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福島除染・復興政策の転換期における除染・復興に関する課題-原発避難者の消滅と原発避難問題の終焉を前にして-

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福島除染・復興政策の転換期における除染・復興に関する課題

-原発避難者の消滅と原発避難問題の終焉を前にして-

福島大学 川﨑興太 1. 転換期にある福島除染・復興政策 福島県は、福島第一原子力発電所事故(以下「福 島原発事故」)の発生に伴って、深刻かつ重大な 放射能被害を受けることになった(1)1)。その福島 県の復興に向けた諸政策の基本構造は、“除染な くして復興なし”との理念のもとに、除染を復興 の起点かつ基盤として位置づけた上で、避難指示 区域内にあっては「将来的な帰還」、避難指示区 域外にあっては「居住継続」を前提として、「住 民の復興=生活の再建」と「ふるさとの復興=場 所の再生」を同時的に実現することをめざすとい うものである2) しかし、福島原発事故が発生してから 5 年が経 過した現在、この福島除染・復興政策は、大きく 転換しようとしている(表 1)。第一に、復興の 起点かつ基盤として位置づけられている除染が 2017 年 3 月までに終了することが予定されてい る3)。第二に、除染の終了とあわせて、避難指示 区域のうち、帰還困難区域を除いて、換言すれば 避難指示解除準備区域と居住制限区域において、 2017 年 3 月までに避難指示が解除されることが 予定されている4)。第三に、避難指示の解除が国 の方針の通りに進めば、2018 年 3 月までに精神 的損害賠償が終了になる 5)。第四に、2017 年 3 月で自主避難者(2014 年に避難指示が解除され た地域からの避難者を含む)に対する応急仮設住 宅の供与が終了になる6) つまり、避難指示区域内では、帰還困難区域を 除けば除染が終わり、帰還が可能な程度にまで環 境が回復するので、避難指示を解除し、精神的損 害賠償を終わりにする、避難指示区域外では、除 染が終わり、安心して住み続けることが可能な程 度にまで環境が回復するので、応急仮設住宅の供 与を終わりにするということである。2016 年 5 月現在、福島県の避難者は約 94,000 人であり7) そのうち帰還困難区域からの避難者は約 24,000 人であるので8)、政策的課題としては、約 7 万人 (うち約 23,000 人が自主避難者)の原発避難者 が消滅し、原発避難問題がほぼ終焉を迎えること になる9)10)11) 本稿は、福島原発事故の発生から 5 年が経過し た現在、このような政策転換期にある福島の除 染・復興に関する課題について、避難指示区域等 内の地域と避難指示区域外の地域に分けて明ら かにするものである12)13) 表 1 福島除染・復興政策の転換 避難指示区域内 避難指示区域外 除染 2017 年 3 月までに終 了 2017 年 3 月まで に終了 避難指示 帰還困難区域を除い て 2017 年 3 月までに 解除 - 精 神 的 損 害賠償 2018 年 3 月までに終 了(避難指示の解除 から 1 年間) - 応 急 仮 設 住宅 2018 年 3 月まで(10 市町村の住民) 2017 年 3 月で供 与の終了 2. 避難指示区域外の地域での除染・復興の課題 (1)国の目標の達成状況と住民の意識 先述の通り、避難指示区域外では、除染が終わ り、安心して住み続けることが可能な程度にまで 環境が回復するので、応急仮設住宅の供与を終わ りにするということになっている。そこで、問題 とされるべきことは、本当に、安心して住み続け ることが可能な程度にまで環境が回復するのか、 そして、避難指示区域外の地域で生活している住 民は安心して住み続けることができるのか、でき ないとすれば何故なのかということである。 国は、放射性物質汚染対処特措法(以下「除染 特措法」)に基づく基本方針において、追加被曝 線量が年間 20mSv 未満である地域の長期的な目 標を「年間追加被曝線量 1mSv 以下」と定め、除 染などを進めてきた。福島原発事故の発生から 5 年が経過した現在、除染や放射能の自然減衰によ って、避難指示区域外の地域では、基本的には既 にこの目標は達成されていることが明らかにな っている 14)。つまり、放射線防護を目的とする 除染の必要性は低下しており、その意味では、除 染を終了させることには合理性があるというこ とである。 しかし、現に福島で暮らしている住民は、放射 能汚染や除染などについて、どのように考えてい るのであろうか?筆者は、福島市の中で最も放射

