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心臓外科

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Academic year: 2021

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〔晶 晶〕 (東京女医大繭 第24巻 第2号頁57−62昭和29年4月)

1.序 言

東京女子医科大学外科教室

教 授 榊 サカキ ノミラ原

(受付昭和29年3月18口)

昭和26年5月,私達がボタロ氏管開存の手術に 成功して以来,昭和29年3月初旬迄に手術した症 例が150例ある。此等の症例について一応概括的 に記し,然る後に,他の病院に比して経験例の極 めて多い後天性心疾患特に弁膜症に関して少しく 詳しく検討してみたV・と思う。 2.手術例の総括 全例150例を疾病別に配例してみると別表の如くに なる。このうち麻酔事故にて手術を途中で中止した5 例,及び先天性心疾患にて試験開胸に止めた3例の計 8例を除けば,手術症例は142例となる。 麻酔事故にて中止した5例はプア・一四徴2例j僧 帽弁閉鎖不全の1例及び大動脈弁狭窄の2例で,5例 共結局死亡した。先天性心疾患の試験開胸の3例のう ち1例は心房中隔欠損,1例は心室中隔欠損,1例は結 局不明で終った。幸にして何れも死亡はしなかった。 150例中5例は岡山樋原病院にて,長兄榊原亨又は: 次兄山本周と共に筆者が行ったものであり,他は東京 女子医大病院で手術した。 とれらの症例中,次の諸手術は榊原亨と共に,或は 筆者単独に雪国で創めて手術に成功した症例である。 括弧内は1手術施行日を示す。イ)ボタ・氏管開存に対 する繕紮術(昭和26年5月5日)。 ・)峰台肺動脈狭 窄に対する弁切開術(昭和26年7月10日)。 ハ)僧帽 弁狭窄症に対する狭窄切開術(昭和27年7月18日)。 二)ボタ・三管開存に対する切断術(昭和27年8月10 日)。 ホ)大動脈弁狭窄症に対する狭窄切開手術「(昭 和28年2月3日)。 へ)’大動脈狭窄兼僧帽弁狭窄に対 する両三切開術(昭和28年6月2日)。 F)僧帽弁閉 鎖不全に対する静脈弁挿入術(昭和28年7月8日)。 以上の心臓手術は,その症例数及び疾病の種類で, 吾国で最も豊富な経験となっている。 これも,各科の協力を得て,諸検査及び手術を実施 任 シゲノレ 出来るからに他ならない。 本大学では,患者が入院すると,内科又は小児科で 諸検査を実施,或は,その必要のない場合には直接外 科に入院せしめて検査を行っている。次に診断から手 術までの経遇を簡単に紹介しようと思う。 診 断 心臓疾患のうち如何なるものが手術の適応とな るかという点につV、ては各論に簡単に記す。 現在の如く,手術によって根治叉は著しく軽快 し得る種類の心臓疾患が少なくなV・状態では,先 天性心臓異常及び,後述の後天性疾患は一応専門 家の許に送って,手術適応ありゃ否やの決定を待 つのが,患者のために最も親切な方法と思う。 吾kの如く,極めて多数の心臓患者を取扱って いる者ですら,心臓疾患の診断は往k’困難であ る。時には特種検査を行ってさえ不明な空合もあ るのであるから,斯る設備をもたない医師が,診 断出来ない事があっても少しも恥ではない。 むしろ,診断の確定を待つべく,即下時を過し て,患者に再生の機会を失わしめる方を憂うべぎ と思う。 患者を入院せしめた揚合には諸種検査を徹底的・ に行う。手術と云う立揚からは,診断が正確であ ることが絶対必要条件だからである。 下に記した純な各種検査は勿論,手術に堪え得 るか否かを各方面から検討する。 心雑音:心雑音は診断の上で重要な手掛りとな る。しかし,心雑音ですべての心疾患の診断が可 能になると老える様な誤りを犯してはならix v・。 先天性心疾患では,心雑音で診断確定する様なも のは少ないが,後天性心疾患特に弁膜症では,略 診断が確定する。但し心雑音で老えた症状と手術 一 57

