• 検索結果がありません。

論文の要約 氏名

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "論文の要約 氏名"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

論文の要約

氏名: 竹内 久登

博士の専攻分野の名称: 博士(生物資源科学)

論文題名: 河川におけるアユのエドワジエラ・イクタルリ感染症の疫学的研究

エドワジエラ・イクタルリ感染症 (Ei) は、グラム陰性短桿菌Edwardsiella ictaluriを原因菌とする魚類 の細菌性疾病である。E. ictaluri1976年に北米のアメリカナマズの養殖場で初めて報告され、ナマズ目魚 類の腸内敗血症(Enteric Septicemia of Catfish: ESC)原因菌として、北米や東南アジアのナマズ養殖におい て甚大な被害を及ぼしてきた。我が国では2007年にE. ictaluriに起因する河川アユの大量死が確認され、

本事例が我が国におけるEi症の初報告事例となった。その後本症は関東以西の河川に生息するアユにおい て頻発し、内水面漁業や遊漁に深刻な被害をもたらしている。一方で、我が国におけるEi症は発生が認め られない年、発生履歴の無い河川もみられるなど、発生に至る要因や過程についての知見は極めて乏しい のが現状である。

そこで本研究では、東京都の多摩川水系を調査河川として、河川生息魚のE. ictaluriの保菌状況および Ei症の発症状況を調査した。次に、同水系におけるEi症の発生状況ならびに河川環境のモニタリング結 果から、発生要因の一部を特定した。更に、河川中におけるE. ictaluriの分布・動態についても検討を行 い、アユにおけるE. ictaluriの保菌から発症に至るプロセスを推定した。最後にこれら結果をまとめ、河 川におけるEi症の発生抑制策を提示した。

20115月から201211月にかけて、多摩川の下流域 (Stn. A)、中流域 (Stn. B)、上流域 (Stn. C) およ び支流域 (Stn. D) の計4地点を対象として、生息魚類のE. ictaluri保菌状況およびEi症の疫学調査を実施 した。各地点原則月1回、手網, 投網および釣獲による魚類採捕調査を実施し 、放流種苗アユを含む計37

2,989尾を検査に供試した。

採捕魚は無菌的に開腹後、腎臓組織をTS寒天培地またはSS液体培地に接種し、25℃で培養した。その 後、TS寒天培地上に出現したコロニーまたはSS液体培地培養液から抽出したDNAを鋳型として、特異的 PCR法により陽性を示したものをE. ictaluri保菌魚と判定した。更に、保菌魚のうち本症の典型症状 (眼球 突出、体表の赤斑点、肛門発赤、または腹水) を呈していた個体をEi症発症魚とみなした。なお、TS寒天 培地を用いた培養法により得られたE. ictaluri分離株は、API試験、抗血清を用いた凝集反応試験、および

16S rRNA領域部分配列の決定を行うことで、株間の差異を検証した。また分離株の病原性を確認するため、

アユおよび5魚種を供試魚(ナマズ, ギバチ, ウグイ, ウナギ,コイ)として、感染実験を行った。

調査の結果、E. ictaluriは主に7~11月にかけて、Stn. A、BおよびDで採捕されたアユから分離・検出さ

れた。Stn. AおよびBにおける保菌率は最大で20-30 %であったが、発症率は両地点とも6%以下であった。

一方、Stn. Dでは2012年の8月にE. ictaluriの保菌率が80%以上に達し、 Ei症に起因するアユの大量死が 確認された。アユ以外では、年間を通して6魚種からE. ictaluriが分離・検出され、アユが生息しない2 3月でもオイカワおよびマルタにおいてE. ictaluriの保菌が確認されたことから、E. ictaluriは多摩川水系に 定着しているものと考えられた。また、E. ictaluri分離株のAPIプロファイル、凝集反応性、塩基配列は全 て一致し、みかけ健康のアユやオイカワから分離された菌株もアユに対して病原性を示した事から、多摩 川におけるE. ictaluriの由来は同一であり、また多くの魚種がEi症を発症するリスクを持つものと考えら れた。

1

(2)

疫学調査の結果から、Ei症に起因するアユの大量死が確認された2012年のStn. Dにおける8月の水温は 前年に比べ約7℃高く、感染実験の結果と合わせ、水温が本症の発生と密接に関係しているものと考えられ た。一方で、E. ictaluriによる大量死が認められなかったStn. AおよびB8月における2012年の水温は

Stn. Dと比べ更に1.41.7℃高く、水温以外の要因も関与していることが予想された。

そこで大量死が認められたStn. Dを調査水域として、2015年まで前章と同様に保菌・発生状況を調査し た。また、同時にデータロガーによる水温の経時測定(4/日)および国交省データベースから水位データ の収集を行い、Ei症の発生状況と比較解析を行うことで、本症の発生要因について検討を行った。

調査の結果、Ei症に起因するアユの大量死が確認されたのは2012および2013年の8月であった。なお、

2011年は年間を通して未発生であり、2014~2015年は8月に小規模の発生が確認された。これらの結果を 基に、8月の日平均水温と比較したところ、未発生年では13.6~22.8℃、小規模発生年では19.0~24.8℃で あったのに対し、大量死発生年は22.0~26.7℃と常に22℃以上であった。また大量死発生年の8月では水 位の大幅な上昇(増水)が確認されず、渇水の状態を呈していたものと考えられた。そこで、河川において 渇水の影響を受けやすい水温日較差(1日の最高水温と最低水温の差)を調べたところ、大量死がみられた 発生年の水温日較差はその他の年と比較して1.52.3℃高かった。また、Stn. Dの水温日較差は未発生地点

