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北信越大学リーグ1部所属チームのピックプレイの傾向分析

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Academic year: 2021

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北信越大学リーグ1部所属チームのピックプレイの傾向分析

Pick-play tactics analysis of Hokushinetsu University

Yasunori GOTO

Shingo TAMAKI

後 藤 泰 則

田 巻 信 吾

【研究論文】

キーワード:バスケットボール・ピックプレイ・ゲーム分析・戦術・スカウティング 

1.緒言

 バスケットボールは2チーム間の得点を競う勝負である。試合で勝つためには相手チームの特徴 を掴み、相手に対応していくことが必要となり、そのためにスカウティングは重要な要素となる1)  バスケットボールにおいてオフェンス戦術の中に2対2で行うピックプレイがある。これはオンボー ルスクリーンの一つであり、現在多くのチームが取り入れているオフェンス戦術である。森重ら2) が報告したSports Code(Sportstec社)を用いたゲーム分析サポートの実践事例において、映像の 編集内容にセットオフェンスとは別で「ピックプレイ」の項目があり、それだけ注目すべきプレイ とされていることが伺える。試合に勝つためにピックプレイについての情報を知ることは、それだ け重要なファクターとなっており、ピックプレイを用いてどうやって攻撃するか、またピックプレ イをどうやって防御するかを検討していくことは重要となる。つまり、ピックプレイのオフェンス 戦術パターンを分析し、それに対応できるディフェンス戦術を構築する。それと同時にピックプレ イのディフェンス戦術に対応したオフェンス戦術を構築していくことは、コーチングに欠かせない 要素である。  そこで本研究では北信越大学リーグ1部所属チームのピックプレイ戦術を分析することで、各チー ムの特徴を把握し、コーチング現場にフィードバックを行うことを目的としている。ピックプレイ の先行研究においては、その多くが一つの大会を対象とし、その全体像の把握を試みているものが 多いが、本研究ではチームごとの分析を行い、各チームの特徴を把握することで北信越大学リーグ の競技力向上に役立つものとしたい。

2.研究対象

 令和元年 北信越大学春季バスケットボールリーグ戦における男子1部リーグ5チームによる総 当たり戦の全10試合。ビデオカメラを2台設置し、ハーフコート全体が映るよう撮影を行った。撮 影した映像を元に、試合中に使用されたピックプレイをすべて抽出し分析を行った。大学の表記は

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3.分析内容

 ピックプレイのスカウティングを行う際にポイントとなる項目を作成し、それぞれの項目を下記 の通り分類した。 ① ピックプレイ回数 ② ピックプレイの結果(成功、不成功、TO) ③ ピックプレイエリア(ハイピック、エルボーピック、サイドピック) ④ ピックプレイ開始時のショットクロック残り時間   (1秒-4秒、5秒-9秒、10秒-14秒、15秒-19秒、20秒-24秒) ⑤ スクリーナーアクション(ダイブ、ポップアウト、シュートロール、スリップ) ⑥ シューター(ハンドラー、スクリーナー、ペリメーター、シューターなし) ⑦ シュート種類(ゴール下、レイアップ系、ミドルシュート、3ポイントシュート) ⑧ ユーザーディフェンス対応(オーバー、アンダー) ⑨ スクリーナーディフェンス対応(ヘッジ、フラット、ドロップ) ⑩ スイッチ対応(スイッチあり、スイッチなし)  

4.統計処理

 各チームのピックプレイ平均回数の比較は一元配置分散分 析及び多重比較を行い、どのチーム間で有意差が認められた かを特定した。また各チームと各項目とのクロス表を作成し、 χ²検定及び残差分析を行い、どの項目に有意差が認められ たかを特定した。本研究における有意水準は5%未満とした。 クロス表の見方は表1の通りである。

5.結果

 本研究の対象試合である全10試合において367回のピックプレイが使用された。各チームのピック プレイ回数を分類ごとに表2に示した。ピックプレイ回数では一元配置分散分析及び多重比較の結 果f(4,15)=3.222, MSe=20.815,p<0.05となり、B大学とD大学に有意差が認められた(図1)。また、 その他の項目についてはχ2検定及び残差分析を行った結果を表3に示した。多くの項目で大学間で の有意差が認められたが、シュート種類に関してのみ大学間で有意差が認められなかった。なお、 スクリーナーのディフェンス対応におけるスクイーズは1回しか出現しなかったため、分析項目か ら除外した。 ++ p<0.01有意水準で高い + p<0.05有意水準で高い -- p<0.01有意水準で低い - p<0.05有意水準で低い 有意でないが高い 有意でないが低い 表1 クロス表の有意水準

