MIZUHO CHINA MONTHLY
みずほ チャイナ マンスリー
2018 年 3 月号
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中国経済 1 パンダ債と人民元調達の将来展望 産業・地域政策 3 河北省雄安新区の建設構想と将来展望 ―首都圏協調発展と地域振興の新たなトリガーとしてー 中国戦略 9 グレーター・ベイ・エリア構想 ~成功のキー・ドライバーを探る~(2) 法務 17 「労働契約違反及び労働契約解除時経済補償弁法」廃止後の労働法の運用 税務会計 20 租税条約の濫用と受益所有者 人事労務 28 中国飲食企業の労務リスクとその対策 み ずほ銀 行 中国営業推進部 みずほ銀行(中国)有限公司 中国アドバイザリー部 みずほ銀行の中国情報ホームページ ~中国の経済、市場動向、規制と人民元取引に関する最新情報~ http://www.mizuhobank.co.jp/corporate/world/info/cndb/index.html- Executive Summary -
中国経済 パンダ債と人民元調達の将来展望 本年 1 月、みずほ銀行と三菱東京 UFJ 銀行が、日本企業初のパンダ債を発行した。また、政府間の関係改 善に向けた取り組みも進展しつつある。これらを受け、人民元の国際化や中国の経済成長に伴い、日本企 業の人民元調達の本格化が想定されるが、中国当局も資本市場の対外開放を進めており、ファイナンス の選択肢が拡大している。本稿では、日系企業の人民元調達の将来展望を考えてみたい。 産業・地域政策 河北省雄安新区の建設構想と将来展望 本稿は、昨年 4 月の設立発表から 1 年を迎える河北省の雄安新区に関する地域開発戦略の展開動向につい て、この間に見られた関連報道や公表された研究論文、レポートなどを参考にしつつ、同区の設立背景と位置 づけを整理し、その有利な条件と課題を検討した上、企業進出の動向とその発展の可能性及び将来にわたる地 域政策の波及性や経済効果を展望する。 中国戦略 グレーター・ベイ・エリア構想(2) 華南地域では今、広東省、香港・マカオ地区全体に世界クラスの都市集合体を構築するという極めて野心的な 計画、いわゆるグレーター・ベイ・エリア(GBA)構想が進行している。先月号ではグレーター・ベイ・エリア(GBA) 構想の全体像を解説した。今月号からは、2 回に分けて GBA 構想に対する個別企業の知見・取り組みと KPMG と香港総商会が行った GBA 意識調査の結果に関する知見を紹介する。 法務 「労働契約違反及び労働契約解除時経済補償弁法」廃止後の労働法の運用 人力資源及社会保障部は 2017 年 11 月 24 日、第 5 回の失効宣告及び廃止文書目録の公布を行った。この うち、労使双方にとって最大の関心事となるのは「労働契約違反及び労働契約解除時経済補償弁法」(労 部発[1994]481 号文)である。本稿は、23 年間にわたり施行されてきた当該弁法廃止後の労働法の運用を 中心に分析する。 税務会計 租税条約の濫用と受益所有者 国家税務総局は 2018 年 2 月 3 日付で「租税条約における『受益所有者』に係る問題に関する公告」(国 家税務総局公告 2018 年第 9 号)を発布した。この公告は、租税条約の配当・利子・使用料の源泉所得税 の減免の特典を受ける外国納税者にとって重要な規定である。BEPS の Action6 に基づいて従来の旧規定 は全文が廃止され、第 9 号公告に整理統合された。 人事労務 中国飲食企業の労務リスクとその対策 中国に進出する日系企業のなかで、飲食企業や小売業など店舗の出店を伴う企業からのご相談が増えてい る。店舗の出店を伴う業種では、その店舗で働く人材の教育と雇用管理が、その店舗の成功の可否を握ってい ると言っても過言ではない。今回は、飲食業を中心に、店舗における労務リスクとその対策について考える。中国経済
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パンダ債と人民元調達の将来展望
1 本年 1 月、みずほ銀行と三菱東京 UFJ 銀行が日本企業初のパンダ債を発行した。みずほ銀行 は 5 億元、三菱東京 UFJ 銀行は 10 億元の発行であり、双方とも期間 3 年、利率は 5.3%であっ た。パンダ債とは、中国本土の債券市場において非居住者が発行する人民元建て債券であり、日 本におけるサムライ債に相当する商品である。 また、日中関係も改善の兆しが見られる。2018 年は安倍首相の訪中、習近平主席の来日によ る両国での日中首脳会談開催が噂されており、2008 年の「戦略的互恵関係」の包括的推進に関 する日中共同声明に続く、第五の政治文書の合意も視野に入っているようだ。日中関係は、昨今 の厳冬状態を脱し、足元は変化の前触れが感じられる。 上記の動きや人民元の国際化、中国の経済成長に伴い、日本企業の人民元調達の本格化も想定 されよう。中国当局も資本市場の対外開放を進めており、ファイナンスの選択肢が拡大してい る。本稿では、足元の環境を踏まえ日系企業の人民元調達の将来を展望してみたい。 1.中国本土における日系企業の直接調達の現状 中国は、過去より日本企業の進出が盛んな地域である。日系企業の拠点数は現在 3 万強存在 し、2 位の米国の約 4 倍に達している。中国における日系企業は、現地規制により、中資系企業 との合弁企業が大宗であるが、これらの企業は間接金融中心の中国の金融構造を背景に、中国本 土での事業資金となる人民元の調達を銀行ローンに依存していた。 一方、近年は規制緩和や直接調達市場拡大との中国当局方針を背景に、中国本土の資本市場は 債券市場が世界第 3 位の規模に到達すると共に株式市場も拡大している。結果として、企業の 資金調達に関しても、直接調達、すなわち社債や株式の発行が盛んとなっている。 日系事業会社の中国本土における債券発行第一号は、三菱商事の中国現地法人である三菱商 事(中国)有限公司が 2012 年に発行した CP である。以降、3 メガバンクの中国現地法人や、オ ートローン会社を中心に、着実に発行実績が積みあがっている。また、足元は ABS の発行も拡大 しており、日系オートローン会社も積極的な取り組みを見せている。 株式市場に目を転じれば、日系 企業の IPO は 2002 年以降断続的 に実施されており、日系上場企業 は現在累計 25 社を数える(図表 1)。なお、上場企業の中には、既 に日本企業が持分を売却した企 業も存在する。企業の成長と市場 の成熟に伴い、今後も、直接調達 の拡大が見込まれよう。 1 中国本土債券市場への投資制度の詳細や規制緩和の動向については、みずほフィナンシャルグループ『中国債券取引の実 務』一般社団法人金融財政事情研究会(2017)をご参照頂きたい。 みずほ証券 グローバル戦略部 村松 健 [email protected] (図表 1)日系合弁企業の中国での IPO 動向 0 1 2 3 4 5 6 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 ( 件) ( 百万元) (年) (出所)当社調べ 調達額 件数(右)中国経済
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2018年3月号 2.パンダ債の発行 次に、パンダ債の発行意義を説明したい。パンダ債は、中国現地法人自身の社債発行と、発行 体が親会社であることが異なっており、海外企業にとって重要な調達手段となる可能性がある。 まず、中国本土の債券市場で発行される債券は、主として商業銀行が投資家として保有してお り、間接金融の調達基盤と重複している。よって、債券発行による資金調達においても、商業銀 行の個社別の与信枠を費消することとなる。パンダ債の場合は、同一グループではあるものの、 融資先と発行体が異なることから、与信管理上異なった扱いとなることが期待される。 また、日本企業の中にはオフショア人民元市場において、点心債発行等により人民元を調達 し、中国現地法人へ親子ローンの形で貸し付ける企業もある。一方、オフショア人民元市場での 資金調達は流動性などやや不安定な面があり、金利状況によっては発行体にとって逆鞘となる 可能性もある。パンダ債発行により、潤沢な人民元の流動性を有する本土の債券市場へアクセス が出来るようになったことは、親子ローン実施の面でもメリットがあるものと思われる。 