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糖尿病神経障害のバイオマーカーと再生療法の現状

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特  集 バイオマーカー探索を指向した先端的薬学研究 その2

糖尿病神経障害のバイオマーカーと再生療法の現状

昭和大学薬学部薬物療法学講座薬剤学部門

藤田 吉明  中村 明弘

は じ め に

 2014 年 3 月に厚生労働省が発表した「平成 24 年  国民健康・栄養調査結果の概要」1)では,国内で「糖 尿病が強く疑われる人」は約 950 万人,「糖尿病の 可能性を否定できない人」を合わせると約 2050 万 人と推計され,1997 年以来増加していたのがわず かではあるがはじめて減少に転じた.とはいうもの の,適切な治療がなされなければ国民のかなりの割 合が将来的に合併症に見舞われる可能性が高い.

 糖尿病神経障害は三大合併症のうち最も早期に出 現し,最も頻度が高い合併症であるが,進行するま で診断されないことも多く,その早期発見は極めて 重要である.この合併症は感覚障害優位の末梢神経 障害であり,その症状は感覚過敏,痛みなどから,

神経線維の脱落に伴って次第に感覚鈍麻となる.痛 覚鈍麻が生じると外傷や機械的刺激などを自覚でき ないため,足潰瘍や壊疽が進行し下肢切断に至る ケースもある2).したがって,この疾患は患者およ び家族に身体的さらに精神的な負担を与え,QOL 低下に深く関与することから,早期発見のための診 断法ならびに有効な治療薬の開発の必要性が高い.

糖尿病患者の血糖値を長期間にわたり厳格にコント ロールすることにより,神経障害の発症・進展を抑 制できることが明らかとなっている3,4)が,神経障 害を完全に阻止することは困難であり,確実で有効 な治療法がないため,対症療法が行われているのが 現状である.

 国内の糖尿病患者における糖尿病神経障害の頻度 は,報告により異なるが,おおむね 36%前後であ る5,6).さらに神経障害と診断されたうち,40.3%が 無症候であった7)ように,自覚症状に乏しい点が問 題である.したがって,糖尿病神経障害の早期発見

には,当然のことながら臨床症状および神経学的所 見が重要であるが,より感度が高く簡便な神経障害 の重症度あるいは病期進展の目印となるバイオマー カーが期待される.バイオマーカーの開発には発症 機構についての情報が必要であるが,糖尿病神経障 害の発症機序には諸説あり,非常に複雑である2). 末梢神経組織はインスリンに依存することなくブド ウ糖を取り込むため,高血糖状態が持続すると代謝 の変化を生じる.そのため,神経栄養血管の血管内 皮細胞の障害や神経線維(軸索およびシュワン細 胞)の変性が生じ,最終的に神経障害が出現すると されている.代謝変化には,①ポリオール代謝充進,

②終末糖化産物(advanced glycation end products:

AGEs)の産生充進,③フリーラジカルの増加,④ NO の低下,⑤プロテインキナーゼ Cβ(PKCβ)の活 性亢進などが提唱されており,これらがあいまって 発症している可能性が高く,そのためか,これまで に確固たるバイオマーカーの報告はない.

 糖尿病神経障害のバイオマーカーについては神谷 らによる優れた総説8)が 2009 年にすでにあるが,

本総説ではそれ以降に報告された有用と考えられる バイオマーカーについて紹介することにする.加え て,糖尿病神経障害が進行し神経の変性が完成した 状態での治療として期待される再生療法の現状につ いて概説する.

