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控訴を伴う執行停止に関する一考察

著者名(日)

小野寺 忍

雑誌名

東洋法学

53

2

ページ

119-148

発行年

2009-12-22

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00000711/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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︽論  説︾

控訴を伴う執行停止に関する一考察

一 二 三 四 はじめに 仮執行の宣言と執行停止 控訴を伴う執行停止に関する裁判例と学説 おわりに はじめに

野 寺 忍

 民事手続全体の質的変化には社会的動向の変化ないし経済状況の変動等が大きな影響を与えているものと思われ る。とくに経済状況が良好と評価される場合とそうでない場合とでは、民事手続制度の利用状況の違いとなって現 れている。すなわち、前者の場合は破産手続等の財産整理手続の占める割合が減少する現象となり、後者の場合は 破産手続を筆頭とする財産整理手続の活発な利用が多くを占める傾向が顕著となるからである。このことは、当事 119

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者問の紛争が少なからず経済的価値をめぐってのものがその多くを占めることにある。とりわけ民事訴訟において は、債権者たる勝訴原告が自己の債権の実現をめざした積極的な行動として具現化することとなる。  典型例の一つとして、ゴルフ会員権に関する一連の訴訟を挙げることができる。いわゆる﹁ゴルフ会員権﹂訴訟 は、昭和四〇年︵一九六五︶代、主に当時の時代を反映する新たな債権をめぐる訴訟として登場したものである。 それは、わが国の経済的繁栄の申し子のように現れたゴルフ場開発に伴うもので、ゴルフ場経営者が売り出した会 員権が発端となっている。いわゆるゴルフ会員権が有力な財産権として生み出されたことから、その法的性質をめ ぐって、多くの民事裁判例とともに学会においても様々な議論がなされ、昭和五〇︵一九七五︶年代にはゴルフ会 員権たる債権の法的性質が明確にされ、確立した財産権として構成されるにしたがって、一連のゴルフ会員権訴訟 はおさまったのである。この間争われたことは、全体として、ゴルフ会員権を流通可能な重要な財産権として評価       パ レ し確保する手段の構築にあったのであり、その意味では﹁債権確保型﹂訴訟として位置付けることができよう。  その後、平成二︵一九九〇︶年代、いわゆるバブル経済が崩壊し始めたことに伴って、経済情勢が激変し、ゴル フ熱は漸減する傾向が続き、その結果としてゴルフ場開発はもとより、その運営自体が困難な状況に落ち込んだほ       ヱ か、倒産に追い込まれる事態にまでおよんでいる。︵図表1参照︶  以上のような社会的・経済的推移の下、近時になって、ゴルフ会員権をめぐる紛争は、前記の﹁債権確保型﹂と は趣を異にした形の訴訟として登場している。それは、バブル経済崩壊後の停滞した景気を社会的背景として、有 力な財産として堅持されていたゴルフ会員権が、個人たると法人たるとを問わず、自己の債権整理の必要からゴル フ会員権の処分を始める状態が醸し出されたからでる。そこでは、通常、ゴルフクラブ経営者との加入契約を解除 することに伴って、ゴルフ会員権を所有するための拠出金として納付された預託金の返還を請求する形で行われ 120

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すべて新受件数(最下欄除く) 〔図表1〕法的整理事件数の推移 2002年 224,467 214,996 13.498 2001年 168,811 160.711 2000年 145,858 139.590 1999年 128,488 123.915 1998年 ll1,067 105.468 1997年 76,032 71.683 破産全体 個人破産 個人再生 108 53 26 20 22

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場社理 フ会整 ル営的 ゴ経法 2007年 157,889 148,524 27.672 2006年 174,861 166,339 26.113 2005年 193,179 184,923 26.048 2004年 220,261 211,860 26.346 2003年 251,800 242,849 23.612 41 54 65 87 90 破産全体 個人破産 個人再生 ゴルフ場 経営会社 法的整理 (最高裁判所;裁判所 データブック2008、最下欄は帝国データバンク調べ) る。したがって、このような場合、ゴルフクラブ経営者は自ら の経営再建のための法的手続と会員に対する預託金返還請求の 阻止を目論むことを考えた法的手段を念頭に置いた行動をとる ことが考えられることになる。実際に、ゴルフクラブ経営者と 加入者との間で訴訟になった場合、ゴルフ会員権は確立された   パ レ 財産権として、加入者の債権整理の手段とされることになり、 その意味では、﹁債権整理型﹂訴訟として位置付けることができ  ︵4︶ よ・つ。  本稿では、とくにゴルフ会員権が対象にされた﹁債権整理型﹂ 訴訟では、その背景に濫訴および濫控訴と評価できるような状 況があることから、仮執行により発生する不利益負担を原告だ けのものとして考慮すべきではないと思われるのであり、この 点に限定して考察することとする。  具体的には、ゴルフ会員権所有者︵原告X”債権者︶が提起 した加入預託金返還請求訴訟︵債権整理型訴訟︶の第一審で勝 訴し、仮執行宣言が付された場合に、ゴルフクラブ経営者︵被 告Y”債務者︶が控訴し、同時に執行停止の申立てをして認め られたあと、被告が控訴審係属中にとった倒産手続との関係で、 121

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原告に認められた執行債権の帰趨がいかなることになるかという問題である。前述したように、このことは、ゴル フクラブ経営者は自らの経営再建のための法的手続を重要視すれば、預託金の据置期間を延長する措置を講ずるな どして会員に対する預託金返還請求の阻止を目論むことを考えた法的手段を念頭に置いて行動をとることは容易に 考えられるからである。したがって、その点については、倒産処理手続としての破産手続や民事再生手続が、﹁債 権整理型﹂訴訟の帰結としての個別財産執行を包摂することとも関連させて考察しなければならない。 二 仮執行の宣言と執行停止  1 実例紹介  ここに紹介するものは、ゴルフクラブの会員︵X︶がゴルフクラブ経営者︵Y︶に対して、預託金の返還を求め        パ レ たことに端を発した紛争である。事案の概要は、次のようなものである。︵図表2参照︶  Xが、Yに対する預託金返還請求訴訟において、仮執行宣言付きの給付判決︵約四〇〇万円︶を得た後、これを 債務名義として、YがBクレジット会社に対して有する債権について一五〇万円に満つるまで差し押さえるととも に転付命令を取得し、Bに送達した。  Yは、上記給付判決に対し控訴するとともに、強制執行停止の申立てをなし、これに対して裁判所は、三〇〇万 円の保証を立てさせたうえ、強制執行停止決定をし、その後、上記転付命令に対する執行抗告に基づいて執行停止 の手続をした。  Yは、控訴審の審理中に民事再生手続開始の申立てをし、開始決定を受けたことから、Xは同手続において上記 給付判決で認容された債権を届け出た。Yは、Xを含む退会会員に対する債務免除率九八パーセントとする再生計 122

