土壌の物理性
Journal of the Japanese Society of Soil Physics
第 137 号 2017 年 11 月
土壌物理学会
Japanese Society of Soil Physics
第 137 号 2017 年 11 月
目 次
巻頭言
澤本卓治. . . 1
論 文
圃場における土壌水分量と電気伝導率の連続観測のための
5TE
センサー の簡易な原位置キャリブレーション武藤由子,窪田有真,桐山直盛,渡辺晋生
. . . 3
土壌中の不安定な密度勾配から生じる対流の模擬実験に対する線形安定解析 深田耕太郎,木原康孝
. . . 11
JpGU 報告
濱本昌一郎. . . 19
資 料
A-GE39 Subsurface mass transport and environmental assessment
開催報告 濱本昌一郎,小島悠揮,斎藤広隆,森 也寸志
. . . 21
A-HW32 Biodiversity, nutrients and other materials in ecosystems
from headwaters to coasts
開催報告 小林政広,吉川省子. . . 25
H-CG31 Battles of soil scientists for recapturing Fukushima land
from Nuclear Power Plant accident
開催報告 西村 拓,登尾浩助,溝口 勝. . . 29
資 料
「サマースクール:土
·
水·
生命環境とコロイド界面現象2017
」開催報告足立泰久
. . . 31
土粒子
中堅層が感じたアメリカでの土壌物理動向 西脇淳子
. . . 35 会務報告
. . . . 37 編集後記
. . . . 43
表紙写真の説明
トマトの養液土耕栽培を行うパイプハウス内の風景(岩手県農業研究センター,岩手県北上市)と土壌水分 量と電気伝導率の観測に用いた土壌センサー(Decagon社(現METER社),5TE).今号掲載の「圃場にお ける土壌水分量と電気伝導率の連続観測のための5TEセンサーの簡易な原位置キャリブレーション」をご 参照ください.
土壌物理学会 学会賞選考委員会 委員長 長 裕幸 学会賞選考委員会として下記の論文を論文賞としてふさわしいと決定しました.
1 .中村 公人 (京都大学農学研究科)
大串 祥 子 (農林水産省)
池浦 康広 (農林水産省)
田中 宣多 (京都大学農学研究科)
2 .対象論文
畑地用水計画のための HYDRUS-1D を用いた土壌水分移動解析における土壌水分特性パ ラメータの推定例 , 土壌の物理性 第 134 号 , p. 25–40, 2016.
3 .推薦理由
本研究は,近年,土壌物理学分野で広く普及している解析ソフト HYDRUS-1D を,国内 の畑地用水計画基準における日消費水量の算定に適用する目的で,現地圃場において TDR によって連続的に測定された土壌水分データを用いて,土性の異なる上中下層の土壌水分 特性パラメータを逆解析により推定する手法に関して詳細な検討を行っている.その結 果,裸地条件に適合する最適な逆解析の手法を提示し,植生圃場への適用が可能であるこ とを明らかにした.
本論文で示された逆解析の手法は,将来における畑地灌漑分野への HYDRUS-1D の普及 に関して,大きな貢献を果たすことが期待される.
以上の理由により,対象論文は第 15 回土壌物理学会賞(論文賞)に値するものと認め,
ここに推薦する次第である.
本結果は 2017 年 10 月 13 日に開催された評議員会ならびに総会( 10 月 14 日)にて全会一致で承
認され,総会後に授賞式が開催されました.
第 15 回( 2017 年度)土壌物理学会(ポスター賞)受賞者
土壌物理学会 学会賞選考委員会 委員長 長 裕幸 開催日: 2017 年 10 月 14 日
会 場: 2017 年度土壌物理学会大会ポスターセッション会場
(札幌市:北海道大学農学部)
以下の発表が会員および選考委員会による投票によりポスター賞に選ばれました.
⃝ 業 績:溶存有機物がセシウムの移動に与える影響 著 者:辰野宇大 · 濱本昌一郎 · 二瓶直登 · 西村 拓
⃝ 業 績:微小重力下における毛菅中の接触角変化
著 者:野川健人 · 長沼菜摘 · 丸尾裕一 · 佐藤直人 · 登尾浩助
⃝ 業 績:凍結 · 融解実験による地表面熱境界条件の検討 著 者:奥田涼太 · 渡辺晋生
⃝ 業 績:火山灰土斜面の土壌水分および土壌雨量指数 著 者:牧野弘樹 · 平嶋雄太 · 中村真也 · 宮本英揮
⃝ 業 績:リン酸吸着が粘土コロイドの分散凝集性に与える影響
著 者:小杉重順 · 石黒宗秀
「土壌の物理性」投稿規定の改正について
土壌物理学会事務局 · 同編集委員会 2017 年 10 月 14 日に開催された土壌物理学会総会において,土壌物理学会会則ならびに「土壌 の物理性」投稿規定の改正が決定されました.
