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泡盛醪醗酵期間中における還元性糖類消費に関する研究: University of the Ryukyus Repository

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Academic year: 2021

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Title

泡盛醪醗酵期間中における還元性糖類消費に関する研究

Author(s)

外間, 宏一

Citation

琉球大学農家政工学部学術報告 = The science bulletin of

the Division of Agriculture, Home Economics & Engineering,

University of the Ryukyus(9): 214-218

Issue Date

1962-12-01

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12000/23108

(2)

外間宏一* KoichiHoKAMA:StudyonReducingSugarConsumptioninFermentation PeriodofAwamoriBrewing. 緒 =

澱粉質が糖化酵素によって,分解される過程において生産される種類を取扱った研究は多くの人々に

よって報告されているが,いずれの研究においても,醗酵性,非醗酵性の色々の還元性糖類の存在を報

告している。したがって,本研究においても,数種の還元性糖類の存在を予想したのであるが,実験結

果からは,グルコースとマルトースの2種の糖しか検出できなかった。なお,麹は神村酒造KK・産の

ものから分離したもの,酵母は石川酒造KK・産の膠から分離したものを,夫々実験に供した。

実験方法,実験結果

泡盛膠仕込斜面に培養せる酵母1白金耳を綿栓せる試験管中の麹汁10ccに接種し,24時間醗酵

させ,それを綿栓せる300cc容三角フラスコに水100cc,麹509の割合に入れたものに添加し,24時

間醗酵させ,それを酒母とした。本仕込は綿栓せ ・。 。、 る4,000cc容三角フラスコに麹1,1009,水1,600cc の割合で混したものに,酒母を添加して行なった。 醗酵および増殖は孵卵器中にて33。~34°Cで行 ない,綿栓せる試験管および三角フラスコはすべ て乾熱滅菌したものを使用した。 糖消費曲線醗酵期間(11日)中膠濾液につ いて24時間毎にヘーン法2)によって直糖の定量 を行ない,その消費曲線を作成した。 R/値測定入手出来た数種の糖類について, 一次元上昇法(ペーパープロマトグラフ法)を行 ない,東洋濾紙No.51のR′値を実測した。 (ご禦脂姻騨画 醗酵日数 Fig.1.醗酵期間中における糖消費曲線 第1表東洋濾紙No.51のE′値 「’ し B’C 11【 lI L」 展開時間:6時間 展開溶媒:〃-ブタノール,酢酸,水(4:1:2) 展開温度:室温発色試薬:アニリン,フタール酸 *琉球大学農家政工学部農学科

(3)

泡盛膠醗酵期間中における還元'性糖類消費に関する研究 215 供試糖溶調製(1)直糖定量用のものは膠穂液を糖濃度が高い時は5倍に,低い時は2.5倍に稀釈 して用いた。(2)ペーパークロマトグラフィ用の対照標準糖液は,上記7種の糖各々19を蒸溜水15cc に溶解して用いた。(3)ペーパークロマトグラフィ用の試料糖液は7),膠濾液L5ccを蒸発皿にとり, 電気湯煎器にてシラップ状にまで濃縮し,これに無水ピリジン2ccを加えて攪伴しながら溶解し,脱 塩,脱アミノ酸処理を行ない,その濾液を試料とした。 糖類の検出および定量仕込後2日目から2日おきに一次元上昇ペーパークロマトグラフイに よって糖類の検出を行ない,定量はクロマトグラム上のスポットの面積から直接算出する方法を採用し た。すなわち,東洋濾紙No.51(40cm×20cm)の下端より6cmに原線をとり,上記7種の糖およ び試料の0.0015ccをミクロピペットにてスポットし,〃-ブタノール,酢酸,水(4:1:2v/v)を溶媒 に,として室温にて一次元上昇三重展開を同時に行なった。それと併行して試料中の糖類のR,値を知 るため同条件で1回6時間展開を行なった。展開を終った濾紙は室内にて風乾後,アニリン,フタル酸 発色試薬を吹きつけて,120~125°Cで20分間加温して発色させた。検出された糖類はいずれの場合 にも,グルコースとマルトースの2種であった。またクロマトグラム上における呈色面積は各成分量に 比例する場合がある事7)が知られているので,それによって試料中のグルコース,マルトースを定量し たが誤差率が高いことはやむをえない。 第2表醗酵期間中における糖類消費(%)とR′値

