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農林水産省平成19年度みなぎる輸出活力誘発委託事業(加工食品(米・

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第5章 香港における食品表示規制について

1 近年の動向

香港は自由貿易政策を推進しており、貿易障壁は存在しない。関税もかからず、輸入 許可の手続きも最小限に抑えられている。ほとんどの商品が、輸入許可を必要としない。 (輸入手続については、第8章を参照) しかしながら、昨今、以下に述べる「栄養成分表示規制」「原材料表示規制」をグロ ーバル・スタンダードか、あるいはそれ以上の厳しいものにしようとする動きが香港行 政当局内に出て来ており、今後十分な注意が必要である。そのすべてを把握する必要は ないが、乾麺に関わりがあるものについては、押さえておかねばならない。 食品規制については、その動向が現在なお流動的な状況なので、輸出する際には、後 述の関係機関に逐次問い合わせの上、最新情報を入手し、その内容を確認されたい。

2 包装食品の表示に関する一般的な規則

① 包装食品の表示に関する一般的な規則

包装食品は、「香港食品薬品成分及び表示規則」(Food and Drugs Composition and Labeling Regulation)の対象になる。すべての食品製造業者と包装業者は包装済み食 品に、判読できる方法で、中国語もしくは....英語、あるいは両言語で、以下の詳細を表示 することが求められている。 ・食品の名称 ・重量あるいは容量の多い順に並べた栄養成分 ・食用期限及び賞味期限 ・保存方法あるいは使用方法(食用方法) ・製造業者あるいは包装業者の名称、住所 ・食品の数、重量あるいは容量 また、「消費品安全規則」によると、すべての消費財において、安全な保管、使用、 消費、廃棄に関する「警告」や「注意書き」は、判読しやすい文字で商品の目立つとこ ろ、例えばパッケージ、パッケージに貼られたにラベル、あるいは商品の中に挿入され た書類に、英語及び..中国語で記されていなければならない。

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包装食品の表示例

すでに規制が施行(2007年8月)されている「食物アレルギー物質(アレルゲン)」 「食物添加物番号」「日付」を除けば、表示方法はメーカー・販売業者によってまちまち である。写真は中国の乾麺メーカーによる英語表記の一例である。この写真のように必ず しもパッケージに印刷する必要はなく、下記サンプルのように、英語もしくは中国語の「シ ール」もしくは「ラベル」を包装の上に貼って対応しても良い。

DIRECTION もしくは Cooking Instruction 食用方法=食法=調理方法(中国製乾麺)

3 栄養成分表示について

① 栄養成分表示に関するこれまでの経緯

これまでは、栄養成分表示は、香港においては義務付けられてこなかった。しかしな がら、2000年に入り、香港行政府が栄養成分表示の義務付けを検討し始め、200 3年に「原案」が作成された。この「原案」に対して、各国の政府関係者や産業界の代 表者らが働きかけを行った結果、2007年に改めて「修正案」が提案された。「修正 案」は2008年に議会に付される予定である。

② 決定が予想される規制内容(2007年 修正案の内容)

それでは、今後施行されるであろう栄養成分表示規制のどこが日本企業にとっての問 題なのかを明らかにしておく。これらの問題点については、今なお内容が流動的である ので、今後も継続的な注意が必要である。輸出を計画する際には、本章の6の 情報確 認先に連絡し、最新情報を入手されたい。 日本企業にとっての問題点及び「修正案」の内容について紹介する。

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z 「表示項目」の数と種類

日本の栄養成分表示制度は CODEX ガイドラインに準拠した「エネルギー+4項 目」のため、本規則施行後、不足するであろう成分項目については、新たに成分量 を検査した上で、英語もしくは広東語のラベルを貼付しなければならない。なお、 成分分析については各製造者それぞれが所定の機関に依頼することになるが、参考 までに「日本食品分析センター」のアドレスを本章末尾に掲載した。

z 「少量例外措置」の有無と範囲

少量商品を例外とする条項は日本の中小食品企業にとっては重要である。特に、 有機商品、季節商品、新製品などを販売するに際しては不可欠と思われる。 香港政府は“少量”の範囲について、3万ユニットとする模様。

z 「誤差範囲」

許容誤差範囲がゼロの場合は、店頭でのサンプル調査においてわずかな誤差が検 出された場合も「違法」となってしまう。この点についても配慮が必要である。

z 「執行猶予期間」

2年の執行猶予期間が設けられている。2008年の修正法案採択から2年の 執行猶予であるから、修正法案が施行されるのは、2010年の予定である。

2007年修正案(2008年に議会提出予定)

・執行猶予期間2年(施行は2010年から) ・すべての包装包み食品を対象 ・エネルギー(熱量)+7(たんぱく質、炭水化物、脂質、飽和脂肪酸、ナトリウム、 糖質+トランス脂肪酸)及び 強調された栄養成分 ・少量例外措置あり(年間3万ユニットまでとする予定)(*) ・スーパー、百貨店でのフェアあるいは展示会への出品などは、上記少量例外に含む ・レストラン・ケータリングは対象外 ・成分量は 100 グラムあるいは一食あたり、Kcal 又は kj(キロジュール)で表記 ・香港案(エネルギー+7)よりも表示項目が多い場合は、ラベルはそのままで良い (*)同じ商品で「サイズ」や「フレーバー」が異なる場合はそれぞれ3万ユニットまで * 上記の2007年修正法案は2008年に議会に提出され採択の予定ではある が、今なお(2008 年3月現在)様々な議論が続いている状態である。最新の情 報については、本章の6の関係諸機関に問合せの上、各自確認されたい。

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③ 栄養成分表示の実例

2008 年3月現在、まだ「成分表示規制」の採択・施行前であり、表示が法的に義務付け られていないため、表示方法は業者によってまちまちとなっている。下記は中国の乾麺メ ーカーが英語表記の包装を行っている例である。

(矢印) Nurition Facts=栄養成分

Calories:カロリー(熱量)、Total fat:総脂質、Sodium:ナトリウム

Total Carbohydrate:総炭水化物、Protein:蛋白質、Cholesterol:コレステロール

4 原材料表示について

*巻末添付⑤ 食物アレルギー物質・食品添加物・ 日付に関する表示規制資料参照

これについては、すでに「食物アレルギー物質(アレルゲン)」及び「食物添加物」 「日付」についての表示規制が2005年8月に定められ、2年後の2007年8月か ら施行されている。ゆえに、これらの表示規制については、遵守せねばならない。

① 食物アレルギー物質(アレルゲン)規制について

アレルギーを引起す原因(アレルゲン)を含む場合には、成分一覧に表示しなければ ならない。アレルゲンとしては、グルテンを含む穀物、タマゴとその加工食品、魚類と その加工食品、ピーナッツ、大豆、乳及び乳製品、木の実(ナッツ)等があげられる。 アレルゲンの詳細に関しては、巻末資料⑤を参考にされたい。

③ 食物アレルギー物質(アレルゲン)表示の実例

食物アレルギー物質(アレルゲン)の定義は、上記のとおり明らかになっているが、 対応方法は業者によって様々である。下記の写真は中国製乾麺であるが、アレルゲン(グ ルテンを含む穀物)表示のシールをパッケージの上に貼って対応している。(矢印部分)

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③ 食品添加物 国際登録固有番号について

*巻末添付⑥ 食品添加物国際登録番号 資料参照 すべての食品添加物は、機能区分別(酸化防止剤、色素、甘味料等)に添加物の名称 と国際登録固有番号を表示しなければならない。現在、「酸化防止剤を含む保存料」「着 色料」「人口甘味料」がポジティブリスト化(許可されているものだけをリスト化)さ れ、それぞれの物質に番号が割り当てられている。リストアップ(番号付与)されたも の以外の物質を食品に使用すること(輸入、製造、販売すること)は禁じられている。