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〔図表2〕事案の経過  X:Yが経営するAゴルフクラブ会員となる   (Yは会員からの預託金返還請求訴訟において、敗訴し続けている)  X:Aゴルフクラブを退会   (Yは会員からの預託金返還請求訴訟の控訴審においても、敗訴し続けている)  Y:(民事再生手続申立ての方針)  X:Yを相手方として預託金返還請求の訴えを提起  G:Xの請求を全部認容(仮執行宣言付判決)  X:債権差押え+転付命令→B会社に送達  Y:控訴+執行停止の申立て  G:Yに対し立担保供託命令二執行の停止決定  Y:債権差押え+転付命令に対する執行抗告  Y:執行停止決定の正本提出  ★債権差押え+転付命令(確定予定日)  Y:X以外の複数の会員との預託金返還訴訟において、全件敗訴〈最高裁〉  Y:民事再生手続開始の申立て  G:民事再生手続開始決定  X:請求認容額+遅延損害金について債権届出  Y:再生計画案提出(債務免除率95∼98%)→Xに対する配当率2%   (Yの再生計画案が債権者集会で可決)  G:再生計画案認可決定(確定)  Y:執行抗告取下げ  X:損害賠償債権確定請求の訴え提起  G:Xの請求認容

 Y:控訴

、G:判決変更(Xの請求;一部認容・確定) lG:債権差押え+転付命令について取マ肖決定 { 123

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画案を提出して認可され、Xの上記差押命令についても取消決定がなされた。  Xは、Yの民事再生手続開始後、上記執行停止を受けたことにより、仮執行により回収できたはずの金額が回収 不能になり損害︵約二二二万円︶を被ったとして、Yが強制執行停止決定の発令に当たって立てた担保の還付を受 けるために、損害賠償債権確定の訴えを提起したのに対し、裁判所は、Xの請求をその主張どおり認容したため、 Yが控訴したというものである。  この訴訟の背景には、Yが、X以外の会員の多くからも同様の預託金返還請求訴訟を提起され、そのほとんどで 敗訴しているという事実があるほか、それらの訴訟当時において、Yは預託金の据置期間を延長した旨の主張のす べてが排斥されていたという事実、したがって、この訴訟においてもYによる預託金の据置期間を延長した旨の主 張を認められる可能性のないことが明らかな状況にあったこと、さらにこの訴訟と同様の別件訴訟が継続中であっ たことに留意しなければならない。  この訴訟の主要な争点は、Yが執行停止を申し立てて、執行停止を得たことが不法行為に該当するかどうか、控        パゑ 訴に伴う執行停止のために立てられた担保は、執行停止により生ずるべき損害を担保するものであるとして、その 担保による損害賠償責任を不法行為責任とする場合の責任の範囲をどのように構成するか︵過失貢任か無過失責任 か︶、Yの申立てに基づく強制執行の停止によりXに損害が生じたとする場合の損害額の算出方法である。  以上の点については、三審制の意義についての再検討、仮執行宣言の意義および要件、控訴に伴う執行停止の意 義および要件についてあらためて検討しなければならないことになる。 124

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 2 仮執行の宣言  前記の﹁債権整理型﹂訴訟において、原告は、債権の回収を最優先に考えることから、その第一審段階からもっ とも速い債権の実現を考えて、勝訴判決を前提として仮執行の宣言を付することを要求するのが一般的である。  仮執行の宣言は、未だ未確定の終局判決に対して執行力を与える裁判である。判決は、一般に、その確定をまっ て執行力を生ずるのが原則とされているが、被告からの控訴等により、判決の確定が遅らされ、限定的ではある        パヱ が、そのことにより執行が遅れることになる勝訴原告︵債権者︶の不利益を救済することも含めた制度として、仮 執行の宣言が容認されてきている︵民訴二五九条︶。  仮執行の宣言の制度が限定的にのみ許される理由は、主に違法な判決に対する敗訴当事者︵債務者︶の救済のた めの控訴等があり、三審制を維持するための担保としての機能を優先するところにあると思われる。その場合、控        せ 訴審が形骸化することなく機能していることを前提としなければならない。  仮執行の宣言は、判決の言渡しと同時に効力を生じ、仮執行の宣言を付された判決も同時に執行力を生じ、この 判決に控訴等がなされた場合でも当然には停止されない。したがって、裁判所は、仮執行宣言の申立てに対して は、執行遅延による勝訴原告の不利益、原状回復の難易、敗訴当事者に生ずべき損害の大小、判決が変更される可 能性などの諸点について考慮の上、判決の主文に掲げて宣言することになる。すなわち、仮執行宣言付判決の執行 力および執行の効果は、本案判決が変更されないで確定することを条件とするものであり、仮執行の宣言または本 案判決を変更する判決の言渡しにより、その変更の限度において、仮執行宣言付判決の執行力を失う︵民訴二六〇 条一項︶。  従来から問題とされているのは、仮執行の宣言を付された判決が変更された場合︵仮執行の免脱宣言があった場 125

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     パ レ 合も当然含む︶、第一審の勝訴原告がその相手方に対してなすべき損害賠償の点である。この点については、仮執 行の宣言は、それを付した判決がそのまま確定することを予想して、その確定前に強制執行を許容するのであるか ら、仮執行後に第一審判決が変更されたときは、第一審勝訴原告はその相手方に対して、仮執行により得た物︵金 銭︶の返還とともに仮執行により生じた損害賠償義務を負担しなければならない︵民訴二六〇条二項︶。  以上の諸点については、損害賠償責任の性質決定︵故意または過失の態様と範囲︶を除いて争いはないが、第一 審の仮執行宣言付判決が第二審において変更されることになる場合にのみ重点が置かれており、第一審被告による 控訴が排斥されたときもしくは濫控訴にあたるときに、仮執行が遅れたことにより生じた損害賠償義務の負担につ いて明確にされていない点については、議論の余地があるものと思われる。  元来、控訴に伴う執行停止制度は、勝訴当事者たる原告の迅速な権利の実現と敗訴当事者の救済という相反する 要請の調和を担保すべきものとされていたのではあるが、旧民訴法五一二条一項が特別の要件を定めることなしに 執行停止を可能にしたところに問題が残されていたことになる。歴史的経過をたどれば、控訴のみならず、異議、 上告︵特別上告︶、再審という不服申立ての種類に応じた執行停止要件が段階的に形成され改良が続けられてきた のである。その場合にも、預託金債権のように書証に基づいて認められる蓋然性の高い権利について、仮執行宣言 付判決がなされたときは、迅速な権利実現のために執行停止要件をより厳格なものとすべき要請はすでになされて いた。しかしながら、実態は、控訴に伴う立保証によって執行の停止を認めるものであったことから、濫控訴とい えなくもない控訴によっても仮執行宣言付判決の執行は不可能となっていたのである。結果として、控訴に基づく 執行停止ついては立保証のほかには何らの要件も課されていなかったことになるのであり、前述した調和はもたら されず、民事訴訟制度を利用する国民の信頼を損なうことにもなる重大な問題を孕んでいたことになる。こうした 126

