博 士 ( 工 学 )
カ ン ド カ ーア ブ ラ イ ノ ヽ ン
学 位 論 文 題 名
A STUDY ON DIESEL EXHAUST GAS EMISSIONS UNDER TRANSIENT OPERATIONS
(過渡運転時におけるデイーゼル排気エミッションに関する研究)
学位論文内容の要旨
近年デ ィーゼ ル機関に おいて は、環 境およ びエネ ルギー 問題の 点から排気ガス中の各種有害 物質から出る排気エミッションならびにC02の低減が一層強く求められている。特に排気エミッショ ンについてはその多くが機関の過渡運転時において発生している。従って、機関の低エミッション を実現のためには、この過渡運転時の排気エミッションを低減することが極めて重要であるが、この 点に関わる燃焼ならびに排気の研究は必ずしも十分ではない。
本論文で は、サ イクル オーダーでの排気の採取が可能なシステムを用いることにより、各種の過 渡運転状 態にお ける小 型DIディ ーゼル 機関の 燃焼・ 排気の 特性、 とりわけ未燃炭化水素の特性 を 時 系 列 的 に 解 明 す る と 同 時 に 、 そ れ ら を 改 善 す る た め の 方 策 に つ い て も 検 討 し た 。 本論文は全8章から構成されている
第1章は 序論で あり、 本研究の 目的お よび得 られた結果の概要について述べると共に、研究の 背 景 な ら び に デ ィ ー ゼ ル 機 関 の 過 渡 運 転 に 関 す る 研 究 の 動 向 に つ い て 記 述 し た . 第2章で は、供 試機関 、実験装 置、な らびに 実験方法について説明した,特に、過渡運転時に おける燃 焼およ び排気 特性を解明するために、機関のサイクルオーダーでの排気採集システムを 使用する と共に 、機関 過渡運転時のピストン燃焼室壁温を計測するための、熱電対の取り出し機 構について詳述した.
第3章で は、デ ィーゼ ル燃焼に おける 特に未 燃炭化水素生成の基礎資料を得るために、高温下 における ノルマ ルブタ ンとイソブタンの燃焼中間生成物の生成特性について化学動力学モデルに より 解 明 し た。 そ の 結 果、高 温場で の燃料 の分解 ・酸化 過程に おいてHCHO,CH3CHO,C2H4, C3H6,C4H6等 の 低 沸 点成 分 は950Kか ら1200Kの 温 度範 囲 で 、 また 当 量 比 の大 き な ほ ど生 成 が著しく なるこ と、更 にCO,CH4やC2H2は温 度と当量比が同時に高くなるにともない増加するこ と等の特性を明らかにした。
第4章に おいて は、小 形DIディ ーゼル 機関の始動時における排気エミッション,特に全未燃炭 化水素THCをサイ クル毎 に計測し ,それ らの過 渡特性を系統的に解明すると同時に,それとピス トン燃焼 室壁温 との関 係につ いても 論述し た,始 動時に おけるTHC,NOx,臭気濃度の排気工ミ ッション は特徴 的な過 渡推移 を示す ことを 明らかにした.すなわち,始動時のTHC濃度は,始動 直後の低 濃度か ら増加 して50サ イクル 程度で 最大値 に達し た後減 少し,燃焼室壁温の収束とほ ぼ同 時 に 定 常値 へ と 収 束す る 特 性 を示 す が , 特に 始動 直後から 最大値 に達す るまで のTHCの
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特性 は 燃焼 室壁 への燃料の付着 ・残留に大きく起因するこ とがわかった,NOx濃度は始 動開始直 後であっても着火遅 れの増加に伴う最大熱発生 率の急増のため比較的レベル が高く,また極大値 を経 由 した 後, 緩や かに 増 加し ,燃 焼室 壁温の収束とほぼ 同時に定常値へと移行する .始動開 始 直 後 を 除 い たTHCお よ びNOx濃 度 は , 定 常 運 転時 で の燃 焼室 壁温 とそ れ らの 濃度 との 関 係 に従 っ て推 移し ,壁 温上 昇 に伴 ってTHC濃度 は減 少し ,NOx濃 度 は増 加し て推 移す る ,始 動時 のTHC中 で の 低 沸 点 成 分 は 、 そ の 濃 度 が 高 く 始 動 時のTHCの推 移特 性を 概 ね支 配す るこ と が わかった.また低沸 点成分中ではC2H4が大きな 割合を占めている,
