論文内容要旨
Image analysis of magnifying endoscopy for differentiation between early gastric cancers and gastric erosions
(早期胃癌と良性びらんの拡大内視鏡像における画像解析を用いた比較)
THE SHOWA UNIVERSITY JOURNAL OF MEDICAL SCIENCE Vol.29 No.3 2017 年 掲載予定
内科系内科学(消化器内科学分野)(藤が丘病院)
上部内視鏡スクリーニング検査の最大の目標は癌の早期発見にあると 考えるが,早期胃癌と良性びらんの内視鏡診断は時に困難な場合があり, 特に微小胃癌の診断は癌病変の特徴を熟知する必要がある.狭帯域光観察
(narrow-band imaging:NBI)が開発され様々な臨床的有用性が報告され ているが,画像解析を加えた報告はまだ少ない.また,胃では背景が萎縮性 胃炎,腸上皮化生,炎症などのバリエーションに富んだ環境に病変が発生 するため,早期胃癌の NBI 拡大内視鏡分類を困難とさせている.胃癌と良 性びらんの NBI 拡大画像における血管構造の特徴を画像解析により定量 化し,肉眼で捉えられない微妙な違いを検出し,診断に応用することが目 的である.
当院で内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection:
ESD)を施行した早期胃癌(表面陥凹型病変)と,NBI 拡大観察で血管構造を 認めるものの生検にて良性と診断したびらん病変を比較した.それぞれの 拡大内視鏡画像より,最も血管像が顕著と考える部位を関心領域として設 定し解析を施行した.解析ソフトとして ProStudy<オリンパス社製>を 使用し,解析は血管像について複数項目を設定し,定量化を行った.得られ た数値を,全早期胃癌と良性びらんの 2 群で,さらには病変径 10mm 以下の 早期胃癌と良性びらんの 2 群においても検討した.
全早期胃癌例と良性びらんの比較では,血管面積比,フラクタル次元,血 管端点数,血管分岐点数+交差点数,血管長平均値,血管画素数,総血管長, 血管画素数/総血管長のパラメータにおいて有意差を認めた.病変径 10mm 以下の早期胃癌と良性びらんの比較でも同パラメータにおいて有意差を 認めた.早期胃癌全体と良性びらんにおける検証から,微小血管構築像に おいて,胃癌病変は良性びらんより血管の占める面積が広く,血管の描出 領域が複雑であり,血管の端点・分岐点が多く,血管は長く太いことを示し
た.また,病変径 10mm 以下の早期胃癌においても同様の結果が得られた.
臨床応用の検討を目的に散布図を作成するが,胃癌病変と良性びらんの 散布が重なる領域を認め,明瞭な境界を設定するには至らなかったが,補 助診断となる可能性が示唆された.例えば,抗凝固薬の休薬が困難な症例 における生検なしの観察のみでのスクリーニング検査において,NBI 拡大 観察と画像解析を施行することにより,生検を目的とした内視鏡再検査を 検討する際に,画像解析により得られたデータの散布図内での位置が補助 診断になりうると考える.
早期胃癌の内視鏡診断が発達し, NBI を併用した拡大内視鏡の有用性の 報告はあるが,まだその診断には熟練した内視鏡技術と診断学を要する.
しかし,画像の数値化は診断を補助することができ,客観的かつ簡便に診 断できる可能性を有すると考える.