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所見が全く異なってbるごとがある。これは外科 の立場から云えば,手術の適応決定の.とで非常に 困ることなので,種k’ee訳してV・るが此処には触 れなv・。 レ線検査:レ線検査は特に透視検査曽重視ナ る。この点は肺結核と異る点であって,心臓の陰 影ぱ,はつぎりして居って肺結核の時の様な淡い 陰影を重要視する必要が少ないからである。むし ろ心臓陰影辺縁の運動が重要である。どの部分が 如何なる程度の運動をしているか,患者を種々の 方向にむかせて追及する。レ線写真は記録のため と,肺野に現われた陰影を判読する目的以外には 余り重視しない。著者の経験では,心音と,胸部 レ線透視との併用が,心疾患の診断には最も有意 義であると思う。 心臓カテーテル検査:先天性心疾患の診断にぱ 心臓カテーテル検査が欠くことが出来ない。屡々 最:も有力な診断根拠を与える。後天性の心疾患で も,僧帽弁狭窄などでは,予後の判定に非常に役 立つ。即ち肺動脈圧,右心房内圧などの高さと, 手術結果とは,よく平行するQしかし,僧帽弁狭 窄などでは心臓カテーテル法を行った為に後に心 不全症状を起した経験があるので,常に必ずしも 行うべきではないと思う。吾々の僧帽弁狭窄症で の心臓カテーテル成績は三神教授により発表きれ た。 心臓1血管造影法:極めて有力な診断法であるQ 吾kの症例で,本法のみによつで適確な診断のつ いた例が少なくない。特に先天性心疾患に於てそ の感が深V・。始め島津敦授独創の装置を用V・てV・ たが,最:近心搏運動連続撮影装置が備えられた。 吾国での唯一の本装置であって,正確な診断に極 めて有効に役立っている。 心電図:心電図検査は当然行うべぎものの一つ ではあるが,先天性心疾患の如きでは,鑑別診断 上には余り効果がないことは衆知の如くである。 循環時間測定は必要である。時に非常な参考と なるQ

3.術前準備

諸検査が一通り終了する迄には,患者は或程度 の検査による影響を受ける。この検査による影響 を去り,更に手術に適する様な状態にするために は,一定期間の入院を必要とする。 特に心臓弁膜症の気合には,術前入院期聞を余 り短かくしなV、方がよV・。 心不全の症状の現われて“るものでは,その状 態からの恢復に鋭意努力する。 この処置は私達の経験から云えば,内科,小児 科の専門医にまかせる方がよVNo後述する様に, 私達の症例では死因の最も多いものが肺水腫であ ったため,この予防に最大の努力を払った。手術 前日まで胸部にラ音を聞かなかったもので,手術 当日軽度のラ音を背部に聴取した症例に対し手術 を断行せる所,非常に多量の気管内分泌があり, 結局肺水腫で死亡した症例があった。 この苦い経験から,手術当El,手術揚に於て今 一度胸部の聴診を行い,多少でもラ音が聞えた場 合には手術を中止する事にした。 斯る例は1週闇以上を経ないと手術しない。心 不全の状態のものに対してぱ,ヂキタリス剤,ネ オフノfリン,水銀剤等を用V・,安静と必要に応じ て食塩制限を行って対処する。 私達は心不全の徴候の現われないものでも,一 応ヂキタリスの投与を行うことにしている。 4.庶 酔 私達の行っている麻酔法に就いて簡単に記せ ば,基礎麻酔としてぱパントポン,スコポラミ ン,ネムブタール,モルフ■ン等を用い,気管内 チューブ挿入により酸素を呼吸せしめる。 挿管には,マイアネシン筋注,コカ■ン局所撒 布,叉はこれにベントタール或はエーテルを用い る。麻酔にはエーテル,叉はペントタPル間馬注 射を行う。 この際,低酸素1血状態が起らない様にあらゆる 努力をする事,エーテルその他の麻酔薬の使用を 極力減ナる事を強調する。 心臓外科の揚合には,低酸素血状態は他の疾患 に比して遙かに危険であり,又低酸素血状態にな りやすい幾多の条件が伴って居り,しかも,この 低酸素血状態から心臓手術の危険の殆んどすべて の条件が起り得るのである。これらの点について は私達が一連の概論を行っている。 従って心臓外科の麻酔は低酸素血症の起り得る あらゆる条件を避け,癸生したら,急速にこれが 恢復をはかるという点に努力すべきものと思って いる。例えば開胸と云う一操作を例に取っても, 心臓患者では,動脈血中の酸素含有量の減少が, 例えば肺結核の時に比し著しく,酸素含有量の減

