中国における一人っ子のセルフ・モニタリング能力の発達と親の養育態度との関係に関する研究 [ PDF
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(2) 子関係,きょうだい関係,仲間関係,保育者や教師と生徒の関. 子が抽出された。因子負荷量絶対値が.35 以上の項目と各因. 係といった四つの人間関係である。しかし,一人っ子にとって. 子の寄与率をまとめたものが Table 1 である。「 民主的養育態. は,きょうだいの関係が存在しないし,仲間たちと教師も相手が. 度」 ,「 支配的養育態度」 ,「 溺愛的養育態度」 と命名した。各下. 一人っ子であるから異なる態度で付き合ってくれない。したが. 位尺度のアルファ係数は民主的養育態度尺度が.76,支配的. って,四つの人間関係の中で,最も重要な影響要素は親子関. 養育態度尺度が.74, 溺愛的養育態度尺度が.61 であり,比較. 係であると考える。その理由の一つは,人間の生涯の初期に. 的高い内的整合性を示している。そこでこれら合計24項目を. おける経験の場は主に家庭であり,その中で子どもが初めて. 用いて子どもが認知した親の養育態度尺度とした。. 結ぶ人間関係が親子関係である。また,一人っ子の親たちは. 2. 一人っ子のセルフ・モニタリングの因子構造. 多子家庭の親と比べ,養育態度が明らかに異なる。これこそ一 人っ子の社会性形成の重要な影響要素であると考えられる。 親の養育態度は主に受容―拒否と統制―自律の二次元に. 欠損値のない418名の回答を対象に,一人っ子のセルフ・ モニタリングに関して主因子法,バリマックス回転による因子分 析を行なって,3因子が抽出された。因子負荷量絶対値が.35. 表すことができる。受容―拒否の養育態度次元における親の. 以上の項目と各因子の寄与率をまとめたものが Table 2 である。. 暖かさとは,愛情と理解があり,受容的で,身体的罰をあまり用. 「 情報収集」 ,「 演技性」 ,「 同調行動」 と命名した。各下位尺度. いないことを指す。統制―自律の養育態度次元における統制. のアルファ係数は情報収集尺度が.75,演技性尺度が.55, 同. は,行動の諸規則をつくり,子どもの個性と自律の発達を妨げ. 調行動尺度が.52 であり,比較的高い内的整合性を示している。. る親の志向性を意味する。多くの研究者は,統制―自律の次. そこでこれら合計19項目を用いて一人っ子のセルフ・ モニタリ. 元は,心理的統制―心理的自律,および厳しい統制―ゆるい. ング尺度とした。. 統制に分けられることを指摘している(Baumrind, 1966; 白佐,. 3. 子どもが認知した親の養育態度と一人っ子のセルフ・モ ニタリングの関係. 1998)。. 方. 法. 子どもが認知した親の養育態度を独立変数,一人っ子のセ. 調査対象:中国遼寧省大連市にある三つの小学校に在籍する. ルフ・ モニタリングを従属変数とする1要因の分散分析を行なっ. 高学年児童418名(4年生男子52名,女子42名; 5年生男子. た。調査対象(子どもたち)を親の養育態度に対する認知の度. 75名,女子83名; 6年生男子102名,女子64名)。. 合いにより,民主的,支配的,溺愛的養育態度の3つのグルー. 調査年月日:2005年11月上旬に実施した。. プに分けた。さらに,各養育態度の得点による,すべての調査. 調査方法:質問紙調査. 対象者を,高,中,低群に分けた。Table 3- 1, Table 3- 2,. 手続き:質問紙は,2005年11月上旬に1時限目の半分の時. Table 3- 3 は各養育態度における,一人っ子のセルフ・ モニタリ. 間をもらい,クラス単位の強制速度法で実施した。 質問紙の構成:. ング尺度の各下位尺度の平均標準得点と標準偏差,および分 散分析結果を示したものである。. ①子どもが認知した親の養育態度尺度:. 