計 測 自 動 制 御 学 会 論 文 集 Vol.55, No.1, 59/67(2019)
航空機点検のための負圧吸着型進行波壁面移動装置の開発と走行実験
萩
原
大
輝
∗・只
見
侃
朗
∗・天
川
貴
文
∗山
田
泰
之
∗∗,∗∗∗・中
村
太
郎
∗Development of Negative Pressure Adsorption Type Traveling-wave Wall-climbing Robot for Aircraft
Inspection and Running Experiment
Daiki Hagiwara
∗, Naoaki Tadami
∗, Takafumi Amakawa
∗,
Yasuyuki Yamada
∗∗,∗∗∗and Taro Nakamura
∗Robots are expected to substitute for humans for work performed in locations at a height, such as the inspec-tion of an airplane surface. The authors propose a traveling-wave-type wall-climbing robot simulating a snail direct wave movement. In this robot, several adsorption units are respectively connected by a universal joint, and the robot progresses by the propagation of expansion and contraction between the units. At this time, the moving unit slides on the wall surface, and the unit that does not move is fixed with a strong force, such that each unit switches the frictional force. Consequently, the robot has a wide ground contact surface, thus maintaining a high adsorption force and stable traveling. Furthermore, since it can be bent by a universal joint, it can cross a curved wall surface. To this end, in this study, we developed a negative pressure adsorption type traveling – wave wall – climbing robot, run it in an environment simulating an aircraft about the robot, and evaluated its characteristics.
Key Words: wall-climbing robot, airplane inspection, traveling wave
1.
緒 言 高所作業には,航空機表面や船舶の船体点検,高層ビル清 掃,原子力発電所の貯蔵タンクおよび石油化学製品設備の整 備などがある1).これらの作業は定期的に行なわれ,その都 度足場の組立や高所作業車が必要であり,時間とコストがか かる.さらに,高所作業における作業員の安全確保が課題で ある.そこで,時間やコストの削減と作業員の安全確保のた め,これらの作業を代行できるロボット開発が求められる. 高所作業用ロボットでは,マルチコプタの応用2)や壁面移 動ロボットの開発3)∼7)が盛んである.マルチコプタは,軽量 で運搬が容易,ロボットの移動速度が速い.しかし,風雨に ∗ 中央大学理工学部 東京都文京区春日 1–13–27 ∗∗ 東京電機大学システムデザイン工学部 東京都足立区千住旭町 5 ∗∗∗ 中央大学研究開発機構 東京都文京区春日 1–13–27 ∗ Faculty of Science and Engineering, Chuo University, 1–13–27 Kasuga, Bunkyo-ku, Tokyo
∗∗ Department of Design Engineering and Technology, Tokyo Denki University, 5 Senju-Asahi-cho, Adachi-ku, Tokyo
∗∗∗ Research and Development Initiative, Chuo University 1– 13–27 Kasuga, Bunkyo-ku, Tokyo
