• 検索結果がありません。

東南アジア低湿地の土壌 ―― その2 : 湿地林下の有機質土壌――

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "東南アジア低湿地の土壌 ―― その2 : 湿地林下の有機質土壌――"

Copied!
20
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

東 南 ア ジ ア研 究 20巻4号 1983年3月

資 料 ・研究 ノー ト

東 南 ア ジ ア 低 湿 地 の 土 壌

- そ の

2.

湿 地 林 下 の有 機 質 土 壌

-久

剛*

Sol

i

sofSwampyCoas

t

alAr

easi

nSout

heas

tAs

i

a

-Par

t2.

Or

皇ani

cSoi

l

sunde

rt

heSwampFor

es

t

-Kazutake KyUMA*

ThevastareaoftroplCalpeatlandinSoutheast Asiarepresentsanimpotrantfractionofpotentially cultivable land・ Tropical peat develops under swampforestinthefreshwaterenvironmentofthe low coasta・lzone. Mostisdeepombrogenouspeat oftheraised-bogtype,and thusextremelyoligo・ trophicinnutritionalstatus・

This paper reviews the process offormation,

physicalandchemicalcharacteristicsJand classi 丘-cationoftropicalpeat,anddiscussesindetailpr ob-lemsthatthese characteristicsraise in attempts atreclamation. Continuousland subsidencedue to dewateringタCOmpaCtion a-nd decomposition of peat is particularly serious when deep peat is

Ⅰ は じ め に 東南 ア ジアの低湿地 を2区分 す る場合, い ろいろな面か らみて最 も意味のある区分 は, 大陸部東南 アジアの低湿地 と,島興部東南 ア ジアの低湿地を分 けることであ る。 この区分 は,気候 的 には,顕著 な乾雨季 の交替 を示 す 大陸部 の熱帯 サバ ンナ気候 と,常時湿潤 な島 *京都大学農学部 ;Faculty ofAgriculture,Kyoto

Universlty,Kitashirakawa,Sakyo-kuJKyoto606,

Japan

492

drained fらr reclamation. De丘Ciencies in both majorandminorelementsofoligotrophicpeatare nolessaproblem than subsidence. Afterdis ap-pearanceofpeatduetodecomposition,moreover

,

theunderlyingclaymaydevelop intoacid sulfate soil. Anotherunsolvedproblem intheutilization ofpeatisthefailureofgrain formation ofpaddy rice,whichisotherwisethecrop mostadaptedto peatland.

Itistentativelyconcludedthatonlyafew percent oftotaltropicalpeatland maybereclaimed suc -cessfully,and the rest should be conserved as natural swamp forest. 峡部 の熱帯降雨林気候 とい う対照 を示す し, 地形発達史的 には, ヒマ ラヤ山塊 に起原 を も つ大河川 の運ぶ大量 の土砂 によ って,急速 に 堆積 され発達す るデルタ と, ス ンダ陸棚 に面 す る広大 な潮汐平野 の面積 と後背山地 の土砂 供給量 の間の ア ンバ ランスか ら, なかなか埋 積 の進 まない島峡部沿海地域 との対周 をみせ る。 そ して, これ らの気候 と地 形 の 違 い か ら, どん どん陸化熟成 の進む大 陸部 デル タの 粘土質土壌 と, 自然 の過程で はなかなか陸化 熟成 の起 こ らない島峡部 の有機質土壌 との顕

(2)

久 馬 :東 南 ア ジア低 湿 地 の土壌 (そ の2) 著 な対照 が もた らされ る。 さ ら に そ の た め に,大 陸部 デル タで は水 田 と して の土地利 用 が進 展 して きた の に対 し, 島峡 部 沿海地域 の 大 部分 は未 開 の湿地林 と して残 され て い るの で あ る。 しか し,今 日 この島峡 部 の湿 地林 地精 が, 最 後 に残 され た 開発対 象 と して,注 目を あ び るに至 って い る。すで にマ レー シアで もイ ン ドネ シアで も,湿 地林 地帯 に政府:の農 地 開発 プ ロジ ェク トが入 り込 んで い る。 い った い湿. 地林 地 帯 の開発 は ど こまで可 能 な の だ ろ う か。前報 で はマ ング ローブ下 の堆 積 物 に由来 す る土壌 と して の酸性 硫 酸塩土壌 につ いて, これを積極 的 な開発 の対 象 とす る立場 で論 議 を した。 なぜ な ら, この場合 の リス クはす べ て経 済 的 な もので あ り,農 地 の絶 対 的不足 と い う条 件 の下 で は多額 の投 資 も可 能 にな る と 考 えた か らで あ る。 本 報 で は湿 地林 下 の土壌 につ いて, そ の生 成 ・分 類 ・性 質 な どを レビ ュー した上 で, 開発 の ポテ ンシャル を考 え る ので あ るが, マ ング ロー ブ下 の土壌 の場合 と 同 じ積極 的開発 の立場 を とれ るだ ろ うか。本 報 で最 もクル ー シ ャルな論 議 は, ま さにその 点 につ いて な されね ばな らな いだ ろ う。 なぜ な ら熱帯 低湿 地 は,地球 上 で乏 し くな った縁 の森 林 の最後 の立地 で あ るのか も しれ な いか らで あ る。 ⅠⅠ 東 南 アジ アの湿 地林 の拡 が りとその 生成 a.湿地林 -泥炭 地 の拡 が り 現 在 の東 南 ア ジアの湿 地林 (swamp forest) は, ほ とん ど例 外 な く汲水 条 件下 の泥 炭質堆 積物 上 に乗 って い る。 した が って, 逆 にいえ ば,湿 地林下 の土壌 は泥炭 土壌 で あ り, この 特異 的 な土壌 の分布 を抑 えれ ば湿 地林 の拡 が りを知 り うる。 東 南 ア ジア の 泥 炭 研 究 の 草 分 け で あ る Polak は,近 年 の総 説 【1975]の中で,熱帯 に泥炭 が存在 す る とい うこと自体 が, なか な か ヨー ロ ッパ の研究 者 に うけ入 れ られな か っ た事 情 を書 いて お り, オ ラ ンダ 人 植 物 学 者 Koorders とい う人 が1895年 に出版 した スマ トラ横 断 の探 険記 が きっか けにな って,今 世 紀 初頭 にな りは じめて熱帯 泥炭 の存在 が認 知 され るに至 った とい うこ とで あ る。現 在 で は 表 1の よ うに,熱帯 圏全 体 で は約3,000万 -クタ ール の泥 炭 が存在 す る ことが 明 らか に さ れ て お り, 中で も東 南 ア ジア には全体 の2/3, 2,000万 - クタ ール が集 中 して い る。その分 布 は図1の ご と くで あ り, いわゆ るス ンダ陸 棚 に面 した半 島 マ レー シア, スマ トラ, サ ラワ ク, カ リマ ンタ ンに広 い面 積 が あ る。 た だ し, これ らの分布 に関す るデ ータ も, まだ人 によ り くい違 いが大 き く, た とえ ば,表 1の 中で Driessen[1978】は西 イ リア ンの泥炭 面 積 を7万 ヘ クタ ール ぐらい と見積 もって い る の に対 し,Polak[1975]の図 1で は非常 に大 きい見 積 も りを与 えて い る。 また, ヴ ェ トナ 表 1 熱帯泥炭の地域別分布(Driessen[1978] よ り引用 ,一部 改変) Location Asia Thailand Vietnam PeninsularMalaysla Sarawak,Sabah,Brunei Kalimantan Sumatra lrianJaya Papua Others Africa Kenya/Uganda Zaire Others

America Guianas Brazil Colombia Venezuela Others TroplCalPeats (ha) ハ リ ( 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ' ▼ ' ' ' I l ナ ' 0 0 0 0 5 0 0 0 0 0 0 0 5 6 0 7 0 0 2 5 8 6 2 7 5 5 1 1 6 9 1 22,185,000 0 o o 0 o o o 0 0 0 0 0 1 1 † ■ o o o 0 0 0 0 0 5 0 5 0 1 I ● l 1 2 0 t 3,000,000 to3,500,000 (?,) 了_\ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0 0 5 0 3 0 3 1 3

(3)

東 南 ア ジア研 究 20巻4号 図1 マレーシアとインドネシアにおける泥炭の分布(Polakt1975]より引用) ムの見 積 もりが Moormann [1961]の土壌 図 に もとづ いて 150万 - クタ ール と与 え られて い るの は過大 で あ って, たかだか30万 ヘ クタ ール程 度 (VoTongXnan か らの聞 き書 き) で あ る。 ただ し, これ らの推 計をす るにあた って の 問題 は,泥炭土壌 を どの よ うに定 義す るか と い うことにあ る。Polak[1952]は重量 で65% 以上 の有機物 を含有 す る,1m (も し耕作 下 にあれ ば 50cm)以 上 の厚 さの有機質堆 積物 を泥炭土壌 と して い る し, Driessen [1978] は重 量で65%以 上 の有機 物 を含有 し, 50cm 以 上 の厚 さを もつ ものを泥炭土壌 と して表1 を作 って い る。 この定 義 は1930年 モス クワで 開 かれた第 2回国際土壌学会 で の泥炭 の定 義 に由来 して い る。1'Moormann[1961]はメ コ ンデル タの土壌調査 で,有機質堆 積物 30cm 以 上 を もつ ものを泥炭土壌 と して い る。 この よ うに泥炭土壌 の定 義 が変 れ ば,泥炭地 の面 積 の見積 もりは大 き く変 る。 後述 す るアメ リ カ合衆 国農務省 の SoilTaxonomy方 式 にお け る有機質 土壌 (Histosols)の定 義 を適用 し, 有機 物含 量30%以 上 の有機 土 壌 物 質 を 表 層 80cm の深 さ内で,積 算で 40cm 以 上有 す る 1)この定義に付随 して,黒泥(muck)は有機物含 量が35-65%のものと規定されている。 494 ものを有機質土壌 とすれ ば, それ はイ ン ドネ シアだ けで 2,700万 - クタ ール に ものぼ る と されて い る [Driessen and Soepraptohardjo 1974]。 b.熱帯 泥炭地 の種類 とその生成 これ らの泥炭 と, その上 の湿地林 は, どの よ うに して で き た の だ ろ う か 。Anderson [1964]はサ ラワク, ブル ネイの湿地林 地帯 の 研究 の中で,次 の二 つ の湿地 を区別 した。 i 淡水湿地 (freshwater swamp)- 規則 的 にか, あ るいは時 々冠水 し,一般 に pH> 4 の泥炭土 か黒泥土 を有 す る。 その灼熱 減量 は<75% で,平坦 な い しわず か に凸な表面 を もつ。 ii 泥炭湿地 (peatswamp)- 冠水 す る こ とがな く, pH <4 の泥炭土 を有 す る。 その 灼熱 減量 は>75% で,顕著 に凸 な表面 を有 す る。 す なわ ち,淡水湿地 は無機物含 量 が比較 的 高 く, どち らか といえ ば mesotrophic (中栄 秦) で あ るが,泥炭湿地 は無 機 物 含 量 が 低 く,常 に oligotrophic (貧 栄養) で あ る。 そ して,汲水湿地 は雨季 にはん らんす る川沿 い の低地 にで きるが,面積 的 には泥炭湿地 に比 し無視 で きる程度 で あ る。 ただ し, この区分