糖尿病神経障害のバイオマーカー  1.AGEs およびその前駆物質

 蛋白の非酵素的糖化は腎症,大血管障害など糖尿 病合併症の主要な原因として確立されている.糖尿 病神経障害でも末梢神経組織では過剰の AGEs 蓄 積がみられ,神経線維数の減少と相関することが示 されている9).軸索骨格の糖化による軸索輸送の障

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10)や,基底膜蛋白ラミニンの糖化による軸索再 生の障害11)などが,神経病変の進展に寄与すると 考えられている.また,AGEs の受容体(receptor  for AGEs:RAGE)のノックアウトマウスでは,

糖尿病状態での神経障害が軽症化されることから,

RAGE 発現が神経障害の発症に直接関与している ことが明らかとなっている12).ヒトにおいても神経 組織への AGEs の蓄積が神経障害の発症・進展に 重要と思われるが,組織中の AGEs 測定は採取お よび定量方法が煩雑であり,バイオマーカーとして は適していないと思われる.一方,AGEs の前駆物 質であるメチルグリオキサールなどの反応性ジカル ボニルやα-オキソアルデヒドが,新しい糖尿病神 経障害の発症および進展因子として脚光を浴びてい る13).最近,Bierhaus のグループは,メチルグリ オキサールが知覚神経を脱分極させ,電位依存性ナ トリウムチャネル Nav 1.8 の翻訳後修飾を起こし,

痛覚過敏を惹起することを明らかにした14).さらに そのメカニズムに加えて,冷覚受容体チャネルであ る Transient receptor potential cation channel A1

(TRPA1)も同様に活性化し,温度および機械的痛 覚過敏を惹起することが報告された15).マウスに メチルグリオキサールを投与すると,神経伝導速度 の低下および皮膚神経終末からのカルシトニン遺伝 子関連ペプチドの分泌促進が観察され,熱刺激およ び機械刺激に対する痛覚過敏が誘発される.また,

ストレプトゾトシン誘発性および遺伝性の糖尿病マ ウスモデルでも同様の変化が認められるが,Nav 1.8 ノックアウトマウスでは認められないことがわかっ た.これらの知見は糖尿病神経障害における痛覚過 敏の機序が,メチルグリオキサールによるものであ ることを強く示唆するものである.また,糖尿病患 者では血漿中メチルグリオキサールの濃度が 600 nM 以上で疼痛が出現することも報告しており,今後バ イオマーカーとしての有用性の検討が待たれる.

 2.グリオキサラーゼ I(glyoxalase Ⅰ:GLO Ⅰ)

 上記のメチルグリオキサール等の反応性ジカルボ ニルを分解する経路が生体内には存在し,その律速 酵素はグリオキサラーゼ I(GLO Ⅰ)であることが 知られている16).後根神経節での GLO Ⅰ発現量の 異なる 2 系統のマウスでの比較では,糖尿病状態で 観察される痛覚閾値低下や表皮内神経線維密度低下 などの神経障害症状が,GLO Ⅰ活性の高いマウス

では有意に抑制されることが観察された17).ヒト においては活性低下を示す GLO Ⅰ遺伝子多型の存 在が報告されており18),そのなかには GLO Ⅰ活性 の低下が有痛性神経障害の頻度と有意な相関が認め られるという報告もある19,20)

 3.Toll 様受容体(Toll-like receptor:TLR)

 Toll 様受容体(TLR)は自然免疫反応において 重要な役割を果たしているレセプターであり21),こ の内 TLR4 は多くの免疫系疾患と関連があること が知られている22).一方,ヒト糖尿病や糖尿病動物 の末梢神経では,マクロファージやリンパ球を中心 とした炎症性細胞浸潤がみられ,tumor necrosis  factor(TNF-α),インターロイキン(interleukin:

IL)などのサイトカインの産生亢進のあることが示 されている23).Zhu らは 2 型糖尿病患者から採取し たヒト末梢血単核球での TLR4 およびその下流に ある遺伝子の発現量について検討した24).その結 果,神経障害を発症している糖尿病患者では,発症 していない糖尿病患者,健常人に比べて,TLR4 の 発現量が上昇し,血中の TNF-αおよび IL-6 につい ても有意な上昇が認められた.このことは TLR4 が糖尿病神経障害の有用なマーカーとなりうること を示唆するが,残念ながら 1 型糖尿病について検討 されていないこと,また対象人数も比較的少ないこ とからさらなる検討が待たれる.別のグループから も,糖尿病神経障害を持つヒト血清サンプル中にお いて TNF-αの濃度が上昇していることが報告され ている25).糖尿病ラットにおいて,COX-2 阻害薬26)

やチアゾリジン23)など抗炎症効果のある薬剤投与 で神経伝導速度などの改善がみられていることを考 え合わせると,これら炎症性サイトカインに関係す る分子群は,治療効果を反映するマーカーとしても 期待される.

