取 付けた鉄ペソ先端の動き)との相対運動により,下nll. 上の工作物の動き,すなわち,研摩速度が得られるも のとして解析を行う。ここで考えなければならないこ とは,工作物の位置による速度の差異と,工作物が回 転することによっての速度の差異である。そのため, 工作物の各点における瞬間速度(瞬間研摩速度)を求 めたあとで平均研摩速度を求め,これら速度差異の影 響を少なくするようにした。  解析は,試片が回転しながら動いていく場合と,回 転なしで移動していく場合とに分けて検討した。  4.1 下皿の1点Aの動き 図一5 運動軌跡 (3) 図一6運動軌跡(4) N=1150rpm r、=10mm I↓’=30.10g F=5kg t二20sec 図一7運動解析 (1) 下皿上のある1点Aの動きは,図一7に示すような楕 円運動である。座標系0一ξ 軸をξ1,短軸をη1とすると, うに書き表すことができる。 ηにおいて,橋円の長 楕円の方程式は次のよ

;:;認二綴:幻

(1)式を座標系O−x、,yiに座標変換すると   Xlニξ1COSδ・.・eos(ωオ)一η1sinδ・sin(ωり   y1=ξ、Sinδ・COS(tOt)+ηICOSδ・Sin(ωり (1) (2)

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バイブレーショソラッピングマシソの運動解析  ここにδは回転角であり,実際の軌跡との関連で負 の方向にとった。          π2V(2)式に角速度ω=        を代入すると          30 ::::::::::獣:::㌘簾;}③  となる。  4.2試片に取付けた鉄ペンBの動き  4.2.1試片に回転がともなう場合  図一8において,0からr、の位置に鉄ペンがあり,鉄 ペンをつけた試片が,矢印の方向に速度b(平均的な 意味を表す)で回転しながら移動していくとする。こ のとき試片の回転数を凡とすると,鉄ペンBの運動 図一8運動解析 (2)

  y

(b) y (a) 図一9運動解   析 (3) 方程式は,図一9(a・b)に示してある試片の直進と回転 とを考慮すると次のようになる,

   ::;::㍑:㌶蕊:幻 (・)

(・)の耀式に甜の角紘ぽ響・を代入すると

1::::二:隷::;}

4.2.2試片に回転がともなわない場合 方程式(5)において,N。 =O(r.=const)として

;::;:㌻+「a }

4.3   の動きとの相対運動 4.3.1 試片が回転しながら移動していく場合   x=Xo十x1   =V・COSα・t+r。・COS (5) (6) 下皿上の1点の動きと試片に取付けた鉄ペン          (π1ぬ.t30)+9・・c・・6 ・c・si静)一加・si・6・sin(詩) ツ・=yo十Yl 一訪』・t+r.・・in(響・り+6,・si・6 …s i互1】.t30)+OPi・c・・6・叫譜り 4.3.2 試片が回転しなくて移動していく場合   x=Xo十x1 一i・C・・α・・+ra+ξ1・C・・6…S(越.t30)   −O・1・・i・δ・・i・(譜り y=Yo十Yl −b・・i・α・t+ξ1・Si・δ・C・・(譜う+η・

      ()

}(,) (8)      ・…δ・・i・詩  4.4 運動方程式の確認  求めた方程式の確認をするために,Na, r。,’i’,αな どに実測に近い数値を入れて計算し,軌跡を描いた結 果の一例を図一10∼12に示す。図一10は試片の回転数 N. = 60rpm,試片の中心から鉄ペソの位置までの半径 r。==5.Omm,試片が直進するときの平均速度V=50mm /s,試片が直進するときの平均速度の傾き角α=2πrad のときの軌跡の一部分である。図一11は凡=120rpm, r、=15mm,ρ=10mm/s,α=2πradのときの軌跡,図一 12は試片の回転がともなわない場合で,’i’=:50mm/s, α=2πradのときの軌跡の一部分を示す。  これらの軌跡図は,実際の軌跡の観察結果とほぼ同

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昭和50年12月 1(mm) 15 10 一5

−0

 −5  −10  −15          山梨大学工学部研究報告      第26号 N_1150。pm      次に各条件における瞬間速度と平均研摩速度を求め Nα=60rpm      る。 rα=5mm 2:;竺託      4. 5. 1 試片が回転しながら移動していく場合        (7)の方程式を時間tで微分すると        砦一・・…α」霊・ra・・i・ 図一10運動軌跡(5)  Sl(mm〕  20 15 10 x(mm)  一10  図一11運動軌跡 (6)     Nr・1150rpm y(mm)     e=50mm/s     α=2πrad N=1150rpm N。−180rpm ’1’ソ “= 15mm τ一10mm/s α=2πrad .x(m吋 x(mm)         図一12運動軌跡 (7) じ形状である。したがって求めた方程式の正しいこと が確認できた。  4,5 瞬間速度と平均研摩速度  瞬間速度,平均研摩速度の基礎方程式は,次のよう に書き表すことができる。     綱速度・イ(dx万)2+(筈)2(・)