(4)

久 馬 :東 南 ア ジア低湿 地 の土壌 (そ の2) は さほ ど厳 密で な く, た とえ ば泥炭 配地 の周 縁 部 は,頻 繁 に冠 水 し,無 機 物含 量 が比較 的 高 い点 で は淡水 湿 地 と見 徹 す こ と が で き る し,逆 に扱水湿 地 で も, さ らに有機 物 が集積 し冠水 位 よ り も高 くな った もの は泥 炭湿 地 と な る。 Anderson[2'bz'd.]は この よ うに泥 炭湿地 を 規 定 した上 で, この湿 地 の主体 を なす泥炭湿 地 ので き方 を,次 の3段 階 に 分 け て 説 明 し た 。 第 1段 階- 海岸 の湾 , デル タな どの沖 積 堆 積物 にマ ング ロー ブが定 着 す る。 沖積 物 の 堆 積 が さ らに沖 - 向 か って続 くと, 内陸側 の マ ング ローブは漸 次 移行 型 群 落 によ って お き 換 え られ, マ ング ロー ブ下 にた ま った堆 積物 上 に浅 い泥炭 がで きる。 第 2段 階- 海側 の縁 辺部 で沖積 物 が堆 積 され続 け る と,湿 地林 はマ ング ロー ブ と交 替 しな が ら前 進 す る。 こ う して, もと もとの湿 地 の海 か らの隔た りが増 す につ れて,満潮 時 の河川 のバ ックア ップ によ り河岸 には沖 積 物 が堆積 して 自然堤 防 を作 り,最 終 的 にはそ の 高 さは湿 地 の底 泥 の レベル よ り高 くな る。 こ う して泥炭 湿地 に特有 の皿 状 の基盤 がで き, 泥 炭 の集積 は急速 に進 ん で,浅 い レ ンズ様 構 造 が発 達 す る。 第 3段 階- 湿 地 の 中 の泥炭 集 積速 度 は低 下 し,典 型 的 な平頂 の沼沢原 (bog plain)が 発 達 す る。 この沼沢 原 は SAoreaaZbz`daの優

越 す る植 物 群 集 によ って 占め られ る。 このAndersonの研 究 で明 らか な よ うに, 熱帯 泥炭 の大 部分 は木質 泥炭 で あ るが, そ の 形状 は高位 泥 炭 的で あ り, いわ ゆ る raised bogを作 り,完全 に降雨 に依存 して生 成 す る 0-brogenous な泥炭 で あ る。 地 形 的 な低地 や浅 い湖 沼 が漸次 植生 に 占拠 され, その遺物 が埋 積 してで き る topogenous な泥炭 は, Anderson の い う淡水 湿 地 にあた り, これ は 周 辺 か らの水 や無 機 物 の流入 によ って養 わ れ て い るた め に, eutrophic (富栄 養 ) な い し mesotrophic な ものが多 いの に対 し, raised bogを作 り周 辺 か らの物質 の流入 が望 めな い ombrogenous な泥炭 は,常 に oligotrophic で あ る。後述 す るよ うに, 泥炭地 を農 地 と し て利 用 す る場 合 の一 つ の大 きい問題 は, ここ にあ る。 この よ うな ドー ム状 の地 形 断面 の二 つ の例 を, 図2に示 して あ る。 この図 にみ られ るよ うに,周 囲 の河川 の水 位 に くらべ数m も盛 り 上 が って い る場合 が あ り, 降水 は泥炭 の ドー ムの頂 上 か ら放 射状 に排 水 され る。 この図 か らもわ か るよ うに, よ く発 達 した泥炭 の ドー ムの頂 上 はかな り平坦 で あ るが, これ は, 梶 炭 が集 積 す るにつ れ て, ます ます貧 栄 養 にな り, それ に対 応 した貧 弱 な植生 が成 立 す るた め,高 位 にあ る中心部 で は泥炭 の集 積速度 が 減 じ,縁 辺部 で は中心 部 と同 じレベル まで は な お集積 が続 くた めで あ る。 この泥 炭集積 に つ れ て集 積速 度 が低下 す る ことを,14C 年 代 測定 によ って た しか めた のが,表2の デ ータ で あ る。 この例 の泥炭湿地 は深 さ 12m に及 び,最下 部 の泥炭 は約4,300年 前 にた ま った もの と 考 え られ, 初 期 の集 積速 度 は 約 4.7 mm/年 程度 で あ った ことが わか る。成 熟 した 泥炭 の集積 速度 と して, わ が国で は,北 海道 の多 くの泥 炭地 で 1mm/年 といわ れ て い る が,Driessen[1978]も熱帯 の ドー ム 状 泥炭 の集積速 度 と して0.5mm/年 以下 とい う値 を 与 えて い る。 東 南 ア ジアの泥炭 湿地 の生 成 時期 につ いて は,上例 の ごとき 14C 年 代 測定 か ら,最 終 氷期 の の ち, いまか らおよ そ5,000-6,000年 前 に海水 準 は最 高位 に達 した が, そ の時 の海 岸線 が,今 日の泥炭 湿地 の最 も内陸側 の縁 に あた る と考 え られて い る [Anderson 1964]。 このの ち海岸線 が徐 々に後退 す るにつ れて, 現在 み るよ うな泥炭 地 が発達 して きた もので あ ろ う。 この海岸線 の後退 は,大 陸部東 南 ア 495

(5)

東南 ア ジア研究 20巻4号 Depth(rn) + 0 2 t一 4 Eh 相 p; 絹 代 <+ T Sf 小 05 10 T5 20 25 km

0

1 2 3 4 5 6 7 8 9 LO H rZ km 図

2

二つの代表的 ドーム状泥炭の断面(Driessenl19781より引用) 表2 サラワク泥炭の14C年代測定結果 (Anderson[1964]より引用)

DsSa(eaf!Spmpl,lOeef (′y:eSr,三賢二、es, ▲7f蒜,eePtne'tt:T CIll peFfaeela:cftAcul,Aetcreccdumul器 .uaita:ett:iionorOs3 16.40 2,255±60 0.00-16.40 0.7271 32.81 3,850±5516.40-32.81 1.0285 39.37 4,270±7032.8ト39.37 1.5634 ジアのデル タにみ られ るよ うな, 旺盛 な堆 積 作 用 の結果 で はな く,海水面 の相 対的低下 に 496 よ る と考 え られ る。 そ して, ス ンダ陸棚 に面 した浅 い海 にお いて は, この海水面 のわず か な低下 によ って露 出 された潮 汐 平 野 の 面 積 は 大 き く, これを堆積 す る ための土砂 の供給 が 不足 した ため に,広 大 な泥炭湿地 がで き た もの と考 え ること がで きよ う。 Andriesse [1972] は多年 , サ ラワクの 土壌 調査 に従事 し, 西 サ ラワクの土壌 に つ いて の詳細 な報告 を して い るが, その 中で広大 な泥炭湿地 の成 因 と して,下層 土 の 養 分 不 足 , 低 pH,菌類 の活動 を阻 害 す る高 温 な どを, 低湿 な条件 とと もに 数 え て い る。 しか し, 結論 的 には "an adequate expl ana-tion for these peat accumulations is stilllacking" と述 べ て い

る。彼 は泥炭地 を次 の よ うに 2区分 した。

i Basin peatswamps ii Valley peatswamps

前者 はAnderson[19641の淡水 湿地 と泥炭湿 地 の両方 を含 み,主要 な河川 の最下 流域 に広 く生成 す るの に対 し,後者 は開析 された丘 陵 の小 さい河谷 を うめて た ま る泥炭 で あ る。サ ラワクの よ うな年 中湿潤 な条件下 で は,丘 陵 斜 面 は植生 で よ くおおわれ,谷 にはほ とん ど

(6)

久 一Hf,:東南 ア ジア低 t,F:U,l地 の土壌 (そ の2) 土 砂 の堆 積 が起 こ らな い上 , 雨 の多 い時期 に

は しば しば深 くはん らん す る。 こ うい う条 件

の下 で集 積 した泥 炭 を valley peatとよん で い る。

Andriesse[1974]は Basinpeatswampsの で き る地 形 環 境 と して , 図3の二 つ の還 境 , つ ま り ラグー ン的環 境 とデ ル タ的環 境 とを 区 別 した 。前 者 の ラグ ー ン的環 境 は, 半 島 マ レ ー シアの東 岸 に多 く, 海 岸 にで きた砂唯 の内 側 に泥 炭 がた ま る型 で あ るが, デ ル タ的琵 境 で は, 海岸 線 が漸次 後 退 し, 泥 炭 湿 地 が そ れ を迫 って拡 が る型 で あ り, ス マ トラ東 岸 や カ リマ ンタ ン西 岸 に典 型 的 にみ られ る と して い る。 この デル タ型 琵 境 で の泥 炭 配 地 の 生 成 は, 上 に Anderson[19641が描 写 した もの に はか な らな い 。Andriesse[1974]は デル タ型 泥炭 湿 地 の生 成 段 階 を,模 式 的 に図4の よ う に示 した 。 図 の縦 線 の左 側 は土砂 供 給 量 の少 な い河 川 で養 わ れ るデ ル タ の場 合 で あ り,右 側 は土 砂 供 給 量 の多 い場 合 で あ る。 東南 ア ジ ア島峡 部 の低湿 地 は ま さ に この左 側 の モ デル で代 表 され るの に対 し,東 南 ア ジア大 陸部 の デ ル タ は右 側 の モ デ ル で説 明 され る。 と ころで , ドー ム状 に盛 り上 が った泥 炭 の 場 合 に, 地 下 水 位 が ど こにあ るか が有 機 物 の 分 解 と の 関 連 で 問 題 で あ る。 Anderson [1964]に よれ ば, 高 く盛 り上 が った raised bogで あ って も, 地 下 水 位 は泥 炭 の はば表 面 に あ り,季 節 に よ って わ ず か に変動 す る。 そ の変 動 はサ ラワ クの4-10月 の問 に中心 付 近 で19cm 程 度 , 周 辺部 で は 10-12cm 程 度 で あ った とい う。 この結 果 か らみ れ ば, 泥 炭 は ほぼ年 中水 で飽和 され て お り, そ のた め に 高 温 下 にあ りな が ら分 解 を まぬ が れ て い る と 考 え られ る。 しか し, 表 面 の 10-20cm に あ る部 分 で は, わず か に酸 化 され る機 会 が あ る こ と と, 後 述 す るよ うに養 分 含 量 が高 い こ とか ら, 内部 に あ る泥 炭 よ り分 解 度 が進 み, わず か に コロイ ド的 な性 質 を示 す こ とが知 ら れ て い る [DriessenandRochimah 1976]o c. 熱帯 泥 炭 上 の植 生 と泥 炭 層 下 の堆 積 物 の 特 徴 熱帯 の泥 炭 は主 と して木 本 植 物 の遺体 よ り な り,木 質 泥 炭 (woodypeat)といわ れ る。 後 述 す るよ うに,体 積 の大部 分 は水 で あ って, 半 腐 れ の木 本 遺体 は, 大 きい木 の幹 や枝 の う ち分 解 度 の低 い もの が骨 格 構 造 を作 って か ら め られ て お り,全 体 と して水 の 中 に浮 かん で い る状 態 で あ る。 した が って , 泥 炭 の開 発 に あた って は, これ らの比 較 的末 分 解 の, 大 き い幹 や枝 が作 業 をむ ず か し くす る一 要 因 とな る。 この泥 炭 の上 に成 立 す る湿 地 林 の植 生 に つ いて は, 北 西 ボル ネ オ に お いて Anderson が木 本242種 (うち低 木38柾 )と若 干 の草 本 を 同定 して い る [Polak1975]。ま た,Buwalda [1940]は東 ス マ トラの植 生 調 査 に際 し, 泥 炭 層 の厚 さ と

