1.連結上の税効果会計の必要性 (A)
個別財務諸表上の利益と課税所得が異なっているため,個別財務諸表において税効果会計を適用していた。 一方,連結会計において個別財務諸表を合算し,連結修正仕訳を行うため,個別財務諸表の利益の合計額 と連結財務諸表の利益は一致しない。そのため,個別財務諸表における税効果会計の適用のみでは,連結上 の利益と税額が対応しないため,連結財務諸表においても固有の税効果会計を適用する必要がある。 つまり,連結修正仕訳によって生じる連結財務諸表固有の一時差異について,連結上の税効果会計を適用 することで,連結上の利益と連結上の税額を対応させることができるのである。第7節
連結上の税効果会計
具体例2.連結財務諸表固有の一時差異の例示 (A)
範囲 帰属先 資本連結に際し,子会社の資産及び負債の時価評価による評価差額が生じた場合 子会社 連結会社相互間の取引から生じる未実現損益の消去を行った場合 販売側 連結会社相互間の債権・債務の相殺消去による貸倒引当金の調整を行った場合 債権者側 社債の発行後引受を行い,償却原価法の適用及び社債償還損益を計上した場合 発行側 ※ 上記項目は,連結修正仕訳において,利益が変動する項目である。ただし,のれん償却額,負ののれ ん発生益,受取配当金の修正,子会社株式売却損益,段階取得に係る差益,持分変動損益等は,利益が 変動するが,原則として税効果会計を適用しない。3.表示方法 (A)
(1) 繰延税金資産・繰延税金負債の表示区分(貸借対照表) 流動・固定の分類方法は,個別税効果会計と同様である。 流動項目 固定項目 繰延税金資産 流動資産 投資その他の資産 繰延税金負債 流動負債 固定負債 (2) 繰延税金資産・繰延税金負債の相殺表示(貸借対照表) 内容 個別上の税効果会計と同様 同一納税主体に関する繰延税金資産・繰延税金負債は,流動項目・固 定項目ごとに相殺して表示する 流動項目と固定項目は相殺できない 連結上の税効果会計特有 親会社の繰延税金資産,繰延税金負債と子会社の繰延税金資産,繰延 税金負債は納税主体が異なるため,相殺できない ※ 繰延税金資産及び繰延税金負債が,親会社と子会社のどちらで計上(帰属先)されているかに留意する こと。 ※ 親会社と子会社の税率が異なる場合には,税効果の帰属先の税率を用いる点に留意すること。 (3) 法人税等調整額の表示方法(損益計算書) 法人税,住民税及び事業税の下に「法人税等調整額」の名称で表示する。4.連結上の税効果会計の仕訳の考え方 (A)
(1) 連結修正仕訳により連結上の利益が減少する場合 連結上の利益が減少した場合には,将来減算一時差異に該当するため,下記の仕訳が行われる。 (借) 繰 延 税 金 資 産 ××× (貸) 法 人 税 等 調 整 額 ××× (2) 連結修正仕訳により連結上の利益が増加する場合 連結上の利益が増加する場合には,将来加算一時差異に該当するため,下記の仕訳が行われる。 (借) 法 人 税 等 調 整 額 ××× (貸) 繰 延 税 金 負 債 ××× 連結修正仕訳 連結上の利益 法人税等の額 税効果の仕訳 「借方」に損益項目 → 利益減少 → 法人税等減少 → 貸方「法人税等調整額」 借方「繰延税金資産」 「貸方」に損益項目 → 利益増加 → 法人税等増加 → 借方「法人税等調整額」 貸方「繰延税金負債」具体例 連結税効果の貸借対照表の表示
5.未実現損益に伴う具体的処理 (A)
税効果会計は売却元に帰属しており,用いる税率は販売側(売却元)の税率である。 税率 ダウンストリーム 親会社の税率 アップストリーム 子会社の税率 税効果会計から生じる繰延税金資産,繰延税金負債の分類は,以下のようになる。 表示区分 棚卸資産から生じた繰延税金資産・繰延税金負債 流動項目 非償却性資産から生じた繰延税金資産・繰延税金負債 固定項目 償却性資産から生じた繰延税金資産・繰延税金負債 固定項目 <未実現利益の消去> 連結上の利益減少 → 法人税等減少 → 貸方「法人税等調整額」 借方「繰延税金資産」 <未実現損失の消去> 連結上の利益増加 → 法人税等増加 → 借方「法人税等調整額」 貸方「繰延税金負債」 (1) 棚卸資産 (a) ダウンストリーム ダウンストリームの場合には,親会社の利益を修正する(親会社に帰属)ため,親会社の税率を用いる。 また,未実現利益の消去に伴い,連結上の利益が減少するため,将来減算一時差異となり,繰延税金資産 を計上する。なお,棚卸資産に係る繰延税金資産は,流動資産に計上する。 <期首未実現利益に係る税効果会計の仕訳> (借) 法 人 税 等 調 整 額 ××× (貸) 利益剰余金期首残高 ××× ※ 上記仕訳は,以下の2つの仕訳に分解できる。 (借) 繰 延 税 金 資 産 ××× (貸) 利益剰余金期首残高 ××× (借) 法 人 税 等 調 整 額 ××× (貸) 繰 延 税 金 資 産 ××× <期末未実現利益に係る税効果会計の仕訳> (借) 繰 延 税 金 資 産 ××× (貸) 法 人 税 等 調 整 額 ×××以下の資料に基づいて,以下の各問に答えなさい。 1.P社は,子会社株式を 80%取得しており,子会社として支配している。 2.S社は×1 年度末においてP社より仕入れた商品 5,000 円(P社仕入原価 4,000 円)を保有している。 3.S社は×2 年度において,上記商品を外部に売却している。 4.P社の実効税率は毎期 45%である。 問1 ×1 年度末の未実現損益の消去に関する連結修正仕訳を示しなさい。 問2 ×2 年度末の未実現損益の消去に関する連結修正仕訳を示しなさい。 解答 解説 (単位:円) 問1 <×1 年度> (借) 売 上 原 価 1,000 (貸) 商 品 1,000 (借) 繰 延 税 金 資 産 450 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 450 ※ 1,000 円×45%=450 円 なお,棚卸資産に係る未実現損益の繰延税金資産は,「流動資産」に計上される。 連結上の利益減少 → 法人税等減少 → 貸方「法人税等調整額」 借方「繰延税金資産」 問2 <×2 年度> (借) 利益剰余金期首残高 1,000 (貸) 売 上 原 価 1,000 (借) 法 人 税 等 調 整 額 450 (貸) 利益剰余金期首残高 450 ※ 当期の連結上の利益増加 → 法人税等増加 → 借方「法人税等調整額」 ※ 前期の連結上の利益減少 → 法人税等減少 → 貸方「利益剰余金期首残高」 <上記の税効果会計の仕訳の内訳> ① ×1 年度末の仕訳 (借) 繰 延 税 金 資 産 450 (貸) 利益剰余金期首残高 450 ② ×2 年度の仕訳 (借) 法 人 税 等 調 整 額 450 (貸) 繰 延 税 金 資 産 450 例題 22 連結税効果①(棚卸資産・ダウンストリーム) 重要度 A 難易度 A
(b) アップストリーム (B) アップストリームの場合には,子会社の利益を修正する(子会社に帰属)ため,子会社の税率を用いる。 また,未実現利益の消去に伴い,連結上の利益が減少するため,将来減算一時差異となり,繰延税金資産 を計上する。さらに,アップストリームの場合には,未実現利益の消去に伴う連結上の利益の変動を非支 配株主に按分し,税効果会計に伴う連結上の利益の変動を非支配株主へ按分する。 以下の資料に基づいて,以下の各問に答えなさい。 1.P社は,子会社株式を 80%取得しており,子会社として支配している。 2.P社は×1 年度末においてS社より仕入れた商品 5,000 円(S社仕入原価 4,000 円)を保有している。 3.P社は×2 年度において,上記商品を外部に売却している。 4.S社の実効税率は毎期 45%である。 問1 ×1 年度末の未実現損益の消去に関する連結修正仕訳を示しなさい。 問2 ×2 年度末の未実現損益の消去に関する連結修正仕訳を示しなさい。 解答 解説 (単位:円) 問1 <×1 年度> (借) 売 上 原 価 1,000 (貸) 商 品 1,000 (借) 繰 延 税 金 資 産 450 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 450 (借) 非 支 配 株 主 持 分 110 (貸) 非支配株主に帰属する当期純損益 110 ※ 非支配株主持分:1,000 円×(1-45%)×20%=110 円 ※ 連結上の純利益は 550 円(1,000 円-450 円)減少するため,結果的に 20%(110 円)を非支配株主持分に 按分することになる。 例題 23 連結税効果②(棚卸資産・アップストリーム) 重要度 B 難易度 B