親の民主的養育態度における一人っ子のセルフ・ モニタリン. 鈴木らの親に尋ねる「 親の養育態度尺度原案」 30項目を参. グに関しては,情報収集と同調行動において群の主効果が有. 考し,さらに,一人っ子問題行動の特徴を体現する10項目を. 同調行動: ** p<.01)。親の支配 意であった(情報収集: ** p<.01;. 加えて,小学生に理解可能であり,表現が一般的であるという. 的養育態度における一人っ子のセルフ・ モニタリングに関して. 基準を満たす40項目を家庭での行動に適した形に修正した。. は,演技性と同調行動において群の主効果が有意であった(演. ②一人っ子のセルフ・ モニタリング尺度:. 同調行動: ** p<.01)。親の溺愛的養育態度にお 技性: ** p<.01;. 桜井の児童用セルフ・ モニタリング尺度原案中の30項目を. ける一人っ子のセルフ・ モニタリングに関しては,演技性にお. 用い,子どもわかるような中国語版の児童用セルフ・ モニタリン. いて群の主効果が有意であった(演技性: ** p<.01)。. グ尺度原案を作成する。. 民主的養育態度高いと認知した子どもの人数は11人,支配的. これらの質問項目に対して,いずれも4段階評定(「 たしかに. 養育態度高いと認知した子どもの人数は42人,溺愛的養育態. そうだ」 ,「 まあそうだ」 ,「 あまりそうではない」 ,「 まったくそうで. 度高いと認知した子どもの人数は110人であった。民主的養. はない」 )で回答を求め,当該概念に対応する反応から4−1点. 育態度と支配的養育態度より,親が溺愛的養育態度だと認知. が与えられた。. する一人っ子は圧倒的に多いことがわかった。また,親の溺愛. 結. 果. 1. 子どもが認知した親の養育態度の因子構造 欠損値のない418名の回答を対象に,親の養育態度に関し て主因子法,バリマックス回転による因子分析を行なって,3因. 的養育態度程度が高いほど,一人っ子たちの演技性の得点は 低くなる傾向が認められた。これは,親の溺愛的養育態度によ る,子どもはわがままになり,本当の自分の気持ちを隠しても 多数者に同調する傾向が低いことを現しているだろう。.
(3) Table3-2 分散分析結果(支配的養育態度と子どもの SM). Table1 親の養育態度尺度の因子分析結果(N=418) s't*. sut*. svt*. wxZ. XYZ. yzZ. {|}:$~•€•$‚•€ƒK„…†‡ˆ‰Š‹…Œ;•Ž••‘’“”•–C—˜. .575. -.052. .098. |}:$~•€•$‚•€ƒK„…†+Œ;•™š›•œ•ž;Ÿ)“Ž–C—˜. .565. .071. -.007. { }:$~•€•$‚•€ƒK„…†#¡¢£¤™¤•¥¦…•ާ;ŽŽ–C—˜. .525. .072. .139. 17. $~•€•$‚•€ƒK„…†#†‰†‰¨©—%“¥–C—˜. .494. -.259. -.044. 27. $•••ª#•«¬-¬#K®Ž¥¤'(¯°†;¥K$~•€•$‚•€ƒ¡ž¦§; ooŽŽ–C—˜. .485. .022. -.059. 6. $~•€•$‚•€ƒK„…†#¤¥&ž%$~•€•$‚•€+‘’±$›#•²–C o—˜. .466. .040. -.011. 4. „…†‡Œ³Ž;´µ“Ž&;¥#K$~•€•$‚•€ƒ¶·•²“”•–C—˜. .455. -.183. .051. 26. $~•€•$‚•€ƒK¸”#¹—%†›•ºO•C&;¥KŽ••„…†•»•“O¥ oo–C—˜. .436. -.190. .194. ¼}:$~•€•$‚•€ƒK½¤„…†;†+©Ž¾¿•CÀ©–C—˜. .424. -.160. .025. 1. Á•·YÀ;•‹Ã„%†-K$~•€•$‚•€ƒÄÅ©“”•–C—˜. .410. -.172. .038. 