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Taxonomy and Phylogeny of theSubfamily Rhombognathinae(Acari: Halacaridae)

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 理 学 ) 安 倍

  

学 位 論 文 題 名

      Taxonomy and Phylogeny of the Subfamily Rhombognathinae (Acari: Halacaridae)

(カ イソウダニ 亜科(ダ 二目:ウ シオダニ 科)の分 類と系統)

学位論文内容の要旨

  カ イ ソウ ダ ニ類 は 主 に海 洋 の 沿岸 域 に生 息 す る体 長0.5ミ リ 程度の 小型のダ ニ類で、

水棲ダニ 類の一群 であるウ シオダニ 科内のーつ の亜科を 構成している。このダニ類に関し ては世界 各地で種 の記載が 進められ ている段階 にあり、 亜科に含まれる属と種を網羅した 分類学的 再検討や 系統解析 は行われ ていない。

  本 研 究 で は 、 今 回 新 た に 記 載 し た11種 と 全 既 知 種 を 含 む カ イ ソ ウ ダニ 亜 科4109 種の 分類 学的再検 討を行い 、さらに、 分岐論的 手法に基 づく4属間 の系統関 係の解明 と、

動物地理 学的な進 化過程の 推定を行 った。本研 究から得 られた主要な結果は以下の通りで ある。

    1.北海道 のカイソ ウダニ相

  従来の研 究では北 太平洋に おけるカ イソウダニ 相の実態 は殆ど明らかにされておらず、

そ れ が カ イ ソ ウ ダ ニ 亜 科 全 体 の 分 類 学 的 理 解 を 妨 げ て い た 。 そ こ で 、1986年 から19 93年 に か けて 北 太平 洋 西 部に 位 置す る 北 海道 沿 岸で カ イ ソウ ダ ニ 類の 採 集を 行 い 、11 新 種 を 含 む216種 を 確 認 し た 。 本 論 文 では こ れら16種を 記 載 する と 共に 、 そ れぞ れ の種の道 内におけ る分布と 検索表を 記した。こ の中には 、北西太平洋から初めて記録され たIsobactrus属 ( 5種 が 確 認 さ れ た ) と 、Rhombognathus2種 が 含 ま れ る 。

    2. カイ ソ ウ ダニ 亜 科の 分 類 学的 再 検討

カイ ソ ウ ダニ 亜 科 は、 今 回北 海道から 記載した11新種を含 め、Rhombognathides属9

(2)

種 、Metarhombognathus2種 、Isobactrus22種 、Rhombognathus76種 の 計4109種 か ら 構 成 さ れる 。 こ れ ら 全 種 の 記 載 論 文 を 詳 細 に 検 討 し 、 さら に、 この うち の 50種の 標本 を実 際に 検査 して 、そ れぞれ の種 につ いて 、主 要な 形態的判別形質、生物学 的 特 徴 、 生 息 環 境 、 地 理 的 分 布 を 記 載 し 、 参 考論 文 目 録 と 検 索 表 を記 した 。Rhombo‑

gnathus.属とMetathombognathus属はいずれも北大西洋と北極海沿岸に分布が限られること を明らかにした。

    3.カイソウダニ亜科4属間の系統関係

  カイ ソウ ダニ 亜科 に含 まれ る4属 の系 統関係を分岐論的手法を用いて推定した。系統解 析 は派 生形 質共有と最節約の原則に基づぃて行い、走査型電子顕微鏡を用いた観察によっ て 新た に得 られ た形 質を 含む46形 質を 採用 した。 形質 状態 の極 性は 主に外群比較法と個 体 発生 先行 基準 によ り決 定し た。 外群 としてはCopidognathus属とThaぬsaracba属を主に 用 い、 必要 に応じてウシオダニ科の姉妹群であるPezi(he科、さらに上位のテングダニ上 科も用いた。

