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Academic year: 2021

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(1)―1 5 9―. 〈指導教員推薦文〉 助教授. 橘. 藤 井 美 和. 尚美「医療を支える死生観――医師へのインタビュー調査を通じて――」. 推薦理由 最優秀論文賞を受賞した橘尚美氏の論文は、現代医療における死のあり方と死生観に焦点を当て、死 を看取る専門職としての医師の死生観について明らかにしたものである。また論文は、医師の死生観調 査の分析から、ソーシャルワークの価値に基づいた死を看取る医療(ターミナルケア)のあり方と、人 の死に関わる医療者自身の福祉という2つの点について今後の示唆と考察を加えている。 本論文の優れている点として、大きく2つのことが上げられる。 まず一つ目は、卒業論文としての精度の高さである。これには、問題意識の明確性、理論と実証研究 についての膨大な文献研究、調査手続きの妥当性、内容分析の緻密さが含まれる。論文全体は、3つの 部分から構成されている。第1部は問題提起と文献レビュー、第2部はインタビューによる質的調査、 そして第3部は提起された問題に対する考察である。第1部では、現代社会の中で死がどのように捉え られているかについて問題提起しながら、近代医学の枠組みを支える理論をレビューし、現代社会の死 生観とターミナルケアを支える死生観について考察を加えている。第2部では緩和ケアに従事する医師 を含む7人の医師にインタビューを行い、医師の死生観形成に影響を与える職業的・個人的要因から、 その死生観とターミナルケアとの関連について分析している。この分析結果から、第3部では、今後の いのちを支える医療の福祉的視点の必要性と、ストレスの高い医療者自身へのケアの必要性を導き出 し、現場のソーシャルワークへの提言を行っている。 優れた点としてあげられる2つ目は、これまでに例をみない医師へのインタビュー調査を実現し、そ こから医師の死生観を分析した点である。死生観の質的調査は、本論文の核となる部分であるともいえ る。論文中言及されているように、これまでの死生観研究においては、学生、看護学生、成人、高齢者 等を対象にしたものは見られるが、医師そのものを対象にした質的調査はみられない。言うまでもなく、 医師は人の死を看取る経験の最も多い専門職者である。しかしながら、医師自身の死生観に踏み込む調 査は、医師自身の協力が得難いと考えられてきた。医師の死生観を問うという、一歩踏み込んだ調査を 実現するための橘氏の努力と熱意は、ここで一言で語れるレベルのものではなかった。本論文は、新た な領域に踏み込んだものとして、今後の医療におけるケアや病む人の全人的・福祉的アプローチに大き く貢献するものと思われる。さらに、今後のターミナルケアの方向と医療従事者自身のケアの必要性に 言及している点も、この論文が評価される点である。患者に対するケアの質は、死を看取る側の身体的 精神的ストレスと関係する。今後医療領域においては、医療者側に対するケアや死生観の自己覚知の重 要性はますます高くなるものである。この点について積極的な考察が加えられている点は、論文の問題 提起に対する具体的考察であるといえる。 以上述べてきたように、本論文は、医師の死生観に焦点を当て、死を看取る医療において福祉の視点 を切り開くという意味で、新しい研究領域を広げた精度の高い論文である。論文全体は8万字を超える 大作であった。 尚、橘氏は卒業後、医療ソーシャルワーカーとして医療現場で社会人のスタートを切っている。彼女 の研究が今後の実践の中で生かされることを、また逆に、彼女の経験が新たな発見や問題意識に結びつ いていくことを期待するものである。.

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