12. „…†‡ÆŽŒ;•©†;¥K$~•€•$‚•€ƒKš”Ç••È’–C—˜. -.229. .573. .118. 15. $~•€•$‚•€ƒK¡É+ŽŽ•%±$›#©…•ާ;„…†#ŽŽ–C—˜. -.147. .544. -.020. noooooopooooooqoooooor. <+XYZ=>?@. [\]^ _`N abOP. N Mean SD Mean SD Mean SD. c. !. d. 76 .791 .196 .916 .269 .911 .263. 300 .814 .233 1.057 .277 .947 .283. 42 .712 .284 1.168 .303 .987 .306. efghijk 10.680 90.215** dlcmm 43.902** dlcmm. **p<.01. Table3-3 分散分析結果(溺愛的養育態度と子どもの SM) <+yzZ=>?@. [\]^. N Mean SD Mean SD Mean SD. c. !. d. 33 .826 .286 1.111 .304 .951 .242. 275 .790 .209 1.037 .272 .927 .237. 110 .792 .231 .861 .261 .986 .267. efghijk 6.497 95.544** dòcmm 22.062. 32. $~•€•$‚•€ƒK„…†#†”•€+Ê–›•ŽŽ•%–C—˜. -.176. .530. .022. 19. $~•€•$‚•€ƒKŽŽ•%±$›#C&–¤K„…†•$Œ›–C—˜. -.198. .525. -.010. 16. $~•€•$‚•€ƒKŠ+¾+¥Ë€©žŽ¤K„…†•$Œ)†›K«&©†›©–o ooC—˜. .032. .513. .006. 23. $~•€•$‚•€ƒK„…†‡™—•C&;¥K±€…Ì‹#©†-šŽ—•KŽÍŽ ooÍŽŽ–C—˜. -.025. .473. .074. ÎÏ}:$~•€•$‚•€ƒK„…†+ÐÑÕ‘’¬KÒŽŒ;•Ž)ÓŽ•²š‹;©–C oo—˜. -.013. .465. .066. した親の養育態度と一人っ子のセルフ・ モニタリングの関係に. 33. $~•€•$‚•€ƒK$~•€•$‚•€‡‘’†Ô•ÄÕ…±•K„…†#š”$o oo©•%–C—˜. -.041. .410. .127. おける性差の影響が表さないことを示唆すると考える。. ÖÎ}:$~•€•$‚•€ƒK„…†‡C°¥Œ;•Ã×€;©–‹–¤K™Ø¤•ŽŽ–C—˜. .103. .374. -.026. 39. „…†‡'(¤ÙÚ•‡€Ç)“Ž&;¥K¡¥•Ž…„§;Ž)†ž%¤K$~•€•o oo$‚•€ƒCÛ#ÜÝ)“”•–C—˜. .025. .094. .623. 37. „…†‡ÞžÃ;߈¦#K$~•€•$‚•€#ÙÚ•ÜÝ)“;†+à;K$~ oo•€•$‚•€ƒ©“”•–C—˜. -.150. .046. .517. 38. $~•€•$‚•€ƒK„…†+ᩎ•+¤„•ÇK™¤•â)“”•–C—˜. .122. -.022. .436. 35. ã㕌ä†-K$~•€•$‚•€ƒ„…†+‘’±$›#…›•CޤC—˜. .107. -.036. .426. 30. å¤%€—©†-K„…†‡ÆŽ—±‹—AB…”K$~•€•$‚•€ƒš”—Ç)“ oo”•–C—˜. .058. .105. .425. t*æçè{éê. 2.784. 2.457. 1.324. ëÈìíîï. 11.601. 10.237. 5.517. ðñëÈìíîï. 11.601. 21.838. 27.355. _`N abOP. **p<.01. 考. 察. 