(Received May 7, 2018) (Revised October 9, 2018) 弱く,積載容量が小さい.一方,壁面移動ロボットは,マル チコプタに比べ,風雨の影響が小さく,積載容量が大きい. 既存の壁面移動ロボット3), 4)は,高い吸着力を得るため吸 盤を利用した真空吸着が採用されてきた.しかし,真空吸着 は粗い面や凹凸のある面への吸着が困難で,さらに吸盤磨耗 により吸着性能が変化しやすいことも課題である. 一方,ファンによる負圧吸着5)∼7)は,常に空気を排出し吸 着力を発生および維持させる.したがって,吸盤吸着方式で は難しい粗い面や凹凸のある面への吸着ができる点で吸盤よ り有利である.そのため近年では,汎用性の高い高所作業用 ロボットとして,負圧吸着型壁面移動ロボット5), 6)が提案さ れている.提案されたロボットは,粗い面への吸着および移 動における有用性が確認された.一方で,吸盤吸着で吸着で きないような凹凸面でも吸着ができるが,内部圧力が上昇し て,垂直抗力が減少する.そして,吸着面とロボットのクロー ラとの間で十分なグリップが得られずスタックすることが問 題となった.これを解決するため,吸着部を複数もつロボッ ト7)が提案されたが,ロボットの大型化に対し,受動関節が なく曲面への対応がなされていない. 一方,著者らはカタツムリの這行運動を模した進行波型移 動ロボット8)∼10)を開発してきた.このロボットは,磁石に より壁面に吸着し,複数の吸着ユニットは自在継手で接続さ れ,ユニット間の伸縮の伝播により進行する.各ユニットは TR 0001/19/5501–0059 c 2018 SICE
トにより支持されて落下せずに移動できる.さらに,自在継 手で機体が屈曲し,曲面も走行できる.しかし,このロボッ トは磁石により吸着していたため,磁性体上でしか移動でき ていなかった. 本研究では,ロボットを多様な壁面で安定して走行させる ため,負圧吸着方式11)での進行波型移動機構を開発する.こ れまで,著者らは負圧吸着方式で進行波型移動機構のロボット の基礎特性を示し,その独自性と有用性を示してきた11), 12). ユニット本体部に隙間を設け,開閉させることで,摩擦切り 替えを行なっている.そして,波の振幅にあたるユニット間 の距離変化と摩擦切り替えを1自由度である直動サーボのみ で,同時にできる新規の機構を採用した.今回は,特に今後 の需要が期待される航空機表面調査に着目して,走行環境を 考慮してロボットを開発する.本稿で検証対象とする航空機 表面調査では,吸着対象がジュラルミンなどの非磁性体合金 かつ曲面で構成されており,提案する新しい機構が有用だと 考える.航空機表面は雹や鳥の衝突,被雷により13), 14)運用 中に機体面に傷や凹みなどの損傷が生じる.事故防止には, フライトごとの目視検査や定期的な非破壊検査14)が必要であ る.著者らはこれまで,本ロボットはフライトごとの目視検 査や定期的な非破壊検査の作業を代行することを目的として きた11), 12).著者らは現在人間が目視で行なっている点検を 作業ロボットに置き換えることでも点検ロボットとしての有 用性があると考える.搭載する点検機器は100 g程度のカメ ラとその周辺機器を想定する.本稿では,航空機表面点検ロ ボットを提案して,ユニットの各パラメータについて検討し, 提案したロボットの水平面や曲面における走行を評価する.
2.
航空機表面の走行環境 1章でも示したように,航空機表面は雹や鳥の衝突,被雷に より13), 14).運用中に機体面に傷や凹みなどの損傷が生じる. 事故防止には,フライトごとの目視検査や定期的な非破壊検 査14)が必要である.航空機の機体面の多くは曲面で構成され ており,多くの中大型旅客機胴体部は曲率半径が1 m以上で ある12).また,機体面にはFig. 1のような段差や隙間があ る.実際の航空機で測定した段差や隙間の大きさをTable 1 に示す.航空機点検ロボットは非磁性体合金のジュラルミン でできた壁面や曲面上の走行が必要である.さらに,段差や 隙間のある面の走行,検査機器を搭載可能な吸着力も求めら れる.フライトごとの検査は1回2時間である.ロボット1 台で点検するのではなく,胴体部を1周するロボットを複数 台導入すれば,点検時間は短縮できると考える.複数台導入 した際,直径は10 mとすると,2時間以内で一周するのにはFig. 1 Aircraft surface Table 1 Parameters of obstacle
4.36 mm/sが目標速度になる.現状では,本ロボットでは速 度は不足しているが,現在複数人で行なっている点検作業を, ロボットをオペレーションする人数を1名にできるので,人 件費削減にも貢献できる.その上,人が高所に登り,落下の 危険性がなくなるので,有用であると考える.
3.