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能汚染が深刻であった大波地区の住民を対象と して、これまで 2 回にわたってアンケート調査を 実施している15)。1 回目は住宅除染の終了直後に あたる 2012 年 10~11 月であり、2 回目は生活圏 森林除染の終了直後にあたる 2016 年 2~4 月であ る。対象者は、いずれの調査においても、避難・ 移住者を含む小学生以上の全住民である。アンケ ート調査票の回収数は、2012 年調査では 677 件、 2016 年調査では 512 件であり、仮にアンケート 調査票の配布時点における大波地区の全人口を 母数とすれば、回収率はそれぞれ 60%、50%であ る。なお、大波地区の空間線量率は、2011 年 6 月には 2.24µSv/h、2016 年 3 月には 0.47µSv/h で あり、大幅に低減しているものの、今なお避難指 示区域外の地域の中では相対的に高い水準にあ る。 アンケート調査の結果を見てみると、図 1 と図 2 から、多くの在住者は、生活圏森林の除染が終 了した後も、放射能に対する不安感を抱きながら 暮らしており、被曝による病気を心配しているこ とがわかる。図 3 は、今後取り組まれるべきこと として高校生以上の者が望んでいることをまと めたものである。2012 年調査では「継続的な除 染」が最も多いのに対して、2016 年調査では「損 害賠償の徹底」が最も多くなっているが、それで も特に在住者については多くの者が今なお「継続 的な除染」を望んでいることがわかる。それでは、 今後、どこを優先して除染すべきと考えているか と言えば、図 4 から、2012 年調査でも 2016 年調 査でも森林が最も多いことがわかる。2016 年調 査で 2 番目に多い「生活圏森林以外の森林」につ いては、基本的に除染特措法に基づく除染の対象 とされていないが、図 5 から、多くの者は除染を 実施すべきだと考えており、その理由としては、 森林全体を除染しないと線量が下がらない、森林全 体を除染しないと安心できない、森林全体が生活の 場であるといったものが多くなっている。 図 1 放射能に対する不安感〔在住者が対象〕 図 2 除染実施後に放射能汚染が原因で困っているこ とや心配なこと〔在住者が対象〕 図 3 今後取り組まれるべきこと〔高校生以上の者が対象〕 図 4 今後優先して除染すべき場所 〔高校生以上の在住者が対象〕 0% 20% 40% 60% 80% 100% 在住者の合計(N=641) 高校生以上の在住者(N=611) 小・中学生の在住者(N=30) 在住者の合計(N=479) 高校生以上の在住者(N=460) 小・中学生の在住者(N=19) 2012 年 ( 住宅除染の終了 直後) 2016 年 ( 生活 圏森 林除 染 の 終了 直後 ) とても不安である 少し不安である あまり不安ではない 全く不安ではない 無回答 0% 20% 40% 60% 森林 田 畑 住宅(2回目) 河川や水路 道路 学校(2回目) 果樹園 公園や広場(2回 目) その他 2012年調査 N=611 0% 20% 40% 60% 生活圏森林(2回 目) 生活圏森林以外 の森林 住宅(2回目) 河川や水路 畑 田 道路(2回目) 公園や広場(2回 目) 果樹園(2回目) その他 2016年調査 N=460 0% 20% 40% 60% 80% 100% 在住者の合計(N=641) 高校生以上の在住者(N=611) 小・中学生の在住者(N=30) 在住者の合計(N=479) 高校生以上の在住者(N=460) 小・中学生の在住者(N=19) 2012 年 (住宅除染の 終 了直 後) 2016 年 (生活 圏森 林除 染 の 終了直後) 被曝によって病気にならないか心配である 農業の先行きが心配である 自由に庭に出たり外で遊んだりできない 家族が離れて暮らしている 避難・移住した友人となかなか会えない その他 特になし 注1:本設問は、 当てはまる選 択肢を全て選 択することを求 たものである。 注2:小・中学生の アンケート調 査には「農業 の先行きが心 配である」とい う選択肢は設 けていない。 0% 20% 40% 60% 80% 100% 高校生以上の合計(N=642) 高校生以上の在住者(N=611) 高校生以上の避難・移住者(N=31) 高校生以上の合計(N=486) 高校生以上の在住者(N=460) 高校生以上の避難・移住者(N=26) 2012 年 (住宅除染の 終 了直 後) 2016 年 (生活圏森林除染 の 終 了直後) 損害賠償の徹底 継続的な除染 継続的な放射能汚染の測定 健康管理の充実 風評被害の払拭 農業の振興 新たな産業の育成 大波在住の住民の避難・移住の支援 避難・移住住民の避難・移住生活の支援 避難・移住住民の帰還の支援 その他 注:本設問は、当 てはまる選択 肢を3つ以内 で選択するこ とを求めたも のである。