(借) 売 上 原 価 1,000 (貸) 商 品 1,000 (借) 非 支 配 株 主 持 分 200 (貸) 非支配株主に帰属する当期純損益 200 (借) 繰 延 税 金 資 産 450 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 450 (借) 非支配株主に帰属する当期純損益 90 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 90 ※ 1,000 円×20%=200 円 ※ 450 円×20%=90 円 問2 <×2 年度> (借) 利益剰余金期首残高 1,000 (貸) 売 上 原 価 1,000 (借) 法 人 税 等 調 整 額 450 (貸) 利益剰余金期首残高 450 (借) 非支配株主に帰属する当期純損益 110 (貸) 利益剰余金期首残高 110 (借) 利益剰余金期首残高 1,000 (貸) 売 上 原 価 1,000 (借) 非支配株主に帰属する当期純損益 200 (貸) 利益剰余金期首残高 200 (借) 法 人 税 等 調 整 額 450 (貸) 利益剰余金期首残高 450 (借) 利益剰余金期首残高 90 (貸) 非支配株主に帰属する当期純損益 90 <棚卸資産におけるアップストリームの場合の 非支配株主持分・非支配株主に帰属する当期純損益の算定方法> 非支配株主持分:{子会社の資本-期末未実現利益×(1-税率)}×非支配株主持分割合 非支配株主に帰属する当期純損益:{子会社の利益+期首未実現利益の当期実現額×(1-税率) -当期発生の期末未実現利益×(1-税率)}×非支配株主持分割合
(2) 非償却性資産 (a) ダウンストリーム ダウンストリームの場合には,親会社の利益を修正する(親会社に帰属)ため,親会社の税率を用いる。 また,未実現利益の消去に伴い,連結上の利益が減少するため,将来減算一時差異となり,繰延税金資産 を計上する。なお,非償却性資産に係る繰延税金資産は,固定資産(投資その他の資産)に計上する。 非償却性資産に係る未実現損益は,企業集団外部に売却した際に実現する。 以下の資料に基づいて,以下の各問に答えなさい。 1.×1 年度に,P社がS社に簿価 3,000 円の土地を 4,200 円で売却した。 2.×2 年度末において上記土地は外部に売却されていない。 3.P社は子会社株式を 60%取得しており,子会社として支配している。 4.P社の法人税率は毎期 45%である。 問1 ×1 年度末の未実現損益の消去に関する連結修正仕訳を示しなさい。 問2 ×2 年度末の未実現損益の消去に関する連結修正仕訳を示しなさい。 問3 S社が×2 年度に当該土地を企業集団外部に 5,000 円で売却した場合における×2 年度末の未実現損 益の消去に関する連結修正仕訳を示しなさい。 解答 解説 (単位:円) 問1 <×1 年度> (借) 土 地 売 却 益 1,200 (貸) 土 地 1,200 (借) 繰 延 税 金 資 産 540 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 540 ※ 1,200 円×45%=540 円 ※ なお,固定資産に係る繰延税金資産は,「投資その他の資産」に計上する。 連結上の利益減少 → 法人税等減少 → 貸方「法人税等調整額」 借方「繰延税金資産」 問2 <×2 年度> (借) 利益剰余金期首残高 1,200 (貸) 土 地 1,200 (借) 繰 延 税 金 資 産 540 (貸) 利益剰余金期首残高 540 ※ 実現していないため,前期の仕訳を繰り返す。 問3 <×2 年度> (借) 利益剰余金期首残高 1,200 (貸) 土 地 売 却 益 1,200 (借) 法 人 税 等 調 整 額 540 (貸) 利益剰余金期首残高 540 ※ 実現した場合には,棚卸資産と同様に実現の処理を行う。 例題 24 連結税効果③(非償却性資産・ダウンストリーム) 重要度 A 難易度 A
(b) アップストリーム (B) アップストリームの場合には,子会社の利益を修正する(子会社に帰属)ため,子会社の税率を用いる。 また,未実現利益の消去に伴い,連結上の利益が減少するため,将来減算一時差異となり,繰延税金資産 を計上する。さらに,アップストリームの場合には,未実現利益の消去に伴う連結上の利益の変動を非支 配株主に按分し,税効果会計に伴う連結上の利益の変動を非支配株主へ按分する。 以下の資料に基づいて,以下の各問に答えなさい。 1.×1 年度末に,S社がP社に簿価 3,000 円の土地を 4,200 円で売却した。 2.×2 年度末において上記土地は外部に売却されていない。 3.P社は子会社株式を 60%取得しており,子会社として支配している。 4.S社の法人税率は毎期 45%である。 問1 ×1 年度末の未実現損益の消去に関する連結修正仕訳を示しなさい。 問2 ×2 年度末の未実現損益の消去に関する連結修正仕訳を示しなさい。 問3 P社が×2 年度に当該土地を企業集団外部に 5,000 円で売却した場合における×2 年度末の未実現損 益の消去に関する連結修正仕訳を示しなさい。 解答 解説 (単位:円) 問1 <×1 年度> (借) 土 地 売 却 益 1,200 (貸) 土 地 1,200 (借) 繰 延 税 金 資 産 540 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 540 (借) 非 支 配 株 主 持 分 264 (貸) 非支配株主に帰属する当期純損益 264 ※ 1,200 円×(1-45%)×40%=264 円 問2 <×2 年度> (借) 利益剰余金期首残高 1,200 (貸) 土 地 1,200 (借) 繰 延 税 金 資 産 540 (貸) 利益剰余金期首残高 540 (借) 非 支 配 株 主 持 分 264 (貸) 利益剰余金期首残高 264 ※ 実現していないため,前期の仕訳を繰り返す。 問3 <×2 年度> (借) 利益剰余金期首残高 1,200 (貸) 土 地 売 却 益 1,200 (借) 法 人 税 等 調 整 額 540 (貸) 利益剰余金期首残高 540 (借) 非支配株主に帰属する当期純損益 264 (貸) 利益剰余金期首残高 264 ※ 実現した場合には,棚卸資産と同様に実現の処理を行う。 例題 25 連結税効果④(非償却性資産・アップストリーム) 重要度 B 難易度 B
(3) 償却性資産 (a) ダウンストリーム ダウンストリームの場合には,親会社の利益を修正する(親会社に帰属)ため,親会社の税率を用いる。 未実現利益の消去に伴い,連結上の利益が減少するため,将来減算一時差異となり,繰延税金資産を計上 する。なお,償却性資産に係る繰延税金資産は,固定資産(投資その他の資産)に計上する。 また,償却性資産に係る未実現損益は,減価償却及び企業集団外部への売却により実現する。 以下の資料に基づいて,以下の各問に答えなさい。 1.×1 年度末に,P社がS社に建物を売却し,建物売却益を 2,000 円計上した。 2.S社は減価償却を定額法(残存耐用年数5年,残存価額ゼロ)で行っている。 3.P社の法人税等の税率は 45%である。 4.P社はS社の株式を 60%取得しており,子会社として支配している。 問1 ×1 年度末の未実現損益の消去に関する連結修正仕訳を示しなさい。 問2 ×2 年度末の未実現損益の消去に関する連結修正仕訳を示しなさい。 解答 解説 (単位:円) 問1 <×1 年度> (借) 建 物 売 却 益 2,000 (貸) 建 物 2,000 (借) 繰 延 税 金 資 産 900 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 900 ※ 2,000 円×45%=900 円 連結上の利益減少 → 法人税等減少 → 貸方「法人税等調整額」 借方「繰延税金資産」 例題 26 連結税効果⑤(償却性資産・ダウンストリーム) 重要度 A 難易度 B
問2 <×2 年度> ① 前期売却益に係る仕訳の繰り越し (借) 利益剰余金期首残高 2,000 (貸) 建 物 2,000 (借) 繰 延 税 金 資 産 900 (貸) 利益剰余金期首残高 900 連結上の利益減少 → 法人税等減少 → 貸方「法人税等調整額」 借方「繰延税金資産」 ② 当期の減価償却費の修正 (借) 減 価 償 却 累 計 額 400 (貸) 減 価 償 却 費 400 (借) 法 人 税 等 調 整 額 180 (貸) 繰 延 税 金 資 産 180 ※ 2,000 円÷5年=400 円 ※ 400 円×45%=180 円 連結上の利益増加 → 法人税等増加 → 借方「法人税等調整額」 貸方「繰延税金資産」の取消 (b) アップストリーム (B) アップストリームの場合には,子会社の利益を修正する(子会社に帰属)ため,子会社の税率を用いる。 また,未実現利益の消去に伴い,連結上の利益が減少するため,将来減算一時差異となり,繰延税金資産 を計上する。さらに,アップストリームの場合には,未実現利益の消去に伴う連結上の利益の変動を非支 配株主に按分し,税効果会計に伴う連結上の利益の変動を非支配株主へ按分する。 以下の資料に基づいて,以下の各問に答えなさい。 1.×1 年度末に,S社がP社に建物を売却し,建物売却益を 2,000 円計上した。 2.P社は減価償却を定額法(残存耐用年数5年,残存価額ゼロ)で行っている。 3.S社の法人税等の税率は 45%である。 4.P社はS社の株式を 60%取得しており,子会社として支配している。 問1 ×1 年度末の未実現損益の消去に関する連結修正仕訳を示しなさい。 問2 ×2 年度末の未実現損益の消去に関する連結修正仕訳を示しなさい。 例題 27 連結税効果⑥(償却性資産・アップストリーム) 重要度 B 難易度 C