航空機点検ロボットの提案 3. 1 航空機点検ロボットの概要 提案するロボットをFig. 2,Fig. 3に示し,ユニットの伸 縮と摩擦切り替えのための隙間開閉のようすをFig. 4に示 し,ロボットの動作方法の概要をFig. 5に示す.また,ユ ニットのパラメータをTable 2に示す.ロボットはFig. 2の ように2つのユニットを直列に配置している.それぞれのユ ニットは,ファンにより負圧吸着して,直動サーボモータで 伸縮する.ユニットについている2つの直動サーボモータを 別々に動かすことで進行方向に対して旋回も可能である.さ らに,吸着力向上のため吸着部下部がゴムシートで覆われて いる15).また,Fig. 2のようにそれぞれのユニット間は自在 継手で接続され,梁で曲がり角度は曲面に対し160◦に制限さ れる.そのため,Fig. 3のように曲面にも対応できる.また, Fig. 4のようにそれぞれのユニットは伸縮と同時に吸着部上 の隙間を開閉して摩擦力を切り替える12).この切り替えによ り,ユニットの伸縮をFig. 5のように伝播して進行する.各 ユニットは摩擦力を切り替えることで,移動するユニットは 壁面を滑り,移動しないユニットは壁面に吸着する.これに より,ロボットは接地面積が広く,高い吸着力の維持と安定 した走行ができる.さらに,吸着面と接触するユニット下部 は,取り外し可能で吸着面に対し摩擦材やシール材を変更で きる.本ロボットでは航空機表面に存在するリベットなどの 凹凸にも吸着しやすいスポンジゴム14)を用いる.航空機表面 の検査では,航空機胴体部の径方向に直線移動させる.そしFig. 2 Overview of a proposed robot
Fig. 3 A proposed robot on the curved surface
Fig. 4 Unit status
て,本ロボットを複数台導入することで検査時間も短縮でき ると考える.本ロボットは複数ユニットから成るため,各ユ ニットに検査装置を搭載できる.よって,カメラ,打音検査機 器や超音波検査機器を一度の走行で使用できる.また,常に 壁面から一定距離で走行できるため,打音検査や超音波検査 をする際にドローンなどの飛行型ロボットに比べ有利である と考える.1ユニットに平行に配置した直動サーボモータを 片方だけ動かすなどして旋回も可能である.また,本ロボッ トは同一ユニットで構成されているため,ユニットの配置変 更で従来の進行波型ロボットのようなホロノミック全方向移 動可能な壁面移動ロボット8)∼10)にできる.そのため,下部 材料やユニット配置の最適化でさまざまな面やコースを走行 可能と考える. 3. 2 航空機点検ロボットのユニット 提案するロボットのユニットをFig. 6に示す.吸着部は作 業員が一人でオペレーションできるように一辺180 mmで, 高さは14 mmの正四角柱である16).また,負圧吸着による 吸着部の湾曲防止のため吸着部内をボールローラで支持して
Fig. 5 Movement of a proposed robot Table 2 Specifications of a unit
Fig. 6 Over view of a proposed unit
いる.吸着力向上のためのゴムシートの大きさは実験的に求 めた.ゴムシートはユニットから一定の長さになるように製 作した.また,Fig. 7 (a)のように吸着力は負圧吸着するユ ニットを垂直に引っ張り,ゴムシートが面から離れる際に必 要な最大の力とした.用意したゴムシートは30,40,50,60, 70,80,90 mmである.本実験は水平で乾燥したジュラルミ ン板上で行ない,吸着力測定には,フォースゲージJapan in-strumentation system co. ltd NK-200を用いた.遠心ファ
Fig. 7 Experiment of adsorption force and friction force
Fig. 8 Adsorption power at each rubber sheet length
ンに接続したモータへの印加電圧は12 Vである.各試行回 数は3回で,その平均値を求めた.実験結果をFig. 8に示 す.グラフの横軸はゴムシートの長さで縦軸が吸着力である. ゴムシートの長さ30 mmから40 mmで著しく吸着力が増加 し,40 mmから60 mmまで緩やかに吸着力が増加した.ま た,60 mm以上は吸着力が増加しないことがわかる.そのた め,本ユニットのゴムシートの大きさは60 mmとした.ファ ン部は空気逆流の影響が小さい遠心ファンと高速回転可能な ブラシレスモータTarot社2214/920KVを用いた.ブラシ レスモータには12 Vを印加して,1.5 A程度の電流が流れる. 本ユニットの吸着力と摩擦力をフォースゲージで測定し た.実験のようすをFig. 7に示す.この実験は航空機表面を 模擬して,乾燥したジュラルミン板上で行なった.ここで,
Fig. 4 (a)のように隙間を空けないときを高摩擦状態(
High-friction mode)とし,Fig. 4 (b)のように隙間を空けたとき
