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乳幼児および学童の身体発育並びに精神発達に関する逐年的研究 -第13報- (栄養法別に見た頭囲・座高・上膊囲・復囲等の発育について)

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乳幼児および学童の身体発育並びに精神発達

に関する逐年的研究 一第13報-≡ラ室を壬-jH千 二 --一 --章二 :-"一

斎  藤  マ  サ

Follow up Study on the Physical and the Mental Development of Infants and School Child. Part 13

Mother's, Arti丘cial and Mixed Feeding, and In且uenced on the growth of girth of head, sitting hight, circumference

of upper arm, girth of abdomen etc.. Masa Saito ま  え  が  き 出生以後9才までの身長・体重・胸囲等の発育を,乳児期における栄養法別に検討した結果は, 同誌に第12報として報告した。これに続いて頭囲・頭長・頭幅・頭高・座高・上勝囲・腹囲等の発 育について第13報として報告する。第12報と同様に生後滴6才より9才までの発育の経過を,栄 養法別に検討し,合せて生下時より5才までの既報の結果と継続して検討する。 5才までの栄養群 間の発育状況や研究方法及び文献の一部は,凡て第12報と同様であるのでこれを省略する。

研究結果 と 考察

Ⅰ.頭囲発育の経過 1.生後満6才より満9才までの頭囲発育の経過 生後滴6才より9才までの頭因の発育の経過を,栄養法別,男女別に示すと表1の通りである。 以上の表1によれば,母乳・混合・人工群別の頭囲平均値は,男児の6才では52.1cm 51.9 cm 51.3cmであり, 7才では52.4cm 52.2cm 51.5cmであり, 8才では52.6cm 52.5 / cm 51.8cmであり, 9才では52.9cm 53.0cm 52.0cmである。これらの平均値によれば, この4年間を通じて,母乳群は,混合群との差は少いなが,人工群には約1cm近い差で上回って いる。したがって人工群は,母乳・混合群に比して頭因は小さいが,栄養群間に有意な差は見ら れなかった。 女児の6才では50.6cm 50.7cm 50.8cmであり, 7才では50.8cm 51.0cm 51.0cm であり, 8才では51.1cm 51.3cm 51.3cmであり, 9才では51.4cm 51.7cm 51.8cm である。これらの平均値によれば,三群間は極めて接近した侶であるが,母乳群は混合・人工群を

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斎  藤  マ  サ 〔研究紀要 第22巻〕 105 表1 生後満6才より満9才までの頑固      (単位 cm) 男 児 乳合工叫均二乳合工 v -1 」 " -L O I C O I L C 7 60 1 1 1 M S D 52.1  1.3 51.9   1.3 51.3   1.6 M S D M S D M S D 52.6   1.5 52.5  1.3 51.8  1.5 52.9  1.4 53.0  1.3 52.0   1.4 51.8   1.4   52.1 50.6   1.5 50.7   1.0 50.8  1.3 1.5  52.3  1.5  52.7  1.4 50.8   1.6 51.0   1.2 51.0   1.4 51.1  1.6 51.3   1.2 51.3   1.6 51.4  1.4 51.7  1.1 51.8   1.6 平  均   43   50.7  1.3  50.9  1.4  51.2  1.4  51.6  1.4 注.いずれの年令においても男女児ともに,栄養群間に有意差みとめず。 凌ぐことはない。 2・生下時より満9才までの頭園の発育曲線 生下時より滴9才までの頭園の発育曲線を,栄養法別に示すと,男児は次の図1で,女児は図2 の通りである。 年令 図1生下時より溝9才までの頭囲発育曲線(男) 年令 図2 生下時より満9才までの頑固発育曲線(女) 以上の図1 ・図2によって,生下時より9才までの頭因の発育を栄養法別に検討すれば,男児の 母乳群は,その平均値において混合群とは比較的接近した差で上回る経過を示したが,人工群との 間には生下時から幼児期までは0.5cm前後,学童期になって約1cm近い差で上回る経過を示し

