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未破裂脳動脈瘤発見に対する脳ドックの効用について

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平成9年7月15日 第44巻 日本公衛誌 第7号 509

未破裂脳動脈瘤発見に対する脳ドックの効用について

高橋

英孝

白昌善

鈴木

美博

深川

和弘

飯田

行恭

吉田

勝美

宮川

路子

伊津野

杉森

裕樹

目的 1988年以降,脳ドックを実施する施設が年々増加している。脳ドックは未破裂脳動脈瘤の検出を第一 の目的としているが,これまで脳ドックによる未破裂脳動脈瘤の発見が生命予後にとって有用であるか 否かは十分明らかにされていない。本研究では,MRAによる脳ドックの効用について医学判断学的評 価を行うことを目的とした。 方法 50歳代の受診者100,000人がMRAによる脳ドックを受診した場合と受診しなかった場合の10年後の 転帰について樹状図を用いて検討した。脳動脈瘤有病率1.0%,脳動脈瘤に対するMRAの感度74%・特 異度76%,脳血管撮影合併症による死亡率0.1%,未破裂脳動脈瘤破裂率年間2%,脳動脈瘤破裂時に 治療に至らずに死亡するのが42%,治療した58%のうちの死亡が26%,寝たきりが2%,障害が14%, 社会復帰が58%,未破裂脳動脈瘤手術による死亡がO%で手術合併症による障害が5%,と設定した。 つぎに,樹状図を用いた方針選択後に生じる結果の量的な尺度として効用値を2種類設定した。救命さ れた者のうち障害が残らずに社会復帰した場合を1.0,障害が残った場合を0.7,寝たきりを0.1とした 効用値A,さらに死亡を−1.0とした効用値Bの2通りの効用値を設定して検討した。いずれの検討で も,脳動脈瘤を保有しない場合と脳動脈瘤を保有しても破裂しない場合については脳ドック受診の有無 に影響されないので効用値はOとした。また,データの不確実性によって生じ得る影響を評価するため に,脳動脈瘤有病率,未破裂脳動脈瘤の年間破裂率,MRAの感度,MRAの特異度,脳血管撮影によ る死亡率の各々ついて,1項目のみを変化させた判断分析(1変数による感度分析)を行った。その際, 脳動脈瘤有病率は0.1∼10.0%,未破裂脳動脈瘤の年間破裂率は0.1∼5.0%,MRAの感度と特異度は各 々20∼95%,脳血管撮影による死亡率は0.01∼0.6%の幅で変化させて判断分析を繰り返した。 結果 脳ドック受診時は脳動脈瘤保有者のうち救命される者が760人で死亡が52人,脳ドック非受診時は脳 動脈瘤保有者のうち救命される者が79人で死亡が104人となり,脳ドックを受診した方が救命される者 が681人多く,死亡する者が53人少なかった。つぎに,各種指標を変化させて感度分析を行ったところ, 脳動脈瘤有病率0.31%以上,年間破裂率0.6%以上,MRAの感度23.0%以上・特異度22.7%以上,脳血 管撮影死亡率0.32%以下では脳ドックを受診した方が死亡者数が少なかった。また,同様に行った感度 分析の結果,脳ドックを受診した方が救命数は多く,2つの効用値もともに高かった。したがって,現 在の医療技術レベルにおいてはMRAを用いた脳ドックによる未破裂脳動脈瘤のスクリーニングは有 用であると思われた。

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