を低摩擦状態(Low-friction mode)とする.Fig. 7 (a)の吸 着力実験は,ユニットを水平面に置き,重力方向反対向きに 引く.ユニットにゴムシートを着けた状態と着けない状態で それぞれ実験する.ユニット下部が吸着面から離れた際の力 を吸着力とする.Fig. 7 (b)の摩擦力実験は,吸着するユニッ トに対し,フォースゲージを吸着面に水平に押し付ける.ユ ニットが滑り始めるときの力を摩擦力とする.また,摩擦力 を,ゴムシートを着けない状態で測定した吸着力で除した値を 摩擦係数とする.ここで,摩擦係数を算出する際にゴムシー トをつけない状態での吸着力を使用したのは,垂直抗力とし て,使用する吸着力は,摩擦材が壁面に接している状態がふさ わしいと考えたためである.垂直抗力実験の結果をTable 3
Fig. 9 Relationship between load and motor speed
に示す.実験より,高摩擦状態の摩擦力は40 Nであり,低摩 擦状態の摩擦力は10 Nであった.このことから,隙間切り替 えによる摩擦力の切り替えが可能であることがわかる. 3. 3 直動サーボモータの特性 本 ロ ボ ッ ト は 直 動 サ ー ボ モ ー タ L12 100 mm 100:1 PLC/RCを用いる.この直動サーボモータの送り速度は加わ る負荷に依存性がある.そこで,直動サーボモータ駆動部に 駆動方向へ一定の負荷を加えて動作させる.そのようすを撮 影して,動画解析ソフトで速度を解析する.直動サーボモー タには9 V印加して,最大0.2 A電流が流れる.実験結果を Fig. 9に示す.グラフの横軸は負荷の大きさで縦軸は直動 サーボモータの送り速度である.実験結果から,直動サーボ モータの速度は負荷に対し線形に変化している.負荷が0 N のとき,送り出し速度は9.1 mm/s,引き戻し速度は9.1 mm/s であり,負荷が27 Nのときは,送り出し速度が1.3 mm/s, 引き戻し速度が1.2 mm/sであった.このことから,ユニッ ト間の引き戻し送り出しの速度は差がほとんどないことがわ かる. 3. 4 ロボットの吸着条件 提案するロボットが地面と成す角θの壁面を移動するために 必要な吸着力を求める.ロボットの力学平衡モデルをFig. 10 に示し,パラメータをTable 4に示す.ここで,各ユニット 上部に積載する機器の重量と高さは,本ロボットの1ユニッ トと同じと仮定する.すると,積載機器を含むモデルユニッ トの重量は1.5 kgとなり,重心高さは70 mmとなる.つま り,積載機器の重量を0.75 kgとおく.さらに,ロボットは
Fig. 10 Wall adhesion model Table 4 Specifications of adhesion model
剛体とし,吸着力と摩擦力は面の中心に作用する集中荷重と する.4ユニットでの稼働は実装例であるため,一般化した 式を示す.(1)式に吸着面に対し垂直な力成分より求めた必 要な吸着力の和を示す.(2)式に各ユニットの吸着面の端部 (Fig. 10点A∼E)まわりのモーメントの式を示す.(3)式 は吸着面に対し水平な力成分より求めた必要摩擦力を示す.4 ユニットでの稼働の場合,Table 4の数値を代入して,さら にθの項の合計が最大になる値を代入する.壁面において, すべてのユニットの吸着力の平均が(1)式では14.7 N以上, (2)式では22.5 N以上,(3)式では17.6 N以上必要である. つぎに提案するロボットの最後方ユニットが曲面において, 中心角θの位置にあるとき,ロボットが移動するための吸着力 を求める.ロボットの曲面における力学平衡モデルをFig. 11 に示す.各パラメータは,Fig. 10と同じTable 4に示す値と する.ロボットは剛体とし,吸着力と摩擦力は面の中心に作 用する集中荷重とする.(4)式はFig. 11のような曲面モデル において,吸着面に対し,垂直な力成分より求めた必要な吸着 力を示す.(5)式は吸着面に対し水平な力成分より求めた必要 な吸着力を示す.さらに4ユニットでの稼働の場合,Table 4 の数値を代入して,さらにθの項の合計が最大になる値を代
Fig. 11 Curved surface adsorption model
入する.曲面において,(4)式では13.9 N以上,(5)式では 6.13 N以上であればそれぞれの式を満たす. 以上より,すべてのユニットの吸着力の平均が22.5 N以上 であればよい.そのため,Table 3から,1つ以上高摩擦状態 のユニットがあれば吸着可能と考える. n k=1 (Ak− mg cos θ) ≥ 0 (1) n k=1 [{a + (k − 1)l − x}Ak− HGmg sin θ − (a + (k − 1)l − x)mg cos θ] ≥ 0 (2) n k=1 (Fk− mg sin θ) = n k=1
(μAk− μmg cos θ − mg sin θ)
≥ 0 (3) n k=1 {Ak+ mg sin(θ + (k− 1)α)} ≥ 0 (4) n k=1 {Fk− mg cos(θ + (k − 1)α)} = n k=1 {μ(Ak+ mg sin(k− 1)α) − mg cos(θ + (k − 1)α)} ≥ 0 (5)
4.