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少は直ちに麻酔の深度を深くする。麻酔の深度が 深くなると心捕動に影響を及ぼし,これが低酸素 血症を更に進行せしめるという具合に発展するの である。 なお私達は心臓手術の場合には規則としてノボ カ・インの点滴静注を行っている。これは心臓拘束 の危険を避けることを主目的としているが,これ も麻酔作用を及ぼしているものの如く考支てV・ る。従って麻酔薬:量を定める時には,ノボカEン 注入量も考慮に入れている。 5.術後の処置 術後の処置は一般胸部外科のそれと同じにして 居る。しかし特に変った点もないのではない。手 術の直後覚醒する程度に麻酔をかけるのを理想と し,大抵の例ではその様に行い得ているが,術後 も覚醒しない状態にあるものがある。斯る例では 急に状態が悪化して死亡することがあるので特に 注意が必要である。術後面々覚醒しない場合の主 な原因は脳栓塞である。その他術後の低酸素血症 の発生も原因となる。 気管内分泌液の吸引に努力し,酸素の供給を充 分に行う必要がある。 覚醒期の興奮状態も他の疾患、時には見られぬ程 強く,且,長く続くものが少なくない。この時の 処置を如何にすべきかは今後の問題であるが,興 奮期が異常に長い時には予後が悪いことが多く, 矢張り脳の酸素不足によるのではないかと思われ る点があるので色々検討中である。以上の様な特 殊な状況が発生し胤(限IJ]術後の経過は極めて順 調である。 術後1週目に抜糸,起床せしめる。退院迄の閥 iぱ当㌃三{列㌍二より異る0 6.手 術 主なものにつき,その手術k’式を簡単に記す。 a) 僧帽弁狭窄症 左第4肋間で開胸する。従って肋骨tt切除しな V・。心膜を切開して心臓を露出する。 一般に本症では肺動脈及び左心耳が著しく拡張 している。 心耳及び肺動脈に針を刺入し,これに連結した マノメーターで内圧を測定する。 次に,心耳を切開し,血液を勢よく噴出せしめ る。これによって1血栓が除去される。直ちに心耳 鉗子を以って心耳基底を挾む。 右示指を心耳をへて心房内に挿入し,弁口の状 況を触診し,弁切開を行う。切開は必ず前,後両 弁尖の癒合した所で行う。斯くする限り閉鎖不全 は残さない。 指で裂開することが不可能な時は,弁膜刀を指 に滑って挿入し切開する。 切開が終れば逆流の有無,心室内の況を触診し た後指を抜き幽心耳を縫合する。 閉鎖不全を合併している時には,弁口部で血液 の逆流を触診出来る。 軽度の逆流は,狭窄を切開することによって治 癒する。 即ち僧帽弁狭窄兼閉鎖不全で,閉鎖不全の状況 の軽いものでは,狭窄に対して処置すれば閉鎖不 全も治癒する訳である。 術後の経過:術後間もなく,症状が軽快し,息切 れ,動悸などの訴えが消:失又は薯しく軽減する。. その結果は真に驚異的なものがある。 100米競争を行ってみたり,水中にてあわび取 りを行ったものなどあり,長年月の病苦から全く 開放された喜びに輝いてbる。従前より遙かに良 好な状態になったが,何らかの苦慮を残して居る 者もあるが,これは術前の状態如何に関係するも のの如くである。即ち既に著しい器質的変化が心 筋に起っているものでば,弁口が如何に拡大され ても,心筋の変化が消失する訳ではないから軽度 の苦訴が残存する。但し斯る症例の方が遙に少な い。 心雑音は術後10日旧位は全然聞えないがその後 現われる盛合が多い。それにも拘らす術後の経過 は順調で,動悸,呼吸促迫等の自覚的症状は消退 し,顔色が紅潮し,健康色を呈してくるなど全身 状態が著しく改善せられる。雑音発生の機転から 考えて,雑音の残存は重要な意味がないものと思 われる。 ・ 手術の予後は疾病の状態の重症度に平行する。 心爪音を聴取し得るが自覚症状の現われないもの を第1期とし,自覚症状の現われたものを第2 期,医治によって.も進行性に悪化しつつあるもの を第3期,絶対安静に近い厳格な治療によっての み辛うじて浮腫をまぬがれている程度のものを第 4期と区別して見る。 第1期に属するものは軽症だから手術しない。 第2期のもの4例中死亡例なし。第3期のもの37 一 59