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北信越大学リーグ1部所属チームのピックプレイの傾向分析 0 A大学 B大学 C大学 D大学 E大学 20 40 60 80 100 * 120 表2 ピックプレイ分類一覧(回) 図1 ピックプレイ回数 ピックプレイ 結果 ピックエリア 回数 成功 不成功 TO ハイピック エルボーピック サイドピック A大学 73 37 33 3 16 29 28 B大学 101 37 55 9 55 30 16 C大学 66 20 41 5 28 23 15 D大学 58 15 36 7 35 13 10 E大学 69 19 39 11 44 18 7 ショットクロック スクリーナーアクション 1秒-4秒 5秒-9秒 10秒-14秒 15秒-19秒 20秒-24秒 ダイブ ポップアウト シュートロール スリップ A大学 2 18 35 18 0 27 32 4 10 B大学 2 12 29 54 4 68 25 1 7 C大学 2 9 25 24 6 37 24 1 4 D大学 2 10 10 30 6 37 17 0 4 E大学 1 16 28 24 0 47 12 5 5 シューター シュート種類 ハンドラー スクリーナー ペリメーター シューターなし ゴール下 レイアップ系 ミドルシュート 3ポイントシュート A大学 17 11 30 15 9 15 15 19 B大学 50 9 24 18 10 18 31 24 C大学 30 10 17 9 4 19 17 17 D大学 19 3 20 16 5 10 8 19 E大学 27 7 15 20 4 14 18 13 ユーザーディフェンス対応 スクリーナーディフェンス対応 スイッチ対応 オーバー アンダー ヘッジ フラット ドロップ スクイーズ スイッチあり スイッチなし A大学 66 17 54 18 10 1 14 69 B大学 47 19 29 20 17 0 10 56 C大学 68 12 36 24 20 0 12 68 D大学 42 30 12 32 28 0 26 46 E大学 40 26 11 26 29 0 15 51

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6.考察

6-1.ピックプレイの回数と結果について  ピックプレイを使用した回数では、B大学の総回数101回(1試合平均25.3回)が一番多く、D大 学の総回数58回(1試合平均14.5回)が一番少なかった。簔川ら3)の研究報告では、北信越大学リー グにおける1試合の攻撃回数は100回前後と示されており、そこから推測するとB大学の1試合にお けるピックプレイ割合は25%前後となる。よって先行研究4)で示されているより低い割合となったが、 それでも4回に1回はピックプレイが使用されていることから、ピックプレイの重要度は高いと考 えられる。また、A大学やC大学、E大学でも1試合における攻撃回数のうち、ピックプレイ使用 割合は20%前後と推測され、5回に1回はピックプレイが使用されていることからも、ピックプレ イのスカウティングや戦術の把握は必要と考えられる。  ピックプレイ結果に関しては優勝チームの成功数が有意に高く、上位チームの成功数が高い傾向 成功 不成功 TO ハイピック エルボーピック サイドピック A大学 ++ - -- ++ B大学 C大学 D大学 + E大学 + ++ -- 1秒-4秒 5秒-9秒 10秒-14秒 15秒-19秒 20秒-24秒 ダイブ ポップアウトシュートロール スリップ A大学 ++ -- - -- ++ B大学 ++ + C大学 + D大学 -- + E大学 - - + ハンドラー スクリーナー ペリメーター シューターなし ゴール下 レイアップ系 ミドルシュート3ポイントシュート A大学 -- ++ B大学 ++ C大学 D大学 + E大学 + + オーバー アンダー ヘッジ フラット ドロップ スイッチあり スイッチなし A大学 ++ - -- B大学 C大学 ++ -- D大学 -- ++ -- + + ++ -- E大学 - + -- ++ χ²(12)=25.351,p<0.05 χ²(12)=11.487,n.s. χ(8)=16.449,p<0.05 χ²(8)=37.291,p<0.05 χ²(4)=13.989,p<0.05 χ²(8)=57.711,p<0.05 χ²(4)=19.809,p<0.05 ユーザーディフェンス対応 スクリーナーディフェンス対応 スイッチ対応 シューター ショットクロック スクリーナーアクション シュート種類 χ²(16)=42.805,p<0.05 χ²(12)=31.350,p<0.05

