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北米からみる「地域」と大学での学び -海外フィールド演習『グローバル時代における北米の多文化社会』の一考察-

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中 朋美・ケイツ・キップ:北米からみる「地域」と大学での学び

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北米からみる「地域」と大学での学び

- 海外フィールド演習『グローバル時代における北米の多文化社会』の一考察–

中 朋美

・ケイツ・キップ

**

Student Reflection on Regional Studies and Higher Education in

North American Study Tours

NAKA Tomomi*, CATES Kip**

キーワード:スタディー・ツアー,異文化理解,アメリカ,カナダ Key Words: Study Tours, Intercultural Understanding, United Sates, Canada

I.はじめに

2013 年度から鳥取大学地域学部で正式に単位化された海外フィールド演習は,今年度で 3 年目を 迎える。現在,韓国,中国,ベトナム,インドネシア,北米といった様々な地域で海外フィールド演 習プログラムが実施されている。その内容も担当する教員の専門等を生かし多様で,参加希望の学生 はいくつものプログラムから選択することができる。ここではその中の一つである北米プログラムを 取り上げ,参加学生の学びの様子について考察する。 海外フィールド演習に限らず,大学での学びを地域の活動につなげる動きは以前にもあるが,高等 教育における学生の主体的な学びを重視するアクティブラーニング,地域での奉仕活動等をつうじて 知を深めるサービスラーニングを取り込む動きとも相まってますます重要なものとなっている。加え て近年では,日本の地域だけではなく,海外においても主体的な学びや体験が重視されてきている。 グローバルな環境で活躍できる人材育成を目指す文部科学省のグローバル人材育成推進事業などが そういった動きの代表的なもので,鳥取大学の海外フィールド演習もそういった流れと支援の上にプ ログラムが展開されている。またこの授業は,地域を地元といった国内だけではなく国外から多角的 に考える機会を提供する点で鳥取大学地域学部での特徴的なカリキュラムの一部となっている。 こうした教育面での動きは,研究の分野にも影響を及ぼしている。例えば文化人類学ではここ数年 の間に,応答の人類学,あるいは公共人類学といった比較的新しい名称を用いながら,人類学的な知 の公共的な役割や研究対象となっている人々やグループとの協働の実践と課題の検討がなされてい る。1 過去にも同じような動きがなかったわけではなく,また経済的,社会的な力関係の不均衡など 改善すべき問題もたくさんあるが,研究機関のための研究にとどまることのない,広い意味での貢献 の可能性の模索への関心が高くなっていることの表れともいえる。そんな中,地域学部の海外フィー ルド演習での学びの検討は,広く大学教育的において,そして研究面においても有益なデータと考察 を提供することができる可能性がある。 *鳥取大学地域学部地域文化学科 **鳥取大学地域学部地域文化学科 北米プログラムは,2012 年度に鳥取大学が文部科学省のグローバル人材育成推進事業に採択され 知を深めるサービスラーニングを取り込む動きとも相まって,ますます重要なものとなっている。加 えて近年では,日本の地域だけではなく,海外においても主体的な学びや体験が重視されてきてい る。グローバルな環境で活躍できる人材育成を目指す文部科学省のグローバル人材育成推進事業など がそういった動きの代表的なもので,鳥取大学の海外フィールド演習もそういった流れと支援の上に プログラムが展開されている。またこの授業は,地域を地元といった国内だけではなく国外から多角 的に考える機会を提供する点で鳥取大学地域学部での特徴的なカリキュラムの一部となっている。

(2)

地 域 学 論 集  第 12 巻  第 2 号(2015) 198 地域学論集 第12 巻第 2 号(2015) たのを契機に2012 年度にパイロットプログラムとして実施され,2013 年度から本格的に海外フィー ルド演習の一つとして加わった。北米でのプログラム実施の理由には様々あるが,主な理由の一つに は,アメリカ,カナダには多様な文化的,社会的,言語的な背景を持つ人々やコミュニティーが数多 く存在し,地域や国家の複雑な関係を多角的に考察する場に事欠かないことがある。特に西海岸の都 市は日本を含めたアジア系移民も数多く,歴史的にも現在においてもアジアと深いつながりがある点 で日本やアジアを外から考えることができる。また,英語圏であるので,学生が現地の様々な文化的, 社会的背景の人々とのコミュニケーションを英語で直接とることが出来,国際語としての英語での フィールド体験を実践できる場である。こういったことから海外フィールド演習のプログラムの一つ が北米で行われている。2013 年度以降は,日系アメリカ,カナダ人の体験を中心にグローバル社会に おける北米の多文化社会 (Multicultural North America)というテーマで実施されている。

以下ではまず北米プログラムの概要を,訪問先,参加者,プログラムの構成を中心に紹介する。そ して学生のレポート,日誌,事前と事後の面談コメントなどを参考にしながら,学生の学びの様子を 考察していく。学生のコメントからは,彼らが多民族社会や文化的アイデンティティーについての理 解を深めるとともに,大学での学びについて振り返っている様子がうかがえる。中には研修後,自分 なりのテーマをさらに探求する学生や,今後の方向性の展望の見直しをするものもいた。北米プログ ラムでの学びが,研修期間といった短期間での学びにとどまらず,大学での学びを深める機会を提供 している様子について詳しく検討していく。後半の考察部分では,今回の論文のテーマや構成上の理 由から特に日系アメリカ・カナダ人関連に関するコメントを多く引用している。しかし,北米プログ ラムで触れる文化,言語,宗教,社会体験は多様である。今回はその中でも特に学生の学びの過程を よく表しているコメントの代表例を取り上げている。これらのコメントはそういった様々な体験の中 で出てきたものである。

II.北米プログラムの概要

1. 訪問地

北米プログラムは,アメリカ,カナダの2 か国に渡り 3 つの地域をめぐる点でほかの海外演習プロ グラムとは少し異なる構成となっている。全日程が2 週間に満たない中でいくつもの地域をめぐるの は容易ではない。しかし2 か国をめぐることで,そしてアメリカ国内の 2 都市を巡ることによって, 国家レベルの違いや地域性について体験的に考えてもらえたらとの思いから訪問地が選択されてい る。例えば,第2 次大戦中や戦後において,日系人に対する政策はアメリカ,カナダではかなり異な る。また同じ西海岸の都市でも日系人コミュニティーの歴史や現状も違う。体験談や施設訪問を通じ てそのような相違点を感じることは,国が人々の生活に与える影響について考えを巡らす機会を与え てくれる。またアメリカでの都市間の違いを知ることによって,アメリカの地域性を体験し,研修で の体験を相対化し,より立体的で複雑なアメリカ社会の理解を促すよう3 都市を巡る構成となってい る。 3 都市の訪問の順序は,実施年度で異なる。先方の予定や,研修期間の曜日の組み合わせや航空券 等の値段等を考慮して各都市の訪問の日程を決定している。 表1. 2013 年度の日程

北米からみる「地域」と大学での学び

- 海外フィールド演習『グローバル時代における北米の多文化社会』の一考察–

中 朋美

・ケイツ・キップ

**

Student Reflection on Regional Studies and Higher Education in

North American Study Tours

NAKA Tomomi*, CATES Kip**

キーワード:スタディー・ツアー,異文化理解,アメリカ,カナダ Key Words: Study Tours, Intercultural Understanding, United Sates, Canada