か らの距 離 に よ って植 物 群 落 が 変 る こ とを見 出 し,3m 以 上 の厚 さを もつ 泥 炭 で は植 生 が 貧 弱 にな る とい って い る。 この 厚 い泥 炭 上 には Myrtaceaeと CaZoph)JZZum が背 の高 く細 い樹 体 を密生 さ せ て 優 占 す る が, 地 表 に は シダ類 や苔類 や あ る種 の カ ヤ ツ リ学 科 の草本 も生 え て い る。 泥 炭 が 3m 以 下 の厚 さ しか もた な い周 辺 部 で は,下 生 え に Araceae,Commeh'naeae,PaZmae (SaZacca conferta,LicuaZa)や シダ類 が 入 り [Polak 1975],いわ ゆ る mixed swamp forestを作 る。逆 に,森 林 の 中心 部 の泥 炭 層 が最 も厚 い 部 分 で は, 植生 は伸び が悪 く疎 にな り, これ を イ ン ドネ シアで は "padang" forest とよ ぶ 。 これ らの植 生 の タ イプ と泥 炭 土 壌 の性 質 との問 に は, 後述 す るよ うな対 応 が あ る。 泥炭 層 の下 に あ る無 機質 堆 積 物 は, 秒 堆 の 後 背 に泥 炭 の た ま る ラグ ー ン型 泥 炭地 の場 合 に は多少 と も砂質 で あ るが, デ ル タ型 の泥 炭 地 の場 合 に は粘 土質 で あ る。 この泥炭 層 の下 の粘 土質 堆 積 物 は 色 相 10YR∼7.5YRで 明

(7)

皮 /彩 度 が7/1-2か ら 4/1-2で あ り, 古川

1

9

7

9

]

の表現 に よれ ば自粘 土を うす くち醤油で染めたよ う な 色 を もっ て い る。 この特徴的な色 は,粘土 が有機物を 含 む水 によ って洗源 漂 白された結果 を示 し, 日光還元法 によ る遊離鉄 (Fe203)令 量

1%

,遊離マ ンガ ン (MnO2)含量0・01 % 以 下 と な っ て い る。 したが って,有 機物を過酸化水素で 分解す るだ けで 白色 とな り,脱鉄 の操作 は不要で あ る。 古川 [同上論文]は この泥 炭層下 の白色粘土 の 生成過程をtidalflat podzolizationとよん で いる。 南 スマ トラ における彼 の研究 に よれ ば,潮汐平野 に あ って も, 自然堤防 上 の土壌 は黄 ∼褐色 東南 ア ジア研究 20巻4号 A LAGOONAL iiiiiiiii冨=⊆=EE a DELTAIC ii iZ

-

C..8..,,.n.,id9。. {。..O ho,.b.,H n. ,.i... mh him-.a。.

E

=

,n.n.r-1dopos'ts vvithrt.p.,ian yegotat・'on :ふudt・ oxpo..d .Ilo.,tide

正三

m.ne'aldeposits ∼-th mangrOYe/nip8h y叩・t・ti。n b basin poat… mps

E二

∃ organ.C dopositS with peat… rnp y

o

gOt紬 。n a v'lloy peatSWarT-PS ) preyai‖ng Off-shore current

図3 泥炭湿地の地形環境 (Andriesse【19741よ り引用) を呈 し,かな りの量 の遊離酸化物 を含んで い る。 したが って,渇 炭層下 の粘土 の白色化 は,潮汐平野 に堆積 し た粘土 が, その後泥炭形成 に伴 って うけた強 烈 な溶脱 の結果で あ ると考え られ る。古川 の tidalflatpodzolization は還元溶脱 を も含 む 概念 であ り, しか も土壌 断面 の上下方 向で の 溶脱 ・集積で はな く,横方向での溶脱地域 ・ 集積地域 の分化 として とらえ るものであ る0 498 っ ま り,泥炭層下で生成 され る白色粘土 は巨 大 な溶脱層 にはかな らず,溶脱 された遊離酸 化物 は海底 に沈殿 し巨大な集積層 を作 ると考 え る。また, この溶脱作用 を起 こす作用因子 は潮汐作用で あ り,干満潮 によ る強制 的な水 の動 きによ り,溶脱 ・集積地域 の分化 が行 わ れ る。 久馬 らも

1

9

7

6

年 に実施 したサ ラワクの 水 田土壌調査 において,泥炭質水 田土壌 にお

(8)

久 馬 :東南 ア ジア低 湿地 の土壌 (そ の2) ACOASTALPRELUDING STAGE lhl(iTl(1・ミ ..(I(11日、し】(]ll(山 /\し TIT(lll打ulrL、 叫 )Elh 「Ⅰ\/〔-r DINLANDMATURESTAGE fl霊 l(TT'.LIT,Ll ,・1・" U-- 1、(小 一ltlu榊 , -- - - -■T■-- ●T■- - --- ・.・・..・.・.- -- -【)htmu

h

1

c

i

l

[

1

1

L

l

(

i

r

l

<

i

l

仰,

l

i

l

.

.

.

-

)

l

hI

I一..,El糾 … -,`,h 1日IitmL、1Lll、し,d T - ∵ ‥ 二・ ・十

- ()ⅠtGANIC I)じⅠ)OSITS lllVト二ⅠくSYSrll・:MSllT'IH I.()W 川二1'OSlrrl()NAL

E,-三・-・.・吉 川INil:HAL nEl)OSrTS LLFc7/.tkl吉告 読 f?蕊 )t詰 器 と8tl,rjiuuLIi′t',i三;N

Ei・!FiB COUNTRY li。CK L)I;ORG^NIC I)I.:P()S汀S/MINFJRAI-DEPOSITS

Il\(、t ltl\hllt、I爪VrlmlJ 111Ull、Ut)ll.llr)UO(ll(1日/・1 lll川 15()OIl.1日)uu(11L>い、J

n

V

(

[

iiiiiiiii

i

i

ii

i

i

ii iii

lilVEliSYS′111:MS\VlTllIlIGH DEI〕OSIll()N^L CAT)ACITY- GltAl)UAL BUILT)ING UPOT/ RIVERINE PLAIN W ITH ACCUMULATION ()ド MINERAL1)EPOSITS )ORGANTC DEPOSrrS

図4 東南 アジアの泥炭湿地の生成段階模式図(Andriesse[19741よ り引用) け る粘 土 の漂 白化 の事 実 を み て い る。 泥炭 上 の植生 , 泥 炭層 下 の堆 積 物 につ いて 述 べ たつ いで に, 泥 炭 層 か ら流 れ 出 る水 につ いて もみ て お こ う。 半 島 マ レー シア,東 マ レ ー シア, イ ン ドネ シア の各 地 に ア イ (ェ)ル ・

ヒ タ ム (AierHitam orAerItam)とい う地 名 が散在 す る。 ``黒 い水 ''とい う意 味 の マ レ ー語 で あ る。 こ うい う地 名 は必 ず泥 炭地 に隣 接 した と ころ にあ り, 泥 炭 地 か ら流 れ 出す小 川 の水 が 醤油 の よ うな黒 褐色 を して い る こ と に 由来 す る。 この水 の組成 につ いて の分 析 値 はあ ま り手 許 にな い が,1例 だ け半 島 マ レー シアの セ ラ ンゴ ール州 テ ィ ンギ川 の分析 例 を 示 す と次 の とお りで あ る レJ\林 年 不 詳 ]。 pli4・3,Ca1.2,MgO・2,Na2・3,K

1.1,HCO30.7,SO42.7,C12.3,SiO 2 5.3,蒸 発 残i査

7

1

.