本研究で作成した子どもが認知した親の養育態度尺度は, 調査の因子分析の結果,24項目,3下位尺度(民主的養育態 度,支配的養育態度,溺愛的養育態度)で構成された。民主的 養育態度尺度は,子どもと平等であり,仲がよい友達のような 傾向である。Baumrind(1966)の「 許容的親の養育態度」 尺度と 類似している。支配的養育態度尺度は,子どもの欠点ばかりを. Table2 子どもの SM 尺度の因子分析結果(N=418). ほじくり出し,厳格で,厳しい罰を与えるような傾向である。. s't*. sut*. svt*. [\]^. _`N. abOP. {}:±Œ•ó•ÇôÜ+ÐÑÃ‡š”³—&—õ)“Ž–C—˜. .564. .173. .025. {{}:ޞÇ¢£#ö©“—”©À;•©“Ž&;¥KCÛ#Ї•”ዤC—˜. .546. .097. .144. Î|}:ÞžÃ;¨•©“Ž“KŠ+ÞžÃ‡Ž•…ÐÑÃ#…)†;¥KŠ+Œ;‡CÛ#³— ::::&ዤC—˜. .513. -.078. .051. 愛的養育態度尺度は,子どもの要求を拒否できず,子どもの言. 27. –³›+(+¥÷€‡ÆŽ;¥KCÛ#K¢£+²Ž¤ƒ…Ž—;ø–¤+Œ;•ŸŽ ::::¹©“ó–C—˜. .494. .139. -.020. うままになり,普通以上に子どもの世話をやく,いわゆる子ども. 5. –³›+(+ù*•ó“Ž“K¡„•)KŽ••;Ç‹…§;Ðú”ዤC—˜. .475. .116. .008. 11. –³›+(+©“Ž&Œ;#Е•%“Ž–C—˜. .455. -.005. .056. 1. ÞžÃ+ûü+ÐÑÇõ›†Ž;¥Kýþ©“Â&;ŒÍ‡„›–C—˜. .451. .126. -.036. 14. ÿ!R¤(Ð+„&*•"#+$Ž*+%‹Œ;#ƒKýþ©“Ž–C—˜. .427. -.119. |}:–³›+(‡™•‘’“Ž&—KŽ••Е•%“Ž&ዤC—˜. .418. -.045. .136. 17. ôÜ+r•ó“Ž“KŠ+(+ÐÑdz—&Œ;‡&ޤC—˜. .371. .108. -.001. 15. ¢£+ûü+ÐÑÕ—”©“K–³›+(;aµ‘’••)“Ž&Ì›•C&Œ;‡„ oo›–C—˜. -.198. .512. -.186. 12. ¥-Ž…(;¤•‹–”•¥„)“Ž&ዤC—˜. .114. .462. .050. 29. ûüƒ'©”…”“•K'©€¤Ž&š‹#ó²&Œ;‡&ޤC—˜. -.010. .443. -.134. 30. r(+(#ö©“Œ;Çú—Ž•)’“Ž–C—˜. .093. .387. .074. 24. ±€…(;•*š”C&ዤC—˜. .131. .377. -.043. 3. +,M+&-Ê+;¥Kœ.Ž+(‡aµþóž)†-K¢£+þó;Ç)“Ž“•K oŠÃ-#Ü•„÷&ዤC—˜. .144. .110. .649. {Î}:ÞžÃ;þó‡Ã‡)†;¥ƒKŠ+(+‘’#„³²&š‹#©–C—˜. .123. .101. .458. 20. ¢£+‘’ƒ/0–¤x1C&ዤC—˜2. .061. .155. -.364. 3}:+,M¤¢£+‘’‡4+*+‘’;Ç)“Ž“•5#Ð#…-…Žá‹¤C—˜2. .080. .231. -.346. noooooopooooooqoooooor. .144. t*æçè{éê. 2.579. 1.263. 1.058. ëÈìíîï. 13.575. 6.647. 5.568. ðñëÈìíîï. 13.575. 20.222. 25.790. Baumrind(1966)の「 権威ある養育態度」 尺度と類似している。溺. を過分的受容で,過保護する傾向である。. 一人っ子のセルフ・ モニタリング尺度については,調査の因 子分析の結果,19項目, 3下位尺度(情報収集,演技性,同調 行動)で構成された。