香川大学農学部学術報雀 ブド ウ の早期落葉に関す る研究
Ⅱ 地形,土壌条件の異なるキャンベルス・アーリー
園に.おける早期落葉の実態
樽 谷 勝 9る Ⅰ 緒 p 前報(11)に.おいてキャンベルス・アー・リー種プドクの,結果枝基部における早期落莫の表われ方と,その時期的な 推移について報告した本報ほ,傾斜地ならびに.平坦地のキャンベルス・ア」−・リー園について,地形および土壌条件 と早期落葉との関係を調査したものである 本調査に.あたり,ど懇筍なご指導をいただいた,本学部果樹園芸学研究室葦沢正義教授に対し深甚な謝意を表する とともに.,調査に協力下さった寅部位助手ならびに香川県立笠田高等学校教諭関友明氏の労に感謝する (本報磐の要旨は園芸学会昭和57年皮秋季大会に・おいて発表した・) Ⅱ 調査材料および方法 19占2年およびる,5年のる∼8月の間,本学部付属農場大宮果樹園・傾斜地農場果樹瀾および香川麒大川郡志度町,三 豊郡豊中町,観音寺市において,地形,傾斜地園の方位,勾配の部位ならびに土質,表土の探さ,土壌の乾湿などの 異なる傾斜地および平瑠地(水田転換)のキャンベルス・アーリー瀾を対象紅して,結果枝基部の落葉状態を観察し た. 調査にあたっては,なるべく多くの樹および結果枝について行ない,地形・その他各種の土壌条件についても必要 な調査を行なった Ⅲ 調 査 結 果 A 傾斜地園における落葉状態 (1)方位を異にする傾斜地園の落葉状態 本学部の大宮果樹園・傾斜地農場果樹園ならびに志度町において,方位の異なる傾斜地鰯の,ノ\イブリッド・フラ ン台キャンベルス・アーーリー・について,19占2年8月1日および8月20日紅調査した結果は第1表のとおりであるい こ れ紅よると,8月1日における落葉数ほ西面傾斜地園の樹において5.5枚を示してこ最も多く,ついで南面傾斜地園が 5.0放でこれ紅つぎ,東面および北東面の園では2,.0∼ 27枚で,他にくらべてほるかに少ない.この場合の地 表下ちOcm部位の土壌湿皮をみると,東面および北東 面の傾斜地園に.おいて高く,西面および南面の傾斜地 園では比較的低かった. なお,各調査園の表土の深さ・土質などと落莫数と の関係についてみると,概して疎質および砂質土壌の 因でほ落莫が多く,粘質土壌の園では比較的少ない傾 向紅ある. 8月20日における落莫状態に.ついても,8月1日調 査の廟合と同様の傾向が認められ,この時期における 傾斜地匪の方位別にみた落葉状態は,西面および南面 の傾斜地国の樹において−,落莫数が多い傾向を示し た. 第1図 調査ブドウ園の状景(大川郡志度町幸田地区)第18巻繹1号(19占占) 第1表 傾斜地園の落葉状態(19占2年) (ハイブリッド・フラン台;1結果枝当り) 97 碧晶蒙陰髄基底管最 表土の深さ・ 土質 弱cm砂壌土 即c皿硬質砂壌土 42cm砂壌土 5鮎m砂壌土 調 査 園 方位・勾配 土壌管理の状態 裸 地,深 耕 自然畢生,深耕 敵わら,深 耕 裸 地,深 耕 志度町 高橋敏夫園 同 高橋源太郎園 同 上 同 今田林之助閻 東・250 西・つ5∼250 南・150 北東・120 1大学農学部 番ノl 南・150 東南・150 草生・敷革,深耕 同 上 50cm粘質の壌土 5ロcmや.」粘質の 壌土 大宮果樹園 同 傾斜地農場 当業者平均 25..51 2..9【 5.5 注1)U字塾整枝の短棺弟定である。 2)土壌湿度ほ、地表下58e皿部位について採土・測定。 束lか陳斜地聞 出柚 (2)東面および西面傾斜地園における場所 別の落莫状態 志度町専用地区に.おいて.,第2図に示すよ うな東面および西面のはば対称的な傾斜地園 で,それぞれ上部,中部,下部の樹に∴ついて 調査したところ,第2表のとおりであった すなわち,て9d2年およびて9d・5年の両年とも に,東面傾斜地園の方が西面傾斜地園よりも 落莫が少なかったい また,同一・傾斜面では, 上部の樹において落葉が比較的多く,下部の 樹はど少ない傾向がみられた. この調査に関連して,両面の傾斜地園の上 部と下部の地点におけるブドウ棚上面の蒸発 蔑と気温を観測したところ,第5表のように 西面傾斜地園の力が,東面傾斜地園よりも未 発塁が大きく,気温も高かった. (山購水≠胴l) 」 16m」←37m→l←32mヰー31m→卜 77m 山仲 ト57m ヰ25mヰー 66m 一月← 66m →ト48m−1 第2図 東面および西面傾斜地園の断面図(模式) (大川郡志度町幸田地区) 第2表 東面および西面傾斜地園の部位別落葉状態の比較 (志度町幸田地区) 注1)ハイブリッド・フラン合成木のU字型整枝の短栴勇走である。 2)程度区分ほ次のとおりである。 落葉 2、0枚以下 健全‥‥…健 〝 2.1∼5‖D枚 軽度・1……寝 〝 51∼4.9枚 中庭……中 〝 5‖D枚以上 強度……強