4

, 浮 遊 物 40.7 (いず れ も

mg/

1

)

pH の低 さ, 塩 基 類 や ケ イ酸 の乏 しさが 目立 つ が, 蒸 発 残 i査や 浮遊 物 の量 は一 般 河 川 の値 とあま り変 らな い。溶 存 有 機 物 の量 も組成 も 不 明 で あ るが, お そ ら くは泥 炭 起 原 の ポ リフ ェノール類 を含 有 し, これ が強 い キ レー ト溶 脱 (cheluviation)に よ り上 述 の 白色 粘 土 を生 成 した原 因物 質 で あ る と思 わ れ る。

(9)

東 南 ア ジア研 究 20巻4号 ⅠⅠⅠ 泥炭 土壌 の分 類 温帯 の低湿地 に発 達 す る泥炭 につ いて は, しば しば次 の3区分 がな され る。 低位 泥炭- ヨ シ, スゲ,- ンノ キ, ヤ チダ モな ど。富栄 養 中間泥炭- ワタスゲ, ヌマガ ヤな ど。 中栄 養 高 位 泥炭- ミズ ゴケ, ホ ロム イスゲ な ど。貧 栄 養 こ れ ら の う ち 低 位 泥炭 と中間泥炭 の一部 は topogenousで Anderson [1964]の淡水湿 地 の泥 炭 に対応 す る し, 中間∼高位 泥炭 は om-brogenousで泥炭湿地 の生 成 物 に相 当す る。 しか し,温帯 の泥炭 はいず れ も草本 の遺体 が 主 で あ り,現 在 の植生 も草 本 で, いわ ゆ る原 野 の景 観 を示 す の に対 し, 熱帯 泥炭 は木本 を 主 体 とす る木 質 泥炭 で あ り,現 植生 も湿地林 で あ る点 で温帯 の泥炭 と異 な る。 しか し, こ こで述 べ る土壌 分 類 の上 で は,草 本 か木本 か の違 いや,原 野 か森 林 か の景 観 の違 い は特 に 問題 とされず, 温帯 ・熱帯 の泥炭 は と もに有 機 質 土壌 と して くくられ る。 現在 の アメ リカ合 衆 国農務省 (USDA)の 土 壌 分 類体 系 SoilTaxonomy [1975]で は, かつ て bog soils とよばれた有機質 土壌 (梶 炭 土 と黒 泥土 ) を Histosols(Gr.histos-坐 体 の組織) とよび, 最高 の カテ ゴ リー (soil order) にお け る一つ の taxon と して い る。 FÅo/UNESCO の世界土壌 図 の凡例 に用 い られ る土壌 単位 で も, 有機 質 土壌 は Hist o-solsと して ほぼ USDA のそれ に対応 して い るので, こ こで は USDA 方式 によ る分 類 に つ いて述 べ る。 USDA 方 式 で は有機 土壌 物質 を,粘 土 を 全 く含 まぬ 時 に有機 物>20% ,粘 土含量 >60 % の時 に有機 物>30% を含 む もの (粘土含 量 が 中間 的 な時 は有機 物含 量 も比 例 的 に変化 す る) と定 義 した上 で,有機 質 土 壌-Histosols

5

0

0

とは,上部 80cm の半 ば以 上 (>40cm)が 有 機 土壌 物質 よ りな る もの と定 義 して い る。 有 機 土壌 物質 を次 の3種類 に区分 す る。 i fibric 土壌物質- 容 積 重く0.1g/ cc で,セ ンイ含 量 が体 積 の 2/3以上 で あ り,飽 和水 分 が 絶 乾 物 あ た り 850∼3,000% 以 上 の もの ii sapric土壌 物質- 容 積重>0.2g/ ccで,セ ンイ含 量 は体 積 の 1/3以下 で あ り,飽 和 水分 が450% 以下 の もの iii hemic土壌 物質- 上記 二 つ の中間 的分解 度 を もつ もの そ して, それ ぞれ の土 壌 物質 が卓越 す る もの を Fibrists,Hemists,Sapristsと して subor -der段 階で 区別 す る。Greatgroup の うち, 熱帯 で重要 な ものを列 挙 す る。 Fibrists Tropofibrists- 熱帯 にあ って 丘bric 物質 の卓越 す る もの Hemists Sulfohemists- 有 機 土壌.物質 が何 で あ るか にか かわ りな く,酸性 硫 酸塩 土壌 的性 格 を表面 か ら 50cm 以 内 に示 す もの Sulfihemists- 有機 土 壌 物質 が何 で あ るか にか かわ りな く,可 酸 化性 硫 化 物 を表面 か ら1m 以 内 に もつ もの Tropohemists- 熱帯 にあ ってhemic 物質 の卓越 す る もの SaprlStS

Troposaprists- 熱帯 にあ ってsapric 物 質 の卓越 す る もの スマ トラの リア ウ州 にお け る泥炭 地土壌 調 査 で 同定 され た greatgroupの中で,最 も頻 度 の高 い もの は Tropohemistsで あ り,泥炭層 の うす い もの の 中 にまれ に Troposapristsが あ り, また厚 い もの (>2-3m)には Tropo一 員bristsが多 い。

(10)

久 ,tjT,:東 南 ア ジ ア低 湿地 の上境 (そ の2)

熱 帯泥炭土壌 の性 質 a.物理 的性質 泥炭 を作 って い る半 分解 有機 物 の密度 は, 無 機 物含 量 によ り変 るが, ほぼ

1

.

4

- .

1

.

8

で あ り,多 くの純 粋 な熱帯 の森 林 泥炭 で は1・43g/ cm3 で あ る[DriessenandRochimah 1976]。 熱帯 泥炭 の容 積重 は0.05か ら0.40gノ/ccの範 囲 にあ り,分 解 度,無 機 物含 量 や充填 密 度 に よ って変 異 す る。 この比 重 と容 積 重 か ら全 孔 隙率 を求 め る と,大体75-95%とな る。 つ ま り,比較 的分解 度 も高 く,密 に充填 され た泥 炭 で も,全 体 積 の3/4は孔 隙で あ り, 分 解 度 の低 い ドーム状 泥炭 の 中心部 で は9

5

% まで が 孔 隙で あ って,有機 物 はわず か に

5

% を 占め るにす ぎな

い。

先 に も述 べ た よ うに地 下水 位 は ほ とん ど地 表面 にあ るので あ るか ら, この 孔 隙 はす べ て水 でみ た され,泥 炭 はあた か も 水 中 に半 分 解有機 物 が浮遊 した状 態 を呈 して い る と考 え られ る。湿 地林 が, こ うい うもの の上 に支 え られて い る こ とは驚 くべ き こと と いわね ばな らな い。 と ころで, 泥 炭 の容 積 重 は,前 節 で述 べ た とお り分 類 上 の基礎 と して使 わ れ る重要 な性 質 で あ り,分解 度 を よ く反映 して い る。Fi b-ric 物質 は最 も分解 度 の低 いセ ンイ状物質 で あ り,そ の容積 重 は<0・1g/ccで あ る。Sapric 物質 は最 も分解 の進 ん だ段 階 の もので, や や 腐 植 化 して コロイ ド的性 質 を示 し, そ の容 積 重 は>0.2gノccで あ る。 分 解度 で上記 二者 の 中間段 階 にあ るhemic物質 の容 積重 は, ほぼ 0.07-0.18g/ccの範 囲 にあ る とされ て い る。 分解 度 の低 い泥炭 にあ って は,透 水性 は よ く, 開発 に際 して排水 工 事 には特 に困難 はな い と思 わ れ るが,脱水 によ る体 積 の減少 ・収 縮 ・沈下 が最 大 の問題 とな ろ う。 また, あ る 程 度分 解 度 が進 み コ ロイ ド的 な性 質 を示 す も ので は,不可 逆 的 な脱水 によ って,保 水 力 が 低下 す るだ けで な く,疎 水 的 にな り棲水性 を 示 す 。 また, こ うな った ものが粉 砕 され る と 軽 い粉 状 とな り,侵 食 を うけ易 い。 b. 化 学 的性 質 泥炭 を分 類す る場合 の一 つ の基 準 と して, 養分 含 量 の多寡 を とる こ とが あ る。 Coulter [19571は半 島マ レー シアの泥炭 を研究 し,吹 の区分 を提 案 した。 i eutrophic(富栄 養)- 主 と して草本 由来 で ,無 機 物含 量高 く,pH は中性 な い しアル カ リ性 。温 帯 のfenpeatに相 当す るが, 東 南 ア ジア にはな い。 ii oligotrophic(貧 栄 養)- 無 機物含 量,特 に Ca含 量低 く, 強酸 性 で pH 3-3・5。 iii mesotrophic(中栄 養)- 上記 二者 の中間的,pH は ほぼ 5・0程 度 で塩基 に富 む。 また,Fleischer は上記 と同様 の区分 を, よ り定 量 的 に行 うた め の基準 と して,蓑 3を 提 案 した [Driessen and Soepraptohardjo 1974]。 従来 の研究 によれ ば, 東南 ア ジアの 泥 炭 はほ とん どoligotrophicで あ り,一 部 が mesotrophicの範 ち ゅうに入 る とされて い る。 表4に東 南 ア ジアの泥炭 につ いて の分析 値 を 集 めて あ るが,表 3と比較 す れ ば, ほ とん ど す べ て の試 料 が mesotrophic∼oligotrophic で あ る ことを た しか め られ る。 上 に引用 した よ うな分析 値 を み るにあた っ 表3 Fleischerによる泥炭の化学組成にもと づ く栄養性の分類基準 (Driessen and Soepraptohardjo[1974]より引用) N K20 P205 CaO Ash in% ofDryMatter Eutrophic (富栄養) 2.50.100.25 4 Mesotrophic(中 〃 ) 2.00.100.20 1 ()ligotrophic(貧 〃 ) 0.80.030・05 0・25 0 5 2 1

(11)

東南 ア ジア研 究 20巻4号 表 4 マラヤ,カ リマンタン,スマ トラの若干の泥炭の化学租成 (Andriesse[19741より引用) Type(Ir Peat Forest Basi n-peats Cyp eracede Peat Probably Fres h-water Swamps Locality WestKah' -manZan Andjongan Sungel Kunjit SumurBor Sarawak Stapok Gedong Malaya Klang Kuala Langat Sumatera Pengalian La・nggam South-ga∫t Kah'manzan P HT. 二些 C,N TDTn = P_P= 竺 竺 AIslt;I P205 CaO MgO K20 % Org.Matter 3.3 1.44 3.3 1.45 1.80 3.48 900 2100 1300 1.36 400 2900 200 2.28 1200 4200 1400 1000 3.1 1.96 41.36 21.2 10.2 357 1496 2887 375 3.4 1.90 39.50 21.0 2.9 614 860 810 950 3.8 1.37 6 7 0 7 3 3 2 6 1 6 6 6 5 3 5 3 2 1 て注 意す べ きこ とは, これ らが いず れ も乾 物 あた りの重 量百 分 率 で与 え られ て い る こ とで あ る。先 に も述 べ た よ うに, 泥炭 の容 積 重 は 低 く, また相 対 的 な変動 が大 きいので,重 量 百 分率 よ り も一定 体 積 中 の養 分 含 量 を与 え る 方 が よ り実 際 的で あ ろ う。 泥炭層 内で の灰 分 の分布 をみ る と図 5の ご と くで あ り, ほ とん どの植 物養 分 は根 系 の集 中 して い る上部 25cm 層 内 に含 まれ,80cm 以 上 の深 さの灰 分含 量 は きわ めて低 い。 この 図 に は退 化 した いわ ゆ る padang forest と mixed swamp fbrestの灰 分含 量 を比 較 して あ る (上 の二 つ の曲線 ) が, これ をみ れ ば, 退 化 した padang forestの根 系 が浅 く, そ の 養 分蓄 積 量 が mixed swamp forestよ りは る 502 1000 8300 3400 1000 6.6 2400 600 680 3.0 400 3200 6.39 900 2000 0 0 0 0 0 4 7 8 1 3 0 8 6 2 8 1 1 1 0 0 0 0 0 7 5 7 6 7 4 9 5 3 3 2 1 1 1 2 7 9 6 8 9 9 6 5 6 6 5 5 2 8 2 1 1 1 1 42.24 4930 2040 2100 1900 9 3 8 3 8 4 2 4 3 8 7 8 0 0 0 0 0 6 8 1 5 4 3 3 1 3 5 1 1 1 1 0 5 93 か に低 い ことが わ か る。 す な わ ち,mixed swamp forest で は 上 部 80cm の 層 内 に 13,250kg/ha の灰分 が含 まれ, そ の うちの 10,850kg/haは循環 され,2,400kg/haが泥 炭 の有機 物 中 の組成 分 と して存在 した の に対 し, padang fbrestで は深 さ 80cm 内 の総 量 5,630kg/haの うち2,380kg/haが有機 物 中 に組 み込 まれ, わず か に 3,250kg/ha Lか 植物 に利 用 で きる形 で は存 在 しな い。 また, mixed swamp forestを開墾 ・作付 した時 の 灰分 含 量 の変 化 をみ る と (中央3本 の曲線), 泥炭 層 の厚 さの減少 と と もに,顕著 な灰分 含 量 の低下 が認 め られ る。 図5の最 も下 の曲線 は, ドー ム状 泥炭 の周縁 部 にあ る うす い泥炭 の場 合 で あ るが, 灰 分 含 量 は padangfわrest