航空機点検ロボットの走行 4. 1 ロボットの動作方法 移動ユニットも含めたすべてのユニットの吸着状況が強の 場合,移動ユニットが移動を開始するときに,移動ユニット を送り出す際に直動サーボへの負荷は大きくなる.直動サー ボの特性により負荷が大きくなると送り速度は減少する.結 果として,ロボット全体の移動速度も遅くなると著者らは考Fig. 12 Proposed movement method える.一方,移動ユニットも含めたロボットの複数のユニッ トの吸着状況が弱の場合,移動ユニットが移動を開始すると きに,移動ユニットを送り出す際に直動サーボへの負荷は小 さくなり送り速度は減少しづらい.しかし,固定ユニットの 吸着状況が弱であるため,固定ユニットの吸着状況が強のと きに比べ,ロボットの意図する進行方向逆向きに滑る減少が 起こりやすいと考える.結果としてロボット全体の移動速度 が遅くなると考える.そこで,ロボット全体の摩擦力を移動 面に応じて走行方法を切り替えることが望ましい.そこで本 研究では,3種類の走行方法を提案して,それぞれの牽引力 と走行速度の関係を示す. 提案する走行方法をFig. 12に示す.また,直動サーボモー タが動く時間は,無負荷状態で50 mm伸びきるのにかかる5
秒間とする.Fig. 10 (a)に動作方法Type 1を示す.Type 1
は1サイクル25秒で最も時間が短い.しかし,低摩擦モー ドのユニットが少なく直動サーボモータへの負荷が大きい.
Fig. 12 (b)に動作方法Type 2を示す.Type 2は先頭ユニッ
トの摩擦切り替え工程を増やすことで,第2ユニットのサー ボモータの負荷を減らした.先頭ユニットをほかの走行方法 のようにユニットの伸縮を連続的に動かすのではなく,1ユ ニットずつ動かすことによって,ロボット先頭部が高摩擦状態 で支持してから後方ユニットを動かす.このことにより,前 方から2つ目のユニットを動かすとき,前後のユニットが高 摩擦状態のため,各サーボモータにかかる負荷がType 1に比 べ均一である.しかし,1サイクル30秒になる.Fig. 12 (c) に動作方法Type 3を示す.Type 3は低摩擦ユニットが多 くロボット全体の摩擦力が小さい.1サイクル30秒である.
Fig. 13 Method of traction force experiment
Fig. 14 Relationship between load and running
4. 2 ロボットの牽引力実験 各動作方法の走行中の吸着力は異なり,走行性能にかかわ る全体の摩擦力も異なる.牽引力実験により,各動作方法の走 行性能を実験的に確認する.牽引力実験のようすをFig. 13 に示す.本ロボットをジュラルミン板上にのせ,滑車を介し て重りをつなぎ走行させる.ロボット走行のようすをカメラ で俯瞰撮影して,動画解析ソフトKEYENCE社製Motion Analyzer VW-H2MAで1ストローク当たりの走行速度を求 める.無負荷時は3パターンとも1ストロークで50 mm動 く.本実験では牽引力を得るためユニットの遠心ファンを駆 動させた.その結果をFig. 14に示す.Fig. 14 (a)は横軸に 負荷の大きさを示し,縦軸に速度を示す.Fig. 14 (b)は横軸 に負荷の大きさを示し,縦軸に1ストローク当たりの理論移 動距離に対しての理論移動距離と実測移動距離の差分の比を 示す.1ストローク当たりのロボットの実測移動距離DR,ロ ボットの理論移動距離をDW,理論移動距離に対しての理論
Table 5 Running velocity of the robot (mm/s) 移動距離と実測移動距離の差分の比Sは(6)式となる. S = DW− DR DW × 100 (6) 負荷が17 N以下ではType 3が最も移動速度が速く,17 N を超えるとType 3は最も走行速度が遅い.これは,Type 3 が最もロボットの摩擦力が小さいため,直動サーボモータの 送り速度が速く,また負荷が大きい際にロボットの意図する 進行方向とは逆向きに滑りやすいためと考える.Type 1と Type 2は負荷が17 N以下はType 1の走行速度が速く,17 N を超えるとType 2の走行速度が速い.これは負荷が小さい ときはType 2がType 1より1ストロークの時間が長いた め遅くなると考える.また,負荷が大きいときはType 2が Type 3に比べロボットの意図する進行方向とは逆向きに滑 りにくく,Type 1に比べ直動サーボモータへの負荷が小さい ため走行速度が最も速くなると考える. 4. 3 ロボットの走行実験 提案した3種類の走行方法でそれぞれFig. 15に示すような 水平面(Fig. 15 (a)),天井面(Fig. 15 (b)),曲面(Fig. 15 (c)), 航空機表面を模した壁面(Fig. 15 (d)),曲壁面(Fig. 15 (e)) および壁面(Fig. 15 (f))を走行させる.走行のようすを撮影 して,走行速度を解析する. それぞれ面での走行速度をTable 5に示す.また,壁面走 行時のそれぞれのユニットの軌跡をFig. 