I.はじめに

2013 年度から鳥取大学地域学部で正式に単位化された海外フィールド演習は,今年度で 3 年目を 迎える。現在,韓国,中国,ベトナム,インドネシア,北米といった様々な地域で海外フィールド演 習プログラムが実施されている。その内容も担当する教員の専門等を生かし多様で,参加希望の学生 はいくつものプログラムから選択することができる。ここではその中の一つである北米プログラムを 取り上げ,参加学生の学びの様子について考察する。 海外フィールド演習に限らず,大学での学びを地域の活動につなげる動きは以前にもあるが,高等 教育における学生の主体的な学びを重視するアクティブラーニング,地域での奉仕活動等をつうじて 知を深めるサービスラーニングを取り込む動きとも相まってますます重要なものとなっている。加え て近年では,日本の地域だけではなく,海外においても主体的な学びや体験が重視されてきている。 グローバルな環境で活躍できる人材育成を目指す文部科学省のグローバル人材育成推進事業などが そういった動きの代表的なもので,鳥取大学の海外フィールド演習もそういった流れと支援の上にプ ログラムが展開されている。またこの授業は,地域を地元といった国内だけではなく国外から多角的 に考える機会を提供する点で鳥取大学地域学部での特徴的なカリキュラムの一部となっている。 こうした教育面での動きは,研究の分野にも影響を及ぼしている。例えば文化人類学ではここ数年 の間に,応答の人類学,あるいは公共人類学といった比較的新しい名称を用いながら,人類学的な知 の公共的な役割や研究対象となっている人々やグループとの協働の実践と課題の検討がなされてい る。1 過去にも同じような動きがなかったわけではなく,また経済的,社会的な力関係の不均衡など 改善すべき問題もたくさんあるが,研究機関のための研究にとどまることのない,広い意味での貢献 の可能性の模索への関心が高くなっていることの表れともいえる。そんな中,地域学部の海外フィー ルド演習での学びの検討は,広く大学教育的において,そして研究面においても有益なデータと考察 を提供することができる可能性がある。 *鳥取大学地域学部地域文化学科 **鳥取大学地域学部地域文化学科 北米プログラムは,2012 年度に鳥取大学が文部科学省のグローバル人材育成推進事業に採択され

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中 朋美・ケイツ・キップ:北米からみる「地域」と大学での学び 199 地域学論集 第12 巻第 2 号(2015) たのを契機に2012 年度にパイロットプログラムとして実施され,2013 年度から本格的に海外フィー ルド演習の一つとして加わった。北米でのプログラム実施の理由には様々あるが,主な理由の一つに は,アメリカ,カナダには多様な文化的,社会的,言語的な背景を持つ人々やコミュニティーが数多 く存在し,地域や国家の複雑な関係を多角的に考察する場に事欠かないことがある。特に西海岸の都 市は日本を含めたアジア系移民も数多く,歴史的にも現在においてもアジアと深いつながりがある点 で日本やアジアを外から考えることができる。また,英語圏であるので,学生が現地の様々な文化的, 社会的背景の人々とのコミュニケーションを英語で直接とることが出来,国際語としての英語での フィールド体験を実践できる場である。こういったことから海外フィールド演習のプログラムの一つ が北米で行われている。2013 年度以降は,日系アメリカ,カナダ人の体験を中心にグローバル社会に おける北米の多文化社会 (Multicultural North America)というテーマで実施されている。

以下ではまず北米プログラムの概要を,訪問先,参加者,プログラムの構成を中心に紹介する。そ して学生のレポート,日誌,事前と事後の面談コメントなどを参考にしながら,学生の学びの様子を 考察していく。学生のコメントからは,彼らが多民族社会や文化的アイデンティティーについての理 解を深めるとともに,大学での学びについて振り返っている様子がうかがえる。中には研修後,自分 なりのテーマをさらに探求する学生や,今後の方向性の展望の見直しをするものもいた。北米プログ ラムでの学びが,研修期間といった短期間での学びにとどまらず,大学での学びを深める機会を提供 している様子について詳しく検討していく。後半の考察部分では,今回の論文のテーマや構成上の理 由から特に日系アメリカ・カナダ人関連に関するコメントを多く引用している。しかし,北米プログ ラムで触れる文化,言語,宗教,社会体験は多様である。今回はその中でも特に学生の学びの過程を よく表しているコメントの代表例を取り上げている。これらのコメントはそういった様々な体験の中 で出てきたものである。

II.北米プログラムの概要

1. 訪問地

北米プログラムは,アメリカ,カナダの2 か国に渡り 3 つの地域をめぐる点でほかの海外演習プロ グラムとは少し異なる構成となっている。全日程が2 週間に満たない中でいくつもの地域をめぐるの は容易ではない。しかし2 か国をめぐることで,そしてアメリカ国内の 2 都市を巡ることによって, 国家レベルの違いや地域性について体験的に考えてもらえたらとの思いから訪問地が選択されてい る。例えば,第2 次大戦中や戦後において,日系人に対する政策はアメリカ,カナダではかなり異な る。また同じ西海岸の都市でも日系人コミュニティーの歴史や現状も違う。体験談や施設訪問を通じ てそのような相違点を感じることは,国が人々の生活に与える影響について考えを巡らす機会を与え てくれる。またアメリカでの都市間の違いを知ることによって,アメリカの地域性を体験し,研修で の体験を相対化し,より立体的で複雑なアメリカ社会の理解を促すよう3 都市を巡る構成となってい る。 3 都市の訪問の順序は,実施年度で異なる。先方の予定や,研修期間の曜日の組み合わせや航空券 等の値段等を考慮して各都市の訪問の日程を決定している。 表1. 2013 年度の日程 中 朋美・ケイツ・キップ:北米からみる「地域」と大学での学び 2013 年 11 月 参加者募集(25 日締め切り) 12 月 航空券,宿泊先手配, 先方との打ち合わせ, 事前学習会(2 月まで 6 回開催) 出発前個人面談 2014 年 2 月 27 日 関西空港出発,サンフランシスコ経由でサクラメントに到着 2 月 28 日 University of California at Davis 訪問

3 月 1 日 Davis の町を散策後アムトラック(電車)でサンフランシスコに移動 3 月 2 日 Glide Memorial Church 訪問,市内散策

鳥取県人会の小橋さんと会談

3 月 3 日 サンフランシスコ,ジャパンタウン,JCCCNC 等訪問 3 月 4 日 チャイナタウンなどを訪問

3 月 5 日 University of San Francisco 訪問

カストロ,ヘイトアッシュベリーを訪問 3 月 6 日 飛行機でバンクーバーへ移動

3 月 7 日 University of British Columbia 訪問 3 月 8 日 Nikkei Museum and Cultural Center 訪問

3 月 9 日 チャイナタウン,ジャパンタウン,ガスタウンを訪問 3 月 10 日 日本に向けて出発,サンフランシスコで乗り換え 3 月 11 日 関西空港に到着 3 月 20 日 JASSO 報告後,帰国後のレポート提出 4 月 研修後の個人面談,単位認定 表2. 2014 年度の日程 2014 年 10 月 参加者募集(11 月 10 日締め切り) 11 月 航空券,宿泊先手配 先方との打ち合わせ 事前学習会(2 月まで 5 回開催) 出発前個人面談 2015 年 2 月 27 日 関西空港出発,サンフランシスコ到着 2 月 28 日 サンフランシスコ,チャイナタウン,リトルイタリーを訪問 鳥取県人会の小橋さんと会談

