各務原リハビリテーション病院での褥瘡治療に対する取り組み
1 各務原リハビリテーション病院 看護部,2 各務原リハビリテーション病院 リハビリテーション科,
3 各務原リハビリテーション病院
みかみ ちづこ
○三上 知津子(看護師)1
,安田 朱美1
,近藤 誠子1
,福井 博子1
,丹羽 達貴2
,岸本 泰樹2
,和座 雅浩3
,
磯野 倫夫3
<はじめに>
当院は平成 23 年、岐阜県各務原市にベッド数 118 床のリハビリテーション病院として開設した。院内には、
回復期病棟、療養病棟と並び、神経変性疾患等による寝たきり患者が多くを占める「特殊疾患病棟」が設置さ
れている。こうした病棟での褥瘡患者は珍しくなく、その保有率は一般的に病棟全体の 10 ~ 20%と言われて
いる。今回、開設当時の多職種連携の希薄さが褥瘡の悪化を招いていたことを顧みて、病棟内連携に注力した
具体的な取り組みを行なった。この結果、スタッフ間の褥瘡への意識が高まり、褥瘡新規発生率の低下・前院
発症の褥瘡(持ち込み褥瘡)の治癒へとつながったので報告する。
<対象>
平成 25 ~ 27 年に入院された特殊疾患病棟入院患者。
<方法>
1 看護師の褥瘡処置内容を改めて確認した。2 患者の臥床中のポジショニングについて再考した。3 NST
(Nutrition Support Team)の活動記録・電子カルテから過去 1 年分のアルブミン値を集計した。4 DESIGN-R
(褥瘡経過評価スケール)を用い褥瘡の経過を確認した。
<結果>
1 看護師が処置を行なう際、技術や対応内容に差が出ないよう、処置方法の指導や周知徹底ができた。2 理
学療法士の協力を得てポジショニングの勉強会を実施した。具体的な指標となるポジショニング写真をベッド
サイドに掲示し、情報の共有・対応内容の統一が図れた。3 検査データ・アルブミン値に着目することで、よ
り客観的な視野で医師・管理栄養士とのアセスメントが出来た。4 StageⅡ以上の褥瘡発生率低下につながった。
<考察>
褥瘡ケアには看護師の対応だけでなく、体位・ポジショニングの徹底、NST の早期介入など、専門職種が
積極的に連携をとることが重要で、質の高い褥瘡ケアにつながることがわかった。また、こうした連携により
スタッフの意識が向上することを実感した。
介護施設入所高齢者の褥瘡治療・再発予防に写真による情報提供が功を奏した症例
宜野湾記念病院
うえま こうのすけ
○上間 航之介(理学療法士),千知岩 伸匡,花城 範行,許田 盛之,山品 尚徳,川端 一彰,崎原 尚子,
湧上 聖
はじめに
介護施設入所中の高齢者は、褥瘡を併発していることは少なくない。褥瘡対策は院内にとどまらず、地域ぐ
るみで行うことが重要である。今回、褥瘡ケアにおける病院と介護施設の連携について考えさせられる症例を
経験したので報告する。
症例
83 歳、男性。4 年前程前より認知機能低下し徐々に寝たきりになり、介護施設入所。声掛けに対し反応ある
もコミュニケーション困難。合併症に糖尿病、高血圧、認知症あり。
経過
右誤嚥性肺炎にて介護施設より入院となったが、仙骨部に NPUAP 分類 staeg Ⅱ(DESIGN-R5 点)の褥瘡があっ
た。褥瘡は 20 日後に治癒し、その後セラピストによる再発予防のポジショニングを実施。35 日後施設へ退院
した。退院時に、入院経過とともにポジショニングの必要性を施設職員に文書で伝達した。しかし、退院から
40 日後、誤嚥性肺炎で再入院。仙骨部に NPUAP 分類 steag Ⅳ(DESIGN-R35 点)の褥瘡を再発していた。
初回の入院より重症化していた褥瘡は、2 度のデブリードマンを必要とした。再入院から 73 日目に、施設に
退院。退院時には、文書とともに理学療法士による評価・分析により決定したポジショニングの写真も加え情
報を提供した。その後は外来治療を継続し、退院 76 日現在、DESIGN-R12 点と改善傾向であった。
まとめ
2 度目の退院後は、写真による情報提供により、施設においても適切なポジショニングが継続され、再発なく
治癒に向けることができた。
病院から施設に向けての情報提供は、一般的には文書によるものである。しかし、今回のように適切なポジショ
ニングを伝達するといった際には、写真が効果的であった。施設での対応としても、写真があることで、専門
職以外の職員や昼夜間帯の職員間の意思の統一が図れていた。今後、地域ぐるみの褥瘡ケアを考えるうえで、
病院、施設間の連携の工夫は重要である。
繰り返す褥瘡への再発予防取り組み
国分中央病院 看護部
あまかわ かおり
○天川 香織(看護師),池田 茜,川畑 政代
1 はじめに
褥瘡が発生する直接的な要因は「外力」だが、活動性の低下、関節拘縮、低栄養も影響する。
平成 23 年より、右背部にステージⅠ~Ⅱ度の褥瘡を繰り返していた患者の発生要因を具体的に考え、治癒と
再発予防に取り組んだ結果を報告する。
2 方法
期間 平成 25 年 11 月 26 日~平成 26 年 2 月 21 日 (113 日間 )