④ クチナシ色素(食品添加物、着色料)について

香港における食品添加物規制で、今後、日本産乾麺に影響を及ぼしそうなのが「クチ ナシ色素」である。「クチナシ色素」については、許可するか否かを現在協議中であり、 2008年には結論が出る模様である。「クチナシ色素」は日本国内産の黄色の乾麺(中 華麺)に使用されており、仮にこれが使えない(ポジティブリストに入らない)場合、 一部の乾麺製造者に影響が出る恐れがある。これら商品の輸出を計画している製造者は、 引き続き注意が必要である。

⑤ 食品添加物表示の実例

食品添加物表示において、現在最も問題になるのが、上記の国際登録固有番号(INS ナンバー)の取扱いである。2007年8月から、食品添加物を含有するすべての食品 にこの番号を添付することが義務付けられたが、今のところ(2008年3月時点)、 メーカー・販売業者によって表示の方法が若干異なるのが実情である。 ここでは、現在、香港の小売業において行われている食品添加物表示(国際登録固有番 号の表記)の実例をいくつか紹介する。

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z 日本製乾麺[原材料名のみで表示]

下記の写真は日本製乾麺であるが、英語のシールを貼って対応している。

原材料(Ingredient)は小麦粉、塩、油のみであるため、特に添加物の国際登録固有番 号は記載されていない。商品番号(Item No.)、商品名(Noodle)、原材料(Ingredient) 重量(Net Weight)、製造者情報(Manufacturer)、賞味期限(Best Before)の順に表 示されている。

(参考)イタリア製パスタ[番号のみで表示]

同じく、英語のシールを貼って対応している。食品添加物をすべて国際登録固有番号 で表示している。(矢印部分) 商品番号、商品名、重量、製造者情報、賞味期限につ いては、上記の日本製乾麺と同じ表記方法である。

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(参考)韓国製 即席めん[番号と原材料(添加物)名で表示]

英語及び中国語のシールを貼って対応している。すべて番号と原材料(添加物)名を 併記してある。アレルギー物質(アレルゲン)については、まとめてその名称が記載さ れている。 商品番号、商品名、重量、製造者情報、賞味期限については、上記の日本製乾麺と同 じ表記方法である。 (矢印上) INS 番号412:増粘剤(グァーガム) 巻末添付⑥ 添加物番号資料参照 (矢印下) アレルギー物質(アレルゲン)の表示

5 香港における食品表示規制のまとめ [対応のポイント]

香港と日本における規制の相違を踏まえ、以下の点に留意しつつ、英語もしくは....中国 語の「ラベル」を貼付して対応するのが望ましい。

① 基本的なラベル表記事項

食品の名称、重量あるいは容量の多い順に並べた栄養成分、原材料(食品添加物・ア レルギー物質含む)、食用期限あるいは賞味期限、保存方法あるいは使用方法(食用方 法)、製造業者あるいは包装業者の名称・住所、食品の数、重量あるいは容量 * ただし、「栄養成分表示規制」の内容は、まだ未定である。 本章の3に示した20 07年修正案になる可能性が高い。

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② 添加物国際登録(INS)番号・アレルギー物質(アレルゲン)のラベル表記

日本製の乾麺においては、これに該当する物質を含んでいるケースはあまり多くない。 しかしながら、巻末添付⑤「食物アレルギー物質・食品添加物・日付に関する表示規制 資料」、巻末添付⑥「添加物国際登録番号資料」に目を通し、確認しておくことが望ま しい。特に、スープ(粉末・液体)等、乾麺(小麦粉・塩・油)以外の物を同封し、商 品化している場合は十分に注意が必要である。

③ ラベル表記に関する流通業者との連携

下記6の関係諸機関への確認と合わせ、地元流通業(輸入商社・小売店)の担当者との 情報交換を密に行う必要がある。規制内容の動向などの情報収集に加え、ラベル作成・ラ ベル貼付作業についても十分な打合せを行い、極力効率的にこれを行うことが望ましい。

6 最新情報の確認先

・ 香港食物環境衛生署(FEHD): http://www.fehd.gov.hk [問合せ一般](電話)+852-28680000 [表示に関する問合せ](電話)+852-28675581 (メール)enquiries@fehd.gov.hk ・ (財)食品産業センター 海外室 〒107-0052 東京都港区赤坂1-9-13 三会堂ビル3階 03-3224-2337 ・ 全国乾麺協同組合連合会: 〒103-0026 東京都中央区日本橋兜町15-6製粉会館6階 03-3666-7900 ・ 日本貿易振興機構(ジェトロ) 輸出促進・農水産部農水産課 〒107-6006 東京都港区赤坂1-12-32アーク森ビル6階 03-3582-5546 ・ 農林水産省 〒100-8950 東京都千代田区霞ヶ関1-2-1 03-3502-8111 総合食料局 食糧部 食糧貿易課 貿易企画班 ・ 日本食品分析センター: http://www.jfrl.or.jp (栄養成分、添加物に関する分析) * 香港における「輸入禁止」「輸入承認・許可」「その他の貿易規制」については、 巻末資料⑩「香港への乾麺輸出に関する問合せ先一覧」を確認のこと。

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第6章 日本からの輸出手続

香港向け輸出入手続のポイント

*巻末添付⑦ 輸出手続関連 資料参照 香港は自由貿易政策を推進しており、原則的に貿易障壁は存在しないと言って良い。 香港に輸入されて来る物品には関税はかからず、輸入許可の手続きも最小限に抑えられ ている。ほとんどの商品は香港への輸入許可は必要ない。また、日本からの輸出につい ても、例外的に法令により定められているものを除いては、原則自由である。

日本からの輸出規制

日本は、輸出は原則自由で、事実上規制は存在しない。例外的に『外国為替及び外国 貿易法』や『輸出貿易管理令』等といった法令に基づき、農林水産物及びその加工食品 について、輸出通関の前に許可又は承認を受けなければならない品目がある。 具体的品目 管轄官庁 法令 ふすま、こめぬか、魚粉・魚かす、配合飼料、はっかの 種子・苗、しいたけの雑菌、からまつの種子せん、かば、 ならの丸太(そま角及び最小横断面における丸身が 30%以上の製材を含む)、希少野生動植物及びその 卵、種子、はくせい、加工品、それらから派生したもの 経済産業省貿易経済協力局 貿易管理部安全保障貿易審 査課農水産室 同 貿易管理課 ・外国為替及び外国貿易法 ・輸出貿易管理令 天然記念物(原則輸出禁止) 文化庁文化財部伝統文化課 文化財保護法第 44 条 鳥、獣及びそれらの加工品、鳥類の卵など (鳥類:おしどり、やまどり、ひばり、つぐみ 哺乳類:たぬき、きつね、いたち) 環境省自然局野生生物課 鳥獣の保護、狩猟の適正化 に関する法律 麻薬、向精神薬、麻薬などの原料 大麻及び向精神薬取締法 大麻草、大麻草製品 大麻取締法 あへん、けしががら あへん法 麻薬、向精神薬、麻薬などの原料 覚せい剤取締法 犬、猫、あらいぐま、きつね、スカンク 狂犬病予防法 偶蹄類の動物、馬、鶏、あひる、うずら、がちょう、蜜蜂、 ソーセージ、ハム、ベーコンなど 家畜伝染病予防法 顕花植物、しだ類又はたせんたい類に属する植物、有害 植物(細菌、寄生植物など)、有害動物(昆虫、ダニなど) 農林水産省消費・安全局植物防疫課 植物検疫法 厚生労働省医薬食品局監視 指導・麻薬対策課 農林水産省消費・安全局衛生 管理課

所:『関税六法』、税関ホームページ http://www.customs.co.jp

図表6-1】輸出許可又は承認が必要な品目及び管轄官庁

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省 所)があるので、そ れ の窓口で申請が受けられるかどうか、問合せが可能である。 税関ホームページ http://www.customs.go.jp