第5章 では 、始 動 時に おけ る各 種 の運 転条 件お よび 燃 料性 状が 排気 エミ ッ ショ ン特 にTHCに 及ぼ す 影響 につ いて 述ぺ た .始 動時 での 回転 速 度の 増加 ,燃 料 噴射量の減少,T90の 低下,燃 料の 低 粘度 化, 着火 性の 向 上な どは いず れも 排 気工 ミッ ショ ン の特にTHC濃度低減の 方向に作 用す る こと を明 らかにした.更 に始動時での臭気濃度の推 移は,THC濃度推移に概ね対 応して変 化す る が,DGMな ど の含 酸素 燃料 を 用い るとTHCと臭 気濃 度は 軽 油の 場合 に比 較し て 終始 低く 推移することから、 含酸素燃料の優れた側面を 提示した,
第6章 は 、 始 動 ― 暖 機 運 転 時 に お け る 燃 焼 お よ び排 気特 性 、特 にTHCの 排出 過渡 特性 に つ いて記述した,始動 ―暖機運転では,実機での 始動時を想定し、始動開始時 に燃料噴射量をステ ップ 状 に増 加さ せて,任意サイ クルAtの期間(燃料増量期 間)高い当量比¢hで運転し た後,燃 料噴射量をステップ 状に減少させ、低い当量比 伽で暖機運転するモード運転 を行った.始動―暖 機運 転 時の 特にTHC濃度は,始 動開始後の燃料増量期間中サ イクルの経過とともに増加 するが,
それに引き続く暖機 運転ーの移行にともなう燃 料噴射量の急減によって、濃 度は急速に低下した 後定 常 運転 時の 排気 濃度 推 移に ほぼ 沿っ て変 化 する .始 動一 暖 機運 転時 のAtおよ び ¢hはTHC 濃度 に 大き く影 響を 及ぼ し ,両 者の 低減 によ りTHC濃 度 は大 幅に 減少 する た め、THC濃度 の改 善の 策 とし てAtと¢hの 低減 を提 案 した .始動一暖機運転 時での排出THC濃度の推移特 性は,熱 分解 成 分の ーっ であ るC2H4を主 成分 とす る低沸点成分の濃 度に大きく支配されること 、更に低 沸点成分中の各成分 の相対的な濃度割合は始動 期間を通してあまり大きくは 変化しないこと等も 明らかにした.
第7章は、増負荷 時における燃焼と排気エミッ ションの過渡推移特性を解明するとともに,特に それらと燃焼室壁温 との関係について述べた.本研究では燃料噴射量の時間変化パターンとして,
高負 荷 運転 から ステ ップ 状 に燃 料を 減少 して任意期間Atの 低負荷運転を行った後,再 び初期の 高負 荷 運転 状態 に戻 すイ ン ター バル ステ ップ 状 増負 荷運 転を 検 討した.THC濃度は, 増負荷前 の低負荷定常状態の 極めて低い濃度から増負荷 直後に大きく増加し,その後 サイクルの経過に伴 って 徐 々に 減少 し燃焼室壁温の 収束とほぼ同時に定常値へ と収束する.この場合、THC濃度は,
増負 荷 開始 直後 を除 いて 燃 料噴 射量 およ びピストン温度が 同一である定常運転時の値 におおむ ね一致して推移する が,増負荷直後では対応する定常値よりも濃度が著しく高くなるオーバーシュ ー卜現象を呈する. そのオーバーシュー卜量ATHCはAtが小さい場合であっても生じており,またAt およ び ピス トン 壁温等に殆ど依 存しなぃことがわかった. 増負荷時のTHC中の低沸点成 分Ci―C8 は、 増 負荷 時のTHCの推 移特 性に 大 きな 影響 を与 えて い る. また ,始動運転時の場合 と同様に C2H4は 低沸 点成 分中 の大 き な割 合を 占め ,低沸点成分の推 移特性を支配することが明 らかにな つ7こ.
第 8章 は 、 本 論 文 の 結 論 で あ っ て 、 本 研 究 に お い て 得 ら れ た 結 果 を 総 括 し た .