3 月 1 日 Glide Memorial Church 訪問,市内散策

3 月 2 日 サンフランシスコ,ジャパンタウン,JCCCNC 等訪問,日系人の方との会

3 月 3 日 University of San Francisco 訪問

カストロ,ヘイトアッシュベリーを訪問 3 月 4 日 アムトラックでDavis に移動

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地 域 学 論 集  第 12 巻  第 2 号(2015)

200 地域学論集 第12 巻第 2 号(2015)

3 月 6 日 飛行機でバンクーバーへ移動

3 月 7 日 Nikkei Museum and Cultural Center 訪問(日系人の方との会談) 3 月 8 日 チャイナタウン,ジャパンタウン,ガスタウンを訪問

3 月 9 日 University of British Columbia を訪問

3 月 10 日 日本に向けて出発,サンフランシスコで乗り換え 3 月 11 日 関西空港に到着 3 月 20 日 JASSO 報告後,帰国後のレポート提出 4 月 研修後の個人面談,単位認定

A. デービス

デービスは鳥取大学の学術交流協定校のカリフォルニア大学デービス校がある町である。カリフォ ルニアの州都サクラメントに近く,アメリカの国勢調査によると,市の大きさはおよそ 27 平方キロ メートル,人口は 2010 年の資料ではでは 65,622 人で,その 2 割ほどがアジア系である。2 サクラ メントから西に 11 マイル,サンフランシスコから北東に 72 マイルの位置にある町である。3 サンフ ランシスコやロサンジェルスとは異なり,比較的落ち着いた大学町である。車が主要な交通手段であ るアメリカの中でも自転車のまちともいわれるほど自転車をよく見かける。デービス校はカリフォル ニア大学のシステム一つの大学で,およそ 35,000 人の学生が在籍している。4 キャンパスも広いが, 後で述べるブリティッシュコロンビア大学に比べると全体的に小さい。

デービス校では,

Department of Asian American Studies,Japanese Program (Department of East

Asian Languages and Cultures),English Program (UC Davis Extension)

の 3 プログラムを訪問し

ている。

Asian American Studie

s 学部では

Wendy Ho

先生に学部の概要について説明していただい

ている。研修前の段階では,人種やエスニシティーについてなかなかうまく理解できていない学生が 多いが,

Ho

先生は例を挙げてわかりやすくご説明してくださっている。日系人の歴史等を研修で学 ぶなかで,

Ho

先生のお話は見聞きした話と理論的な枠組みとの橋渡し的な役割を果たすことが多い。

Japanese Program

では榊原先生のお話をお聞きするとともに,日本語を学ぶ学生との交流を行っ ている。榊原先生は日本生まれであるが,日系のアメリカ人の男性と結婚され長年にわたりデービス 校で日本語を教えておられる。日本語をアメリカで教えるということとともにアメリカに暮らす日本 人としての経験,広い意味での国をこえての日本人としての在り方についての考察など,多方面にわ たるお話をされる。非常に印象に残った話としてコメントする学生は毎年多い。

English Program (UC Davis Extension)

では

Paula Khodaverdi 先生,Mary Crumbley

先生などか ら外国語として英語を学ぶプログラムについて話を伺っている。授業構成だけではなく,外国から やってきた学生がデービス校で生活する際に重要な心構えや注意点の説明が丁寧になされる。英語で の説明に慣れていない学生にとってもわかりやすい英語表現で,はっきりと話してくださるので, デービスの生活の概要を掴み取りやすい。

このほかにも,過去 2 年は

Viticulture and Enology

を学ぶ

Grant Wilson

さんによる施設紹介して もらった。またデービスの町の博物館を散策したり,ファーマーズマーケット訪問したりと時間が許 せばデービスの町の散策も組み入れている。

B. サンフランシスコ

(5)

中 朋美・ケイツ・キップ:北米からみる「地域」と大学での学び 201 中 朋美・ケイツ・キップ:北米からみる「地域」と大学での学び スコ市はおよそ120 平方キロメートル,2010 年のデータでは人口は 805,235 人である。公共交通機 関も比較的よく発達しており,バス,地下鉄等を使えば様々な施設を訪れることが出来る。学生は教 員のサポートのもと公共交通手段を事前に調べ,訪問先への経路の計画を立てる練習をする。

ここでの訪問地は,ジャパンタウン,

Japanese Cultural and Community Center of Northern

California

(以後

JCCCNC

),ゲイ,レズビアンといったセクシャルマイノリティーの運動の中心地

であったカストロ地区,ヒッピー文化で有名なヘイトアッシュベリー地区,イエズス会系私立大学で ある

University of San Francisco

を数日間かけて訪問する。

JCCCNC と

サンフランシスコのジャパンタウンはダウンタウンの中心からバスで 30 分ほどのと

ころにある。サンフランシスコのジャパンタウンは紀伊国屋や日本料理店が入ったショッピングセン ターなどがあるが,現在実際に住んでいる日系アメリカ人はそれほど多くない。しかし歴史的に重要 な日本町の一つで,

JCCCNC

は様々なイベントや教室を地域に提供しており,日系2 世をはじめ多 くの方々が職員やあるいはボランティアとして運営に参加している。ここではプログラムディレク ターの

Matt Okada

さん(2012 年度は

Ryan Kimura

さん)を中心に2 世,3 世,4 世,そして戦後ア メリカに移住した日系の方の体験を聞き,学んでいる。セミナー形式の場合もあれば,小グループに 分かれディスカッション形式でお話を伺う。

University of San Francisco

では学生によるキャンパスツアーで大学全体の紹介を受けるととも

に,

Stephanie Vandrick

先生の協力をえて,

Department of English, Center for Asia Pacific Studies,

Critical Diversity Studies

の様子を教員の方々から伺っている。デービス校との相違点を知ることと

ができるとともに,各大学の学びの特徴を知る機会となっている。特にCritical Diversity Studies は新 しいプログラムで,エスニックスタディーといった従来の学問の枠組みをとらえなおそうという設立 の背景についてお話を聞くことが出来る。

また,サンノセの鳥取県人会で活躍されている小橋夫妻との会談もサンフランシスコで行っている。 小橋陽子さんは鳥取中部のご出身で,夫の司さんのお仕事の関係でサンノセに移られ、暮らしておら れる。サンノセで鳥取県人会の方々と知り合い,現在ではご夫婦ともに日系アメリカ人についての博 物館である

Japanese American Museum of San Jose

や県人会のイベント等に参加されている。日程 の関係で2012,2013 年度ともにサンノセに訪問できなかったため,サンフランシスコでご夫妻にお 会いし,その様子をうかがっている。今後は現地訪問し,鳥取県人会の2 世,3 世の方のお話をお聞 きしたいと考えている。 このほかにも多文化社会の一面を知ることのできる施設をできる限り訪問している。カストロ地区 ではゲイライツの運動家ハーヴィー・ミルクの元事務所や

GLBT History Museum

の展示を見学し たり,そこの職員の方から説明を受けたり,サンフランシスコでエイズや人種,セクシュアルオリエ ンテーション,経済的等を理由に社会から疎外感を感じている人々に長年にわたって積極的にかか わってきた