三壁i蟹i雪篁

2日目 5日目 8日目 n日目 5.1(0.19) 2.0(0.09) 7.1 2.3(0.20) 1.5(0.10) JJ ll くく 一一 グルコ マルト JJ ll くく 一一 スス 計 3.8 (Fig.1 有 差率 より) 比 (%) 糖 直含誤 6.88 7:3 3 3.09 3:2 20 0.39 0.15 ():E′値 321098765432 1111 (Eu)濫出証哩

むら○○‘

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6○●

Fig.2.2日目膠の三重展開ペーパークロマトグラムとEノ値

(4)

(乙創I(Uo)。)ワー(bR)41〔。「色nI Q1知I丑I 〈Eu)鵠出題瞳

CCつら○

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Fig.3 5日目鰺の三重展開ペーパ クロマトグラムとE/値 3210987654321 1111 (Eu)鎧出歴腿 A

EC

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、0.4、凸守

蝋雛

Fig.4 8日目鰺の三重展開ペーパ クロマトグラムとE′値 A

3210987654321 1111 (Eu)鵲麗麗鴎 EC

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B○

00.4 編型0.3 `.,凸02 01 G

(も■■夕も■ P凸0■ 夕0 Fig.5.11日目膠の三重展開ペーパークロマトグラムとE′値 ○:試料⑥:痕跡A:ラムノースB:グルコースC:フルクトース D:ガラクトースE:マンノースF:マルトースG:ラフイノース 考察,結論 従来の泡盛製造方法は麹,酒母とも友掛法によっているものであるが,本実験においては両者とも, 斜面培養のものを種菌として,常法により実験的製造を行なった。実験の対.象とした醗酵期間を10日間 とした。11日目の醗酵状況を知るため,アインホルン管によってCO2の容積を測定したが,一昼夜放 置しても0.1cc位しか示さなかった。その事は醗酵がほとんど完了した事を意味し,その時のアルコ ール濃度は12.3%(v/v)であった。醗酵期間中における糖消費状況は中期が最も旺醗で,醗酵完了時 の糖濃度は0.15%であった。糖化酵素による澱粉糖化を取扱った報告は幾多あるが,麹糖化を取扱っ たものとしては,富金原')等による清酒中に醗酵性のものとしてグルコース,非醗酵性のものとしてイ ソマルトース,パノース,その他少糖類が存在するという報告,松田4〕による麹汁中に非醗酵'性二糖の コージピオース,α,α-トレハロース,α,β-トレハロース,サケピオース,イソマルトースが存在すると

(5)