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図 5 生活圏森林以外の森林の除染を実施すべきか 〔全住民が対象〕 写真 1 大波地区の大波城址周辺における除染実施箇所 (2)環境回復を目的とする“除染”の実施 大波地区では、住宅除染も生活圏森林除染も終 わり、基本的には除染はすべて終了した。しかし、 多くの住民は、被曝によって病気にならないかと 不安を感じながら日常生活を送っており、森林全 体の除染をはじめ、継続的に除染を実施すること を望んでいる。こうした住民の心情や意向は、大 波地区に特有のものかと言えばそうではなく、む しろ、ある普遍的なもの、端的に言えば、福島除 染・復興政策の根本的な欠陥を表出しているよう に思われる。その欠陥とは、環境回復を目的とす る“除染”政策の不在であり、典型的には、森林 や河川・水路等が基本的に除染の対象とされてい ないことである(写真 1)(2)16) 除染特措法は、「事故由来放射性物質による環 境の汚染が人の健康又は生活環境に及ぼす影響 を速やかに低減すること」を目的とするものであ り、森林や河川・水路等については、基本的に生 活環境ではなく健康に影響を及ぼす場所ではな いとして、除染を実施する必要がないものとされ ている。確かに、放射線防護という観点からすれ ば、森林全体の除染や河川・水路等の底質などの 除染は必要ではないかもしれないが、原状回復と いう理念からすれば、除染の意義や役割は、健康 リスクの低減に限られない。水や緑は暮らしの基 盤であり、物質的な意味でも象徴的な意味でも、 それらの安全性と安心性の回復なしには、生活の 再建も場所の再生もあり得ない。県土面積の約 7 割が森林で 17)、県土面積の約 8 割が過疎・中山 間地域である福島県では 18)、多くの住民が森林 と非分離の暮らしを営んでおり、森林全体の除染 を強く望む大波地区の住民の願いは、決して例外 的なものだとは言えないだろう。 つまり、避難指示区域外の地域では、既に基本 的には「年間追加被曝線量 1mSv 以下」が達成さ れているとはいっても、除染そのものの必要性が なくなったわけではなく、むしろ、放射線防護を 目的とする除染の必要性が低下したからこそ、環 境回復を目的とする“除染”に力が注ぎ込まれ るべき状況に至っているのである。いわば、シー ベルト(Sv)を単位とする除染から、ベクレル(Bq) を単位とする“除染”への転換が求められてい るのであり、今後は環境回復を目的とする“除染” を進めるための新たな法律を制定し、特に森林や 河川・水路等の“除染”を実施してゆくことが望 まれる。 (3)自主避難者に対する住宅セーフティネットの構築 こうした課題を抱える中での、自主避難者に対 する応急仮設住宅の供与の終了である。この問題 の背景には、避難指示区域外の住民に対して「居 住」「避難」「移住」「帰還」の自己決定権を認め た原発事故子ども・被災者支援法が形骸化してし まったこと、自主避難者に対する損害賠償は避難 の継続や移住を行うに足りるものにはなってい ないことなどがある。 福島県生活環境部避難者支援課(2015)による と、2015 年 2 月時点で、福島県の避難者のうち、 「応急仮設住宅の入居期間の延長」を求めている 者は、応急仮設住宅の入居者を母数とすれば 79%となっており、応急仮設住宅の入居期間延長 を求めている者のうち、その理由として「放射線 の影響が不安であるため」を挙げている者は 56%となっている 19)。また、福島県生活環境部 避難者支援課(2016)によると、2016 年 2 月時 点で、2017 年 3 月末で仮設住宅の供与が終了す る世帯のうち、2017 年 4 月以降の住宅が決まっ ていない世帯は、県内避難世帯では 56%、県外 0% 20% 40% 60% 80% 100% 総合計(N=512) 在住者の合計(N=479) 高校生以上の在住者(N=460) 小・中学生の在住者(N=19) 避難・移住者の合計(N=33) 高校生以上の避難・移住者(N=26) 小・中学生の避難・移住者(N=7) 高校生以上の合計(N=486) 小・中学生の合計(N=26) 除染を実施すべきだと思う 除染を実施しなくてよいと思う 無回答 2016年調査 注:着色した部分が除染の実施箇所である。ただし、この写真の手前 の部分は大波城址であり、厳密に言えば、除染ボランティアによ って落葉の除去などが行われたが、これは例外的な事例であるの で、ここでは典型的な除染実施箇所を示すために、色を塗ってい ない。なお、大波地区では、農地については、効果がないとの住 民の意見に基づき、樹園地を除いて、除染が実施されていない。