情報収集尺度はセルフ・ モニタリングの認 知的側面に対応し,相手の表情や行動からその人の気持ちを 読む傾向を測定しており,Lennox ら(1984)の「 他者の表出行動 に対する敏感さ」 尺度や堀毛(1986)の「読心」尺度と類似してい る。演技性尺度は演技して他者を喜ばせたり,人前で流暢に 話せるということを示す因子であり,本当の自分の気持ちを隠 しても多数者に同調する傾向を測定している。同調行動尺度. Table3-1 分散分析結果(民主的養育態度と子どもの SM) <+wxZ=>?@. [\]^ _`N abOP. N Mean SD Mean SD Mean SD. c. !. d. 98 .711 .203 .901 .231 1.007 .206. 309 .824 .229 .957 .243 1.034 .278. 11 .985 .366 .961 .276 1.045 .327. efghijk 43.050** dlcmm .420 85.710** dlcmm **p<.01. はセルフ・ モニタリングの行動的側面に対応し,内容的には演 技性行動と同じように,「うそ」をつかなければならないことを表 現しており,同調にする傾向である。しかし,演技性と同調行動 では,アルファ係数がやや低く,信頼性の面で問題が残るとい えよう。この点で児童が反応しにくかったかもしれない。 また,親の養育態度の各下位因子と一人っ子のセルフ・ モニ タリングの各下位因子の相関関係の分析を行った。その結果,. また,男の子と女の子をわけて子どもが認知した親の養育態. 親の民主的養育態度の傾向が強い一人っ子は情報収集能力,. 度と一人っ子のセルフ・ モニタリングの関係の分析を行なった. 同調行動能力の獲得の程度が高いことが明らかにされた。こ. が,有意義な性差が認められなかった。これは,子どもが認知. れは,子どもの適切な養育態度のモデルであると考えられる。.
(4) しかし,親の養育態度が民主的と認知している子ども群の人数. る。ただ,その頻度が多いということとその程度が極端になりが. はわずか11人であり,親の養育態度が支配的,および溺愛的. ちであるということである。中国における,これらの不適切な養. と認知している子ども群の人数と比べ,明らかに少人数である. 育態度を増長させる風潮にある。それは,一人っ子の問題じゃ. ことがわかった。親の支配的養育態度の傾向が強い一人っ子. なくて,親の養育態度の問題だと考えられる。. は演技性能力,同調行動能力の獲得の程度が高いことが明ら. 社会化の過程は人間の一生を通じて展開されるが,その中. かにされた。しかし,この養育態度の具体的な項目により,子ど. で,人間が最初に所属する集団でもある家族における社会化. もが自分の本当の気持ちを隠し,うそつくような同調にする傾. は,最も基礎的なものであり,子どもの社会性の形成上,重要. 向であると考えられ,あまり望ましくない養育態度であると思う。. な意味を持っているとも言われる。児童期は,心身ともに安定. 一方,親の異なる養育態度を認知する子ども群の人数を見. しているので,親にとっても扱いやすい時期といえる。児童は. ると,民主的養育態度(11人)と支配的養育態度(42人)より,親. まだ家庭に依存する度合いが強いので,親の養育態度は適切. が溺愛的養育態度だと認知する子ども(110人)は圧倒的に多. でなければならない。. いことがわかった。中国の一人っ子の親の養育態度は,溺愛. 親の養育態度と子どもの社会性との関連を扱った研究によ. 的傾向が高いと反映した。親の溺愛的養育態度の程度が高い. ると,親の「 民主的養育態度」 と「 適度な統制的養育態度」 とが. ほど,子どもたちの演技性の得点は低くなる傾向が認められ,. 子どもの社会性の発達に関係している。すなわち,親の温かい. 溺愛的養育態度で育てられる子どもたちの社会性発達が遅れ. 