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背景をもとに、現行民事訴訟法では、控訴に伴う執行停止について、﹁原判決の取消し・変更原因となるべき事情 および執行により著しい損害を生じるおそれがあることの疎明を必要﹂とする執行停止要件を明確化する形で手が 加えられたのであるが、その際にも勝訴原告の利益保護の点についてまで明定するにいたらなかったのであり、そ        パゆ の意味ではなお執行停止要件を厳格化することに機が熟していない状況にあることになる。  3 控訴に伴う執行停止の意義および要件 ①意義  執行停止制度については、旧民訴法五一二条一項が、﹁仮執行ノ宣言ヲ付シタル判決二対シ控訴ヲ提起 シタルトキ⋮異議ヲ申立テタルトキハ裁判所ハ申立二因リ保証ヲ立テシメ又ハ保証ヲ立テシメズシテ強制執行ヲ一 時停止ス可キコトヲ⋮命ズルコトヲ得﹂として、債務者または第三者を救済するために異議申立てないし異議の訴 えを認め、異議者の利益を考慮し異議の手続が完結するまでの暫定的な処分としての執行停止に関して規定を措い たが、執行停止のための要件は﹁立担保﹂の裁量以外の要件は定められてはいなかったという歴史がある。その結 果、控訴に伴う執行停止については、原判決取消しのための要件も損害に関する要件も問題とされることなく、控 訴に伴う執行停止の申立てがあれば、それが控訴に理由ありと見えない場合でも申立てを却下することなく、担保 としての保証金額を定めることについての斜酌をするこどだけで執行を停止するのが裁判実務の常況にあったとい ハユ う。現行民訴法では、旧法下においても問題視されていた点である、債権者の権利実現が遅延することによる損害 賠償の問題や債務者の訴訟引延策としての濫控訴の危険の問題という実体的な要件について一定程度明確な要件と して基準が定められている。それでも、控訴に伴う執行停止の濫用防止の必要性が重視されて控訴提起の伴う執行 停止の要件は定められたものの、執行停止の保証金は執行遅延による損害を担保するが、確定的債権である請求債 127

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権自体を担保としないとするところには間題が残されていると思われる。 ②要件  仮執行宣言によって発生した執行力は、控訴の提起によって当然に停止するものではなく、その執行を 停止させるためには執行停止を申し立て、それが認められなければならない︵民訴四〇三条一項三号・四〇四条︶。  その場合の形式的要件としては、控訴が提起されていること、適法な執行停止の申立てであること、の二つであ るが、実体的要件としては、必ずしも明確のものとはなっていないといえる。それでも現行法においては、抽象的 ではあるが、次のように規定して、執行停止の実体的基準としている。  執行停止の裁判は、不服または異議のために主張した事情に法律上理由があり、かつ、事実上の点について疎明 された場合、執行によって取り返しのつかない損害を生ずる旨の疎明がある場合︵民訴四〇三条・四〇四条︶に、 担保を立てさせ、または立てさせないで強制執行の一時停止を命じることであり、必要があれば、担保を立てて強 制執行の開始もしくは続行を命じ、または担保を立てさせてすでにした強制執行の取り消しを命じることである。  4 仮執行の宣言と執行停止の関係  前述のとおり、仮執行の宣言は、勝訴原告である債権者の迅速な債権実現確保を担保するためにあり、執行停止 は、敗訴した債務者が控訴に伴う形で、担保を提供しつつ敗訴確定からの救済を求めることにある。  仮執行の宣言と執行停止の関係について、伝統的に敗訴当事者からの保証以外には特別の要件を定めることなく 執行停止の可能性を認めてきたいきさつがある。その結果、濫控訴による訴訟引延し策を看過してきたきらいが あったことになるが、濫控訴により仮執行宣言付判決の執行が不可能となり、勝訴原告の救済が遅れることになる 点については、従来から指摘され続けてきたことでもある。仮執行宣言による迅速な権利実現を阻止するための執 128

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行停止をより厳格な要件を課することなく容認することは、民事訴訟制度を利用するものにとって重大な問題であ り、殊に制度を悪用するかのような敗訴当事者︵債務者︶の手続利用行動︵濫控訴︶を容認すべきではない。民事 訴訟において続審制が採用されている以上、敗訴当事者が第一審判決を覆す新たな主張・証明を可能とするのであ        ど れば、仮執行免脱宣言︵民訴二五九条三項︶によらしめるべきことになる。  現行法では、前述のとおり、勝訴当事者の権利保護、濫控訴の防止、第一審判決の重視といった観点に基づい        パど て、控訴に伴う執行停止の要件を厳格したことになるのであり、とくに控訴が不適法な場合については、不服のた めに主張した事情に法律上の理由がないものとして強制執行の開始もしくは続行を命じることが考えられる。それ は、勝訴の見込みがのない控訴に伴う執行停止の申立ては遮断すべきと思われるからである。 三 控訴を伴う執行停止に関する裁判例と学説  1 裁判例と学説  これまで、被担保債権を確定するための損害賠償訴訟は、民事執行手続上の強制執行停止の担保に基づくものが ほとんどであったが、勝訴原告︵X︶が、敗訴当事者である被告︵Y︶が控訴に伴う執行停止を受けたことによ り、仮執行により回収できたはずの金額の回収不能という損害を被ったとして、Yが強制執行停止決定の発令のた めに立てた担保を被担保債権として確定するための損害賠償債権確定の訴えが、ゴルフクラブ経営の破綻に関わっ てこのところ登場している。この種の紛争は、確定的財産権であるゴルフ会員権を所有する債権者が自ら債権整理 の一環として預託金の返還を求めることから始まるのであり、債権そのものの存否を含めて争われている本来的な 給付訴訟とは異なる面を有している。本来的な給付訴訟では、第一審の勝訴原告が仮執行宣言付判決を得たとして 129

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も、上訴審において原告敗訴の判決が言い渡され、その判決が確定することは十分に考えられる。したがって、そ うした場合の第一審被告が受けることになる損害を担保することを前提とした考慮が優先されている。その意味 で、従来から、控訴に伴う執行停止に関して立てられた担保は、執行により生ずるべき﹁第一審被告﹂の損害を担        パき 保するもので、かつその損害は執行停止と相当因果関係のある損害であることを要するものとされる。  たとえば、仮処分が不当であるとして取り消された場合︵最判昭和四三・一二・二四民集二二巻二舌互二四二八 頁判タニ三〇・一七三︶、これによって受けた損害を被申請人が請求することについて、  ﹁処分命令が、その被保全権利が存在しないために当初から不当であるとして取り消された場合において、右命 令を得てこれを執行した仮処分申請人が右の点について故意または過失のあつたときは、右申請人は民法七〇九条 により、被申請人がその執行によって受けた損害を賠償すべき義務があるものというべく、一般に、仮処分命令が 異議もしくは上訴手続において取り消され、あるいは本案訴訟において原告敗訴の判決が言い渡され、その判決が 確定した場合には、他に特段の事情のないかぎり、右申請人において過失があつたものと推認するのが相当であ  ぎ る。﹂ として、仮処分命令が異議もしくは上訴手続において取り消され、あるいは本案訴訟において原告敗訴の判決が言 い渡され、その判決が確定した場合には、他に特段の事情がない限り、仮処分申請人の過失を推定できるとする        パめズじ ︵被告保護︶。このような理解は、実務上、現在も維持継承されている。  右の判例の反対形相として、第三者異議訴訟で敗訴が確定したYに対し、Xが、Yの申立てに係る執行停止決定 により、賃料相当の損害賠償を求めた場合︵東京地判平成五・一二・二二判タ八六八・二二四︶について、  ﹁執行停止の申立人が、その申立てにあたって、異議の事由のないことを知り、又は知らなかったことに過失が 130

