○
地球温暖化の影響により、日本の年平均気温は上昇傾向であり、それに伴う集中豪雨による水害や
土砂災害が頻発・激甚化。更に、今後、発生すると予想される南海トラフ地震などの大規模地震やそ
れに伴う津波による災害発生リスクも増大。
○
こうした地球規模のリスクは、今後の世界的な食料需給の逼迫と相まって、多くの食料を輸入に頼
る我が国に不安を与えるとともに、食料生産の場である農村社会を脆弱化させるなどの影響が懸念。
○
平均気温の上昇
0
50
100
150
200
250
300
350
400
1980 1990 2000
1977~1986平均
1997~2006平均
50mm/hrの降雨発生回数
○
集中豪雨の増加
約
1.5倍
黒:各年の平均気温の基準値からの偏差
青:偏差の5年移動平均
(基準値:1981-2010年平均値)
上昇傾向
資料:気象庁HP
○南海トラフ地震で想定される震度分布と津波高分布の例
平成25年9月15・16日
台風18号による茶園の崩壊状況
(京都府京都市)
資料:南海トラフ巨大地震の被害想定について(第2次報告)(中央防災会議)
○
集中豪雨等による被害
平成24年7月14日
集中豪雨による湛水状況(福岡県)
Ⅲ
農業・農村をめぐる情勢の変化と課題
2.災害発生リスクの増大
39
○
平成26年に農林水産省気候変動適応計画推進本部を設置し、本年8月の気候変動適応計画(仮称)の策定に向け
て検討を進めており、「農業生産基盤」についても、影響(現状、将来予測)を整理。
農林水産省気候変動適応計画骨子(第二章 分野・品目別対策)より抜粋(農業生産基盤)
① 影響
ア 現状
農業生産基盤に影響を与える降水量について、年降水量の変動が大きくなっているとともに、短期間にまとめて雨が強く降る傾向が見られる。また、高温によ
る水稲の品質低下等への対応として、田植え時期や用水時期の変更等、水資源の利用方法に影響が見られる。
イ 将来予測
極端現象の増大や気温の上昇により、農業用水及び農業水利施設について、融雪流出量が減少し、用水路等の農業水利施設における取水に影響を与える
ことが予測されている。また、降雨強度の増加により農地の湛水被害等のリスクが増加することが予測されている。
○ 田植えの遅植え
→かんがい期間の後倒し
○ 昼間深水・夜間落水管理
→用水量の増加
○ 湛水期間の延長
→用水量の増加
白未熟粒(左)と正常粒(右)の断面
※登熟期(出穂・開花から終幕までの間)の高
温等による白未熟粒(デンプンが十分に詰まら
ず白く濁ること)の発生
○高温への対応と水需要への影響(例)
資料:農研機構 農村工学研究所
○排水施設における集中豪雨の影響(アンケート調査)
資料:農林水産省農村振興局調べ(平成23年度調査)
30%
35%
15%
19%
67%
5%
13%
10%
5%
4%
66%
52%
76%
76%
29%
0% 50% 100%
①排水施設(排水機・排水路等)の
破損等の被害
②農作物に影響を及ぼす
湛水被害
③人家等の浸水被害
④排水先河川の水位・排水規制
による運転停止
⑤年間のポンプ運転時間の増加
増大・拡大している 減少・縮小している 変わらない
22%
8%
12%
10%
12%
7%
12%
23%
10%
78%
92%
88%
90%
88%
93%
88%
78%
90%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
①洪水時の対応についてのマニュアル等
②洪水時の対応に備えた人員の確保
③湛水・浸水の被害予想区域の把握
④事故や施設被害の危険箇所の把握
⑤応急的な対応に備えた補助的ポンプの確保
⑥土嚢、シート等の応急的な補強資材の確保
⑦受益者・地域住民への連絡体制の整備
⑧関係組織との連携体制の整備
⑨応急的な対応等についての訓練の実施
有 無
最近5年間の豪雨・洪水による影響・被害の変化
最近5年間の豪雨・洪水に対する備えの見直しの有無
(参 考)
農林水産省気候変動適応計画(仮称)の検討状況
(参 考)
農林水産省気候変動適応計画(仮称)の検討状況
41
0
5,000
10,000
15,000
20,000
25,000
30,000
35,000
40,000
19
53
19
56
19
59
19
62
19
65
19
68
19
71
19
74
19
77
19
80
19
83
19
86
19
89
19
92
19
95
19
98
20
01
20
04
20
07
0
10
20
30
40
50
19
53
