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数列の収束とその性質

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Academic year: 2021

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数列の収束とその性質

定義 1. 数列 anが α に収束すること, すなわち α と anの間の距離|α − an| = |an− α| が 0 に収 束するとは, 次の条件 (※) を満たすような自然数 N がいかなる正数 ε > 0 に対しても見つけら れることと定める: (※) n > N =⇒ |α − an| < ε 例 2. 全ての自然数 n について an= α とした数列 anは α に収束する. Proof. 正数 ε > 0 および自然数 n がいかなる数であろうと, |α − an| = |α − α| = 0 < ε が成立 している. したがって, anは α に収束するための条件を満たしている. 「自分よりも大きい自然数が存在する」という実数の性質をアルキメデス性とよぶ. 実数の アルキメデス性は数列 an = 1 n が 0 に収束することを述べている. 例 3. 数列 an = 1 n は 0 に収束する. Proof. まず ε > 0 を任意に取ろう. アルキメデス性により, 正数 1/ε よりも大きい自然数 N が 存在する. 1 ε < N を式変形すれば 1 N < ε である. このとき, n > N を満たすいかなる自然数 n に対しても, 次の式変形により|0 − an| < ε を得る: |0 − an| = |an| = 1 n < 1 N < ε. ゆえに数列 an= 1 n は 0 に収束する. 例 4. 数列 anが 1 に収束するとする. このとき, 数列 bn:= a1 + a2 +· · · + an n も 1 に収束する. Proof. 任意に ε > 0 を取る. anは 1 に収束するので, 正数 ε/2 > 0 に対して次の (∗) を満たす自 然数 N0が取れる: (∗) n > N0 =⇒ |1 − an| < ε 2. さて, ここで次の N0個の実数 |1 − a1|, |1 − a2|, |1 − a3|, · · · , |1 − aN0| の中で一番大きい数を M としよう (M ≥ 0 である). 更にアルキメデス性を用いて, 2N0M εよび N0よりも大きい自然数 N を取ると 2N0M ε < N であるから, これを変形して M N < ε 2N0 を得る. ここで, |1 − a1|, |1 − a2|, |1 − a3|, · · · , |1 − aN0| ≤ M であったから (M の定義を思い だそう), 両辺を N > 0 で割ることで (∗∗) |1 − a1| N , |1 − a2| N , |1 − a3| N , · · · , |1 − aN0| N M N < ε 2N0 を得る. このとき, n > N を満たす全ての自然数 n について|1 − bn| < ε となることが次の議論 により示すことができる. 自然数 n が n > N を満たすとしよう. N > N0であったので n > N0 1

(2)