対象者 80 歳代 女性 OH スケール 9 点
主疾患名 腸閉塞(絶食・点滴管理)・人工呼吸器管理
両上下肢強い屈曲拘縮あり、肌着・病着着用できず上からかけていた。
方法 ①エアマットへ変更
②多職種によるチームアプローチ
・ポジショニングの検討・指導と写真での位置の統一
・右肘下に小さめのクッションを置き除圧(右側臥位時)
・皮膚科受診
・主治医・薬剤師・栄養士へ相談し、食事・点滴変更の検討
③処置の統一化:ケア手順を写真で作成
④継続的な観察:褥瘡の状態を DESIGN-R と写真で評価
3 結果
エアマットへ変更し右側臥位を中止したところ褥瘡は改善した。しかし右側臥位にすると 3 ~ 4 日でⅡ度の
褥瘡が発生した。
PT 指導によるポジショニング、クッションによる除圧、ケアの統一化により、右側臥位でもⅠ度以上の褥
瘡にはならなかった。両上下肢の屈曲拘縮が強いため、体位変換が思うようにできずバスタオルの使用は中止
できなかった。
全身状態の悪化により褥瘡も悪化した。
4 考察
ポジショニングにより除圧ができ褥瘡の改善につながったが、褥瘡が再発した原因はバスタオル使用による
体位変換時の皮膚の摩擦やずれから生じたと考えられる。
ポジショニンググローブの使用を試みたら、皮膚の摩擦やずれを軽減でき、褥瘡治癒に繋がったのではない
かと考える。
5 まとめ
ポジショニング・体位変換が最も重要で、直接的な予防法であることを実感した。
摩擦とずれを解除しない限り褥瘡はなくならない。今後、ケアの向上を目指し、再発予防に取り組んでいき
たい。
拘縮と筋緊張のある患者の褥瘡予防
~適切な体交枕の当て方の工夫~
日ノ出ヶ丘病院 看護科
のぐち ちあき
○野口 千明(看護師),横瀬 久美子
Ⅰ 目的
H病院の介護病棟では、患者の 90%が介護度4~5である。四肢の拘縮や筋緊張が強く、栄養状態が悪いこ
とで皮膚トラブルが発生しやすい状況である。I病棟ではその様な患者様の体位保持用クッション(以下体交
枕という)の当て方が周知されず、皮膚損傷をきたすことがあった。患者の状態に合わせた体交枕の当て方を
周知統一することで褥瘡予防に努めることとした。
Ⅱ 研究方法
1.研究対象 : 入院患者 4 名
2.スタッフ間の勉強会を行い、体交枕使用方法・使用状況チェックリストを作成し、適正装着実施・評価を
する
Ⅲ 結果・考察
スタッフ、特にケアワーカー対象に、事前に「褥瘡発生と予防」「拘縮はなぜ起こるのか」「除圧の方法」「体
圧とは何か」「基本的な体位変換は」等の勉強会を行い基礎知識の平均化を図った。また、個々の患者の特徴(拘
縮の部位・皮膚の状態等)を考慮したチェックリストを作成することで、体交枕を正しく使い隙間を無くした。
その結果、体圧は前後で 10mmHg 以上のマイナスとなり体圧の分散が図れ、褥瘡の予防・皮膚状態の改善に
つながった。褥瘡発生の主な要因は圧迫・ズレ・栄養状態の悪化である。持続圧迫だけでは皮膚損傷に繋がり
にくいが、圧迫に加えズレが生じると皮膚がより損傷してしまう状態に置かれる。体交枕を使い四肢の隙間を
埋める事で、体圧を分散し、ズレを防止したことにより褥瘡の予防ができたと考える。
I病棟では、介護度が高く栄養状態が悪い事に加え、自ら訴える事の出来ない患者が多い。安全で安心・安楽
なサービスの提供をするには、日々変化する患者様の状態を観察し、情報を共有・検討し合える積極的な姿勢
が必要である。これからも、褥瘡への意識を高め、日々のカンファレンスの場を有効に活用し、予防に努めた
い。
腰椎部に発生した褥瘡への対応
~車椅子のポジショニングをチームで検討し褥瘡が治癒した症例~
1 鶴谷病院 看護部,2 鶴谷病院 リハビリテーション科,3 鶴谷病院 薬剤部,4 鶴谷病院 栄養部,5 鶴谷病院 内科,
6 鶴谷病院 外科
ふじぬま ちえみ
○藤沼 千恵美(看護師)1
,恒富 政美1
,女屋 好範1
,保泉 里美1
,見城 芳幸2
,今泉 香苗3
,鳥山 純子4
,
神田 洋5
,木下 照彦6
【はじめに】
当院は、群馬県伊勢崎市東部、太田市西部、埼玉県深谷市の北部を圏域として急性期・慢性期型と介護療養型
を併せ持つ 316 床のケアミックス病院である。また、介護老人保健施設や訪問看護を併設し、急性期から在宅
までの支援を行っている。介護療養型や介護老人施設では、車椅子で座位姿勢を保つことが多く円背がある患
者では、身体の圧迫生じ褥瘡を誘発することも少なくない。今回、介護療養型に入院中に腰椎部に褥瘡発生し
た患者に対し、褥瘡対策チームが介入したことにより、褥瘡が早期に改善した経験をしたので報告する。
【倫理的配慮】
ご家族の同意を得て、個人と特定されないように配慮した。
【症例紹介・ケア介入】
A 氏 92 歳女性。腰椎部にステージⅡ DESIGN-R d2 - e1s3i0g1n0p0 = 5 点 楕円形の褥瘡を認めた。
褥瘡対策チームが介入。A 氏は、円背であり、ベッド上で仰臥位をとることが困難な状況であった。日中も車