なお、親会社の信用力は中国現地法人を上回るケースが多く、より低廉な資金調達の余地があ ると共に、ファイナンス・カンパニーが発行体となることにより、グループファイナンスの枠組 みに中国を含めることが可能となることもポイントであろう。 最後に、中国現地法人は、海外からの資金調達額を規制されており、パンダ債の発行によって もこの点を免れるものではないことにはご留意頂きたい 。 3.日系企業の人民元調達における将来展望 中国の賃金上昇や地政学的リスクを背景に、日本企業の中で中国進出を躊躇する動きがある と言われている。一方、直接投資の動向を見ると、足元は ASEAN 主要 4 か国の後塵を拝している ものの、引き続き相応の額の対中直接投資が行われていることが確認される(図表 2)。日本企 業の中国ビジネスは引続き拡大している。 先に触れたように、足元の日中 関係は厳冬状態を脱しつつあり、 「一帯一路」関連のプロジェクト への参画といった政府方針も打 ち出されている2。日中関係の変化 と共に、内外を問わず、日本企業 の人民元調達ニーズが徐々に拡 大する蓋然性は高い。 このような中、パンダ債や債券通3など、中国本土資本市場の対外開放が急速に進展している。 日本企業は人民元調達の調達基盤構築に向け、積極的な対応を進めるべきタイミングではな いか。金融ビジネスもその動きに応じ、人民元での金融サービスを拡充する必要があろう。規制 緩和により、オンオフ一体で調達・運用が可能な人民元市場が形成されつつあることを受け、日 本企業による人民元調達の活発化と金融ビジネスの拡大を期待したい。 以 上 2 「一帯一路 中国に協力 政府、支援は個別判断」日本経済新聞(2017.12.31) 3 債券通に関しては、村松健『中国の債券市場活性化に向けた新スキームとその意義・影響を考察する』週刊金融財政事情 (2017.7.31)をご参照頂きたい。 (図表 2)日系企業の直接投資動向 0 30 60 90 120 150 (億 ド ル ) (年) (出所)JETRO資料より筆者作成 中国 ASEAN主要4か国 インド
産業・地域政策
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河北省雄安新区の建設構想と将来展望
―首都圏協調発展と地域振興の
新たなトリガーとしてー
1.はじめに 2017 年 4 月 1 日、「千年の大計、国家の大事」 として「雄安新区」の設立が発表されてから、まも なく 1 年を迎える。この間に同区の設立背景・目 的や区内への企業進出及び将来の発展に対する展 望など様々な報道やレポート記事が見られた。新 区建設に関する詳細な計画文書はまだ発表されて いないが、中国科学院直属の政府系研究機関など から同区に関する多面的な研究論文が公表された こともあり、本稿では、それらを踏まえ同区の設 立背景、地域概要及びその発展可能性と課題を取 り上げ、雄安新区を通して、転換期にある中国の 新たな地域政策の力点を確認する。 雄安新区の設立は、首都圏にある両直轄市(北 京、天津)と河北省(2 市 1 省の略称「京津冀」) の一体化及び協調発展の戦略展開(表 1)と密接な 関係にある。同地域は中国経済、社会発展の成果 と問題の縮図と言え、経済、環境、エネルギーというトリーレンマ(3E 問題)が集中的に見られ る地域であり、この地域に関する新たな打開策の実施は特に関心が持たれている。以下は同区の 設立背景と位置づけを紹介し、その有利な条件と課題を検討した上、企業進出の動向とその発展 の可能性及び将来にわたる地域政策の波及性や経済効果を展望する。 2.雄安新区の立地条件と新区建設の意義と狙い 新しい時代における中国の地域開発計画の重点を、首都圏の協調発展と長江経済ベルトの建設 及び「一帯一路」の構築と見れば、「雄安新区」建設 戦略は、まさにその最初の戦略重点(首都圏の協調発 展)を照準としたものと言える。これは、河北省保定 市に所在する雄安新区の地理的位置から見ても明らか である。雄安新区を構成する河北省保定市下の 3 つの 県(雄県、容城県、安新県)の間(図 1)と、雄安新区 と北京、天津の 2 大直轄市の間は、それぞれほぼ 3 角 形の立地構成になっている(図 2)。経済地理学や地 域経済学の立地理論(ウェーバーの「立地 3 角形」1) などから見れば、合理的な立地であると考えられる。 1石田浩之『地域経済学入門』有斐閣、2002 年。邵永裕『中国の都市化と工業化に関する研究-資源環境制約下の空間的歴史 的展開』多賀出版、2012 年など。 みずほ銀行 中国営業推進部 研究員 邵 永裕 Ph.D. [email protected] 2004年 「廊坊会議」開催(2月)を経て、「廊坊共識」が達成、3省市主体の環渤海協力 体制が発足(6月)、11月より「京津冀都市圏区域計画」の準備作成に着手。 2005年 環渤海地域の経済協力と協調発展の推進と京津冀の産業発展と生態保全の 強化を謳う「北京都市総合計画(2004-2020)」が実施され、主要都市間2時間 内アクセスのための交通インフラ整備の建設促進も提唱。 2007年 ハイテク産業と現代サービス業の発展促進を目指す「京津冀都市圏区域計画 」が実施された。 2011年 中国の「12・5計画」(「第12次5ヵ年計画(2011-2015)」が発足し、計画では 京津冀区域経済の一体化促進が提起された。 2012年 天津市と北京市の地方版主体機能区計画が相次いで、制定実施し、持続可能 地域開発の戦略目標が示された。 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 協力枠組協議」を取り交わした。 表1 京津冀一体化に向けての取り組みと政策展開 河北省は地方版主体機能区計画を制定実施し、また北京市と「2013-2015年 資料)中国政府WEBサイト及び各種報道より作成。 ・2月26日に、習近平国家主席主催のもと、京津冀一体化発展のための特別会議 が開催され、首都圏一体化に関する重要講話を行った。 ・12月の中央経済工作会議で、重点的に一帯一路、京津冀協同発展、長江経 済ベルト建設の実施を強調。 ・2月に、中央財経指導グループ第9回会議で京津冀協同発展促進を再度提起 ・6月に、中共中央、国務院共同で「京津冀協同発展計画綱要」を公布し、同地 ・2月、国家発展改革委員会より「13・5期京津冀国民経済・社会発展計画」が 公布され、新5ヵ年計画期に9大任務が提起された。 ・4月1日に中共中央・国務院による雄安新区建設の通達が公布。 域一体化発展の加速推進が表明された。 ・12月、中国経済会議京津冀協同発展、長江経済ベルト、一帯一路の地域発 展戦略の続行が明確にされた。 ・2月、北京市通州区、天津市武清区、河北省廊坊市3者で協議書を結び、同 3区市における発展試験区の建設に注力することを表明。 図1 河北省保定市における雄安新区の立地状況 資料)中国科学院地理科学資源研究所、中国科学院大学資源環境学院(姜魯光他)「雄安新区土地利用空間特徴及 起歩区方案比選研究」(英文タイトル“Land use patterns of the Xiongan New Area and comparison among potential choices of start zone”),中国科学院地理科学資源研究所,『環境科学』第39巻第6期(2017年6月)より加工引用。雄県 安新県 容城県 白 洋 淀 高度/m 県境 防水堤 保 定 市
産業・地域政策
