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礫土の丘の叙情詩

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Academic year: 2021

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(1)

現象、事件自体は今に始まった事ではないにしても、 情報が瞬時に伝達されるようになり、目を覆いたくなる ような報道が相次ぐ世の中になった。知らないでよいこ とが明らかになる反面、知るべきことが曖昧に認識され ていくことを危惧する。また、日本人が大切にしてきた 徳の文化が、そのままにしておいたら無くなってゆくの ではないかと寂しい気持ちになる。今、私達に必要なこ とは、合理的に生きることだけではないはずだ。豊かな 人間の心を忘れてはならないし、知らない世代が仮にあ るならば、知る世代が示していかなければならない。そ こに美術の大切な役割があると考えている。 荒廃しきっているわけではない。ただ、すでに肥沃な 大地ではないところで、しっかりと根をはって生きるこ とが大切だ。その精神のプロセスを絵画で表現したいと いう思いで制作した。これまでのインスタレーション制 作のスタンスから絵画制作のスタンスに移行してきてい ると自分では感じている。 なお、作品に添えた以下の文章は、私の制作メモなど から抜粋し構成した。

礫土の丘の叙情詩

Lyric of Stony Hill

日比野ルミ

Rumi Hibino

(2)

静寂なる瞑想の景 その明るさとも暗さとも 捉えられる中に浮かぶのは もの言わぬ、いのちたち。 劣悪環境の中において あるものは瀕死の状態、 また、あるものは、むしろ たくましい生命力をみなぎらせている。 雄大さや力強さだけが美ではない。 弱々しきものの凛とした態度で刻む時間や、 小さきものの楚々とした佇まいの中にこそ 美としての存在は静かに輝く。

(3)

礫土の丘の叙情詩 たち顕れた、この心の庭の 次なる軌跡を描くには、 全ての内なる変容が 求められているのだろう。 (2006年9月27日)

(4)

表層の色や形を わかりやすく分類することで 私達は擬似的安息感を手に入れる。 本質が置き去りにされる。 そこには、確かに不穏なものが潜む。 人間としての重大な欠如。 見過ごされる。 そして、すり替わる。 世界の、人生の、在りようを 客観的に見通せる人間など 本当にいるのだろうか。 誰も真実は語れないことを共感し、 主観を受容する。 小さいこと、弱さの真の価値は いつか表層にもはっきりと顕れてくるはず。 つかむことの退化を克服し 当事者としての存在でありたい。 (2006年12月9日) 芳春を待つ (2006−2007) パネル 麻布 膠 アクリル 油彩 103×73cm ■□ □ 野ばらの精(Echeveria) (2006−2007) パネル 麻布 膠 アクリル 油彩 117×91cm □■ □ 時の間 (2006−2007) パネル 麻布 膠 アクリル 油彩 65×53cm □□ ■

(5)

礫土の丘の叙情詩

白い花を

(2006−2007)

パネル 麻布 膠 アクリル 油彩 162×130cm

(6)

受容の樹 (2006−2007) パネル 麻布 膠 アクリル 油彩 117×91cm ■□ □ 包容の樹 (2006−2007) パネル 麻布 膠 アクリル 油彩 117×91cm □■ □ 樹木精霊 (2006−2007) パネル 麻布 膠 アクリル 油彩 117×91cm □□ ■ 運動場の片隅で 小石混じりの地面に描いていた 遠い記憶 早朝には湿っていて 昼過ぎには乾燥し 夕方には再び水分がしみだしてくる 地表のいとなみ 風が季節を運び 私はただ地面とたわむれていた その懐かしい感覚をふと思い出した 小さないのちの終りに立ち会ったときのこと (2007年1月10日) 受容すること その中にかすかな希望の光を見る (2007年1月29日)

(7)

うつろう風景、その始まりはいつも冬。 私はこの原野の緊張感が、とても好きだ。 礫土の丘の叙情詩 偶有の樹 (2006−2007) パネル 麻布 膠 アクリル 油彩 162×162cm 風とともに (2006−2007) パネル 麻布 膠 アクリル 油彩 162×162cm

参照

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