博 士 ( 工 学 ) 金 賢 求 学位論文題名
Origin of DioxinsinDrinking Water and the Effect of Water Treatment for the IVIinimization of Dioxins
( 水道水 における ダイオキ シン類の起 源及び、 浄水処理 効果に関 する研究 )
学 位 論 文 内 容の 要 旨
近年、様々な発生源から出るダイオキシン類の汚染は社会的関心になっており、1999 年度には環境省でダイオキシン類を水道水質監視項目とし、その指針値をlpg‑TEQ/L とした。本研究は 3 年間にわたり、日本全国49 箇所の浄水場において、水道原水及び 浄水中のダイオキシン類同族体バターン及び各同族体濃度を調査し、その結果を基にし て、水道原水及び浄水中のダイオキシン類の由来、処理プロセスの機能を解析したもの である。
全国49 箇所(表流水44 及び地下水5 )の浄水場の原水及び浄水で試料を採集して調査 を行 っ た 結果 、 原水 及 び 浄水 に おけ る ダ イオ キ シ ン類 の 平均 値は 60 . 85pg/L
(0 . 12pg‑WHO‑TEQ/L) 及び浄水で3.92pg/L (0.015pg‑WHO‑TEQ/L) であった。浄水処 理場の位置によルダイオキシン類の濃度及びその除去バターンの違いが認められた。特 に、地下水のダイオキシン類濃度は表流水より非常に低い濃度であることが明らかとな った。
上 述 の 結 果 か ら 水 道 水 の 耐 容 1 日 摂 取 量 (Tolerable Daily Intake , TDI;
4pg‑TEQ/kg/day) に対する寄与率は 0.015 %である。 1997 年度厚生労度省による発表さ れた日本人の耐容 1 日摂取量 2.60pg‑TEQ/kg/day の基準値に対しても水道水からの1 日 摂 取 量 は 、 総 摂 取 量 の 0.023 % と 非 常 に 低 い こ と が 判 明 し た 。 浄水処理によるダイオキシン類の平均毒性等価除去率は88 %であるが、2 ,3 ,7 ,8‑Te CDF の除去率はマイナス 12 %である。そこで、 2 , 3 , 7 , 8‑TeCDF の濃度が増加した 工程を調べるために、高度浄水処理と通常浄水処理におけるダイオキシン類の調査をし た結果、高度浄水処理及び通常浄水処理ともに塩素処理により2 ,3 , 7 ,8‑TeCDF 、H xCDFs 及びCo‑PCBs が増加することが明らかとなった。
原水中の総ダイオキシン類濃度はKMn04 消費量、色度及び濁度との関連が示唆され
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た。 特 に、濁度 とダイ オキシン類の濃度と関連性が高いことは、ダイオキシン類の強 い 親 油 性 に 起 因 す る と 考 え ら れ た 。 さ ら に 、 農 業 地 域 で 使 用 し たCNP及 びPCPと 2,3.7,8‑TeCDFの 増 加 と の 関 連 性 は 低 く 、 工 業 地 域 由 来 と 推 定 さ れ るPCP、 2,4,6‑t,richlorophenol及び自然由来が主体と考えられるE260(紫外部吸収260nmにお ける吸光度)と2,3,7,8‑TeCDFの増加との関連性が確認された。
PCP、2,4,6‑trichlorophenol及びE260 (UV absorbance at 260nm)と2,3,7,8‑Te CDFの 増加との 関連性 から、下 水処理 水、泥炭 水、Humic acid,SP lignin,KP lignin 及 びバ ル プ 排水 の 塩 素処 理 を 検討 し た 結果 、 リグ ニシを 含む試料 からはTe CDFが増 加 した が 、 フミ ン 質 を含 む 試 料か ら はTeCDFの 増 加 は 見ら れ な いこ と が 明ら かにな った。 また、上 記の試 料からダイオキシン類の前駆物質であるク口口フウノール類を測 定した 結果も同 様にり グニンを 含む試 料のみ2,4,6ク口口フェノールが生成された。
さらに 、各異性 体のク 口口フウ ノール を塩素処 理した 結果、4‑monochlorophenol, 2,4 ‑ dichlorophenol,2:4,6‑trichlorophenol and pentachlorophenolのみダイオキシン類 の 生 成 が 確 認 さ れ た 。 さ ら に 、4‑monochlorophenol,2,4‑dichlorophenol, 2,4,6‑trichlorophenolから2,3,7,8‑TeCDFが増加することが明らかにした。また、
高 塩 素 化 ダ イ オ キ シ ン 、 低 塩 素 化 ダ イ オ キ シ ン 、PCP及 びCNPに 塩 素 処 理 し て も 2,3,7,8‑TeCDFの増加とは関係が無いことが明らかになった。