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2018年3月号 雄安新区内での優遇政策などは現時点ではまだ 明らかにされていないが、中国政府は雄安新区を 深圳経済特区、上海浦東新区と並ぶ特別開発エリ アとする方針は明らかにされている。「雄安新区」 は、河北省保定市にある雄県、容城県、安新県の 3 県とその周辺地域が対象区域とされるが、当初は 約 100 平方キロメートルの範囲を新区とし、中期 的には 200 平方キロ、長期的には深圳経済特区並 みの 2,000 平方キロまで拡大させる構想である。 中国政府は雄安新区の対象地域を雄県などとした 理由について、北京や天津、河北省保定といった発展 エリアの後背地にあることや、交通の便や生態環境が良いこと、現時点で開発があまり進んでおらず、 発展の余地が十分にあることなどを挙げた。 対象となる 3 県の経済規模を見ると、雄県の 2016 年の域内総生産(GDP)は 101 億 1,400 万元(約 1,620 億円)、容城県は 59 億 4,000 万元、安新県は 16 年1~11 月の統計で 40 億 100 万元、3 県 合計では約 200 億元となる。浦東新区の 8,732 億元と比べると現時点では大きな差がある(表 2 と表 3)。 雄安新区は、習近平国家主席の肝いりで設立されたものである。設立の目的は北京市、天津市、 河北省の 3 地域を 1 つの経済圏とする「京津冀」地域一体発展構想の中核とすることや、北京市 に集中する経済、政治機能の分散、新産業発展のけん引役とすることなどとなっている。具体的 には、①環境に配慮したスマートシティの建設、②生態環境の整備、③ハイテク産業の発展、新 産業の育成、④良質な公共サービス提供、良質 な公共施設の建設、⑤利便性の高い交通網の建 設、グリーンな交通システムの確立、⑥市場の 活力を引き出す管理体制への改革、⑦対外開放 の全分野での推進――の 7 点が重点任務として 挙げられている。これらは首都圏だけでなく、 中国各地域でも取り組むべき事業ばかりで、新 時代における地域経済のパイロットやトリガー 機能が重んじられた新都市発展戦略として注目 に値する。 2017 年 4 月 1 日現在、中国ではあわせて国 家新区という名称のエリアを 19 カ所公布・設 立している。雄安新区は、最初から別格の存 在として議論・位置づけられ、比較対象とさ れているのは、中国最初の特別区である深圳 と上海の浦東である。表 3 では深圳経済特区 を含む 5 つの重要エリアの状況を簡単に比べ てみたが、設立時の面積と人口規模から見て 雄安新区は引けを取らない。経済規模(域内 図2 首都圏(京津冀)における雄安新区の立地環境 資料)中国科学院院刊2017年11月(雄安新区特集号)より加工引用。 [付]南水北調中線 (丹江口コース) 首 都 直轄市 地級市 雄安新区 km 県 名 地理的位置 面 積 (k㎡) 人 口 (万 人) GDP (億元) 小売総額 (億元) 固定資産投資 額(億元) 雄 県 北京市に108km、 天津市に100km、 保定市に70kmの距 離 524 38 101.14 53.5 69.86 雄 安 新 区 (3県合計) 北京、天津両市に 約100km(雄県)、 保定市に45km(安 新県) 1576.6 103.3 200.55 131.4 200.06 資料)各地域関連統計及びWEB情報より作成。容城県の固定資産投資額は2015年のもの。 表2 河北省雄安新区に含まれる3県の概要 (2016年) 容 城 県 北京、天津両市に 約120km、保定市 に約50kmの距離 314 26 59.4 44.9 60.9 40.01 33 69.3 安 新 県 北京市に162km、 保定市に45km、石 家庄市に187kmの 距離 738.6 39.3 新区名称 深圳特区 浦東新区 濱海新区 両江新区 雄安新区 所在経済圏 珠江デルタ 長江デルタ 京津冀(首都圏) 長江経済ベルト 京津冀(首都圏) 面積(k㎡) 1996.85 1210.41 2270 1200 1576.6 設立年 1980年 1992年 2005年 2010年 2017年 戦略的位置づけ 対外開放 総合改革、金融発 展、国際化 北方中国の開放の 門戸、ハイレベルの 現代製造業及び R&D基地、物流セン ター 都市農村総合改革 の試験区と内陸重 要な現代製造業と いサービス業の基 地など 首都機能一極集中 の緩和、グリーン発 展、人口集中地域 の新たな発展様式 の模索 設立経緯・背景 改革開放の初期 の最初の試験事 業 改革開放の深化拡 大時期 北方中国、首都北 京の近辺に最も進 んだ開放エリアの設 立 内陸部及び4番目 の直轄市に最も進 んだ開放エリアの 建設 京津冀協同発展の 肝心な年と新時代 設立時人口(万人) 31 143.75 140 205 103.3 現在人口(万人) 1191 504.44 299.42 350 103.3 設立時GDP(億元) 8.3 60 1608.63 1001 200.6 現在GDP(億元) 19300 8782 7000** 2020* 200.6 表3 雄安新区と深圳特区及び直轄市所在の国家新区の概要比較 資料)各地域関連統計ほかより作成。「*」は2015年の実績、「**」は2017年の実績。なお、これまで(2017年4月現在)、19の国家新区(深 圳含まない)が建設されたが、雄安新区と一緒に議論されているのは深圳特区と浦東新区である。
産業・地域政策
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2018年3月号 GDP 額)は旧市街中心区を主とした天津濱海新区と重 慶両江新区に及ばないが、当時の深圳経済特区や上 海浦東新区より遥かに大きい。また、何よりもそれ ぞれのエリア設置の時代的背景や戦略的位置づけの 違いには注意が必要である。たとえば、深圳経済特 区は中国の対外開放の尖兵または最前沿として設立 され、浦東新区は中国の総合改革、金融発展、国際 化促進のために設立されたものである。そして、新 常態といわれる経済の転換期に新設された雄安新区 には、首都機能一極集中の緩和、グリーン発展、人 口集中地域の新たな発展様式の模索といった複数な 重要な使命があり、「京津冀協同発展」のための新た な突破口と期待されるところが大きいことは言うま でもない。 このことは河北省の立地状況と北京市の発展構想を 示す図 3 と図 4 を見ても読み取ることが出来る。雄安 新区、北京市と天津市との間にはそれぞれ約 100km の 距離があり、首都圏の協調発展にとっては、地理上現 在の天津濱海新区よりもより有利な配置になる。南西 に偏っている河北省都の石家庄市との連動から見れ ば、この布陣は重要な一手を打ったものと言えよう。 河北省で最も実力のある都市は省都の石家庄市で、か つての中原地帯である河南省(中部振興地域)や北部中 国の振興を考える場合、雄安新区の設立はそうした地 域振興戦略の均衡性が考慮されていると考えられる。 2017 年に制定された「北京都市全体計画(2016~2035)」 は、雄安新区を始め、石家庄市や歴史上の有名な都市 である邯鄲市まで展望した中長期発展プランである。 雄安新区の建設事業が「千年の大計、国家の大事」と言 える所以である。 ただし、当面は首都圏の協調発展が先決になる。雄 安新区の設立決定後、まずは地盤整備と地域計画の事 業が始まっている。最も先行的で大掛かりな事業は、 交通インフラの整備である。鉄道整備は、基本的に国 家発展改革委員会が 2016 年に公布した「京津冀城際 鉄路網計画」(図 5)に基づき進められるが、工期を速 めることが予想される。実際、雄安新区関連の高速鉄 道建設は既に着工し、2020 年までに開通すると報道さ れている。道路建設も着々と進んでおり、地下空間の 造設と利用においてはグリーンシティやスマートシテ 図 3 中 国 首 都 圏 = 京 津 冀 の 主 要 都 市 分 布 ○ 承 徳 ○ 秦 皇 島 ○ 張 家 北 京 ★ ● 天 津 ○ 唐 山 ○ 滄 州 ○ 廊 坊 ○ 保 定 ◎ 石 家 庄 ★ 首 都 (直 轄 市 ) ● 直 轄 市 ◎ 省 都 都 市 ○ 地 級 市 ○ 衡 水 ○ 邢 台 ○ 邯 鄲 資 料 )河 北 外 宣 網 (w w w .hebw x..gov.cn)「河 北 省 行 政 区 画 全 図 」よ り 作 成 。 注 )北 京 と 天 津 か ら 河 北 省 の 省 都 石 家 庄 市 ま で の 距 離 が 遠 く (図 中 の 点 線 =300キ ロ 近 く )、 狭 長 の 三 角 形 に な る が 、 中 核 都 市 の 唐 山 市 や 秦 皇 島 市 (両 市 と も 海 岸 都 市 )と 比 較 的 良 い 三 角 形 の 立 地 に な っ て い る 。 渤 海 湾 ● 雄 安 図4 北京市全体計画における雄安新区の位置づけ
資料)北京市人民政府WE Bサイト(htt p://zhengwu.bei jing.gov.cn/gh/dt/t1494703. htm)2017年9月29日掲載「北京都 市全体計画(2016-2035)」より加工・引用。 一核:北京;二都:北京、天津 三軸:京津発展軸、京保石発展軸、京唐秦発展軸 四区の一つ:中部核心機能区 四区の一つ:東部沿海発展区 四区の一つ:南部機能拡張区 四区の一つ:西北部生態涵養区 多結節点:区域中心都市 多結節点:結節点都市 両翼:北京都市副都心、河北雄安新区 縮 尺 k m 図5 京津冀地域都市間鉄道計画図 雄安新区 (安新県) 資料)国家発展改革委員会「京 津冀城際鉄路網計画」 (2016.11.28)より引用。 既存鉄道線 建設中鉄道線 近期建設計画線路 遠期建設計画線路 将来展望用線路 [凡 例] 保定市
