2016/6/11 第 19 回基礎体温計測推進研究会定例会報告
2016 年 7 月 7 日 基礎体温計測推進研究会事務局 6 月 11 日(土)13 時半より東京・四ツ谷の主婦会館 3F の会議室で開催し た、第 19 回基礎体温計測推進研究会定例会について報告いたします。 2006 年 10 月 7 日の第 1 回から数えて丸 10 年、年に 2 回の勉強会はい つも梅雨の時期に重なって雨の日なのですが、今年は珍しくとても良い天気と なり、たくさんの皆様に参加いただきました。堀口貞夫会長の元気なお顔を拝 見することもできました。 講演 1 「女性ホルモンと口腔ケア~ライフステージにおける口腔管理」 志村デンタルクリニック副院長 志村 真理子先生 志村先生は、口腔外科で勤務をする中で、疾患は見当たらないけ れど「口の中が乾燥している」患者さんが増えていることをきっかけ に、1999 年「ドライマウス外来」専任となりました。その後、女性ホルモ ンと歯周病の関係性に興味をもち始めたそうです。 講演中強調していたのは、「ライフステージに合わせて、オーラルケ アをする必要がある」「歯科の分野でも女性ホルモンについて知って ほしい」ということでした。 まず、ライフステージごとに見ると、 ① 思春期(12 歳~18 歳頃)は、精神的にも肉体的にも不安定で、大人の見守りが必要。この時期にオー ラルケアの指導も徹底する必要がある。 ② 成熟期(18 歳頃~40 歳代)は、ライフイベントが多くストレスがたまりやすく、歯肉トラブルも発症しやす い。特に、プロゲステロンが分泌されている間が発症しやすい。 ③ 妊娠期は、ホルモンの変化によって歯周病疾患にかかりやすくなる。歯周病の妊婦は低体重児出産に 関係があると、国内国外の学会で発表されているほどで、妊婦さんへの予防指導は必要である。そし て、そこで学んだ歯科知識を子どもの口腔ケアに生かしてもらいたい。 ④ 更年期(45 歳~55 歳頃)は、更年期症状(意欲低下、体調不良)により、衛生管理が低下する人も。口 腔内の状態は、歯肉が衰え、歯間に汚れが停滞し、虫歯、歯周病も進行しやすくなる。ドライマウスが 出現し始める時期でもあるため、かかりつけ歯科での定期健診や衛生指導を受け、予防を強化する必 要がある。 ⑤ 老年期(60 歳頃~)で重要な疾患は骨粗鬆症。骨粗鬆症のリスクファクターに歯周病も挙げられるほど 関連がある。BPs(ビスホスホネート製剤)は骨粗鬆症をはじめ、各疾患の治療に必要な薬で、たくさん の人が使用しているが、この薬を使用中に抜歯などの外科的な治療を行うと、顎骨壊死が発症する可 能性がある。細菌感染の影響もあるため、日頃からしっかり衛生管理を継続してほしい。また患者に対 し適切なリスク開示が必要で、主治医と歯科の情報交換が望まれる。ドライマウスについては、様々な働きがある唾液がなくなってから初めて大切さに気付いたという声を多く 聞くそうです。原因は加齢・糖尿病などの疾患が挙げられますが、近年ストレスも問題視されています。スト レスは体の不調だけでなく唾液の分泌の低下にも関与しています。症状が出ても、「何もしない」という人が 多いですが、手軽に使用できるドライマウスケア用品もたくさんあるので、衛生管理をしてほしいと強調され ていました。 最後に、いつ発症するか分からない病気に備えて、毎日のオーラルケアが「元気に長生き」 するために必要不可欠であるとまとめられました。 「エストロゲンが分泌する時期はしっかりケアし、黄体期はやわらかいブラシで手入れをする方がいいの か?」という質問に対して、「細菌は常に口の中にいて、歯茎に影響があるわけではないのでホルモンの変 動によってブラシを変える必要はないが、気を付ける時期を少し認識して、念入りにケアいただければよ い」と回答いただきました。 また、糖尿病等が専門の内科医・橋詰直孝先生からは「糖尿病の患者さんは、発症後の 40 代くらいか らオーラルケアをしているので、もっと早くからケアするように啓発する必要があると感じた」との感想をいた だきました。 講演 2 「基礎体温の変動から月経周期を予測する統計的枠組み」 統計数理研究所 深谷 肇一先生 深谷先生は統計数理研究所に勤務され、モデリング(多数の 要因に関連する現象の構造をモデル化し、統計的推論を行う 方法を研究すること)を専門とされています。現在、月経周期の 長さを予測する方法として「月経時計」の構築について研究さ れており、今回は研究内容や今後の展望について発表いただ きました。 「月経時計」とは、統計数理研究所の石黒真木夫先 生が名付け親だそうで、変動ある周期を正確に予測する方法と して活用できないかと、研究を始められたそうです。