椅子に乗車し過ごしていることが多いことから、普段通りの車椅子乗車をし、ポジショニングについて検討し
た。局所ケアと並行して、車椅子乗車時の姿勢の保持についてカンファレンスを行った。
【結果】
車椅子乗車時のポジショニングを行い、褥瘡発生 14 日目に上皮化を認め治癒した。腰椎部は、今後も褥瘡が
発生する危険があると考え、車椅子乗車時のポジショニングを継続している。治癒後、半年以上が経過してい
るが褥瘡再発せずに経過している。
【考察・まとめ】
褥瘡は、圧迫と応力が深く関係しているといわれており、さらに日常生活の中で褥瘡好発部位が摩擦やずれな
どの影響を受け悪化しやすい状態にあることが考えられる。今回、腰椎部に褥瘡が発生した患者に対し褥瘡対
策チームが介入し、褥瘡発生部位・形状を観察し、なぜ褥瘡が発生したのかカンファレンスを行い、日常生活
の姿勢の見直し・ケアの統一・評価を行うことにより、褥瘡の創傷治癒促進及び褥瘡発生予防に繋げることが
できた。
多職種との連携で改善した褥瘡の1事例
浴風会病院 看護部
まつした まゆこ
○松下 真由子(看護師),田村 沙織
チーム医療とは、コ・メディカルが互いの専門性を尊重し、最大限の能力を引き出し合うことによって最善
の治療をおこなう医療現場の取り組みであるとされている。
今回、仙骨部に深い褥瘡を保有した状態で入院した患者が、多職種との連携の中で改善した1事例があったた
めここに報告する。
症例は、70 代女性。夫と二人暮らし。既往歴に強直性脊椎炎あり、四肢の緊張が強くもともと手引き歩行レ
ベルの ADL。1 月中旬頃より歩行困難。仙骨に発赤出現あり、絆創膏貼付にて経過観察していたが急激に褥
瘡悪化。褥瘡治療の目的で入院の運びとなる。褥瘡の深さは、皮下組織を超えるレベル。浸出液多量で感染・
炎症兆候、疼痛を認めていた。壊死組織、ポケット形成あり。本人とは、単語やジェスチャーでコミュニケー
ションをとっていた。
現在おこっている状況をアセスメントし、多職種でのカンファレンスを繰り返しながら、優先順位を決めてケ
ア介入していった。
浸出液のコントロールに関しては、デブリードマンによるドレナージを繰り返した。
褥瘡の状況に応じて、使用する薬剤の妥当性を褥瘡ガイドラインに沿って評価していった。
疼痛緩和に関しては、1 日 2 回の褥瘡処置を施行し、清潔の保持を強化した。また、創面保護の薬剤を使用し
皮膚損傷防止に努めた。使用するガーゼは非固着性の物へ変更し、ガーゼ固定方法等の見直しも行った。
ポジショニングに対しては、写真撮影をし、統一したポジショニングに努めた。
栄養強化も必要となるため、管理栄養士と協同し、褥瘡ガイドラインで推奨されている栄養管理
の妥当性を評価しながら、亜鉛やアルギニンが強化された補助食品の使用、カロリー摂取の見直しを行った。
ケア介入から 1 か月半後、真皮レベルまでの深さの褥瘡までに改善した。
当院特殊疾患病棟における理学療法士の役割
~褥褥瘡予防への取り組み~
1 各務原リハビリテーション病院 リハビリテーション科,2 各務原リハビリテーション病院 看護部,
3 各務原リハビリテーション病院
にわ たつき
○丹羽 達貴(理学療法士)1
,古賀 のぞみ1
,近藤 亜由未1
,岸本 泰樹1
,三上 知津子2
,安田 朱美2
,近藤 誠子2
,
福井 博子2
,和座 雅浩3
,磯野 倫夫3
<はじめに>
昨今,長期にわたり療養の必要な重度肢体不自由患者が入院している病棟などにおいて,褥瘡の発生予防
及び治療に対し「多職種が共働すること」の必要性が重要視されている.今回、当院特殊疾患病棟のリハビリ
テーションを担当している理学療法士が中心となり,病棟全体で褥瘡予防や治療に積極的に介入した取り組み
を報告する.
<方法>
①褥瘡の状態以外にも体位変換の頻度や不足するクッションの数,種類など,現在の状況を確認する.②各患
者様のベッドサイドに適切なポジショニング写真を掲示する.③関節可動域や栄養状態などのデータを定期的
に測定し把握する.④各スタッフ間の情報伝達の場を設ける.
<結果>
体位変換やクッションの状況を改めて確認,検討を行ったことで,より質の高いポジショニングの提供が可
能となった.そして,今までポジショニング法に各スタッフ間でばらつきがあったが,適切なポジショニング
方法を写真で提示したことで,スタッフの提供する内容が統一された.また同時に,業務の効率化や時間短縮
に繋がった.また具体的なデータや数値を把握し,各スタッフで共有したことにより,褥瘡予防への意識が高
まり,より良い治療やケアを提供する結果に繋がったと考えられる.
<今後の展開>
今回の介入により病棟スタッフ間のポジショニングへの意識がより高まり,各スタッフが褥瘡予防に対する
自覚を持つことができた.しかし同時に,スタッフ間の知識,技術の差があることが露呈され,新たな課題も
確認された.今後は,セラピストの持てる知識や技術を多職種にも伝え,定期的なカンファレンスを開催する
中で治療やケアの質の向上につなげていきたいと感じた.