解答 解説 (単位:円) 問1 <×1 年度> (借) 建 物 売 却 益 2,000 (貸) 建 物 2,000 (借) 繰 延 税 金 資 産 900 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 900 (借) 非 支 配 株 主 持 分 440 (貸) 非支配株主に帰属する当期純損益 440 ※ 非支配株主持分:2,000 円×(1-45%)×40%=440 円 問2 <×2 年度> ① 前期売却益に係る仕訳の繰り越し (借) 利益剰余金期首残高 2,000 (貸) 建 物 2,000 (借) 繰 延 税 金 資 産 900 (貸) 利益剰余金期首残高 900 (借) 非 支 配 株 主 持 分 440 (貸) 利益剰余金期首残高 440 ② 当期の減価償却費の修正 (借) 減 価 償 却 累 計 額 400 (貸) 減 価 償 却 費 400 (借) 法 人 税 等 調 整 額 180 (貸) 繰 延 税 金 資 産 180 (借) 非支配株主に帰属する当期純損益 88 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 88 ※ 400 円×(1-45%)×40%=88 円
6.貸倒引当金に伴う具体的処理
債権・債務の相殺を行う場合,それに伴い連結上,貸倒引当金(貸倒引当金繰入額)を減少させる。貸倒 引当金を修正することにより,通常は,連結上の利益が増加するため,将来加算一時差異となり,繰延税 金負債が計上される。 連結上の利益増加 → 法人税等増加 → 借方「法人税等調整額」 貸方「繰延税金負債」の計上 (1) 親会社の債権を相殺消去した場合(ダウンストリーム) ダウンストリームの場合には,親会社の利益を修正する(親会社に帰属)ため,親会社の税率を用いる。 また,貸倒引当金を修正することにより,通常は,連結上の利益が増加するため,将来加算一時差異とな り,繰延税金負債が計上される。なお,売上債権に伴う貸倒引当金に係る繰延税金負債は,流動負債に計 上する。 以下の資料に基づいて,以下の各問に答えなさい。 1.P社はS社に対する売掛金を×1 年度末に 20,000 円,×2 年度末に 25,000 円保有している。 2.P社は,売上債権の期末残高に対して,2%の貸倒引当金を差額補充法により設定している。 3.P社の法人税等の税率は 45%である。 4.P社はS社の株式を 80%取得しており,子会社として支配している。 問1 ×1 年度末の貸倒引当金の修正に関する連結修正仕訳を示しなさい。 問2 ×2 年度末の貸倒引当金の修正に関する連結修正仕訳を示しなさい。 解答 解説 (単位:円) 問1 <×1 年度> (借) 買 掛 金 20,000 (貸) 売 掛 金 20,000 (借) 貸 倒 引 当 金 400 (貸) 貸 倒 引 当 金 繰 入 額 400 (借) 法 人 税 等 調 整 額 180 (貸) 繰 延 税 金 負 債 180 ※ 20,000 円×2%=400 円 ※ 400 円×45%=180 円 ※ なお,売掛金に係る繰延税金負債は,「流動負債」に計上する。 連結上の利益増加 → 法人税等増加 → 借方「法人税等調整額」 貸方「繰延税金負債」 例題 28 連結税効果⑦(差額補充法・ダウンストリーム) 重要度 A 難易度 C問2 <×2 年度> ① 前期の繰入額の修正に係る仕訳 (借) 貸 倒 引 当 金 400 (貸) 利益剰余金期首残高 400 (借) 利益剰余金期首残高 180 (貸) 繰 延 税 金 負 債 180 ② 当期の債権・債務の相殺と貸倒引当金繰入額の修正 (借) 買 掛 金 25,000 (貸) 売 掛 金 25,000 (借) 貸 倒 引 当 金 100 (貸) 貸 倒 引 当 金 繰 入 額 100 (借) 法 人 税 等 調 整 額 45 (貸) 繰 延 税 金 負 債 45 ※ (25,000 円-20,000 円)×2%=100 円 ※ 100 円×45%=45 円 ③ 上記①と②の合算 (借) 買 掛 金 25,000 (貸) 売 掛 金 25,000 (借) 貸 倒 引 当 金 500 (貸) 利益剰余金期首残高 400 (〃) 貸 倒 引 当 金 繰 入 額 100 (借) 利益剰余金期首残高 180 (貸) 繰 延 税 金 負 債 225 (〃) 法 人 税 等 調 整 額 45 (2) 子会社の債権を相殺消去した場合(アップストリーム) (B) アップストリームの場合には,子会社の利益を修正する(子会社の帰属)ため,子会社の税率を用いる。 また,貸倒引当金を修正することにより,通常は,連結上の利益が増加するため,将来加算一時差異とな り,繰延税金負債が計上される。なお,売上債権に伴う貸倒引当金に係る繰延税金負債は,流動負債に計 上する。さらに,アップストリームの場合には,貸倒引当金の修正に伴う連結上の利益の変動を非支配株 主に按分し,税効果会計に伴う連結上の利益の変動を非支配株主へ按分する。 以下の資料に基づいて,以下の各問に答えなさい。 1.S社はP社に対する売掛金を×1 年度末に 20,000 円,×2 年度末に 25,000 円保有している。 2.S社は,売上債権の期末残高に対して,2%の貸倒引当金を差額補充法により設定している。 3.S社の法人税等の税率は 45%である。 4.P社はS社の株式を 80%取得しており,子会社として支配している。 問1 ×1 年度末の貸倒引当金の修正に関する連結修正仕訳を示しなさい。 問2 ×2 年度末の貸倒引当金の修正に関する連結修正仕訳を示しなさい。 例題 29 連結税効果⑧(差額補充法・アップストリーム) 重要度 B 難易度 C
解答 解説 (単位:円) 問1 <×1 年度> (借) 買 掛 金 20,000 (貸) 売 掛 金 20,000 (借) 貸 倒 引 当 金 400 (貸) 貸 倒 引 当 金 繰 入 額 400 (借) 法 人 税 等 調 整 額 180 (貸) 繰 延 税 金 負 債 180 (借) 非支配株主に帰属する当期純損益 44 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 44 ※ 非支配株主に帰属する当期純損益:400 円×(1-45%)×20%=44 円 問2 <×2 年度> ① 前期の繰入額の修正に係る仕訳 (借) 貸 倒 引 当 金 400 (貸) 利益剰余金期首残高 400 (借) 利益剰余金期首残高 180 (貸) 繰 延 税 金 負 債 180 (借) 利益剰余金期首残高 44 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 44 ② 当期の債権・債務の相殺と貸倒引当金繰入額の修正 (借) 買 掛 金 25,000 (貸) 売 掛 金 25,000 (借) 貸 倒 引 当 金 100 (貸) 貸 倒 引 当 金 繰 入 額 100 (借) 法 人 税 等 調 整 額 45 (貸) 繰 延 税 金 負 債 45 (借) 非支配株主に帰属する当期純損益 11 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 11 ※ 非支配株主に帰属する当期純損益:100 円×(1-45%)×20%=11 円 ③ 上記①と②の合算 (借) 買 掛 金 25,000 (貸) 売 掛 金 25,000 (借) 貸 倒 引 当 金 500 (貸) 利益剰余金期首残高 400 (〃) 貸 倒 引 当 金 繰 入 額 100 (借) 利益剰余金期首残高 180 (貸) 繰 延 税 金 負 債 225 (〃) 法 人 税 等 調 整 額 45 (借) 利益剰余金期首残高 44 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 55 (〃) 非支配株主に帰属する当期純損益 11 ※ 非支配株主持分:500 円× (1-45%)×20%=55 円