(12)

久 篤 :東 南 ア ジア低 湿地 の 上盤 (そ の2)

1000 1500

M'neralconsHuentslkg/hd.Crnl

L-centraldomepeatunderdegraded forest;

-celltraldomepeat undermixedswampforest;O-samesiteas

, forestcleared16years ago,)and cropped3times;△-samesiteas

, forestcleared16years ago,land cropped 16times;□-peatneardomefringe undermixed

swampforest

:

I-ash Contained in semidecomposed litter

図5 西カ リマ ンタ ンの ドーム状泥炭中の無機成分の分布 (Driessen[1978]よ り引用 ) 変 化 は, Driessen [1978] に よ る 表 5 に, よ り くわ し く示 され て い る。 開墾 後 の経 過 年 数 と作 付 の 強 度 の両 方 の影 響 が 諸 め られ , 全 灰 分 , P205,K20,Si02 な ど は顕 著 に減少 す る が ,CaO,MgO は, 開 墾 時 の焼 却 に よ る 添 加 と恐 ら くは系 外 か らの施 用 に よ り, 土 壌 中で の含 量 は増 加 して い る。 こ こにみ た よ うに 開 墾 に よ って 一 度 植 生 が 消滅 す る と, 檀 生 と泥 炭 層 表 層 の ご くうす い部 分 の問 に 蓄 積 ・循 環 され て い た養 分 の 多 くは, 梶 炭 を生 成 す る きわ め て 湿 潤 な気 候 下 に あ って は, 強 い洗 脱 作 用 に さ らされ て急 速 に系 外 - 失 わ れ て ゆ く。 も ちろん 開墾 に 際 して は, 必 ず排 水 が先 行 す るた め に, 地 表 の泥 炭 の分 解 が 促 進 され て , 有 機 物 の構 成 成 分 とな って い た養 分 元 素 が徐 々 下 の厚 い泥 炭 に く らべ て 高 く, ま た底 部 の粘 に遊 離 され, 系 に添 加 され る効 果 を他 方 で は 土 層 の影 響 で , 泥 炭 層 深 層 の灰 分 含 量 が高 ま 期 待 で き る。 しか し, 系 全 体 と して は損 失 が って い るの が み られ る。 大 き く,一 層 貧 栄 養 化 す る こ とは 明 らかで あ 上 例 の 開墾 ・作 付 に よ る 無 機 養 分含 量 の る。

(13)

東 南 ア ジ ア研 究 20巻4号

表5 スマ トラとカ リマンタ ンの泥炭土壌表層の養分含量(Driessen[1978]より引用)

SurfaceSoi]S WestKalimantan

(0-20cm)

Riau (0-25cm)

NT些f_i与ー

些_

C

ontents(kg/ha)

P205 K20 MgO CaO SiO2TotalAsh

DeepPeatunderLightMixed Swamp Forest

Same;Cleared16YrAgo,Cropped 3Times

Same;Cropped16Times

ModeratelyDeepPeatunderMixed

SwampForest Same;Cleared2YrAgo,Never Cropped Same;Cleared30YrAgo,Perennial Crops 664 119 482 444 5,892 9,070 266 128 647 1,239 1,670 6,570 163 40 432 933 983 4,340 217 86 685 21114,960 17,500 229 50 965 1,61211,870 17,180 432 74 852 3,050 4,400 16,000 と ころで 泥炭 土壌 にお いて は, 多量 ・中量 元 素 のみ な らず,微 量元 素 の含 量 や有 効性 に も問題 が あ る こ とが よ く知 られ て い る。 表6 に は, イ ン ドネ シアの多数 の ドー ム状泥 炭 に つ いて測定 され た微 量元 素 の 全 含 量 を 示 す [2'bz'd.]。 ここで も,下 層 の微 量元 素含 量 が表 層 のそれ に くらべ て, は るか に低 い こ とがみ 表

6

スマ トラとカ リマ ンタ ンの湿地林泥炭中の 微量元素含量(Driessent1978]より引用)

Ele-ent Con.t_C2n5tS(c'kmg,'ha'atSa器p_llC.宗cpS sof Cobalt

Copper Iron Manganese Molybdenum Zinc 0.1-0.2 0.8-8.0 143-175 4.1-25 0.6-1.0 2.8-4.4 0.05-0.1 0.2-0.8 67-220 1.1-7.1 0.3-0.6 1.8-4.8 られ, この こ とは, 表層 の微量元 素 がや は り 養 分 循環 過程 に と り込 まれて い る こ とを示 し て い る。 した が って, 植 物体 中 に蓄積 され て い る微量元 素 量 を も考慮 しな い と,植生 を伐 採焼 却 して開墾 した際 の,土壌 の微量元 素 状 態 につ いて の正 当な評価 はで きな いだ ろ う。 これ らの養分元 素 の有 効性 を支 配 す る要 因 と して, 泥炭 の有 機 物 組成 を考 え る必 要 が あ る。

蓑 7

には,

Ha

r

do

nandPo

l

a

k[

1

9

41

]

の 古典 的 な デ ータを, ヨー ロ ッパ の泥炭 の有 機 物 組成 と比 較 して あ る。分析 値 をみ る と, 熱 帯 泥 炭 で の水 溶性成 分 , - ミセル ローズ, セ ル ローズ含 量 の低 さ と, リグニ ン含 量 の高 さ が特 に 目立 つ . これ は,一 つ には熱帯 の高温 条 件 下 で の微生 物活性 の強度 と, も う一 つ は 熱帯 の泥 炭 が いわゆ る木質 泥炭 で あ る こ とと 関係 づ け る こ とがで きよ う。 蓑 ア 熱帯泥炭 と北欧泥炭 との有機物組成の比較(Polak[1975]より引用) Origin PeatType Sumatra Borne

o

Borneo i Solublein: Ether AlcoholWat e r Hemicellulose Cellulose Lignln Protein AcidForestPeat Finland BogPeat Forest-Sphagnum Peat 504 7 7 6 8 CO 5 8 6 1 0 0 7 3 5 5 3 7 6 6 6 8 4 6 3 4 5 7 0 5 6 5 8 5 8 4 2 2 3 2 1.95 10.61 63.99 1.95 3.61 73.67 0.73 0.21 68.89 18.2 16.6 38.5 12.2 4.4 38.4 1 5 7 4 8 9 8 4 4 3 3 3 9

(14)

久 馬 :東 南 ア ジア低 湿 地 の土壌 (そ の2)

表8 インドネシアの湿地林泥炭の有機物組成と,その カチオ ン交換特性(Driessen[1978]より引用)

Weight CEC PartialCEC

(%) (meq/100g) (meq/100g) Hemicellulose 1to2 100 1to2 Cellulose 0.2tolO 70 < 7

Lignin 64to74 240 150to180 HumicSubstances 10to20 400 40to80 0thers

<

5

OrganicMatterofPeat lO0 190to270 表8は,上 の Hardon and Polak lZlbz'd.] と Rozmejand Kwiatkowsky [1976]のデ ー タを ま とめて Driessen [1978]が整理 した も ので, 泥炭 の カチオ ン交 換容 量 が主 と して安 定 な リグニ ンと腐 植質 によ る ことを示 して い る。 特 に, この腐 植質 の中 には強 い キ レー ト 形成 能 を もつ腐 植 酸 ・フル ボ酸 の存在 が考 え られ, これ が微量元 素 の Cu,Znな どを安定 な キ レー トと して系外 にお くこ とが想定 され る。特 にCuは多 くの キ レー ト剤 と非常 に安 定 な キ レー トを作 り,泥炭土 壌 で は しば しば Cu欠 乏 の起 こる ことが報告 されて い る。 泥 炭土壌 の窒 素 はす べ て有機態 で あ り, そ の全 窒素含 量 は 0- 20cm 層 で, 2,000-4,000kgN/ha と見 積 も られ る。 Hilrdon and Polak [1941]によれ ば, この うちわず か に3% 以下 が水 溶性 画分 にあ って植物 に容 易 に有 効 とな るにす ぎず, 53-68%は安定 な リ グニ ン蛋 白複合 体 中 に と り込 まれ, さ らに30 -45%は有機 溶媒 や酸 に可 溶 な画分 中 にあ る とされ る。 この よ うに,泥炭 中 に比較 的豊 富 と考 え られて い る窒素 につ いて も, そ の有 効 化 の過程 を考慮 す れ ば,必 ず しも潤沢 とは い え な い。 泥 炭 の化学性 を論 ず る時 に忘 れて な らな い ことに,硫 化物含有 泥炭土壌 の存在 が あ る。 これ は上 で泥炭 土壌 の分類 を論 じた時 にふ れ た,潜在 的酸性 硫 酸塩土壌 と して の Sulf ihe-mists,あ るいは顕在 的酸性 硫酸塩 土壌 と して の Sulfohemistsで あ り,泥炭地 の 開発 に際す る重要 な考慮 事項 の一つ で あ る。泥炭 の有 機物 自体 が硫化物 を含有 す る ことはまれで あ るが,梶 炭 集積 の第 1段 階 が しば しばマ ング ロー ブ湿地 を経 過 す る ことか ら,梶 炭 の最下層 には,汽水環 境下 で の堆 積有機 物 が あ り(図2参照), そ こに パ イ ライ トが共 存 す る場合 が あ る。 しか し, よ り多 いの は,泥炭層 の下 にあ るか, あ るいは泥炭層 の問 に挟在 す る粘 土質 堆積 物 がパ イ ライ トを含有 す る場 合 で あ る。 このパ イ ライ トはマ ング ローブ下 で蓄 積 され た もので あ るが,淡水 湿地 化 に伴 い, そ の上 に泥 炭 を集積す るに至 った もので, 泥 炭 集積 過程 で起 こる上述 の粘 土 の漂 白化 に もか かわ らず,少 な くとも一 部 は安 定 に残 留 す る ものの よ う で あ る (古川久雄 よ りの聞 き書 き)。 特 に泥炭層 が浅 い場合 , 開発 によ って 泥炭 の酸化分解 が急速 に進 み,最終 的 にはパ イ ライ ト合有粘 土 が地 表 に現 れ る とい うこと にな る と, そ の農業 的利用 には前報 で述 べ た 多 くの困難 を克 服 しな けれ ばな らず,新 た な 問題 を生 ず る。 こ うい う場合 が東 南 ア ジアの 泥炭湿地 には少 な くな い ことに,十分 留 意 す る必要 が あ ろ う。 C.生 物 的性質 熱帯 泥 炭土 壌 の生 物性 につ いて は, ほ とん ど研究 がな されて いな い。常 時水 で飽 和 され て い る上 , 強酸性 で養分 含 量 が きわ めて低 い 熱帯 泥炭 の 自然 の蛋 境 は,生 物 の活性 を高 く 維 持 す る もので な い こ とは明 らかで あ り, ま さにそれだか らこそ有機 物遺体 が泥炭 と して 集 積 した もので あ る。 た だ し,一旦 排水 した 時 には,生 物 活性 が高 ま り,急速 に泥炭 を分 解 す る こと もよ く知 られて い る。 この過程 で の動物 や微生 物 の作 用 の実態 を明 らか にす る ことは,今 後 の研究 にお け る重要 で興 味 あ る