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避難世帯では 78%を占めている20) 現在、福島県は、2017 年 4 月以降の住宅が決 まっていない世帯などに対する戸別訪問を通じ て、恒久住宅への円滑な移行、避難者の意向に沿 った生活の再建に向けた取り組みを行っている。 しかし、福島県が用意している具体的な生活再建 支援制度は、半ば当然のことながら、自宅などへ の移転費用の補助のほかには、低所得者層向けの 家賃補助などに限られており、避難者の帰還を促 すことに焦点を当てて設計されている21) しかし、避難指示区域外の地域では、今なお上 記の森林や河川・水路等を典型とする環境回復が 図られていないという実態に鑑み、自主避難者が 帰還することを躊躇するのには合理的な理由が あると言うべきであり、国は住宅セーフティネッ トを構築する責任を負う者として、帰還する/し ないにかかわらず、自主避難者の多様な住まいの 選択を支える政策を確立・充実することが必要だ と考えられる。この点に関して、原発避難者の住 まいについては、自然災害を念頭に置いた災害救 助法に基づいて確保されているが、原子力災害は 広域性と長期性を特徴としているため、災害救助 法の枠組みでは原発避難者の避難生活を十分に 支えるものにはなりえない。今後は、原発避難者 の住まいに関する新たな法律を制定し、国が直轄 事業として住宅の長期供与を行う制度を創設す ることが検討されてよい22) さらに言えば、今回の福島原発事故によって、 自然災害を前提とした災害対策基本法と、これを ベースにした原子力災害対策特別措置法では、十 分な原子力災害対策を果たしえないことが明ら かになった。避難、健康管理、生活再建、除染、 復興まちづくりなど、原子力災害に固有の災害対 策に関する「原子力災害対策基本法」の制定が検 討されてよい23) 3. 避難指示区域等内の地域での除染・復興の課題 (1)避難指示区域の状況と住民の避難・帰還の状況 福島原発事故の発生に伴って、避難指示区域等 が設定されたのは、2011 年 4 月に警戒区域、計 画的避難区域、緊急時避難準備区域のいずれかが 指定された大熊町、双葉町、富岡町、浪江町、広 野町、川内村、楢葉町、葛尾村、飯舘村、田村市、 南相馬市、川俣町の 12 市町村である(3)。これら の 12 市町村において、緊急時避難準備区域につ いては、2011 年 9 月に広野町、川内村、楢葉町、 田村市、南相馬市の 5 市町村で解除されたが、そ の他の区域については、2012 年 4 月における避 難指示区域の見直しに伴って、帰還困難区域、居 住制限区域、避難指示解除準備区域に再編された。 その後、2014 年 4 月に田村市、同年 10 月に川内 村の一部、2015 年 9 月に楢葉町、2016 年 6 月に 葛尾村の一部と川内村、同年 7 月に南相馬市の一 部で避難指示が解除されており、今後、川俣町と 飯舘村での解除が予定されている。 避難指示区域等内の人口は、2011 年 3 月には 146,991 人であったが、住民票の異動や死亡など に伴って、2015 年 12 月には 124,927 人となり、 22,064 人減少している(図 5)。これまでに行政 区域の全域にわたって避難指示区域等が解除さ れたのは、広野町、楢葉町、田村市の 3 市町村、 行政区域の一部の区域において避難指示区域等 が解除されたのは、川内村と南相馬市の 2 市町村 であるが、2015 年 12 月現在の帰還者数は、これ らの 5 市町村の合計で 39,253 人であり、避難者 数は 85,674 人となっている。市町村ごとに帰還 者の割合を見ると、田村市、南相馬市、広野町、 川内村では、50~70%程度となっているが、楢葉 町では、避難指示が解除されてから日が浅いこと もあって 5%となっている。また、広く知られて いるように、帰還者の多くは高齢者である。 復興庁による住民意向調査の結果を見ると、帰 還困難区域が相当な範囲に指定された大熊町、双 葉町、富岡町、浪江町では、「戻らない」と回答 している住民の割合が 50~60%程度と高くなっ ている(図 6)24)。他方、帰還困難区域が指定さ れなかった又は部分的に指定された市町村、ある いは、行政区域の一部が避難指示区域に指定され た市町村であるその他の 8 市町村では、「戻りた い」と回答している住民の割合が 30~60%とな っている。「戻りたい」と回答している住民が帰 還する場合に希望する行政の支援などについて は、市町村によって多少の違いは見られるが、「医 療・介護・福祉施設・サービスの再開・新設」、 「商業施設の再開・新設」、「住宅の修繕や建て替 えへの支援」がほぼ共通して多くなっている。「戻 図 5 人口の動向と避難指示等解除市町村における帰還率 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 大熊町 双葉町 富岡町 浪江町 広野町 川内村 楢葉町 葛尾村 飯舘村 田村市 南相馬市 川俣町 帰還困難区域が相当な 範囲に指定された市町村 帰還困難区域が指定されなかっ た又は部分的に指定された市町 村 行政区域の一部に 避難指示区域が指 定された市町村 2011年3月 2015年12月 (人) 避難指示区域等が解除 された5市町村の帰還率 ●広野町:48% ●川内村:64% ●楢葉町:5% ●田村市:72% ●南相馬市:32% 原発避難12市町村の人口 (避難指示区域等内の人口) 22,064人の減少 ●2011年 3月:146,991人 ●2015年12月:124,927人 注:この図は、それぞれの市町村に対するヒアリング調査の結果に基づくものである。