19
56
19
59
19
62
19
65
19
68
19
71
19
74
19
77
19
80
19
83
19
86
19
89
19
92
19
95
19
98
20
01
20
04
20
07
全国(17部門)
道路
港湾
鉄道
下水道
水道
農業
○ 「日本の社会資本2012(内閣府)」によると、農業部門の純資本ストックは、他の公共部門と比べて減少度合
は顕著(約10年間で▲11%)。これは、近年の投資額(▲64%)が落ち込むとともに、他の社会資本に先駆けて
形成されたストックの減価償却が高水準で推移していることが要因。
○ このことは、農業部門が他の公共部門に比べて、ストックの残存能力の低下に加え、残存年数が少なくなり、
残存価値の低下が進んでいることを示唆。
投資額の推移
ストック量の推移(純資本ストック試算)
兆円(全国及び道路は
10兆円)
億円(全国及び道路は10億円)
資料:内閣府「日本の社会資本2012」
ストック量は純資本ストック試算③-1、投資額は名目投資額(新設改良費+災害復旧費)
※全国17部門とは、道路、港湾、航空、鉄道、公共賃貸住宅、下水道、廃棄物処理、水道、都市公園、文教施設、治水、治山、海岸、農林漁業、郵便、国有林、工業用水道。
200
9
200
9
0%
-11%
+10%
-8%
-5%
+2%
+10%
1999年から2009年にかけての増減率
-40%
-31%
-64%
-51%
-41%
1999年から2009年にかけての増減率
-30%
-16%
Ⅲ
農業・農村をめぐる情勢の変化と課題
3.社会資本ストックの変化(総論-①)
42
0
10
20
30
40
50
60
19
53
19
56
19
59
19
62
19
65
19
68
19
71
19
74
19
77
19
80
19
83
19
86
19
89
19
92
19
95
19
98
20
01
20
04
20
07
全国(17部門)
道路
港湾
鉄道
下水道
水道
農業
○ 生産的資本ストックの近年の傾向では、ほとんどの公共部門で増加している一方、農業部門の減少度合は
顕著(約10年間で▲4%)。
○ これは、農業部門が他の公共部門に比べて、ストックの残存能力の低下が進んでいることを示唆。
ストックの概念
ストック量の推移(生産的資本ストック試算)
兆円(全国及び道路は10兆円)
資料:内閣府「日本の社会資本2012」
ストック量は生産的資本ストック試算③-1、投資額は名目投資額(新設改良費+災害復旧費)
※全国17部門とは、道路、港湾、航空、鉄道、公共賃貸住宅、下水道、廃棄物処理、水道、都市公園、文教施設、治水、治山、海岸、農林漁業、郵便、国有林、工業用水道。
200
9
1999年から2009年にかけての増減率
+6%
-4%
+16%
-2%
+2%
+4%
+16%
純資本ストック
使用可能な状態にある資本ストックの、評価時点に
おける
残存価値(残高)
を評価したもの
→同じ能力量であっても、残存年数(あと何年持つ
か)の違いを考慮
生産的資本ストック
使用可能な状態にある資本ストックの、評価時点に
おける
能力量
を評価したもの
→能力量の低減を考慮
Ⅲ
農業・農村をめぐる情勢の変化と課題
3.社会資本ストックの変化(総論-②)
43
Ⅲ
農業・農村をめぐる情勢の変化と課題
3.社会資本ストックの変化(耕地面積及び耕作放棄地の推移)
S36:609万ha
H26:452万ha
H26:337万ha
-14.0
-12.0
-10.0
-8.0
-6.0
-4.0
-2.0
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
0.0
100.0
200.0
300.0
400.0
500.0
600.0
700.0
拡
張
面
積
・
減
少
面
積
(万ha)
耕
地
面
積
(万ha)
8.3 13.3
16.2 18.2
16.1
21.0
22.4 21.4
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
H7 H12 H17 H22
合
計
(
万
h
a
)
農家所有
土地持ち非農家所有
○
耕地面積は、昭和36年の609万haをピークに減少しているが、基盤整備等による拡張が行われた結
果、総体としては、減少を抑制。但し、近年は拡張面積に比して減少面積の度合いが大きく、耕地面
積は緩やかな減少傾向が継続。
○
耕作放棄地の増加は、近年鈍化傾向だが、土地持ち非農家が所有する耕作放棄地は15年間で2倍以