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あるときは、右申立人は、民法七〇九条により、これによって執行債権者が被った損害を賠償すべき責任があると いうべきである。そして、第三者異議等の訴えを提起して執行停止を得た後に、その異議の事由がないとして申立 人敗訴の判決が確定した場合には、申立人において、右執行停止の申立ての挙に出るについて相当の理由があった ことなど特段の事情のない限り、申立人に過失があったものと推定するのが相当である。﹂ として、第三者異議の訴えに係る執行停止の裁判の後に、異議事由のないことが確定した場合の異議申立人の責任 について、第三者異議等の訴えを提起して、申立人敗訴の判決が確定した場合には、申立人において、執行停止の 申立てをすることについて相当の理由があったことなど特段の事情のない限り、申立人に過失があったものと推定 している︵原告保護︶。  このことは、紛争のいずれもが、ゴルフ会員権のような確定的債権をめぐる紛争とは異なり、いずれの手続にお いても、原告︵申請人︶の勝訴判決獲得には不確定要素が潜んでいることから、当然の前提とされている。した がって、民訴法二六〇条一項二項は、そのことを予定したものとして理解できる。その限りでは、前述したとお り、控訴に伴う執行停止に関して立てられた担保は、執行により生じた損害を担保するものであり、かつその損害        パ レ は執行停止と相当因果関係のある損害で、この担保による損害賠償責任を不法行為貢任と構成することができる。  これまで、控訴を伴う執行停止に関しては、仮執行宣言の変更ないし本案判決の変更あることを前提として、被 告の受けた損害の賠償責任を原告に課することを念頭においた議論に終始するほか、控訴することに違法性︵明ら かな過失︶がない限り、控訴による訴訟の引き延ばし行為として被告が貢任を問われることはない情況にあるとい える。  兼子一博士は、仮執行宣言付判決を得た原告について、﹁仮執行宣言を利用した原告は、本案判決が取消された 131

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場合は、仮執行によって得たものを返還すると共に、被告が仮執行により又は仮執行を免れるために受けた損害を 賠償しなければならない。この損害賠償責任は一種の不法行為責任であるが、無過失責任と認められる。﹂としな がら、﹁被告の過失によって損害が増加した場合は、過失相殺の抗弁﹂が原告に許されるとする範囲で、被告の責       ハゆソ 任について触れられているが、積極的に原告に損害が生ずることのある場合を強調してはいないように思われる。 三ヶ月章博士も、仮執行宣言の失効を前提として、債務者に生ずることになる損害の填補について﹁債権者の故 意・過失を論ぜずに無過失の賠償責任を負わしめるのが適当﹂としており、基本的な姿勢は異ならないように思わ     れる。また、新堂幸司教授も、﹁仮執行は、上級審における請求権の存否の審理の結果請求権は存在しないとして その判決が将来取り消されることを解除条件にして許されるものである﹂ことを前提として、本案判決の変更ある        ハむ 場合に重点を置いた原告の損害賠償義務について同様の理解をしている。さらに、伊藤眞教授は、﹁判決における 勝敗は、手続保障を前提とした原審の判断﹂であることを理由として、本案判決に変更ある場合の原告の損害賠償 責任について、それを無過失責任︵通説︶とすることに反対し、原審の判断が上級審で取り消される危険を無条件       パぬレ に原告に負わせるのは適当ではないとして、過失責任主義を採る。しかしながら、ここでも控訴や控訴に伴う執行 停止の申立てによる被告の訴訟引延しによって生ずるところの原告の損害については必ずしも強調されてはいな い。  不当提訴について、過失責任主義が採られていることとの均衡を考慮するならば、控訴や控訴に伴う執行停止の 申立てによる被告の訴訟引延しによる原告の損害についての賠償責任を被告に負わせることも考慮すべきと思われ る。  現行民訴法においては、その二六〇条二項において、﹁本案判決を変更する場合には、裁判所は、被告の申立て 132

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により、その判決において、仮執行の宣言に基づき被告が給付したものの返還及び仮執行により又はこれを免れる ために被告が受けた損害の賠償を原告に命じなければならない。﹂として、被告に生ずる損害の賠償責任を原告に 課する旨の規定になっている。  現行法の規定は、旧民訴法五一二条一項で執行停止について特段の要件が規定されていなかったことから、濫控 訴による訴訟引延しの防止と仮執行宣言制度の機能を発揮するための要件が一定程度厳格化され、控訴に伴う執行 停止について、﹁原判決若しくは支払督促の取消し又は変更の原因となるべき事情がないとはいえないこと﹂また は﹁執行により著しい損害を生ずるおそれがあること﹂のいずれかを疎明することを要件︵民訴三九八条一項三 号︶としたものであるが、本案判決の変更等により被告に生じた損害の賠償責任を前提とするものである点ではと       ぞ くに変更されていない。  以上のような学説・判例の下で、近時、控訴に基づく執行停止申立てに基因する原告の損害について争われる裁 判例が登場しつつあることは、前述したとおりである。  そこで、実例として挙げたものと同類の裁判例について検討してみたい。       パぞ  ゴルフ会員権所有者︵X︶が提起した加入預託金返還請求訴訟に関連する訴訟おいて、その第一審と第二審とで 判断を異にした事例である。これは、ゴルフクラブ経営会社︵Y︶が第一審で敗訴し、これに対して控訴するとと もに担保を立てて強制執行停止決定を受けたあと、その控訴審継続中に民事再生手続を申し立て、その開始決定を 受けたことにより、Xが強制執行を行うことができなくなったことによる損害の賠償を求めた訴訟である。第一審 は、前訴において、Yが強制執行の停止を申し立てて、執行停止を得たことが不法行為に該当するか否かについ て、﹁強制執行停止に際して立てられた担保によって担保される損害賠償請求権については、仮執行宣言が本案判 133

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決の変更により効力を失う場合の損害賠償義務等を定める民事訴訟法二六〇条二項のような規定が設けられていな いことからすれば、これを特別の無過失責任と解することはできず、通常の実体法上の損害賠償請求権︵不法行為 に基づく損害賠償請求権︶であると解するのが相当である。︵中略︶  以上のことからすれば、本件執行停止は、被告の故意又は過失に基づく違法なものであると認められる。﹂  として、原告の損害賠償請求を認めたものである。  これに対して、第二審では、仮執行の宣言を付した第一審判決に対する控訴の提起に伴う執行停止について﹁仮 執行の宣言を付した判決に対する控訴の提起があった場合、民訴法三九八条一項三号所定の事由につき疎明があっ たとして裁判所が立てさせた担保によって担保される損害賠償請求権は、執行停止を受けたことによる執行の遅延 によって通常生ずべき損害の賠償を求めるものであり、債権者が損害賠償を請求できるか否かは、債務者がした執 行停止の申立てが不法行為になるか否かによって決せられる。そして、仮処分命令の場合、仮処分命令が異議若し くは上訴手続において取り消され、あるいは本案訴訟において原告敗訴の判決が言い渡され、その判決が確定した 場合には、他に特段の事情のないかぎり、上記申請人において過失があったものと推定されるが︵最高裁判決昭和 四三年一二月二四日民集二二巻一三号三四二八頁︶、仮執行の宣言を付した第一審判決に対する控訴の提起に伴う 執行停止の場合、控訴して執行停止を申し立てた当事者が控訴審でも敗訴して、その控訴審判決が確定した場合に も、その当事者において過失があったものと推定することはできない。﹂とした上で、ゴルフクラブ経営の具体的 な背景をもとに、﹁本件据置期間延長決議と同種の決議が本件ゴルフ倶楽部以外のゴルフ倶楽部でされてその倶楽 部の会員との間で預託金返還をめぐって紛争になった事例について、平成一〇年ころまでは決議を有効とする裁判 例は公刊物等ではほとんどみられないが、平成一〇年ころから少数ながら延長決議を有効とする裁判例も散見され 134