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例中手術死亡が2例あるが,この2例も諸検査で は重症例に属すべきものであった。然るに第4期 の38例中には実に17例の死亡がある。即ち死亡率 に厳然たる相違がある。 結局本症は第3期迄の聞に手術すべきものであ る事が決定的である。数年後には本手術も広く一 般に行われしる様になるだろうから,そ時期のには 斯る末期の患者を手術する必要がなくなり,その 意味で極めて安全な手術となるものと考えてい る。一般に第4期のものでも喀血や脳栓塞の既往 のあるものは,予後が悪い傾向がある。右心房 圧,肺動脈圧,左心房圧の高い症例は肺水腫で死 亡する危険が多い。 患者の年令,性別,等はあまり問題にならな Vi が罹病期間の長いものは多少危険が多い。 著者の例では心電図上STの下降を認めるもの では予後が悪い傾向があった。 b) 僧帽弁閉鎖不全 閉鎖不全に対する直接手術としてぱ,Bailey の考案した心膜片を以ってする入造幣作製法があ る。心膜片をたるませて右心室内に挿入し,弁の 作用を平なませんとする術式である。叉,Bailey は両町尖を心膜片を以って縫合する術式をも発表 してbる。 しかし,前者では挿入心膜片の収縮によって弁 作用が営なまれなくなることが証明されている し,後者は狭窄を起させる憂いがあって良法とは 言v・難い。 著者は種々研究した結果,狭窄を伴う閉鎖不全 で大弁尖の可動性の存するものに対しては,狭窄 を交連部で切開した後,後学を大動脈側に少しく 移動せぼ逆流を止め得る事を知った。 これに従い次の術式を創案した。後門IC附着す る腱索の後方に静脈弁を入れて腱索を少しく大動 脈側に牽引する如くにして心室に固定する。この 手術によって逆流は止まり,しかも狭窄を生じ7S. い。 著者は既に11例に施行し著効を確認してbる。’ 心耳に指を挿入し左心室に静脈片を挿入するので あるが死亡例はなV・。 c)・大動脈弁狭窄 大動脈弁狭窄は,後天性弁膜症のうちでは予後 が悪い。 従って早期に手術する必要がある。 大動脈弁狭窄に対する手術としてはBaileyの考 案した方法が挙げられる。 彼の手術汝式も色々変化したが,現在私の行っ ている方法は次の如くである。 開胸,心膜を切開し,心尖部を露出する。左心 室で尖部に近く,しかも血管の少い所をえらんで 小切開を加える。此処から大動脈弁の方向に六っ て拡張器を挿入する。術者は左手指で大動脈起始 部をつかんで居って,拡張器の尖端が弁ロ部を通 過した事を確認した後,拡張器の柄のねじを廻し て拡張器をひろげ,これをしすかに引ぎ抜く。三 元の手を余り強く持って居らなければ,刃は自然 に廻転して交連部に適応する様になる。この操作 を繰返しつつ次第に刃をひろげて行って裂開する のである。 僧帽弁狭窄を併存している場合には,左心耳か ら進入して,ます僧帽弁狭窄を裂開した後,改め て左心室から進入して大動脈弁狭窄を裂開するの である。 両弁狭窄の併存する時,一方のみの裂開を行 い,後日改めて他弁の裂開を行うことはいけな い。心臓の血流の急激な変化が一つの弁にかかる ため死亡の危険があるからである。 手術の効果:著者は大動脈弁狭窄例に対し本法 を実1施した。何れも著明な効果を認めてV・る。こ のうち5例は僧1帽弁狭窄を合併していたので,両 三を切開した。死亡例がないので比較的安全な手 i 術と思っている。 d)冠不全,冠閉鎖性狭心症k候群 冠状血管を通する血流が減少叉は消失すること によって起される狭心症k’候群に対して外科手術 を行うことがある。 手術:本症に対して心臓神経に対する手術,例 えば交感神経節切除,労脊柱注射法などが行われ た。又甲状腺全摘出術,亜全摘出術なども行われ た。この種の手術は:症状を軽快せしめるが,疾病 を根治ぜしめる訳ではない。 心壁表面に副血行を設置する方法は,薯効を示 す場合がある。大網膜移植術,胸筋移植術,肺移 植術などがこれで,これらの組織から,癒着部を 通じて副血行を生ぜしめるのである。 また内証動脈を心筋内に移植し心筋の血流の改