(15)

東 南 ア ジア研究 20巻 4号 課 題 で あ る。 Ⅴ 熱 帯泥炭 の 開発 と利用の問題 点 a.排水 と地面 の沈下 熱帯 泥炭 を開発 して農業 的 に利用 しよ うと す る場合 の第一 の考慮 は,排水 で あ る。すで に述 べ た よ うに,泥炭 の体 積 の3/4以 上 が水 でみた された孔 隙で あ るか ら, か りに湿地性 の作物 を作 る場合 です ら, まず は排水 によ っ て表層 の充填度 を高 め,作 物 の根 に対す る十 分 な支 持力 を与 え る必要 が あ る。 畑作 物で あ れ ば,少 な くとも表面下30cm 程度 まで は排 水 して,気相 孔 隙を与 えてや る必要 があ る。 普通 ,排水 のため には浅 い明菜を掘 るだ け で,植生 は残 す。 これ は植物 の蒸散作 用 を通 じて排水 を促進 す るためで あ る。2∼ 3カ月 後 にな って木 を倒 し, これを数 カ月放 置 して 乾 か した の ちに焼却す る。 熱帯 の木質 泥炭 の 場合 , 明渠 は深 さ 1m で 20-40m 間 隔 と すれ ば,通常 は十分有 効 に排水 がで きる。 し か し,数年後 には排水体系 の再 調節 が必要 と な る。 それ は,収縮 と有機物 の分解 によ る地 面 の沈下 によ って,有 効 な水 頭 が減 じ,排水 効率 が悪 くな るか らで あ る。 この排水 に伴 う土地 の沈下 は,温帯 ,熱帯 を問わず,泥炭地 の開発 に際す る最 も深刻 な 問題 で あ る。 いま泥炭 の脱水 によ る収 縮 だ け を問題 に して も,厚 さ 1m の泥炭 の容積重 を

0

.

15か ら0.3g/cc まで あげ る過程 で,地 面 の沈下 量 は50cm に もな る。 この0・3g/ccと い う容 積重 は, カ リマ ンタ ンで開墾 後6年 の 泥炭地 の示 す実測値 [Driessen and Soepr a-ptohardjo1974]で あ る。 この脱水収縮 だ け で な く,泥炭 の酸化分解 も地 面沈下 の もう一 つ の要 因 とな る。 先 の図5にお け る,mixed swamp forestを開墾 した あ との 経 過 を 示 す 3本 の曲線 は, 開墾 後16年 間 に 3回作付 を し た区で は約 90cm,16年 間毎年作付 を した区 506 で は 約 2m の土地 の沈下 が 起 こ った ことを 示 して い る。 排水 水位 が同一 で あ った とす る と, この3回作付 と16回作付 の差 は,人為 に よ る耕 転施肥 な どの作業 の強度 の違 いが泥炭 の圧縮 と酸化分解 を促進 して,1m 以 上 もの 沈下 量 の差 をひ き起 こ した と解釈 で きる。 この土地 の沈下 にかかわ る もう一 つ の問題 は,泥炭 の焼却 で あ る。 これは泥炭 か らの養 分 の解放 をね らい と して広 く行 われ る管 理 の 方 式 で あ って, 自然 の 酸化分解過程 を 加速 し,土地沈下 を促進 す る。 泥炭焼却 の メ リッ トは P,K,Ca,Mgな どの必須養分 を供給 す ることにつ きるが, デ メ リッ トと して は焼却 によ る N,Sな どの養分 の損失 や土地 の不等 沈下 ,構造 の悪化 な どが あげ られ る。 また, せ っか く解 放 された塩基 や リン酸 な どの洗脱 によ る損失 も無視 で きな い [Driessen 1978]。 排水水位 や気 象条件 ,泥炭 の性質 な どによ って大 きい変動 があ ることを承知 の上で,排 水 によ る泥炭 の沈下量 と して報告 されて い る 数 字 を拾 ってみ る と,排水工実施直後 に ドー ム状 泥炭 の中央部で は 年 間沈 下 量 は 60cm [Andriesse 1974]か ら 100cm [Polak 1952] に も及 ぶ が,1- 2年 で沈下 速 度 は 落 ち 着 き, その後 は5-7.5cm/年程度 で経 過 す る。 Andriesse[1974]は,排水 後 の泥炭 の耐用年 限を計算 す るの に,6cm/年 を使 うのが よい と述 べて い る。 また Driessen [1978]は, ほ とん どの泥炭 で収縮率 は排水部位 の20-30% と考 えて よい と して いる。 こ う して地表部 の 泥炭 が収縮 によ って仮比重 を増大 す る と, さ らな る沈下 をひ き起 こす ともい って い る。 この よ うに,土地 の沈下 が起 こる と,周辺 か らの水 の流入 も起 こるた め に,排水 の効率 は急速 に悪 くな る。 そのため に排水路 を深 め て,地下水位 を下 げな けれ ばな らな くな る。 しか し, この排水-沈下 のサ イ クル は泥炭 を 相手 に して い る限 りは無 限 に続 き,結局 は重 力 で 自然 に排水 す る ことがで きな くな るに至

(16)

久 馬 :東南 アジア低 湿地 の土壌 (その2) る。 ここに至 って もさ らに この土地 を利用 し よ うとい う場合 には,輪 中堤 を築 きポ ンプ排 水 をす る以外 にな い。 オ ラ ンダ の泥炭地 の多 くは この例 で あ り,

2

,

0

0

0

年 もの間 の排水 に よ って地 表 か ら泥炭 が消失 して しま った とこ ろが少 な くな い。 Andriesse[1974]は,排水 によ る泥炭沈下 の各段 階 を,模 式 的 に図6の よ うに示 して い る。図 のA点 に排水路 を掘 る と,第 Ⅲ段 階 で すで に泥炭 の表面 は泥炭地 に隣接 す る河川 の 水位 にまで低下 し, これ以上 は もはや重力排 水 は きかな い。第 Ⅲ段 階 で は さ らに排水水位 を下 げたが, こ うなれ ばポ ンプ によ る強制排 水 を考 え る以外 に方法 はな い。 したが って, 重力排水 によ る限 りは,第 Ⅲ段 階 が排水 を は か って もよい最大 の深 さ とい うことにな る。 いずれ に して も,排水水位 は可能 な限 り浅 く し,必要以上 な泥炭 の消耗 を防 ぐことが肝要 で あ ろ う。 b. 土壌 の肥培 熱帯 泥炭 が 栄養 的 には ほ とん ど

o

l

i

go

t

r

o

-phic と分類 され る以 上, 排水 して農地化 す る場合 にその肥 培 が問題 とな るの は当然 で あ る。 す で に これ まで の記述 の中か ら,泥炭 の 多 くは pH 3.5-5 の強酸性 を示 し, K,Ca, M gな どの塩基類 や リン酸 に乏 しい こと,窒

l

一 素 は総量 で は比較 的多量存在 す るが,す ぐ有 効化す る もの は少 な く,泥炭 の分解 にまたね ばな らぬ こと,数量要素 で もケ イ酸,鍋 ,亜 鉛 な どが欠 乏 し易 い ことな ど が 明 ら か で あ る。 泥炭地 の開墾 に際 して は,湿地林 の焼却 に よ って一 時的 に多量 の灰分元 素 が添加 され る が,比較 的短期 間 に洗脱 によ り失 わ れ る こ と, また施肥 に代 る手段 と して泥炭 の焼 却 を 定期 的 に行 う管 理 の方法 があ るが, これ に も 沈下 の加速 だ けで な く,種 々な問題 のあ る こ とをすで にみて きた。 一般 に,開墾後最初 の2- 3年 は,先 駆作 物 と して トーモ ロ コシ, キ ャ ッサバ, サ ツマ イモ, ヤ ム,パ イナ ップル,種 々の野菜 な ど が作 られ る ことが多 く, これ らは上 に述 べ た 植生 の焼却 で添加 され る灰 や, 開墾 当初 の泥 炭 の急激 な分解 で解放 され る養分 によ って, 比較 的高 い収 量 を与 え る。 ただ し, この時期 には,灰 の分布 の不均一 さか ら,作 物 ので き も非常 に不均一 とな りが ちで あ る。 そ して, 開墾 後2- 3年 が経 過す る と,作物 の収 量 は 急 激 に低下 す るのが一般 で あ る。 地面 の急速 な沈下 が お さま って,沈下速度 が定常化 した段 階 で は, ココナ ッツ, ゴム, 池 ヤ シ, コー ヒーな どの永年作 物 の植栽 が可 能 とな るが,高 い収 量 を あげ るた め には施肥 図6 排水による泥炭の沈下過程模式図(Andriesse[1974]より引用) が必須 で あ る し, ま た排水 に注 意 して湿 害 を防 ぐとともに, 支 持力 を高 めてや る 必要 が あ る。 石 灰施用 と施肥 と は, ほ とん どいつで も顕著 な効果 を もた らす。野菜 な どの短 期作物 で は当初