  系統 解析 を行う際には、扱う群全体の単系統性が保証されなければならない。カイソウ ダ ニ亜 科の 単系 統性 は、 緑色 の体 色、2列の細斑を有する食道板、手根骨の存在、および 吻 の側 方突 起の存在によって支持された。系統解析の結果、カイソウダニ亜科内部におけ る 共通 祖先 から の進 化的 分岐 は次 のよ うな 順序で 起き たと 推定 され た:1)ム06ac加s, Rカom6(卿a曲jdes Meぬ而( m魄ロaめus3属の共通祖先とRカ0m6(習瑠めus属とぃう2つの単系 統 群 へ の 分 岐 、2) 前 者 か ら のRom6〔 璢m出 血bsMe0m1aめ 恥2属 の共 通 祖 先 と ム06acs属 と ぃ う2つ の 単 系 統 群 へ の 分岐 、3)勵 ()m卿naめ船 属とAね繃 ()mめ ― 駟aめus属の分岐。

  カイ ソウ ダニ亜科内部での形態的な分化の程度を知るために、形質変化の数を考慮に入 れた4属間の系統図を作成したところ、A蠢fa襾om炊響田aめ恥属の系統、および脇ぬmDmめ―

駟aめUs属とj油om炊卿a出血炳属の共通祖先の系統では他の系統に比べて多くの形態的変化 が起こっていることが示唆された。

(3)

    4.

カ イ ソ ウ ダ ニ 亜 科

4

属 の 進 化 過 程 に 関 す る 動 物 地 理 学 的 考 察

  

先に推定したカイソウダニ亜科4 属間の系統関係に基づき、5 大陸の地域分岐図をブル ックス最節約原則を用いて再構築し、これを現在における4 属の地理的分布、地質学的資 料に基づく5 大陸間の関係図とあわせて、以下のようにカイソウダニ亜科4 属の動物地理 学的進化過程を推定した。

  

現在汎世界的に分布する

Rhombognathus

属とIsobactrus 属はパンゲア大陸が分離する以

前の古生代後期に4 属の共通祖先から分化したと考えられる。一方、北大西洋の両側沿岸

のみに分布するRhombognathides 属とMetarhombognathus 属はローラシア大陸において共

通祖先から分化し、新生代第三紀の始新世から暁新世に、大西洋の形成に伴ってローラシ

ア大陸からユーラシア大陸と北米大陸が分離した時に、それぞれの陸塊と共に移動して現

在の分布を示すようになったと見なすことができる。

(4)

   学位 論 文 審査 の 要旨 主 査    教 授    馬 渡 駿介 副 査    教 授    吉 田 忠生 副 査    教 授    戸 田 正憲 副査   助教授   片倉晴雄

学 位 論 文 題 名

      Taxonomy and Phylogeny of the Subfamily Rhombognathinae(Acari: Halacaridae)

(カ イソ ウダ ニ亜 科(ダ 二目 :ウシオダニ科)の分類と系統)

  ウシオ ダニ 類は 、現存量が大きく、海洋生態系において低次栄養段階を占める重要な海 産 ダニ類 であ る。 しかしながら、体サイズが小さいことや標本作製が難しなどいくっかの 点 で研究 対象 とし て非常に扱い難く、解明の遅れている分類群である。その意味において ウ シオダ ニ類 はこ れか らの 研究 発展 が注 目さ れて いる 動物 群であ る。 カイ ソウダニ類は そ のよう なウ シオ ダニ 科内 のー つの 亜科 を構 成し、4属から成り立っている。カイソウダ ニ 亜科に 関す るこ れまでの研究はそのほとんどが断片的な種の記載にとどまり、分類群全 体 の再検 討や 系統 解析 など は行 なわ れて こな かっ た。

  申請者 はカ イソ ウダニ亜科を研究対象とし、北海道における新種および既知種の記載を 含 め 、 全4109種 に つ い て 、 分類 学 的 再 検 討 を 行 う と 共 に 、 分 岐 解 析 に よ っ て4属間 の 系統関 係を 解明 し、 さら に歴 史地 理学 に基 づぃた考察により、4属に関する動物地理学 的 な進化 仮説 を導 いた 。