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た。したがって母乳群の頭因は最も大きく,混合群がこれに次ぎ,人工群は最も小さいのであるが, 検定の結果では栄養群間にいづれの年令にも有意な差は見られなかった。 女児の母乳群は1才半頃から9才に至るまで僅かではあるが,混合・人工群に及ばず,混合・人 工群間は接近した値の経過を示している。したがって栄養群間に有意な差は見られなかったが,罪 女児間で栄養法の順位が全く反対の傾向を示したことは注目すべき点と思われる。又,第12報で報 告したように,身長・体重・胸囲の年間増加のうち,男女児ともに生後から1年までの増加率は人 工群が最も大で,これに混合群が次ぎ,母乳群は最も小であったことをのべたやミ,頭因の生後1年 間の増加率はこれと反対で,男女児ともに人工群の増加率は最も小で,母乳・混合群が大であるこ とも興味をひく点である。 ⅠⅠ.頭長・頭幅の発育の経過 1.生後満6才より満9才までの頭長・頭幅の発育の経過 生後滴6才より9才までの頭長・頭幅の発育の経過を栄養法別・男女児別に示すと次の表2 ・表 3の通りである。 以上の表2によれば,母乳・混合・人工群別の頭長平均値は男児の6才では17.1cm 16.9cm-16.8cmであり, 7才では17.3cm 17.0cm 17.0cmであり, 8才では17.4cm 17.2cm 17.1cmであり, 9才では17.6cm 17.4cm 17.2cmである。これらの平均値によれば,母乳 群はいづれの年令においても混合・人工群に0.2cm-0.4cm大であり,したがって母乳・混合・ 人工群の順の経過である。 女児の6才では16.8cm 16.9cm 16.8cmであり, 7才では17.1cm 17.1cm 16.8cm であり, 8才では17.1cm。17.2cm 17.0cmであり, 9才では17.3cm 17.2cm 17.1cm である。これらの平均値によれば,栄養群間の差は極めて少く,相互間に0.1-0.2cm程度であ る。 表3によれば,母乳・混合・人工群別の頭幅平均値は男児の6才では15.1cm 15.3cm 15.1 表 2  生後満6才より満9才までの頭長      (単位 cm) 年  令 平均値 1 7 5 2 1 1 女 児 6 M SD M S D 17.3   0.7 17.0   0.7 17.0   0.7 M S D 17.4   0.7 17.2   0.8 17.1   0.6 9 M S D 17.6   0.7 17.4   0.7 17.2   0.7 17.1  0.7  17.3   0.7  17.4   0.7 注.いずれの年令においても男女児ともに,栄養群問に有意差みとめず。

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斎  藤  マ  サ      〔研究紀要 第22巻〕 107 表 3  生後満6才より満9才までの頭幅      (単位 cm) 栄 養 一乳合工 女 児 M S D 1 7 5 2 1 1 15.1   0.6 15.3   0.9 15.1   0.9 15.1   0.8 7 6 0 1 1 1 M S D M SD 15.2   0.6 15.4   0.9 15.1   0.9 15.4   0.7 15.6   0.8 15.2   0.9 M S D 15.5   0.7 15.7   0.8 15.3   0.9 15.2   0.8  15.4   0J   15.5   0.8 14.4   0.6 14.3   0.5 14.6   0.7 14.5   0.7 14.3   0.5 14.7   0.7 14.5   0.7 14.5   0.5 14.8   0.7 14.7   0.7 14.7   0.6 14.9   0.7

空。均J 竺 14.4。。。2 14.5 0.≡ 14.≡,。n望.7 14.7 。0・6

注.いずれの年令においても男女児ともに,栄養群間に有意差みとめず。 cmであり, 7才では15.2cm 15.4cm 15.1cmであり, 8才では15.4cm 15.6cm 15.2 cmであり, 9才では15.5em 15.7cm 15.3cmである。これらの平均値によれば,混合群は 母乳・人工群間に0.2-0.4cmの差で上位の経過であり,その順位を示すと混合・母乳・人工群 となるが,検定の結果栄養群間に有意な差は見られなかった。 女児の6才では14.4cm 14.3cm 14.6cmであり, 7才では14.5cm 14.3cm 14.7cm であり, 8才では14.5cm 14.5cm 14.8cmであり, 9才では14.7cm 14.7cm 14.9cm である。これらの平均値によれば,人工群は母乳・混合間に0.2-0.4cmの差で上位の経過であ り,母乳群と混合群は殆ど同じ値の経過である。 以上の頭長と頭幅について,栄養法間の順位は必ずしも同じ傾向ではなく,反対に近い傾向さえ 見られるのでこのことについては頭示数の項であらためて検討したい。 2.生後満1才より9才までの頭長・頭幅の発育曲線 生後満1才より9才までの頭長と頭幅の発育曲線を栄養法別に示すと,男児は図3で,女児は図 4の通りである。 図3によって生後1才より9才までの男児め頭長の発育を検討すれば,母乳群は1才より9才に 至るまで混合・人工群を毎年0.2-0.4cm上回る経過であり,混合群と人工群は接近した値の経過 である。しかしいづれの年令においても有意な差は見られなかった。 頭幅の発育においてほ,幼児期では栄養群相互に0. l-0.2cmの差で混合・人工・母乳群の順位 であったが,学童期では0.2-0.4cmの差で混合・母乳・人工群の順位の経過である。しかしい づれ年令においても有意な差は見られなかった。 図4によって女児の頭長の発育を検討すれば,混合群は1.5才頃から8才まで母乳・人工群に 0.1-0.2cm上回る経過を示しており母乳群と人工群は幼児期は殆ど同じ値であったが,学童期に は母乳群が僅かに人工群を上回っている。 頭幅の発育においては,人工群が1,5才頃から9才まで上位の経過を示しており,混合・母乳群

