山 梨 肺 癌 研 究 会 会 誌23巻2010
EGFR遺 伝子変異陽性非小細胞肺癌に対するゲ フィチニブの使用経験(第2報)
市立甲府病院
呼吸器科
呼吸器外科
山家 理 司 、佐 藤 亮太 、 大木 善 之助 、西 川 圭 一 、 小 澤 克 良 宮 澤 正 久 要 旨:上 皮 成 長 因 子 受容 体(EGFR)は 非 小 細 胞 肺 癌 の 約80%に 発 現 が 認 め ら れ るが 、EGFR遺 伝 子変 異 を有 す る非 小 細 胞 癌 症 例 で はEGFRチ ロシ ン キ ナ ー ゼ 阻 害 薬 の奏 効 率 が 高 い こ とが 報 告 され て い る。 近 年 、EGFR遺 伝 子 変 異 陽性 非 小 細 胞 肺 癌 に お い てlst line治療 と して のEGFRチ ロシ ン キ ナ ーゼ 阻 害 薬 の 有 用 性 を 証 明 した報 告 も見 られ る。 当院 で は 、 平成19年5月24日 か ら平 成21年8 月27日 ま で にか けて 診 断 した130例 の 非 小 細 胞 肺 癌 に対 しEGFR遺 伝 子 変 異 検 査 を施 行 し、37例(28.6%)の 陽 性 例 を確 認 した。 このEGFR遺 伝 子 変 異 陽性 例 に 対 して1st line治 療 と して12例 、2nd line以 降 で5例 に対 しゲ フ ィチ ニ ブ を使 用 した 。 キ ー ワ ー ド:ゲ フ ィ チ ニ ブ 、EGFR、EGFR遺 伝 子 変 異 は じめ に 上皮 成 長 因 子 受 容 体(EGFR)は 非 小 細 胞 肺 癌 の 約80%に 発 現 が認 め ら れ る が1)、 このEGFRを 標 的 と した EGFRチ ロシ ン キ ナ ー ゼ 阻 害 薬 が 現 在 使 用 され て い る。非 小 細 胞 肺 癌 の 一 部 にお い てEGFR遺 伝 子 に 突然 変 異 が 存 在 し、そ の 陽 性 例 ではEGFRチ ロ シ ン キ ナ ー ゼ 阻 害 薬 の 奏 効 率 が 極 め て 高 い こ と も報 告 され て い る ⑳。 また 、 近年 、EGFR遺 伝 子 変 異 陽 性 非 小 細 胞 肺 癌 に お い てlstline治 療 と して のEGFR・ チ ロ シ ンキ ナ ー ゼ 阻 害 薬 の 有 用 性 を 証 明 した 報 告 も 見 られ る3)の。 当院 で は 、平成19年5月24日 か ら 平成21年8.月27日 ま で に か けて 診 断 した130例 の 非 小 細 胞 肺 癌 に 対 し EGFR遺 伝 子 変 異 検 査 を施 行 して お り、37例(28.5%)の 陽 性 例 を 確 認 し た 。37例 の 陽 性 例 で は 、男 女 比 は 男 性 12例 、 女 性25例 、 組 織 型 は 腺 癌33 例 、扁 平 上 皮 癌2例 、非 小 細 胞 癌2例 、 喫 煙 歴 は 喫 煙 者14例 、非 喫 煙 者23例 で あ っ た 。 こ のEGIM遺 伝 子 変 異 陽 性 例 に 対 し て 、12例 で1st血e治 療 と して ゲ フ ィ チ ニ ブ を使 用 した 。13例 で 手 術 、9 例 で 通 常 化 学 療 法 、3例 でBest SupportiveCareを 行 っ た 。 ま た2nd line以 降 で5例 に 対 し ゲ フ ィ チ ニ ブ を 使 用 した 。 ゲ フ ィ チ ニ ブ を使 用 した17例 中3 例 は 使 用 後 の 副 作 用 の た め 、約1カ 月 程 度 で 投 与 を 中 止 し た の で 効 果 判 定 は で き な か っ た 。 残 りの14例 で は 、 12例 でPR、2例 でSDで あ り、 奏 功 率 は85.7%(12!14)で あ っ た 。