8-1

0t

o

n/

ha

の苦土石 灰 を施 用 し, その後 507

(17)

東 南 ア ジア研 究 20巻4号 も年 々 1ton/ha程 度 を施 す と,高 い収 量 を 維 持 す るの に役 立 つ [Chew 1971]。 一般 に肥料成 分 の 中で は,窒素 とカ リの肥 効 が最 も高 く, リン酸 が そ れ に 次 ぐ。 Ca, Mg,Sや Cu,Zn,Mn,Mo,Feな どの微量 元 素 の欠 乏 も熱帯 泥炭 で は広 く認 め られ る。 一般 に微 量元素 につ いて は分析 値 が な い場合 が多 いか ら,Driessen [1978]は標 準 的 な施 肥 量 と して,- クタ ール あた りCaSO415kg,

MgSO415kg,ZnSO415kg,MnSO47kg,

Na2MoO40.5kg,Na2B4070.5kgを施 用 す る こ とをす す めて い る。 また, 多量元 素 の年 間 の施 肥 量 の標 準 は- クタ ール あた り N 50 -130kg,P20530-70kg,K20 100kgと し て い る lz'btd.]。 しか し, 現 状 で は 施 肥 を 行 う農 民 は少 な く, した が って泥炭 の焼却 によ って養 分 を 回 復 す るので な けれ ば,何年 か の耕作 の の ちに は農地 を放 棄 して次 の土地 -移 る こ とにな ら ざ るをえ な い。 こ う して略奪 的 に利 用 され た あ とに放 棄 された ところで は,植生 の回復 も むず か し くな る。Driessen[ibz'd.] は泥炭 地 開発 の方 式 と して,皆 伐 をや め,排水 後 の条 件 に もた え るよ うな木 を ま ば らに残 す ことに よ って,無機 養分 の溶 脱 を多少 と も防止 し, 同時 に庇 蔭 に よ り表 土 の加 熱 に よ る分 解 や必 要 以 上 の乾 燥 を防 ぐことを 提 案 して い る。 また永 年 作 物 を植 え る場合 には, 自然植生 と 漸次 お き換 えて ゆ く方 式 が望 ま しい と して い る。 C.泥炭 土壌 と水 稲 栽 培 わ が 国で は北海道 の泥炭地 総 面 積 の

1

/

4

,約 5万 - クタ ール が少 な くと も一 時 は水 田 と し て利 用 され た ことが あ り,泥炭 土壌 に水 稲 を 作 付 け る ことには,一般 的 になん らの特異 的 問題 もな い と考 え られて い る。 しか し,熱帯 泥 炭 で は, 陸稲 は と もか く,水 稲 は いまだ に うま く栽 培 で きるに至 って いな いので あ る。 508 水 稲 が熱帯 の泥炭 地 で特 に有 利 な作物 と考 え られ るのは, 泥炭 の排 水水 位 を深 くす る必 要 が な く, ま た 湛水 に よ って地 表 を お お うこ とが, 泥炭 の分 解 を抑 え る効果 を もつ た めで あ る。 す なわ ち,泥炭 の保 全 と長期 的利 用 に 最 も適 した もの と して水 稲 栽培 が と りあげ ら れ るので あ る。 しか しなが ら,Polak[1952]以来 Driessen and Suhardjo [1976]まで, イ ン ドネ シアや マ レー シアな どで行 わ れて きた数 多 くの水 稲 栽 培試 験 は, いず れ も失 敗 に終 って い る。 も ちろん農 民 レベルで も泥炭 地 で水 稲 を作 ろ う と した例 は多 いが,何 年 か試 みた の ちには放 棄 して い る。 理 由 は不 稔 で あ り, これ まで の と ころ,適切 な施 肥 によ って も, この困難 は 克服 され て いな い。 ただ し, この不 稔 が問題 とな るの は, 深 い泥炭 層 を もつ ものだ けで あ り,無 機 物 を多量 に混入 す る泥炭 や,表面 か ら 50-60cm まで しか泥炭 層 がな く,浅 い と ころに無機 堆 積 物 を もつ もので は,高 い収 量 はえ られ な いまで も水 稲 を栽培 し生 産 をあ げ る ことがで きて い る。 この深 い泥炭 で の水稲 の不 稔 の原 因 につ い て は, まだ十分 な研究 がな されて いな いが, DriessenandSuhardjolz'bid.]は, これを泥 炭 の分解 産物 で あ る水 溶性 polyphenolが酸 化 的 リン酸化 の uncouplingを ひ き起 こす た め の稔 実 障害 で あ る と考 え て い る。 そ して,

Cuは この polyphenolを不 活 化す る能 力 を 有 す るが, 泥炭 で はCu欠 乏 が あ るた め に障 害 が増 幅 され る と し,Cu欠 乏 を も う一 つ の 不 稔 の原 因 と して い る。彼 らはまた,Cu欠 乏 が雄性 不 稔 の原 因 とな って い る可 能性 を も 示 唆 して い る。 も し上 の よ う に Cu欠 乏環 境 で の pol y-phenolに よ る障害 が不 稔 の原 因で あ るな ら, polyphenolを除去 し,植 物 に有 効 なCuの レ ベル を あ げて やれ ば,不稔 を回避 で きるはず で あ る。 このた め に DriessenandSuhardjo

(18)

久 馬 :東南 ア ジア低 湿地の土壌 (その2)

[Z'bz'd.]は,生殖生 長期 のは じめ に短期 間水 を 落 し,水 溶性 polyphenolを系外 に除 くこと をすす めて い る。 また

Cu

欠 乏 を直 す ため に は,直接 的土壌施用 は無 効で あ るので,葉面 散布 か種子施用 をす るよ うな手 段 を考 え るべ きで あ る と して い る。 しか し, いず れ の方法 につ いて も, いまだ その効果 を実証 す るデ ー タを与 えて いない 。 この泥炭地 にお け る水 稲不稔 との関連 で興 味深 いの は,近年 埼玉県 の一 部地 区で二毛作 田 におけ る水 稲 に異常穂 や不稔 が発生 し, こ れ につ いて の研究 が行 われて い る こ と で あ る。 まだ最終 的 な結論 はえ られて いな いが, 易分解性有機物 の還元条件下 で の中間代 謝産 物 が,幼穂形成以 後 に土壌 溶液 中 に蓄積 す る と,不稔 な どの異 常 が 出 る もの と考 え られて お り, これを回避 す るには穂 の形成 され る期 間落水 して土壌 を酸化状 態 に保 つ か

,中

間代 謝産物 のメタ ン醸醇 によ る分解 を促 進す る こ とが有効 で あ る ことが示 唆 されて い る [大 山 ・志賀 1981]。 熱帯 泥炭 にお ける水稲不稔 において は,無 機 物 が水 稲板 の到達 範 囲内 にあ ると, これを 回避 で きる といわれて い るな どの点 で,埼玉 県 の例 と違 う点 があ るが,有機 物 の分解 中間 産物 によ る障害 の可能性 が高 い点 で は共通性 があ り,今 後 の研究上 の一 つ の指針 を うる こ とがで きよ う。 いずれ に して も,熱帯 泥炭地 で の水稲 栽培 を成 功 させ る ことがで きれ ば, 泥炭 の保全 と食糧生 産 との間 にあ る排反性 を 小 さ くす る ことがで き,東 南 ア ジアの農業 に 対 す る重要 な貢献 とな るだ ろ う。

d.

熱帯 泥炭 は ど こまで開発 で きるか 東 南 ア ジアの湿地林 地帯 が,最 後 に残 され た潜在 的可耕地 を含 んで い る ことは明 らかで あ る。現 に農民 た ちの中 には,彼 らの知識 と 技術 にた よ って,湿地林 の一部 を開 墾 し成 功 して い る ものが い る。 しか し,湿地林 の全体 が潜在 的可耕地 で あ る とは考 え られ な い。で は, ど こまで が開発可能 な のか。上 の議論 を ふ まえて,土壌 の立場 か ら開発 の限界 を考 え てみた い。 一 つ の考慮 は,図6に もと づ く も の で あ る。 排水水位 を,重力排水 が可能 な限度 を こ えて下 げ るべ きで はな い。 ポ ンプ によ る強制 排水 を考 え うる時期 が あ るいは将 来来 るか も しれな いが, さ しあた って は重力 によ る排水 以上 の ことを考 え な い方 が よい。 その場合, 泥炭 の ドームを と りは らって,全 面 を ほぼ河 川 の水位 よ り少 し高 い ぐらいにまで平坦 化 し 農地化 して よい, とい うことにな るのか ど う か。 ここで泥炭 の質 が問題 にな る。 ドーム状泥 炭 の中心部 で泥炭層 の厚 い部分 が きわめて貧 栄養 で あ る ことは,図5か ら明 らかで あ る。 植生 区分 で いえ ば,mixed swamp forestの ところはまだ ま しで あ るが,padang forest の ところは手 をつ けな い方 が よい とい う判 断 にな る。 ここで,泥炭層 の厚 さ と泥炭 表層土 の栄養状態 との関連 を, スマ トラで調査 した SuhardjoandW idjaja-Adhi[1976]の結論 を 引用 す る と, ドーム状 泥炭 の周縁部 は中心部 に くらべ て,pH,塩基状態 な どが相 対 的 によ く, この極端 に貧栄養 の中心 部 か ら, よ りま しな周縁部 - の移行 は,泥炭層 の厚 さが 2-3m 付近 の ところで起 こると して い る。 よ り 安全側 を とって2m を限度 とす る と,全 く別 に西 サ ラワク に お い て 土壌調査 を した An-driesse[1972]の結論 と一致 す る。 彼 は 1m 以 下 の泥炭層 を もつ もの,

1

-2

m の泥炭層 を もつ もの, それ以 上 の ものを別 の作 図単位 と し,最初 の二 つ を農業 的 に利用可能 な もの と考 えて い る。 西 サ ラワクの場合,全 泥炭面 積 は約2,680km2で あ るが,2m 以下 の泥炭 層 を もち,農業 的 に利用可能 と考 え られ るの は, わずか にその

1

4

% 弱 とい うことにな る。 さ らに もう一 つ の考慮 が必要 で あ る。 それ

(19)