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図3 生後満1才より満9才までの 頭長,頭幅の発育曲線(男) 午 図4 生後満1才より満9才までの 頭長,頭幅の発育曲l線(女) 間は極めて接近した経過である。 男女児ともに,いづれの年令においても,頭長・頭幅には栄養群間に有意差は見られなかった。 III.頭示数の経過 以上の頭長と頭幅は,頭因や頭型と関係の深いものである。特に頭型を知るためには頭長や頭幅 を個々に検討するよりも,頭示数によることが適当と思われる。したがって第9報と同様に寺田・ 保志1)にならって頭示数(頭幅/頭長×100)を計上し,これによって更に検討を深めた。 1.生後満6才より満9才までの頭示数の経過 生後満6才より9才までの頭示数を栄養法別・男女別に示すと次の表4の通りである。 表4によれば母乳・混合・人工群別の頭示数平均値は,男児の6才では88.5 90.9 89.7であ り, 7才ではI.2 90.8 89.1であり, 8才では88.2 90.9 88.7であり, 9才では88.0 90.3 89.1である。したがって混合群は最も大で,次いで人工・母乳群の順位の経過である。この 結果から察せられることは,母乳群が最も頭長型であり,これに比して混合群は頭幅の広い頭型と 言えるし,人工群はその中間の頭型である。 女児の6才は85.4 84.8 88.3であり, 7才では 5,2 ,3 87.6であり, 8才では85.0

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斎  藤  マ  サ      〔研究紀要 第22巻〕 109 表 4  生後満6才より満9才までの頭示数(頭幅/頭長×100) 年 令 6 7 8 9 備 考 ユ ー栄 養 人数平均値 M S D M S D M S D M S D 慧≦語

男 畔

0.

9.細

8.

90.

89.甘

...甘

22

児 平 射 5 3 卜 8 9 .4 6 .4 8 9 .3 6 .7 8 9 .2 6 .7 8 9. 1 6 .4

冥+ 引

...細

38茎

.2 5.0

.3 5.3

.6 7.2

...細

38…

0:

43

85.√㌃ 「 1■

完 4 5J

85.4 6.0

85.8 5.9

注.いずれの年令においても男女児ともに,栄養群間に有意差みとめず。 84∴6 87.4であり, 9才では85.3 85.2 87.4である。したがって人工群が最も大で,次いで母 乳・混合群の順である。つまり混合・母乳群は人工群より頭長型と言える。 表4の備考には1才から9才まで頭幅型(頭長く頭幅)の経過を示したもので,男児は混合・人 工群に各2例,女児は人工群に1例である。このうち混合の1例は頭長と頭幅が等しい年令があっ たので, 5才まで頭示数をまとめる段階では省いたが,今回はこれを加え計5名となった。これら の頭幅型が混合・人工群に加っていることによって,統計的にも母乳群と異った頭型となったこと は察せられるが,頭幅型が特に混合・人工群に少例でも見られたことは注目すべきことと思われ る。 2.生後満1才より満9才までの頭示数曲線 生後滴1才より9才までの頭示数曲線を栄養法別に示すと,男児は図5で女児は図6である。 図5によれば,男児の母乳群は1才より9才まで頭示数平均値は最も小であり,之に反して混合 年令 図5 生後満1才より満9才までの 頭示数曲線(男) -ノー一一・へ 一、、-、--㌧、一、ノ/ -母乳群 一一-混合群 - All? -平均値 i ノー一一一一一一一一一一一一一一一_……__ 1  2  3  4  5  6  7  8  9 図6 生後満1才より満9才までの 頭示数曲線(女)