経済産業省が管轄する品目の手続

「外国為替及び外国貿易法」や「輸出貿易管理令」で規制されている品目を輸出する 場合は、経済産業省の輸出の許可・承認を受けなければならない。申請先は、経済産業 あるいは税関(経済産業省から輸出承認の権限が税関に委任されている場合)である。 経済産業省あるいは税関が輸出(許可・承認)申請書及び必要書類を点検し、申請書 に許可・承認番号を付し、許可・承認の旨を記入し署名すれば、輸出許可・承認証とな る。税関が申請先になる場合は、函館、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、門司及び長 崎の8税関のほか沖縄地区税関が設置されているので、その税関長が申請先となる。ま た、税関支署(68 ヵ所)、税関出張所及び税関支署出張所(127 ヵ ら

畜の伝染性疾病をひろげるおそれのない旨の証明を 要 検査場所もしくは農林水 分であり、再検査がなければ、検査申請から検疫証明書発給ま は2~3日である。 tp://www.maff-aqs.go.jp/tetuzuki

農林水産省が管轄する品目の手続(動物)

日本の「家畜伝染病予防法」、「狂犬病予防法」に該当するものは、輸出検疫を受けな ければ輸出できない。輸出畜産物の検査は、家畜伝染予防法第 45 条に基づき検査が行 われる。輸入国が、輸出国に対し家 求しているものも対象となる。 輸出者は「検疫証明書」を申請する場合、まず「輸出検査申請書」を動物検疫所に、 次に検査対象物を動物検疫所あるいは家畜防疫官が指定する 産大臣が指定する検査場所のいずれかの場所に搬入する。 一般的に申請書類が十 で 農林水産省動物検疫所ホームページ ht

どれだけ、いくら 貿易契約を締結す 前に、輸入者と協議・交渉しなければならないことを説明する。

貿易手続

国際貿易を進めるためには、輸入者を見つけ、どのような商品を、 で、いつまでに取引するかということを決定しなければならない。 しかし、国境を越えるため、言語も慣習も違うということでトラブルが生じやすい。 商社等に任せてしまえばリスク軽減にはなるが、コストは増大する。自分で直接貿易を 行うとする場合は、種々のリスクを理解しておく必要がある。以下、 る

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【図

価 議所(ICC)によるインコタームズと呼ばれる貿易取引条 件 の交渉では、価格に対してどの受渡し条件をと る を事前に決めなければならない。

表6-2】 商談のイメージ

生産者 (輸出業者) 輸入者 1.引き合い・商談・協議 2.貿易条件決め   (引渡し条件、価格、決済方法など) 3.貿易契約締結

貿易建値

日本の輸出者が香港の輸入者に対し商品をいくらで売るかは、その商品をどこで受渡 しするかによって変わってくる。この受渡し条件は価格決定の重要要素である。日本国 内における輸送運賃を含めて売手負担とする場合と、輸送運賃は買手負担とする場合で は、売値が変わるのと同様である。通関料、日本国内の船積費用、船・航空運賃、輸入 諸掛、香港内の輸送費用をどちらが負担するかを決める必要がある(その部分の料金を 格に含めるということは、その部分の業務を実行する責任が生ずることを意味する)。 国際貿易では、国際商業会 が広く使用されている。 例えば、FOB の場合は、貨物受渡し場所は、本船渡し、つまり「船に積むところまで」 であるから、海上輸送以降の手配は香港側の輸入者が行い、日本からの海上運賃以降の 費用も輸入者が負担することとなる。CIF の場合は、運賃(相手国の港まで)を輸出者 が負担する(品代金に含める)ので、輸出者が運送人を選択する。加えて貨物保険(海 上・航空)も輸出者が手配することになる。なお、CFR の場合も CIF と同様だが保険は 輸入者が手配する。このように、受渡し条件によって輸出者が担う責任が変り、それに 伴い売渡し価格も変ってくる。輸入者と か

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【図表6-3】

ICC インコタームズ

2000

の内容

解説 EXW(Ex.Works) (工場渡し) FCA(Free Carrier) (運送人渡し)

FAS(Free Alongside Ship)

(船側渡し)

FOB(Free On Board) (本船渡し)

CFR(Cost and Freight)

(運賃込み)

CIF(Cost, Insurance and Freight)

(運賃保険料込み) CPT(Carriage paid to) (輸送費込み)

CIP

(Carriage and Insurance Paid to) (輸送費保険料込み) DAF(Delivered At Frontier) (国境持込渡し) DES(Delivered Ex Ship) (本船持込渡し) DEQ(Delivered Ex Quay) (埠頭持込渡し)

DDU(Delivered Duty Unpaid) (関税抜持込み条件)

DDP(Delivered Duty Paid) 売主が仕向け地までの輸送費用(内陸を含む)に加え輸入通関費 ⑬ 売主が、輸入通関費用を含まずに仕向け地までの輸送費用(内陸 を含む)までを負担する条件。輸入通関費用・関税は買主の負 担。 ⑫ 貨物を指定仕向け港に持ち込むまでの費用に加え、船からの陸揚 げ費用を売主が負担する条件(輸入通関以降の費用は買主負 担)。船卸にかかわる危険や負担は売主責任である(海上輸送の みに適用)。 ⑪ 貨物を指定仕向け港に持ち込むまでの費用を売主が負担する条 件。本船からの陸揚げ費用は買主負担。輸入通関以降の費用は買 主負担。船卸にかかわる危険や負担は買主責任である(海上輸送 のみに適用)。 ⑩ Dグループ(仕向け地渡し条件) ⑨ 貨物の輸出通関が終了し、国境の指定地点で引き渡される形態(主に陸続きの欧州で使われる)。 CPTに保険料を加えた費用を売主が負担する条件。危険は事故等 による危険負担も貨物が運送人に引き渡された時点で、買主に移 転する。 ⑧ 売主が、自己の指定した運送人に貨物を引き渡すまでの一切の費 用を含んだ価格と、輸送料を負担する条件。 ⑦ CFRに輸送保険料を含んだものが、売主が負担する条件。運賃・ 輸送保険料は売主負担であるが、船積以降の危険は買主負担であ る。 ⑥ Cグループ(運賃込み条件) ⑤ C&Fと同義。貨物の本船積み込みまでの価格(FOB価格)に、仕 向け地までの運賃(Freight)を含んだ費用を売主が負担する。売 主の費用と責任で貨物の船積み・航空機搭載までを行う。 売主は買主が指定した船積港で、搭載船舶・航空機に積み込むま での費用を負担する。貨物が積み込まれて以降の危険は、買主が 負担する。 ④ 売主は輸出通関をすませ、買主が指定した輸送者に引き渡すまで の条件。輸送以降の費用は買主負担で、事故等による危険負担も 貨物が運送人に引き渡された時点で、買主に移転する。 ③ 買主が指定した船積港の船側で積み込み器具に貨物が装着された 時点までの費用を輸出者が負担する。危険も、同時点で輸入者に 移転する(海上輸送のみに適用)。 貨物が現実にある場所で引き渡される条件。工場ならEX.Factory (工場渡し)、倉庫ならEX.Warehouse(倉庫渡し)で、引取り以 降、通関、輸送はすべて買主が負担する)。 Fグループ(運賃抜き条件) ② 取引条件 Eグループ(出荷地点渡し条件) ① (関税込み持込渡し) 用・関税までを負担する条件。

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② 決済方法

貿易取引条件の決定とともに、品代の回収方法を決定しなければならない。貿易開始 以前に相手側の信用調査等は行う必要があるが、ビジネス習慣や言語の異なる国でのト ラブルがあった場合、その処理は極めて難しくなる。 このような事情から、輸出者としては、輸入者の財務能力や信用関係を考え、代金回 収方法を選択することになるが、主な決済方法は、次の「送金決済」、「信用状決済」、 「為替手形」(D/A、D/P)の3つがある。 以下、この3つの決済方法を紹介し、最後にそれぞれのメリット及びデメリットを表 として比較する。信用状決済と為替決済は、代金回収のリスクを考え、銀行が関与する 割合を高めることで、リスクを低くしようとするものである。