当院における体圧分散マットレスの使用と重要性
~褥瘡推定発生率の低下を目指して~
高知城東病院/褥瘡対策委員会
かみむら けいこ
○上村 恵子(看護師),小山 智恵,山本 明巳,橋田 寿美,北村 理恵,藤野 真理
はじめに
当院は、医療療養病棟と介護療養病棟からなる 243 床の療養型病院である。入院患者の平均年齢は約 86 歳、
要介護度 4 と 5 が大部分を占め、障害高齢者の日常生活自立度もランク C が多く、褥瘡が発生しやすい状況
にある。そこで褥瘡推定発生率(以下発生率)の低下を目指して、体圧分散マットレス(以下マットレス)の
使用が予防にどの程度関与しているかを検討した。
方法
2007 ~ 2015 年の 9 年間の 2007 年、2009 年、2011 年、2013 年及び 2015 年の入院患者の要介護度、発生率、マッ
トレスの種類別使用状況とその供給率の推移を検討した。
結果
要介護度 4 と 5 の割合は 2007 年が 79.6%で 2015 年は 87.9%に増えていた。2007 年の発生率は 4.1%、マット
レス供給率 53.6%で、超薄型エアマットレス(アクティ・ケープ社)が 83.0%と大部分を占めていた。同年の
ウレタンマットレス(アイリス 2・ケープ社)導入時の説明会や院外研修に参加し、予防や早期治療の方法を
勉強した。加えて、2008 年から毎月開催の褥瘡対策委員会では各病棟が持ち回りでケースカンファレンスを
積極的に行うようになり、また院内勉強会も開催し全職員の褥瘡予防に対する意識向上にも努めた。その結果
マットレス供給率は 2015 年に 84.0%に増え、発生率は 2.2%とほぼ半減した。使用マットレスの種類も高機能
エアマットレス(トライセル・ケープ社)や超高機能エアマットレス(ビッグセル・ケープ社)の合計が、
2007 年は 2.0%であったが 2015 年は 14.0%に増えた。
考察
9 年間に患者の要介護度は重度化したにも関わらず、発生率が低下したのはマットレス供給率の増加や高機能
及び超高機能エアマットレス使用率の増加が1つの要因と思われた。
おわりに
今後は褥瘡状態のみに目を向けるのではなく、個々の患者のリスクや病状等も考慮し、より適切にマットレス
を選択することが重要であり課題と思われる。
当院の褥瘡対策におけるリハビリテーション部の取り組みと今後の課題
サンバリー福岡病院 リハビリテーション部
さえき さやか
○佐伯 沙綾香(作業療法士),髙橋 諭
【はじめに】
当院は医療病床 88 床、介護療養型病床 30 床を有する慢性期病院である。入院患者は高齢者が多く、褥瘡を
有する患者や発生リスクの高い患者が多い状況にある。
リハビリテーション部は H23 年より褥瘡対策委員会に関わり始め、褥瘡対策としてポジショニング方法の検
討や提示に重点を置き取り組んできた。
H27 年に褥瘡数の増加が見られ、今後の対策を模索するため、職員の意識調査を行った結果を報告する。
【取り組み】
H27 年 •H28 年に看護 • 介護職員を対象にポジショニングにおける意識調査を実施した。
初回の調査では、院内のポジショニングは「あまりできていない • できていない」との回答が半数見られ、クッ
ションの不足や適切な方法がわからないという意見が聞かれた。そのため、クッションの購入や勉強会を実施
した。また、病棟会に参加し患者個々に合わせたポジショニング写真を提示する事で職員間での統一を図った。
再調査の結果、「写真を参考にしている • 自分で考えて行っている」という回答の増加が見られた。しかし、
自分が行うポジショニングについては「自信がない」という意見が見られた。
【まとめ】
リハビリテーション部として褥瘡対策に関わったことで専門性を活かし、身体機能の評価から個々に合わせ
たポジショニングの方法を提示ができた。
また、写真や病棟会を通して積極的に提示してきたことで意識の向上が見られ、より適切なポジショニングが
行えるようになってきたと考える。
しかし、提示してある写真は参考にしているが「自信がない」と感じる職員も見られ、技術面・知識面の不足
が予測される。
【今後の課題】
今後は実践的な勉強会を実施し、職員自身が体験する事でスキルアップを図り、より良い褥瘡対策を行えるよ
うに取り組んでいきたい。
ベッド背上げと喀痰吸引がズレに及ぼす影響
シーサイド病院 リハビリテーション料
はしもと たけあき
○橋本 武顕(理学療法士)
【はじめに】当院では、喀痰吸引を実施する多くの患者において安楽呼吸や痰による呼吸不全を危惧しベッド
背上げを行っている。一方、褥瘡発生においてズレが大きく影響することが報告されているが、吸引の際、ベッ
ド背上げによるズレが生じるのであれば褥瘡発生を高める要因になると考えた。そこで私どもはベッド背上げ
時に吸引を実施するとズレが生じているのかどうか。また生じるのであれば角度によるズレの差があるのか検
証した。
【対象】当院に入院し喀痰吸引を要する患者 13 名 ( 男性 7 名、女性 6 名 ) を対象とした。この際、選定にあた