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るようになっていたことは当裁判所に顕著であり、また、そもそもゴルフ倶楽部の会則はそれぞれの倶楽部によつ て規定の仕方が異なることもあってその解釈もすべてのゴルフ倶楽部で一義的に決し得る性質のものでもないか ら、個々の倶楽部の各会則で解釈が異なることも予想されるところであり、控訴人が具体的な裁判例を認識したか どうかは証拠がないが、上記のような裁判例の状況の中にあって、しかも訴訟の勝敗の帰趨は本件会則の解釈にか かっているものであるから、控訴人が控訴を提起して別件訴訟の控訴審裁判所の判断を受けたいとするのはまこと に無理もないところであって何ら違法ではなく、このような控訴人が別件訴訟の第一審判決に対し控訴して本件執 行停止を得た時点において、別件訴訟の控訴審で勝訴することができないと認識していたとか、認識し得たという こともできない。﹂として、原告の損害賠償請求を排斥した。       き  右の訴訟の後に、ほぼ同じ状況の下に争われたのが、前記の実例である︵図表2参照︶。前述したような事実関 係の下に、  ﹁仮執行宣言を付した判決に対して控訴の提起があった場合、民訴法四〇三条一項三号︵旧三九八条一項三号︶ 所定の事由につき疎明があったとして裁判所が立てさせた担保によって担保されている損害賠償請求権は、執行停 止によって債権者に生ずべき損害の賠償を求めるものであり、債権者が損害賠償を請求できるのは、債務者がした 執行停止の申立てが不法行為となる場合であると解すべきである。︵中略︶  被控訴人は、平成一七年一一月一日、控訴人を債務者として、執行力ある判決正本に基づいて、原判決別紙差押 債権目録記載の債権を一五〇万円に満つるまで差し押さえ、その差し押さえられた債権を債権者に転付する旨の本 件差押転付命令を得、同命令は、第三債務者であるBカード株式会社に同月四日、控訴人に同月八日に、それぞれ 送達されており、控訴人は、平成一七年一一月四日当時、Bカード株式会社に対し、原判決別紙差押債権目録記載 135

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の債権一九九万三一二八円を有していたから、本件執行停止決定がなければ、被控訴人は、本件差押転付命令によ り、優先的に一五〇万円の債権の回収ができたはずである。  そして、これらの点については、控訴人も、本件強制執行停止の申立て当時、十分に理解していたはずであるか ら、控訴人は、本件強制執行停止の申立てにより、被控訴人が優先的に回収できるはずの本件差押転付命令分の一 五〇万円を回収できず、本件再生手続きによる回収しかできないことの認識をしていたというべきであるから、こ の点について被控訴人が受ける損害については、控訴人に少なくとも未必的な故意があるといわざるをえない。 ︵中略︶  被控訴人は、本件執行停止決定がなければ、本件差押転付命令の効力が発生し、優先的に一五〇万円の弁済を受 けることができたことが認められる。  ところで、控訴人の本件執行停止申立てにより被控訴人が受けた損害の範囲は、本件債権差押転付命令により優 先的に弁済を受けることができたはずの一五〇万円から本件民事再生手続により受けた配当の差額であると解され る。﹂として、原告の損害賠償請求を認めたものである。前二者の裁判例と大きく異なる点は、倒産処理手続が関 連したことである。  この場合、強制執行停止決定に伴い担保が提供され、後に債務者に対する倒産処理手続の開始決定がながされた 場合に、その担保に対し、勝訴原告︵債権者︶が他の債権者に優先して弁済を受けることのできる損害賠償請求権 ︵被担保債権︶の具体的な範囲については、勝訴原告による本案の請求それ自体ではなく、執行停止時から控訴審 判決までの執行遅延による損害であるとする見解と、強制執行が停止されなかった場合に勝訴原告が得たであろう 金額と倒産処理手続により配当を受ける額との差額であるとする見解の二つの見解があり、判例によれば後者の見 136

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        パぞ 解にしたがっている。  2 担保の取扱い  そこで、仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い担保を立てさせて強制執行の停止がなされた場合において、上訴 手続中に債務者に対する破産手続もしくは民事再生手続が開始された場合について検討する。  前記の裁判例のように仮執行宣言付判決に対する控訴に伴い担保を立てさせて強制執行の停止がなされる場合の 担保の性質については、つぎのように理解されている。  執行停止のために供された担保によって填補すべき損害は、仮執行停止により債権全額の回収・満足を得ること ができなくなったことによる損害と執行が遅延したことで債権の回収・満足が遅延したことによる損害とを併せた ものである。すなわち、執行停止のために供された担保の被担保債権は、仮執行がなされていれば得られた利益で 執行停止により実現することができなくなったものである。  ところで、民訴法四〇五条二項の準用する同法七九条一項にいう﹁担保の事由が消滅したこと﹂とは、担保提供 の必要性が消滅したことをいい、とくに控訴に伴う執行停止の場合にあっては、その後の訴訟手続において担保提        パこ 供者が勝訴し、その判決が確定した場合とされる。したがって、執行停止のために供された担保はその事由が消滅 しない限り、勝訴原告にとって優位な権利として維持されるべき筋合いのものである。  それゆえ、執行停止に基づき提供された担保について、担保権利者である債権者は、その提供された担保保証金       ぬレ の還付を受けるについては、執行停止による損害を証する確定判決を得る必要がある。 137