(3) 個別上の処理による分類 (C) 個別上の貸倒引当金に対して,どのような会計処理を行っているかによって,連結上の会計処理が以下の ように異なる。 ① 個別上において,すべて損金算入されている場合 個別上において貸倒引当金繰入超過額が発生しておらず,すべて損金算入されている場合個別税効果は 適用されていない。この場合に,連結上において貸倒引当金を修正した場合には,繰延税金負債が認識さ れることになる。 ② 個別上において貸倒引当金の損金不算入が生じている場合(D) 個別上において,貸倒引当金繰入超過額が発生している場合には,個別税効果により繰延税金資産が計 上されている。この場合に連結上においてその超過部分の貸倒引当金を修正した場合には,個別上で計上 した繰延税金資産を取り崩すことになる。 具体例
P社とS社は支配従属関係にあり,連結財務諸表を作成するための資料は次のとおりである。 よって,下記の設問に答えなさい。 1.S社株式の取得状況 (1) 平成×4 年3月 31 日にP社はS社株式の 80%を 80,000 千円で取得している。 (2) 支配獲得時のS社の資本は,資本金 40,000 千円,繰越利益剰余金 60,000 千円である。 2.平成×4 年4月1日~平成×5 年3月 31 日の会計期間における連結会社間取引 (1) S社はP社へ商品 50,000 千円(原価 40,000 千円)を販売している。なお,P社はS社より購入した商 品を期末現在 4,000 千円保有している。 (2) 平成×5 年3月 31 日における連結会社相互間の売上債権・仕入債務の相殺消去額は 10,000 千円であ り,貸倒引当金の設定率は4%であり,差額補充法を採用している。なお,個別上において,繰入超過 は発生していない。 3.平成×5 年4月1日~平成×6 年3月 31 日の会計期間における連結会社間取引 (1) S社はP社へ商品 60,000 千円(原価 48,000 千円)を販売している。なお,P社はS社より購入した商 品を期末現在 5,000 千円保有している。 (2) 平成×5 年3月 31 日における連結会社相互間の売上債権・仕入債務の相殺消去額は 15,000 千円であ り,貸倒引当金の設定率は4%であり,差額補充法を採用している。なお,個別上において,繰入超過 は発生していない。 4.S社の当期純利益は,平成×4 年度 5,000 千円,平成×5 年度 8,000 千円である。 5.P社の実効税率は 50%,S社の実効税率は 40%である。 問1 平成×5 年3月 31 日の連結修正仕訳を示しなさい。 問2 平成×6 年3月 31 日の連結修正仕訳を示しなさい。 解答 解説 (単位:千円) <タイム・テーブル> 問1 ① 平成×4 年3月 31 日の投資と資本の相殺消去 (借) 資 本 金 40,000 (貸) 子 会 社 株 式 80,000 (〃) 利益剰余金期首残高 60,000 (〃) 非 支 配 株 主 持 分 20,000 例題 30 連結税効果⑨ 重要度 B 難易度 C
② 子会社利益の按分 (借) 非支配株主に帰属する当期純損益 1,000 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 1,000 ※ 5,000 千円×20%=1,000 千円 ③ 内部取引の相殺及び期末未実現利益の消去 (借) 売 上 50,000 (貸) 売 上 原 価 50,000 (借) 売 上 原 価 800 (貸) 商 品 800 (借) 繰 延 税 金 資 産 320 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 320 (借) 非 支 配 株 主 持 分 96 (貸) 非支配株主に帰属する当期純損益 96 ※ 商品:4,000 千円×20%(利益率)=800 千円 ※ 繰延税金資産:800 千円×40%(S社の税率)=320 千円 ※ 未実現損益を 800 千円取り消し,税効果会計により法人税等調整額が 320 千円発生したために,非支 配株主持分は,(800 千円-320 千円)×20%=96 千円だけ影響を受けることになる。 ④ 貸倒引当金の修正 (借) 買 掛 金 10,000 (貸) 売 掛 金 10,000 (借) 貸 倒 引 当 金 400 (貸) 貸 倒 引 当 金 繰 入 額 400 (借) 法 人 税 等 調 整 額 160 (貸) 繰 延 税 金 負 債 160 (借) 非支配株主に帰属する当期純損益 48 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 48 ※ 貸倒引当金:10,000 千円×4%=400 千円 ※ 繰延税金負債:400 千円×40%(S社の税率)=160 千円 ※ 貸倒引当金繰入額を 400 千円取り消し,法人税等調整額が 160 千円発生したために,非支配株主持分 は(400 千円-160 千円)×20%=48 千円だけ影響を受けることになる。 ⑤ 平成×5 年3月 31 日の連結財務諸表の金額 非支配株主持分:{105,000 千円-480 千円(期末未実現利益)+240 千円(期末貸倒引当金)}×20% =20,952 千円 又は,105,000 千円×20%-96 千円(期末未実現利益)+48 千円(期末貸倒引当金) =20,952 千円 非支配株主に帰属する当期純利益:{5,000 千円-480 千円(期末未実現利益)+240 千円(期末貸倒引当金)} ×20%=952 千円 又は,5,000 千円×20%-96 千円(期末未実現利益)+48 千円(期末貸倒引当金)=952 千円 問2 ① 平成×4 年3月 31 日の投資と資本の相殺消去 (借) 資 本 金 40,000 (貸) 子 会 社 株 式 80,000 (〃) 利益剰余金期首残高 60,000 (〃) 非 支 配 株 主 持 分 20,000 ② 前期の子会社利益の按分 (借) 利益剰余金期首残高 1,000 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 1,000
③ 当期の子会社利益の按分 (借) 非支配株主に帰属する当期純損益 1,600 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 1,600 ※ 8,000 千円×20%=1,600 千円 ④ 期首未実現利益の消去 (借) 利益剰余金期首残高 800 (貸) 売 上 原 価 800 (借) 法 人 税 等 調 整 額 320 (貸) 利益剰余金期首残高 320 (借) 非支配株主に帰属する当期純損益 96 (貸) 利益剰余金期首残高 96 ⑤ 内部取引の相殺及び期末未実現利益の消去 (借) 買 掛 金 15,000 (貸) 売 掛 金 15,000 (借) 売 上 60,000 (貸) 売 上 原 価 60,000 (借) 売 上 原 価 1,000 (貸) 商 品 1,000 (借) 繰 延 税 金 資 産 400 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 400 (借) 非 支 配 株 主 持 分 120 (貸) 非支配株主に帰属する当期純損益 120 ※ 商品:5,000 千円×20%(利益率)=1,000 千円 ※ 繰延税金資産:1,000 千円×40%(S社の税率)=400 千円 ※ 未実現損益を 1,000 千円取り消し,税効果会計により法人税等調整額が 400 千円発生したために,非 支配株主持分は,(1,000 千円-400 千円)×20%=120 千円だけ影響を受けることになる。 ⑥ 貸倒引当金の修正 (借) 貸 倒 引 当 金 600 (貸) 利益剰余金期首残高 400 (〃) 貸 倒 引 当 金 繰 入 額 200 (借) 利益剰余金期首残高 160 (貸) 繰 延 税 金 負 債 240 (〃) 法 人 税 等 調 整 額 80 (借) 利益剰余金期首残高 48 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 72 (〃) 非支配株主に帰属する当期純損益 24 ※ 貸倒引当金:15,000 千円×4%=600 千円 ※ 貸倒引当金繰入額:(15,000 千円-10,000 千円)×4%=200 千円 ※ 繰延税金負債:600 千円(貸倒引当金)×40%(S社の税率)=240 千円 ※ 法人税等調整額:200 千円(貸倒引当金繰入額)×40%(S社の税率)=80 千円 ※ 非支配株主持分:600 千円(貸倒引当金)×(1-40%)×20%=72 千円 ※ 非支配株主に帰属する当期純損益:200 千円(貸倒引当金繰入額) ×(1-40%)×20%=24 千円
⑦ 平成×6 年3月 31 日の連結財務諸表の金額 非支配株主持分:{113,000 千円-600 千円(期末未実現利益)+360 千円(期末貸倒引当金)}×20% =22,552 千円 又は,113,000 千円×20%-120 千円(期末未実現利益)+72 千円(期末貸倒引当金) =22,552 千円 非支配株主に帰属する当期純利益:{8,000 千円+480 千円(期首未実現利益)-600 千円(期末未実現利益) +120 千円(当期発生貸倒引当金)}×20%=1,600 千円 又は,8,000 千円×20%+96 千円(期首未実現利益)-120 千円(期末未実現利益) +24 千円(当期発生貸倒引当金)=1,600 千円
