薬事研修会
~化学療法レジメンの基本について~
令和
2年9月25日
都立大塚病院 薬剤科
工藤 尚亨
本日お話しする内容
第1部
抗がん薬の基礎
第2部 レジメン解説
第1部 抗がん薬の基礎
1.抗がん薬・レジメン
抗がん薬の種類
(1)細胞障害性抗がん薬: 細胞毒性を有する抗がん薬。分子標的薬と区別する意味で称する。 (2)分子標的薬: がん細胞の生存、増殖、転移等を司る特定の分子を標的として作用 する薬。標的の発現有無、遺伝子変異等によって効果が異なる。 (3)免疫チェックポイント阻害剤: 免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ(がん細胞が免疫にかけてい るブレーキを外す)薬。 自己免疫による副作用(免疫関連有害反応;irAE)が特徴。 (4)ホルモン剤: 乳がん、前立腺がん等のホルモン依存腫瘍に使用。重大な副作用が 少ないが、ほてりや発汗など更年期障害のような症状などがある。一般薬と抗がん薬の違い
レジメンとは・・・
<定義>
抗がん薬、輸液、支持療法薬(制吐剤など)
の投与に関する
時系列的な治療計画
※プロトコールとの混同に注意
一般的に、
治験実施計画書
を指し、治験目
的、デザイン、方法、統計学的考察および
組織について記述した文書のこと。
レジメンには薬剤の投与量、投与時間、投与
方法、投与順、投与日などが時系列的に記載
されている。
申請医師 薬剤科 (事務局) (部・医長)責任医師 ①申請用紙と 文献を提出 ③疑義照会等 ④申請の承認を依頼 ⑤申請を承認 ②文献の内容、申請レジメン 内容を薬学的にチェック
⑥化学療法小委員会で審議・登録承認
レジメン登録の流れ
第1部 抗がん薬の基礎
1.抗がん薬・レジメン
副作用は抗がん薬の種類により、その傾
向が異なる。
また、副作用の発現や程度、発現時期に
は個人差がある。
細胞障害性抗がん薬の主な副作用と発現時期
第2部 レジメン解説
(
FOLFIRI+BEV)
1.レジメン選択
(切除不能進行・再発大腸癌)
2.FOLFIRI
3.
BEV
FOLF
IRI
(フォルフィリ)
①フォリン酸(FOLinic acid)
②フルオロウラシル(Fluorouracil) ③イリノテカン(IRInotecan) 上記3剤併用療法で、各薬剤の頭文字をとって命名。 フォリン酸にはロイコボリン(LV)とレボホリナート (l-LV)の2種類がある.日本では結腸・直腸がんに対 して承認されているl-LVが用いられる。
FOL
F
IRI
は、
FOLFOXなどとともに、
切除不能
進行・再発大腸癌
の標準治療のひとつ。
次の患者に「
FOL
F
IRI
+BEV」を行うことになり
ました。レジメンの選択は適正でしょうか?
・切除不能進行・再発大腸癌(
上行結腸癌
)
【RAS/BRAF
:野生型
(正常)】
・男性、
65歳、合併症なし
・職業:
そば屋
店主
・
PS:0(まったく問題なく活動できる)
右か左か
右側の方が遺伝子異常が多い?
部位別の発生頻度 右:約3割 左:約7割 FIRE-3試験より (RAS 野生型患者) FOLFIRI+CET群 FOLFIRI+BEV群 OS(全生存期間) OS(全生存期間) 中央値 p値 中央値 p値 右側(88例) 18.3m 23.0m 左側(306例) 38.3m <0.001 28.0m =0.04一次治療の方針を決定する際のプロセス
大腸癌診療ガイドライン 2019年版より
切除不能進行再発大腸癌 に対する薬物療法
一次治療の方針を決定する際のプロセス
大腸癌診療ガイドライン 2019年版より
切除不能進行再発大腸癌 に対する薬物療法
1.原発部位・・・右か左か
切除不能進行・再発大腸癌に対する薬物療法
分子標的薬は
■右のベバシズマブ(アバスチン)
■左のセツキシマブ(アービタックス)、
パニツムマブ(ベクティビックス)
【
RAS/BRAF
野生型の場合】
切除不能進行・再発大腸がん患者に対し、 ◆FOLFIRI → FOLFOX6で
OS(全生存期間)中央値:21.5ヵ月、 ◆FOLFOX6→ FOLFIRIで
OS(全生存期間)中央値:20.6ヵ月
2.