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図 6 住民の帰還意向 らない」と回答している住民のその理由としては、 市町村によって異なるが、「水道水などの生活用 水の安全性に不安があるから」や「原子力発電所 の安全性に不安があるから」などの放射能や原子 力発電所の安全性に関するもの、「医療環境に不 安があるから」や「家が汚損・劣化し、住める状 況ではないから」や「生活に必要な商業施設など が元に戻りそうにないから」などの避難元の生活 インフラに関するもの、「避難先の方が生活利便 性が高いから」などの避難先の居住環境に関する ものが多くなっている。 (2)除染と帰還を前提としない復興政策の充実 除染の実施を前提として帰還を果たし、「住民 の復興=生活の再建」と「ふるさとの復興=場所 の再生」の同時的な実現をめざすという福島除 染・復興政策は、住民が生活再建を図る上での選 択肢の一つを保障するものとして重要な政策で あることは言うまでもない。しかし、これまでに 蓄積された科学的・経験的知見からは、同時に、 除染と帰還を前提としない復興政策の充実が必 要であることが示唆されているように思われる。 まず、放射能に関する問題がある。避難指示区 域等内では、放射能汚染が深刻であった地域が多 いが、除染の線量低減効果には限界があって、除 染の実施後にも絶対的な放射線量が高く、「年間 追加被曝線量 1mSv 以下」が達成されないところ が少なくない 25)。また、ほとんどの市町村にお いて、「戻らない」理由として水道水などの生活 用水の安全性に関する不安が挙げられているよ うに、避難指示区域外の地域と同様に、森林や河 川・水路等の“除染”が実施されておらず 26) 住民が安心して帰還できる程度にまで環境が回 復していない。 次に、生活インフラに関する問題がある。道路、 水道、電気、ガスなどの公共インフラについては 復旧が進んでいるものの、生活インフラの復旧や 再開の目途がたっていない。5 年という歳月の中 で、特に全町・全村避難が続いているところでは、 そもそも帰るべき自宅が荒廃してしまっている (写真 2)。現在、国がこうした建物の解体作業 を進めているが、今後、どれだけの住民が帰還し て家を建て替えるのか、まったく見当がつけられ ない。また、住民が「戻らない」理由として、ほ とんどの市町村において医療や買い物に関する 不安が挙げられているが、住民が大幅に下回るこ とが予想される中で、医療や商業を再開または開 業・開店する事業者は数少ない。帰還する住民の 多くは高齢者であるので、これらの問題は特に深 刻である。さらに、原子力発電所の廃炉に伴って、 雇用の場が大幅に減ってしまっている。国は、イ ノベーション・コースト(福島・国際研究産業都 市)構想の具体化を進めているが、雇用のミスマ ッチの問題もあり、住民の雇用の場になりえるか どうかはわからない。 もちろん、帰還する/しないの問題は、それほ ど単純なことではないが、これらの放射能や生活 インフラに関する問題があって、避難指示が解除 されても住民はあまり帰還しておらず、今後避難 指示の解除が予定されている地域でも若年層を 中心として帰還を望まない住民が多くなってい る。要するに、“除染なくして復興なし”との理 念のもとに構造化されている福島除染・復興政策 は、一方では、その合理性や妥当性が失われつつ あり、「復興とは何か」という基本的な問いに対 して、今さらながら、除染を通じた「ふるさとの 復興=場所の再生」なくしても、「住民の復興= 写真 2 双葉町の中心市街地における荒廃した建物 (2016 年 7 月撮影) 0% 20% 40% 60% 80% 100% 大熊町 双葉町 富岡町 浪江町 広野町 楢葉町 川内村 葛尾村 飯舘村 田村市 南相馬市 川俣町 帰還困難区域が 相当な範囲に 指定 さ れ た市町村 帰還困難区域が指定さ れなか った又は 部分的 に指定さ れ た市町村 行政区域の一 部に避難指示 区域が指定さ れ た市町村 戻りたい 判断がつかない 戻らない 無回答 注:この図は、復興庁の「原子力被災自治体における住民意向調査」 (http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-4/ikoucyousa/)によるもの である。ただし、広野町に限っては、同調査が実施されていないため、「広野町復興計画 (第二次)策定のための町民意向調査」による。