 4.マイクロ RNA(miRNA)

 miRNA は,細胞内に存在する 20 〜 22 塩基程度の ノンコーディング 1 本鎖 RNA であり,標的 mRNA の主に 3 非翻訳領域に部分相補的に結合し,分解ま たは翻訳を抑制することにより,遺伝子発現を制御 する.miRNA は,発現パターンが病態生理学的過 程を反映し,種々の病態に特異的であることから,

新規のバイオマーカーとして注目を浴びている27). 糖尿病下においても,多数の miRNA の発現が変動 することが明らかにされており,この中には神経障

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害の発症あるいは進展との相関を持つものが存在す る可能性がある.miR-146a は糖尿病患者の血清サ ンプル中において発現量が低下する miRNA のひと つである.ごく最近,糖尿病神経障害マウスの後根 神経節中の miR-146a の発現量が低下し,それに伴 い炎症関連分子の IL-1 受容体関連キナーゼ 1(IL-1  receptor-associated kinase:IRAK1)や腫瘍壊死 因子受容体会合因子 6(TNF Receptor-Associated  factor 6:TRAF6)の発現量が上昇することが明ら かにされた28).培養した後根神経節に miR-146a を 強制発現させると高血糖によるアポートシスに対し ての抵抗性を示し,miR-146a の低下が神経障害の 進展に関与する可能性が示唆されている29).  5.神経特異エノラーゼ(neuron-specific enolase:

NSE)

 神経特異エノラーゼ(NSE)は神経組織に特異的 に存在する解糖系の酵素であり,特に肺小細胞癌 や神経芽細胞腫において高い陽性率を示すことか

30‑32),これらの疾患の診断や治療効果の判定に有

用な腫瘍マーカーとして広く使用されている33).慢 性的な高血糖による酸化ストレスにより末梢神経が 変性し再生する過程でこれらの酵素の合成が変化を 受ける可能性から,Li らは血中 NSE と糖尿病神経 障害の関係について検討している34).1 型と 2 型の 糖尿病患者を対象に検討したところ,血清中の NSE 値(µg/l)は対照群に比べて糖尿病群で僅かに上昇 しており(8.7 → 9.1,P < 0.05),とくに神経障害を 有する群で上昇していた(9.1 → 10.8,P < 0.001).

この関係は空腹時血糖値,HbA1c,罹病期間,糖 尿病型,年齢,性別,腎機能と独立しており,血清 NSE 値は神経障害の程度と関連していた.この結 果は NSE が糖尿病神経障害のマーカーとなる可能 性を示唆しているが,より早期の診断への有用性に ついては今後の展開が待たれる.

 6.セマフォリン(semaphorin)

 セマフォリンファミリーに属するたんぱく質は神 経軸索の伸長ガイダンス因子として同定されたの ち,免疫応答,器官形成,血管新生など,さまざま な生命現象への関与が明らかにされている35‑37).末 梢神経が障害を受けた後,再生により回復に向かう 際の軸索の伸長にこれらの蛋白質が関与する可能性 があることから,神経障害のバイオマーカーとなり うる可能性がある.事実,Ara らはラット坐骨神経

結紮モデルにおいて,坐骨神経にこれらのタンパク 質が誘導されることを報告している38,39).一方,最 近の Hayashi らの報告によれば,セマフォリンファ ミリーの一つであるセマフォリン 3A のリコンビナ ントタンパク質を神経障害ラットに投与することに より痛覚の改善が認められている40).しかし,糖尿 病神経障害モデル動物でのこれらの遺伝子の発現変 動についての報告はない.そこで,著者らはストレ プトゾトシン投与により誘発した糖尿病モデルマウ スを作製し,痛覚鈍麻の確認された個体より坐骨神 経を摘出し,6 種類のセマフォリン分子の発現レベ ルについてリアルタイム PCR 法を用いて調べた.