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2018年3月号 ィ建設が指向されている。同地域の開発がこれからということを考えれば、青写真を描きやすい ことがメリットの 1 つでもあり、今後、具体的な都市計画とデザインは海外にも開放され、公式入 札方式が採用されることも伝えられている。 3.雄安新区発展の可能性と主な課題 雄安新区は、河北省保定市下にある県域部分 (農村地帯を広く含む)である。その産業発展は これからになるが、保定市のデータは限られてい ることもあり、河北省全般の経済動向を見ること で、その地域的な特徴と発展可能性を見てみた い。図 6 のように、河北省は東部地域の工業省と して、工業を主とする第 2 次産業を主体(2016 年 の第 2 次産業のシェアは 48.4%、第 3 次産業は 41.8%)に経済発展を続けているが、第 1 次産業 の比率も多くの行政区を上回っている(2016 年 9.8%)のが特徴である。人口は全国で 6 番目に 多い 7,470 万人であるが、都市化率と 1 人当たり GDP がともに全国平均より低く、首都圏の北京・天 津両市とは大きな差がある(図 7)。工業化と都市 化も進行中だが、近年の鉄鋼産業の移転により、河 北省の工業品生産の中で鉄鋼産業の規模拡大が顕 著である(図 8)。2016 年において同省は全国銑鉄 生産の 26%、粗鋼の 24%、鋼材の 23%を占めるま でになっており、板ガラス(全国の 17%)を含め、 全国 1 位の生産基地になっている。 このように、河北省は工業素材の重要な生産基地 であるが、これによる産業構造の重工業偏重と環境資 源問題が大きいことは言うまでもない。特に経済成長 パターンの転換と製造業の高度化を考える場合、この ことは重荷になっている。速報ベースでは、2017 年 の鉄鋼関連製品の生産量はいずれも減少に転じてお り、自動車生産量が増大している。ただ、金属旋盤は 持続的な成長を続けているとは言えず、集積回路(IC) の生産量は拡大から低下に変わっており(図 9)、脱 重工業化の道程はまだ長い。 図 10(図 1 もご参照)に見る雄安新区の自然環境 は、華北平原の低地部分に位置し、区内に「白洋淀」という華北地域最大の淡水湖及び湿地帯が 広がり、河北省の中では非常に恵まれたエリアと言える。それを活かして、同区をグリーン、ス マート、低炭素の新成長地域に育成することは大変意義深いが、これまでにも環境汚染や自然破 壊の問題が指摘されており、地域開発と産業発展に伴う土地資源や水不足も更に懸念されている 図7 中国各地域の1人当たりGDPと都市化率(2016年) 河 北 山西 西蔵 吉林 黒龍江 遼寧 山東 内蒙古 福建 広東 浙江 江蘇 重慶 湖北 北京 上海 天津 y = 1867.7x - 51208 R2 = 0.8177 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 20 30 40 50 60 70 80 90 100 人口都市化率(%) 1 人 当 た り G D P ( 元 ) 資料)『中国統計年鑑(2017) より作成。 図8 河北省の鉄鋼関連製品生産量の推移(2007~2017) 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 単 位 : 万 t 銑鉄 粗鋼 鋼材 資料)国家統計局「国家数据」より作 成。2017年は河北省冶金業界協会の 速報による。 図6 河北の経済規模(GDP)と産業構成比の推移 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 単位 : 億元 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% GDP額 成長率 第1次産業シェア 第2次産業シェア 第3次産業シェア 資料)国家統計局及び河北省統 計局発表より作成。
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2018年3月号 ことから、都市計画の段階から、自然保護を重んじ、水資 源や土地資源を重要なファクターとして適正な人口規模 や産業構成を綿密に考慮することが求められる2。その意 味でも、雄安新区の成功により、首都圏だけでなく環渤海 経済圏や中原都市圏及び西北部地域の地域開発戦略の展 開と中国経済の持続的発展にモデル効果をもたらすこと が期待される。 4.新区計画の準備と企業進出動向と将来展望(終わりに) 雄安新区の新設が公表されてから、土地不動産(住 宅)の価格上昇と関連企業の株価上昇が顕著に見られ たが、混乱を避けるため、中国政府は即座に規制を始 め、当該 3 県の不動産取引が凍結された。当面は一部 企業の移転と交通インフラの整備が進められている が、同区の具体的な建設プランはまだ準備中とされ る。 新華社通信によれば、2 月 22 日に中国共産党中央 政治局常務委員会は会議を開き、国を挙げて開発する 新興地域、雄安新区の都市計画の進捗状況を確認し、 インフラなどの基礎的な重大プロジェクトの建設に 適時着手するよう指示し、新区の改革開放を加速する 施策の立案も急ぐよう求めた。習近平国家主席が主催 したこの会議では、雄安新区の建設は、北京市の非首 都機能の分散、京津冀地域(首都圏)の空間構造の最 適化、人口集中地区の合理的な開発モデルの模索など を進める上で重要な役割を担う歴史的プロジェクト であると指摘され、都市機能のスマート化を実現し、イノベーションを生み出す土壌が整った、 環境にやさしい低炭素都市とすることが目標だと強調された。また、同区の建設推進は、京津冀 協同発展を深めるためのもう 1 つの重大な決定、手配であり、歴史的プロジェクトであり、北京 の非首都機能を引き継ぎ、人口密集地区の最適化開発モデルを模索し、京津冀の空間構成を見直 し、最適化を図り、質の高い発展推進と近代的経済体系構築のための新たなエンジンを育てる上 で現実的意義と深遠な歴史的意義のあるものと指摘された。 また、ここでも、雄安新区の計画・建設は第 19 回党大会以降の習近平新時代の中国の特色ある 社会主義思想を導きとし、世界的視点、国際的基準、中国の特色、高いレベルの位置付けを堅持 しなければならないとされている。「雄安の質」を築き、高い質の発展を図る面で全国の模範とな らなければならないと強調され、北京の非首都機能移転を集中的に受け入れる地区とすることを めぐって、自然に順応し、法則を尊重した、合理的な都市空間配置を築きながら、地域の文化、
2社会科学院の研究論文「雄安新区資源環境承載力評価和調控提昇研究」(英文タイトル“Carrying Capacity of Resource and
Environment of Xiongan New Area:Evaluation, Regulation, and Promotion”)は、同区の人口規模と土地と水資源の負荷能
力を論証。現在の土地と水資源は比較的豊富(「南水北調」中線事業(丹江口コースにある。図 2 の付図))だが、将来は人口 を 500 万人以内にコントロールする必要があり、土地と水資源をより節約できる産業発展を目指すべきと提言している。 図9 河北省の主要電子機械工業製品の推移(2007~2016)図8 河北省の主要電子機械工業製品の推移(2007~2016) 0.27 0.18 0.07 0.16 0.56 0.79 0.1 1.3 0.1 0.14 0 20 40 60 80 100 120 140 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 自 動 車 と 金 属 旋 盤 ( 万 台 ) 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 集 積 回 路 ( 万 枚 ) 金属旋盤 自動車 集積回路 資料)国家統計局「国家数 据」より作成。 図10 地形図にみる河北省雄安新区の立地環境 内 蒙 古 自 治 区 遼 寧 省 山 西 省 山 東 省 河 南 省 渤 海 湾 高度表(m) 北 京 市 雄安 新区 保定市 石家庄市 衡水市 邢台市 資料)「河北省主体功能区計画」(2013.7)より加工・引用。 秦皇島市 唐山市 天 津 市 滄州市 廊坊市 邯鄲市 張家口市 承徳市