1 .事務局役員の名称変更とそれに伴う会員改定
会則(会長委嘱役員)での「庶務幹事」の名称を「事務局長」に変更する.ただし,従来 の会則文中にあった「庶務幹事」はそのまま残す.
2 .シニア会員の決定手法の変更とそれに伴う会則(細則)改定 シニア会員の承認は「事務局」が行うこととする.
3 .投稿規定の規定ページ数と超過ページ料金の見直し,それに伴う規定改定
規定ページ数を現行の「論文 6 ,研究ノート 4 ,総説 6 ,解説 6 ,講座 6 ページ」を「論文
8 ,研究ノート 6 ,総説 10 ,解説 8 ,講座 8 ページ」に変更する.また投稿原稿が規定ペー
ジ数を超えた場合の超過ページ料金について,現行の「 1 ページあたり 15,000 円を著者
負担」を「 1 ページあたり 10,000 円を著者負担」に変更する.
土壌物理学会会則ならびに
「土壌の物理性」投稿規定の改正に伴う新旧対応表
改正部分はアンダーラインで記載(改正日: 2017 年 10 月 14 日)
1 .事務局役員の名称変更とそれに伴う会則改定
新 旧
第 6 条 本学会に次の役員をおく.任期 は 2 年とする.ただし, 3 期連続の重任 は認めない.選出方法は次による.
(4) 事務局長および 幹事若干名
事務局長および 若干名の庶務,会計,編 集の幹事を会長が委嘱する.
第 6 条 本学会に次の役員をおく.任期 は 2 年とする.ただし, 3 期連続の重任 は認めない.選出方法は次による.
(4) 幹事若干名
若干名の庶務,会計,編集の幹事を会長 が委嘱する.
2 .シニア会員の決定手法の変更とそれに伴う会則(細則)改定
新 旧
細則
(1) シニア会員
2) シ ニ ア 会 員 へ の 変 更 は ,資 格 を 有 す る 会 員 か ら の 申 告 を 受 け , 事務局が承認する.
細則
(1) シニア会員
2) シニア会員への変更は,資格を有する 会員からの申告を受け,評議員会の承認 を受ける.
3. 投稿規定の規定ページ数と超過ページ料金の見直しとそれに伴う規定改定
新 旧
2 .投稿原稿の区分と規定ページは下記 による.
2 .投稿原稿の区分と規定ページは下記 による.
1) 「論文」 (Original papers) :独創性が あり,土壌の物理性に関する研究および 技術の進歩に寄与すると見なされるも の.一編ごとに論文としての構成を整え ていて,他誌に未発表のものに限る.規 定ページを刷り上がり 8 ページ以内とす る.
1) 「論文」 (Original papers) :独創性が
あり,土壌の物理性に関する研究および
技術の進歩に寄与すると見なされるも
の.一編ごとに論文としての構成を整え
ていて,他誌に未発表のものに限る.規
定ページを刷り上がり 6 ページ以内とす
る.
2
2) 「研究ノート」 (Notes) :土壌の物理性 に関する新しい事実や研究方法の改良な どの短い報告で,独創性があり他誌に未 発表のもの.規定ページを刷り上がり 6 ページ以内とする.
2
2) 「研究ノート」 (Notes) :土壌の物理性 に関する新しい事実や研究方法の改良な どの短い報告で,独創性があり他誌に未 発表のもの.規定ページを刷り上がり 4 ページ以内とする.
2
3) 「総説」 (Reviews) :土壌の物理性に関 する主題について,それまでの研究を総 括し,今後の発展方向を展望するもの.
規定ページを刷り上がり 10 ページ以内 とする.
2
3) 「総説」 (Reviews) :土壌の物理性に関 する主題について,それまでの研究を総 括し,今後の発展方向を展望するもの.
規定ページを刷り上がり 6 ページ以内と する.
2
4) 「解説」 (Lectures) :土壌の物理性に関 する諸事項の理解を計るための平易な解 説,ならびに研究技術の普及交換を進め るための紹介など.規定ページを刷り上 がり 8 ページ以内とする.
2
4) 「解説」 (Lectures) :土壌の物理性に関 する諸事項の理解を計るための平易な解 説,ならびに研究技術の普及交換を進め るための紹介など.規定ページを刷り上 がり 6 ページ以内とする.
2
8) 「講座」 (Lecture series) : 「解説」と本 質的な違いはないが,特に編集委員会が 企画して複数回にわたって行うものを指 す.規定ページを刷り上がり 8 ページ以 内とする.