【図表6-4】 代金回収の方法

小切手送金 送金決済 信用状決済 郵便送金 電信送金

D/A(Documents Against Acceptance)方式

D/P(Documents Against Payment)方式 代金回収の方法 為替手形

1)送金決済

香港側の輸入者が日本の輸出者に対して自発的に代金を支払う方式である。通常は、 香港の銀行に品代金を振り込み、日本の銀行を通じて日本の輸出者に支払われる。銀行 での手数料は送金手数料のみである。 送金には、船積前に代金を振り込んでもらう「前受け」と、船積後に振り込んでもら う「後受け」がある。言うまでもないが、輸出者にとっては「前受け」が望ましい。「後 受け」の場合、輸入者に「悪意」があった場合は、貨物だけをとられ、送金されないと いうリスクも発生するためである。逆に、前受けのリスクは輸入者に存在するので、送 金決済という方法は輸出入者間に十分な信頼関係があることが条件となる。 また、送金の方法には、小切手によるもの、銀行為替によるものなどがあるが、現在、 ほとんどの場合、銀行為替を電信で送る電信送金(T/T : Telegraphic Transfer)で行 われている。輸出者は、取引銀行に外貨普通預金口座又は当座預金口座を用意する必要 がある。

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【図表6-5】

T/T 送金による決済の仕組み

決済銀行 送金銀行 輸入者 受取銀行 輸出者 ①契約成立 ②送金依頼 ③送金 ④送金到着案内 ⑤受取理由説明⑥入金指示 送金銀行 付替 受取銀行 付替指示 引落連絡 入金連絡 出所:『国際複合輸送業務の手引き』社団法人日本インターナションナルフレイトフ ォワーダーズ協会

2)信用状(L/C : Letter of Credit)決済

信用状決済は、最も基本的かつ確実な決済方法である。輸入者の取引銀行(信用状発 行銀行)が輸入者の L/C 開設依頼に基づき「支払い確約書」を通知銀行(輸出者側)に 発行し、それに従った書類と手形によって支払いがなされるものである。このことは、 「支払い確約書」により、銀行が支払いを補償すること(たとえ輸入者が銀行に品代金 を入金しなくても、銀行が輸出者への支払いを補償する)で、代金回収のリスクがない 点が輸出者にとって魅力である。ただし、海運のみで航空輸送には一般的に使わない。 基本的な流れは、以下のとおりである(図表6-6参照)。 ①信用状発行にあたる輸入側の銀行(L/C 発行銀行)が契約関係にある日本の銀行(L/C 通知銀行:L/C が開かれたことを輸出者に「通知」する銀行)を通じて信用状が輸 出者に送られる。 ②輸出者はその信用状に記載されている条件(商品、価格、輸出時期、貿易建値、銀 行への必要書類の部数等)に従って、輸出船積を行う。 ③船積後、輸出者が L/C に要求されている書類(船荷証券をはじめとする輸出船積に 関する書類)を L/C 通知銀行(買取銀行)に引き渡す。銀行は、その書類が信用状

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に合致したことを条件に、荷為替手形を買い取り、手形代金を支払う。つまり、「貨 物」そのものでなく「書類」の引渡しにより、輸出代金が決済されることになる。 ④L/C 通知銀行(買取銀行)は、受領した書類を輸入国の L/C 発行銀行へ送る。L/C 発行銀行は輸入者から手形代金が支払われているのを条件に、船積書類を輸入者に 引き渡す。 このような仕組みで代金回収リスクが減らせる理由は、輸出者が銀行に提出する書類 の中にある、運送人が発行する船荷証券がないと、輸入者は貨物を引き取ることができ ないためである。海運貨物の場合、L/C が要求する書類のなかで、B/L(Bill of Lading : 船荷証券)と呼ばれる船会社等海上運送を行う業者が発行する証券がある。B/L は、 ①海上運送人が貨物を受け取ったという受領証であるので、着地でこれを提示するこ とにより、海上運送人へ貨物の引渡しを求める権利証券となる。 ②また、当該書類を持っている者が貨物の所有権を有するという担保にもなる。 ③銀行はこの有価証券である書類に裏書きをすることで、所有権を譲渡できる。また、 銀行は荷受人を輸入者ではなく銀行の指定人宛にした B/L を要求することもできる。 このように、B/L は貨物の運送状としての役割以上の担保性や流通性を持つ「有価証券」 としての特徴をもっている。 つまり、銀行は輸入者から代金が支払われない場合は、この証券を転売して代金を回 収するという手段を保有することで、代金回収のリスクを最小限にすることが可能なた め、輸出者に対しても支払いが補償できることになる。輸出者にとって、最も確実な代 金回収方法ではあるが、L/C 開設銀行は輸入者の口座内容等を十分チェックする必要が あるので、L/C 開設料として相応の手数料(一般的には商品代金の 0.2%から 0.5%、 最低金額でも 1 万円程度)を徴収する。 銀行が介入することにより支払いが確実となるが、オリジナル書類が L/C 発行銀行に 届くまで時間がかかり、輸入者がオリジナル書類を入手するのが遅くなり、迅速な貨物 の引き取りができなくなるケースが起こりやすいことが弱点となる。近年では、船の速 度も速くなっており、銀行の事務処理が遅れると輸入者が銀行からオリジナル書類を受 領する前に、貨物が到着するといった事態も起こりうる。 この欠点は、航空貨物にとっては致命的である(航空便は搭載翌日には輸入国に到着 しているので、オリジナル書類が銀行を経由していては輸入通関が大幅に遅れる)。こ の欠点を補うため、航空輸送では、航空運送状(Air waybill)に船荷証券がもつ権利 証券・担保証券の機能を消滅させた。つまり、迅速な引取りを可能とするために航空運 送状(Air waybill)は貨物に付随して送られ、着地で輸入者(あるいは、その指定を受 けた通関業者やフォワーダー)に渡され、輸入通関がかけられ貨物が引き取られる仕組 みとした。しかしこの仕組みでは、貨物が代金回収なしに引き取られるリスクがあるた め、L/C 決済の場合 Air waybill は、Consignee 欄に荷受人名を記載する記名式で発行

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されるので、Consignee 欄に L/C 発行銀行を指定することでリスクを回避している。 航空便使用の場合は、送金による前受け決済が望ましい。

【図表6-6】 信用状による決済の仕組み

L/C通知銀行 (買取銀行) 輸出者 (受益者) 輸入者 (L/C発行依頼人) ①契約成立 ④ L / C 発 行 通 知 ③L/C発行 ② L / C 開 設 依 頼 ⑩ 手 形 代 金 支 払 い ⑧荷為替手形送付 ⑨手形代金支払い L/C発行銀行 (取引銀行) ⑪ 船 積 書 類 引 渡 し ⑥ 荷 為 替 手 形 買 取 り 依 頼 ⑦ 手 形 代 金 支 払 い ⑤貨物船積

3)D/P(支払渡し)

、D/A(引渡し)決済

D/P 決済とは、輸出者(債権者)が、商品代金回収のため、輸入者(債務者)宛に振 り出した外国為替手形を輸出国外国為替銀行に預託し、その取立てを委託した場合、当 該銀行が輸入者の為替手形支払いを条件に船積書類を輸入者に渡す方式である。 D/A 決済とは、輸入者が商品代金の支払いを約束した場合(具体的には期限付き為替 手形引受け)を条件に、船積書類を輸入者に渡す方式である。 つまり、L/C 決済の場合は、輸出代金は銀行が保証するが、D/P、D/A 決済の場合は、 輸出代金を銀行が保証するわけではない。 輸出側の仕向け銀行は、輸出入者の信頼性や銀行に提示された書類(為替手形と船荷 証券を含む船積内容を示す書類一式)をチェックし、信頼度がある場合は、書類が提示 された時点で、代金が支払われる。信頼度がない場合は、取立てに回され、輸入者側が 支払いをきちんと行ったことが確認されるまで、銀行から輸出代金が払われない。 D/P 方式の場合、輸入者が代金を支払わなければ銀行は書類を渡さないため、債権回 収のリスクが小さいが、D/A 方式の場合、手形を引き受けた(Acceptance)時点で書類