  北 海 道 の カ イ ソ ウダ ニ相 の解 明に は、8年を かけ て北 海道 沿岸 域56地点 を調 査し た。

そ の 結 果 、 こ れ ま で13種 し か知 ら れ て い な か っ た北 海道 のカ イソ ウダ ニ相 は、11新 種 を 含 む 216種 と な っ た 。 ま た 、 北 西 太 平 洋 か ら 初 め てIsobactrus属 お よ び Rhombognathus leurodac屮 恥とR.血en血 の2種を 報告 した 。

(5)

  

カイソウダニ亜科の分類学的再検討は全既知種4 属109 種で行われた。その内訳は、

北海道から記載した11 新種を含む、Rhombognathides 属9 種、Metarhombognathus 属2 種、

Isobactrus

22

種、Rhombognathus 属76 種である。全種で記載論文を詳細に検討すると 共に、50 種については標本を実際に検査して分類形質の形質状態を明らかにし、全種に ついて主要な形態的判別形質、生物学的特徴、生息環境、地理的分布、参考文献目録およ び検索表を提示した。地理分布については、Rhombognathus 属とIsobactrus 属は汎世界的に 分布し、Rhombognathides 属とMetarhombognathus 属は北大西洋および北極海沿岸に分布が 限られることを明らかにした。

  4

属間の系統関係の推定には、走査型電子顕微鏡などを使って分類群の外部形態を詳細 に調べ、46 形質を系統解析のための分類形質として採用した。次いで、それらの形質状 態の極性を推定し、分岐論的手法を用いて属レベルの系統解析を行った。その結果、カイ ソ ウダニ 亜科 内部 にお ける共 通祖 先か らの進化的分岐は1 .

 Rhombognathus

属、2 ・

Isobactrus

属、3 .Rhombognathides 属およびMetarhombognathus 属の順に起こったと推定さ れた。また、分岐関係に加えてカイソウダニ亜科内部での形態的な分化の程度を知るため に、形質変化の数を考慮に入れた系統図を作成し、Metarhombognathus 属の系統、およぴ

Metarhombognathus

属とRhombognathides 属の共通祖先の系統では他の系統に比べて多くの 形態的変化が起こっている事を指摘した。

  

さらに申請者は、近年創案されたブルックス最節約法を使って、カイソウダニ亜科4 属 の進化過程に関する動物地理学的考察を行い、4 属の現在における地理分布と地質学的資 料に基づく5 大陸間の歴史的関係から次のような進化仮説を導いた。すなわち,現在汎世 界的に分布するRhombognathus 属とIsobactrus 属はパンゲア大陸が分離する以前の古生代後 期にカイソウダニ亜科の祖先から分化した。一方、Rhombognathides 属とMetarhombo‑

gnathus

属はローラシア大陸において、共通祖先からそれぞれ分化し、新生代第三紀の始

新世から暁新世にかけて、ローラシア大陸からユーラシア大陸と北アメリカ大陸が大西洋 の形成に伴って分離した時に、それぞれの陸塊と共に移動して、北大西洋の両沿岸に局在

分 布 を す る に 至 っ た と ぃ う も の で あ る 。

(6)

  

本研究はカイソウダニ類とぃう研究対象としてぼ扱いにくい動物群を取り扱い、従来ほ とんど解明されていなかった北海道のカイソウダニ相を明らかにすると共に、これまで行 われたことがないカイソウダニ亜科全種を網羅した分類学的再検討を行った。これらの基 礎的新知見は分類学への貢献が大きいだけでなく、カイソウダニ類に関する応用研究への 足掛かりを与えるものである。また、カイソウダニ亜科4 属の系統関係を初めて解明し、

それらの動物地理学的な進化仮説を提示した。これらの結果はダニ類の進化に関する極め

て重要な示唆を与えるものであり、高く評価される。よって、審査員一同は、参考論文の

内容および最終試験の結果を含め、申請者が博士(理学)の学位を受けるに充分な資格が

あるものと認定した。

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