クラス 夕分析と 主成分 分析により原水中のダイオキシン類の由来源を推定した結果、
40地点の 表流水系 浄水場 は農業、 工業及 び清浄地 域の三 つのグル ープに明 確に分けら れ るこ と が 明ら か に なった。 総ダイ オキシン 類の濃 度もそれ ぞれ139、46及び13pg/L で あっ た 。 また 、 主 成分 分 析 によ る 各 グル ー プ の特 徴 は 、 グル ー プ1で はCNP及 びP CPの 寄 与 率が42%と 高 い 、グ ル ー プ2で は 大気 由 来 の 寄与 率 が 高い こ と が推 定され た。
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学位論文審査の要旨
学位論文題名
Origin of DioxinsinDrinking Water and the Effect of Water Treatment fortheMinimiZationofDiOXinS
( 水 道 水 に お け る ダ イ オ キ シ ン 類 の 起 源 及 び 、 浄 水 処 理 効 果 に 関 す る 研 究 )
ダイオキシン類は、その発生源が種々存在し、しかも非意図的に生産され環境中に排出 されているとともに、それらの環境影響リスクの高いことから、その制御と管理は世界的 な課題となっている。我が国においても、1999年度に厚生省および環境庁はその一日耐容 摂取量を4pg/Kg/日とし、環境中のダイオキシン類の低減を図るための対策を講じることと した。また、環境省ではダイオキシン類を公共用水域の監視項目とし、厚生省では水道水 質監視項目としてそれぞれ指針値をlpg−TEQ/Lとした。しかし、水道水を含め水環境中の ダイオキシン類の存在濃度は極微量であり、そのりスク評価に高度な技術とコス卜が要す るた め、 それ らの 挙動 に関 す る知 見は 国際 的に 見ても非常に少ないのが実態である。
本研究はこのようなことから、国内49箇所の浄水場において、水道原水及び浄水中のダ イオキシン類同族体パターン及び異性体濃度を調査し、その結果を基にして、水道原水及 び浄水中のダイオキシン類の由来、処理プロセスの機能を解析したものである。また、水 道の基幹的な処理プ口セスである塩素処理におけるダイオキシン類の変化や生成について の研究を行っている。
本 論 文 は8章 か ら 構 成 さ れ て お り 、 そ の 内 容 は 以 下 の よ う に 要 約 さ れ る 。 第 ー 章 で は 、 本 論 文 の 背 景 、 目 的 及 び 構 成 に つ い て 記 し て い る 。 第二章では、ダイオキシ ン類の物理化学的な特性とともに健康影響リスクや環境中の挙 動について文献考察を行っている。
第三章では、全国49箇所(表流水44及び地下水5)の浄水場の原水及び浄水で試料を採集 して調査を行った結果を基 に水道におけるダイオキシン類に挙動について論じている。す なわち、原水及び浄水におけるダイオキシン類の平均値は60.85pg/L (0. 12pg−WHO−TEQ/L) 及び浄水で3.92pg/L (0.015pg−WHO―TEQ/L)である。浄水場の位置によルダイオキシン類の 濃度及びその除去バターン の違いが認められる。特に、地下水のダイオキシン類濃度は表
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基 男
公 雄
翼
泰
哲
義
達
柄
桑
辺
水
井
眞 高
渡 清
亀
授 授
授 授
授
教
教
教
教
教
助
査
査
査
査
査
主
副
副
副
副
流 水 よ り 非 常 に 低 い 濃 度 で あ る こ と を 明 ら か に し て い る 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、浄 水 の1日 耐 容 摂 取 量 に 対 す る 平 均 寄 与 率はO. 015Xであ る 。1997年 度厚 生省 に よる 日本 人の1日 摂取 量2. 60pg一TEQ/kg/dayに 対し ても 水道 水 から の1日摂 取量 は平 均0.023%であることを 明ら かにしている。