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が引き渡されるため、代金回収のリスクは高くなる。対抗手段は、輸出側の日本政府の 輸出手形保険でリスクを軽減するという程度しかない。

【図表6-7】

D/P・D/A 決済の仕組み

決済銀行 仕向銀行 輸出者 取立銀行 輸入者 ①契約成立 ⑦為替手形送付、取立て依頼 ⑧ 為 替 手 形 提 示 ⑨ 手 形 引 受 け ③I/P入手 ③B/L入手 船会社 保険会社 船会社 ②輸出手形保 険バイヤー登録 ⑤ 手 形 買 取 り 代 金 支 払 い 日本貿 易保険 ⑥輸出手形保 険付保手続 ⑪ 手 形 決 済 ⑩引受け通知 ⑫手形決済通知 ⑩ 引 き 受 け 通 知 ⑫ 手 形 決 済 通 知 ⑬決済指示 ⑬入金通知 ⑮B/L提示 ⑯貨物引渡し ④ 荷 為 替 手 形 取 立 て ま た は 買 収 依 頼 出所:『国際複合輸送業務の手引き』社団法人日本インターナショナルフレイトフォワ ーダーズ協会

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【図表6-8】 各決済方法の比較

比較項目 送金決済 信用状決済(L/C) D/P(支払渡し) D/A(引渡し)決済 輸出者にとっての代金回収 リスク ・前受けならなし ・後受けなら高い ・低い(支払い確約に基づき、輸  入者からの回収ができなくても  銀行が保証) ・高い。特にD/Aは高い 決済に係わる費用(銀行手 数料) ・安い ・高い ・比較的安い どのように支払われるのか ・輸入者が支払う ・支払い確約に基づき信用状発行 銀行が支払う ・為替手形に基づき輸入者が支 払う メリット ・銀行手数料が安い ・輸入者が早く輸出関連 書類を入手でき、輸入準 備ができる。航空輸送に 最適 ・代金回収が確実 ・L/Cに比較して書類作成等の負 担が小さく、手数料も安い デメリット ・後受けの場合は、入金 リスクがある ・銀行経由のため、書類が輸入者  に届くまで時間がかかる ・航空輸送では原則使えない ・銀行の要請する書類作成等の事  務負担が大きい ・入金リスク(特に、D/A) ・銀行経由のため、書類が輸入  者に届くまで時間がかかる

4 物流業者の選択

ビジネスの具体的内容や支払い方法が決まれば、その契約内容に沿って実際の輸出船 積手配が行われる。船積手配は、具体的に、①商品を実際に船や航空機に搭載する手続 きと、②通関手続の2 つに分けられる。前者は船会社や航空会社に搭載を手配すること、 後者は税関から輸出許可を取得することである。 この2 つの業務は、輸出者が自ら行うこともできるが、専門業者に委託するのが一般 的である。 専門業者には、通関業者、倉庫業者、梱包業者、混載業者など業務によってそれぞれ プロが存在している。輸出者にとっては、それぞれの業務を個々の専門業者別に依頼す ることも可能であるが、すべての業務を一本化して、ひとつの業者に依頼する方が効率 的である。 すべての業務を請負う業者の代表例として、フォワーダーといわれる業者がいる。フ ォワーダーは、船会社や航空会社を利用し、自らの運送責任で運送を請け負う。また、 通関業務を兼業し、船積業務を一貫して提供している。さらに、香港に現地法人等の拠 点を設けて、香港での輸入通関や保管や輸送業務まで行い、日本から香港の顧客戸口ま での一貫輸送を提供する会社もある。 海運貨物については、業界団体である日本インターナショナルフレイトフォワーダー ズ協会(JIFFA)のメンバーとして 331 社を挙げることができる。その加盟企業につい てホームページ(http://www.jiffa.or.jp/members/index.html)より検索可能である。 また、航空フォワーダーについては、航空貨物運送協会(JAFA)を組織しており、 正 会 員 数 125 社 が あ る 。 そ の 加 盟 企 業 は ホ ー ム ペ ー ジ よ り 検 索 可 能 で あ る 。

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(http://www.jafa.or.jp/outline/index.html) さらに、通関業者(フォワーダーが兼ねているケースが多い)の団体としては通関業 連合会があり、大規模港湾ごとに支部を持ち、業者が登録している。

【図表6-9】 通関業会リスト

業会名 住所 連絡先 東京通関業会 〒135-8615 東京都江東区青梅 2-56 東京 港湾合同庁舎内 TEL 03(3529)0728~9 FAX 03(3599)1541 横浜通関業会 〒231-0001 横浜市中区新港町 1-6-1 横浜税関新港分関内 TEL 045(201)0614 FAX 045(212)1992 神戸通関業会 〒650-0041 神戸市中央区新港町 14-1 生 活用品振興センタービル内 TEL 078(331)3996 FAX 078(331)1013 大阪通関業会 〒552-0021 大阪市港区築港 2-1-2 第一大 阪港ビル内 TEL 06(6573)3896 FAX 06(6573)3990 名古屋通関業会 〒455-0032 名古屋市港区入船 2-1-17 名古屋港湾会館内 TEL 052(661)1223 FAX 052(653)8319 門司通関業会 〒801-0841 北九州市門司区西海岸 1-3-10 門司港湾合同庁舎内 TEL 093(321)6212 FAX 093(321)6212 長崎通関業会 〒850-0862 長崎市出島町 1-36 長崎税関 内 TEL 095(820)7228 FAX 095(820)7234 函館通関業会 〒040-0061 函館市海岸町 22-5 共栄運輸 (株)ビル内 TEL 0138(42)5010 FAX 0138(42)5020 沖縄通関業会 〒900-0001 那覇市港町 2-15-1 海邦港運ビル内 TEL 098(866)3311 FAX 098(868)3307 2005 年 8 月 1 日現在

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第7章 日本・香港間の国際輸送

輸出手段・港湾の決定

外国と貿易をしようとする際に、輸送手段の選択は重要である。香港への輸出は、航 空機あるいは船で行うことになる。航空機で運べば輸送時間は短くなるが、一方運賃は 高くなる。船で運べば運賃は安くなるが、代わりに到着まで多くの日数がかかる。 海運利用の場合、日本の国際港湾は、京浜(東京・横浜)、東海(名古屋)、阪神(大 阪・神戸)、関門(下関・門司)が中枢港湾とされ、特に京浜、東海、阪神に集中して いる。ただし、コンテナ化の進展とともに、1980 年代以降、各地方に外国貿易船が寄 航できる港湾「地方港」が整備されている。これらの港湾には、香港及びアジア近隣諸 国との航路が開設されている。週に1~2船程度の寄航しかないが、もしスケジュール があえば、これらの港を利用することは、コストの点から魅力的である。なぜなら、全 体輸送コストのなかで日本国内の輸送費用は大きな部分を占めているからである。地方 の輸出者の場合、日本の中枢港湾から外国に商品を運ぶ運賃と、日本の地方から中枢港 湾まで輸送するコストに差がなく、輸送距離を考えると、日本の国内運賃が割高である と感じる場合が多く、コスト削減の観点からは、最寄りの港から輸出することも検討す べきである。航空の場合は、成田空港が圧倒的なシェアを占めている。その他、国際空 港としては大阪(関空)、中部、福岡などがある。各地方にも空港はあるが、国際線の 場合は便数も路線も限られている。