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善を計る方法,心静脈結紮によって血量を増さん とする方法なども試みられた。 最近の手術法としてBeckの冠静脈の動脈化手 術が注目をひいている。、遊離頸静脈を用いて大動 脈と冠静脈洞の間に吻合を作る。術後3週をへ て,静脈洞を右心房への開口部附近で結紮する方 法である。この手術によって,動脈血は冠静脈を 経て逆に心筋に流れ酸素を供給するようになる訳 であるポ 適応:診断が確実であること,狭心症発作が屡 々あり日常生活をおびやかす程度で,内科治療で 軽快しないものであること,心筋梗塞の既往があ るか,既往のない揚合でも心電図上変化を認める もの。年令は40才以下,血圧,心臓の大きさが正 常で,うつ血性心不全の存しないもの,などが適 応として挙げられている。 e) 心膜:炎続発症 急性心膜:炎で化膿を起したものに対しては切開 排膿が行われるQ 心膜炎の続発症として面面性の肥厚及び癒着が 起る時,これを癒着性心膜炎とよぶ,これ.には心 膜と心膜外組織との間の単純癒着,心膜腔内索状 癒着程度のものがある。 また癒着が高度で腓腫性心膜炎:にも,癒着が心 膜と心膜外組織との聞に存して,主として牽引的 に心臓の収縮作用を障碍する揚合と,心膜内に主 として発生し,心臓を圧迫し,心臓の拡張運動を 妨げる二合とがある。後者を特に収縮心膜炎と称 する。 手術:心膜外癒着で症状を現わしているものに 対しては癒着剥離,横隔神経麻痺術Brauerの 肋軟骨切除術などが行われる。 収縮性心膜炎に対してぱ心膜剥離術が著効を奏 する。心胆高した心膜を切除「する手術である。 f) 心臓損傷,心臓異物 これらについては紙面の関係上述べなV・。 g) 外科の対象となる先天性疾患 先天性心臓奇形のうち,動脈管開存(ボタロ氏 管束存)大動脈狭部狭窄,大動脈異常による血管 輪形成等は手術の効果が最も期待せられ,片品肺 動脈狭窄,フアロー四七なども著効を奏する。そ の他の奇形に対しても手術が奏効するものがあ る。これ等については既に充分に紹介せられてい るので簡単に記したい。 ノち動脈管開存(ボタロ氏管開封) 動脈管が出血していると,左心室から出る血液の 一部が肺動脈に流入し,種k’の障碍を生する。又 亜急性心内膜炎を併発する傾向を生する。この奇 形を有するものは平均生存年令が短い。故に開存 する動脈管は閉鎖せしめる手術を行う。 手術々式:動脈管を露出し,これを三重叉は四 重に結紮する。或は動脈管を切断する。 手術の適応;年少時に手術を行った方が結果が よい。但し3才以.上の年令が望ましb。年長者で 症状がなく,心肥大の認められないものは手術を 行わない。内膜炎の併発している場合に手術すべ ぎか,否かについては,議論がある。 手術の危険:ます安全な手術と考えてよい。著 者は6例に対し2例は結紮,4例は切断手術を行 ったがいつれも治癒した。 ロ,大動脈部狭窄 多くは動脈管(索)の分岐部に狭窄がある。 このため上腕で測定した血圧は異常に高く,腹 部大動脈,股動脈,足背動脈等では脈搏を触れな いか,或は微弱である。副血行が発達しているた め,前屈せしめて見ると,背部に著明な搏動を呈 する血管を認めたり,X線写真で脊椎に接した部 の肋骨上縁に凹形の侵触像を認める。斯る奇形を 有するものは,上半身の発育は良好であるが,下 半身の発育は悪い。大動脈叉は脳動脈の障碍,左 心不全,細菌性心内膜=炎等で死亡する事が少なく な㌔㌔平均寿命は35才であると云われる。 手術;狭窄部を含めて切除し,端々吻合する。 吻合が困難な時にぱ,他の動脈を利用したり,保 存血管の移植をする○ 適応:禁忌なき限り手術を行うべきである。禁 忌としては,高度な僧帽弁k’膜症,大動脈弁閉鎖 不全の合併,刺戟伝導系の障碍のあるもの,高度 の心筋障碍のあるものなどがあげられている。 著者は手術で確認した本症の1例を経験してい るが,吾国で手術された唯一の例である。本症は 狭窄部より足側の圧がそれほど低くなっていなか ったので切除術は行わなかった。 ハ,純量肺動脈狭窄 肺動脈弁口部に狭窄のある状態である。後述の フアロー四徴の揚合と異って心室中隔欠損を伴わ ない。多くは弁膜自身に変化があり,弁尖が癒合