その結果,いずれの分子種においてもその発現量に 統計的に有意な変化は認められなかった(データ未 発表).

 これまでに概説した糖尿病神経障害の進展に関わ るバイオマーカーを表 1 にまとめた.大別すると① AGEs 関連(メチルグリオキサール,グリオキサ ラーゼⅠ),②炎症の進展に関連するもの(Toll 様 受容体,TNF-α,miR-146a),および③神経損傷に 伴うもの(神経特異エノラーゼおよびセマフォリ ン)の 3 つに分けることができる.①は発症の原因 物質のひとつと考えられ,発症から比較的早期のも の,②と③が発症してから病態が進んだ後期のもの と捉えることができる.糖尿病神経障害の早期発見 という観点から見れば,有痛性神経障害に限られて はいるものの,①のメチルグリオキサールは有痛性 神経障害の非常に有望なマーカーとなりうる可能性 を秘めている.今後の臨床での知見が期待される.

再生療法の現状

 糖尿病神経障害が進行し血管および神経の変性が 完成した状態では,原因療法では当然ながら対処で きなくなる.したがって,さらなる治療としてはい わゆる再生治療に期待せざるを得ない.現在,各実 験室で検討されている再生治療は,サイトカインを 損傷した場所に供給することを目的としており,大 きく①サイトカイン補充療法と②細胞移植療法の 二つに分けることができる.前者ではサイトカイン として,血管内皮増殖因子(vascular endothelial  growth factor:VEGF)41),肝細胞増殖因子(hepa- tocyte growth factor:HGF)42)あるいは塩基性繊維 芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:

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bFGF)43)などの血管新生因子や,神経成長因子

(nerve growth factor:NGF)といった神経栄養因 子が使用され,遺伝子導入療法あるいは発現させた リコンビナントタンパク質の投与が行われている.

VEGF を除いていずれの報告も動物実験に留まって いるものの,神経周囲組織における血管新生を介し

た神経血流の改善および神経機能の改善が観察され ている.一方,②細胞移植療法については,単核球

(mononuclear cells)44),間葉系幹細胞(mesenchy- mal stem cells)45)あるいは血管内皮前駆細胞(endo- thelial progenitor cells)46)などが実験医学的にその 有用性が報告されている.これらの細胞は移植部位

表 1 本稿で紹介した糖尿病神経障害のバイオマーカー

バイオマーカー候補 試料 定量方法 機能 神経障害時の変化 文献

AGEs 関連

メチルグリオキサール ヒト血清 HPLC 電位依存性ナトリウム チャネル Nav 1.8 の翻訳 後修飾により痛覚過敏を 惹起する.それに加え て,TRPA1 を活性化し,

温度および機械的痛覚過 敏を惹起する.

マウスに投与すると,熱刺激 および機械刺激による痛覚過 敏が誘発される.糖尿病患者 では血漿中濃度が 600 nM 以 上で疼痛が出現する.

16,17

グリオキサラーゼ I

(GLO Ⅰ)

マウス後根神経節 ヒト血清

比色定量法 メチルグリオキサール等 の反応性ジカルボニルを 分解する律速酵素

糖尿病状態で観察される神経 障害症状が GLOⅠ活性の高い マウスでは有意に抑制される.

ヒトにおいても GLOⅠ活性の 低下が有痛性神経障害の頻度 と有意な相関が認められる.

19,21,22

炎症関連分子

Toll 様受容体 ヒト末梢血

単核球 qPCR 自然免疫に関わる受容体 2 型糖尿病患者で対照群,糖 尿病群に比べて糖尿病かつ神 経障害がある群で上昇する.

26

TNF-α ヒト血清 ELISA 細胞接着分子の発現やア ポトーシスの誘導,炎症メ ディエーターの産生亢進

2 型糖尿病患者で対照群,糖 尿病群に比べて糖尿病かつ神 経障害がある群で上昇する.