Glide Memorial Church

を訪問し,コンテンポラリーでエネルギッシュな礼拝にも参加 している。学生の企画,提案によって

Contemporary Jewish Museum

やチャイナタウンと

Chinese

Historical Society of America

,スペインの影響が残るミッション地区等も訪問している。

C. バンクーバー

2012 年度からはカナダのバンクーバーを訪問している。サンフランシスコと同様大都市で,市の面 積はおよそ115 平方キロメートル,人口は 2011 年の統計では 603,502 人である。町中で耳にする ことが出来る言語が数多くあり,多文化の町の様子をうかがうことが出来る。バンクーバーは日系人 の歴史を知るうえでも重要で,アメリカとカナダの違いを知ることで国,地域と多文化社会との考察 メリカに移住した日系の方の体験を聞き,学んでいる。セミナー形式や,小グループに分かれディ スカッション形式でお話を伺う。 ころにある。サンフランシスコのジャパンタウンには紀伊国屋や日本料理店が入ったショッピングセン

ができるとともに,各大学の学びの特徴を知る機会となっている。特に

Critical Diversity Studies

は 新しいプログラムで,エスニックスタディーといった従来の学問の枠組みをとらえなおそうという 設立の背景についてお話を聞くことが出来る。

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地 域 学 論 集  第 12 巻  第 2 号(2015)

202 地域学論集 第12 巻第 2 号(2015)

に深みを与えることが出来ればとの思いで訪問している。

バンクーバーの中心地から少し離れた郊外の町にある

Nikkei Museum and Cultural Center

(以下

Nikkei Center

)では日系人の様子をうかがう展示や体験談,現地の日本語学校を見学する。センター のスタッフとともに事前にプログラムを準備し,訪問している。バンクーバーでの1 世の人々の背景 とともに,2 世の方からは強制収容所の体験談をお聞きするのが中心である。過去 2 年は,偶然にも アニメのコスプレイベントが同センター内で開催されており,海外でのアニメを通じた日本文化への 興味を少しではあるが感じることができた。 ダウンタウンの近くには旧日本人街がある。戦後日系人の多くはここに戻らなかったため,さびれ た感じがするが,映画『バンクーバーの朝日』が活躍した場所である。過去2 年は,近隣の浄土真宗 の寺院 Vancouver Buddhist Temple を訪問し,青木龍也開教使のお話とともに,寺で開催されているス プリングフェスティバルを訪問している。お寺の門徒の方々には日系の人々が多く,フェスティバル ではうどん,から揚げ,お饅頭といった日本食を味わうことが出来る。2012 年度,13 年度は鳥取大 学から来たということで,お忙しい中,和歌山出身の日系2 世の

Mizuta ご

夫妻の体験をうかがうこ とができた。

University of British Columbia

もバンクーバーでの重要な訪問先の一つである。学生にキャンパ

スツアーで,学生生活や大学の様子を知るとともに,Museum of Anthropology や

Longhouse

の訪問を 通じて,カナダにおける先住民の歴史や現状を少しではあるが学ぶ。また,新渡戸稲造にちなんだ

Nitobe Memorial Garden

などアジアとカナダのつながりが垣間見ることができるキャンパス内の建

物等も見学する。

2. 参加者

アジア諸国と比べ,アメリカ,カナダへの航空券は高く,物価も高い。できるだけ費用を抑えるた め,例年10 月,11 月頃を目途にすべての手配を教員が行っている。参加人数は過去 3 年では 6 から 8 名で,

JASSO

の奨学金枠の制限とともに教員2 名が対応できる人数となっている。 正式に単位化されてからの学生の内訳は,2013 年度が 8 名(文化学科 7 名,教育学科 1 名,うち 2 名が1 年生),2014 年度は正規学生が 6 名(文化学科 3 名,教育学科 3 名,いずれも 2 年生),中国か らの短期留学生が2 名参加した。 比較すると,2014 年度は海外渡航歴がある学生が増えている。このうち 2 名は,2 年次の文化学 科の地域調査実習での台湾訪問が初の海外経験としている。地域学部を含めグローバル人材関連事 業での海外渡航の機会が広がっており,今後もこの傾向は続くと思われる。ただ,アメリカ,カナ ダやヨーロッパ諸国の訪問経験のある学生はなく,研修先をこれらの地域で行うのは,アジア以外 の諸外国への知識や視野を広げることにつながると考えられる。 表3 2013 年度参加者の所属学部と性別 所属学科 男性(人) 女性(人) 地域文化学科 2* 5 地域教育学科 1 0 *いずれも一年生,他はすべて 2 年生 表4 2014 年度参加者の所属学部と性別 所属学科 男性 女性 (人) (人) 地域文化学科 0 3 地域教育学科 1 2 その他(短期留学 生) 0 2** **いずれも中国からの留学生,参加者はすべて 2 年生 地域学論集 第12 巻第 2 号(2015) の考察に深みを与えることが出来ればとの思いで訪問している。

バンクーバーの中心地から少し離れた郊外の町にある

Nikkei Museum and Cultural Center

(以下

Nikkei Center

)では日系人の様子をうかがう展示や体験談,現地の日本語学校を見学する。センター のスタッフとともに事前にプログラムを準備し,訪問している。バンクーバーでの1 世の人々の背 景とともに,2 世の方からは強制収容所の体験談をお聞きするのが中心である。過去 2 年は,偶然 にもアニメのコスプレイベントが同センター内で開催されており,海外でのアニメを通じた日本文 化への興味を少しではあるが感じることができた。 ダウンタウンの近くには旧日本人街がある。戦後日系人の多くはここに戻らなかったため,さび れた感じがするが,映画『バンクーバーの朝日』が活躍した場所である。過去2 年は,近隣の浄土 真宗の寺院Vancouver Buddhist Temple を訪問し,青木龍也開教使のお話とともに,寺で開催されて いるスプリングフェスティバルを訪問している。お寺の門徒の方々には日系の人々が多く,フェス ティバルではうどん,から揚げ,お饅頭といった日本食を味わうことが出来る。2012 年度,13 年度 は鳥取大学から来たということで,お忙しい中,和歌山出身の日系2 世の

Mizuta ご

夫妻の体験を うかがうことができた。

University of British Columbia

もバンクーバーでの重要な訪問先の一つである。学生にキャンパ

スツアーで,学生生活や大学の様子を知るとともに,Museum of Anthropology や

Longhouse

の訪問 を通じて,カナダにおける先住民の歴史や現状を少しではあるが学ぶ。また,新渡戸稲造にちなん

Nitobe Memorial Garden

などアジアとカナダのつながりが垣間見ることができるキャンパス内

の建物等も見学する。

2. 参加者

アジア諸国と比べ,アメリカ,カナダへの航空券は高く,物価も高い。できるだけ費用を抑える ため,例年10 月,11 月頃を目途にすべての手配を教員が行っている。参加人数は過去 3 年では 6 から8 名で,

