Analysis of π
0, η and ω mesons in pp collisions
with a high energy photon trigger at ALICE
(高エネルギー光子トリガーを用いた陽子+陽子衝
突におけるπ
0、η、ω中間子の解析)
広島大学院理学研究科 修士課程 物理科学専攻 (クォーク物理学研究室) 八野 哲 (M116588) 修士論文 発表会クォーク・グルーオン・プラズマ
物質を構成する陽子、中性子は3つのクォークから成る。 量子色力学(QCD)によれば、クォークは陽子・中性子 内に閉じ込められており、通常、単体で取り出すことは できない。クォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)
→極初期宇宙の物質状態
高温もしくは高密度中では、閉じ込めから解放 され自由に動き回れることが予想されている高エネルギー重イオン衝突実験
高エネルギー重イオン衝突
• 重イオンを高エネルギーで衝突させる ことで、大きな反応領域で高い温度を 実現させ、クォーク・グルーオン・プラズ マを実験的に作り出す。 • クォーク・グルーオン・プラズマの性質 を解明する。クォーク・グルーオン・プラズマ生成の示唆
• 高い横運動量粒子生成の抑制 • 重イオン同士の正面衝突の収量を、p+p衝突の重ね合わせで描写できない • クォーク・グルーオンのエネルギー損失で抑制 • この効果は高横運動量領域の方が鮮明に測定できる クォーク・グルーオンレベルのエネルギー損失 クォーク・グルーオン・プラズマ中にグルーオンを放射してエネルギー を損失する。 qクォーク・グルーオン・プラズマ生成の示唆
• 高い横運動量粒子生成の抑制 • 重イオン同士の正面衝突の収量を、p+p衝突の重ね合わせで描写できない • クォーク・グルーオンのエネルギー損失で抑制 • この効果は高横運動量領域の方が鮮明に測定できる クォーク・グルーオンレベルのエネルギー損失 クォーク・グルーオン・プラズマ中にグルーオンを放射してエネルギー を損失する。 q測定した中性中間子
π
0中間子
• 質量 : 135MeV/c2 • 分岐比 : 98.9% (π0 → 2γ) • 構成クォーク : uu/ddη中間子
• 質量 : 549MeV/c2 • 分岐比 : 39% (η → 2γ) • : 23% (η → π0π+π-) • 構成クォーク:uu/dd/ssω中間子
• 質量 : 782MeV/c2 • 分岐比 : 89% (ω → π0π+π-) • : 8.9% (ω → π0γ) • 構成クォーク:uu/dd/ss 軽いクォークのみから構成されている もし、クォークレベルでエネルギー損失が起きているのなら、これら粒子 の収量抑制傾向は同じ。測定した中性中間子
π
0中間子
• 質量 : 135MeV/c2 • 分岐比 : 98.9% (π0 → 2γ) • 構成クォーク : uu/ddη中間子
• 質量 : 549MeV/c2 • 分岐比 : 39% (η → 2γ) • : 23% (η → π0π+π-) • 構成クォーク:uu/dd/ssω中間子
• 質量 : 782MeV/c2 • 分岐比 : 89% (ω → π0π+π-) • : 8.9% (ω → π0γ) • 構成クォーク:uu/dd/ss 軽いクォークのみから構成されている もし、クォークレベルでエネルギー損失が起きているのなら、これら粒子 の収量抑制傾向は同じ。研究目的
高横運動量粒子の生成抑制を測定するためのベール
ラインとして、重心系エネルギー8TeV陽子+陽子衝突
における中性中間子の収量測定
高エネルギー光子トリガー解析手法の確立
高横運動量粒子測定に特化したトリガー
ALICE実験とLHC加速器
LHC加速器実験の中で唯一重イオン衝突実験に特化した実験グループ 35ヶ国120研究機関1300人の研究者で構成されている。 26m 16m 16m 周長 : 27km 陽子⁻陽子 : 14TeV 鉛-鉛 : 5.5TeVALICE実験
LHC加速器実験の中で唯一重イオン衝突実験に特化した実験グループ 35ヶ国120研究機関1300人の研究者で構成されている。 26m 16m 16m 周長 : 27km 陽子⁻陽子 : 14TeV 鉛-鉛 : 5.5TeV 2009 陽子⁻陽子 0.9TeV 0.14nb-1 2010 陽子‐陽子 7TeV 50nb-1 鉛⁻鉛 2.76TeV 10μb-1 2011 陽子⁻陽子 7TeV/2.76TeV 5pb-1 鉛-鉛 2.76TeV 143μb-1 2012 陽子⁻陽子 8TeV 10pb-1ALICE実験に供給された統計量
ALICE実験
LHC加速器実験の中で唯一重イオン衝突実験に特化した実験グループ 35ヶ国120研究機関1300人の研究者で構成されている。 26m 16m 16m 周長 : 27km 陽子⁻陽子 : 14TeV 鉛-鉛 : 5.5TeV 2009 陽子⁻陽子 0.9TeV 0.14nb-1 2010 陽子‐陽子 7TeV 50nb-1 鉛⁻鉛 2.76TeV 10μb-1 2011 陽子⁻陽子 7TeV/2.76TeV 5pb-1 鉛-鉛 2.76TeV 143μb-1 2012 陽子⁻陽子 8TeV 10pb-1 1.8nb-1ALICE実験に供給された統計量
検出器
• Time Projection Chamber (TPC)
• PHOton Spectrometer (PHOS)
• 電磁カロリーメータ(3/5) • 光子、(陽)電子のエネルギー測定 • ダイナミックレンジ • 5 MeV – 80 GeV • 二粒子、エネルギー分解能 • モリエール半径2cm • ~ 3% (at 1 GeV) • 素子 • PbWO4(3584/1Module) • 飛跡検出器 • 荷電粒子の運動量、粒子種の測定 • 運動量分解能 • ~ 1% (below 1GeV/c) • dE/dx 分解能 • ~ 5%