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2018年3月号 自然景観、時代の要求を結びつけ、 中華の風格、白洋淀(安新県にあ る湖)の風光、革新(イノベーシ ョン)の気風のある都市の姿を創 出しなければならず、またデジタ ル都市の計画・建設を同時に進め、 スマート新区作りに努め、生態優 先・グリーン発展を堅持し、グリ ーン・低炭素新区建設に努めるこ となどが強調された3。 新区設立決定から 1 年未満の間 に、同区への投資や企業設立を決 めた企業は 80 社以上(1 月末現在 45 社登録)だと報じられている。 国有企業(交通、通信、金融、建 設など)だけでなく、IT 業界の巨 頭 BAT3 社(百度、アリババ、騰訊) も積極的で、最近では民間の不動 産開発と観光サービス関連の企業 進出も見られた。表 4 のように、 同区の建設理念や発展方向から見 ればイノベーションや AI、IoT 関連の企業、団体の進出姿勢が積極的になっている印象である。 外資系企業の進出は、公式の開発計画のマスタープランが出た後となる可能性が高いと思われる が、2 月初旬に中英政府間で合意された雄安新区でのフィンテック拠点の共同建設(中国の雄安建 設投資集団と中国銀行、英国の不動産企業カナリー・ワーフ・グループ)が呼び水となって、都 市建設と環境整備を含む外資企業の進出が始まる可能性も考えられる。 雄安新区は、中央政府と首都に最も近いという地の利もあり「千年の大計、国家の大事」とい う遠大な地域開発計画と位置づけられた以上、それを成功させる必要性と可能性がある。その発 展は同区のインフラ整備や首都圏の一体化発展の経済効果に留まらず、北部中国・黄河流域、か つての中原地帯の振興に向けた新たなトリガーへの成長が展望されるもので4、今後 20 年から 30 年の間に河北省の中南部(雄安新区)に誕生する一大都市には、北京市と天津市間の都市機能の 連携をはじめ、河北省都の石家庄市や隣接する河南省、山西省などの中部・北部中国にも新たな 経済成長のエンジンとして、今日の深圳や浦東のように、都市と地域の振興発展に大きな活力と 波及効果を与え、東西間だけでなく、南北間の地域格差も縮小させ、中国全体をより均衡な発展に 導くことが期待されている。足許、雄安新区建設の具体的な開発計画の公布が待たれているが、今 後の長い期間にわたり、中央政府の膝元にある重要な地域開発事業として注目を集めることが見込 まれる。 以 上 3 「新華社通信」2018.2.22、「中国通信」2018.2.24 など。 4 今年 2 月、黄河流域の都市発展を目指す「関中平原都市群発展計画」(2035 年を計画目標年にしている)が国家発展改革委員 会と住宅都市農村建設部から公表された。北部中国の振興促進を、都市群の発展と交通網の整備及び周辺地域との連携拡大な いし「一帯一路」戦略への取組みにより北部後進地域の発展が図る内容となっている。 No. 企業・地域名 時間(年月) 事業名称 投資額・事業内容 1 アリババ 2017.11 雄安新区管理委員会と、同区での スマートシティー建設に関する戦略 提携協定を締結 アリババ社が持つクラウド、IoT、AI、ブロックチェーンなどの技術を雄安新区 の都市計画、都市運営に活用。 2 科大訊飛 2018.2 生体認証事業を展開 事業内容は顔認証と声紋認証を用いて個人認証を行う仕組みを雄安新区に作る(当社劉董事長の説明) 3 中英両国 2018.2 雄安新区のフィンテック拠点、中英で建設 中国雄安建設投資集団と国有商業銀行の中国銀行、英国の不動産企業カ ナリー・ワーフ・グループが共同で建設。英国メイ首相の中国公式訪問に合 わせ、1月31日に3社間の戦略提携協定が締結 4 中国電信 2017.8 雄安で5Gネットの建設に着手 2019年に商用5Gサービスの試行、翌2020年には全面実施を目指す 5 緑地控股集団 2018.1 雄安新区内に子会社設立 登録資本金20億元(約346億円)。企業の科学技術イノベーション鉑を支援する「雄安緑地双創センター」設立とサービスアパートメント「雄安緑地鉑驪公 寓」建設の2事業。 6 百度(バイドウ) 2017.12 雄安新区当局とAI事業で戦略提携協定締結 雄安新区でAIを生かした都市整備計画として「雄安AIシティー」を推進するほか、クラウドインフラの整備、国家級のAI実験室の設置などの分野で協力合 意 7 中国雄安建設投資集団(河北省 政府全額出資) 2017.11 雄安新区初の不動産会社「雄安 置業」設立 雄安置業の資本金は10億元(約172億円)で、雄安建投集団が全額 出資した。事業内容は不動産開発と経営、物件管理サービス、不動 産仲介サービス、駐車場サービスなどを手がける 8 国家電網 2017.4 雄安新区に新会社を設立すると発表 対象エリア内での電力供給を保障し、開発と建設作業をサポートする。 9 北京科鋭配電自動化 2017.5 雄安新区に電力供給子会社設立 新会社は雄安科鋭配電能源管理(仮称)で、北京科鋭全額出資。資本金は1 億元(約16億3,200万円)。電力供給、電力関連の技術開発、電気設備の設 置など。 10北京大学 2018.5 雄安新区に医学センター設立 雄安新区に学部、研究、人材育成、医療サービスが一体化した医学セン ター、北京大学光華管理学院の人材育成施設、北京大学経済学院と国の関 連部門との官民連携(PPP)センター設立などについて協議済。 11深セン達実智能 2017.7 雄安新区に子会社設立 子会社名称は雄安達実緑色智慧科技で、資本金5億元(約83億円。達実智 能全額出資。主にIoTシステムの研究開発、商用化、スマート医療情報システ ムの研究開発と実用化、医療用ビッグデータの開発と商用化など。 12中関村国家自主革新モデル区 2017.7 雄安新区にに「中関村科技園」を設置 北京市トップ蔡奇共産党委員会書記は近隣の天津濱海新区と河北省保定市 に「中関村創新中心」を設置したのに続いて雄安新区にも「中関村科技園」を 設置する方針を表明。 13河鋼集団と中建鋼構 2017.6 雄安新区に合弁会社を設置 鉄鋼大手の河北鋼鉄集団と鉄骨構造の建築を手掛ける中建鋼構及び国有 投資会社河北建設投資集団(河北建投)の3社合弁で新会社河鋼中建鋼構 を設立。出資比率は河鋼集団50%、中建鋼構40%、河北建投10%。 14華強集団 2017.5 雄安新区にR&Dセンターを設立 深圳華強集団梁光偉董事長は今後3年で河北省に600億元(約9,800億円)以 上を投資することを表明。案件数は6~10件で、先に新エネルギー事業本部 とR&Dセンターを設立し、クリーンエネルギー産業に注力する方針だ。 15騰訊(テンセント) 2017.9 雄安新区に持ち株子会社設立 社名は騰訊計算機システム有限公司で、資本金2000万元 16河北旅遊投資集団股份有限公司 2018.1 雄安新区(容城県内)に初めての観光業関連の会社を設立 資本金2000万元、主に観光スポット、ホテルの管理サービス、飲食、観光グッズ、展示会サービス、イベント開催、家政、タクシーサービスなどを手がける。 表4 雄安新区への企業・団体による事業展開の動向 (順不同) 資料)各種報道より作成。時間(年月)は一部企業設立の時期を示すほか主にニュースリリースの時間を指す。なお、本表は2018年1月現在までの企業進出情報を 対象としているが、すべて含まれるわけでない。
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グレーター・ベイ・エリア構想
~成功のキー・ドライバーを探る~(2)
先月号ではグレーター・ベイ・エリア(GBA)構想の全体像を解説しました。今月号からは 2 回に 分けて GBA 構想に対する個別企業の知見・取り組みなどを紹介し、あわせて KPMG と香港総商会が 行った GBA 意識調査の結果に関する知見を紹介します。今回は華潤ホールディングス、スワイヤー・ グループと SF エクスプレスの 3 社のコメントを紹介します。華潤ホールディングス(China Resources)