2 輸出梱包

一般に、海外特に、アジア地域での内陸輸送では、 ・道路輸送では、悪路やメンテナンスの悪い車両による振動・揺れ ・ドライバーによる急発進、急停車など乱暴な運転 ・荒い荷扱い といったリスクがあり、日本国内向けの梱包仕様より厳重な仕様が求められる。 海上コンテナの場合、保管効率を高めるため、2段程積み重ねる場合があるため、貨 物の積み重ね荷重に十分耐えられる梱包仕様でなくてはならない。

3 船積手続

(1)海上輸送の手配

現在、国際海上輸送のほとんどは、直接船に貨物を積むのではなく、国際規格の海上 コンテナに詰めて輸送されている。海上コンテナの国際標準サイズは 20 フィートと 40 フィートがある。航空貨物の場合も、航空機専用コンテナが用いられるが、航空機専用 パレットに積み付けられて運ばれることも多い。

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海上コンテナは基本的に船会社の持ち物であるため、輸出者は利用しようとする船会 社からコンテナを借りる必要がある(リース料は運賃に含まれる)。どの種類・サイズ のコンテナを何本必要とするかを船会社に伝え、事前に必要なコンテナを確保する必要 がある。 海上コンテナの場合は、20 フィートコンテナでも 30 ㎥(11 トン車)程度の大型容器 であるため、少量貨物の場合はコンテナ1本を借りる必要はなく、1 本に満たない場合 は、混載貨物として積み合せ輸送するのが一般的である。 また、コンテナの種類もさまざまであるが、普通貨物を積むコンテナ(ドライコンテ ナ)、食品によく使用される冷凍コンテナ(リーファーコンテナ)などがある。冷凍コ ンテナは、通常マイナス 20℃からプラス 20℃までの設定が可能である。しかし、冷凍 用の電源プラグ数に限度がある。さらに冷凍機の運転コストがかかることから運賃が高 くなる。 一方、航空貨物の場合、どれ位のスペースが必要かをフォワーダーや航空会社にオー ダーして確保するので、航空コンテナ換算でのオーダーは行わない。海上コンテナに商 品を積み込む作業は輸出者が行うケースもあるが、航空の場合は輸出者が行うケースは ない。

【図表7-1】 コンテナサイズの目安

ドライコンテナ リーファーコンテナ 20 フィート 40 フィート 20 フィート 40 フィート 長さ 5,899mm 12,033mm 5,486mm 11,565mm 幅 2,340~2,352mm 2,340~2,352mm 2,270~2,276mm 2,258~2,264mm 内寸 高さ 2,272~2,386mm 2,272~2,386mm 2,198~2,334mm 2,168~2,204mm 最大積荷重 21,780kg 28,740kg 21,250kg 26,380kg 注1)内寸はあくまでも目安であり、材質・種類で 20mm 程度の差がある。 20 フィートコンテナの場合 25~28 ㎥、40 フィートでは 55~58 ㎥が最大積載容積となる。 2)高さにおいては、この基準より 30cm 高い背高コンテナが使われるようになってきた。 ただし、この場合、国内走行の高さ規制 3.8m に抵触する可能性がある。国、県、市町村が定めた道 路でないと背高コンテナは使用できない(輸送ルートの事前許可が必要)。 3)冷凍コンテナには冷凍機が設置されているため、普通のコンテナに比較して内寸が小さく(特に長 さ)、積載量も若干少ない。出所:『貿易物流実務マニュアル』成山堂書店 より作成。

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ISO 標準コンテナ

20フィートコンテ 40フィートコンテナ

(2)輸出・通関の流れ

① 海運貨物の場合

* コンテナ単位に仕立てる場合

輸出を行うには輸出申告(通関)が必要である。輸出する貨物は原則として税関の定 める保税地域に搬入されてから、税関に対する輸出申告が求められる。保税地域は通常、 港湾地区に設置されているが、一部の内陸地にも設けられている。 保税地域で通関許可を得た貨物は、バンニング(コンテナ詰め)され、その後船会社 のコンテナヤード(CY、受け場所)に締切日までに保税輸送される。しがたってそれに 間に合うように、通関書類と貨物を指定された保税地域に搬入する必要がある。 保税地域に搬入してから輸出申告を行いバンニングすることが基本であるものの、コ ンテナ単位で貨物を輸出する場合は、生産者又は輸出者の工場倉庫でコンテナ詰めも可 能である。この場合、保税地域以外でバンニングされたコンテナを港の保税地域に搬入 し、通関を行い船積をする形である。保税地域搬入⇒通関⇒バンニング⇒船積みという 手順から、バンニング⇒保税地域搬入⇒通関⇒船積みという手順になる。これは「工場 バンニング」と呼ばれている。工場(あるいは自分の貨物がある場所)でバンニングす ることによって、①商品の積み替え回数を減らし、鮮度を保持できる、②自分でバンニ ング作業するために、業者に払うバンニング作業料を節約できる、という長所がある。 ただし、自分の場所でバンニングするには、税関長に対して、『コンテナ扱い申出書』 を提出し、受理されている必要があり、以下の条件が課される。 ・ 当該申請が受理されるためには、当該商品の検査の必要性が少なく、かつ検査 を実施する場合に支障がないこと ・ 輸出者・通関業者が通関手続上、十分な知識と信用を有すると認められること ・ 複数の輸出者の貨物が同一コンテナにバンニングされていないこと ・ バンニングの際、税関長が認めた公認検定機関により、品名、数量などの確認 及び封印が施されていること。なお、恒常的に同一商品を輸出する場合には、

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括委託することが可能である。

* コンテナ単位に仕立てるほどの量が無い場合(混載扱い)

主に以下の2つの方法がある。 ① 税関の定める保税地域に搬入した後輸出申告し、許可後、運送人(船会社)の 少量貨物用の荷受場所(CFS:コンテナ・フレート・ステーション:Container Freight Station)に搬入する。運送人により他の少量貨物と合わせてバンニン グされる。 ② 直接、運送人の CFS に搬入し、そこで通関を行い、許可後、バンニングされる 方法である。

【図表7-2】 輸出・通関の流れ(海上輸送の例)

【図表7-2】 輸出・通関の流れ(海上輸送の例)

フォワーダー企業 荷主 (生産 者また は輸出 者) ①搬入 書類の流れ ものの流れ 一 括 依 頼 輸出検査機関 (農林水産省、経済産業省など) 申告 ②輸出 保税蔵置場(又は CFS) ⑤コンテナ詰め (バンニング) ⑥搬入 CY(コンテナヤード)

⑦船積

④ ③ 可 許 必要 なら 税関 検査 書類 審査 税関 事前衛生証明書など 取得済み 代行

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航空貨物の場合

航空輸送の場合は、①実際の航空機を持っている航空会社と直接契約を行う、②航空 フォワーダ(混載業者)を利用する、という2つのパターンがある。日本では、輸出通 関やその他の手続を一括して委託する②の方法が主体であり、航空会社と直接取引方式 は貴重品や混載サービスがない仕向け地向けの貨物などに限られる。 ほとんどの航空輸出貨物は航空フォワーダーに依頼するため、フォワーダーが輸出者 に代わって航空会社からスペースを調達し、貨物を輸出者から引き取り、自身の保税蔵 置場など保税地域に仮置き後輸出通関を行い、航空コンテナ詰め作業を行った後、航空 機搭載となる。

(3)通関用書類の準備

*巻末添付⑧ 国際運送関連 資料参照 貨物が保税地域に搬入された後、輸出通関が可能となるが、利用する船会社やフォワ ーダーによって指定する保税地域が異なるので、輸出者が自分で搬入する場合には、搬 入場所を確認する必要がある。貨物の引取り業務も含めて通関業者やフォワーダーに委 託することも可能である。 輸出通関では、通関業者が輸出申告書など申告用の書類を作成し税関に提出、許可を 受けることになる。現在、日本では、海上・航空貨物とも NACCS(Nippon Automated Cargo Clearance System)といわれるコンピュータシステムにより、税関と通関業者がオンラ インで結ばれており、極めて迅速に許可が取得できる。 ただし、通関業者が申告を行うためには、輸出者から以下の情報の提供が必要となる。 ① 貨物内容(価格・数量) ② 輸出入者情報(会社名、住所など) ③ 積載する予定の船・航空機情報 以上の情報を提供するにあたり、輸出者は通常、図表7-3に挙げる書類を用意する。 これらの書類は、輸出通関に使われるだけでなく、船舶や航空機に搭載後に運送者から 発行される船荷証券(B/L)又は航空運送状(Air waybill)とともに、銀行決済の場合 は、銀行に提出され、代金の回収に使われる。輸入者は銀行経由でこれらの書類を入手 し、輸入通関を行い貨物を入手する。

