190 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(71) コ クケ イ ツ コ小竹伊津子(昭和3
医学博士 乙第1149号 平成3年1月181・1学位規則第5条第2項該当(博士の学位論文提出者)
乳腺におけるホルモン応答機構 一特に細胞内カルシウムの動態について一 (主査)教授 降矢 焚 (副査)教授 野本 照子,内山 竹彦論 文 内 容 の 要 旨
目的 乳腺の発育ならびに乳の分泌にはインスリン(1) 及びプロラクチン(PRL)が必須であることは既に明 らかであるが,これらホルモンの細胞内での作用機序 は未だ明らかではないので,マウスを用い細胞内カル シウム(Ca)の動態とこれらホルモンの関連について in vitroでの観察,検討を行った. 方法初産泌乳5日目および初妊娠14日目のddy系マウ
スの乳腺を摘出し,実質細胞を集め,この実質細胞か ら分取した各種小器官にホルモンを添加し,細胞内あ るいは小器官内へのCaの取り込みや, Ca移動に関連 する酵素活性の変化を,ホルモン無添加の系と比較し た.また近年,細胞内Ca移動とイノシトール3リン酸 (IP3)の関連が多々報告されているので, IP3によって 乳腺でも小器官からのCaの放出が起こるか否かの観 察を行うと共に,PRLはホスファチジルイノシトール (PI)の代謝回転に影響を及ぼすや否やの観察をも 行った. 結果および考察 1)泌乳期の乳腺実質細胞は,細胞外Caを受動的に 細胞内に取り込む能力を持っている. 2)妊娠期と泌乳期の小胞体やGolgi体は,培液中のCaを僅かではあるが受動的に取り込み,培液中に
ATP再生剤を添加すると,この取り込みは著明に促 進される.3)小胞体やGolgi体はIP3により保有するCaの
一部を放出し,小胞体ではIP3によるCaの放出態度 が妊娠期と泌乳期では異なるので,妊娠から泌乳にか けて小胞体膜はIP3に対する感受性を変化させて行く ものと考える. 4)培血中にPRLを添加しても細胞膜およびGolgi体の各種ATPase活性は変化なく,また細胞膜のCa
チャネルの開放に大きく関与するといわれるPI代謝 回転もPRLによる影響を受けず,従って細胞内への Caの取り込みにもPRLの効果がみられなかった.さ らに細胞膜のPIに特異的なphospholipase C活性もPRLにより促進されなかった.よってPRLが乳腺に
おけるCa移動に関与している可能性は殆どないもの と考えられる. 5)泌乳期乳腺細胞の細胞膜を予めインスリンで処 理すると,PIに特異的なphospholipase C活性は無処 理のものに比べ有意に上昇した, 結論 妊娠期および泌乳期のマウス乳腺実質細胞の小胞体やGolgi体はIP3により,その保有するCaを細胞内
に放出する.そしてPIからのIP3の遊離はインスリン によって著明に促進されるので,乳腺細胞におけるCa 移動はインスリンによる部分が大きく,PRLがCa移 動に関与している可能性は極めて乏しいものと考え る. 一800一191