り明らかな不随意運動のない者を対象とした。なお対象者、家族には実験主旨に関する説明を行い測定の同意
を得た。
【方法】ベッド角度 0°10°20°それぞれの吸引後のズレを計測した。ズレ計測方法は対象者耳垂下端を水平位
にとりベッド上にマーキング、その移動距離を計測した。臥位姿勢はベッド屈曲基部に大転子を合わせ個々の
ポジショニングを行った。統計処理には 0°10°20°の 3 群に分散分析、10°20°の 2 群に対応のあるt検定を用
いた。【結果】ズレ平均値は 0°10°20°それぞれ 0㎜、4.6 ± 4.8㎜、10.8 ± 7.4㎜であった。1)0°10°20°のズレ
平均値には有意差 ( p< 0.01) があった。2)10°20°のズレ平均値には有意差 ( p< 0.05) があった。
【考察】ベッド背上げでズレが生じたのは、吸引により一時的にベッドと身体の摩擦が減少し、位置エネルギー
が作用したものと思われる。角度に比例してズレ平均値が増加したのは、角度に比例して位置エネルギーが高
まったためと思われる。
【まとめ】ベッド背上げ時での喀痰吸引はズレが生じ、また角度に比例してズレが増加することも示唆された。
ベッド背上げ時での喀痰吸引は褥創発生要因を高め、それを軽減するために背抜き等の対応が必要と考える。
スタティックストレッチによる骨盤の前後傾変化と体圧低下
1 印西総合病院,2 博愛記念病院
さとう しょう
○佐藤 翔(理学療法士)1
,木下 大蔵2
,高田 幸治2
,今富 裕之2
,池村 健2
,武久 洋三2
[はじめに]
褥瘡は骨突出部が好発部位であり、仰臥位では仙骨部が最も多く、骨盤が前傾することで仙骨部の体圧は上
昇する傾向にあると報告されている。今回、骨盤前傾に関与している大腿直筋に対して Static Stretch:以下
SS を実施することで、骨盤の前傾を緩和すると共に仙骨部の体圧を低下し、褥瘡予防に繋げることが可能か
を検証したので報告する。
[方法]
今回の研究に対して説明を行い、同意が得られた健常成人 30 名 ( 男性 23 名、女性 7 名 )、平均年齢 29.3 ± 6.9
歳、平均 BodyMassIndex22.0 ± 2.7 を対象とした。測定は安静仰臥位とし、骨盤傾斜角度と仙骨部の体圧を
測定した。その後、大腿直筋を対象とした SS を側臥位にて 30 秒× 3 回 ( 各インターバル 10 秒 ) で左右とも
に実施し、安静仰臥位で角度と体圧を再測定した。骨盤傾斜角度の測定は基本軸を大転子と大腿骨外顆を結ん
だ線、移動軸を上前腸骨棘と大転子を結ぶ線とし、2 線で成す角度をゴニオメーターで計測した。体圧測定に
は携帯型接触圧力測定器パーム Q:ケープ社製を用いた。
[結果]
骨盤傾斜角度においては実施前 133.5 ± 7.4°、SS 実施後 140.4 ± 5.8°であり、実施前後の比較で有意な角度の
増加を認めた (p<0.01)。体圧においては実施前 48.5 ± 14.1mmHg、SS 実施後 1.2 ± 17.8mmHg であり、実施
前後の比較で有意な体圧の低下を認めた (p<0.05)。
[考察]
大腿直筋は腸骨に付着することから骨盤の前傾に作用しており、SS を実施することで筋の伸長が得られ、安
静仰臥位での骨盤の後傾角度が有意に増加したと考えられる。また、骨盤は解剖学的に逆三角形である為に下
方で狭く、かつ後方に湾曲していることから骨盤前傾位では仙骨下部の体圧が上昇しやすいが、SS による骨
盤後傾に伴って広い面である上部での体圧分散できたと考えられる。
上肢の屈曲拘縮がある患者への除圧を目的とした小枕の有効性について
~上肢と胸部間の体圧を調査して~
千木病院 看護部
なかむら やすこ
○中村 靖子(看護師),中山 里奈,濱塚 とも子,澤田 節子,横尾 純枝,大桑 敦子,辰巳 敦子,泉 千歳,
古川 千恵子,小松 夕香理
【はじめに】
当院では、脳血管障害などによる廃用を原因とした上肢の著しい屈曲拘縮をきたす患者が少なくない。当病
棟では、このような患者に対し褥瘡の発生を予防するために上肢と胸部の間に小枕を入れ、除圧を図っている。
しかし、実際に小枕使用によりどの程度除圧できているのか調べたことがないため、実際に体圧測定を行うこ
とにより小枕の有効性を検証した。
【方法】
上肢の屈曲拘縮がある患者5名に対し、小枕と接触する上肢と胸部に体圧測定器パームQを 12 時間連続して
装着し、小枕有りと無し、それぞれの看護ケア有り時 ( 吸痰、体位交換等 ) とケア無し時で測定した。また、
上肢と胸部にかかる体圧も比較した。
【結果】
小枕有りの体圧の平均は 21.0㎜ Hg、小枕無しの体圧の平均 13.8㎜ Hg であった。また小枕有りと無し時のケ
アの有無でみると、小枕有り・ケア有り時は平均 29.6㎜ Hg、ケア無し時では平均 12.3㎜ Hg。小枕無し・ケア
有り時は平均 23.1 ㎜ Hg、ケア無し時の平均 3.8 mmHg であった。また、小枕有り・ケア無し時で、上肢と胸
部にかかる体圧を比べたところ、上肢で平均 19.3 ㎜ Hg、胸部では平均 5.4㎜ Hg であった。小枕有り・ケア