7.子会社の資産・負債の時価評価に伴う評価差額 (A)
(1) 評価差額に係る税効果会計の基本的考え方 資本連結手続における子会社の資産・負債の時価評価に伴う評価差額は,税効果相当額(繰延税金資産ま たは繰延税金負債)を控除した金額を資本として計上する。評価差額に伴う繰延税金資産等は,子会社の資 産・負債を時価評価したことにより生じるため,子会社に帰属する項目であり,子会社の税率を用いる。 時価評価した資産・負債に係る評価差額が実現した場合には,連結上の利益が修正されるため,それに伴 い税効果を解消させる。 (2) 評価差額に係る税効果会計の分類 ① 評価差益が生じている場合 評価差益が生じている場合には,評価差額の実現時に個別損益計算書に計上されている法人税等に加算 するため,将来加算一時差異(繰延税金負債)を計上することになる。 (借) 諸 資 産 ××× (貸) 繰 延 税 金 負 債 ××× (〃) 評 価 差 額 ××× ※ 評価差額:評価差額×(1-税率) ※ 繰延税金負債:評価差額×税率 ② 評価差損が生じている場合 評価差損が生じている場合には,評価差額実現時に個別損益計算書に計上されている法人税等から減算 するため,将来減算一時差異(繰延税金資産)を計上することになる。 (借) 繰 延 税 金 資 産 ××× (貸) 諸 資 産 ××× (〃) 評 価 差 額 ××× ※ 評価差額:評価差額×(1-税率) ※ 繰延税金資産:評価差額×税率③ 時価評価の対象による分類 時価評価の対象 繰延税金資産・繰延税金負債の区分 非償却性資産(土地) 固定項目 償却性資産(有形固定資産・無形固定資産等) 固定項目 棚卸資産(商品) 流動項目 <評価差額の税効果会計に伴うポイント!!> 税効果会計を適用した場合,評価差額は税効果相当額を控除した金額しか計上されないため,のれ ん及び非支配株主持分等の金額が変動する点に留意すること。 評価差額に係る税効果会計 ① P社は子会社株式を 100%取得し,子会社として支配している。 ② 支配獲得時のS社の土地の時価は 5,000 千円(簿価 3,000 千円)であった。 ③ 法人税等の税率は毎期 45%である。 ④ 子会社株式の取得状況及びS社の資本勘定 取得年月日 取得割合 取得原価 資本金 利益剰余金 ×1 年3月 31 日 100% 53,000 千円 30,000 千円 20,000 千円 ×2 年3月 31 日 ― ― 30,000 千円 23,600 千円 ⑤ ×2 年3月 31 日においてS社は土地をすべて連結外部に 6,000 千円で売却した。 (1) 評価差額を計上した資産を売却した場合 <売却時の個別上の仕訳> (借) 現 金 預 金 6,000 (貸) 土 地 3,000 (〃) 土 地 売 却 益 3,000 <売却時の連結上のあるべき仕訳> (借) 現 金 預 金 6,000 (貸) 土 地 5,000 (〃) 土 地 売 却 益 1,000 <連結修正仕訳> (借) 土 地 売 却 益 2,000 (貸) 土 地 2,000 <税効果会計を適用しない場合の損益計算書> ×1 年4月1日~×2 年3月 31 日 個別損益計算書の合算 連結損益計算書 その他の利益 5,000 5,000 土地売却益 3,000 1,000 税引前当期純利益 8,000 6,000 法人税,住民税及び事業税 △3,600 △3,600 税引後当期純利益 4,400 2,400 ※法人税,住民税及び事業税:8,000 千円(個別上の税引前当期純利益)×45%=3,600 千円 具体例
連結損益計算書において,税金等調整前当期純利益と税額が適切に対応しないため,売却時には下記の評 価差額に係る税効果の解消の仕訳を行う必要がある。 (借) 繰 延 税 金 負 債 900 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 900 ※ 繰延税金負債:2,000 千円×45%=900 千円 <税効果会計を適用した場合の損益計算書> ×1 年4月1日~×2 年3月 31 日 個別損益計算書の合算 連結損益計算書 その他の利益 5,000 5,000 土地売却益 3,000 1,000 税引前当期純利益 8,000 6,000 法人税,住民税及び事業税 △3,600 △3,600 法人税等調整額 3,900 税引後当期純利益 4,400 3,300 ※ 税効果会計により連結損益計算書において,税金等調整前当期純利益と税額が適切に対応する。 (2) 税効果を考慮した評価差額の計上 売却時において,上記の税効果の仕訳を行うためには,評価差額計上時において「繰延税金負債」を計上 する必要がある。 (借) ○ ○ ○ ××× (貸) 繰 延 税 金 負 債 ××× ここで,通常の税効果会計の仕訳では,貸方に「繰延税金負債」が計上される場合は,借方は「法人税等 調整額」が計上されるが,評価差額は損益計算書を経由することなく直接純資産の部に計上されるため,損 益計算書上では会計上と税法上の差異は生じていない。そのため,税効果会計を適用する場合には,純資産 の部に直接計上されている評価差額を減額することになる。 よって,評価差額計上時の仕訳は下記のように行う。 (借) 土 地 2,000 (貸) 評 価 差 額 2,000 (借) 評 価 差 額 900 (貸) 繰 延 税 金 負 債 900 (借) 土 地 2,000 (貸) 評 価 差 額 1,100 (〃) 繰 延 税 金 負 債 900 <評価差額計上後のS社個別貸借対照表> 貸 借 対 照 表 ×1 年3月 31 日 繰 延 税 金 負 債 900 資 本 金 30,000 利 益 剰 余 金 20,000 評 価 差 額 1,100 合算
以上の結果,当設問における×2 年3月 31 日の連結修正仕訳は下記のようになる。 ① ×1 年3月 31 日の投資と資本の相殺消去 (借) 土 地 2,000 (貸) 評 価 差 額 1,100 (〃) 繰 延 税 金 負 債 900 (借) 資 本 金 30,000 (貸) 子 会 社 株 式 53,000 (〃) 利益剰余金期首残高 20,000 (〃) 評 価 差 額 1,100 (〃) の れ ん 1,900 ※ のれん:53,000 千円-51,100 千円=1,900 千円 ② ×2 年3月 31 日の評価差額の実現の仕訳 (借) 土 地 売 却 益 2,000 (貸) 土 地 2,000 (借) 繰 延 税 金 負 債 900 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 900
例題 31 連結税効果⑩(非償却性資産の評価差額) 重要度 A 難易度 B ×3 年3月 31 日の連結財務諸表を作成する場合の連結修正仕訳を示しなさい。 (1) P社はS社を子会社として支配している。 (2) 子会社株式の取得状況及びS社の資本勘定 取得年月日 取得割合 取得原価 資本金 利益剰余金 ×1 年3月 31 日 60% 50,000 千円 50,000 千円 30,000 千円 ×2 年3月 31 日 20% 21,000 千円 50,000 千円 42,000 千円 (注 1) ×1 年3月 31 日のS社の土地の時価は 10,000 千円(簿価 8,000 千円)である。 (注 2) ×2 年3月 31 日のS社の土地の時価は 11,000 千円(簿価 8,000 千円)である。 (3) ×2 年度のS社の当期純利益は 9,000 千円である。 (4) 法人税等の税率は毎期 45%である。 (5) のれんは 10 年間で毎期均等額を償却する。 (6) S社は剰余金の配当は行っていない。 問1 S社が×3 年3月 31 日に土地を保有している場合 問2 S社が×3 年3月 31 日にすべての土地を 12,000 千円で企業集団外部に売却した。 解答 解説 (単位:千円) 問1 <タイム・テーブル>