時計の針は月経周期ごとに一周し、目盛には「月経」や「排卵」など、周期の中で起こる現象が記されて おり、個人によって針の進むスピードも変わります。統計モデリングでの月経時計構築については、次のよ うな説明がありました。 ① 月経時計を設計する・・・針はどんな進み方をするのか?目盛盤には何が書いてあるのか?を数式で 表現する。 ② 月経時計を入手する・・・現実に適合する月経時計はどれか?(ある女性の 1,000 日分の基礎体温の データにモデルを当てはめて未知パラメータの値を特定する) ③ 針の位置を知る・・・・・月経時計の針の位置を一点に特定することはできないため、針がありそうな位 置を確率密度分布で表現する。 ・予測分布(今日までのデータから、明日以降の針の位置を推定) ・フィルタ分布(今日までのデータから、今日の針の位置を推定) ・平滑化分布(今日までのデータから、昨日以前の針の位置を推定) ④ 時間を見積もる・・・針の位置が分かれば、次の項目を通過するまでにどれくらいの時間がかかるかを 予測することができる。 これらの月経時計の概念を使うと、周期予測ができることが概念実証されることとなります。今後の展望 としては、年齢や体質、生活習慣によって周期に差があるため、幅広い世代で有用な時計にしたい そうです。体調に関するデータ(腹痛や腰痛など)もあれば、目盛盤に記載することができるた め、より深い研究ができるとのことでした。 発表後、戸川先生より「高温期と低温期を比べると、高温期の方が安定しているため、針は二本あった 方がいいのではないか?」というご質問については、「周期の前半では進み幅が不確定、後半は安定的に 進むように構築すると一つの針でも対応できるのではないかと仮定し、研究をすすめているところです。」と 回答されました。
企業発表「女性の基礎体温啓発への取り組み」 オムロンヘルスケア株式会社 国内営業本部 営業戦略部 オムロン式美人課 石崎 恵氏 「オムロン式美人課」は、オムロンヘルスケア社員が自主的に始 めたプロジェクトで、2014 年より事業化されました。2016 年からは開 発部に部門が設置され、女性一人ひとりに寄り添い、一生付き合え るブランドをめざし、商品開発を本格始動しています。並行して啓発 活動も実施され、中・高・大学生を対象とした出前授業や、働く女性 (30〜40 代)を対象としたセミナーを実施しています。これからも女性 の健康をサポートしたい、と話されました。 講演 3「夢を叶えるための美人レッスンについて」 女性健康科学者/医学博士 本田由佳先生 本田先生は、女性ホルモンバランスと基礎体温についての教育プ ログラム「夢を叶えるための美人レッスン」をオムロンヘルスケアさん と共同で企画・開発し、その講師を務められています。子どもたちが、 保健の授業で学習することを“自分事”として捉えられていない現状 を変えるべく、出前授業では「夢」を叶えるためには「健康」が必要だ と伝えています。 ご自身も学生時代には、新体操に力を入れ、インターハイまで出場 された経験があり、高校 3 年間は運動性無月経でした。その経験が今につながっているそうで、子どもたち と等身大で向き合えるよう学生時代の話や夢の話もされるとのことです。 授業の中では、女性のからだと月経・卵子との関係、自分たちの食や運動は未来の子どもたち(子孫)に もつながっていることも伝え、また、地球レベルでグローバルな視点を持ってほしいという願いから、経済の 話も授業の中で展開しています。所得格差が、健康格差にもつながるというお話もありました。 今では小学生からダイエットをしている子どもが増え、初経が始まって 4~5 年経つと「自分は太ってい る」と意識する子どもが約 8 割もいます。理想の体脂肪や筋肉量、骨量を示し、「今は体重が増えて当たり 前の時期で、月経周期にも関係する」と説明しているそうです。現状、保健体育の高校 3 年間の教科書の 中には、生殖器のことや基礎体温のことがたった 2 ページにしか書かれていませんが、それ以上のことを 教えるための出前授業は、とても大切な機会になっています。 本田先生は「女性健康科学者」という肩書を日本で初めてつくり活動されていますが、これからも、女性 の健康力を上げて日本を元気にしたいと、まとめられました。
研究会の後は、2F のレストランに会場を移しての懇親会。女性の健康について、結婚の話など、大いに 盛り上がりました。それぞれの専門分野の先生方から直々にご講義いただく、とても贅沢なひと時でした。
次回第 20 回は、2016 年 10 月 22 日(土)を予定しております。みなさま半年後にも、ぜひご参加くださ い。またお目にかかるのを、楽しみにしております。