「 民主的養育態度」 は安定した親子関係を作り上げ,その関係. ていると言える。したがって,親の溺愛的養育態度は子どもの. を基礎に子どもは他人との新たな関係を探索することができる。. 不適切な養育態度のモデルであると考えられる。親の溺愛に. 一方,「 適度な統制的養育態度」 は,親が他人とのかかわり方. よる,子どもはわがままになり,協調性がない,自分の意志ば. のモデルとなったり,子どもに他人とのかかわり方を直接教え. かりを通そうとする,本当の自分の気持ちを隠しても多数者に. たりする点で重要である。そして,この二つを同時に併せもつ. 同調する傾向が低いことを現している。. ことが必要だと考えられている。それは,単に子どもに冷たく,. 一人っ子問題の特徴として,第一に挙げられるのは,「 一人 っ子は,社会性に乏しい」 ということであるが,きょうだいのいる 子どもでも社会性が欠如している人は大勢いる。特に一人っ子. 支配的な「権威主義的」な養育態度でもないし,子どもをほとん ど制限しないで受容する「 許容的」 な養育態度でもない。 以上のことから,親の養育態度は子どものセルフ・ モニタリン. に多いというわけではない。社会性があるかないかは,結局に, グの発達,すなわち,社会性の発達に大きく影響することがわ 親の「 子育ての養育態度」 の問題だと考えられる。. かった。中国の子どもの問題を解決するためには,まず,親自. 中国の一人っ子家庭の現状により,親の不適切な養育態度. 身が意識変換を図り,正しい理性的な子ども観と教育観をもつ. の具体的な表現は,①子どものためにお金を使いすぎている。. ようにならなければならない。つまり,一人っ子の親自身に対. ②親が毎日の子育てに多くの時間を費やし,過剰接触となっ. する教育であると思う。子どもの指導者である親が,指導者とし. ている。③一人っ子に対する過剰期待とそれにともなう知育偏. ての良好な素養をもつことによって初めて家庭教育の水準が. 重も問題となっている。④親は,子どもに物質面では十分に満. 向上する。親は,社会人としての良識や道徳心をもち,礼儀正. たしてやっても,精神面でのしつけ・ 指導が不十分である。な. しく精神的に健全であることと併せて,子どもの気持ちや意思. どである(鐘家新,1992)。. を尊重する態度をもつことが望まれる。そして,親が外部との良. このような親の不適切な養育態度による一人っ子の問題行 動は,①独立心に欠け,依存心が強い。②実際の事柄を処理. 好な人間関係を保つことにより,子どもは温かい家庭環境の中 で育つことができるのである。. する能力に欠ける。③子ども同士の対人関係がうまくいかない。. 主要引用文献. ④子どもらしさを失い,気位が高くなる。⑤甘ったれで,わがま まである。などが挙げられる。 本研究の調査結果により,中国における,一人っ子の親は 溺愛や過保護になる傾向が高いと明らかにした。それは親の 情として,やむをえないものであるかもしれない。しかし,この. 井上健治・ 久保ゆかり 1997 子どもの社会的発達 東京大学 出版会 森下正康 1996 子どもの社会的行動の形成に関する研究 風 間書房. 態度を変えないかぎり,一人っ子の社会性の後れを防ぐことは. 白佐俊憲 1998 一人っ子の心理と育児・ 保育 中西出版. できない。. 桜井茂男 1993 児童用セルフ・ モニタリング尺度の作成 The. もちろん,すべての一人っ子の親がこうした養育態度を必ず とるわけではないし,一人っ子の親がすべての過剰な養育態 度をとるわけでもない。適切的な養育態度で育てる親も当然い. Japanese Journal of Experimental Social Psychology Vol.33 No.1 78−84.
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