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生活の再建」はありうるということを再認するこ とが求められているのである。換言すれば、帰還 困難区域を除けば除染が終わり、帰還が可能な環 境にまで回復するので、避難指示解除準備区域と 居住制限区域では避難指示を解除し、精神的損害 賠償も終わりにするということになっているが、 除染と帰還を前提としない復興政策、すなわち、 移住や長期避難という選択肢を保障する政策を 充実することが求められていると言えるだろう。 この点で、原子力災害対策本部は、2013 年 12 月に「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」 を決定し、「早期帰還支援と新生活支援の両面で 福島を支える」との方針を打ち出している 27) また、これを受けて、原子力損害賠償紛争審査会 は、同月に「中間指針第四次追補」を決定し、移 住または長期避難のために負担した住宅・宅地の 取得にかかわる費用について、事故前の価値を超 えて賠償するものとしている5)。これらは、どん なに放射能に汚染されていようとも、“いつかは 全員帰還”という方針を一部変更したものだと 解釈できるが、その賠償の対象者は基本的に帰還 困難区域内の住民とされており、大熊町と双葉町 以外の市町村における居住制限区域内と避難指 示解除準備区域内の住民については「移住等をす ることが合理的であると認められる者」との条件 が付加されているなど、不明確な部分が残されて いるほか、原則として実際に費用が発生しない限 りは賠償の対象とはならないことになっている。 実際の運用の場面でも、さまざまな問題が生じて いるところであり28)、改善が急がれる。 (3)広域単位での除染・復興政策の確立 その一方で、既に帰還した住民や帰還を希望す る住民の帰還生活をしっかりと支えることは重 要な課題であり、福島除染・復興政策は完全に合 理性や妥当性を失ったわけではない。避難指示区 域等内の多くの市町村は、福島原発事故の発生前 から、人口減少・高齢化・経済停滞が深刻であっ た地域であり、帰還した住民が安心して安定的な 日常生活を送れるように場所を再生すること、そ して、それが同時に持続可能な地域の形成につな がること、およそこのような道筋にそって、除染 と復興まちづくりが進むことが求められるが、こ こでの問題は、除染と復興の空間単位が市町村の 行政区域となっていることにある。 例えば、双葉町は、行政区域面積の 96%が帰 還困難区域に指定されており、同区域内に同じく 96%の住民が暮らしていた町である。双葉町にと ってみれば、たとえ 4%ではあったとしても、帰 還困難区域以外の場所に自治体としての存亡が かかっているわけだから、そこを国にしっかりと 除染してもらいながら、自分は復興計画を立案し、 国や県との連携のもとに、住宅、教育施設、医療・ 福祉施設、買い物施設、上下水道、道路などを復 旧・再生するという具合に、なんとか自分の守備 範囲と権限の中で、「創造的復興」を果たすべく、 まちづくりを進めようということになる。 こうしたことが双葉町に限らず、帰還困難区域 が広く指定されている大熊町、富岡町、浪江町な どにおいても、それぞれの市町村の行政区域ごと に行われているのであり、現在、それぞれの市町 村で整備が急がれている復興拠点はその象徴的 な存在である(図 7)29)。要するに、広域性と長 期性を特徴とする放射能災害の実態と、市町村主 義に立った除染・復興政策の空間単位がズレてい るのである。今後、持続可能な地域の形成に向け て、避難指示区域等内の市町村の除染・復興を進 めるにあたっては、基礎自治体としての組織のあ り方や、国や県との連携のあり方について検討し つつ、広域単位での除染・復興政策を確立するこ とが必要だと考えられる。 図 7 避難指示区域の指定状況と復興拠点の位置 (2015 年 12 月現在) 注:田村市と川内村に は、場所が特定さ れた復興拠点 は 存在しないが、便 宜的に表記した。