東 南 ア ジ ア研 究 20巻 4号 は泥 炭 層 の下 にパ イ ライ トな どの可 酸化 性 イ オ ウを含 む 潜在 的酸性 硫 酸塩 土 壌 が 出 な い か ど うか とい う点 につ いて で あ り, 特 に泥 炭 層 の厚 さが 1m 以 下 の場 合 に十 分 注 意 しな け れ ばな らな い。 なぜ な ら, うす い泥 炭 で は何 十 年 か の間 に, 泥炭 層 が全 部 分 解 し消失 して しま う こ とを予期 しな けれ ばな らな い か らで あ る。 南 カ リマ ンタ ンに Gambutとい うと ころが あ るが, この Gambut は泥 炭 の意 で あ る。 こ こは

1

9

3

0

年 代 に開墾 され る前 は泥 炭 地 で あ った ので あ るが, 現 在 で は地 表 に全 く 泥 炭 を認 め る こ とがで きな い。 幸 い, こ こで は酸性 硫 酸塩 土 壌 の問題 はな く,水 田 と して 現 在 も利 用 され て い るか らよ い もの の,今 後 の開墾 に は この考 慮 が必 要 で あ る。 さ らに欲 を いえ ば, い ま述 べ た よ うに泥 炭 層 が全 く消失 した 時 にで も,地 表 面 が 隣接 す る川 の低 水 位 よ り も高 い こ とが望 ま しい。 こ の条 件 を み た す 場 合 の 泥 炭 層 の厚 さ は 1m 以 下 と考 え られ, 排水 に よ って泥 炭 の沈下 が 起 これ ば, か な り早 い時期 か ら水 稲 の栽 培 が 可 能 とな るで あ ろ う。 た だ し, この条 件 を み たす 土 地 の面 積 は,Andriesse[ibz'd.]の デ ー タで み れ ば, 西 サ ラ ワ クの泥 炭 地 の うちわ ず か に

5%

以下 で あ る。 しか も, こ こか ら硫 化 物含 有 堆 積物 の面 積 を さ しひ くこ とにな る。 この よ うに考 え て くる と, す ぐにで も開発 可 能 な泥 炭 地 の面 積 は, きわ めて少 な い こ と が わ か る。 泥 炭 の深 さ 2m まで とい う範 囲 を開発 の対 象 とす る場合 , 長期 にわ た って農 地 を保 全 す るた め に は, 排 水 水位 を浅 くす る 必要 が あ り, そ れ に は泥 炭 地 で の水 稲 栽 培 技 術 を確 立 す る こ とが前 提 とな ろ う。水 稲 を う ま く栽 培 で き るよ う に な る ま で は, mixed swamp forest内 にあ る ramin (Gony∫tyZu∫ bancanu∫な ど),meranti(Shored

Z

e

Pro∫uZa

な ど),m erawan(H oped mengarawan な ど) な どの有 用材 を択 伐 す る,注 意深 い林 業 に よ って細 く長 く泥 炭 地 を利 用 す るのが, 賢 明 な 510 方 策 で あ るよ うに思 え る。 ⅤⅠ お わ り に 東 南 ア ジアの湿 地 林 は,地 球 上 の特 異 な 自 然 で あ る とい うに とどま らず ,少 な か らぬ環 境 保 全 的機 能 を もにな って い る と患 わ れ る。 湿 地 林 の開発 が,不 可 逆 的 な 自然 の破 壊 に導 く危 険 が大 きい とす れ ば, 開発 の計 画 は慎 重 の上 に も慎 重 に立 て られ ね ばな らな い。 そ し て , そ のた め に も, 熱 帯 湿 地 林 生 態 系 につ い て の多面 的 か つ 詳細 な研 究 が,今 日ほ ど必 要 とされ て い る時 はな いで あ ろ う。 参 考 文 献

1.Anderson,∫.A.R・1964.The Structure and DevelopmentofthePeatSwampsofSarawak and Brunei・J・Trop・Geogr・18:7-16・ 2.Andriesse,J.P.1972.The Sol'Z∫ of We∫t

Sarawah.Memoir1.Sarawak:Gov't.Print -ingOfGce・

3.- - -- ・1974.Tropl'caZLowlandPeats t72 Souzhca∫t A∫ta. Communication 63.

Amsterdam:RoyalTropicallnstitute・

4.Buwalda,P・1940.Bosverkenning in del n-dragirischeBovenlanden・Rep・For・Res・Sta・ Bogor(Cited from Polakl1975]).

5.Chew,W .Y.1971. Yield and Growth of SomeLeguminousand RootCropson Acid Peatto Magnesium Lime・MaZays・Agric

J・

48:142-158(Cited from Driessenl1978])・ 6.Coulter,∫.K.1957.DevelopmentofthePeat

Soils of Malaya.Malay.Agric./.33;63-81

(Cited from Anderson[1964]).

7.Driessen,P.M.1978.PeatSoils.InSo2'Z∫and Rice,editedbyIRRI,pp.7631779・LosBaBos: IRRI.

8.Driessen, P.M.; and Rochimah,L. 1976.

The Physical Properties of Lowland Peats from Kalimantan.Soil Res. Znsz.,Bogor,

β〟ガ.3:56-73.

9.Driessen, P.M・; and Soepraptohardjo,M・

1974・Soils f♭r Agricultural Expansion in lndonesia.Soz'ZRes.Zn∫7.,Bogor,Bull.1: 41-55.

10.Driessen,P.M.;and Suhardjo,H.1976.0n theDefectiveGrainForma.tionofSawahRice

(20)

久 馬 :東南 ア ジア低 湿地 の土 壌 (その 2) on Peat・SoilRe∫.In∫tリBogor,Bldl・3:2

0-43.

11・古川久雄 .1979. 「南 スマ トラ低地部 の土壌」 『東南 アジア研究』17:409-424.

12・Hardon,H.J・;and Polak,B.1941. DeChe一 mischeSamenstellung EnkeleVenellin Ned・ Indie. Meded. Lab. Scheihd. Onderz. 101 Landbouw17・Buitenzorg (Cited from Polak [1975]).

13.小林 純 .年不詳. 「半 島マ レー シア河川 の水 質 デ ータ 」未発表 (著者 の ご好意 による). 14.Moormann, F.R.1961. The Soz'75 0f the

RePubZicof Vietnam. Min.ofAgric・Saigon. 15.大 山信雄 ;志賀一一 . 1981

.

「生育異 常現象の

土壌面か らの原 因究 明

『埼玉 県 におけ る水稲 異常生育 (と くに異常穂あ るいは不稔 ) に関す る調査試験成練 (中間報告)』 農事試 ;埼玉農

試など (編),41-45ペー ジ所収 .

16・Polak,B・1952・ Veen en Veenontglnning ln Indonesia・M ZA/.Nrs.5 & 6・ 13andung・.

Vorkink (Cited from Driessenl1978]). 1975. Character and Occur -rence of Peat Deposits in the Malaysian Tropics・Ⅰn Modern Quaternary Re∫earch in Souzhea∫tA∫Z'ai,edited byG.J.Bartstraand W ・A・Casparie,pp・7ト81・Rotterdam:A・A・

Balkema.

18.Rozmej,Z・;and Kwiatkowsky,A.1976・The SorptionofW asteW atersonPeat.FlfthZnz'7・ Peat Congr・ Poznan (Cited from Driessen 【1978]).

19.Suhardjo,H・;andW idjaja-Adhi,IIP・G・1976・ ChemicalCharacteristicsoftheUpper30cm ofPeatSoilsfrom Riau.Soz'ZRe∫.′n∫7.,Bogor,

β〟〃.3:74-92.

20.USDA,SoilConservationService,SoilSurvey Staff.1975. Sot'ZTaxonomy,A Ba∫icSLy∫Zem of SoilCZa∫∫zjcatz'onfor M abi71g and h te r-2reting Soz'Z Suryey∫. Agric・ Handb. 436.

図 3 泥炭湿地の地形環境 ( Andri esse 【 1 97 4 1よ り引用) を呈 し,かな りの量 の遊離酸化物 を含んで い る。 したが って,渇 炭層下 の粘土 の白色化 は,潮汐平野 に堆積 し た粘土 が, その後泥炭形成 に伴 って うけた強 烈 な溶脱 の結果で あ ると考え られ る。古川 の t i dalf l atpodz ol i z at i on は還元溶脱 を も含 む 概念 であ り, しか も土壌 断面 の上下方 向で の 溶脱 ・集積で はな く,横方向での溶
図 4 東南 アジアの泥炭湿地の生成段階模式図 ( Andr i e s s e[ 1 97 4 1よ り引用) け る粘 土 の漂 白化 の事 実 を み て い る 。 泥炭 上 の植生 , 泥 炭層 下 の堆 積 物 につ いて 述 べ たつ いで に, 泥 炭 層 か ら流 れ 出 る水 につ いて もみ て お こ う 。 半 島 マ レー シア,東 マ レ ー シ ア , イ ン ドネ シア の各 地 に ア イ ( ェ)ル ・ ヒ タ ム ( Ai e rHi t am orAe rI t a
図 5 西カ リマ ンタ ンの ドーム状泥炭中の無機成分の分布 ( Dr i e s s en[ 197 8] よ り引用 ) 変 化 は, Dr i essen[1978]に よ る 表5に, よ り くわ し く示され て い る。 開墾 後の経 過 年 数 と作 付 の強 度 の両 方 の影 響 が諸 め られ , 全 灰 分 ,P205,K20,Si02など は顕 著 に減少 す るが ,CaO,MgO は,開 墾 時 の焼 却 に よ る添 加 と恐 ら くは系 外か らの施 用 に よ り,土
表 5 スマ トラとカ リマンタ ンの泥炭土壌表層の養分含量 ( Dr i e s s en[ 1 978] より引用) Sur f a c eSoi ] S
+2

参照

関連したドキュメント

台地 洪積層、赤土が厚く堆積、一 戸建て住宅と住宅団地が多 く公園緑地にも恵まれている 低地

本審議会では、平成 29 年2月 23 日に「虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開

ポイ イン ント ト⑩ ⑩ 基 基準 準不 不適 適合 合土 土壌 壌の の維 維持 持管 管理

土壌汚染状況調査を行った場所=B地 ※2 指定調査機関確認書 調査対象地 =B地 ※2. 土壌汚染状況調査結果報告シート 調査対象地

3000㎡以上(現に有害物 質特定施設が設置されてい る工場等の敷地にあっては 900㎡以上)の土地の形質 の変更をしようとする時..

1. 東京都における土壌汚染対策の課題と取組み 2. 東京都土壌汚染対策アドバイザー派遣制度 3.

土壌溶出量基準値を超える土壌が見つかった場合.. 「Sustainable Remediation WhitePaper

●大気汚染防止対策の推 進、大気汚染状況の監視測 定 ●悪臭、騒音・振動防止対 策の推進 ●土壌・地下水汚染防止対 策の推進