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 3 倒産処理手続と執行  控訴審継続中に被告が倒産した場合は、原則として、原告の有する債権は破産債権となり、破産債権の行使は破 産手続においてのみ行使すべきことになるから、当該債権の確定は、破産法上の債権確定手続によるべきこととな り、当該訴訟手続は中止される︵破産法二四条一項三号︶。破産債権は、破産手続によってのみ行われ︵破産法二 五条︶、破産債権について破産財団に属する財産に対してなされた強制執行等は、破産財団に対してはその効力を 失う︵破産法四二条二項︶。これは、既往の執行処分は、破産財団に対する関係においてのみ無効となることを意 味する︵相対的無効︶。したがって、破産手続開始決定当時、すでに強制執行が完了している場合は、当該強制執 行が破産手続開始決定に遡って失効することはない。  右に述べたことは、強制執行と破産手続との原則的な関係についてであるが、仮執行宣言付判決に対する控訴に 伴う強制執行停止後訴訟継続中に債務者︵担保提供者︶に破産手続開始決定があった場合の取扱いについて考察す る。すなわち、仮執行宣言付判決の確定前の仮執行に対して、その執行停止申立てが認められ、執行停止決定によ り、仮執行が終了する前に債務者に破産手続開始決定がなされた場合、﹁担保の事由が消滅した﹂ことに当たるか どうかの間題となるからである。具体的には、転付命令を取得するなどして完了した仮執行が、破産手続開始決定 により執行の効力を失うことになるか否かである。この点については、失効説と存続説の争いがある。  失効説によれば、仮執行によって債権は確定的に消滅するものではなく、債務者の破産により仮執行の結果が効 力を失うとする︵破産法四二条二項︶。したがって、すでに受けた弁済があれば、その返還をすべきとされる。  実務においては、破産管財人が、破産宣告により担保の事由が消滅したことを理由とする担保取消しの申立てを した場合について、﹁仮執行宣言付判決に基づく仮執行について、破産管財人との関係ではその効力が失われるか 138

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ら、破産管財人が損害賠償義務を負うことはなく、また、仮に損害賠償請求が認められることがあり得るとして も、破産管財人に対する権利行使は債権届出手続によってのみ行うことができるから、担保について直接権利行使        ハ  を行うことは許されない。﹂と判示して、失効説に立ったものがある。  これに対して、存続説によれば、すでに完了した仮執行の効果は、破産手続開始決定によっても覆滅されるもの ではないとする。これは、破産債権となるのは破産手続開始決定当時未だ満足を得ていない未済の債権についてで あり、権利が確定していなくても破産手続開始決定までに満足を得ていれば破産債権となることはないので、仮執 行が完了している以上、破産手続開始決定がなされた場合でも、仮執行により得た金員を返還する必要はないとい      パ  うことである。したがって、すでに受けた弁済については、その弁済を返還する必要はないとする。  実務においては、仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い、担保を立てさせて強制執行停止等がされた場合に、 ﹁仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い担保を立てさせて強制執行停止等がされた場合において、担保提供者が破 産宣告を受けたとしても、その一事をもって、﹁担保の事由が消滅したこと﹂に該当するということはできないと        パむ 解するのが相当である。﹂と判示したもの、さらに、仮執行宣言付判決の上訴係属中、金銭を供託する方法による 担保を立てて強制執行停止決定を得た被告が破産宣告を受けたことから、その破産管財人が、担保の事由が消滅し たとして、担保取消しの申立てをしたことについて、﹁仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い強制執行の停止がさ れた後、債務者が破産宣告を受けた場合に、債権者は、強制執行の停止がされなかったとしても仮執行が破産宣告 時までに終了していなかったという事情がない限り、強制執行の停止により損害を被る可能性があるから、債務者 が破産宣告を受けたという一事をもって、﹃担保の事由が消滅したこと﹄に該当するということはできないと解す        パぞ るのが相当である。﹂と判示したもの、など存続説に立ったものがある。 139

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 ここでは、仮執行宣言付判決を得た勝訴原告が、その債務名義による債権差押えと転付命令の方法によって確定 した債権が、被告の濫控訴に遠因する破産または民事再生という倒産処理手続の活用によって、破産債権または再        パ  生債権に還流せしめられることの不合理さについてだけ指摘しておきたい。それは、仮執行宣言付判決に係る訴訟 が控訴審に係属中に債務者が破産手続開始決定を受けた場合において、仮執行が破産手続開始決定当時いまだ終了 していないときは、破産法七〇条一項本文により仮執行はその効力を失い、勝訴原告︵債権者︶は破産手続におい てのみ債権を行使すべきことになるが、他方、仮執行が破産手続開始決定当時既に終了していれば、破産手続開始 決定によってその効力が失われることはないというべきであり、仮執行宣言付判決に対して控訴に伴う強制執行の 停止がされた後、敗訴当事者︵債務者︶が破産手続開始決定を受けた場合には、その強制執行停止がされなかった としても仮執行が破産手続開始決定時までに終了していなかったとの事情がない限り、勝訴原告︵債権者︶は、強 制執行の停止により損害を被る可能性がある。それゆえに、仮執行宣言付判決に対する控訴に伴い強制執行停止が されたあと、敗訴当事者︵債務者︶が破産手続開始決定を受けた場合には、その供託金について、勝訴原告が他の 債権者に先立って弁済を受けることのできる損害賠償請求権︵被担保債権︶の範囲は、強制執行停止の決定によっ て仮執行が停止されなかった場合に得たであろう金額と破産手続により配当を受ける金額との差額であると解され   ハ レ ていることになる。 140  4 訴権の濫用との関係  控訴に伴う執行停止に関連する論点として、﹁訴権の濫用﹂についても検討しておく必要がある。それは、第一 審で敗訴した被告は、その紛争如何によっては、訴訟の引き延ばしを訴訟戦術としてとることが多いからである。

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とくに本稿で考察の対象としたようなゴルフクラブ会員による預託金の返還を求めて争われる場合には、ゴルフク ラブ経営者の経営状態悪化に伴う資金繰り等との関係で、時間稼ぎを考慮しながらの訴訟対策を練るのが普通であ り、その後にとる手続として破産法の適用や、最近では、民事再生法の適用を申請するケースが圧倒的である。  元来、法的紛争の解決を求めて訴えを提起することは、原則として正当な行為であり、提訴者が敗訴の確定判決 を受けたことのみによって、直ちに当該訴えの提起を違法なものということはできない。訴えの提起が、相手方に 対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠 くものであるうえ、提訴者がそのことを知りながら、または通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるの に提訴者があえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認めら        パみレ れるときに限られるものと解されている。したがって、訴権の濫用は、裁判制度の自由な利用を著しく阻害する違 法な訴訟行為といえる。  もう一つは、控訴権の濫用の観点である。控訴の提起自体が不法行為を構成すると断定することには慎重でなけ ればならないが、控訴人において請求に理由がないことを明らかに知りながらあえて控訴を提起したとか、請求に 理由のないことを容易に知ることができる立場にありながら、それをせずして控訴を提起した場合、とりわけ他の 民事手続を利用するためだけの訴訟引き延ばしのためにあえて控訴したものと評価できる場合には、濫控訴として 不法行為が成立するものと考える。  以上のことを綜合すると第一審で仮執行宣言付判決を得た原告に対して、執行の停止を申し立てるとともに控訴 する被告のパターンとしては、次の図のように構成できる。︵図表3参照︶  ①被告の控訴が適法な控訴である場合 141

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〔図表3〕仮執行宣言付判決に対する控訴パターン /① →控訴→控訴棄却 →控訴+執行停止申立て→控訴棄却