上に増加。地域類型別に見ても、中山間地域、都市的地域で高くなる傾向。
○耕作放棄地面積の推移
資料:農林水産省「世界農林業センサス」
○耕作放棄地面積率の推移
資料:農林水産省「世界農林業センサス」
6.9
3.3
7.5 8.4
10.3
4.6
10.7 12.4
12.7
5.4
12.9
14.6
13.7%
6.0%
14.1% 15.8%
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
12.0
14.0
16.0
18.0
都市的地域
平地農業地域 中間農業地域 山間農業地域
耕
作
放
棄
地
面
積
率
(
%
)
平成7年
(1995)
平成12
(2000)
平成17
(2005)
平成22
(2010)
都市的地域、中間農業地域、山間
農業地域において、高い数値
○耕地面積の増加・減少の推移
資料:農林水産省「耕地面積及び作付け面積統計」
土地持ち非農家所有耕作放棄地は
15年間で2倍に増加
H7:8.3万ha→H22:18.2万ha
累計約
271万ha減少
累計約112万ha拡張
耕地面積
基盤整備等による拡張が行われず、減
少のみが進んだ場合、耕地面積はピー
ク時
(S36:609万ha)より半減
都市的地域 平地農業地域 中間農業地域 山間農業地域
44
○ 30a程度以上の区画に整備済みの水田は156万haで水田面積全体の6割。
○
一方、区画が整備された水田の約3分の1は未だ排水が不良であるとともに、生産コストの削減に
貢献する大区画化の割合は、未だ全体の1割弱。
水田の整備状況の推移
水田の区画整備状況
資料:農林水産省「耕地及び作付面積統計」、「農業基盤情報基礎調査」
注:1) 区画整備済とは、30a程度以上に区画整理された田(大区画は1ha程度以上)。
2) 排水良好とは、地下水位が70cm以深かつ湛水排除時間が4時間以下の田。
排水良好
107万ha
排水良好でない
49万ha
水田面積
247万ha
汎用田
未整備
90万ha(37%)
区画整備済
156万ha(63%)
うち大区画
22万ha(9%)
0
50
100
150
200
250
300
350
0
10
20
30
40
50
60
70
S39
S44
S50
S58
H05
H13
H23
H24
H25
面積(万ha)
整備率(%)
田の耕地面積
うち30a程度以上区画整備済
うち1.0ha程度以上区画整備済
30a程度以上整備率
1.0ha程度以上整備率
資料:農林水産省統計部「耕地及び作付面積統計」(平成25年7月)、
農林水産省農村振興局「農業基盤情報基礎調査」(平成25年3月)
63.4%
63.2%
9.0%
8.8%
Ⅲ
農業・農村をめぐる情勢の変化と課題
3.社会資本ストックの変化(農地「水田」)
45
畑地かんがい施設の整備状況の推移
資料:農林水産省 「農業基盤情報基礎調査(平成25年3月)」
「整形」とは、原則として方形に整形されているもの。
「不整形」とは、等高線区画などで上記の整形に含まれないもの。
「末端まで-事業」とは、事業によって整備されたもののうち、各区画へかんがい用水を配水できる施設が各区画ごとに整
備されているもの。
「基幹まで-事業」とは、事業により基幹的施設までの整備に止まり、各区画まで配水施設が整備されていないもの。
「非事業」とは、畑地かんがいが行われているが、事業による整備ではないもの。
掲載している数値については、四捨五入を行っているため、合計と内訳の積み上げが一致しない場合がある。
整形
[127万ha:61%]
不整形
[80万ha:39%]
不備 [92万ha:72%]
[69万ha:87%]
不備
基幹まで-事業 [11万ha:8%]
末端まで-事業 [22万ha:17%]
末端まで-事業
[6万ha:7%]
非事業 [3万ha:2%]
非事業
[3万ha:4%]
基幹まで-事業
[1万ha:1%]
○ 畑地かんがい施設の整備面積は46万haで畑地面積全体の約2割。
○ うち28万haは各区画(末端)まで配水施設が整備されているが、12万haは基幹的施設までの整備でとどまっ
ている状況。
資料:農林水産省「耕地及び作付面積統計」(平成25年7月)、
農林水産省「農業基盤情報基礎調査」(平成25年3月)
41万ha
46万ha
23万ha
28万ha
19.0%
22.1%
0
10
20
30
40
50
0
5
10
15
20
25
30
S39
S44
S50
S58
H05
H13
H23
H24