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群が最も大であり,人工群は中間の経過である。 図6によれば,女児の混合群は1才より9才まで頭示数平均値は最も小であり,之に反して人工 群は最も大であり,母乳群は2才以降は中間の経過である。しかし男女児ともに,いづれの年令に おいても栄養群間に有意な差は見られなかった。 以上の頭示数から,頭型の特徴を集約すれば,男児の母乳群と女児の混合群は,それそれ他の二 群より頭長型の傾向であり,この反面,男児の混合群と女児の人工群はともに他の二群より頭幅の 広い頭型の傾向と言える。又,頭畏≦頭幅のものが,男児の混合・人工群に各2名,女児の人工群 に1名見られたことも特徴としてあげておきたい。 頭型と身長や体重等の発育と関連づけて見るに,頭長型の傾向である男児の母乳群と女児の混合 群は,これらの発育においても上位の経過を示したことも興味ある問題である。 図5 ・図6中の太線は,男女児別全員の頭示数平均値を示したものであるが, 2才以降は男女児 とも横這いか僅かに下降の傾向が見られる。これは頭因は毎年増加するものであるが,頭型は比較 的変化をしないで成育するものと推察される。備考の頭幅型の5例からでも理解できることであ る。 男女児間の頭型は全般的に女児は男児に比して,より頭長型の値向と言える。 ⅠV.頭高・座高発育の経過 1.生後満6才より満9才までの頭高および座高の発育の経過 生後満6才より9才までの頭高および座高の発育を,栄養法別・男女別に示すと次の表5と表6 の通りである。 表5によれば,母乳・混合・人工群別の頭高平均値は,男児の6才では21.5cm 21.6cm 21.4cmであり, 7才では22.0cm 22.1cm 22.0cmであり, 8才では22.4cm 22.5cm 22.4cmであり, 9才では22.7cm 22.8cm 22.6cmである。群間には0.1cmの差で混合・ 母乳・人工群の順位の経過である。 表 5  生後満6才より満9才までの頭高      (単位 cm) 轟 養 6 7 8 9 二 ∵ \ M S D M S D M S D M S b 周 忌 % 人 工 児 平 均 2 1 17 15 2 1 .5 0 .6 2 1 .6 0 .6 2 1 .4 0 .5 2 2 .0 0 .6 2 2 .1 0 .5 2 2 .0 0 .( 2 2 .4 0 .7 2 2 .5 0 .6 2 2 .4 0 .6 22 .7 0 .6 22 .8 0 .7 22 .6 0 .5 53 2 1 .5 0 .6 2 2 .0 0 .6 2 2 .4 0 .6 22 .7 0 .6 女 富 ■ 暮 人 工 児 平 均 17 16 10 21 .1 0 .4 21 .2 0 .5 21 .0 0 .6 2 1 .6 0 .5 2 1 .6 0 .5 2 1 .4 0 .6 2 1 .9 0 .5 2 1 .9 0 .5 2 1 .9 0 .6 22 .3 0 .5 22 .3 0 .4 22 . 2 0 .6 43 21 .1 0 .5 2 1 .6 0 .5 2 1 .9 0 .5 22 .3 0 .5 往.いずれの年令においても男女児ともに,栄養群間に有意差みとめず。

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斎  藤  マ  サ 表 6  生後満6才より満9才までの座高 栄  養