不変質量分布
1 2
p p
3
不変質量分布
1 2 π0 p p 3 光子PHOS検出器
不変質量分布
1 不変質量の式 2 π0 p p 3 光子 Mass (GeV/c2) En tr ies 0.135(π0の質量)PHOS検出器
中性中間子の再構成(π
0
, η)
2光子から再構成された不変質量
分布
π
0とηの質量ピーク
π0/ηPHOS検出器
中性中間子の再構成(ω)
ω
π+ π -π±中間子は飛跡検出器で検出する π0π+π-中間子から再構成された不変質量分布 π0ωの質量ピーク
PHOS検出器
PHOSで測定した光子のエネルギー分布
p-p @ 8TeV 高エネルギー光子トリガーなし 27M events 読み出し検出器(PHOS)をトリガーにしたため、測定されるエネルギー分布 がトリガー効率によるバイアスを受けた。 PHOSでエネルギー閾値(2GeV) を超えた光子が検出されたイベントを選別 光子エネルギー(GeV) 光子エネルギー(GeV) エン トリー p-p @ 8TeV 高エネルギー光子トリガーあり 1.8M events エン トリー光子に対するトリガー効率の求め方
Module2• トリガーした光子のエネルギー分布
• すべての光子のエネルギー分布
光子に対するトリガー効率= トリガーした光子のエネルギー分布 すべての光子のエネルギー分布Threshold 光子エネルギー(GeV) Threshold 光子エネルギー(GeV)
エント
リー
エン
光子に対するトリガー効率の結果
Module1 Module2 Module3
光子エネルギー (GeV) トリガー 効率 光子エネルギー (GeV) 光子エネルギー (GeV) トリガー 効率 トリガー 効率 Threshold 光子エネルギー(GeV) トリガー 効率 理想的なトリガー効率 • モジュールごとにトリガー効率のばらつきがある。 • 理想的なトリガー効率はステップ関数 1
中性中間子のトリガー効率
PHOS
光子に対するトリガー効率を求めた
中性中間子のトリガー効率
PHOS
光子に対するトリガー効率を求めた
π0 実際に求めたいのは親粒子のトリガー効率
光子の親粒子(中性中間子)のトリガー効率
• 光子に対するトリガー効率は実データで求めることができた。 • この光子に対するトリガー効率をシミュレーション上のPHOSにインプット • PHOSに向かって親粒子を打ち込み、崩壊後の光子がトリガーされるか調べるPHOS
光子に対するトリガー効率を求めた π0 実際に求めたいのは親粒子のトリガー効率光子の親粒子(中性中間子)のトリガー効率の結果
各粒子のトリガー効率= 検出器で再構成され且つトリガーされた粒子数 検出器で再構成された粒子数
各粒子のトリガー効率を見積 もった。
π
0
生成断面積の測定結果
p-p 8 TeV(本研究) p-p 7 TeV p-p 0.9 TeVTsallis fittingの結果
π
0 • 他の衝突エネルギーの結果と無矛盾。 • 今回は2012年の高エネルギー光子トリガーデータ 1.8nb-1/1000nb-1を解析。η、ω生成断面積の測定結果
Tsallis fittingの結果
p-p 8 TeV(本研究)
p-p 7 TeV p-p 8 TeV(本研究)p-p 7 TeV
η
ω
イベントジェネレータ(PYTHIA)との比較
• 本研究の結果 • イベントジェネレータ(PYTHIA)の結果 エラーの範囲で一致。 PYTHIA : pQCD(NLO)をもとに計算されるイベントジェネレータ結論
• ALICE実験の高エネルギー光子トリガーの解析方法を確立した • 一つの光子に対するトリガー効率を実データから求めた。 • 一つの光子のエネルギーに対するトリガー効率をシミュレーション上で 再現することによって親粒子のトリガー効率も求めることに成功した。 • 世界最高衝突エネルギー8TeVの陽子+陽子衝突における中間子測定に 初めて成功した。 • 現在使われているイベントジェネレータの結果とエラーの範囲で一致し ている。展望
• 本研究に使用したデータ量は1.8nb-1で、2012年にALICEは約1000nb-1の統 計を高エネルギー光子トリガーで取得した。本研究で確立した解析方法を これらのデータに適応し高い横運動量粒子(40GeV/c以上)の測定を行う。 • 鉛⁻鉛衝突の高エネルギー光子トリガーデータを解析。 • 本研究の結果をより高い横運動量領域の収量抑制が測定でき、クォーク・ グルーオン・プラズマの理解に迫る。高エネルギー光子回路図
エネルギーデータの流れ高エネルギー光子トリガー
4x4 cells (=2x2 Analog-OR) Sliding window TRU (PHOS) 4x4クリスタルのシグナル SUMが閾値を超えている かどうか判断する。 FAST-OR PWO4 PWO4 PWO4 PWO4 Threshold Comparison FAST-OR FAST-OR FAST-OR Threshold Comparison Threshold ComparisonOR
Trigger PHOSでエネルギー閾値(2GeV) を超えたシグナルが検出されたイベントを選別TRUの不具合のクリスタル
エネルギーを検出したクリスタルマップ
トリガー効率の再現
Mod1 Mod2
Mod3
シミュレーションで再現したモジュール固有
のトリガー効率
TRUごとのトリガー効率
π
0
tagging for omega meson
ガウスでFitをして±2σの範囲を π0のシグナルとした。