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【図表7-3】 輸出通関に必要な書類(輸出者が用意する書類)

書類名 書類の性格 含まれる情報 船積指示書 どの船・あるいはいつの航空機に船 積するかを指示する ・輸出入者の名称 ・積地&仕向け地 ・貨物の内容や個数 インボイス (仕入書) どのような品物を、いくらで、どれ くらい売るかという貨物の売買内容 ・売主・買主 ・商品名 ・数量 ・単価 ・価格 ・貿易建値 パッキングリスト (梱包明細書) 梱包内容 ・個数 ・入り数 ・重量 ・容積 ・外装のマーク 検疫合格書 (必要な場合) 検疫に合格していることを証明する

(4)通関後の処理

船会社・航空会社は、寄託された貨物が輸出許可されたことを確認した上で、船・航 空機に搭載を行う。 これで輸出船積業務は終了であるが、輸出者には輸出代金を回収する業務がある。代 金の回収は「第2章Ⅰ.貿易手続を理解する」で述べた代金決済の方法により異なるが、 代金回収のための手続と、輸入者への書類送付手続が必要となる。 そのために、以下のステップを踏んで通関後の処理を行う必要がある。 ① 輸出者は、輸送業者から、船の場合は船荷証券、航空の場合は Air waybill を入手 する。運賃を輸出者側で負担する場合は、運賃を支払わねばならない。通常この書 類は、通関・船積みを依頼した業者(フォワーダーや通関業者)が、運送人(船会 社・航空会社)から受領し、輸出者に送ってくれる。 ② 銀行を経由する取引の場合は、銀行の求める書類を一式取り揃え、銀行に提出する 必要がある。

【図表7-4】 通関後に銀行に渡す必要書類(輸出者が用意する書類)

・荷為替手形(銀行あるいは輸入者に振り出したもの) ・船荷証券(B/L)あるいは航空運送状(Air waybill) ・パッキングリスト(すでに輸出通関時に作成済み) ・インボイス(輸出通関時に作成済み)

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③ 輸入者に対しては、船積みが完了したという連絡を行うとともに、輸入通関や貨 物の引取りに必要となる書類(主なものは、インボイス、パッキングリスト、B/L あるいは Air waybill)を送付する。輸入者が早めに搬入準備に入れるよう、コピ ーでも早めに送ることが望ましい。 特に航空の場合、迅速性が肝要であるので、輸出者からの迅速な情報提供が不可 欠である。海運の場合で、かつ銀行経由で書類が送られる場合、書類が輸入者の手 に渡るまでに時間を要するので、速やかに輸入者へ船積み情報を入れることは、 後々のトラブルを避けることにもつながる。

【図表7-5】 通関とその後に輸出者が行う事項

【図表7-5】 通関とその後に輸出者が行う事項

輸出者 税関 通関業者・フォワーダー 保税地域 船会社等、運送者 通関後 船積み後 Airwaybill(航空) 検疫合格書(あれ ば) 書類作成 船積指示書 パッキングリスト インボイス 申告書作成 輸出貨物搬入 申告 許可 審査 船積・搭載 船荷証券の発行 買取書類の準備 船荷証券の回収 B/L(船) 銀行 への提出 輸入者 への送付 確認 輸出通関許可 為替手形 添付

(5)国際輸送コスト

(5)国際輸送コスト

ここでは、国際運賃の計算方法を述べる。これにより、自分の貨物の数量が分かれば 概算の運賃が算出できる。海運の場合は、コンテナ単位の船積とコンテナ未満の混載貨 物扱いの船積みという2つのパターンがあるが、航空の場合は 1 つのパターンしかない。 ここでは、国際運賃の計算方法を述べる。これにより、自分の貨物の数量が分かれば 概算の運賃が算出できる。海運の場合は、コンテナ単位の船積とコンテナ未満の混載貨 物扱いの船積みという2つのパターンがあるが、航空の場合は 1 つのパターンしかない。

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海上輸送の場合

コンテナ単位の場合

コンテナ 1 本当たりの運賃×コンテナ本数が基本の運賃である。これに、燃料(重油) 価格上昇に伴う費用や、為替変動に伴う費用(多くの場合、運賃はドル建てであるので) といった、市況により変動する追加料金(サーチャージ)と書類作成料が加算される。 コンテナ単位の海上運賃算出方式 コンテナ 1 本当たりの料金 × 本数 + 燃料・為替等のサーチャージ + 書類作成料

混載貨物の場合

貨物の重量(t)あるいは容積(㎥)の大きいほうに、基本料金をかけて算出する。 この基本運賃に、コンテナ詰め料金(運送人がコンテナに各荷主の混載貨物をバンニ ングする費用で、通常 CFS でコンテナに積み込まれるので、CFS チャージと呼ばれる) が加算される。 混載の海上運賃算出方式 (貨物の重量あるいは容積 × 料金) + 燃料・為替等のサーチャージ + CFS チャージ

航空輸送の場合

航空運賃は、重量あるいは容積の大きい方に、基本料金をかけて算出する。ただし、 容積が 6,000 ㎤を超える場合は、6,000 ㎤で割った重量(容積重量、単位は kgs)と実 重量のどちらか大きい方が適用される。また、基本料金は一律ではなく、重量(容積の 場合も、上記で調整したものは「重量」とみなす)が増えるごとに単価が安くなる。 航空運賃の国際輸送運賃算出方式 公表運賃×重量(容積重量又は実重量の大きい方)

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第8章 香港の輸入手続

1 輸入手続

香港は自由貿易政策を推進しており、原則的に貿易障壁を存在しないと言って良い。 香港に輸入されて来る物品には関税はかからず、輸入許可の手続きも最小限に抑えられ ている。ほとんどの商品は香港への輸入許可は必要ない。しかしながら、昨今、香港内 で販売する食品の栄養成分表示をグローバル・スタンダード(国際標準)に合わせよう とする動きが、香港の行政当局内に出て来ており、これに対しては、別途十分な注意が 必要である(第5章参照)。また、香港においては輸入手続の電子化が進んでいる。

2 輸入申告

*巻末添付⑨ 輸入手続関連 資料参照 香港の輸出入条例(第 60E 章)、輸出入(登録)規則に基づき、輸入業者は商品の輸 入から14日以内に必要事項を正確に漏れなく記載した「輸入報告書」を提出する必要 がある。この輸入申告は原則的に現地の輸入業者が行うが、もちろん日本側のメーカー もおおまかな流れを把握しておく必要がある。

① オンライン申告とオフライン申告

現在、香港の輸入申告はオンライン方式とオフライン方式の2つにより行われる。2 000年4月以降、登録はすべて、Tradelink Electronic Commerce Ltd(トレードリ ンク)を使って行われなければならない。この Tradelink のオンラインサービスは、 香港政府との契約のもとに提供されている。

オンラインで輸出申告が行えない貿易業者は、最寄りの Electronic Trading Access Service(ETAS)センターへ行って書類を提出する。既にオンラインでの直接提出方式 に切り替えている貿易業者やその他の企業は Tradelink が提供している電子データ交 換サービスで、輸入申告書を各々のパソコンから政府のコンピュータシステムへ送信す る事ができる。輸入申告の大まかな流れは下記⑥のとおりである。 なお、通常、香港税関は通常1日で輸入申告を処理する。