であるゆえ n− N0 > 0 となる. また, n > n− N0ゆえ正数を n で割るよりも n− N0あるいは N で割ったもののほうが大きい. これらのことに注意すると, 次のように|1 − bn| を評価できる: |1 − bn| = nn a1+· · · + an n = 1 +· · · + 1n −a1 +· · · + an n = (1 +· · · + 1) − (a1+· · · + an) n = (1− an) +· · · + (1 − an) n = 1− a1 n +· · · + 1− an n 1− a1 n + ··· + 1− an n (ここで三角不等式を用いた) = ( |1 − a1| n +· · · + |1 − aN0| n ) | {z } N0個の和 + ( |1 − aN0+1| n +· · · + |1 − an| n ) | {z } n− N0個の和 ( |1 − a1| N +· · · + |1 − aN0| N ) | {z } N0個の和 + ( |1 − aN0+1| n− N0 +· · · +|1 − an| n− N0 ) | {z } n− N0個の和 < ( ε 2N0 +· · · + ε 2N0 ) | {z } N0個の和 + ( ε/2 n− N0 +· · · + ε/2 n− N0 ) | {z } n− N0個の和 (ここで (∗∗) および (∗) を用いた) = N0· ε 2N0 + (n− N0)· ε/2 n− N0 = ε 2+ ε 2 = ε. 以上より, n > N =⇒ |1 − bn| < ε が得られた. したがって bnは 1 に収束する. 上と同様の論法で, 任意の収束数列 anについて, その第 n 項までの平均 bn := a1+ a2+· · · + an n が α = lim n→∞anに収束することが示せる. 余力のある者は挑戦してみよ (レポート提出). 次に述べる収束列の性質は, 教科書 9 ページにある関数の極限の性質 (和差積商の極限値) の 数列版である. 関数の和差積商の極限値の性質は, 次の数列の極限の性質から導くことができる. 命題 5. 収束する数列 lim n→∞an= α および limn→∞bn = β について次が成り立つ. (1) lim n→∞(an+ bn) = α + β, (2) 実数 r について lim n→∞(r· an) = r· α, (3) lim n→∞(an· bn) = α· β, (4) β ̸= 0 かつ bn ̸= 0 が全ての自然数 n について言えるならば lim n→∞ an bn = α β. Proof. (1) 任意に ε > 0 を取る. このとき ε 2 も正数である. この ε 2に対して, 数列 an, bnが α, β にそれぞれ収束することを用いると, 次を満たす自然数 Na, Nbをそれぞれ見つけることがで きる: n > Na =⇒ |α − an| < ε 2, n > Nb =⇒ |β − bn| < ε 2. そこで, N を Naと Nbのうち大きいほうとする. いまから, n > N を満たす全ての自然数 n に ついて,|(α + β) − (an+ bn)| < ε となることを示そう. n > N であるから, n は n > Naおよび n > Nbも満たす. したがって上の事から,|α − an| < ε 2および|β − bn| < ε 2が成り立つ. そこで 三角不等式を用いると |(α + β) − (an+ bn)| = |(α − an) + (β− bn)| ≤ |α − an| + |β − bn| < ε 2 + ε 2 = ε 2

(3)

を得る. 以上より数列 an+ bnは α + β に収束する. (2) 次に示す (3) において, 全ての自然数 n について bn = r とした特別場合が (2) であるか ら, (3) のみを証明すれば (2) も示されたことになる. (3) 任意に ε > 0 を取る. このとき次の 3 つの数 1, ε 2(1 +|β|), ε 2(1 +|α|) はいずれも正数で ある. そこで, これら 3 つの正数に対して, anと bnが収束することを適用することで, 次を満た す自然数 N1, N2, N3を得る: n > N1 ⇒ |α − an| < 1, n > N2 ⇒ |α − an| < ε 2(1 +|β|), n > N3 ⇒ |β − bn| < ε 2(1 +|α|). N1, N2, N3の中で一番大きい数を N とし, n > N ならば|anbn− αβ| < ε となることを示そう. n > N1より |an| = |(an− α) + α| ≤ |an− α| + |α| < 1 + |α| となること, および n > N2より|α − an| < ε 2(1 +|β|), n > N3より|β − bn| < ε 2(1 +|α|) に注 意して計算すると, |anbn− αβ| = |(anbn− anβ) + (anβ− αβ)| ≤ |anbn− anβ| + |anβ− αβ| =|an(bn− β)| + |β(an− α)| = |an| · |bn− β| + |β| · |an− α| < (1 +|α|) · ε 2(1 +|α|) +|β| · ε 2(1 +|β|) = ε 2 + |β| 1 +|β|· ε 2 < ε 2 + ε 2 = ε. 上の最後の不等式で |β| 1 +|β| < 1 であること (正数を用いて表される分数について分子よりも分 母のほうが大きい場合, その分数は 1 より小さい) を用いている. (4) 任意に ε > 0 を取る. このとき β ̸= 0 であることから 1, |β| · ε 2 , |β| 2 , β2· ε 4(1 +|α|) はいずれ も正数である. そこで, これら 4 つの正数に対して anと bnが収束することを適用することで, 次を満たす自然数 N1, N2, N3, N4をそれぞれ見つけることができる: n > N1 =⇒ |α − an| < 1, n > N2 =⇒ |α − an| < |β| · ε 2 , n > N3 =⇒ |β − bn| < |β| 2 , n > N4 =⇒ |β − bn| < β2· ε 4(1 +|α|). N1, N2, N3, N4の中で一番大きい数を N とし, n > N ならば an bn α β < εとなることを示そう. 計算が複雑になるので, まず 1 bn 1 β について評価しよう. n > N3より|β − bn| < |β| 2 とな ることから次を得る: |β| = |(β − bn) + bn| ≤ |β − bn| + |bn| < |β| 2 +|bn|. 上の式を移項すれば |β| 2 <|bn| である. したがって, 正の数を |bn| で割るよりも |β| 2 で割ったほ うが値は大きくなる. この事実と, n > N4であるから|β − bn| < β2· ε 4(1 +|α|) となることに注意 すると b1n 1 β = β− bn bnβ = |bn| · |β|1 · |β − bn| |β|1 2 · |β| · |β − bn| = 2 β2 · |β − bn| < 2 β2 · β2· ε 4(1 +|α|) = ε 2(1 +|α|). 3

