台湾と日本の中学校技術教育に関する比較研究
教科・領域教青専攻
生活・健康系コース(技術・工業・情報)
王 静 轍
1.はじめに 2002年から台湾の義務教育の国民小学と国 民中学に新しい国民中小皐課程綱要(日本の学 習指導要領)が導入され,教育課程の構成が大 幅に変化した。従来は日本と同じ組み合わせで あった家政と生活科技(日本の技術・家庭)の生 活科技は,本来は独立していた理化,生物,地 球科学(日本の理科)と統合されて「自然と生 活科技Jになり,授業時数は減少した。台湾で 多くの国民中学では進学率を高めるために生 活科技を指導しない傾向が事しい。 本研究では,台湾の国民中学等の技術教育に おける深刻な教育課題を改善または解決する ための手がかりを得ることを目的として,台湾 と日本の教育制度,ならびに技術教育における 両国の特徴等について,学習指導要領等をもと に比較検討した結果を報告する。2
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学校制度と中学校技術教育の沿革 台湾と日本の教育制良二はよく似ており,学制 は六・三・三・四制で,義務教育は九年間であ る。台湾で中学校以後は普通教育と職業教育が 分れる分岐型の教育制度である。日本は主とし て単組型の学校制度であるが,分11度型の要素も あるといわれる。両国の相違点の一つは進学の 方法である。日本の高校では,入学試験が各県 ごとに行われているに対して,台湾では,主に 基本能力測験という全国統一の試験によって 進学している。 両国における技術教育の内容は職業教育か -343指導教員
尾 崎 士 郎
ら生活での応用に向かって変遷し,家庭や社会 の構造の変化に従い,両国ともに男女別学の教 育方針から男女均等の教育になった。そのため に,職業人として必要な技術を中心した実践的 な内容から生活のための技能・技術と知識・理 解の均衡に配慮した一般教義的な内容に移行 した。 また,台湾で、は国民小学と国民中学に自然と 生活科技があり,高級中学で、生活科技が 2単位 必修となっているが,日本では主に中学校での 技術・家庭(技術分野)がある。 3.中学校教育課程 台湾で各科目の授業時数は総授業時数に対 する'剖合として決められ,日本では各教科の授 業時数が決められている。台湾の「自然と生活 科 技jの授業時数は総授業時数の 15%を占め, 生活科技の内容は迦あたり約一時間で,総授業 時数の 1/33(40/1320)である。日本の技術で は第一学年と第二学年は総授業時数の 1/29 (35/1015),第三学年は総授業時数の 1/58 (17. 5/1015)である。 日本の現行の中学校学習指導要領では,技 術・家庭の中で技術分野と家庭分野に区別して 記述しているが,台湾の図民中小皐課程綱要で は , 教 科 の 内 容 は 能 力 指 標 と し て 自 然 と 生 活科技」の中で両者を区別せずに一括して記述 されている。「自然と生活科技」は8項目に区分 され,次のように記述されている。 1.過程技能 2.科卒輿技術認知3.科皐輿技術本質 4.科技的禁展 5.科皐態度 6.思考智能 7.科皐雇用 8.設計輿製作 日本の新学習指導要領における技術の内容 は以下の通り。 A 材料と加工に関する技術 B エネルギー変換に関する技術 C 生物育成に関する技術 D 情報に関する技術