① ×1 年3月 31 日の投資と資本の相殺消去 (借) 土 地 2,000 (貸) 繰 延 税 金 負 債 900 (〃) 評 価 差 額 1,100 ※ 繰延税金負債:(10,000 千円-8,000 千円)×45%=900 千円 ※ 評価差額:(10,000 千円-8,000 千円)×(1-45%)=1,100 千円 (借) 資 本 金 50,000 (貸) 子 会 社 株 式 50,000 (〃) 利益剰余金期首残高 30,000 (〃) 非 支 配 株 主 持 分 32,440 (〃) 評 価 差 額 1,100 (〃) の れ ん 1,340 ※ 非支配株主持分:81,100 千円×40%=32,440 千円 ※ のれん:50,000 千円-81,100 千円×60%=1,340 千円 ② 前期の子会社利益の按分 (借) 利益剰余金期首残高 4,800 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 4,800 ※ 12,000 千円×40%=4,800 千円 ③ 前期ののれん償却 (借) 利益剰余金期首残高 134 (貸) の れ ん 134 ※ 1,340 千円÷10 年=134 千円 ④ ×2 年3月 31 日の追加取得 (借) 非 支 配 株 主 持 分 18,620 (貸) 子 会 社 株 式 21,000 (〃) 資本剰余金期首残高 2,380 ※ 非支配株主持分:93,100 千円×20%=18,620 千円 ⑤ 当期の子会社利益の按分 (借) 非支配株主に帰属する当期純損益 1,800 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 1,800 ※ 9,000 千円×20%=1,800 千円 ⑥ 当期ののれん償却 (借) の れ ん 償 却 額 134 (貸) の れ ん 134 ⑦ ×2 年度の連結財務諸表の金額 非支配株主持分:102,100 千円×20%=20,420 千円 非支配株主に帰属する当期純利益:1,800 千円 のれん:1,340 千円×8年/10 年=1,072 千円
問2 ① ×1 年3月 31 日の投資と資本の相殺消去 (借) 土 地 2,000 (貸) 繰 延 税 金 負 債 900 (〃) 評 価 差 額 1,100 (借) 資 本 金 50,000 (貸) 子 会 社 株 式 50,000 (〃) 利益剰余金期首残高 30,000 (〃) 非 支 配 株 主 持 分 32,440 (〃) 評 価 差 額 1,100 (〃) の れ ん 1,340 ② 前期の子会社利益の按分 (借) 利益剰余金期首残高 4,800 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 4,800 ③ 前期ののれん償却 (借) 利益剰余金期首残高 134 (貸) の れ ん 134 ④ ×2 年3月 31 日の追加取得 (借) 非 支 配 株 主 持 分 18,620 (貸) 子 会 社 株 式 21,000 (〃) 資本剰余金期首残高 2,380 ⑤ ×3 年3月 31 日の評価差額の実現の仕訳 (借) 土 地 売 却 益 2,000 (貸) 土 地 2,000 (借) 繰 延 税 金 負 債 900 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 900 ※ 繰延税金負債:2,000 千円×45%=900 千円
⑥ 当期の子会社利益の按分 (借) 非支配株主に帰属する当期純損益 1,580 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 1,580 ※ 7,900 千円(修正後利益)×20%=1,580 千円 ※ 評価差額の実現は,子会社利益を修正するため,修正後の当期純利益に基づいて按分を行う。 ⑦ 当期ののれん償却 (借) の れ ん 償 却 額 134 (貸) の れ ん 134 ⑧ ×2 年度の連結財務諸表の金額 非支配株主持分:101,000 千円×20%=20,200 千円 非支配株主に帰属する当期純利益:1,580 千円 のれん:1,340 千円×8年/10 年=1,072 千円 ×3 年3月 31 日の連結財務諸表を作成する場合の連結修正仕訳を示しなさい。 (1) P社はS社を子会社として支配している。 (2) 子会社株式の取得状況及びS社の資本勘定の推移 取得年月日 取得割合 取得原価 資本金 利益剰余金 ×1 年3月 31 日 80% 125,000 千円 100,000 千円 50,000 千円 ×2 年3月 31 日 ― ― 100,000 千円 65,000 千円 ×3 年3月 31 日 ― ― 100,000 千円 74,000 千円 (注)×1 年3月 31 日のS社の建物の時価は 20,500 千円(簿価 15,500 千円)である。 (3) S社は建物の減価償却を定額法(耐用年数 40 年,残存価額 10%)で行っている。 (4) ×1 年4月1日におけるS社建物の残存耐用年数は 30 年である。 (5) のれんは 10 年間で毎期均等額を償却する。 (6) 法人税等の実効税率は 40%である。 (7) S社は剰余金の配当は行っていない。 問1 S社が×3 年3月 31 日に建物を保有している場合 問2 S社が×3 年3月 31 日にすべての建物を 20,000 千円で企業集団外部に売却した。 例題 32 連結税効果⑪(償却性資産の評価差額) 重要度 A 難易度 C
解答 解説 (単位:千円) 問1 ① ×1 年3月 31 日の投資と資本の相殺消去 (借) 建 物 5,000 (貸) 繰 延 税 金 負 債 2,000 (〃) 評 価 差 額 3,000 ※ 繰延税金負債:5,000 千円×40%=2,000 千円 ※ 評価差額:5,000 千円×(1-40%)=3,000 千円 (借) 資 本 金 100,000 (貸) 子 会 社 株 式 125,000 (〃) 利益剰余金期首残高 50,000 (〃) 非 支 配 株 主 持 分 30,600 (〃) 評 価 差 額 3,000 (〃) の れ ん 2,600 ※ 非支配株主持分:153,000 千円×20%=30,600 千円 ※ のれん:125,000 千円-153,000 千円×80%=2,600 千円 ② 前期ののれん償却 (借) 利益剰余金期首残高 260 (貸) の れ ん 260 ③ 前期の減価償却費の修正 (借) 利益剰余金期首残高 150 (貸) 建物減価償却累計額 150 (借) 繰 延 税 金 負 債 60 (貸) 利益剰余金期首残高 60 ※ 建物減価償却累計額:5,000 千円×90%÷30 年=150 千円 ※ 繰延税金負債:150 千円×40%=60 千円
④ 前期の子会社利益の按分 (借) 利益剰余金期首残高 2,982 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 2,982 ※ 14,910 千円(修正後利益)×20%=2,982 千円 ⑤ 当期ののれん償却 (借) の れ ん 償 却 額 260 (貸) の れ ん 260 ⑥ 当期の減価償却費の修正 (借) 減 価 償 却 費 150 (貸) 建物減価償却累計額 150 (借) 繰 延 税 金 負 債 60 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 60 ⑦ 当期の子会社利益の按分 (借) 非支配株主に帰属する当期純損益 1,782 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 1,782 ※ 8,910 千円(修正後利益)×20%=1,782 千円 ⑧ ×2 年度の連結財務諸表の金額 非支配株主持分:176,820 千円×20%=35,364 千円 非支配株主に帰属する当期純利益:1,782 千円 繰延税金負債:2,820 千円(評価差額)×40%/60%=1,880 千円 問2 ① ×1 年3月 31 日の投資と資本の相殺消去 (借) 建 物 5,000 (貸) 評 価 差 額 3,000 (〃) 繰 延 税 金 負 債 2,000 (借) 資 本 金 100,000 (貸) 子 会 社 株 式 125,000 (〃) 利益剰余金期首残高 50,000 (〃) 非 支 配 株 主 持 分 30,600 (〃) 評 価 差 額 3,000 (〃) の れ ん 2,600
② 前期ののれん償却 (借) 利益剰余金期首残高 260 (貸) の れ ん 260 ③ 前期の減価償却費の修正 (借) 利益剰余金期首残高 150 (貸) 建物減価償却累計額 150 (借) 繰 延 税 金 負 債 60 (貸) 利益剰余金期首残高 60 ④ 前期の子会社利益の按分 (借) 利益剰余金期首残高 2,982 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 2,982 ⑤ 当期ののれん償却 (借) の れ ん 償 却 額 260 (貸) の れ ん 260 ⑥ 当期の減価償却費の修正 (借) 減 価 償 却 費 150 (貸) 建物減価償却累計額 150 (借) 繰 延 税 金 負 債 60 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 60 ⑦ 建物売却益の修正 (借) 建物減価償却累計額 300 (貸) 建 物 5,000 (〃) 建 物 売 却 益 4,700 (借) 繰 延 税 金 負 債 1,880 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 1,880 ※ 建物売却益:5,000 千円-150 千円-150 千円=4,700 千円 ※ 繰延税金負債:4,700 千円×40%=1,880 千円 ⑧ 当期の子会社利益の按分 (借) 非支配株主に帰属する当期純損益 1,218 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 1,218 ※ 6,090 千円(修正後利益)×20%=1,218 千円 ⑨ ×2 年度の連結財務諸表の金額 非支配株主持分:174,000 千円×20%=34,800 千円 非支配株主に帰属する当期純利益:1,218 千円