FOL
F
IRI
と
FOLFOX・・・どちらが先?
FOL
F
IRI
と
FOLFOXは、
どちらを先行しても
治療成績はほぼ同等
である。
切除不能進行・再発大腸癌に対する薬物療法
GERCOR V308試験
副作用、
QOL等を考慮して、
次の患者に「
FOL
F
IRI
+BEV」を行うことになり
ました。レジメンの選択は適正でしょうか?
・切除不能進行・再発大腸癌(上行結腸癌) 【RAS/BRAF:野生型(正常)】 ・男性、65歳、合併症なし ・職業:そば屋店主 ・PS:0(まったく問題なく活動できる。)「
FOL
F
IRI
+BEV」の選択は適正でしょう。
・原発部位:右→分子標的薬は
BEV
・そば屋店主:QOL低下防止のため、副作用の 「しびれ」を避けたい。
(
FOLFIRI+BEV)
1.レジメン選択
(切除不能進行・再発大腸癌)
2.FOLFIRI
3.
BEV
第2部 レジメン解説
治療間隔:2週間ごとに治療を行う。
吐 き 気 止 め レボホリナート イリノテカン フルオロウラシル (持続点滴) フルオロウラシル (急速静注) 15分 120分 46時間FOLF
IRI
ベバシズマブ 30~90分+Bev
FOLFIRI投与量・投与時間
イリノテカン 150mg/㎡ 点滴静注 2時間 レボホリナート 200mg/㎡ 点滴静注 2時間 フルオロウラシル (急速) 400mg/㎡ 急速静注 全開 フルオロウラシル (持続) 2400mg/㎡ 携帯ポンプ 46時間FOL
F
IRI
急速静注:RNAの機能を障害する。 持続静注:DNA合成を阻害する。 大腸がんのような進行が緩やかな場合は持続静注の方が効 果が高いと言われているため、持続点滴はかかせない。 ☆作用が異なるため、投与法により副作用も違う。 ●骨髄抑制: 急速静注 > 持続静注 ●手足症候群:急速静注 < 持続静注 骨髄抑制が遷延している患者さんの場合は、フルオロウラ シル急速静注をOFFにして治療を継続させることもある。フルオロウラシル
この薬自身に抗がん作用はない。
後から投与するフルオロウラシルの働き
を高める作用があるため、組み合わせて
使う。(
Biochemical Modulation)
FOL
F
IRI
レボホリナート
〇重篤な副作用(骨髄抑制)発現に
UGT1A1の遺伝子多型
(
UGT1A1*28/*28、
UGT1A1*6/*6)が影響を与える。
〇下痢に注意
・早発性下痢:〈治療〉抗コリン剤
・遅発性下痢:〈治療〉ロペラミド
〇脱毛:ほぼ必発
FOL
F
IRI
イリノテカン
(1)骨髄抑制
治療後
7~10日目に白血球の数が最も少なくなり
(
nadir)、通常は次の治療が始まるまで(14日
目まで)に回復する。
主な副作用
FOL
F
IRI
骨髄抑制の評価 CTCAE version 5.0 JCOG版
(2)悪心・嘔吐
催吐性リスク ①レボホリナート:なし ②フルオロウラシル:軽度 ③イリノテカン:中等度FOL
F
IRI
療法
FOL
F
IRI
療法は「中等度リスク」
主な副作用
中等度リスクの抗がん薬による急性の悪心・嘔吐に対しては 5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンを併用し,特定の抗が ん薬を使用する場合は,それぞれの患者の状況に応じてア プレピタントを追加・併用する。 ※「制吐療法診療ガイドライン」より•