26,27

miR-146a ヒト血清

マウス後根神経節 qPCR 炎症反応のネガティブ

フィードバック 2型糖尿病患者で上昇するが,

神経障害との関連は検討され ていない.糖尿病神経障害マ ウスでは後根神経節での発現 量が低下し,また培養後根神 経節での強制発現により高血 糖誘発性アポートシスに抵抗 性を獲得する.

30,31

神経損傷に伴う分子 神経特異エノラーゼ

(NSE)

ヒト血清 ELISA 神経組織に特異的な解糖 系酵素.神経損傷に伴い 漏出

1型と2 型の糖尿病患者で対 照群に比べて上昇,とくに神 経障害がある群で上昇する.

36

セマフォリン マウス 坐骨神経

qPCR 神経軸索の伸長ガイダン ス因子

ラット坐骨神経結紮モデルに おいて坐骨神経にこれらの mRNA が誘導される.

40,41

(5)

で血管新生因子や神経成長因子を産生し,組織修復 に直接的に作用している可能性が示唆されている.

①の方法は導入した遺伝子の発現効率は低く,その 遺伝子の発現は一過性であるという問題点がある.

一方,②の方法は組織の再生に必要な因子を継続的 に発現するシステムであり非常に魅力的ではある が,持続的な発現が長期間にわたるため,その安全 性が懸念される.いずれの方法も臨床での有効性お よび安全性に関するデータが蓄積されることが待た れる.

 サイトカイン補充療法で有効性が確認されている もののうち,現在までに臨床試験が行われたのは著 者らの知る限り VEGF のみである47).この欧米で の臨床試験結果は,神経障害に対する有用性が認め られる一方,統計学的には有意ではないものの投与 に伴う有害事象数の増加が報告されている .

 最後に筆者らの取り組みを紹介する.先に触れた VEGF を用いた神経障害の治療では異所的な血管 形成は避けることはできず,これを原因とした副作 用が生じる可能性は否めない.特に,糖尿病性網膜 症の発症には VEGF の発現が関連しているとの報 告48)もあり,VEGF による治療が網膜症を増悪さ せる結果となりかねない.筆者らも,糖尿病モデル マウスを用いて VEGF およびその類似蛋白である 胎盤増殖因子 2(placenta growth factor 2:PlGF2)

の痛覚鈍麻改善効果について検討している49,50)が,

その過程でこれを克服するヒントと思われる知見を 得ている.前述したように,これらの因子の作用は 血管新生を介した神経血流の改善と考えられている が,これらのアイソフォームの中には血管新生作用 があっても痛覚鈍麻改善作用を有しないものがある ことを見出した.このことは,これらの血管増殖因 子が血管新生を介さず,しかも従来の VEGF のシ グナル伝達経路とは異なる経路で痛覚鈍麻改善効果 を発揮している可能性を示唆する.したがって,こ のシグナル伝達経路に関わる分子を同定することが できれば新しいストラテジーの治療薬開発の一助に なると考えられる.

お わ り に

 冒頭にも述べたように,糖尿病神経障害は患者の QOL 低下に深く関与することから,早期発見のた めの診断法ならびに有効な治療薬の開発の必要性が

高い.しかしながら,本稿でも概説したように,バ イオマーカーとしての候補はこれまでにも複数でて きているものの,実臨床に応用できるものはないの が現状である.その原因としては,この疾患の病因 が多因子的なものであり,それに加えて発症からの 経過時間によって病態が異なるために,臨床研究の アプローチがしにくいことがひとつの要因であると 思われる.したがって,糖尿病神経障害のバイオ マーカーの確立には,適切な診断基準により病態を 選別し,病期ごとに検討していくことが重要な課題 である.幸い,近年のマイクロアレイ解析や質量分 析に代表される網羅的解析技術の進歩には目を見張 るものがあり,これらの活用により新たなバイオ マーカーが発見されることを期待する.

文  献

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〔受付:1 月 13 日,受理:2 月 5 日,2015〕

参照

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