第 四 章 で は 、 浄 水 処 理 プ ロ セ ス に お け る ダ イ オ キシ ン 類の 挙動 につ いて 論 じて いる 、す な わ ち 、 浄 水 処 理 に よ る ダ イ オ キ シ ン 類 の 平 均 毒 性 等 価 値 除 去 率 は88% で あ る が 、 2,3,7,8ーTeCDFの除 去率 は マイ ナス12% であ る 。そ こで 、高 度浄 水処理と通常浄水処 理に お け る ダ イ オ キ シ ン 類 の 調 査 を し た 結 果 、 高 度 浄 水処 理 及び 通常 浄水 処理 と もに 塩素 処理 に よ り2,3,7, 8―TeCDFHxCDF,Co―PCBが 増 加 す る こ と を 明 ら か に し て い る 。 第 五 章 で は 、 水 道 原 水 と ダ イ オ キ シ ン 類 と の 関 係に つ いて 論じ てい る。 す なわ ち、 原水 中 の総 ダイ オキ シン 類 濃度 は闘n0. 消費 量 、色 度及 び濁 度 との 関連 が示 唆さ れ 、特 に、 濁度 と ダ イ オ キ シ ン 類 の 濃 度 と 関 連 性 が 高 い こ と か ら 、疎 水 性の 高い ダイ オキ シ ン類 は懸 濁物 質 に 付 ( 吸 ) 着 し て 存 在 す る た め 、 そ の 低 減 化 に は適 正 な凝 集沈 殿濾 過処 理 の重 要性 を明 ら か に し て い る 。 ま た 、 ク 口 口 フ ェ ノ ー ル 類 や 紫 外 部 吸 光 度 高 い 水 道 原 水 で は 2,3,7,8−TeCDFの濃度が増加が見られる ことを明らかにしている。
第六 章で は、2,3,7,8―TeCDFの増加する前駆物質に論じて いる。すなわち、下水処理 水、
泥 炭 水 、Humicacid,SPリ グ ニ ン ,KPリ グ ニ ン 及 び パ ル プ 排 水 を 塩 素 処 理 し 、リ グニ ンを 含 む 試 料 か ら はTeCDFが 増 加 す る が 、 フ ミ ン 質 を 含 む 試 料 か ら は 増 加 し な い こと を明 らか に し て い る 。 ま た 、 ダ イ オ キ シ ン 類 の 前 駆 物 質 で ある ク 口口 フェ ノー ル類 も りグ ニン を含 む 試 料 か ら の み 生 成 す る こ と を 明 ら か に し て い る 。さ ら に、 各異 性体 のク 口 口フ ェノ ール を塩素処理した 結果、4―monochlorophenol,2,4−dichlorophenol,2,4,6−trichIorophenol、 pentaChlorophenolのみ ダイ オ キシ ン類 の生 成が確認された。 さらに、4―monoChlorophenol, 2,4−diChlorophen01,2,4,6―trichIorophenOIから2,3,7,8―TeCDFが増加することが明ら か に し た 。 ま た 、 高 塩 素 化 ダ イ オ キ シ ン 、 低 塩 素 化 ダ イ オ キ シ ン 、PCP及 びCNPを 塩 素 処 理 し て も2, 3,7,8― TeCDFの 増 加 と は 関 係 が 無 い こ と を 明 ら か し て い る 。 第 七 章 で は 、 ク ラ ス 夕 分 析 と 主 成 分 分 析 に よ り 原水 中 のダ イオ キシ ン類 の 由来 源に つい て 論 じ て い る 。 そ の 結 果 、 表 流 水 を 水 道 水 源 と す る40力 所 に つ い て 、 ダ イ オ キ シ ン 類 の 異 性 体 の 分 布 特 性 か ら 、 農 業 地 域 、 工 業 地 域 及 び 清浄 地 域の 三つ のグ ルー プ に区 分さ れる こ と を 明 ら か に し て い る 。 す な わ ち 、 そ れ ら の ダ イ オ キ シ ン 類 の 濃 度 も そ れ ぞれ139、46 及 び13pg/Lで あ り 、 主 成 分 分 析 か ら 農 業 地 域 の 水 道 原 水 で はCNP及 びPCPの 寄 与 率 が 42% と 高 く 、 工 業 地 域 で は 大 気 由 来 の 寄 与 率 が 高 い こ と を 明 ら か に し て い る 。 第八章では、 これらの研究成果を要約して いる。
こ れ を 要 す る に 著 者 は 、 水 道 にお け るダ イオ キシ ン類 の 健康 影響 リス クは4 pg/Kg/日 と い う1日 耐 容 摂 取 量 と 比 較 す る と 実 質的 にり スク は 低い 、し かし 、CNP等 塩素 系 農薬 を多 量 に 使 用 し た 農 業 地 域 や ク 口 口 フ ェノ ー ル類 が排 出さ れる 工 業地 域で はダ イオ キ シン 頬濃 度 が 高 い こ と や 、 水 道 の 基 幹 的 な 塩 素 処 理 プ 口 セ ス で 健 康 影 響リ ス クの 高いTeCDFが 生成 さ れ る こ と を 明 ら か に し て い る 。 これ ら は、 水道 水の 健康 影 響リ スク を評 価し 、 制御 、管 理 す る 上 で 有 益 な 知 見 を 明 に し て おり 、 都市 環境 工学 とく に 環境 衛生 工学 に対 し て貢 献す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。 よ っ て著 者 は、 北海 道大 学博 士 (工 学) の学 位を 授 与さ れる 資 格 あ る も の と 認 め る 。
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