H25
整備面積(万ha)
整備率(%)
畑かん施設整備済面積
末端まで-事業
畑かん施設整備率
畑地かんがい施設の整備状況
Ⅲ
農業・農村をめぐる情勢の変化と課題
3.社会資本ストックの変化(農地「畑」)
46
近年頻発している集中豪雨
や東日本大震災でのため池の
決壊による被害の発生を踏ま
え、施設の現状を把握すると
ともに、被災の可能性や被災
した場合の影響を改めて確認
し、今後の効率的かつ重点的
なため池の防災・減災対策の
推進に活用。
点 検
実 施
点検対象の8割
程度完了
81,171か所
点 検
結 果
今後詳細な点検
を要するため池
10,077か所
うち防災重点た
め池
2,916か所
目
的
平成26年度までの点検結果
(平成27年7月時点)
詳細な調査の結果、整備が必要な
場合は、
ハードとソフトを組み合わ
せた対策の実施
。
なお、対策においては以下の事項
を考慮し
優先順位付け
。
・防災重点ため池から優先実施
・被災の大半は豪雨であることか
ら、豪雨対策を優先
・地震対策は南海トラフ地震等の
エリアを優先
対策検討に当たっての基本的考え方
期間・対象
○点検期間
平成25年度~26年度の2か年で全国約20万か所のため池のうち
約11万か所を対象
年度
対
象
箇所数
H25
受益面積2ha以上のため池
約6.3万 約6.4万
下流に人家や公共施設等があり、施
設が決壊した場合に影響を与えるお
それがある等の防災重点ため池(上
記と重複あり)
約0.9万
H26
受益面積0.5ha以上2ha未満のため池
約4.4万
・ハザードマップの作成
・情報連絡体制整備
・ハード対策までの間の管理体制の
整備・強化
・ハード対策の着手を促進する権利
関係の調整 等
・全面更新
・部分改修、修繕、更新
・ため池の廃止(定額)
※平成26年度までに点検を完了できなかったため
池は、平成27年内の完了を目標
整備不要
詳細な調査を要するため池
日常管理
監視体制の強化
整備が必要
詳細調査
ハード対策
ソフト対策
※平成26年3月末時点
受益面積0.5ha以上
うち点検対象【約11万か所】
受益面積
2ha以上
約0.9万か所(H25)
防災重点ため池
約6.3万か所(H25)
約4.4万か所(H26)
○対象ため池の分布
全ため池(約20万か所)
(参 考)
ため池一斉点検調査(平成25年度~26年度)
(参 考)
ため池一斉点検調査(平成25年度~26年度)
48
○
第1回研究会の議論においては、
・
農業農村整備事業は、地域の発意に基づいて社会資本を形成し、コミュニティの力を活用して整備された社会資
本を管理する仕組みを内包しており、農村協働力
※
に働きかけることができるという特性を有している
・
農業は食料供給とともに国土保全といった多面的機能を有しており、中山間や平場等の地域が置かれた条件に応
じて整備の在り方を変えていくことも必要
といった指摘がなされた。
※ ソーシャルキャピタルのうち、農業・農村振興施策を展開していくうえでの対象を「農村、あるいは農村と都市の複数の主体が、農村の活性化のための目標を共有し、自ら考え、力を合わせて活動したり、自治・合意形
成などを図る能力または機能」と考え、「農村協働力」と呼ぶ。(出典:農林水産省「農村におけるソーシャルキャピタル研究会」とりまとめ(平成19年6月))
○
以上の指摘及び投資の効率化の観点から、農業農村整備事業の展開方向の検討に当たって踏まえるべき基本的な事
項を以下のとおり整理した。
(1)基本的な考え方
① 農業農村整備事業を通じた農村協働力の深化
② 地域特性を踏まえた多様な農業農村整備事業の展開
③ 効率的な事業実施のための配慮
○
さらに、個別・具体的な農業農村整備事業の展開については、財政の健全化に配慮しつつ、経済の再生と地方創生
等の実現に寄与する観点から、1)急激に老朽化が進む農業水利施設等の社会資本の機能をどのように将来に継承し
ていくか、2)人口減少をはじめ大きく変化する社会状況に対応して新たな価値を生み出すための社会資本をいかに
形成するか、という2つの柱立てに沿って整理を行った。
(2)農業農村整備事業の展開方向
① 社会資本の機能の継承
・ 農業水利施設の戦略的な保全管理
・ 社会資本の強靱化
・ 人口減少を踏まえた施設の集約・再編
② 新たな価値を生み出す社会資本の形成(既存の社会資本の高度化)
・ さらなる生産性向上による地域経済の活性化
・ 新たな価値の付与による効果の最大化
Ⅳ
農業農村整備事業の展開方向
~
展開方向の検討に当たっての考え方 ~
49