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北信越大学リーグ1部所属チームのピックプレイの傾向分析 あった。また下位チームの不成功数が高い傾向にあり、TO も下位チームで高い傾向にあったことから、ピックプレイ の成功数は勝敗に影響を及ぼすと考えることもできる。し かし、ピックプレイの結果はシュート力による部分も大きく、 成功数が直接ピックプレイの良いか悪いかを判断すること は難しい。また、5チーム間の得失点(表4)においても 差が激しい事から、単にチームの強さがピックプレイの成 功数に反映されただけとも考えられる。 6-2.ピックエリアとショットクロックについて  全体的にはハイピックが多く、続いてエルボーピックが多くなる中、A大学のみハイピックより、 エルボーピック、サイドピックの回数が多く、他大学と比べてコートサイドのピックプレイを使用 している。またピックプレイ開始時のシュートクロックは10秒から14秒が有意に高く、ハーフコー トセット時にピックプレイを使用していると考えられる。E大学もハーフコートセット時にピック プレイを使う傾向が高いが、ピックエリアはハイピックの回数が有意に高い。つまりハーフコート オフェンスにおいてA大学はウイングへボールを展開し後、ピックプレイを使用し、E大学はガー ドプレイヤーがハイピックを使うパターンとなる事が推測される。B大学、C大学、D大学はショッ トクロック15秒-19秒でのピックプレイが多く、オフェンスの早い段階でピックプレイを使用している。 トランジションオフェンスやアーリーオフェンスでディフェンスの準備が整う前にピックプレイを 使用することで、さらにオフェンスを有利に展開していきたい意図が伺える。 6-3.スクリーナーアクションとシューターについて  スクリーナーアクションはA大学のみダイブよりポップアウトのアクションが多かった。A大学 はサイドピックも多い事から、スクリーナーのスペースを確保することで、ポップアウトを有効に させていると考えられる。さらにシューターは他大学と比べてペリメーターのシュートが高い事から、 ピックプレイをきっかけとしてオフェンス展開している事も伺える。B大学はスクリーナーアクショ ンのダイブが有意に高く、ダイブする事でスクリーナーがディフェンスにとって最も脅威となるペ イントエリアへ侵入している。ディフェンスはペイントエリアにボールを入るのを阻止する必要が あり、そこにディフェンスの意識を向けさせ、ハンドラー自らそのままシュートへ持ち込んでいる 事が推測される。 6-4.ディフェンス対応について  ボールマンに対してユーザーディフェンスがオーバーで対応すること、そしてスクリーナーディ フェンスがヘッジで対応することが積極的なカバーとされる。一方ユーザーディフェンスがアンダー、 スクリーナーディフェンスがフラットやドロップで対応することが消極的なカバーとされる。ボー 総得失点差 A大学 82 B大学 61 C大学 18 D大学 -56 E大学 -93 1試合における 得失点差 21.4±5.7 表4 得失点差(点数)表4 得失点差(点数)

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表とピックプレイ結果のクロス表では同じような傾向が見られるため、北信越地区ではボールマン へのディフェンスの強度が勝敗に影響を及ぼす一つと言えるのではないか。唯一スイッチが多かっ たD大学では、スイッチ対応のため、ユーザーディフェンスがアンダー、スクリーナーディフェン スがフラットやドロップで対応している事が増えているが、スイッチすることでディフェンスが有 利に働く場合もあれば、ミスマッチが発生しディフェンスにとって不利になる事も考えられる。い ずれにせよピックプレイに対してスイッチが起こるかどうかはオフェンスにとっても重要であるため、 スイッチディフェンスの有無は事前に把握しておく必要がある。

7.まとめ

 本研究ではクロス表を用いて各大学におけるピックプレイの特徴に着目した。統計における有意 差は特徴を把握する事において重要であるが、有意差が認められない場合においても、高い傾向な のか低い傾向なのかを示し、各チームのピックプレイの特徴をより反映させることとした。自チー ムで行っている戦術は普段の練習から行われているため、オフェンス対応やディフェンス対応には 少なからず慣れが存在する。しかし、自チームのオフェンス戦術及びディフェンス戦術と違う戦術 をとるチームとの対戦においては、普段の練習とは違う対応を求められるため、前述した内容をチー ムにフィードバックし、準備するため材料の一つとなる。すべてのチームのプレイパターンを把握 し対応することは理想であるが、すべてに対応していく事は難しい。しかし、相手の特徴を掴み、 オフェンスパターンやディフェンスパターンを把握しておくことで、準備を整え試合を有利に進め ていくことができると考えられる。  ピックプレイはこれからますます使用頻度が増加し、重要なプレイとなる事が予想される。北信越リー グにおいてもピックプレイの精度は勝敗に影響を及ぼすと推測されるため、各チームの特徴と、自チー ムの選手構成を考慮して、精度の高いピックプレイ戦術を構築していく必要があると考える。

8.参考・引用文献

1)葛西太勝 大学バスケットボール界における情報戦略活動の事例研究 仙台大学紀要 40 1 71-83(2008) 2)森重貴裕・石原雅彦・西中間恵・高橋仁大・清水信行 バスケットボールにおけるゲーム分析サポートの実践事例 鹿 屋体育大学 スポーツパフォーマンス研究2 207-219(2010) 3)簔川圭太・能登真一・加藤雅規・梅津卓・衛藤晃平 大学男子バスケットボール競技におけるゲーム分析の-北信越大 学男子1部リーグを対象に- 新潟医療福祉会誌15(2) 21-26(2016)

4)Mattheos P・Tsamourtzis E・Georgios Z Relation of effectiveness in pick n’ roll application between the national Greek team of and its opponents during the men’s world basketball championship of 2006 Journal of Physical Education and Sports 29(4) 57-67(2010)

5)佐々宜央 マルチアングル戦術図解 バスケットボールの戦い方 ピック&ロールの視野と状況判断 ベースボールマ ガジン社(2018)

参照

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