98 (3)傾斜地園の土質および土壌湿度と 落葉との関係 19占2年に花崗岩土壌よりなる傾斜地ブ ドウ園について,25カ所の調査地点を設 け,土壌組成および土壌湿度と落葉との 関係をみたところ,雰4・5表の結果を 得た.それによると,土壌中に徽砂およ び粘土の含量が多い土壌の園では比較的 落葉が少なく,砂および礫の多い土壌の 園では落葉数の多い傾向がみられた. また,傾斜地園における土壌湿度と落 葉との関係について8月1日調査時の土 香川大学農学部学術報告 欝5表 東面および西面傾斜地園の部位別蒸発量・気温の比較 (志度町幸田地区;19占2年8月8,9日) 注1)8月8日,9日両日晴天の12時観測の平均値である。 2)観測ほブドウ棚上面の日射部で行なった。 欝4表 傾斜地ブドウ園の土壌組成と落葉との関係(25園調査;19占2年8月1日) 第5表 傾斜地ブドウ園の土壌湿度と落葉との関係(25園調査;19る2年8月1日) 第占表 地質および土質を異にしたプドク園の落葉状態 (観音寺市・他;19占5年8月14日) 注1)2樹・4主枝の1結果枝当りの平均である。 2)Aは傾斜の上部樹,Bは傾斜の下部樹である。
99 欝18巻第.1号(19占占) 壌湿度からみると,概して土壌湿度の高い地点のブドウ樹では,比較的落葉が少ない傾向にあった. 19る5年8月14日,三豊郡豊中町および観音寺市において,地質および土質を異にした傾斜地ブドウ園と海岸砂丘地 ブドウ園の落葉状態を調査した..その結果は節占表のようで,一般に安山岩質土壌および洪積層土壌のブドウ園では 比較的落葉が少なく,花崗岩の砂・礫質土壌の園では落葉の多い傾向がみられた.海岸砂丘地ブドウ園でほ,落葉数 も比較的多く,その落葉のはとんどがMg欠乏症類似の,葉脈問の糞変によるもゐであることを観察した. B 山麓平坦地囲および水田転換園における落葉状態 (1)平坦地ブドウ園の一般的落葉状態 大川郡志度町内の山麓平坦地囲および水田転換園について,19占2年8月1日に調査した結果は,第7・8表のとお りである.すなわち,いずれも各園平均5・1放であるが,傾斜地園の場合(第1表参風)よりも落葉の多い囲もあっ た.とくに,水田転換園のうちでも梅雨期間中川舟19∼25日まではとんど連日降雨)に排水不良のため,4∼5日 尚滞水をみた高橋敬一民国でほ,1結果枝あたり平均る.7枚の落葉を示していた. ノ‘なぉ,8月20日の各国平均落葉数は5・4∼5.る枚で,傾斜地園の場合と大差がみられなかった. 第7表 山麓平坦地園における落莫状態(1結果枝当り) 第8表 水田転換園における落葉状態(ハイブリ ッド・フラン台;て結果枝当り) (2)山麓の水田転換園における地下水位と落葉との関係 志度町幸田地区の山麓水田転換ブドウ園で,地下水位の異なる山麓部,中央部,崖端部の5部位の樹について,落 葉状態を調査した結果は第5図のようであった. すなわち、山麓部では地下水位がつねに地表下40cm前後のところにあり,土壌湿度も高い状態にあった.この部 位のブドウ樹ほ,占月下旬∼7月初めの間に葉脈の黄化をみ,かつ,それにともなった落葉がみられた. 崖端部の地下水位は,梅雨期の多雨時でも1皿以下にあり,土壌湿度も他の部位よりもほるかに低かった.この部 位のブドウ樹でほ,すでに梅雨期中からMg欠乏症類似の黄変葉の発現がみとめられ,ついで7月中旬以降において 落葉が多くなった. 中央部は,梅雨期の多雨時においてわずかに地下水位の上昇がみられた程度で,土壌湿度も前両者の中間にあり・,
10D 香川大学農学部学術報告 枝棺の伸長も良く,結果枝基部其の糞変ならび に.落葉が少なかった. 以上のような結果から,山麓平坦地および水 田転換園では,すでに梅雨期申に相当多くの落 葉がみられた申 しかし,8凡以降の落莫数の増 加割合は,傾斜地寓の場合とはとんど同じ程度 である Ⅳ 考 察 当地方におけるキャンベルス・アー・リー・穫 の,早期落葉を誘起する結果枝基部其の黄・由 変の類型と,その時期的推移状ついては前報 (11)で明らかに・したが,これらの早期落莫がブ ドウ園の地形や位置ならびに種々の土壌条件に よって,いかなる相違があるかを知ることは, 早期落葉の原因究明とその防止把.あたつて「重要 なことであると考えられる. 