1sthne 一2一平 成22年4月1日 で の 使 用 に 限 る と 、 奏 功 率 は 81.8%(9111)で あ っ た 。 症 例 症 例1 肺 腺 癌(T4N3M1,ス テ ー ジIV) 60才 代 女 性 肺 腺 癌 主 訴:咳 徽 喫煙 歴:な し 現病 歴:約1ヶ 月 前 か ら、乾性 咳徽 出 現 して い る と の こ と で 近 医 を 受 診 し た。 胸 部CTに て 右 胸 水 を指 摘 され 当 院 に紹 介 とな っ た。胸 水 細胞 診 でdass V、 肺 腺 癌 と診 断 され た。 ス テ ー ジ ン グで はT4N3M1,stagelVで あ った 。胸 水 で のEGFR遺 伝 子 変 異検 査 が 陽性 で あ った 。胸 膜 癒 着 術 を施 行 後 、 ゲ フ ィチ ニ ブ の 投 与 を行 っ た。 胸 部 レ ン トゲ ン(図1)、CT(図3) で 右 下 肺 の 網 状 影 と肺 門 部 の 腫 瘤 影 を認 め た が 、投 与1ヵ 月 後 の レン トゲ ン(図2)、CT(図4)で は 改 善 を認 め た 。 図1初 診 時 胸 部 レ ン トゲ ン 図2ゲ フ ィチ ニ ブ 投 与 約1ヶ 月 後
図3初
診時胸部CT
図4ゲ フ ィチ ニ ブ 投 与 約1ヶ 月 後 一3一山梨 肺 癌 研 究 会 会 誌23巻2010 症 例2 肺 腺 癌(T2NOMO,ス テ ー ジIB) 80才 代 女 性 主 訴:血 疾 既 往 歴:総 胆 管 結 石(平 成19年 手 術) 喫 煙 歴:な し 病 歴:他 院 で通 院 中 に、 血 疾 が 出 現 し た 。 喀 疾 細 胞 診 を行 っ た と ころclass Vの 結 果 で あ っ た。 当院 に紹 介 され 、 精 査 行 い 肺 腺 癌(c-T2NOMOstageIB) の 診 断 とな った 。気 管 支鏡 で の気 管 支 洗 浄 液 で のEGFR遺 伝 子 変 異 検 査 が 陽 性 で あ った 。手 術 を勧 め る が 同意 が得 られ ず 、本 人 、家 族 と相 談 し、 ゲ フ ィ チ ニ ブ の 投 与 を行 うこ と とな った 。 投 与 前 の 胸 部 レン トゲ ン(図5)、 CT(図7)で は左 下 肺 に腫 瘤 を認 め た。 投 与2ケ 月 後 の胸 部 レン トゲ ン(図6) CT(図8)で は 腫 瘤 の 縮 小 を認 めた 。 図5ゲ フ ィチ ニ ブ投 与 前 図6ゲ フ ィチ ニ ブ 投 与 約2ヶ 月 後 図7ゲ フ ィチ ニ ブ 投 与 前 図8ゲ フ ィ チ ニ ブ 投 与約2ヶ 月 後 一4一
平 成22年4月1日 考 察 当院 で は 、平 成19年5月24日 か ら 平成21年8月27日 まで に か けて 、130 例 の非 小 細 胞 肺 癌 に対 しEGFR遺 伝 子 変 異 検 査 を施 行 し、37例(28.5%) の 陽性 例 を確 認 した。37例 の 陽性 例 の うち17例 にゲ フ ィチ ニ ブ を投 与 し奏 功 率 は85.7%で あ った 。 これ ま で の報 告 で はEGFR遺 伝 子 変 異 陽 性 例 で は ゲ フ ィ チ ニ ブ の 奏 効 率 は63∼91%と 高 く5)、 この検 査 は EGFR・ チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ 阻 害 薬 の 使 用 の 際 の 指 標 と して 有用 で あ る。 EGFR遺 伝 子 変 異 検 査 は 、今 後 の 非 小 細 胞 肺 癌 の 治 療 方 針 決 定 に お い て 非 常 に 重 要 な 指 標 の 一 つ で あ る と思 わ れ た 。