JASSO

の奨学金枠の制限とともに教員2 名が対応できる人数となっている。 正式に単位化されてからの学生の内訳は,2013 年度が 8 名(文化学科 7 名,教育学科 1 名,うち 2 名が 1 年生),2014 年度は正規学生が 6 名(文化学科 3 名,教育学科 3 名,いずれも 2 年生),中 国からの短期留学生が2 名参加した。 比較すると,2014 年度は海外渡航歴がある学生が増えている。このうち 2 名は,2 年次の文化学 科の地域調査実習での台湾訪問が初の海外経験としている。地域学部を含めグローバル人材関連事 業での海外渡航の機会が広がっており,今後もこの傾向は続くと思われる。ただ,アメリカ,カナ ダやヨーロッパ諸国の訪問経験のある学生はなく,研修先をこれらの地域で行うのは,アジア以外 の諸外国への知識や視野を広げることにつながると考えられる。 表3 2013 年度参加者の所属学部と性別 所属学科 男性(人) 女性(人) 地域文化学科 2* 5 地域教育学科 1 0 *いずれも一年生,他はすべて 2 年生 表4 2014 年度参加者の所属学部と性別 所属学科 男性(人) 女性(人) 地域文化学科 0 3 地域教育学科 1 2 その他(短期留学生) 0 2** **いずれも中国からの留学生,参加者はすべて 2 年生 地域学論集 第12 巻第 2 号(2015) に深みを与えることが出来ればとの思いで訪問している。

バンクーバーの中心地から少し離れた郊外の町にある

Nikkei Museum and Cultural Center

(以下

Nikkei Center

)では日系人の様子をうかがう展示や体験談,現地の日本語学校を見学する。センター のスタッフとともに事前にプログラムを準備し,訪問している。バンクーバーでの1 世の人々の背景 とともに,2 世の方からは強制収容所の体験談をお聞きするのが中心である。過去 2 年は,偶然にも アニメのコスプレイベントが同センター内で開催されており,海外でのアニメを通じた日本文化への 興味を少しではあるが感じることができた。 ダウンタウンの近くには旧日本人街がある。戦後日系人の多くはここに戻らなかったため,さびれ た感じがするが,映画『バンクーバーの朝日』が活躍した場所である。過去2 年は,近隣の浄土真宗 の寺院 Vancouver Buddhist Temple を訪問し,青木龍也開教使のお話とともに,寺で開催されているス プリングフェスティバルを訪問している。お寺の門徒の方々には日系の人々が多く,フェスティバル ではうどん,から揚げ,お饅頭といった日本食を味わうことが出来る。2012 年度,13 年度は鳥取大 学から来たということで,お忙しい中,和歌山出身の日系2 世の

Mizuta ご

夫妻の体験をうかがうこ とができた。

University of British Columbia

もバンクーバーでの重要な訪問先の一つである。学生にキャンパ

スツアーで,学生生活や大学の様子を知るとともに,Museum of Anthropology や

Longhouse

の訪問を 通じて,カナダにおける先住民の歴史や現状を少しではあるが学ぶ。また,新渡戸稲造にちなんだ

Nitobe Memorial Garden

などアジアとカナダのつながりが垣間見ることができるキャンパス内の建

物等も見学する。

2. 参加者

アジア諸国と比べ,アメリカ,カナダへの航空券は高く,物価も高い。できるだけ費用を抑えるた め,例年10 月,11 月頃を目途にすべての手配を教員が行っている。参加人数は過去 3 年では 6 から 8 名で,

JASSO

の奨学金枠の制限とともに教員2 名が対応できる人数となっている。 正式に単位化されてからの学生の内訳は,2013 年度が 8 名(文化学科 7 名,教育学科 1 名,うち 2 名が1 年生),2014 年度は正規学生が 6 名(文化学科 3 名,教育学科 3 名,いずれも 2 年生),中国か らの短期留学生が2 名参加した。 比較すると,2014 年度は海外渡航歴がある学生が増えている。このうち 2 名は,2 年次の文化学 科の地域調査実習での台湾訪問が初の海外経験としている。地域学部を含めグローバル人材関連事 業での海外渡航の機会が広がっており,今後もこの傾向は続くと思われる。ただ,アメリカ,カナ ダやヨーロッパ諸国の訪問経験のある学生はなく,研修先をこれらの地域で行うのは,アジア以外 の諸外国への知識や視野を広げることにつながると考えられる。 表3 2013 年度参加者の所属学部と性別 所属学科 男性(人) 女性(人) 地域文化学科 2* 5 地域教育学科 1 0 *いずれも一年生,他はすべて 2 年生 表4 2014 年度参加者の所属学部と性別 所属学科 男性 女性 (人) (人) 地域文化学科 0 3 地域教育学科 1 2 その他(短期留学 生) 0 2** **いずれも中国からの留学生,参加者はすべて 2 年生 地域学論集 第12 巻第 2 号(2015) の考察に深みを与えることが出来ればとの思いで訪問している。

バンクーバーの中心地から少し離れた郊外の町にある

Nikkei Museum and Cultural Center

(以下

Nikkei Center

)では日系人の様子をうかがう展示や体験談,現地の日本語学校を見学する。センター のスタッフとともに事前にプログラムを準備し,訪問している。バンクーバーでの1 世の人々の背 景とともに,2 世の方からは強制収容所の体験談をお聞きするのが中心である。過去 2 年は,偶然 にもアニメのコスプレイベントが同センター内で開催されており,海外でのアニメを通じた日本文 化への興味を少しではあるが感じることができた。 ダウンタウンの近くには旧日本人街がある。戦後日系人の多くはここに戻らなかったため,さび れた感じがするが,映画『バンクーバーの朝日』が活躍した場所である。過去2 年は,近隣の浄土 真宗の寺院Vancouver Buddhist Temple を訪問し,青木龍也開教使のお話とともに,寺で開催されて いるスプリングフェスティバルを訪問している。お寺の門徒の方々には日系の人々が多く,フェス ティバルではうどん,から揚げ,お饅頭といった日本食を味わうことが出来る。2012 年度,13 年度 は鳥取大学から来たということで,お忙しい中,和歌山出身の日系2 世の

Mizuta ご

夫妻の体験を うかがうことができた。

University of British Columbia

もバンクーバーでの重要な訪問先の一つである。学生にキャンパ

スツアーで,学生生活や大学の様子を知るとともに,Museum of Anthropology や

Longhouse

の訪問 を通じて,カナダにおける先住民の歴史や現状を少しではあるが学ぶ。また,新渡戸稲造にちなん

Nitobe Memorial Garden

などアジアとカナダのつながりが垣間見ることができるキャンパス内

の建物等も見学する。

2. 参加者

アジア諸国と比べ,アメリカ,カナダへの航空券は高く,物価も高い。できるだけ費用を抑える ため,例年10 月,11 月頃を目途にすべての手配を教員が行っている。参加人数は過去 3 年では 6 から8 名で,

JASSO

の奨学金枠の制限とともに教員2 名が対応できる人数となっている。 正式に単位化されてからの学生の内訳は,2013 年度が 8 名(文化学科 7 名,教育学科 1 名,うち 2 名が 1 年生),2014 年度は正規学生が 6 名(文化学科 3 名,教育学科 3 名,いずれも 2 年生),中 国からの短期留学生が2 名参加した。 比較すると,2014 年度は海外渡航歴がある学生が増えている。このうち 2 名は,2 年次の文化学 科の地域調査実習での台湾訪問が初の海外経験としている。地域学部を含めグローバル人材関連事 業での海外渡航の機会が広がっており,今後もこの傾向は続くと思われる。ただ,アメリカ,カナ ダやヨーロッパ諸国の訪問経験のある学生はなく,研修先をこれらの地域で行うのは,アジア以外 の諸外国への知識や視野を広げることにつながると考えられる。 表3 2013 年度参加者の所属学部と性別 所属学科 男性(人) 女性(人) 地域文化学科 2* 5 地域教育学科 1 0 *いずれも一年生,他はすべて 2 年生 表4 2014 年度参加者の所属学部と性別 所属学科 男性(人) 女性(人) 地域文化学科 0 3 地域教育学科 1 2 その他(短期留学生) 0 2** **いずれも中国からの留学生,参加者はすべて 2 年生 地域学論集 第12 巻第 2 号(2015) に深みを与えることが出来ればとの思いで訪問している。