本調査の結果が示すとおり,同一・地域の傾斜 地ブドウ園および同一・園地にあっても,方位や 場所によって,同時期の落莫状態が異なること は,各ブドウ園における肥培管理の差異にもよ ると思われるが,その前提となる立地条件の相 遵が大きく影響していることが考えられる.そ の・一例として上原(12)が行なった傾斜地果樹園 の気象観測の報告紅よつても明らかであろう. すなわち,傾斜の方向・部位によって気温,温 度較差,兼発盈などにいちじるしい差がみら れ,ことに・,ブドウ園に・おける機上と棚下との 日射盈,受熱意および未発量の差が大きいこと を実証している.このような気象的要因が園地 の土壌湿度や地温に.関与し,また,壇按的に.は ブドウ樹の葉面蒸散をはじめ,生理的詩作用に 第.5図 山麓水田転換園の地下水放と黄・褐変菓の消長 ならびに落莫状態(志度町幸田・池田清太郎氏 園;19占2) 影響を及ばし,その結果,結果枝基部葉の貴・褐変などの異常変化を誘起し,それが落葉を促進することとなってい るものとも考えられる. 本調査において,傾斜面を異にするプドク園で,それぞれの落葉状態が異なることは,東面傾斜地園と西面傾斜地 園との気温,蒸発塁などの差が示すように.,西面傾斜地園ではブドウ樹の某面表敬をはじめ,種々の生理的作用にお いて,東面傾斜地園の場合よりも,異常を起こしやすい気象的条件のもとにあるといえよう. 果樹園の地形や土壌的環境条件を異にする場合の果樹の発育や,発育障害把関する報告は多くあげられるが GARDNER,HooKERら(4)はブドウ其の貴変・落莫が,主軋土壌湿度の不足または根の通気不良が原因であるとして いる.、また,寺沢ら(12−8)が行なった香川県におけるブドウ園の草書調査をはじめ,深耕ブドウ樹紅対する夏季乾娩 の実験において,地表浅層の土壌乾燥がブドウ樹の発育および結果枝基部の落葉に腰饗していることを報告している. さらに筆者(11)は前報において,平坦地ブドウ園の滞水園,地下水放の過高園では葉脈の黄化其の発現と,それに ょる落葉が多いことと,傾斜地園に.おいてほ梅雨明け期から盛盈期に潜葉が増加することを報告した‖ 本調査の場 合,傾斜地園と平墟地園とではいちじるしく立地条件を異にしており,それが早期落葉の表われ方や程度に影響しで いるものと考えることは誤りではなかろう.また,本多・岡崎ら(¢ア8)の観察しているように・,樹勢,結果盈ならび
101 節18巻欝↑号・’(19占る) に土壌管理の差が落葉の程皮を支配する重要な原因となつているとともあげられよう.この点ほ筆者(10)がさきに報 告した早期落莫と土壌乾燥との関係とも一・致するところがある 梅雨期の落葉,地下水位の過高園の落葉ならびに・水田転換園における早期落葉が此駿的早い時期紅みられることな どに.ついて−は,小林ら(9),林ら(8牝よる果樹の耐水性ならびに・湿害把ついての報告などの関連からしても,本調査結 果とも一・致する点があり,排水不良園,地下水位の過高鰐の早期落葉の原因が,排水不良や地下水位の過高に・よる土 壌条件の悪変,根の生理機能の障害など紅よるものがあるといえる. 本調査の結果が示すように・,ブドウ園の立地状態や種々の土壌条件に・よって落莫状態の異なることは,むしろ当然 と考え.られるが,それらの要因と早期落莫との関連については,今後一層究明することにしたい. Ⅴ 摘 要 香川県地方のブドウ因に.おけるL早期落葉の実態を明らか乾するため,キャンベルス・アーリー・種ブドウ園に・つい て,19占2およぴ19占5年の占∼8月の間紅,傾斜地園ならび紅平坦地園(山麓平坦地または水田転換園)で,地形およ び各種の土壌条件と早期落莫との関係を調査した. (1ト各方位の傾斜地ブドウ園で早期落葉の多い順位は,西南傾斜地闇が第1位■で,南面傾斜地闇が欝2位,ついで 東面および弗東面の囁であった.また,同一一個斜面のブドウ園では上部の樹の落莫が,下部の樹のそれよりも多かっ た! (2)平坦地のブドウ図では,梅雨期り月下旬∼7月初め)の湯葉が多く,とく紅,排水不良,地下水位の過高園 の樹は落兼がはなほだしかった. (3)土壌の種類および土壌条件の異なるプドク園では,花崗岩土壌の.ブドウ園および海岸砂丘地のブドウ園に・おい て落葉が多く,安山岩質土壌および洪積層土壌のブドウ園では比較的落葉が少なかつた. (4)花崗岩土壌のブドウ園のうちで軋礫質土壌,砂土および砂質壌土の場合紅落莫が多く,埴質土塊では落葉が 少ない傾向に・あった. (5)盛夏期(7月終りから8月中旬)においては.,土壌乾燥のはなはだしい園に・おいて落葉の多い傾向がみられ た. 献 報),園芸学会昭和57年皮秋季大会研究発表要旨, (19る2).