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4. 結びにかえて-「2020 年問題」を前にして- 福島原発事故の発生から 5 年が経過した今も なお、廃炉・汚染水問題、放射能汚染問題、避難 生活問題など、さまざまな問題が続いており、福 島原発事故は収束に至っていない。放射能被害は 長期にわたって持続するので、福島の復興にはき わめて長い時間が要される。 しかし、福島除染・復興政策は、原発避難者の 消滅と原発避難問題の終焉に向けた「加速化」を 図るための装置となっている。原発事故を収束さ せ、放射能被害を軽減させることによってではな く、原発避難者を消滅させ、原発避難問題を解消 済みのものとすることによって、2020 年、すな わち、復興庁が設置期限を迎え、復興・創生期間 が終了し、東京オリンピックが開催される節目の 年までには、福島原発事故を克服した国の姿を形 づくることがめざされてい る。筆者はこれを 「2020 年問題」と言っている。 被災者の日々の生活の中には、これまでの福島 除染・復興政策で取り残された課題と、政策転換 に伴って発生する課題が重なっている。いま、被 災者が求めていることは、国、地方自治体、被災 者が「復興とは何か」、「避難とは何か」、「放射能 と向き合って生きるとはどういうことか」といっ た基本的な問いに対する答えをきちんと確認し 合うこと、そして、そこから政策をつくり、実行 していくという普通のことである。 【補注】 (1) 本稿は、川﨑(2016a)の一部を加筆修正したもの である。 (2) 厳密に言えば、森林に関しては、除染特措法に基 づく除染とは別に、2013 年度から、2013 年 4 月の 時点で汚染状況重点調査地域に指定されていた 40 市町村を対象として、森林の公益的機能を維持 しながら放射能を削減し、森林再生を図る福島県 の補助事業である「ふくしま森林再生事業」が実 施されているが、福島県農林水産部(2016)「平 成 27 年福島県森林・林業統計書(平成 26 年度)」 によると、その実績は、森林整備(間伐)が 595ha、 作業道整備が 53km にとどまっている。また、営 農再開・農業復興の観点からの放射性物質対策が 必要なため池については、除染特措法に基づく除 染とは別に、2016 年度から、福島再生加速化交付 金事業として底質の除去などが実施されているが、 2016 年 7 月現在、多くの市町村では放射能汚染状 況を調査している段階にあり、実際に実施された のは川俣町の 1 ヵ所と広野町の 2 ヵ所にとどまっ ている。 (3) 緊急時避難準備区域には避難指示が出されなかっ たが、大部分の住民が行政区域外に避難したとい う意味では、避難指示が出された市町村と共通の 問題を抱えていることなどに鑑み、本章では 12 市町村について記述する。 【参考文献】 1) 川﨑興太(2016a)「政策移行期における福島の除 染・復興まちづくり-福島原発事故の発生から 5 年後の課題-」日本建築学会 東日本大震災におけ る実効的復興支援の構築に関する特別調査委員会 福島支援小委員会編『福島の現状と復興の課題』 (2016 年 8 月刊行予定)

2) Kota KAWASAKI(2013)Present Status and Problems of Decontamination Planning and Activities by Municipalities in Fukushima Prefecture: Records of the Early Stage after the Fukushima Daiichi Nuclear Disaster, Proceedings of International Symposium on

City Planning 2013, pp.1-22 3) 環境省除染情報サイト、http://josen.env.go.jp/(2016 年 7 月 7 日に最終閲覧) 4) 原子力災害対策本部(2015)「『原子力災害から の 福 島 復 興 の 加 速 に 向 け て 』 改 訂 」 http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/kinkyu/pdf/ 2015/0612_02.pdf(2016 年 7 月 7 日に最終閲覧) 5) 原子力損害賠償紛争審査会(2016)「東京電力株 式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原 子力損害の範囲の判定等に関する中間指針第四次 追補(避難指示の長期化等に係る損害について) 〔 2016 年 1 月 28 日 改 定 〕 」 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/ 016/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2016/01/28/136641 2.pdf(2016 年 7 月 7 日に最終閲覧) 6) 福島県(2015)「応急仮設住宅(仮設・借上げ住宅) の 供 与 期 間 に つ い て 」 http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat2/kyou tsuu01_11hinanmoto.pdf(2016 年 7 月 7 日に最終閲 覧) 7) 福島県災害対策本部(2016)「平成 23 年東北地方 太平洋沖地震による被害状況即報(第 1640 報)」 (2016 年 5 月 2 日付) 8) 復興庁(2016)「復興の現状(2016 年 5 月 27 日付)」 第 22 回 復 興 推 進 委 員 会 資 料 、 http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat7/sub-cat7-2/20160527_05_sankosiryou1-1.pdf(2016 年 7 月 7 日に最終閲覧) 9) 山下祐介・市村高志・佐藤彰彦(2013)『人間なき 復興-原発避難と国民の「不理解」をめぐって-』 明石書店 10) 関西学院大学災害復興制度研究所ほか編(2015) 『原発避難白書』人文書院 11) 日野行介(2016)『原発棄民-フクシマ 5 年後の真 実-』毎日新聞出版 12) 川﨑興太(2014a)「福島の除染と復興-福島復興 政策の再構築に向けた検討課題-」『都市問題』第 105 巻第 3 号、91-108 頁 13) 川﨑興太(2014b)「除染・復興政策の問題点と課 題-福島原発事故から 3 年半が経った今-」『都市