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学位論文審査の要旨 主査 教 授 宮本 登 副査 教授 福迫尚一郎 副査・教 授 菱沼 孝夫 副査 教 授 伊藤 献一 副査 助教授 小川英之
学位 論文題 名
A STUDY ON DIESEL EXHAUST GAS ErvIISSIONS UNDER TRANSIENT OPERATIONS
(過 渡運転時におけるデイーゼル排気エミッションに関する研究)
近年ディーゼル機関においては、環境およびエネルギー問題の点から排気エミ ッションならびにC02 の低減が一層強く求められている。特に排気エミッションに ついてはその多くが機関の過渡運転時において発生しているため、過渡運転時で の排気エミッションの低減が重要である。
本論文では、サイクルオーダーでの排気の採取が可能なシステムを用いること により、種々の過渡運転状態における小型DI ディーゼル機関の燃焼・排気特性、
とりわけ未燃炭化水素の特性を時系列的に解明すると同時に、それらを改善する ための方策にっいても検討している。
本論文は全8 章から構成されている。
第
1章は序論であり、本研究の背景、目的および得られた結果の概要について 述べている。
第
2章では、供試機関、実験装置、ならびに実験方法にっいて説明している。
特にィサイクルオーダーでの排気採集システムとピストン燃焼室壁温の計測シス テムについて説明している。
第
3章では、ディーゼル排気炭化水素中で大きな割合を占める特に低沸点成分 に注目し、HCHO ,CH3CHO ,C2H4 ,C3H6 ,C4H6 等の低沸点成分は950K から1200K の温 度範囲で、また当量比の大きなほど生成が著しくなること、またCH4 、C2H2 、CO は温度と当量比が同時に高くなるにともない増加すること等の特性を明らかにし ている。
第4 章においては、小形
DIディーゼル機関の始動時における排気エミッション,
特に全未燃炭化水素THC の過渡特性、ならびにそれとピストン燃焼室壁温との関係
を解明している。すなわち,始動時のTHC 濃度は,始動直後の低濃度から増加して
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サイクル程度で最大値に達した後減少し,燃焼室壁温の収束とほぼ同時に定常 値へと収束する特性を示すが,特に始動直後から最大値に達するまでのTHC の特性 は燃焼室壁への燃料の付着・残留に大きく起因することを立証している。 また、
始動開始直後を除いたTHC およびNOx 濃度は,定常運転時における燃焼室壁温とそ れらの濃度との関係から予測し得ること、始動時のTHC 濃度は低沸点成分が支配的 で あり、 中で もC2H4 が 大きな 割合 を占 めていること等を明らかにしている。
第5 章では、始動時における各種の運転条件および燃料性状が排気エミッション 特にTHC に及ぼす影響にっいて検討しており、始動時での回転速度の増加,燃料噴 射量の減少,T90 の低下,燃料の低粘度化,あるいは着火性の向上などにより排気 工ミッション、特にTHC 濃度を低減し得ることを実証している。更に始動時での臭 気濃度の推移がTHC 濃度推移に概ね対応していること、DGM などの含酸素燃料を用 いることによりTHC と臭気濃度が大幅に改善されること等も明らかにしている。
第6 章は、始動・暖機運転時における燃焼および排気エミッションの過渡特性に っいて検討しており、始動・暖機運転では、始動開始後の燃料増量期間Dt および そこでの当量比¢h がTHC 濃度に大きく関与していることから,
THC濃度の改善策 としてDt とQh の低減を提案している。また始動・暖機運転時での排出THC 濃度の 推移特性は,熱分解成分のーっであるC2H4 を主成分とする低沸点成分の濃度に大 きく支配されていること、低沸点成分中の各成分の相対的な濃度割合は始動期間 を通して殆ど変化しないこと等も見出している。
第7 章では、噴射燃料を高負荷運転状態からステップ状に減少して任意期間Dt の 低負荷運転を行った後,再び初期の高負荷運転状態に戻すインターバルステップ 状の増負荷運転時における燃焼と排気エミッションの過渡推移特性を解明してい る。特にTHC 濃度は,増負荷運転開始直後に急増してオーバーシュート現象を呈す るが,その後サイクルの経過に伴って徐々に減少し燃焼室壁温の収束とほば同時 に定常値へと収束すること、その場合のTHC 濃度は,増負荷開始直後を除いて燃料 噴射量およびピストン温度が同一である定常運転時の値におおむね一致して推移 すること、また増負荷直後でのオーバーシュート量は増負荷開始前の低負荷運転 期間Dt およびピストン壁温に殆ど依存しないこと等を明らかにしている。更に、
増負荷時のTHC の推移特性はCl ―C8 の低沸点成分に支配されており、その低沸点成 中 で は
C2H4が 大 き な 割 合 を 占 め て い る こ と も 見 出 し て い る 。
第
8章 で は 、 本 研 究 に お い て 得 ら れ た 結 果 を 総 括 し て い る 。
これを要するに、著者はディーゼル機関における特に過渡運転時の燃焼と排気 エミッションに関する新知見を得ており、内燃機関工学、燃焼工学に貢献すると ころ大なるものがある。