16に示す.Table 5 より,天井面ではType 1が最も速い.航空機表面を模した 曲壁面および壁面ではType 2が最も速い.また,水平面,曲 面および壁面ではType 3が最も速い.また,Type 3の天井 走行は吸着力不足により走行安定性が低いため,走行不能と 判断した.これは,4ユニット中3ユニットが低摩擦モード になったとき,自在継手の角度拘束が不十分で,高摩擦モー ドのユニットで支えられなかったためと考える. Type 1は最も1サイクルの時間が短い.そのため,重力方 向が吸着面に対し垂直方向で,直動サーボモータへの負荷が一 様になる天井面で最も速いと考える.しかし,壁面登攀では 後方部のユニットの直動サーボモータの負荷が大きく,先頭部 のユニットに比べ,移動時にロボットの意図する進行方向と は逆向きの滑りが大きいことがFig. 16からわかる.Type 2 は壁面登攀時のロボットの意図する進行方向とは逆向きの滑 りが最も小さく安定した走行が可能である.これは,先頭ユ ニットが押し出されるときは,常に低摩擦状態で,後方ユニッ トの負荷がType 1に比べ小さく,後方ユニットが動くとき は先頭ユニットが常に高摩擦状態であるので,ほかの走行方
Fig. 15 Running experiment of the robot
法に比べ,走行中は強い吸着力を保持できたためと考える.
Type 3は摩擦力が小さいため直動サーボモータの1ストロー
クの距離が最も大きい.しかし,それに伴いロボットの意図 する進行方向とは逆向きの滑りも最も大きいことがわかる.
Fig. 16 Result of running experiment 本論文では,本機構で航空機表面上を移動可能であるかの 初期検討を目的としているため,単純なON/OFF制御で走 行システムをシンプルに試作して実験を行なった.そのため, 今後,今回設定した走行モードで生じた直動サーボモータが ユニットを前方に押し出す際の反力を後方ユニットが支持し きれず,ロボットの意図する進行方向逆向きに滑った現象に ついては,ロボットの吸着条件式に動摩擦状態の移動ユニッ トおよび固定フェーズのユニットの壁面に対する滑りを考慮 した上での,直動サーボモータの速度制御を含むパラメータ の再検討などを行なう予定である. 求め,すべてのユニットの吸着力の平均が22.5 N以上であれ ばよいことを示した.さらに,ロボットの走行方法を複数提 案して,それぞれの牽引力と走行速度の関係を示した.そし て,それぞれの面に適する走行方法を示した. 水平面では1.67 mm/s,天井面では1.20 mm/s,壁面では 1.00 m/s,曲面では14.3 mm/s,曲壁面では0.73 mm/sお よび機体面を模した壁面では0.10 mm/sで走行できることを 示した. 参 考 文 献
1)AFL-CIO Safety and Health Department: DEATH ON THE JOB (2017)
2)L.N. Santhosh and T.K. Chandrashekar: ANTI-COLLISION PENTACOPTER for NDT Applications, IEEE International Transportation Electrification Confer-ence (ITEC), 1/13 (2015)
3)Z. Xing, M. Chen and Q. Gao: The structure and defects recognition algorithm of an aircraft surface defects inspec-tion robot, IEEE Internainspec-tional Conference on Informainspec-tion and Automation (ICIA), 740/745 (2009)
4)U.S. Department of Transportation Federal Aviation Ad-ministration: Automated Inspection of Aircraft Final Re-port, DOT/FAA/AR-97/69 (1998)
5)S. Wu, L. Wu and T. Liu: Design of a Sliding Wall Climb-ing Robot with a Novel Negative Adsorption Device, In-ternational Conference on Ubiquitous Robots and Ambient Intelligence (URAI), 97/100 (2012)
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11)天川,萩原,只見,山田,中村:飛行機点検等高所作業を目的 とした進行波型壁面移動ロボットの提案,第 18 回システムイ ンテグレーション部門講演会(SI2017),200/203 (2017) 12)T. Amakawa, T. Yamaguchi, Y. Yamada and T.