217 泡盛膠醗酵期間中における還元性糖類消費に関する研究 いう報告等である。麦芽糖化を取扱ったものとしては,麻生8)等によるビール中にキシロース,アラピ ノース,グルコース,マルトース,イソマルトース,マルトトリオース,マルトテトラオースその他オ リゴ糖が存在するという報告,mOBarto-Wright7〕等による麦芽汁中にフルクトース,グルコース, マルトースその他不明の2種の還元糖が存在するという報告等である。その他大麦マミロ法熟成膠中の 糖類に関しては小野等5)の研究があり,醤油中の糖類に関しては上野等6)の研究がある。いずれの場合 においても,醗酵性,非醗酵性の数種の糖類の存在を報告している。 以上の研究成果からして,本実験においても,醗酵性,非醗酵性糖類の存在を予想して着手した。糖 類検出のためのペーパークロマトグラフィははじめ展開距離を長くするために,24時間の長時間展開を 行なったのであるが,スポットの形状が細長くなり境界が不明で,検出不能であったために,三重展開法 にかえた。実験結果から分るように,二つのスポットしか検出できなかった。2日目と5日目のものは 明瞭なスポットを得るが,7日,11日目のスポットは殆んど消失して,その形状を確認する事ができな かった。二つのスポットは標品のグルコース,マルトース位にあることと,E/値が上記糖にほとんど 一致していることから,上位のものをグルコースと下位のものをマルトースと断定した。膠中の両糖の 含有比ははじめはグルコースに富んでいるが醗酵が進行するにつれて,マルトースに富んでくるように 思われる。それはマルトースはグルコースに分解されてはじめて醗酵を受けるので,それだけグルコー スにくらべて醗酵しにくいことによると,思う。 清酒は熟成鰺を濾過したもので,本実験における醗酵完了鰺の濾液と類似視して差支えないと思う。 富金原等')は清酒中の醗酵性糖類としてグルコースのみを検出し,マルトースは検出できなかったこと を報告しているが,醗酵が完了した泡盛謬の濾液については,いずれのスポットも確認することができ なかった。清酒および麹汁中におけるグルコース以下の非醗酵性糖類の存在については既述したが,泡 盛膠においては,その存在を検出することができなかった。 摘要 (1)泡盛膠の仕込は麹,酒母とも斜面培養のものを種菌として実験的に行なった。 (2)還元糖定量用の試料としては泡盛醸濾液を稀釈したものを用い,ペーパークロマグラフィ用の 試料としては泡盛醸濾液を濃縮し,之をピリジンで処理して用いた。

(3)糖消費曲線は試料中の還元糖をレーン法に準じて定量することによって作成した。

(4)試料中の還元糖の種類の検出はペーパークロマトグラム上の三重展開における展開距離を標品

のそれと比較する事と,1回展開におけるE/値を測定する事によってなされた。

(5)その結果,試料中に検出された糖はグルコースとマルトースのみで,醗酵完了時においてはほ

とんど認められなかった。このことは清酒,ビール,麹汁,麦芽汁が数種の糖類を含有している事とは 大部実験結果を異にしている。 (6)試料中のグルコースとマルトースはペーパークロマトグラム上のスポットの面積から直接定量 された。 参考文献 富金原孝,村松敬一郎1952:農化,26:583. 友田宜考,エ藤憲資,玉置弥栄1958:炭水化物実験法. 柴田村泊1959:ペーパークロマトグラフ法の実際. 松田和雄1959:農化,33:719. JJJj 1234 くくくく

(6)

(5) (6) (7) (8) 小野英男.大宰富郎1959農化,33:639. 上野喬宏1960農化,341039・ 佐竹一夫1960クロマトグラフィ. 麻生情,渡辺敏幸,佐々木浩,元村佳恵1961:農化,35:1073. R6sum6 (1)Streak-culturedAsPe7giJmsA〃qmo7iandStzcchqγ0m"ccsA”cumMwasrespectively usedasthestartersoffungiandyeastforexperimentalAwamoriBrewing. (2)DilutedfiltratesandcondensedonestreatedwithpyridinefromAwamorimashwere respectivelyusedasthesamplesinestimationofquantityofreducingsugarandinpaper chromatography. (3)ThereducingsugarsinsampleswereestimatedaccordingtoLane'sMethodtomake thecurveofsugarconsumptioninfermentingperiod. (4)Thekindsofreducingsugarinsampleswerejudgedfromthedistancesofspotin trippledevelopmentcomparedwiththoseofstandardsugarsandfromtheR,valvesofspot developedonetimempaperchromatogram. (5)Theauthorfoundthatnoothersugarsweredetectedexceptglucoseandmaltosein sampleswhichcouldbehardlyfoundintheendoffermentation. (6)TheresultwasverydifferentfromthefactJapanese-Sake,Beer,Kojiandmaltextract containseveralkindsofreducingsugar. (7)Thekindsofreducingsugarwereestimateddirectlyonthebasisoftheareasofspot inpaperchromatogram.

参照

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