Stn. A)と比較して0.81.9℃高く、これらの結果は猛暑による河川水の高水温化だけでなく、渇水(少

雨)に伴う水温日較差の拡大が、Ei症の発生を誘発すると結論した。

以上の結果から、Ei 症に起因する大量死は、猛暑の年に少雨の影響を受けやすい特定の水域において発 生することが明らかとなった。しかし、河川環境中におけるE. ictaluriの分布・動態は不明であり、アユの 保菌から発症に至る過程は不明である。そこで本章では、河川におけるアユの感染源解明を目的として、バ クテリオファージ法および定量PCRqPCR)法により多摩川水系におけるE. ictaluriの分布動態調査を実 施した。

20145月から201610月にかけて、多摩川本流9地点およびStn D.を含む支流域の3地点の計12 点で河川水を採水した。得られた河川水は0.45µmメンブレンフィルターでろ過した後、ろ液を2012年に

分離した E. ictaluri 5 株(指示菌)の懸濁液および TS 液体培地と混合させ、25℃で培養する事により E.

ictaluriに特異的に感染するバクテリオファージ(Eiファージ)を集殖した。その後培養液を0.45µmシリン

ジフィルターによりろ過し、E. ictaluri懸濁液を混合したソフトアガー重層TS寒天培地にろ液を20µl滴下 した後25℃、24時間培養することによりEiファージを検出した。なお、ろ過した河川水の培地への接種量 を変える事により、河川水中のEiファージ量をLv. 0 (未検出) Lv. 6までの7段階で算出した。また2015 6月から、河川水1Lをろ過したメンブレンフィルターから抽出したDNAを鋳型として、Taq-Man プロ ーブを用いたqPCR法によりE. ictaluri由来DNAを定量した。なお、qPCRの際のスタンダードDNAには E. ictaluriセリン合成系遺伝子(SerC)を人工的に合成・精製したものを用い、コピー数が101~104 copies/μl となるよう調整して得た検量線を基にE. ictaluri由来DNA量を算出した。

Eiファージは、4~5月では主に下流~中流を中心に検出された。6~8月なると最上流域を除いた河川全 域で認められるようになり、ファージ量は8月にピークに達した。その後、9月から翌年1月にかけて上流 側からファージ量は減少していき、3 月には多摩川本流の下流域および Stn. Dに近い支流域の特定地点に おいてのみ検出された。qPCR法によるE. ictaluri由来DNAの定量解析でも、E. ictaluri68月にかけて 河川全域で検出されるようになり、13月に一部の水域に集約する傾向が認められた。興味深いことに、

アユの未生息地点や、アユの遡上を著しく阻害する堰の上流では、E. ictaluriは未検出または検出量の低下 が認められており、E. ictaluriの動態とアユの動態(遡上・降下)が密接に関係しているものと推察された。

2

(3)

また、冬季の2~3月において確認されたE. ictaluriの集約水域に生息する水生生物や環境物を対象として、

PCR法によりE. ictaluriの検出を試みた結果、採捕魚類の腎臓や消化管組織に加え、甲殻類、水生昆虫、お

よび環境物(底泥,藻類,リター)からE. ictaluriが検出された。遡上開始時期のアユからE. ictaluriは検出 されていないことから、これらの水生生物または環境物が遡上アユのE. ictaluri感染源であると考えられた。

本研究では、典型的な都市河川である多摩川水系をモデルとして、Ei症の疫学的研究を実施した。保菌・

発症状況調査の結果、E. ictaluriは本水系に定着しており、Ei症は猛暑の年に発生し易く、アユ以外の多く の魚種に病原性を有することが明らかとなった。一方で、猛暑であっても水量が多い本流の中流や下流域 ではEi症の発生は認められておらず、河川における十分な水量の維持が本症の発生抑制策の一つになると 考えられた。またE. ictaluriの河川中の分布・動態を調べた結果、アユの非生息期間である2~3月におい て特定の水域に集約する傾向がみられ、同水域がE. ictaluriの発生源となっていることが予想されたことか ら、このような水域における河床改善も対策法の一つとして考えられた。また、多くの河川で採捕した遡上 アユの別水域への再放流が行われているが、遡上期の早い段階で、かつE. ictaluriの集約水域を避けて採捕 された個体の放流なども有効な対策であると考えられる。

3

参照

関連したドキュメント

にて優れることが報告された 5, 6) .しかし,同症例の中 でも巨脾症例になると PLS は HALS と比較して有意に

氏名 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目

氏名 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目

氏名 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目

もっと早く詳しく報告すべきだったのだが、今日初めてフルヤ氏との共同の仕事の悲し

つの表が報告されているが︑その表題を示すと次のとおりである︒ 森秀雄 ︵北海道大学 ・当時︶によって発表されている ︒そこでは ︑五

エネルギー状況報告書 1 特定エネルギー供給事業者の概要 (1) 特定エネルギー供給事業者の氏名等

エネルギー状況報告書 1 特定エネルギー供給事業者の概要 (1) 特定エネルギー供給事業者の氏名等