二㍉

男 児 一 女 児 年  令

\讐値

1 7 5 2 1 1 M S D 〔研究紀要 第22巻〕 111 (単位 cm) 8      9 M SD M SD 61.3   2.7 61.1   2.5 61.0   2.0 65.4   1.9 64.4   3.0 67.9   1.7 67.2   2.7 64.1  2.5  67.3   2.6 71.0   1.8 70.2   3.4 69.6   2.6 53    61.1  2.5 】 64.7   2.5  67.5   2.4  70.3   2.7 7 6 0 1 1 1 60.2  1.8 61.4   1.8 61.3   2.2 63.7   1.7 64.8   2.2 64.7   2.2 67.0   1.9 67.9   2.7 67.7   2.5 69.4   2.2 70.1   2.6 70.2   2.5 平  均   43   60.9  2.0  64.4  2.1 67.5  2.4  69.8  2.5 注.いずれの年令においても男女児ともに,栄養群問に有意差みとめず。 女児の6才では21.1cm 21.2cm 21.0cmであり, 7才では21.6cm 21.6cm 21.4cm であり, 8才では三群とも21.9cmであり, 9才では22.3cm 22.3cm 22.2cmである。母 乳群と混合群は殆ど同じ値の経過であって,人工群は6才と7才で0.2cmの差を示した以降は母 乳・混合群と殆ど同じである。 表6によれば,母乳・混合・人工群別の座高平均値は,男児の6才では61.3cm 61.0cm 61.0cmであり, 7才では65.4cm。64.4cm。64.1cmであり, 8才では67.9cm 67.2cm 67.3cmであり, 9才では71.0cm 70.2cm 69.6cmである。したがって母乳・混合・人工群 の順位の傾向が見られ, 9才時の母乳。人工間には1.4cmの差を示した。 女児の6才では60.2cm 61.3cmであり, 7才では63.7cm 64.8cm 64.7cmであり, 8 才では67.0cm 67.9cm 67.7cmであり, 9才では69.4cm 70.1cm 70.2cmである。し たがって混合・人工・母乳群の順位の経過であり,混合・母乳群間には1.0cm前後の差を示して いるが,混合・人工群間は極めて近い値である。男女児ともに栄養群間に有意な差は見られなかっ た。 2・生後満1才より満9才までの頭高・座高の発育曲線 生後満1才より9才までの頭高と,生後2才より9才までの座高の発育曲線を栄養法別に示すと 男児は次の図7で女児は図8の通りである。 図7により生後1才より9才までの男児の頭高の発育を栄養法別に検討したが,三群間は相互に 0.lcmか同値であって,幼児期は順位もまちまちであったが,学童期の傾向として混合・母乳・ 人工群の順位である。 座高の測定は幼児の座位が安定した2才から行ったもので, 2才から9才までの発育について栄 養法別に検討すれば,母乳群は2才から9才まで混合・人工群を上回る経過を示しているが,混合・ 人工間の差は少く,年令によって前後しているが学童期には比較的混合・人工群の順が見られる。 図8によって女児の頭南の発育を検討すれば, 1才から9才まで栄華群間の糞は0,1cmか或は

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座高 図7 頭葛,座高の発育曲線(男) 発 年令 図8 頭高,座高の発育曲線(女) 同値の経過を辿っているが,混合群が他の二群より下位になったことはない。 座高の発育においてほ,混合群は殆ど上位の経過を辿り,これについで人工群も良好であるが, 母乳群は3才以後は混合・人工群に及ばない。しかし男女児ともに,頭高・座高平均値で,栄養群 間に有意な差は見られなかった。 座高について男女児別に全員の平均値と全国・鹿児島県の統計資料2'と比較すれば, 6才をのぞ けば全国平均値より幼児期は0.5-0.9cm 学童期は0.5-1.2cmの範囲で本資料が高く,鹿児 島県の平均値との比較では, 6才をのぞけば幼児期は0.6-1.9cm 学童期は1.3-2.0cmの範囲 で本資料が高い。鹿児島市の統計資料3)と比較すれば,幼児期は0.3-1.5cmの範囲で市の平均値 が高いが,学童期は0.9-1.4cmの範囲で本資料が高い。全般的に本資料の座高は良好な発育と忠 われるが,他の資料と人員や調査時期等の条件が著しく異るので参考程度の比掛こすぎない。 V.比頭高・比座高の経過 頭高や座高は,ともに身長の一部をなすものであるが,身長との比率は年令によって特有の均衡 性をもたらすものである。幼い子ども程頭でっかちで胴が長いことは既に知られていることである が,第10報と同様に比頭高(頭高/身長×100)と比座高(座高/身長×100)を以て,栄養群間の検 討をした。

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ー t H . 邑                       卜   -  -て = q 爪 -          1 -              -    一             い             い                     -= い     い                 -斎  藤  マ  サ 〔研究紀要 第22巻〕 113 1.生後満6才より満9才までの比頭高・比座高の経過 生後滴6才より澗9才までの比頭高・比座高について,栄養法別,男女別に示すと次の表7と表 8の通りである。 表 7  生後満6才より満9才までの比頭高 男     児   二   女 児 均 : 乳 合 工 LT ︻↑ 辛 : 母 混 入 1 7 5 2 1 1 18.8   0.4 19.1   0.7 19.0   0.5 18.2   0.5 18.5   0.7 18.4   0.4 17.7   0.4 17.9   0.6 17.8   0.5 53   19.4   0.6  18.9   0.6  18.4   0.5  17.8   0.5 7 6 0 1 1 1 19.3   0.5 19.0   0.6 18.9   0.8 18.8   0.7 18.5   0.5 18.4   0.9 18.1   0.6 17.9   0.6 18.0   0.7 1.7.7   0.7 17.4   0.5 17.4   0.7 平  均   43  19.1  0.7 18.6  0.7 18.0  0.6 17.5  0.6 注.いずれの年令においても男女児ともに,栄養群間に有意差みとめず。 表 8  生後満6才より満9才までの比座高 年 令 6 7 8 9 悼 栄 養 平均値i iiii i M S D M S D M S D M S D 人数