:灘欝灘灘申立て→控訴棄,,}②

仮執行宣言付判決  ②被告の控訴が濫控訴に当たるような場合  右のいずれのパターンの場合も、勝訴原告に積極損害が生ずることがあるこ とについては吟味されていないものと思われる。 四 おわりに  ゴルフクラブが経営破綻する例は、今後も引き続き起こることが予想され る。ゴルフクラブ経営は、その経営状態が安定している状況にあっては、ゴル フクラブ会員権も有力な財産権として評価され、会員数が維持されることで全 体としての経営が成り立ってきていた。その経営財政基盤として、多くの会員 から預託された金員が組み込まれている。したがって、ゴルフクラブの会則等 においては、保証金等の名目で納付された預託金について、据置期間の設定お よび延長等の規定が定められていることが多く、預託金の返還をめぐる紛争が 起こった場合には、その点をゴルフクラブ経営者側が主張して争われることに なる。ゴルフクラブ会員権は、元来、財産権であり、預託金の据置期間等につ いて問題が生じない限り、加入者自身が自己の財産権を処分する方法の一つと して、あるいは経済活動の一環として、確定債権としての預託金返還請求権と して自由に行使することができることは当然の理である。したがって、ゴルフ クラブ加入者による預託金返還請求訴訟は、あらかじめその勝敗が決している 142

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ような常況で行われている。  これまで見てきたように、仮執行宣言付判決後、控訴とともに執行停止が申し立てられてそれが認められたあ と、いろいろな形で生ずる勝訴原告の損害について、それを保護するための規定が用意されない状態にあること は、債務者たる敗訴当事者の権利保護に比して不公平感があり、実体的な救済にとどまらず、何らかの基準を明確 にする必要があるということである。  敗訴者の控訴の利益と勝訴者の迅速な満足を受けるべき要求とを、具体的な場合に応じて調和”均衡を図ろうと することが仮執行宣言の制度目的とするのであれば、現行法が予定する敗訴者に生じる損害とともに、敗訴者が執       パ  行を受けることを引き延ばすためだけに控訴することによる弊害としての損害についても考慮すべきである。  このことは、破産手続開始決定前に仮執行宣言付判決を取得していた破産債権者と破産手続においてはじめて破 産債権者となった者との間には破産手続上何ら別異に扱う理由はないとする︵破産法七〇条︶ことと齪齪するもの         パむ ではないと思われる。それは、後に破産者となる被告が、その手続以前において、多くの不適切な訴えを繰り返 し、かつ、その殆どが敗訴するという実態があるような場合に、破産手続を執ることを容認すること自体が不適切 と考えられるからである。したがって、その限りでは仮執行の担保であっても破産による担保事由の消滅というこ とにはならず、むしろ﹁供託した金銭について、他の債権者に先立ち弁済を受ける権利を有する﹂債権者として、 実体法上の質権︵別除権︶ないし財団債権としての保護を受けることができると解すべき余地があると考えたい。    

_注

  〉

1

後藤徳司﹁財産権としてのゴルフ会員権総論﹂判タ六九六号一五頁以下参照。その後のゴルフ会員権に関する見解の動向につ 143

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 いては、後藤徳司﹁ゴルフ会員権論の再構築﹂判タ一〇二六号五三頁以下。 ︵2︶帝国データバンクによるゴルフ場経営業者の倒産動向調査によれば、﹁ゴルフ場の倒産が増加し始めた九〇年代後半の倒産件数 と比べて、いまだ高水準で推移していることに変わりなく、また過去に預託金償還が到来した際、償還期限の延期や会員権の分割 によりしのいできたゴルフ場が倒産に至るケースも出てくるものと思われる﹂としていることは、﹁債権整理型﹂の紛争の発生を 予測できる内容になっているといえる。︵耳8一\\≦≦藝巳げb9甘\お8匡\類讐魯ぎ鵬\胃霧の\8859算巨︶ ︵3︶蜂谷英夫﹁ゴルフ会員権の法的性格﹂ジュリ九九一号一四九頁。この他に、預金債権︵預金返還請求権︶、保証金、保管金、管 理料、更新料なども、名称のいかんを問わず、確定的債権とすることができよう。 ︵4︶預託金の返還をめぐる紛争の多発化については、野村豊弘﹁預託会員制ゴルフクラブ﹂金判一〇一二号二頁により、すでに指 摘されている。 ︵5︶大阪高判平成二〇年二月二八日判タ一二七八号三二〇頁参照。小野寺忍﹁控訴の提起に伴う執行停止に基因する損害賠償請求 とその範囲﹂別冊判タニ五号一八四頁︵平成二〇年度主要民事判例解説︶。 ︵6︶新堂幸司u鈴木正裕”竹下守夫編・注釈民事訴訟法ゆ三八九頁以下︹栗田隆︺。 ︵7︶三ヶ月章博士は、濫上訴の抑制を仮執行宣言制度の第一義とされている︵民事訴訟法︹補正版︺︵弘文堂、一九八一︶四八五頁  以下︶。 ︵8︶第一審の判断が控訴審で覆る例は極端に少ないことが既に主張され始めているところであり、その意味では三審制が理想的な 形で維持されているとは言い難いことになるが、この点については別に検討することとしたい。 ︵9︶仮執行免脱宣言については、梅本吉彦・民事訴訟法︹第四版︺九六七頁以下。 ︵10︶伊藤眞﹁上訴と執行停止﹂司法研修所論集八九号二七頁以下。 ︵n︶信濃孝一﹁執行停止﹂塚原朋一ほか編・新民事訴訟法の理論と実務︿下﹀一四三頁以下。 ︵皿︶伊藤・前掲書三四頁以下。 ︵13︶執行停止要件判断の手続に関しては、村松俊夫﹁執行の停止とその担保﹂菊井先生献呈論集裁判と法︵下V一〇三二頁以下参 144

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照。 ︵M︶新堂幸司”鈴木正裕H竹下守夫編・注釈民事訴訟法働三八九頁以下︹栗田隆︺。 ︵15︶川村俊雄﹁仮処分命令が不当であるとして取り消された場合において仮処分申請人に過失がないとされた事例﹂民商六一巻五 号八三八頁、坂原正夫﹁仮処分命令が不当であるとして取り消された場合において仮処分申請人に過失があるとはいえないとされ た事例﹂法学研究四三巻七号一二二頁、千種秀夫﹁仮処分命令が不当であるとして取り消された場合において仮処分申請人に過失 があるとはいえないとされた事例﹂最判解民事篇昭和四三年度二二九二頁。 ︵16︶最判平成二年一月二二日集民一五九号一二一頁、判タ七二一号一三〇頁。判例評釈として、右近健男﹁本案訴訟で敗訴した仮 処分債権者の不法行為責任﹂民商一〇二巻六号八三〇頁、山田文﹁仮処分命令の本案において原告敗訴の判決が確定した場合にお  いて仮処分申請人に過失があったとはいえないとされた事例﹂法学︵東北大学法学会︶五五巻三号一九四頁、栂善夫﹁仮処分命令 の本案で原告敗訴の判決が確定した場合と仮処分申請人の過失の推定﹂法セミ四三〇号一二〇頁、浦川道太郎﹁仮処分命令の本案 訴訟における原告敗訴判決の確定と仮処分申請人の過失﹂ジュリ臨増九八○号八三頁、小粥太郎﹁違法な保全命令による損害賠償 責任ωH過失﹂別冊ジユリ一七七号二五八頁︶。 ︵17︶類例として、最判昭和五七年七月一日集民二呈ハ号一七一頁、金判六八一号三四頁がある。また、仮差押命令の申立てが違法 と評価された例として、最判平成八年五月二八日民集五〇巻六号一三〇一頁、判タ九一四号一〇四頁がある。その判例評釈として は、野山宏﹁仮差押解放金に充てた借入金に対する利息及び自己資金に対する法定利率による金員と違法な仮差押命令の申立てに より債務者に通常生ずべき損害﹂曹時五〇巻二号三〇一頁、小野秀誠﹁仮差押解放金に充てた借入金に対する利息及び自己資金に 対する法定利率による金員と違法な仮差押押命令の申立により債務者に通常生ずべき損害﹂金判一〇二一号四二頁、難波譲治﹁不 動産の仮差押えが不法行為となる場合の損害賠償﹂リマークス一五号六九頁、日比野泰久﹁仮差押解放金に充てた借入金に対する 利息及び自己資金に対する法定利率による金員と違法な仮差押命令の申立てにより債務者に通常生ずべき損害﹂ジュリ臨増二一 三号一二七頁、下村眞美﹁違法な保全命令による損害賠償責任ωH損害の範囲﹂別冊ジュリ一七七号二六〇頁、安達栄司﹁仮差押 解放金に充てた借入金に対する利息および自己資金に対する法定利率による金員と違法な仮差押命令の申立による債務者に通常生 145