GBA への期待はすでにこの地域への投資の流れを形成しつつ あり、企業はニュー・エコノミーに関心を向け始めています。 この動きの先頭に立つのが、香港に本社を置く中国国営コン グロマリットの華潤ホールディングス(China Resources)です。 華潤ホールディングスのこの地域への投資額は 480 億米ドルに 達しています。投資先は、医療、製薬、不動産、食品・飲料、 小売、テクノロジー、公共事業など、オールド・エコノミーと ニュー・エコノミーの両分野にわたっています。 同社はこれからの 5 年間で少なくともさらに 200 億米ドルを 投資する計画ですが、今後は投資の方向を大きく転換させ、「主 にニュー・エコノミーの分野に投資を集中させる。どのプロジェクトも何らかの形でイノベーショ ンに関係している」と華潤ホールディングス戦略管理部の余忠良戦略担当上級ディレクターは話し ます。 華潤ホールディングスがニュー・エコノミーへの注力を決定したのは、2017 年 3 月に李克強総理 が GBA 構想を発表する前でしたが、構想の発表により、同社はこの地域への投資にますます自信を 持つようになりました。 余氏は次のように述べています。「中国は製造業中心の労働集約型経済から、成長を続ける中産 階級が主導するサービス主導型社会に移行しつつある。当社は一企業として常に、現在あるいは将 来予想されるトレンドに自らを合わせていきたいと考えている」。 こうしたサービス主導型社会への移行が持つ重要な側面としては、電子商取引、ファイナンス・ テクノロジー(フィンテック)、再生可能エネルギー、バイオ医薬品、廃棄物管理、ヘルスケア、医 療機器、資産管理の発達が挙げられ、これらはいずれも華潤ホールディングスが今後重点を置く分 野です。 広州、香港、深圳は中国経済に起きているこの変化にすでにうまく適応している、と余氏は指摘 します。例えば、法務・金融サービス業に強い香港は、もともと専門サービス・センターになりう KPMG Advisory(China)編 厚谷 禎一 監訳 http://kpmg.com/cn/gjp インタビューに協力頂いた 余忠良 戦略担当上級ディレクター中国戦略
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MIZUHO CHINA MONTHLY 2018年3月号 る条件を備えています。また、深圳は中国有数のテクノロジー・イノベーション・センターになり ました。 しかし、GBA 全体が成功するためには、11 の中核都市全てがそれぞれの戦略的位置づけを見出す、 あるいは強化する必要があります。「一部の都市はその点で他の都市より先行しているが、最終的 には市場の力が決めることだ」と余氏は言います。 特にイノベーションの推進という点で、地域全体がより重きを置かなければならない分野は教育 です。中国の教育制度は、学生に良い成績を取らせることに執着しすぎだと余氏は考えています。 「我が国の教育制度は厳格に管理されすぎている。創造性やイノベーション、思考力を伸ばすこ とに十分な努力が払われていない。我々が適正な文化とエコシステムを実現させたとき、GBA は初 めて本当の意味でテクノロジーとイノベーションの中心になることができる」 GBA も、シリコンバレーの教育機関でありシンクタンクのシンギュラリティ大学の手法に倣うべ きだと余氏は考えています。シンギュラリティ大学が提供するのは、教育課程だけでなく、カンフ ァレンスやスタートアップ、企業のためのビジネス・インキュベーターにも及びます。 【KPMG の視点】 成功のキーファクター GBA を成功させる上で最も重要な要素として挙げられるのは、政府の支援(調査対象者の 65%が 最も重要、または 2、3 番目に重要な要素として選択)、法律・規制の一貫性(同 57%)、インフラ 整備(同 52%)の 3 つです。 この地域の地方政府は、GBA を確 実に成功させる上で非常に重要な 役割を果たすでしょう。まずは欠か すことができないハード面の整備 ですが、道路、鉄道、海上・航空輸 送のインフラはすでに整っていま す。近い将来、香港・マカオ地区と 珠海を結ぶ港珠澳大橋が開通すれ ば、地域の物流インフラはさらに強 化されるでしょう。 ハード面の整備の次に、GBA 各都 市の政府が力を入れなければなら ないのはソフト面です。すなわち、 法律と規制を整合させ、資金・物資・ サービス、人材が円滑に行き来でき るようにしなければなりません。 さらに、回答者の約 47%が、GBA の開発を成功させるための重要な 要素として税制上の優遇措置を挙 げています。 図 5:GBA の開発を成功させる上で重要な条件* 政府の支援 法律・規制の一貫性 補完性 インフラ整備 税制上の優遇措置 その他 融資へのアクセス *回答者が一番目、二番目もしくは三番目に挙げた重要要素 出所: KPMG と HKGCC の共同調査 共同人材プールへの アクセス
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スワイヤー・グループ(太古集団)
ス ワ イ ヤ ー ・ グ ル ー プ (John Swire & Sons)は、 空運、不動産、貿易・工業、 食品・飲料、海運の 5 つを中 核ビジネス部門とするアジ ア太平洋最大級のコングロ マリットです。スワイヤー・ グループは、GBA 構想によっ て地域への新たな投資機会 が生まれ、これら全部門にお いて同社の展開する事業がますます強化されると確信しています。 香港・マカオ地区と珠江デルタ地域を改めて 1 つの経済圏(GBA)として位置付けるという構 想は、経済活動の利益をより大きくするという意味で賢明な施策だとスワイヤー・グループの鄭 家駒香港・珠江デルタ担当ディレクターは考えています。 全世界の都市集合体と比較したとき、GBA の強みは、金融サービス(香港)、イノベーション とテクノロジー(深圳)、エンターテイメント(マカオ)、製造(東莞)というように、多様な業 種を抱えていることだと鄭氏は言います。 唐偉邦広報担当ディレクターも同じ意見です。 「1 つの経済圏としての GBA には、金融・専門サービス、イノベーションと技術力、製造の分 野でのサポートといった強みがある。この強みを背景として、GBA はグローバル市場で認められ る経済勢力になる」と唐氏は指摘します。 他のベイ・エリアと共通する要素としては、特にイノベーションと技術開発を推進するにあた って、海外からの投資と人材が果たす役割が挙げられます。鄭氏も唐氏も、GBA 内の人材の行き 来を促進するために地域内での境界管理を見直すことを提案しています。さらに、この地域内だ けでなく国内のその他の地域や、場合によっては海外からの訪問客の通関手続きも簡素化すべ きだとしています。 鄭氏はさらに、GBA トラベルパスのモデルとして EU のシェンゲン協定が使えると指摘します。 このシェンゲン協定のもと、24 の EU 加盟国と 2 つの EU 非加盟国が、市民を対象として域内の 国境管理を廃止しました。地域内を自由に移動できるようになれば、人々は間もなく完成が予定 される地域のさまざまな輸送インフラプロジェクトがもたらすスムーズな接続をフル活用でき るはずです。 GBA の成長をさらに促すために、各自治体の幹部は GBA 内であらゆる業種への投資を認めても よいでしょう。中国本土・香港経済連携緊密化取決め(CEPA)のもとで中国本土の多くの産業が 香港地区の企業に開放されていますが、いくつかの分野は未だに香港地区からの投資に対して 門戸を閉ざしたままです。例えば、香港地区の航空会社が中国本土の航空分野に投資する場合、 外国企業として扱われます。このような投資制限を撤廃すれば、GBA への資本流入を活発化させ ヒアリング協力者のArnold Cheng 香港・珠江デルタ担当ディレクター インタビューに協力頂いた 唐偉邦 広報担当ディレクター インタビューに協力頂いた 鄭家駒 香港・珠江デルタ担当ディレクター