男 諾

21

17

15

55=…

3g

:.蓋

ユ ー

n

53

55.l

l.4

55.6

1.2

55.3

1.1

55.l

l.1

女 冥 至

児 平 均1 43

55=…

書 冊

日 …

喜 55.:書 出 書

.0

.5

.0 …

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55 . l l .0 5 5 .5 1 .1 55 .4 1 .1 」 空 1 .0 注.いずれの年令においても男女児ともに,栄養群問に有意差みとめず。 表アによれば,母乳・混合・人工群別の比頭高平均値は,男児6才では19.3 19.5 19.4であ り, 7才では18.8 19.1詛19.0であり, 8才では18.2 18.5 18.4であり, 9才では17.7 17.9 17.8である。 4年間とも混合・人工・母乳群の順位の経過であり,群間相互の差は0.1-0・3で僅かであるが,混合群が他の二群より頭でっかちの傾向が見られる。 女児の6才では19.3 19.0 18。9であり, 7才では18.8 18.5 18.4であり, 8才では18.1ォ 17.9 18.0であり, 9才では17.7'17.4.17.4である。したがって母乳群は混合・人工群より頭 でっかちの傾向が見られるが,混合・人工群は殆ど同じである。男女児ともに頭高の差は栄養群間 に極めて小であったので,身長の低かった男児の混合,女児の母乳群にこうした現象が見られたの

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も当然であろう。 表8によれば,母乳・混合・人工群別の比座高平均値は,男児の6才では55.0 55.2 55.3で あり, 7才では55.9 55.5 55.4であり, 8才では三群とも55.3であり, 9才では55.3 55.! ∫ 54.7である。混合群は中間位の経過を示しているが,母乳群と人工群は年令によっては逆の関係が 見られるので比較は困難である。 女児の6才では55.0 55.1 55.3であり, 7才では55.4.55.6 55.6であり, 8才では55.3 55.4 55.6であり, 9才では55.0詛54.5 55.0である。したがって人工・混合・母乳群の順位の 経過であって,人工・混合群は母乳群より僅かに胴長の傾向が見られる。しかし比頭高・比座高は, 男女児ともに,いづれの年令においても三群に有意な差は見られなかった。 2.生後満1才より満9才までの比頭高・比座高曲線 比頭高は満1才より,比座高は満2才より9才までの発育曲線を栄養法別に示すと男児は次の図 9で女児は図10の通りである。 比座高 巳≡国己ヨ璽 ---・--母乳群 -一一一一一混合群 ---・人工群 8  9 年令 図9 比頭高,比座高曲線(盟) 年令 図10 比頭高,比座高曲線(女) 図9により生後1才より9才までの男児の比頭高は,栄養群間の差は相互に0.l-0.3で少く,そ の中でも混合群は2才から9才まで母乳。人工群を上回っている。次で人工・母乳群の経過である がこのことは,頭高が比較的同じ値であるため,身長の低い程,比頭高が大になるのは当然であ る。 比座高においては,栄養群相互間の差は多少示されるが,年毎に順位が興っているので, 8年間 に固定した経過を明示することは困難である。 図10によって女児の比頭高を栄養法別に検討すれば,栄養群間の差は少いが,母乳群は2才より 9才まで上位の経過を示しているが,学童期は混合・人工群間は更に近い値である。身長が比帝的 低い母乳群に比頭高が上位であることは,男児同様の緯罪によるものであるQ

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斎  藤  マ  サ 〔研究紀要 第22巻〕 115 比座高においてほ男児と同じく栄養群相互間の差が少く,又,年毎に順位も固定していない。 3.生後満2才より満9才までの比頭高・比座高による図型 以上の表7・8および図9 10の比頭高・比座高に基づき,これを人体模型図で示すと,次の図 11の通りである。座高の測定は満2才より開始したので,図型も2才より9才までとした。又,餐 料は各年とも男児全員の平均値を使用した。比頭高は頭部の円形の直径位であり,比座高は両脚の 分岐点の位置として描いたものである。       、