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ずべき損害﹂NBL六三二号六四頁。その後の同旨の判例として、最判平成八年五月二八日集民一七九巻七一頁、判タ九一四号一 〇〇頁。 ︵18︶伊藤眞﹁不当仮執行にもとづく損害賠償責任﹂判タ七七五号四頁以下。 ︵19︶兼子一・民事訴訟法体系︹増補版︺︵一九七二︶三五六頁以下。 ︵20︶三ヶ月章・民事訴訟法︹補正版︺︵弘文堂、一九八一︶四九〇頁 ︵21︶新堂幸司・新民事訴訟法︿第四版﹀七〇三頁以下。 ︵22︶伊藤眞・民事訴訟法︿第三版三訂版﹀五四五頁以下。 ︵23︶法務省民事局参事官室編・一問一答新民事訴訟法四六二頁以下参照。 ︵24︶第一審一福岡地判平成一六年五月一一日判タ一一九九号二四五頁、第二審”福岡高判平成一七年五月一八日判タ一一九九号二  四一頁。 ︵25︶大阪高判平成二〇年二月二八日判タニ一七八号三二〇頁。︵前記注五︶ ︵26︶最高裁平成一三年一二月一三日決定最判解民事篇平成一三年度︵下V︹高部眞規子︺八四二頁参照。 ︵27︶菊井維大”村松俊夫・全訂民事訴訟法1︹補訂版︺六九〇頁。 ︵28︶近藤完爾・執行関係訴訟︵全訂版、一九六八年︶六二四頁。 ︵29︶大阪高決平成一二年一〇月一八日民事法情報一七一号五八頁。 ︵30︶青山善充﹁仮執行の効果に関する一考察﹂法学協会百周年記念論文集第三巻三九四頁。 ︵3 1︶最決平成二二年一二月一三日民集五五巻七号一五四六頁、判タ一〇八三号一三四頁。判例評釈として、石渡哲﹁仮執行宣言付 判決に対する上訴に伴い担保を立てさせて強制執行停止等がされた場合における債務者に対する破産宣告と担保の事由の消滅﹂判 時一七八五号二〇七頁、高部眞規子﹁仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い担保を立てさせて強制執行停止等がされた場合におけ  る債務者に対する破産宣告と担保の事由の消滅﹂最判解民事篇平成一三年度八二二頁、長谷部由起子﹁仮執行宣言付判決に対する  上訴に伴い担保を立てさせて強制執行停止等がされた場合における債務者に対する破産宣告と担保の事由の消滅﹂リマークスニ六 146

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号一三八頁、佐賀義史﹁仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い担保を立てさせて強制執行停止等がされた場合における債務者に対 する破産官一告と担保の事由の消滅﹂判タ一二一五号二二六頁︵平成一四年度主要民事判例解説︶、山本克己﹁仮執行宣言付判決に 基づく強制執行が停止された後判決確定前に債務者に破産宣告がされた場合において強制執行停止のために立てた担保についての 担保事由の消滅の有無﹂金法一六五二号六四頁、がある。 ︵3 2︶最判平成一四年四月二六日集民二〇六号四〇一頁、判タ一〇九七号二七四頁。判例を紹介したものとして、吉田清悟﹁仮執行 宣言付判決に対する上訴に伴う強制執行停止の担保について債務者の破産宣言と担保の事由消滅の当否﹂民事法情報一八九号七〇 頁がある。 ︵33︶近時、破産手続中にもかかわらず、民事再生法の適用申請を悪用すること︵詐欺再生︶を企図した事件が報道されたこともあ ることから、制度の悪用︵濫用︶にほかならないような濫控訴も潜んでいるのではないかと推察するところである。 ︵34︶小川浩﹁ω強制執行停止決定の担保について債権者が他の債権者に先立って弁済を受け得る被担保債権の範囲、ω被供託者が 供託者に対し強制執行停止決定の担保である供託金につき還付請求書を有することの確認を求める訴えが確認の利益を欠くものと して却下された事例﹂判タ臨増一二一五号二二〇頁︵平成一七年度主要民事判例解説︶。 ︵35︶最判昭和六三年一月二六日民集四二巻一号一頁︵判タ六七一号一一九頁︶は、訴えの提起行為が不法行為にあたるとする。そ の判例紹介として、吉村徳重”松尾卓憲﹁訴えの提起が違法な行為となる場合﹂判タ六七二号四七頁、小林秀之﹁訴えの提起が違 法な行為として賠賞責任を生じさせる場合﹂法セ四〇七号二二頁、吉田邦彦﹁訴えの提起が不法行為となる場合﹂判時一三〇〇 号二〇一頁、伊藤敏孝﹁訴えの提起が違法な行為となる場合﹂法学研究六二巻四号一四七頁、林屋礼二﹁不当提訴による賠償請求﹂ ジュリ九〇八号五三頁、中村隆次﹁訴えの提起と不法行為の成否﹂判タ七一八号二二頁、栂善夫﹁訴えの提起が違法となる場合﹂ ジュリ臨増九三五号一一九頁、水元宏典﹁訴え提起と不法行為H訴訟上の権能の濫用﹂別冊ジュリ一六九号八八頁、瀬戸正義﹁訴 えの提起が違法な行為となる場合﹂最判解民事篇昭和六三年度一頁、島田清次郎﹁訴えの提起が違法な行為となる場合﹂判タ七〇 六号九四頁︵昭和六三年度主要民事判例解説︶がある。これとは別に、小野寺忍﹁訴権の濫用﹂山梨学院大学法学論集三八号三五 四頁以下参照。 147

(31)

︵36︶竹下守夫﹁仮執行の宣言﹂民事訴訟演習−一七九頁参照。

︵37︶大阪地決平成一二年七月三一日は、仮執行宣言付判決に基づく強制執行についても破産財団との関係ではその効力が失われる

から、強制執行停止のために立てた担保についても、控訴審継続中に破産したことによって当然に担保の事由が消滅するとしてい

る︵民事法情報一七一号五八頁︶。

参照

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