以下の資料に基づいて,平成×6 年3月 31 日の連結修正仕訳を示しなさい。なお,税効果会計は評価差額 のみに適用し,法定実効税率は 40%とする。 1.子会社株式の取得状況及びS社の資本勘定の推移 取得年月日 取得原価 持分割合 資本金 利益剰余金 平成×4 年3月 31 日 85,500 千円 60% 80,000 千円 24,000 千円 平成×5 年3月 31 日 - - 80,000 千円 39,000 千円 平成×6 年3月 31 日 16,000 千円 10% 80,000 千円 58,000 千円 (注 1) 土地の評価額は 120,000 千円(平成×4 年3月 31 日の簿価は 100,000 千円)である。 (注 2) 建物の評価額は 220,000 千円(平成×4 年3月 31 日の簿価は 190,000 千円)である。なお,建物 の評価差額は,耐用年数 10 年,残存価額ゼロ,定額法により実施する。 (注 3) のれんは 10 年間で均等償却を行う。 2.子会社は剰余金の配当は行っていない。 3.子会社は×5 年3月に上記土地の半分を企業集団外部に対して,75,000 千円で売却している。 解答 解説 (単位:千円) <タイム・テーブル> ① 平成×4 年3月 31 日の投資と資本の相殺消去 (借) 土 地 20,000 (貸) 繰 延 税 金 負 債 8,000 (〃) 評 価 差 額 12,000 (借) 建 物 30,000 (貸) 繰 延 税 金 負 債 12,000 (〃) 評 価 差 額 18,000 (借) 資 本 金 80,000 (貸) 子 会 社 株 式 85,500 (〃) 利益剰余金期首残高 24,000 (〃) 非 支 配 株 主 持 分 53,600 (〃) 評 価 差 額 30,000 (〃) の れ ん 5,100 ※ のれん:85,500 千円-134,000 千円×60%=5,100 千円 ※ 非支配株主持分:134,000 千円×40%=53,600 千円 例題 33 連結税効果⑫(評価差額の実現と追加取得) 重要度 A 難易度 C
② 前期の評価差額の実現 (借) 利益剰余金期首残高 10,000 (貸) 土 地 10,000 (借) 繰 延 税 金 負 債 4,000 (貸) 利益剰余金期首残高 4,000 (借) 利益剰余金期首残高 3,000 (貸) 減 価 償 却 累 計 額 3,000 (借) 繰 延 税 金 負 債 1,200 (貸) 利益剰余金期首残高 1,200 ※ 土地:20,000 千円×1/2(実現割合)=10,000 千円 ※ 税効果(土地):10,000 千円×40%=4,000 千円 ※ 建物:30,000 千円÷10 年=3,000 千円 ※ 税効果(建物):3,000 千円×40%=1,200 千円 ③ 前期の子会社の利益の按分及びのれんの償却 (借) 利益剰余金期首残高 2,880 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 2,880 (借) 利益剰余金期首残高 510 (貸) の れ ん 510 ※ 非支配株主持分:{15,000 千円-10,000 千円×(1-40%)-3,000 千円×(1-40%)}×40% =2,880 千円 ※ のれん:5,100 千円÷10 年=510 千円 ④ 当期の評価差額の実現 (借) 減 価 償 却 費 3,000 (貸) 減 価 償 却 累 計 額 3,000 (借) 繰 延 税 金 負 債 1,200 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 1,200 ⑤ 当期の子会社の利益の按分及びのれんの償却 (借) 非支配株主に帰属する当期純損益 6,880 (貸) 非 支 配 株 主 持 分 6,880 (借) の れ ん 償 却 額 510 (貸) の れ ん 510 ※ 非支配株主に帰属する当期純損益:{19,000 千円-3,000 千円×(1-40%)}×40%=6,880 千円 ⑥ 平成×6 年3月 31 日の追加取得 (借) 非 支 配 株 主 持 分 15,840 (貸) 子 会 社 株 式 16,000 (〃) 資 本 剰 余 金 160 ※ 非支配株主持分:158,400 千円×10%=15,840 千円 ※ 資本剰余金:差額 ⑦ 平成×5 年度の連結財務諸表の金額 非支配株主持分:158,400 千円×30%=47,520 千円 非支配株主に帰属する当期純損益:6,880 千円 のれん:5,100 千円×8年/10 年=4,080 千円 繰延税金負債:{6,000 千円(土地評価差額)+14,400 千円(建物評価差額)}×40%/60%=13,600 千円 追加取得による資本剰余金減少額:△160 千円
1.持分法上の税効果会計の考え方 (A)
持分法上の税効果は,金額ベースでは連結上の税効果と同様の影響を与える。ただし,連結と異なり財務 諸表を合算しないため,次のような特徴を有している。 ① 連結財務諸表に与える金額的影響は,連結上の税効果と同様である。 ② 投資会社に帰属する税効果は,連結財務諸表上で税効果の仕訳が反映される。 ③ 持分法適用会社に帰属する税効果は,持分法適用会社の個別財務諸表の修正仕訳として税効果が適用 されるため,連結財務諸表上では税効果の仕訳が反映されず,その影響額のみが,「投資有価証券」勘 定及び「持分法による投資損益」勘定で示される。2.未実現損益 (B)
(1) ダウンストリーム(繰延税金資産等は投資会社に帰属) 投資会社が売却を行った場合の未実現損益の消去に係る一時差異は,投資会社に帰属する。そのため,一 時差異に係る繰延税金資産・繰延税金負債等は,連結財務諸表に計上される。 ① 期末未実現利益の仕訳 (借) 繰 延 税 金 資 産 ××× (貸) 法 人 税 等 調 整 額 ××× ② 期首未実現利益の仕訳 (借) 法 人 税 等 調 整 額 ××× (貸) 利益剰余金期首残高 ××× (2) アップストリーム 持分法適用会社が売却を行った場合の未実現損益の消去に係る一時差異は,持分法適用会社に帰属する。 そのため,一時差異に係る繰延税金資産・繰延税金負債等は,持分法適用会社の個別財務諸表の修正仕訳と して計上され,連結財務諸表には計上されない。よって,連結財務諸表上では,持分法適用会社の税効果に おける損益及び資本への影響額のみが,以下の仕訳で示される。 ① 期末未実現利益の仕訳 (借) 投 資 有 価 証 券 ××× (貸) 持分法による投資損益 ××× ② 期首未実現利益の仕訳 (借) 持分法による投資損益 ××× (貸) 利益剰余金期首残高 ×××第8節
持分法上の税効果会計
次の資料に基づき,持分法上の仕訳を示しなさい。 (1) P社はA社株式の 30%を所有しており,A社を関連会社としている。 (2) A社は,P社より仕入れた商品を在庫として保有している。 期首:5,000 千円 期末:4,000 千円 (3) P社は,仕入原価に 25%の利益を加算し,A社に販売している。 (4) P社の法定実効税率は,毎期 40%である。 解答 解説 (単位:千円) ① 期末商品の未実現損益 (借) 売 上 高 240 (貸) 投 資 有 価 証 券 240 (借) 繰 延 税 金 資 産 96 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 96 ※ 売上高:4,000 千円×30%(投資割合)×20%(利益率・25%/125%)=240 千円 ※ 法人税等調整額:240 千円×40%(税率)=96 千円 投資会社の利益減少 → 投資会社の法人税等減少 → 貸方「法人税等調整額」 借方「繰延税金資産」 ② 期首商品の未実現損益 (借) 利益剰余金期首残高 300 (貸) 売 上 高 300 (借) 法 人 税 等 調 整 額 120 (貸) 利益剰余金期首残高 120 ※ 売上高 5,000 千円×30%(投資割合)×20%(利益率・25%/125%)=300 千円 ※ 法人税等調整額:300 千円×40%(税率)=120 千円 投資会社の利益増加 → 投資会社の法人税等増加 → 借方「法人税等調整額」 例題 34 持分法税効果①(棚卸資産・ダウンストリーム) 重要度 B 難易度 B 具体例