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年令 2 才 3 才 4 才 5 才 6 才 7 才 8 才 9 才 図11 比頭高,比座高による図型(男) 図11の図型の比頭高を2才より9才まで頭身(身長/頭高)で表現すれば 4.2 4.5 4.7 5.0ォ 5.2 5.3 5.5 5.6頭身の経過である。尚図には示さなかったが1才児は4.1頭身である女児も殆 どこれに近い。多くの小児発育書には,欧米の例として,新生児は4頭身, 6才は6頭身15才は7 頭身,成人で8頭身と記してある。日本の成人は7頭身前後であるが,既に乳幼児・学童期におい ても欧米人の体型と興っている。 比座高においてほ2才で身長の60%を占め9才で55%に減少している。このことは漸次胴より 脚の伸長が大になることを意味するが,成長がほぼ安定すると思われる19才男子について4'全国お よび東京の比座高を算出しても54.7と54.2である。したがって現在の日本人の体型の多くは,座 高が下肢長より長いと言える。 ⅤⅠ.上勝図・腹囲の発育の経過 1.生後満6才より満9才までの上勝囲・腹囲の発育の経過 生後満6才より滴9才までの上勝囲および腹囲の発育を栄養法別・男女別に示すと次の表9と表 10の通りである。 表9によれば,母乳・混合・人工群別の上勝囲平均値は,男児の6才では16.8cm 15.9cm 16.2cmであり, 7才では16.9cm 16.2cm 16.3cmであり, 8才では17.3cm 16.5cm 16.7cmであり, 9才では18.2cm 17.5cm 17.7cmである。母乳群は混合・人工群より大で, 6才においては混合群に有意な差で優れている。混合・人工間の差は少いが,混合群はより細い経 過である。

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表 9  生後満6才より満9才までの上勝囲     (単位 cm) 年 令 6 7 8 9 悼 栄 養 平 均値 M S D M S D M S D M S D 人数 男 児 母 乳 +混 合 人 工 紺 S.:宴 喜…喜 16.9 1.1 16.2 0.9 16.3 1.1 17.3 1.2 16.5 1.2 16.7 1.2 18.2 1.4 17.5 1.3 17.7 1.4 平 石1 53 ー 16.3 1.0 16.5 1.1 ■芯 ■「 右 「 17.8 1.4 女 児 冥 至 171610 凍 1i…喜 16.4 1.3 16.5 1.5 16.5 1.1 16.7 1.3 16.9 1.6 17.0 1.7 17.8 1.2 17.8 1.6 18.l l.7 平 均 , 43 丁「 訂 1.1 16.4 1.3 16.8 1.5 日 7.9 1.5 注. 6才の男児は混合群と母乳群間にT(0.05)-2.04<2.660で有意差をみとめた。 表10  生後満6才より満9才までの腹囲     (単位 cm) 年 令 性 栄 養 平均値 人数 6 7 8 9 -M S D M S D M S D M S D 男 冥 至再 53.2 3.3 50.6 1.5 51.3 2.2 52.9 3.0 51.7 3.2 51.5 2.5 53.6 3.3 52.1 2.6 53.6 2 .1 56.9 3.4 55.0 4.0 55.7 2.9 児 平 均 ー 53 51.8 2 Q.O 51.9 3.0 53.1 2 .9 56.0 3.6 女 冥 至吊 50.9 2.7 50.7 2.6 51.4 2.4 51.4 4 .0 51.8 3.4 52.1 3.8 52 .8 4.1 53.9 4 .4 54 .8 4 .9 55.7 3.7 56.5 4 .8 57.3 4 .8 児 平 均 ー 43 50.9 2.6 51.7 3 .7 53.7 4 .5 56.4 4 .4 注. 6才の男児は混合群と母乳群間にT(0.05)-2.04<3.159で有意差をみとめた。 女児の6才では16.3cm 16.4cm 16.4cmであり, 7才では16.4cm 16.5cm 16.5cm であり, 8才では16.7cm 16.9cm 17.0cmであり, 9才では17.8cm 17.8cm 18.1cm である。三群間の差は極めて少いが,混合・人工群が母乳群より比較的上回っている。 表10によれば,母乳・混合・人工群別の腹囲平均値は,男児の6才では53.2cm 50.6cm 51.3cmであり, 7才では52.4cm 51.7cm 51一.5cmであり, 8才では53.6cm 52.1cm 53.6cmであり, 9才では56.9cm 55.0cm 55.7cmである。母乳・人工群間の差は少いが, 混合群は最も小で, 6才では母乳群に有意な差を示している。 女児の6才では50.9cm 50.7cm 51.4cmであり, 7才では51.4cm 51.8cm 52.1cm であり, 8才では52.8cm 53.9cm 54.8cmであり, 9才では55.7cm 56.5cm 57.3cmで ある。人工群が最も大で混合・母乳群の順に小さい。 2.生後満1才より満9才までの上勝図・腹囲の発育曲線 生後満1才より9才までの上勝囲および腹囲の発育曲線を栄養法別に示すと,男児は次?臥12.1?,