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MIZUHO CHINA MONTHLY 2018年3月号 ることができます。 GBA を成功させるために欠かせないのは、この構想が利害関係者にもたらすメリットをできる 限り早く実証することだと唐氏は話します。海外や中国全土から人材と投資を呼び込むために は、繁栄し、成長する GBA というイメージを創り出すことが大変重要だと言うのです。これはち ょうど香港と深圳の境界にある落馬洲河套地区の開発という形で実現する可能性があります。 この計画が成功すれば、香港と深圳の協力深化がもたらすメリットが実証されるでしょう。 鄭氏も唐氏も、「一国二制度」のユニークな特徴、知的財産権の尊重、金融・専門サービスの 専門知識、国際社会に向けて開かれた窓を兼ね備える香港が、GBA の発展において重要な役割を 果たすと信じています。 【KPMG の視点】 経済への影響 珠江デルタ地域は、長年にわたって中国経済を牽引してきた重要な地域の 1 つです。珠江デル タ地域が消費主導型経済への移行において引続き役割を果たすためには、より密接な一体化を 推進し、この地域を世界に向けてさらに開放することが鍵になるでしょう。 特に重要なのは、GBA のイノベーション・センターの代表地位を維持するための方策です。珠 江デルタ地域が持つ安定した製造サプライチェーンのネットワーク、さらに高学歴化する労働 力、高度に知的な消費者市場などを見れば、この地域が中国の経済発展の最前線にとどまる可能 性は高いといえるでしょう。 当社の調査によると、企業は GBA のメリットを確信していることがわ かりました。回答者の 90%が、GBA は中国経済に好影響を与える可能性 が高いと答えています。 GBA 構想が経済に好影響を与える とはあまり考えていないのは、この 構想を支持していないか、影響を判 断するのは時期尚早と考える回答者 で、この構想を支持する回答者の 95%は経済に好影響があると答えま した。 図 6:GBA が中国経済に与える影響 プラスの影響 マイナスの影響 わからない 出所: KPMG と HKGCC の共同調査
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MIZUHO CHINA MONTHLY 2018年3月号 【KPMG の視点】 GBA の都市間の関係と経済的位置づけ GBA の主眼は、主要都市が互いに協力し合い、より密接な協力関係を生み出すことができる地 域を構築することです。調査の結 果、回答者の 59%が GBA の諸都市が 互いに補完し合えると考えている ことがわかりました。さらに 64% は、GBA の諸都市の果たす経済的役 割がすでにかなり重複していると 答えていますが、これは過去数十年 間、GBA の多くの都市が同じ業種で 競合するケースが多く、この地域に 調整や協力が欠けていたことの現 れであります。回答者の 4 分の 1 が GBA の諸都市は互いに代替し合える と見ており、また 16%は互いに補完 し合うことも代替し合うこともで きないと考えていることもそのた めです。一方で、回答者の 5 分の 1 以上が、都市間の役割分担が明らか に欠けている、またはやや欠けてい ると見ています。 GBA の諸都市間で明確な役割分担ができている と答えた回答者がわずか 13%にとどまることか ら、GBA での調整と協力のレベルを高めるための 取組みがまだ必要だと考えられます。役割分担が 多少できていると答えた回答者は半数でした。 図 7:GBA の都市間の関係 出所: KPMG と HKGCC の共同調査 概ね代替の関係 補完よりも代替の関係 代替関係も補完関係もなし 代替よりも補完の関係 概ね補完の関係 図 8:GBA 各都市の経済的位置づけ 出所: KPMG と HKGCC の共同調査 明らかにできている 多少できている 明らかにできていない どちらでもない ややできていない
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MIZUHO CHINA MONTHLY 2018年3月号 SF エクスプレス(順豊エクスプレス) 配送サービス会社の SF エクスプレ スは、珠江デルタ地域への浸透度とい う点で他社を圧倒しています。深圳に 本社を置く同社は、GBA 構想の実現に は香港と中国本土の都市との円滑な 統合が必要だとしながらも、GBA 構想 がこの地域をさらに活性化させると 確信しています。 SF エクスプレスは 1993 年の創立後、 中華圏を越えて韓国、日本、米国を含 む全世界でサービスを展開するまでに成長しました。世界的に存在感を拡大する SF エクスプレ スですが、華南は今でも同社のビジネスの中核的構成要素です。 李鋒財務管理担当ディレクターは次のように話します。「SF エクスプレスのルーツはまさにこ こ(珠江デルタ地域)にある。この地域は今でもビジネスと戦略の両面で当社の非常に重要な構 成要素だ。当社の本社は深圳にあるが、最先端の航空・港湾インフラを持つ香港は、実質的に当 社と世界を結ぶ窓口になっている」 このような理由で、李氏はこの地域の開発計画を大いに支持しています。「地域の都市間の経 済的つながりをより緊密化する」という GBA 構想の基本的概念に沿って、配送サービス会社もビ ジネスモデルを統合する必要があると李氏は考えます。すなわち、人材、企業、都市および地域 を結びつける必要があるというのです。 GBA 構想がポテンシャルを発揮するために地方政府が焦点を当てなければならない 2 つの分 野は物資と人材の統合だと彭輝経営戦略担当副ディレクターは指摘します。 物資の統合には、GBA の異なる管轄区における税関事務、通関手続き、関税基準を取りまとめ ることが必要です。彭氏は次のように話します。「当社は輸送拠点として香港を選択した。香港 は古くから中国と世界を結ぶ場所で、インフラや税関などのさまざまな面が世界トップレベル と言えるからだ。深圳と広州も追い上げてはいるが、この地域の他都市が取り組まなければなら ないことはまだたくさんある」。 インタビューに協力頂いた 李鋒 財務管理担当ディレクター インタビューに協力頂いた 彭輝 経営戦略担当副ディレクター
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MIZUHO CHINA MONTHLY 2018年3月号 しかし、統合の鍵を握るのは、香港から学ぶことだけではありません。各都市の幹部と協力し、 境界管理、通貨および法制度の違いを解決できるような関税制度を確立することが必要です。ま た、これを実現するためには地域の人材プールを開発しなければなりませんが、その形成を妨げ る障害が存在します。第一に給与に係る税率に差異があります。現時点で香港が最大 17%なの に対し、中国本土は 45%と開きがあります。このほかに も、この地域にトップレベルの人材を定着させるために は、文化の違いや世界トップクラスの医療・教育施設の 建設などに取り組まなければなりません。 彭氏は次のように説明します。「広東省の大学が送り 出す卒業生は毎年増えているが、SF エクスプレスのよ うなグローバルな野心を持つ企業が適切な人材を見つ けることはまだ難しい。採用候補者には、もっとグロー バルな精神を持っていてほしいし、批判的な考え方がで きる人であってほしい。また、さまざまな産業に精通し ていてほしい。香港には当社が求める特性を持つ人材プ ールがあるが、今のところ、これらの候補者が中国本土 で働くことは実際のところ考えにくい。GBA 構想の成否 には、このギャップを埋められるかどうかが重要になる だろう」。 【KPMG の視点】 最大の勝者 GBA の未来に関して最も期待が寄せられるのは、ハイ テク製造とイノベーション・センターとしての可能性で す。 しかし、GBA では、貿易や物流など、すでにしっかり と根付いている産業も引続き繁栄するでしょう。これは 当面のところ、地域経済の中核的推進力は輸出のまま変 わらない可能性が高いことを考えても明らかです。 また、GBA では金融業もさらに発展することが予想さ れます。国際金融の中心であり、世界最大のオフショア 人民元取引センターでもある香港の地位は、金融業を確 実に成長させる上で非常に重要な役割を果たすでしょ う。 この点は調査結果にも現れています。GBA の開発で最 も恩恵を受けると思われる 3 つの分野として回答者が 挙げたのは、貿易・物流(68%)、金融サービス(62%)、 新技術の研究開発(60%)でした。 特に中国本土の回答者は、この地域の開発が新技術の *回答者が一番目、二番目もしくは三番目に挙げ た分野 出所: KPMG と HKGCC の共同調査 図 9:GBA 開発で最も恩恵を受ける産業* 貿易・物流 金融サービス 新技術の研究開発 専門サービス 製造業 観光・展示会 その他
中国戦略
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MIZUHO CHINA MONTHLY 2018年3月号 研究開発にプラスになると考えています。中国本土の回答者の 74%が、恩恵を受ける 3 分野の いずれかに新技術の研究開発を挙げましたが、香港の回答者では 54%にとどまっています。金 融サービスについても同様の差が見られ、中国本土の回答者が 72%なのに対して、香港の回答 者では 58%でした。 この違いは、香港の回答者が、GBA 構想はさまざまな産業に恩恵をもたらすと考えている、と いうことで説明がつきます。唯一目立っていたのは貿易・物流で、香港の回答者の 70%が恩恵 を受ける 3 分野のいずれかに、貿易・物流を選びました。