(4)

さて, n > N1 より|α − an| < 1 である. ゆえに (3) の証明の中で行われた議論と同様にし|an| < 1 + |α| が得られる. 更に, n > N2より|α − an| < |β| · ε 2 となること, および前述の b1n 1 β の評価を用いて計算すれば次を得る: an bn α β = (an bn an β ) + ( an β α β ) an bn an β + an β α β = an ( 1 bn 1 β ) + β1(an− α) =|an| · b1n 1 β +|β|1 · |an− α| < (1 + |α|) · ε 2(1 +|α|) + 1 |β|· |β| · ε 2 = ε 2 + ε 2 = ε. 以上により, n > N ならば an bn α β < ε となることが示せた. 備考 6. 命題 5(1) および (2) を用いると, lim n→∞(an− bn) = α− β が次の計算で得られる: lim n→∞(an− bn) = limn→∞ ( an+ (−bn) ) = lim n→∞an+ limn→∞(−bn) = α + lim n→∞ ( (−1) · bn ) = α + (−1) · lim n→∞bn = α + (−1) · β = α − β. 先ほど示した数列の性質を用いて, はさみうちの原理を証明しよう. 定理 7 (はさみうちの原理). 実数列 an, bn, cnにおいて, an ≤ bn ≤ cnが全ての自然数 n につ いて成立しているとする. このとき, lim n→∞an = limn→∞cn = α ならば bnも収束し, limn→∞bn = α と なる. Proof. まず, 全ての自然数 n について an= 0 という特別な場合について証明する. anは 0 に収 束するので, α = 0 である. また, 0 = an ≤ bn ≤ cnより, bnおよび cnはともに 0 以上の数列で あることに注意する. 任意に ε > 0 を取ると, cnが α = 0 に収束することから次を満たす自然数 N が存在する: n ≥ N =⇒ |cn− α| < ε. このとき, n≥ N を満たすいかなる自然数 n についても |bn− α| < ε となることが次の計算に より分かる: |bn− α| = |bn− 0| = |bn| = bn ≤ cn =|cn| = |cn− 0| = |cn− α| < ε. 以上より, bnも α に収束することが分かった. 次に, 一般の場合について考えよう. 示すべき主張の仮定を満たす数列 an, bn, cnに対して, 新たな 3 つの数列 a′n:= an− an= 0, b′n:= bn− an, c′n:= cn− an を考えると, a′ n ≤ b′n ≤ c′nである. また, anと cnは共に α に収束することから, 備考 6 により c′n は α− α = 0 に収束する. これらのことから, 数列 a′ n, b′n, c′nは既に証明した特別な場合に該当 することが分かる. したがって, b′nも 0 に収束する. b′n= bn− anを変形すれば bn = b′n+ anなる. b′ nは 0 に収束し, anは α に収束するのであったから, 命題 5(1) より bnは 0 + α = α に収 束する. 4

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