バンクーバーの中心地から少し離れた郊外の町にある

Nikkei Museum and Cultural Center

(以下

Nikkei Center

)では日系人の様子をうかがう展示や体験談,現地の日本語学校を見学する。センター のスタッフとともに事前にプログラムを準備し,訪問している。バンクーバーでの1 世の人々の背景 とともに,2 世の方からは強制収容所の体験談をお聞きするのが中心である。過去 2 年は,偶然にも アニメのコスプレイベントが同センター内で開催されており,海外でのアニメを通じた日本文化への 興味を少しではあるが感じることができた。 ダウンタウンの近くには旧日本人街がある。戦後日系人の多くはここに戻らなかったため,さびれ た感じがするが,映画『バンクーバーの朝日』が活躍した場所である。過去2 年は,近隣の浄土真宗 の寺院 Vancouver Buddhist Temple を訪問し,青木龍也開教使のお話とともに,寺で開催されているス プリングフェスティバルを訪問している。お寺の門徒の方々には日系の人々が多く,フェスティバル ではうどん,から揚げ,お饅頭といった日本食を味わうことが出来る。2012 年度,13 年度は鳥取大 学から来たということで,お忙しい中,和歌山出身の日系2 世の

Mizuta ご

夫妻の体験をうかがうこ とができた。

University of British Columbia

もバンクーバーでの重要な訪問先の一つである。学生にキャンパ

スツアーで,学生生活や大学の様子を知るとともに,Museum of Anthropology や

Longhouse

の訪問を 通じて,カナダにおける先住民の歴史や現状を少しではあるが学ぶ。また,新渡戸稲造にちなんだ

Nitobe Memorial Garden

などアジアとカナダのつながりが垣間見ることができるキャンパス内の建

物等も見学する。

2. 参加者

アジア諸国と比べ,アメリカ,カナダへの航空券は高く,物価も高い。できるだけ費用を抑えるた め,例年10 月,11 月頃を目途にすべての手配を教員が行っている。参加人数は過去 3 年では 6 から 8 名で,

JASSO

の奨学金枠の制限とともに教員2 名が対応できる人数となっている。 正式に単位化されてからの学生の内訳は,2013 年度が 8 名(文化学科 7 名,教育学科 1 名,うち 2 名が1 年生),2014 年度は正規学生が 6 名(文化学科 3 名,教育学科 3 名,いずれも 2 年生),中国か らの短期留学生が2 名参加した。 比較すると,2014 年度は海外渡航歴がある学生が増えている。このうち 2 名は,2 年次の文化学 科の地域調査実習での台湾訪問が初の海外経験としている。地域学部を含めグローバル人材関連事 業での海外渡航の機会が広がっており,今後もこの傾向は続くと思われる。ただ,アメリカ,カナ ダやヨーロッパ諸国の訪問経験のある学生はなく,研修先をこれらの地域で行うのは,アジア以外 の諸外国への知識や視野を広げることにつながると考えられる。 表3 2013 年度参加者の所属学部と性別 所属学科 男性(人) 女性(人) 地域文化学科 2* 5 地域教育学科 1 0 *いずれも一年生,他はすべて 2 年生 表4 2014 年度参加者の所属学部と性別 所属学科 男性 女性 (人) (人) 地域文化学科 0 3 地域教育学科 1 2 その他(短期留学 生) 0 2** **いずれも中国からの留学生,参加者はすべて 2 年生

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中 朋美・ケイツ・キップ:北米からみる「地域」と大学での学び 203 表5 海外渡航経験 研修前の海外渡航回数 2013 年度(人) 2014 年度(人) 0 4 1 1 2 5 2 回以上 2 2 研修前の渡航先は韓国,台湾,中国,フィリピンなど。アメリカ,カナダへの渡航経験があったものはいなかっ た。

3.プログラムの構成

初めての地を訪問する学生にとって,教員が引率し,ある程度行程を組んでいる研修は,安心感を 与える。しかしそのため受け身的に知識を吸収するだけの旅になりかねない。フィールド演習として 積極的な学びにつながればとの思いから,北米プログラムでは以下の4 つの活動を組み込み,研修期 間での学びをより充実を図っている。

A. 事前学習

参加者の多くは,北米社会や文化に対する知識はある程度あるものの,それについての詳しい知識, 特にアメリカ,カナダの多文化に対する政策や日系人の歴史はあまり知らない。事前の学習すること によって,現地の方とより踏み込んだ会談ができるように事前学習を行っている。2013 年度はアメリ カ,カナダについての一般的な社会の様子や訪問先の地理的な情報を事前に調べるよう勉強会を開い た。2014 年度は,文献に加え,日系人の歴史を取り扱ったビデオを用いた。現地では普段聞くことが 少ない専門用語などもでてくるが,事前学習の結果,程度推測ができ,理解がしやすくなればとの思 いから実施している。学科や学年の違いで,都合のつく日程を見つけることが困難だが,昼休みや年 末の休み等を利用して勉強会を開いている。また研修前に,北米研修に関連する本を一冊読み,その 概要と感想についてレポート提出を求めている。2013,14 年度とも学生の多くは文化学科の 2 年生 後期授業「アメリカ文化史」を履修していることが多く,彼らは授業の内容等を踏まえてほかの参加 者に適宜,背景知識を提供してくれている。

B. 担当班制度

北米プログラムでは,学生が小グループに分かれ,訪問する3 つの都市のいずれかの担当となって, その都市での散策や食事等の計画を立ててもらっている。参加者の内訳からもうかがえるように,海 外経験のある学生は限られており,アメリカ,カナダに行ったことがない学生が参加している。これ らの学生が,教員による準備とサポート体制のもと,資料をもとに慣れない現地での計画を立て,自 主的に行動する練習としてこの制度を組み込んでいる。 例えばサンフランシスコでは,現地の一定期間バス乗り放題のチケットの購入場所の検索,バスの ルートの確認,散策時間の訪問先や食事場所の決定をしなければならない。そういった現地でのこま ごまとした決断を担当者は,他の学生の意見をまとめながらまとめていく。学生からのコメントでは この担当制は好評で,知らない土地であっても助けを借りながら行動することができたとの自信につ ながっているようである。研修後,北米以外にも機会があれば旅行等したいという声も多く,また国 外を含めた広い地域での活動も視野に入れることができるようになったと語る学生もいる。

C. 研修中の振り返り

新しい土地でいろいろな人々との出会いで感じたこと,思ったことを記録にとどめることができる 少ない専門用語などもでてくるが,事前学習の結果,ある程度推測ができ,理解がしやすくなればとの 思いから実施している。学科や学年の違いで,都合のつく日程を見つけることが困難だが,昼休みや年