有り時では、上肢で平均 47.9㎜ Hg、胸部で平均 11.4㎜ Hg であった。
【考察】
今回の調査で小枕有りと無しでは、小枕有りのほうが上肢にかかる体圧が高いこと、ケア有りと無しとでは、
有りのほうが高いことが分かった。除圧する目的で小枕を使用していたが、小枕使用によって、上肢にかかる
体圧は高くなっていた。一方、胸部にかかる体圧が小枕使用によって低くなったのは、上肢の圧を面で支える
ことで圧が分散されたと考えられ、胸部の除圧には有効であった。また、ケア時に体圧が高くなったのは、身
体が強ばって緊張していた事が圧上昇の原因と考える。今後小枕を使用する場合、上肢と胸部双方の除圧がで
きるような素材の選択や、当て方などの工夫が必要である。
体位変換が褥瘡を悪化させた症例
光風園病院
おさふね やすえ
○長舩 康恵(看護師)
【はじめに】
体圧移動は褥瘡予防に重要なケアとされているが、一方で体圧移動時に患者の体に加わる外力によって褥瘡を
悪化させる場合があることも指摘されている。
当院の褥瘡患者について体圧移動時に加わる外力を最小にするようにケア方法を見直したことで褥瘡が改善し
たケースを報告する。
【方法】
体位変換時スライドシート使用。入浴時やストレッチャー・車椅子移乗時は抱え上げ法とする。
【事例1】
87歳女性、在宅介護で発生した65×120mmの仙骨部Ⅳ度褥瘡、左下方にポケット深さ10~最大50
mm。
ケア変更前:2~3時間置きの体位変換はスライドシート、移乗時はスライドボードを使用していたが仙骨褥
瘡部の改善はみられなかった。毎食時のリクライニング車椅子移乗により、新たに座り褥瘡発生し一旦離床を
中断。
ケア変更後:座り褥瘡治癒後、昼食時のみ離床。移乗時にスライドボードの使用は中止し抱えでの移乗に変更
後、仙骨部褥瘡も徐々に改善していった。
【事例2】
59歳男性、敗血症により自宅で倒れていたところを発見された。右上肢・左下肢麻痺。仙骨部120×
105mmのⅣ度褥瘡、全周に15~20mmのポケット形成。右大転子部に60×55mmのⅣ度褥瘡あり
湿潤療法を行ったが改善せず。
ケア方法変更前:時間毎の体位変換、車椅子離床時は殿部プッシュアップ、車椅子に低反発クッションにて除
圧。
ケア方法変更後:体位変換時に体に加わる外力が問題と考え、褥瘡部周囲を触らないようケア方法を見直し改
善していった。
【考察】
ADLの向上が褥瘡の改善や治癒に大きな効果があることは確かである。しかし、褥瘡の改善や治癒をより促
進するためには、漫然な体圧分散対策ではなく、日々のケアとして、褥瘡部への外力による悪化の防止や観察、
情報の共有を図り、治癒しない原因を追究していくことが大切だと考える。
褥瘡ケア ~より安楽な療養生活を目指して~
屋宜原病院 看護部 5 階病棟
たきがわ しげひろ
○瀧川 成弘(看護師),運天 綾子
<はじめに>
日本慢性期医療協会の調査によると、急性期病院から慢性期病院へ転院した患者の中で褥瘡をもつ ( 以下、「持
ち込み褥瘡」) 患者の割合は、急性期病院での入院期間が 6 か月以上の場合、20%とのデータがある*1
。この
ように急性期病院で発生した褥瘡患者の対応を療養型病院が担う必要性が発生しているため、当病棟での現状
を報告する。
<研究方法>
1.期間
平成 27 年 8 月から 9 か月間
2.対象
持ち込み褥瘡患者 4 名
A:36 歳・男性・仙骨部 4.5 × 5.5cm
B:84 歳・男性・左臀部 5.5 × 5.0cm
C:65 歳・男性・仙骨部 4.0 × 3.0cm
D:92 歳・女性・右内果部 2.8 × 3.0cm
左下腿 0.5 × 0.7㎝
3.ケアプラン
①エアマット使用 ② 1 日 8 回体位変換 ( 3時間毎 ) ③スキンケア ④栄養管理
⑤褥瘡処置 ⑥毎週 DESIGN 評価
4.倫理的配慮
研究を実施するに当たり、対象家族に対して本研究の目的と内容について説明し、同意を得た。
<結果>
A:9か月で治癒。褥瘡処置時、逃避動作を見せていたが、褥瘡の軽快とともになくなった。
B:5 か月で治癒。食事の時に頭部をギャッジアップしても苦痛がなく、安楽に食事できるようになった。
C:2か月目 1.0 × 1.0cm 治癒傾向
D:2か月目 下腿治癒・右内果処置継続中
<考察>
当院のような療養型病院では、殆どの患者が寝たきりで、看取り目的での入院である。ヘンダーソンは、「食
事は生活の中の楽しみの 1 つ」であり、「楽しく食べられ満足感があるのが基本的欲求の充足した状態」*2
と
述べているが、褥瘡が完治し、痛みなく食事できるようになったBは、生活の中の楽しみと基本的欲求を取り
戻したと言える。そして、ヘンダーソンが看護師の目的として、「逃れることのできない制限内で患者ができ
るだけ有意義に生きるのを助ける」*2
と述べているように、例え寝たきりであっても、QOL を少しでも高め
るのが療養型病院の担う役割だと今回の研究過程で実感できた。
褥瘡発生減少向けた取り組み ~ポジショニングに対するスタッフの意識改革~
長田病院 6階病棟
たかつか なおみ