8…−・∴・
上田浩次:キャンベルス・アーリ −の早期落葉紅関する研究,土壌管理の効果(第2 報),園芸学会昭和57年皮秋季大会研究発表要旨, (19る2) 9‖小林 章,庵原 遜,村井兼ニ,林 轟ニ:果樹の 耐水性に関する研究,第1報 果樹種類間の耐水性比 較,園芸学研究集録 4,127−157(1949). 1D.樽谷 勝:プドクの早期落葉紅及ぼす土壌乾燥の影 響,園芸学会昭和57年度春季大会研究発表要計 (19る2) 11.− :ブドウの早期落莫に関する研究,Ⅰ キャ ンベルス・アー・リ−・種の早期落葉の実態,香川大農学 報1剖11,105−108(19る4) 12い上原勝樹:傾斜地開発に関する物理気象的研究,香 川大農紀要 7(19る1) 文 1.撃沢正義・樽谷 勝:香川県における果樹園の草書 に関する研究,Ⅰ葡萄園の草書調査,園芸学会昭和 54年皮春季大会研究発表要旨,(1959). 2.−・−−:葡萄の深耕樹に.おける夏季乾燥の 影響,香川大農学報,15(2),155−14D(19占2).5‖−
:香川県における葡萄の草書に・関する研究, 香川大農紀要,17(19占4). 4巾GARDNERl.VりRl,BRADFORD,F.C・,HooI【ER, エ.D.:Fundamentalsof Fruit production,16−18, Newyork,Mc Graw・Hill(1959). 5.林 真ニ・脇坂章雄:果樹の湿害に.ついて(土壌の 酸化還元電位の低下及び有害還元物質との関係),国 学誌 25(1),59−占8(195る)ハ ‘.本多 昇・岡崎光良:水田地帯のキャンベル種葡萄 の早期落葉の実態,岡山大農学報20,57−5D(19d2)・ 7..−・−・ 高橋健二∴キャンベルス・ア・−・リ −の早期落莫に関する研究,土壌管理の効果(第1香川大学農学部学術報告
StudiesノOn the defdliation of grape vinesinthe summer season
Ⅱ Rese?rQhqntheactualstate of early defoliationinCampbell(s Early v車neyardslocated on different configuration and soil condition
Masaru]KuRETANI 102
Summary A research on the actualstate of early def01iationin Cambell′s Earlyvineyardslocated on
a slopeora flatin Kagawa prefecture was made fromJune toAugustin1962and1965
(1)The ddfoliation wasrthe severestinthe vineyardslocatedontheslope faced the west follow9dby
\
those faced tIゆSOuth,SO11th eastl,and ne)Ith・eaStin oIder.Within a vineyard vines grown on higher
Place of the slope showed severer defoliation.
(2)Inthevineyardslocatedonthe flatthe defoliation occurredmostlyduringtherainyseason(from themiddle ofJune:tO tlle beginning ofJuly).It was由pecia11y severein the vineyards where the
drainage was bad and the undergrand water was high.
(3)The more defoliation was obseIVedin thevineyard wheI■e th毎soilderived 董rom granite orin thoselocated on sanddune.In thevineyards of andesitic$Oilor diluvialsoil,thevines hada comparati∴ Vely王ewdefo舶tiod.
(4)In the vineyards where the soilderived fI・On granite the defoliation was severerin gravelsqil, $and;andsandyloam thaninclayloam.
(5)Inthemidsummer(fromthe endofJulytothemiddleof August),the defoliation was verysevere in thevineyard$Where the soileasily became dry.