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地 域 学 論 集  第 12 巻  第 2 号(2015) 204 地域学論集 第12 巻第 2 号(2015) ように,研修中には様々な形で振り返りの時間を組み込んでいる。その一つは日誌で,期間中,どの ようなことに興味を持ったのか,疑問に思ったのか,その理由等に対する質問に答える形式で,一日 1 ページにまとめて記入してもらっている。時差ボケもあり,朝から晩まで様々な行事がある中で, 毎日ページを埋めるのは大変であるが,研修での体験を記録する一つの手助けとなっている。研修終 了後に一度提出してもらい,その後コピーを取って各学生に日誌を返却している。教員にとっては, 各学生の日々の体験をうかがう手がかりになっている。日々体調管理に気を付けている様子や,なじ みのない食べ物についての感想,各部屋での休憩時の過ごし方などを知ることができた。 このほかに2014 年度は主な行事の後,区切りのよい時間に皆で集まり,それぞれ感じたこと,学 んだことについてコメントを出し合う時間を取った。学生の了解のもとボイスレコーダーを回し,そ れぞれ発言する形式をとることで,学生のその場での感想を記録した。最初こそ少し躊躇する学生も いたが,徐々になれ,相手のコメントをしっかり聞くといった場にもなった。またその際に学生の理 解が不十分だった点や関連事項の補足説明なども加えることができた。

D. 研修での課題

研修後,学生の多くは帰省したり,バイトに励んだりと連絡が取りにくくなってしまいがちである。 少しでも研修での体験を総括してもらおうと,研修での体験についてのエッセイを提出してもらって いる。2013 年度はこの他に自分なりの小リサーチペーパーも課していたが,忙しさのあまり提出が遅 れるケースがよく見られたため,2014 年度には振り返りのエッセイのみに絞った。この他,個別に研 修を振り返っての感想や課題等について語ってもらう個別面談を 4 月のできるだけ早い段階でおこ なっている。学生が研修後の様子や,今後の研修先やスケジュール,課題の変更等を考えるための参 考にしている。

III.研修での学び

II で見たように参加者の学科所属,海外経験,英語のレベル,学問的な関心やキャリアプランは様々 で,彼らの学びを一つの水準ではかることは難しい。しかし学生の多くは,研修を契機に多文化社会 や,アメリカやカナダと比較しての日本社会について,そして大学生としての自分自身についての考 えをめぐらしている。さらに北米プログラムでは日系の人の体験談のように同じ出来事を違う角度か ら何回か体験することが多い。そういった類似の,そして繰り返し出会う体験を通じて,自分なりの 考えを振り返り,時には修正していった様子がうかがえる。7 ここでは学生のコメントから主だったテーマとして浮かび上がった以下の3 つの点, 1. 文化的アイ デンティティーやエスニシティー等についての学問的理解の深化,2. 大学での学びについての振り 返り,3. 自分と周りとの関係性の捉えなおしについて考察する。これらは相互に関連しており,学生 のコメントは必ずしも順に出てくるものでもない。しかし,学問的な理解が,現在の状況を振り返り, それに対する何らかの再認識を促しているプロセスがうかがえる。資料として参考に用いたのは,研 修前後の個別面談,日誌,研修中の振り返りコメントである。なお,学生には調査についての事前の 承諾を得ているが,個人が特定されて不利益が生じないよう,名前,性別,学科についての情報は省 略している。

1. 学問的理解の深化

北米プログラムは日系人の体験を中心に,アメリカ,カナダにおける多文化社会をテーマとして構 成されている。多くの学生は研修参加前にも,アメリカ,カナダにはたくさんの文化的,民族的背景 を持つ人がいることをある程度知っている。と同時に日本語の使用や食べ物や慣習が当たり前でない

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中 朋美・ケイツ・キップ:北米からみる「地域」と大学での学び 205 中 朋美・ケイツ・キップ:北米からみる「地域」と大学での学び 状況を北米で体験してみたいと思って参加したと語る学生を毎年しばしば見かける。多文化だとは思 いつつ,自分たちがアメリカ,カナダではマジョリティーではない状態を体験し, 自分がどれだけ やっていけるのか試したいという気持ちが参加の理由の一つにある。 ただ,実際にアメリカ,カナダがどのようにして異なる文化背景を持ってきた人を受け入れてきた のかといった歴史や現在の状況となるとなかなか想像力が及ばないことが多い。事前の勉強会では日 系アメリカ人を例に移民の歴史について文献を読んでいるが,ほとんどすべての学生が初めて知る内 容だと答える。また文献で読んだといってもなかなか生きた知識として応用できるほどの理解まで進 んでいないことが多い。学生にとって研修での体験は,紙の上での歴史や状況を身近なものとして感 じさせるきっかけとなるようである。 例えば第2 次世界大戦前後での様子を日系人の方から聞いて,ある学生は以下のように述べた。 バンクーバーの朝日を日本ですでに見ていて,だいたいこんな感じだったよというのはイ メージできていたんですけど…やっぱり現地で日系のカナダ人の方にいろいろ話を聞い て,なんかリアルなところまで聞いてしまって…家畜のいるところに住んだり,大変だっ たんだなと思いながら昨日は見ていました。 本や映像では知っていたが,日本人だからという理由で特別扱いされた実際の経験はほとんどない。 そういった学生にとって,自分ではどうすることもできない文化的,民族的背景での苦労話は,身に 迫るお話だったようである。 別の学生は,戦中,戦後,日本とカナダを行き来しながらどちらの社会にもなかなかなじまず,借 家や仕事探し等で苦労したお話をきいた日の振り返りとして,「(英語を長年習ってきたが,小グルー プに分かれて日系の方とのディスカッションの中で)struggle という単語を聞いたときに, ものすご く突き刺さるように聞こえて。すごく衝撃的でした。」と述べている。単なる知識としての表面上の 認識から,もう少し自己に近づけて日系の方の歴史や体験を考えるようになっている様子がうかがえ るコメントである。 今でこそ日本人の姿をよく見かけ,またバンクーバーでは日本語で対応が可能な施設も多い。異文 化を体験し,日本ではない体験を味わいたいという期待を持ってきた学生にとっては,そのことに驚 く学生も多い。だが,そういった状態が決して初めからあったわけではないということを,日系人の 方のお話などを通じて理解することができたとの発言が多い。 と同時に,同じ日系人といっても,世代や国,周りの環境によってその体験の捉え方が異なるとい うことの気づきをもった学生もいる。研修では,カナダ,アメリカ両国の様々な年代の日系人のお話 を聞くことが出来るように工夫している。そのことで日系人だからとひとくくりに捉えてしまうのは 不適切であることへの認識につながっているようである。例えば,カナダでお話を聞いた女性は,第 2 次世界大戦中の強制収容所生活は,同世代の子供たちとの集団生活であり,その後の苦労にくらべ るとどちらかといえば楽しい思い出が多いと語ってくれた。これを聞いてある学生は, それまで私は強制収容所というのは辛くて苦しいだけの施設だと思っていたんですけど, (子供時代に強制収容所で過ごした女性のお話をきいて)年代によって思うことが違うと いうことをはじめて知ったので…一つのテーマを勉強するということはこういうことな のかと思って。自分が思い込んでいたことがほかの人の話によってひっくりかえらされる というか…こういう体験をされた方もいたんだ,こう感じた人もいるんだということを 知って,これが深く勉強することなんだとこの旅行で知りました。 学生は,第2 次世界大戦の体験といっても,捉え方は異なるのだと知る契機となり,さらに,そういっ