    平均研摩速度吋∫己  ⑩

 ただし,主軸が1回転するに要する時間はT==60/1V とする。    劣一・・sinev+撰・r.・C・s  [⑪       1        π1】.t  したがって,このときの瞬間速度および平均研摩速 度は次のようになる。       一η1’       Sln    −一一δ  ・Sln       ⑫    _ N堕       十          (π霊・り 一留{9,・…δ・・i・(曇)+O・1・・i・δ ・… i静)}          (左凡.t30) 3C{ξ…i・δ・・i・(曇)−O・・・…δ ・…

i)}

     dt       ⑬

4.5.2試片が回転しなくて移動していく場合 (8)式を時間tで微分すると,   dx _    π2V   万=V’C°Sα一一3bM V−・qr・m・・+響…ra・・i・(α一響)(響)2    ・r・2一響・{ξ・C・S(a一δ)・・i・(静)    ・i・(α一δ)・…(静)}鑑凡・Pta{6・・     (π星.z30)(毛晋)+O・1・…(肇・    一δ)・…(曇)}(劉2{ξ1・in2(劉    +・1・…(静)}〕 V一ハ∫7・q・・[V2+響軌・si・(α」謙り     (π凡2−30)・ra・一繋{ξ・・C・・(α一δ)・・i・    (静)一恥・・i・(α一δ)・…(《子・)}    +鑑塾・ra{9…i・(噺一δ)・・i・    (恐)+O・1…(警一δ)・…(静)}    +(){ξ1・・in2(静)+・i・C・S2(碧り}]         {ξ1・…δ・・i・(静)   +η1・・i・δ・C・・(劃 劣一…i・α一霊{6…i・δ・・i・(曇)   一η1・…δ・…(洲 1. /

(6)

バイブレーションラッピングマシンの運動解析 このときの瞬間速度,平均研摩速度は ti・一・q・・卜響萄{9,・…(α一δ)・・i・(曇)      −O・i・i・(α一δ)・…(静)}      +(πN30)2{ξr・sin2(静)+・i・c・s2(裂)}        ⑮ 7計…・qr・卜斜・{6・…s(α一δ)・sin    (π∧「τ30)一恥・i・(α一δ)・C・・(曇)}    +(洲ξ1・・in2(曇)+・i…S2

   (斜り}]dt     ⑯

 46 結果および考察  工作物(上皿)が回転しない条件では,一般的には 工作物(上皿)の平均直進速度(のが大きくなるにつ れて,平均研摩速度(のは少しずつ増加する傾向を示 す(図一1 3)。工作物が比較的小さい回転数で回転しな がら移動する場合においては(図一14),平均研摩速度 の変化は,回転しないで移動する場合とほぼ同一傾向 であるが,その増加の割合いはやや大きくなる。  工作物(試片)の中心から鉄ペンの取付けてある位 置までの距離(r。)が変ると,平均研摩速度も変るこ とになる。γ。が5mmと20mmの場合の一例が図一14に 示される。鉄ペンの取付け位置の差異は,当然試片 (工作物)の中心からの位置の差異であり,これは工 作物の位置の変化に対する平均研摩速度を表している ことになる。この場合,中心から遠のくにつれて平均 研摩速度は大きくなるとともに,その変化の度合いも 大きくなっている。これは工作物が回転することによ る影響であり,工作物の回転数が増せばこの傾向はさ らに大きくなる。  工作物の回転数がさらに増すと平均研摩速度のバラ ッキが大きくなる。工作物の回転は強制回転ではな く,また規則的な回転を繰返すわけでもないことが, この大きな原因である。  これらの場合,工作物(上皿)の重量は平均直進速 度(のに含まれていることになる。すなわち,工作物 (上皿)の重量が小さく軽い条件ではbが大きく,重 くなると万が小さくなる。  下皿取付部にセットされて,この部分の回転移動 などを拘束しているバネカ(F)の影響は(図一15),そ の力が大きくなるにつれて,バネによる束縛が大きく なり,平均研摩速度は減少していくが,ある程度の大 500 ミ480 趣460 貰 44。

 42・一L−一一一

400  0         50        100       平均直進速度否(mm/s) 図一13 平均直進速度と平均研摩速度    (工作物が回転しない場合) 500 昔 480 vE l> 随460 $ 無440  500 ミ 豊  〉 撞 讐400 曇 300 420 400  0         50        100       平均直進速度b(mm/s) 図一14平均直進速度と平均研摩速度    (工作物が回転する湯合)

\・_ノト・輌

,一一一_鵬凡一・輌 0        10        20      バネに加わる力F(kg)   図一15バネカと平均研摩速度

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昭和50年12月 山梨大学工学部研究報告 第26号 きさになると,平均的研摩速度が少し増加する。この バネカの値は,軌跡の実際の観察時にみられる試片 (工作物)の飛びはね現象が起こる領域とほぼ一致し, 15∼20kg近辺の値である。 5. 結 言 る運動軌跡の観察と運動解析を行い,この装置におけ る最適加工条件選定の大きな指針を得るとともに,遊 離砥粒使用による硬脆材料の高精度加工に関する加工 機構解明の重要な手がかりを得ることができた。 下皿が振動する新しい方式のラッピソグ装置におけ

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