○高塚 直美(看護師),江口 愛子,甲斐田 まり子,近藤 菜実子,上妻 千恵,松本 嘉代,吉武 麻美
【はじめに】A 病棟の H27 年の褥瘡発生率は 4.06% で、経管栄養患者の仙骨部の褥瘡発生が多かった。その
原因として、適切なポジショニングがとれていないことでのギャッジアップによる体位のずれ、長時間による
皮膚の圧迫が考えられた。ポジショニングの知識の向上と、患者個々に合わせたポジショニングの手技を統一
したことで、褥瘡発生予防につながったのでここに報告する。【研究期間・対象者】 平成 28 年 1 月~ 6 月 病
棟スタッフ 28 名(看護師 14 名 看護補助者 14 名) 経管栄養患者 17 名【方法】① ポジショニング
に対する意識調査(勉強会前後に実施)。② 理学療法士によるポジショニングの勉強会(全 5 回)及び直接
指導を受けベッドサイドに適切なポジショニングの写真を掲示。③ 経管栄養患者はギャッジアップ 30 度と
し、ギャッジアップ毎に背抜き、足抜きの実施。【結果】① 「ポジショニングを行った際に迷いますか」勉
強会前 93%、勉強会後 57%。② 「考えてポジショニングを行うようになった」「患者の状態をアセスメント
して行う必要性が理解できた」「足の痛みが軽減され鎮痛剤の使用がなくなった患者がいた」「患者が穏やかな
表情になっていると感じる」等の意見があった。③ 経管栄養患者の褥瘡発生は H28 年 1 月~ 6 月まで 0%。【考
察】ポジショニングに対する知識の向上と手技の統一により、褥瘡発生予防に繋がった。経管栄養患者におい
ては、ベッドサイドに写真やポイントを掲示したことで視覚的理解につながり、ギャッジアップの角度や大転
子部の位置に印をつけてわかりやすくし、体位調整、仙骨座り防止をしたことで褥瘡発生予防できていると考
える。また、適切なポジショニングの実施は「患者の表情が穏やかになった」「痛みの訴えが減少した」等の
筋緊張の緩和、疼痛緩和につながった。
住宅型有料老人ホームにおける訪問看護師の役割~褥瘡患者の 1 事例を通じて~
上條記念病院 ローズガーデン訪問看護ステーション
うしやま まなみ
○牛山 真奈美(看護師),輿野 泰子,久保田 清,上條 裕朗
〔はじめに〕
ローズガーデン訪問看護ステーションでは、ケアプランに基づき住宅型有料老人ホームの利用者様の訪問を
行っている。
〔目的〕
住宅型老人ホームにおける褥瘡患者の 1 事例を通じて訪問看護師の役割を考える。
〔対象〕
M.T さん 78 歳 女性 脳出血後遺症、高血圧、心房細動、パーキンソン症候群
介護度 5、 左半身麻痺、ねたきり状態。ADL 全介助。円背が強く、脊椎が突出しているため入居当初より
背部に褥瘡形成あり。ALB 3.1、食事 1200 k al.
・ 訪問看護 2 回 /W(H28.6 月~ 3 回 /W)・デイケア 3 回 /W。・福祉用具(床ずれ防止用マットレス、車
椅子)レンタル。
〔対象期間〕 H27.2.6 ~ H27.9.18.
〔治療方法〕
・ 訪問看護師は、訪問時に週 1 回 DESIGN - R を行い、褥瘡を評価。
・ 上條記念病院 褥瘡対策委員会メンバーと訪問看護師で月に 1 回褥瘡回診を行い、情報を共有し対策の検
討を行う。
・ 褥瘡管理シートを作成し、処置内容、リハビリや栄養プランを明確にする。
・ 作成した褥瘡管理シートを有料老人ホームのフローシートに貼り、現場の介護職員に褥瘡の状態を知って
もらう。
・ 居室にポジショニングの写真を貼り、介護職員への除圧指導を行う。
〔結果・考察〕
褥瘡は治癒した。治癒した要因として訪問看護師と褥瘡対策委員会を中心に褥瘡回診を行い、褥瘡管理シート
を用いたことで、情報の共有や多角的な対策がとれた。さらに介護職員への指導を徹底することができた。そ
の事から、訪問看護師が中心となり連携、指導を行うことが役割であると考える。
慢性疾患「褥瘡」と共に暮らす在宅療養を支えるために
‐ 褥瘡ケア指導プログラムを活用して ‐
北条病院
かいだ ふみこ
○戒田 文子(薬剤師),岡田 希世,浅田 真由美,松下 一美,高石 義浩
【はじめに】高齢者は急性増悪した疾患を介して、急速に褥瘡の発生や悪化をきたすことがある。そして主病
は軽快しても、褥瘡の治癒過程が停滞することもしばしばみられる。近年、入院期間の短縮や在宅医療の推進
といった社会情勢を背景に、この時点で「褥瘡」は慢性疾患と捉えられ、完治せずとも退院し、患者や介護者
は褥瘡と共に暮らすこととなる。しかし、入院時の褥瘡持ち込み症例の約 6 割が自宅からであることから、在
宅褥瘡ケアに対する介護力不足が予見される。
【研究方法】在宅や施設の限られた介護力による安定したケアを保障するために、褥瘡治療に係る現状分析を
行い、それらをもとに介護者に対する指導プログラムを作成し活用している。
【結果】持ち込み症例では仙骨部や大転子部の発生が多く、中には DESIGN ‐ R の D3・D4 にまで至っている
ケースもみられたことから、在宅での体圧分散が有効にできていないと考えられた。また、持ち込み及び発生
症例ともに踵部で好発しており、深さも判定不能なケースがあり、予防対策の見直しを行った。介護力に関し