来月号で紹介する企業は招商局集団、Twinkle Baker Décor とテンセント(騰訊)です。
厚谷 禎一
KPMG Advisory (China) Limited パートナー 東京工業大学理学部卒業・同大学理工学部修士課程修了(情報科学専攻) 米国ペンシルバニア大学ウォートン校経営学修士(財務専攻) これまで 30 年にわたり、日本、米国、カナダ、英国、韓国にて経営コンサルティ ング会社及び会計事務所に勤務、各国企業顧客に戦略・M&A・オペレーション等の 分野でのアドバイザリー・サービスを提供。 2003 年より KPMG LLP(米国)ニューヨーク事務所に勤務、事業デュー・ディリジ ェンスを中心とした M&A 支援サービスを提供。 2008 年より KPMG 中国の上海事務所、2012 年より北京事務所にて勤務、主に日本企 業顧客に対してアドバイザリーサービスを提供。 専門は市場評価、事業計画の精査、M&A 実施後の統合支援等を含む事業デュー・ ディリジェンスだが、日本企業顧客に対しては広く、事業戦略立案、財務・税務デ ュー・ディリジェンス、企業価値評価、不正調査、リストラクチャリング支援等を 含む、コンサルティングサービス全般のプロジェクト・マネジメント・サービスを 提供する。 KPMG(中国)のみずほチャイナマンスリーへの寄稿記事のバックナンバーは、下記ウ ェブサイトでも閲覧可能。 https://home.kpmg.com/cn/zh/home/services/special-focus-groups/global-japanese-practice/newsletter/others/mizuho.html +86 10 8508 7111 [email protected]
法務
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MIZUHO CHINA MONTHLY 2018年3月号
「労働契約違反及び労働契約解除時
経済補償弁法」廃止後の労働法の運用
人力資源・社会保障部は 2017 年 11 月 24 日、第 5 回目となる失効宣告及び廃止文書目録の公 布を行った。このうち、労使双方にとって最大の関心事となるのは「労働契約違反及び労働契約 解除時経済補償弁法」(労部発[1994]481 号文、以下「481 号文」という)であるが、23 年間に わたり施行されてきたこの 481 号文が廃止されると、どのような影響がもたらされるのであろ うか。 1. 「経済補償区分計算」について 労働契約法においては、経済補償区分計算の原則が次のとおり確立されている (第 97 条 3 項)。 「この法律の施行日において存続する労働契約をこの法律の施行後に解除、又は終了し、この 法律の第 46 条の規定に従い経済補償を支払わなければならない場合、経済補償の年数は、この 法律の施行日より起算する。使用者がこの法律の施行前において、その当時の関連規定に従い労 働者に対し経済補償を支払うべき場合は、その当時の関連規定による。」 1994 年施行の労働法は、経済補償を支給すべき各種事由を定めていたが、経済補償の計算・ 支給の方法については、明確な規定がなかった。労働法の施行を徹底するため、労働部は経済補 償に関し 481 号文を制定した。こうして、労働契約法施行 (2008 年 1 月 1 日) 前の経済補償 に関する国レベルの原則規定は、481 号文となった。481 号文では、労働契約の合意解除、罹病・ 業務外の負傷による解除、客観的状況の重大な変化による解除等の 5 つの事由に基づく経済補 償金の計算規則を規定していた(第 5 条~第 9 条、第 11 条)。これに対して、2008 年から実施さ れた労働契約法では、経済補償金の支給すべき範囲を拡大し、且つ経済補償金の計算規則を変更 した。481 号文の廃止は、労働契約法の施行された 2008 年以前における経済補償に関する原則 規定がなくなり、経済補償区分計算が廃止され、労働契約法がこれに替わることを意味するので あろうか。 必ずしもそうではない。 上記の労働契約法第 97 条 3 項により、労働法施行日前日の 2007 年 12 月 31 日時点で既に就 業していた労働者の経済補償金については、同法施行日を境に前後 2 つの時間で計算される。 同法施行前の勤務年数については、その当時の関連規定が現在において廃止されているか否か にかかわらず引き続き適用されると一般的に解される。 もっとも、各地においては、区分計算に関する具体的な規則が既に確立されている。481 号文 の廃止後においては、区分計算原則の廃止に関する立法又は各地の実務の動向に注視する必要 があると考えられる。 2. 今後適用されない経済補償金に関する 481 号文の特則 481 号文は、労働契約法に対する特則として、経済補償金の計算に関し次のように定めている。 金杜法律事務所 上海事務所 パートナー中国弁護士 陳青東 E-mail:[email protected] URL:http://www.kwm.com法務
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MIZUHO CHINA MONTHLY 2018年3月号 合意解除、不適任による解除の場合における経済補償金の上限は 12 ヶ月分の月額平均賃 金(次項参照)。 経済補償金の計算基準となる月額平均賃金とは「企業の通常の生産状況」における労働 者本人の契約解除から 12 ヶ月を遡る期間の月額平均賃金。 罹病・業務外の負傷による解除、客観的状況の重大な変化による解除、経済的な人員削減 の場合における計算基準は「当該企業月額平均賃金」以上。 これに対して、労働契約法は次のように定めている。 補償期間の上限につき、労働者の月額賃金が所在区域の前年度従業員月額平均賃金の 3 倍を超える場合にのみ、当該労働者に経済補償を支払う年数は最高で 12 年とする。月額 賃金が従業員の平均賃金に満たない場合、補償期間に上限はない。 計算基準は、これを一律、「労働者の労働契約解除又は終了から 12 ヶ月を遡る期間の平 均賃金」とする(所在区域の前年度従業員月額平均賃金の 3 倍を超える場合は、同月額 平均賃金の 3 倍額)。 このように、481 号文には、労働契約法に抵触する内容が定められており、これに対し、裁判 所・仲裁委員会は、その抵触する部分は無効との判断を示すのが一般的であったが、個別事案に おいてはたびたび争点となっている。特に、使用者及び労働者は「上限 12 年間」、「企業月額 平均賃金の保証」といった 481 号文の規定内容が労使双方に定着していたため、労働契約法の施 行日たる 2008 年 1 月 1 日以降の勤続年数にかかる経済補償金の計算についても多くの紛争が見 られていた。 しかし、いずれにせよ、481 号文の廃止後はこのような紛争もなくなり、2008 年 1 月 1 日以 降の勤続年数にかかる経済補償の計算は、別途規定がない限り、労働契約法とその実施条例に従 って行われる。 3. 経済補償金に関する「25%又は 50%」追加の法的根拠の消滅 481 号文は、追加経済補償金にかかる次のような「25%又は 50%」の制度を確立していた。 使用者が賃金を不当に控除、若しくは理由なくその支給を遅延した場合には、一定期間 内で支給し、且つ給与の 25%に相当する経済補償金を支払わなければならない。 地域の最低賃金基準を満たさない賃金を支給した場合には、不足分の補填のほか、この 補填額の 25%に相当する経済補償金を支払わなければならない。 使用者が規定に違反し経済補償金を支払わなかった場合には、その補填のほか、当該経 済補償金額の 50%に相当する追加経済補償金を支払わなければならない。 この制度は、2008 年 1 月 1 日実施の労働契約法で次の 3 点が改められた。 名称:2 種類の追加給付経済補償金をあわせて「賠償金」と総称 基準:「25%又は 50%」という追加支給の比率を 50%~100%に統一 手続:「労働行政部門による一定期間内の支給命令への違反」という要件の付加 その後 10 年にわたり労働契約法が施行される中で、この点をめぐる各地の裁判所・仲裁委員 会の判断は基本的に一致するようになり、例えば労働者が 481 号文に基づき 25%又は 50%の追 加経済補償金の支払を請求しても、まずは上記 3 点目の「労働行政部門による一定期間内の支