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地 域 学 論 集  第 12 巻  第 2 号(2015) 206 地域学論集 第12 巻第 2 号(2015) た考え方を総合的に理解し,物事を様々な視点からとらえなおしていくプロセスの重要性を感じたよ うである。 また,日系人といっても日本社会や文化との関わり合いの多様性があることの気づきにつながった ものも多い。たとえば JCCCNC では日本人のように見えるスタッフであっても,必ずしも日本語を 話すわけではないと知って,少し驚いた様子の学生もいた。日本人の顔かたちをしており,また日本 関連の施設ではたらいているので,当然日本語を話すことができるだろうというと暗に思っている学 生が多いのである。しかしいろいろな日系人の方と接して,そういった文化的アイデンティティーと 言語とのつながりの想定は必ずしも適切でないと知る契機となったようである。 さらに研修で出会う方々の多くは,国籍も日本でなければ,生まれ育ったところも海外である。に もかかわらず,お寺や県人会,文化施設といった現地の日本人組織との関係を持っている方々の様子 をみることで,国籍や実際に住んでいる土地だけではとらえきれない文化的な関係を感じた学生も多 い。日本人であるということにそれまで疑問を感じずにいた学生にとっては,新しい発見であり,そ れは訪問先の大学の先生から受ける話によってさらに理論的な深みを帯びる。日系人という具体的な 例から考えを展開させ,文化的アイデンティティー一般についてその複雑性へ気づきの第一歩となっ ているようである。

2. 大学での学びについての振り返り

研修では,3 つの大学を訪問し,各大学では学生によるキャンパスツアー,先生,学生による学部 紹介があり,そこで学生は,同年代の大学生の学びの様子について知る。テーマに関連する学科や教 員の話を聞くのがその訪問の目的の一つであるが,加えて同年代の学生との接すること,そして各大 学の特徴を知ってもらおうという意図もある。 大学の制度は様々あり,アメリカ,カナダでも異なる。背景知識が少ない学生は,ともすれば早口 の説明に少し戸惑ってしまう場合も多い。しかし,キャンパスツアーや大学施設は似たようなところ があり,大学をめぐるにつれて学生の理解度も増してくる。それにつれて,日本での自分たちの大学 生活との相違点に気づく学生が多い。 例えば,在学生が訪問者の質問に的確に答え,意見を述べている様子をみて,彼らの成熟度にびっ くりする学生も多い。ある学生は研修最後のキャンパスツアーで「キャンパスツアーでいつも感じる んですが,案内してくれる学生ははきはきしていてすごいなと感じました。」と述べ,常に感じる点 として挙げている。 また,「自分の大学に誇りを感じて説明ができている」,「生き生きとして自分の大学での学びや施 設について語っている」との印象を述べる学生もいる。またデービスでの日本語のクラスの学生との 対談では,日本語や日本文化に対する強い関心を持つ学生と接して,好きな勉強をしているのだと感 じたとコメントする人もいる。ある学生は,日本では大学生になってより自由になったといっても 日々の生活や課題等でしんどそうな学生が多くいるとした述べたうえで,こう語っている。 大学,結構のびのびしているんですね,学生が。(デービスで学んでいる)日本人の学生に もあったけど,すごく楽しそうだなーと思って。なんでかなーと思ったのですが,英語の プログラムやアジアンアメリカンプログラムとか日本語プログラムとかで話を聞いて,本 当に先生が場を提供して,生徒が自由に好きな勉強をしているんだなという印象がありま した。 もちろん,すべての学生がそうではないというだろうが,というコメントも後で付け加えているが, 交流した学生やそのほかキャンパスで見かける学生の様子から活気を感じたと感じる学生が多い。 地域学論集 第12 巻第 2 号(2015) いった考え方を総合的に理解し,物事を様々な視点からとらえなおしていくプロセスの重要性を感 じたようである。 また,日系人といっても日本社会や文化との関わり合いの多様性があることの気づきにつながっ たものも多い。たとえばJCCCNC では日本人のように見えるスタッフであっても,必ずしも日本語 を話すわけではないと知って,少し驚いた様子の学生もいた。日本人の顔かたちをしており,また 日本関連の施設ではたらいているので,当然日本語を話すことができるだろうというと暗に思って いる学生が多いのである。しかしいろいろな日系人の方と接して,そういった文化的アイデンティ ティーと言語とのつながりの想定は必ずしも適切でないと知る契機となったようである。 さらに研修で出会う方々の多くは,国籍も日本でなければ,生まれ育ったところも海外である。 にもかかわらず,お寺や県人会,文化施設といった現地の日本人組織との関係を持っている方々の 様子をみることで,国籍や実際に住んでいる土地だけではとらえきれない文化的な関係を感じた学 生も多い。日本人であるということにそれまで疑問を感じずにいた学生にとっては,新しい発見で あり,それは訪問先の大学の先生から受ける話によってさらに理論的な深みを帯びる。日系人とい う具体的な例から考えを展開させ,文化的アイデンティティー一般についてその複雑性へ気づきの 第一歩となっているようである。

2. 大学での学びについての振り返り

研修では,3 つの大学を訪問し,各大学では学生によるキャンパスツアー,先生,学生による学 部紹介があり,そこで学生は,同年代の大学生の学びの様子について知る。テーマに関連する学科 や教員の話を聞くのがその訪問の目的の一つであるが,加えて同年代の学生との接すること,そし て各大学の特徴を知ってもらおうという意図もある。 大学の制度は様々あり,アメリカ,カナダでも異なる。背景知識が少ない学生は,ともすれば早 口の説明に少し戸惑ってしまう場合も多い。しかし,キャンパスツアーや大学施設は似たようなと ころがあり,大学をめぐるにつれて学生の理解度も増してくる。それにつれて,日本での自分たち の大学生活との相違点に気づく学生が多い。 例えば,在学生が訪問者の質問に的確に答え,意見を述べている様子をみて,彼らの成熟度にびっ くりする学生も多い。ある学生は研修最後のキャンパスツアーで「キャンパスツアーでいつも感じ るんですが,案内してくれる学生ははきはきしていてすごいなと感じました。」と述べ,常に感じる 点として挙げている。 また,「自分の大学に誇りを感じて説明ができている」,「生き生きとして自分の大学での学びや施 設について語っている」との印象を述べる学生もいる。またデービスでの日本語のクラスの学生と の対談では,日本語や日本文化に対する強い関心を持つ学生と接して,好きな勉強をしているのだ と感じたとコメントする人もいる。ある学生は,日本では大学生になってより自由になったといっ ても日々の生活や課題等でしんどそうな学生が多くいるとした述べたうえで,こう語っている。 大学,結構のびのびしているんですね,学生が。(デービスで学んでいる)日本人の学生 にもあったけど,すごく楽しそうだなーと思って。なんでかなーと思ったのですが,英 語のプログラムやアジアンアメリカンプログラムとか日本語プログラムとかで話を聞い て,本当に先生が場を提供して,生徒が自由に好きな勉強をしているんだなという印象 がありました。 もちろん,すべての学生がそうではないだろうが,というコメントも後で付け加えているが,交流 した学生やそのほかキャンパスで見かける学生の様子から活気を感じたと感じる学生が多い。

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