② 輸入申告にかかる経費

・ 電子データ交換(EDI)による申告で、香港政府に 0.5 香港ドル(約8円) ・ 輸入申告1件で、Tradelink に 12.2 香港ドル(約195円) ・ 輸入申告のサービスセンターETAS への書類提出で 30.5 香港ドル(約488円)

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③ 輸入申告に必要な情報

・ 輸入業者の基本情報 ・ 荷積み港、輸出国 ・ 輸送方法 ・ 商品の詳細(パッケージの数と種類、荷印とコンテナ番号など) ・ 輸入数量とCIF価格

④ 輸入申告にかかわる罰則

香港政府が指定する公式な衛生証明書は無い。ただし、申告内容が不正確と見なされ た場合は罰金1万香港ドル(約160,000円)が課せられる。

⑤ サンプル検査

また、香港食物環境衛生署が、通関の過程において、商品内容の抜取り検査を実施す る場合がある。これには化学分析、細菌検査が含まれる。輸入業者は輸出元の当該当局 から人体摂取の上で問題ない旨の衛生証明書を取得することが奨励されている。

⑥ 香港における輸入申告

【図表8-1】 香港における輸入申告の流れ

日本の輸出業者 発注 香港の輸入業者 契約 商品 「出荷通知」「着荷通知」「輸出関連書類」 *「着荷通知」は船会社から入手 商品の受取りと、「出荷通知」 「着荷通知」「輸出関連書類」 の査収 通関の際、食物環境衛生署が、 抜取り(サンプル)検査を実施 香港の輸入業者が商品を税関に申告

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3 輸入と販売に関する規定

乾麺の輸入と販売に関する固有の規定はない。主な規定は上記の「輸入申告」及び第 5章の「食品成分及び表示に関わる規定」のみである。

4 サンプルの輸出について

香港では、無料で配布されるサンプルと展示会後に正式に輸入される展示品(展示会 のための輸出物)には物品税はかからず、申告も必要ない。世界貿易機構(WTO)の 「商業用サンプルと広告宣伝用資料の輸出促進のための国際条例」では、加盟国はその 領土に輸入されるあらゆる種類の商品のサンプルについて、そのサンプルの価値が無視 しうるほど低く、かつそのサンプルが代表する種類の商品への発注を促すためにのみ使 われる場合は、輸入税を免除することと規定している。

5 偽装表示への対応

香港での輸出にあたって、あらかじめ適切な商標登録を行うなど、偽装問題の防止対 策を講じることが肝要となる。偽装商品によって日本産品のブランド力が低下すること を抑える努力も必要となる。

6 代金回収

代金回収不能を避けるには、次のような手法を活用されたい。

① 出荷量を小口に

新規取引の場合、相手側の信用情報を確認する必要がある。また、相手の販売力を把 握した上で、一回一回の出荷数を決める。相手の力を確かめないうちに、大量販売を期 待して、一気に送るのは禁物である。

② 現金取引

香港の中小企業では、取引における現金決済の比率は5割前後であり、これは他国と 比べても非常に高い水準になっている。 しかし、現金決済を要求すれば、販売価格を買いたたかれるという実状も存在する。 これを回避するためには、商品力、販売チャネルの構築によって、一定の価格維持を保 つという戦略が求められる。つまり代金回収の問題は、財務部門・営業部門だけにかか わる実務的な問題ではなく、香港市場での戦略全体で取り組んで初めて解決できる問題 である。

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③ 契約締結

香港の契約法では、口約束には法的な効力を認めていない。紙に書かれ、当事者間の 合法的な署名があり、当事者がそれぞれ正本を交換して所持し、かつ行政法で必要とさ れている各種許認可を取得し、義務付けられている登記を済ませて初めて合法的契約と して効力を持つと定められている。 また、合法的経営範囲を逸脱した取引、あるいは担当者個人の勝手な無権限契約署名 は法的効力に疑問があることから、取引相手の営業許可証を確認して相手方の経営範囲 内の合法的な商取引であるかを確認し、同時に法定代表者である董事長(日本の代表取 締役に相当)の意思も確認しておく必要がある。 「契約をしたのだから代金は支払ってくれるはず」との思い込みによって回収困難な状 況に遭遇し、「信用できない」と非難をしても問題解決にはならない。 代金回収不能に遭遇した場合は、裁判を起こすことは可能である。

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第9章 香港市場へのアプローチ

本章では、香港市場への乾麺の輸出を「事前準備」「香港訪問」「マーケティング」「表 示規制チェック」「輸出手続」の4つに分け、以下のとおりまとめた。必ずしもこの流 れのとおりに進まないこともあり得るが、基本プロセスとして理解していただきたい。 事前準備 香港訪問 マーケティング 表示規制チェック

1 2 3 4

輸出入手続

1 事前準備

本ハンドブックの第1章~第4章を参考に、事前の準備を進める。輸出を計画するに 際しては、輸出を単独の「事業」としてとらえ、事業の「目標(売上・利益)」「標的市 場(ターゲット)」「輸出する製品(ブランド)」「価格帯」「流通(小売り・流通ルート)」 について、大まかにプランニングすることが必要である。精密な計画を立てるに越した ことはないが、それよりも、「どんな相手に、どこで、何が売れそうか?」について、様々 な情報元を活用して、考えてみることが重要である。 場合によっては、国内の商社関係者、小売関係者等から情報を入手することも必要と なる。さらなる情報の獲得には、巻末資料⑩に掲載した問合せ先も活用していただきた い。また、第10章に掲載した食品輸出の支援事業も、これを積極的に活用されたい。

2 香港訪問

香港訪問の目的は2つある。1つはマーケット(市場)を実際に見ることによって、麺 の消費実態を肌で知るということである。2つ目の目的は、現地パートナー(現地流通 業者)を選択し、接触することである。マーケット(市場)視察に関しては、本ハンドブ ック第1章、第3章、第4章を参考にされたい。また、パートナーとの接触に当たって は、第5章(香港における食品表示規制)にも目を通し、食品規制問題についての基本情 報を共有できるようにしておくことも必要である。

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① マーケット(市場)視察

本ハンドブックの第3章、第4章を参考に、乾麺の販売現場(小売店舗)を中心に視察 を行う。合わせて、競合する製品(外国製品、ゆで麺、PB 品)についても実際に販売現 場を確認しておくことが必要である。また、外食マーケット(レストラン、食堂等)につ いても香港のショッピングガイドブック、観光ガイドブックなどを参考に視察を行う。 特に小売店については、本ハンドブックの中でも指摘したように、立地と店舗によっ て顧客層が大きく異なる。自分が狙うマーケットはどこなのかを十分意識した上で、訪 問すべきである。また、小売店訪問に際しては、事前に日本人担当者に話を通しておく と、落ち着いて視察ができ、なおかつ視察時に様々なマーケット情報を入手できる場合 もある。これについては次項で説明する。

② 現地パートナーの選定と接触

現地情報の入手可能性、コミュニケーション・ギャップの問題を考えると、日本との 取引経験が豊富で、日本語でのコミュニケーションが可能な食品流通業者、もしくは日 本人担当者が常駐する食品流通業者を選択すべきである。香港において、これらの条件 に当てはまる食品流通業者は限られている。以下に、乾麺の取り扱いが可能で、日本語 でのコミュニケーションが可能な流通業者のリストを再掲しておく。

[小売業]

ジャスコ(イオングループ)は、日本の本社内に中国もしくは香港に関する事業部が設 置されている。それぞれの本社の広報担当あるいは総務担当に連絡し、担当事業部及び 現地担当者と接触されたい。シティ・スーパーとそごうは、それぞれ日本に香港市場向 けのバイヤーズ・オフィス(購買担当会社)が存在する。

【図表9-1】 日本人食品担当責任者が常駐する「日系百貨店」

場所 面積(㎡) 食品売場 SOGO(そごう) Causeway Bay 32,400 ○

Tsim Sha Tsui 10,700 ○

(日本における連絡先)

参照

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