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斎  藤  マ  サ      〔研究紀要 第22巻〕 117 年令 図12 上胸囲,腹囲の発育曲線(男) 年令 図13 上勝囲,腹囲の発育曲線(女) √女児は図13の通りである。 図12により生後滞1才より滴9才までの男児の上勝園は,母乳群が混合・人工群を上回る経過を 示し,次いで人工・混合群の順位である。 腹囲においては,幼児期は人工・母乳・混合群の順位の傾向であったが,学童期には母乳・人工・ 混合群の順位となり,いづれの年令においても混合群は他群より小で, 1才1.5才 2.5才・ 6才 では母乳群間に有意な差を見せている。又1.5才 2.5才では母乳群は人工群に有意差で優れてい る。 図13によって女児の上勝位の経過を検討すれば, 9年間を通じて三群間の差は極めて少い。 腹囲においてほ,幼児期は混合群が上位の傾向であり, 4才∼5才にかけて母乳群間に有意差を 見せているが,学童期では人工・混合・母乳群の順位となり,母乳群は殆どの年令で他群に劣る。 以上のように9年間の頭囲・座高・上勝囲・腹囲等の発育を概括すれば,男児の母乳群は全般的 に混合・人工群を上回る経過であり,女児の混合群は母乳・人工群を上回る経過であった。これら の傾向は,第12報の身長・体重・胸囲の発育とも同じである。この二群が,頭型において他群より ち,ともに頭長型であったことは興味があり,諸発育との間に何等かの関係があるのではなかろう ーノ▲ I I

か畑&頂禰納拷草書の罪育?樽墾<D 5 p,草酎轡J欄間㌍譜V) 'i県人工群が男女

まい UJ7/0日そ

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ほ乳製品等による栄養が,これらの発育に良好な結果をもたらしたのではないかと述べた。しかし ■ 今回の頭田の1才までの増加が,男女児ともに人工群が他の二群より低かった点は,逆の現象とし て興味があり,牛乳或は乳製品等の栄養と脳髄との発育の間に何等かの関係があるのか,或は保育 上の問題も考慮すべきか,いづれにしても乳児期の人工栄養法には疑問が感ぜられる。 結 普五 PR 対象児男児53人,女児43人について,生後6才より9才までの頭囲・座高・上勝囲・腹囲等の 発育を乳児期の栄養法に関連づけて検討し,合せて既報の結果により生下時より9才までの追跡調 査の結果を総括したものである。以上の発育は全般的に男児は母乳>人工>混合の順であり,女児 は混合>人工>母乳群の順である。このように,男女児で栄養群間の発育状況が相異しており,こ れらを考慮すれば,乳児期以降の身体発育は,栄養法の相異による影響よりも,その他の諸要因に 左右されるものと思われる。しかし,人工群の頭型や胸郭(第12報)の特徴と乳児期における頭因 の増加の状況などには疑問があり,これら問題点を究明できなかったことは心残りである。 ・この調査結果をまとめるにあたり,統計その他で鹿大電子計算機室の皆様方の御指導や御協力を 得ましたことを厚く感謝いたします。 参  考  文  献 1)寺田,保志 解剖学雑誌 第40巻第2号1965 2)文部省 学枚保健統計調査報告書1965-1968 3)鹿児島市 鹿児島市学校保健資料1964-1968 4)文部省 学校保健統計調査報告書1968 Conclusion

I studied the girth of the head, the sitting height, circumference of upper arm and the girth of the abdomen, etc. of丘fty-three boys and forty-three girls. They are from six to nine years old infants. I thought how the nourishment was, and concluded the result of the follow up study from丘rst life to nine years old, by synthesizing the previous report and the study of present time more and more.

As a result of this study, I fond that have tendency of looking to predomi-nance of development of male, mother's milk, arti丘cial milk, and mixture milk in order. Such as order, of female, mixture milk, arti丘cial and mother's milk. In this data, recognized the de圧erence of all the development among the nutri・

tional methode between male and female, then, by synthesizing this result, I think that the other elements are in且uenced of all the development than the nutritical are.

It is intellested in the development of forme of head and thrax (Part 12), the growth of the circLImference of the head etc. of early years of infants and I will study this problem more and more and want to do plainly it.

表 9  生後満6才より満9才までの上勝囲     (単位 cm) 年 令 6 7 8 9 悼 栄 養 平 均値 M S D M S D M S D M S D 人数 男 児 母 乳+混合人工 紺 S

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