次の資料に基づき,持分法上の仕訳を示しなさい。 (1) P社はA社株式の 30%を所有しており,A社を関連会社としている。 (2) P社は,A社より仕入れた商品を在庫として保有している。 期首:5,000 千円 期末:4,000 千円 (3) A社は,仕入原価に 25%の利益を加算し,P社に販売している。 (4) A社の法定実効税率は,毎期 40%である。 解答 解説 (単位:千円) ① 期末商品の未実現損益 (借) 持分法による投資損益 240 (貸) 商 品 240 (借) 投 資 有 価 証 券 96 (貸) 持分法による投資損益 96 ※ 商品:4,000 千円×30%(投資割合)×20%(利益率・25%/125%)=240 千円 ※ 持分法による投資損益:240 千円×40%(税率)=96 千円 持分法適用会社の利益減少 → 持分法適用会社の法人税等減少 → 貸方「持分法による投資損益」 借方「投資有価証券」 ② 期首商品の未実現損益 (借) 利益剰余金期首残高 300 (貸) 持分法による投資損益 300 (借) 持分法による投資損益 120 (貸) 利益剰余金期首残高 120 ※ 5,000 千円×30%(投資割合)×20%(利益率・25%/125%)=300 千円 ※ 300 千円×40%(税率)=120 千円 持分法適用会社の利益増加 → 持分法適用会社の法人税等増加 → 借方「持分法による投資損益」 貸方「利益剰余金期首残高」
3.持分法適用会社の資産・負債の時価評価 (A)
持分法適用会社の資産・負債の時価評価に係る一時差異は,持分法適用会社に帰属するため,持分法適用 会社の税率を用いる。評価差額に係る税効果は,持分法適用会社の個別財務諸表の修正仕訳として計上され, 連結財務諸表には計上されない。そのため,連結財務諸表においては,のれんの算定において影響を与える ことになる。 例題 35 持分法税効果②(棚卸資産・アップストリーム) 重要度 B 難易度 B次の資料に基づき,持分法上の仕訳を示しなさい。 (1) 関連会社株式の取得状況及びS社の資本勘定の推移 取得年月日 取得原価 持分割合 資本金 利益剰余金 平成×4 年3月 31 日 12,540 千円 20% 30,000 千円 25,000 千円 平成×5 年3月 31 日 - - 30,000 千円 29,000 千円 (注 1) 平成×4 年3月 31 日における関連会社の諸資産の時価は 100,000 千円(簿価は 90,000 千円),諸負 債の時価は 43,000 千円(簿価は 35,000 千円)である。 (注 2) のれんは 10 年間で均等償却を行う。 (注 3) 当期の利益剰余金の配当は 3,000 千円である。 (2) 法定実効税率は 40%である。 解答 解説 (単位:千円) <タイム・テーブル> 1.のれんの金額の算定 (1) 評価差額の金額 諸資産:(100,000 千円-90,000 千円)×(1-40%)=6,000 千円 諸負債:(43,000 千円-35,000 千円)×(1-40%)=4,800 千円 (2) のれん 12,540 千円-56,200 千円×20%=1,300 千円 2.持分法の仕訳 (1) 利益の按分 (借) 投 資 有 価 証 券 1,400 (貸) 持分法による投資損益 1,400 (借) 受 取 配 当 金 600 (貸) 投 資 有 価 証 券 600 ※ 持分法による投資損益:{29,000 千円-(25,000 千円-3,000 千円)}×20%=1,400 千円 ※ 受取配当金:3,000 千円×20%=600 千円 例題 36 持分法税効果③(評価差額) 重要度 A 難易度 B
(2) のれんの償却 (借) 持分法による投資損益 130 (貸) 投 資 有 価 証 券 130 ※ 持分法による投資損益:1,300 千円÷10 年=130 千円 3.財務諸表計上額 投資有価証券:12,540 千円+1,400 千円-600 千円-130 千円=13,210 千円 または :60,200 千円×20%+1,170 千円(のれんの未償却残高)=13,210 千円 持分法による投資損益:1,400 千円-130 千円=1,270 千円 次の資料に基づいて,下記の設問に答えなさい。 (1) 平成×4 年4月1日にP社は,他の会社とともにS社(資本金 100,000 千円)を設立し,当社は 20,000 千 円(出資比率 20%)を出資した。 (2) S社は平成×4 年4月1日~平成×5 年3月 31 日の会計年度に 8,000 千円の利益を計上した。 (3) S社の平成×5 年3月 31 日の棚卸資産にはP社より購入した商品 1,000 千円(売上総利益率 20%)が含ま れている。 (4) 平成×5 年4月1日にP社は,S社株式を 22,700 千円(20%)で追加取得した。取得時のS社の土地の時 価は 54,000 千円(簿価 49,000 千円)であった。 (5) S社は平成×5 年4月1日~平成×6 年3月 31 日の会計年度に 12,000 千円の利益を計上した。 (6) P社の平成×6 年3月 31 日の棚卸資産にはS社より購入した商品 2,000 千円(売上総利益率 20%)が含ま れている。 (7) S社の平成×6 年3月 31 日の棚卸資産にはP社より購入した商品 1,500 千円(売上総利益率 20%)が含ま れている。 (8) のれんは 10 年間に渡って均等額の償却を行う。また,S社は剰余金の配当は行っていない。 (9) 法定実効税率は,投資会社,関連会社とも 40%である。 問1 平成×5 年3月 31 日の持分法の仕訳を示しなさい。 問2 平成×6 年3月 31 日の持分法の仕訳を示しなさい。 解答 解説 (単位:千円) 問1 ① 持分法適用会社の利益の按分 (借) 投 資 有 価 証 券 1,600 (貸) 持分法による投資損益 1,600 ※ 8,000 千円×20%=1,600 千円 ② 未実現利益の消去 (借) 売 上 高 40 (貸) 投 資 有 価 証 券 40 ※ 1,000 千円×20%(利益率)×20%(持分割合)=40 千円 例題 37 持分法税効果④ 重要度 B 難易度 C
③ 未実現利益の消去に伴う税効果 (借) 繰 延 税 金 資 産 16 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 16 ※ 40 千円×40%(税率)=16 千円 ④ 平成×5 年3月 31 日の投資有価証券 20,000 千円(原始取得額)+1,600 千円-40 千円=21,560 千円 問2 ① 前期利益の按分 (借) 投 資 有 価 証 券 1,600 (貸) 利益剰余金期首残高 1,600 ② 期首未実現利益の修正仕訳 (借) 利益剰余金期首残高 40 (貸) 投 資 有 価 証 券 40 (借) 投 資 有 価 証 券 40 (貸) 売 上 高 40 ※ 上記仕訳を合算すると下記の仕訳になる。 (借) 利益剰余金期首残高 40 (貸) 売 上 高 40 ③ 期首未実現利益の修正に伴う税効果 (借) 繰 延 税 金 資 産 16 (貸) 利益剰余金期首残高 16 (借) 法 人 税 等 調 整 額 16 (貸) 繰 延 税 金 資 産 16 ※ 上記仕訳を合算すると下記の仕訳になる。 (借) 法 人 税 等 調 整 額 16 (貸) 利益剰余金期首残高 16 ④ 当期の利益の按分 (借) 投 資 有 価 証 券 4,800 (貸) 持分法による投資損益 4,800 ※ 12,000 千円×40%(持分割合)=4,800 千円 ⑤ のれんの償却 (借) 持分法による投資損益 50 (貸) 投 資 有 価 証 券 50 ※ のれん:22,700 千円-{108,000 千円+5,000 千円×(1-40%)}×20%(追加取得割合)=500 千円 ※ のれん償却額:500 千円÷10 年=50 千円
⑥ 期末未実現損益の消去 <アップストリーム> (借) 持分法による投資損益 160 (貸) 商 品 160 (借) 投 資 有 価 証 券 64 (貸) 持分法による投資損益 64 ※ 商品:2,000 千円×20%(利益率)×40%(持分割合)=160 千円 ※ 投資有価証券:160 千円×40%(税率)=64 千円 <ダウンストリーム> (借) 売 上 高 120 (貸) 投 資 有 価 証 券 120 (借) 繰 延 税 金 資 産 48 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 48 ※ 売上高:1,500 千円×20%(利益率)×40%(持分割合)=120 千円 1 ※ 繰延税金資産:120 千円×40%(税率)=48 千円 ⑦ 平成×6 年3月 31 日の投資有価証券 20,000 千円(原始取得額)+22,700 千円(追加取得額)+1,600 千円+4,800 千円-50 千円 +64 千円-120 千円=48,994 千円