Nakamura: Development of an Adhesion Unit for a Traveling-wave-type, Omnidirectional Wall-climbing Robot in Airplane Body Inspection, IEEE International Conference on Advanced Intelligent Mechatronics (AIM), 291/296 (2017)
13)Inner Editora Ltda: AERO QTR 04 (2012)
14)The Japanese Society for Non-Destructive Inspection:航 空機業界における非破壊検査 (2014)
15)T. Amakawa, T. Yamaguchi, Y. Yamada and T. Nakamura: Proposing an adhesion unit for an traveling-wave-type, omnidirectional wall-climbing robot in airplane body inspection applications, IEEE International Confer-ence on Mechatronics (ICM), 178/183 (2017)
16)T. Yamaguchi, T. Amakawa, T. Go, Y. Yamada and T. Nakamura: Development of negative pressure suction mechanism in omnidirectional wall-climbing robot for in-spection of airplanes, The 19th International Conference on Climbing and Walking Robots and Support Technolo-gies for Mobile Machines (CLAWAR 2016), 106/114 (2016)
[著 者 紹 介] 萩 原 大 輝 2018年中央大学理工学部精密機械工学科卒業. 同年中央大学理工学科博士前期課程入学,現在に 至る.高所作業用進行波型壁面移動ロボットの開 発や腸管を規範とした蠕動運動型混合搬送装置の 開発に従事.計測自動制御学会 SI 部門優秀講演 賞 (2017). 只 見 侃 朗 2017年中央大学理工学部精密機械工学科卒業. 同年同大学大学院理工学研究科博士前期課程入学, 現在に至る.飛行機点検のための全方向壁面移動 ロボットや掘削ロボットなどのロボットの設計開 発に従事.CLAWAR2017 Best Technical Paper Award (2017),日本財団海底探査推進賞 (2017). 天 川 貴 文 2016年中央大学理工学部精密機械工学科卒業. 同年同大学大学院理工学研究科博士前期課程入学, 現在に至る.飛行機点検のための全方向壁面移動ロ ボットの開発に従事.CLAWAR2017 Winner of the Industrial Robot Innovation Award (2017).
山 田 泰 之(正会員) 2013年慶應義塾大学大学院理工学研究科博士後 期課程修了.日本学術振興会 DC1,PD(東京工業 大学) 中央大学理工学部助教を経て,東京電機大 学デザイン工学科助教および中央大学研究開発機 構准教授.2018 年,インペリアルカレッジロンド ン訪問助教.デザインエンジニアリング,スマー トメカニズム,ソフトロボティクスに着目し,革 新的ハードウェアの研究開発による全体最適化を 目指している.計測自動制御学会 SI 部門賞若手 奨励賞 (2016).博士(工学). 中 村 太 郎(正会員) 信州大学大学院工学系研究科博士後期課程修了. 1999年,秋田県立大学助手.2004 年,中央大学 理工学部専任講師,2006 年,同大学准教授を経 て,2013 年同大学教授.2012∼2013 年までスイ ス連邦工科大学ローザンヌ校 Visiting Professor. 2017年株式会社ソラリス設立.代表取締役 CEO. 博士(工学).文部科学大臣表彰若手科学者賞など 受賞.人工筋肉や機能性流体などのスマートアク チュエータの開発と制御,および生物を規範とし たバイオロボティクスの開発と応用に従事.