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計画』第 311 号、48-51 頁 14) 川﨑興太(2014c)「生活者の心と除染と復興」『日 本放射線安全管理学会 第 13 回学術大会 講演予 稿集』、29-41 頁 15) 川﨑興太(2013)「福島第一原子力発電所事故後の 福島市大波地区における除染の経緯と住民意識- 今後の福島の除染と復興のあり方を検討する上で の論点の提起-」『日本都市計画学会都市計画論文 集』第 48 巻第 3 号、705-710 頁 16) 川﨑興太(2016b)「福島県における市町村主体の 除染の実態と課題-福島第一原子力発電所事故か ら 4 年半後の記録-」『環境放射能除染学会 環境 放射能除染学会誌』第 4 巻第 2 号、105-140 頁 17) 福島県土地・水調整課(2016)「福島県土地利用の 現 況 」 https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/11015c/fukushi maken-tochi-riyou-genkyou.html(2016 年 7 月 7 日 に最終閲覧) 18) 福島県(2013)『福島県過疎・中山間地域振興戦略 - 里 ・ 山 い き い き 戦 略 - 』 https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment /130164.pdf(2016 年 7 月 7 日に最終閲覧) 19) 福島県生活環境部避難者支援課(2015)「平成 26 年度福島県避難者意向調査(応急仮設住宅入居実 態 調 査 ) 全 体 報 告 書 」 https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment /118275.pdf(2016 年 7 月 7 日に最終閲覧) 20) 福島県生活環境部避難者支援課(2016)「住まいに 関 す る 意 向 調 査 」 結 果 等 ( 6 月 20 日 )」 http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/ 170906.pdf(2016 年 7 月 7 日に最終閲覧) 21) 福島県(2016)「帰還・生活再建に向けた総合的な 支 援 策 」 http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/ 150230.pdf(2016 年 7 月 7 日に最終閲覧) 22) 日本弁護士連合会(2014)「原発事故避難者への 仮設住宅等の供与に関する新たな立法措置等を求 め る 意 見 書 」 http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/ data/2014/opinion_140717_1.pdf(2016 年 7 月 7 日 に最終閲覧) 23) 東日本大震災復興支援委員会福島復興支援分科会 (2014)「東京電力福島第一原子力発電所事故によ る長期避難者の暮らしと住まいの再建に関する提 言 」 http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-t140 930-1.pdf(2016 年 7 月 7 日に最終閲覧) 24) 復興庁「原子力被災自治体における住民意向調査」 http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-4/ikoucyousa/(2016 年 7 月 7 日に最終閲覧) 25) 放射線医学総合研究所・日本原子力研究開発機構 (2014)「東京電力(株)福島第一原子力発電所 事 故 に 係 る 個 人 線 量 の 特 性 に 関 す る 調 査 」 http://fukushima.jaea.go.jp/initiatives/cat01/pdf/report 201503.pdf(2016 年 7 月 7 日に最終閲覧) 26) 川﨑興太(2016c)「除染特別地域における除染に 関する市町村の評価・見解-福島第一原子力発電 所事故から 4 年半後の記録-」『環境放射能除染学 会誌』第 4 巻第 1 号、15-34 頁 27) 原子力災害対策本部(2013)「原子力災害からの福 島 復 興 の 加 速 に 向 け て 」 http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/131220_ho ntai.pdf(2016 年 7 月 7 日に最終閲覧) 28) 小海範亮(2015)「ADR 和解の現状と課題-精神 的損害、財物損害に関して-」淡路剛久・吉村良 一・除本理史編『福島原発事故賠償の研究』日本 評論社、271-285 頁 29) 川﨑興太(2016d)「原発避難 12 市町村の復興拠点 の実態-福島原発事故から約 5 年が経過した現在 -」『日本建築学会 2016 年度大会(九州)学術講 演梗概集 F-1』(2016 年 8 月刊行予定)

図 5  生活圏森林以外の森林の除染を実施すべきか  〔全住民が対象〕  写真 1 大波地区の大波城址周辺における除染実施箇所  (2)環境回復を目的とする“除染”の実施  大波地区では、住宅除染も生活圏森林除染も終 わり、基本的には除染はすべて終了した。しかし、 多くの住民は、被曝によって病気にならないかと 不安を感じながら日常生活を送っており、森林全 体の除染をはじめ、継続的に除染を実施すること を望んでいる。こうした住民の心情や意向は、大 波地区に特有のものかと言えばそうではなく、む しろ、ある普遍的
図 6  住民の帰還意向  らない」と回答している住民のその理由としては、 市町村によって異なるが、「水道水などの生活用 水の安全性に不安があるから」や「原子力発電所 の安全性に不安があるから」などの放射能や原子 力発電所の安全性に関するもの、「医療環境に不 安があるから」や「家が汚損・劣化し、住める状 況ではないから」や「生活に必要な商業施設など が元に戻りそうにないから」などの避難元の生活 インフラに関するもの、「避難先の方が生活利便 性が高いから」などの避難先の居住環境に関する ものが多くなっている。

参照

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