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して狭窄を呈している。M−k’心房中隔欠損を伴 う。 チアノーゼを伴わない揚合があり,伴う場合が ある。小児期は症状を現わさないで青春期になっ て症状の現われるものが少なくない。ます呼吸困 難が生じ,チアノーゼが現われる。一旦チアノー ゼが現われると進行する。うつ血性心不全がge k’ 死因となる。 手術:第4肋間で開胸。心膜を開き,右心室を 露出する。右心室前面に小切開を加え此処から弁 膜切開刀を肺動脈に向って挿入する。’弁膜を切開 したならば,次に拡張器を挿入して,拡大する。 結果:臨床症状は切開後著しく改善せられる。 二,プアP ・一 pa徴 肺動脈狭窄,心室隔壁欠損,大動脈騎乗を有す る先天性奇形である。これに右心室の肥大を含め て四徴をなしてbる。 チアノーゼは比較的早期に出現する。必ずしも 生後直ちに発現する訳ではなV・が,生長するに従 って著明となる,チアノーゼに伴って多赤血球 症,太鼓ばち指などが現われる。呼野時又は休息 時でも呼吸困難を訴え,少し疲れると特異な体勢 即ち露跳}状態で休む,胸骨左縁に滑って種k’鎖骨 下動脈と肺動脈,叉ぱ大動脈と肺動脈との間に吻 合を行うと,著しく軽快する。 直接狭窄部を切除する手術も行われる。 結 語 以上は,現在行われている心臓外科に関する大 略を:記したものである。 新らしい分野が開拓せられ,時には色々な困難 に出会うものである。 私達が,非常な苦労を以って開いて来たこの方面の 成果が,多少なりとも医学界を益することが出来たな らぼ,望外の幸いと考える。一Ptに150例と云って も,1例,1例について,全医局員の血の出る様な苦 心が払あれている。日夜を分たず臨床に実験に,心身 を磨滅して働いている医局員の諸氏の労苦が,以上記 した成果となっている事を特に銘記されたい。同時に 終始各方面から助力を惜まれない本学各教授及びその 教室員に満腔の感謝を捧げる。 また大学当局の理解ある援助に対しても深く感謝す る。 第1表 1,後天性心疾患 僧帽弁狭窄症 僧帽弁閉鎖不全 大動脈弁狭窄症 大動脈弁閉鎖不全 収縮性心膜炎 心臓異物 後天性肺動脈狭窄症 83 17 9 1 1 2 .1 2,先天性心疾患 ボタ・氏管開存 プア・一氏四徴 純型肺動脈狭窄症 大動脈峡部狭窄症 その他 6 18 6 1 5 150

参照

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