ては、施設からの持ち込み症例数や重症例は少なく、施設の方が在宅よりも充足していた。これらの状況を踏
まえて、「感染なく D3 以下の創で退院すること」を目標とした褥瘡ケア指導プログラムを作成した。この条
件を満たす創であれば、1 日 1 回以下の処置でほぼ安定期を維持でき、在宅介護力が不足していても訪問や通
所系の医療・介護資源を利用するプランで対応可能であった。患者個別プログラムに沿って、入院早期から介
護者への指導のタイミングを計り、介護力に合わせた訪問・介護系スタッフの協力が得られる環境作りを行っ
ている。
【考察】在宅褥瘡ケアの問題は地域包括ケアシステムの構築をすることにより解決可能と考える。今後もプロ
グラムに沿って目標を達成し、絶妙なタイミングでの退院、そして在宅療養に繋げていきたい。
効果のあったラップ療法による褥瘡ケア
愛宕病院分院
こじま えりか
○小島 江利佳(看護師),吉田 仁美,石本 多恵子,石川 淳子,石川 麻紀,大井 明美,堅田 真吾,島本 健至,
荒木 京二郎,畦地 秀栄
はじめに
当院は平成 27 年 9 月「褥瘡を消滅させる、発生させない」を目標に新たに褥瘡対策委員会を立ち上げた。
医療療養病棟でラップ療法(以下旧療法)を開始したが褥瘡は悪化の一途を辿った。そんな時、当院関連病院
(以下A病院)でのラップ療法は褥瘡が治癒し褥瘡薬剤使用も激減したとの情報を元にA病院での指導を受け
た。それを参考に多職種を巻き込んだ新ラップ療法(以下新療法)の変更により褥瘡の改善・治癒に至った経
過を報告する。
Ⅰ、事例紹介
① 98 歳女性 入院時左第 5 趾褥瘡
DESIGN-R 8 点
入院 30 日目新たに 2 箇所発生
② 79 歳男性
入院 14 日目仙骨部褥瘡発生
③ 他 6 名
Ⅱ、研究期間 平成 28 年 2 月 22 日~ 6 月 20 日
Ⅲ、倫理的配慮
褥瘡写真を撮る事に理解・協力を得た患者・家族へ書面で研究内容を説明し同意を得た上で、倫理委員会で承
認を得た。
Ⅳ、実施・結果
新ラップ療法の手順を伝達し褥瘡患者 8 名を対象に悪化傾向にある 1 名は集中的にケアする体制で新療法を開
始した。翌日には、創部から膿や異臭が激減し、更に、肉芽も形成され浸出液はラップ面の穴数の増量や交換
の頻度を多くする事で改善がみられた。体位変換・ポジショニングはリハビリに依頼し指導を受け伝達し、次
に留意点や注意事項を説明しながら 2 人で巡回する事で皆の意識改革へと繋がった。8 名に新療法を実施し 7
名が治癒 1 名は改善傾向し、褥瘡薬剤も使用していない。
Ⅴ、考察
A病院で指導を受け実践する中で治癒困難な褥瘡患者 7 名が短期間で治癒する事が出来た。新ラップ療法を取
り入れ、褥瘡委員が中心となり看護師はもとより他職種との情報共有・連携を密に、きめ細やかな観察をした
事で褥瘡が改善・治癒に繋がったと考える。今後、新療法を当院全体に広げる為には多職種と密に連携し情報
共有と統一した処置方法を遵守する事で当初の目標達成に向けて一人でも多くの褥瘡に対するスペシャリスト
を育成していく必要があると考える。
創傷治療のひとつである VAC 療法から得た学び
豊中平成病院
やまぞえ みどり
○山副 みどり(看護師),渡部 隆行,サマリア シアハアン,石原 健二,松本 悟
[はじめに]
褥瘡治療は日進月歩の分野ではあるが、難治性の症例も多くわれわれ慢性期医療の中では重要な課題のひとつ
である。当病棟でも約半年間従来の治療(除圧、栄養、ワセリンパット保護、デブリ)を継続していたにもか
かわらず創部の状態に大きな変化がみられなかった難治性症例をもった。そこで現処置以外の方法を模索した
ところ VAC 療法(患部環境を被覆し陰圧をかけ創傷治癒を促進させる- Vacuum Assisted Closure)が適
応疾患の中に該当し今回実施する機会を得た。実施期間中の創部の変化、また VAC 療法について調査した結
果をここに報告する。
[方法]
対象患者・・・ 73 歳 男性 右臀部にⅢ度の褥瘡(7㎝× 6㎝ポケット含む)あり ADL は自己
にて車椅子移乗ができる HDS-R 21 点
実施期間・・・11/16 ~ 12/25
使用商品名・・・KCL 社の VAC 治療システム
週 2 回の診察、消毒、 写真撮影(記録用)、ドレープフィルム交換、終日 75mmHg 陰圧をかけ
できるだけ右側に圧がかからないよう説明した
[結果]
大きさ 皮膚の状態 排液量
11/16 7㎝× 6㎝ 暗赤色 20 ml
12/ 3 7㎝× 6㎝ ピンク色の新たな肉芽 5 ml
12/25 6㎝× 5㎝ さらに新たな肉芽 なし
期間中疼痛自制内、炎症所見なく熱発もなし ドレープフィルム剥がれなし
[考察]
創部の縮小、血行も改善し新たな肉芽形成がみられ1カ月ではあったが目に見えた違いを確認することができ
有用性のある治療法だと考える。
しかし安楽面、コスト面、適応疾患での問題もあり簡単に誰にでも実施するには難しくまだまだ課題を残すも
のとなった。
今後できれば症例数を増やして検証していきたい。