2
8) 「講座」 (Lecture series) : 「解説」と本 質的な違いはないが,特に編集委員会が 企画して複数回にわたって行うものを指 す.規定ページを刷り上がり 6 ページ以 内とする.
2
9) 「特集」 (Topics) : 「解説」, 「総説」,
「 論 文 」, 「 研 究 ノ ー ト 」が 混 在 し た も の で ,特 に 編 集 委 員 会 が 企 画 し て 複 数 回 に わ た っ て 行 う も の を 指 す . 規定ページは上記 1) ∼ 4) に同じ.
2
9) 「特集」 (Topics) : 「解説」 , 「総説」 , 「論 文」 , 「研究ノート」が混在したもので,特 に編集委員会が企画して複数回にわたっ て行うものを指す.規定ページを刷り上 がり 6 ページ以内(「研究ノート」では 4 ページ以内)とする.
4 . 投稿原稿が 2 .に記す規定ページを 越える場合には, 1 ページあたり 10,000 円を著者負担とする.
4 . 投稿原稿が 2 .に記す規定ページを
越える場合には, 1 ページあたり 15,000
円を著者負担とする.
若手ではなくなった一大学教員の雑感,
そして新編集委員長としてのお願い
澤本卓治
12017年4月より本誌「土壌の物理性」の編集委員長を担当しております澤本卓治と申します.よろしくお願いいた します.巻頭言執筆の機会をいただきました.学問的感銘を与えるような内容を書くことができそうにもありません ので,これまで感じ,考えてきたことについて記してみたいと思います.雑感になりますがお許しください.
江別市(北海道札幌市の東隣り)にある酪農学園大学に2003年に赴任してから14年間が経ちました.若手と思っ ていましたが46歳となり,若手ではなくなりました.前職は農業環境技術研究所でポスドクを2年間,その前は北 海道大学で学部からポスドクまで10年間在籍しました.現職は研究重点大学ではない地方私立大です.赴任してか ら現在まで,ありていに言えば,どのように教育と研究のバランスを取っていくか,もっとはっきりいえば,どのよ うにして研究者として生き残ることができるかを考えてきました.
「良い研究ができる人は良い教育ができる人が多い」(だから,大学教員はまずは研究ができなくではだめだ)と か,「多少の資金があっても,研究室に兵隊さんがいなければ何もできなよね」(だから,学生を確保して何としても 手足となって動いてもらわなければならない)といったことがよくいわれます.正しいことのように思われますが,
そのように上手く(?)できていると感じることはほとんどありません.もちろん,そのほとんどの原因は私自身の 能力不足や工夫が十分でないことによるものです.
しかし,切れてしまいそうな糸を慎重に手繰り寄せるようになんとかやってきました.そして,上記のような正し いと思われることが全てではないということも感じるようになりました.思い描いたように進めることができないな か,重圧に潰れず腐らずにやっていくにはどうしたらよいか,という個人的境遇の方程式の「解」を探してきたよう に思います.
大学が研究機関と大きく異なることは,学生に平易なことばで学理を語るということが日常的に要請されているこ とです.専門基礎の授業である「土壌学」を担当して数年が経ちました.時に300名を超える大人数の授業ですが,
出席·成績に関係なく任意で学生にコメントを毎回書いてもらっています.提出する学生は10%程度ですが,一見極 めて稚拙·素朴と思われる質問にも,筆者の専門領域からややはずれている質問にも丁寧に回答し,次の授業に印刷· 配付しています(もちろん全てには回答できるわけではありませんが).15回の全授業でA4用紙30∼40枚となる やや大変な作業です.回答用紙がどれだけの学生に真剣に読まれているか不明ですが(アンケートからみると好意的 に受け止められていますが),これにより筆者の知識が整理·拡張され,大変鍛えられています.このことは一例です が,学生との対話プロセスこそが大学教員の強みであると最近感じるようになりました.これですぐに研究·教育が 万事うまくいくということはありませんが,大学教員の基礎体力が少しずつ高まることは多くの大学教員経験者が感 じておられるかもしれません.
もうひとつは卒業論文研究です.筆者が所属する学類は一研究室一教員体制であり,大学院に進む学生の割合が低 く,筆者が担当している土壌環境学研究室では,残念なことにいまだに所属大学院生がゼロのままです.このような 状況では,筆者の研究の一部を卒論として位置づけ,多くの学生には手足となってもらって動いてもらわなくてはな らない,全ての卒論は教員の私がまとめて論文等としなくてはならない,という気持ちでやってきました.これは間 違っていないと思う反面,これ(だけ)で良いのだろうかと考えるようにもなりました.
STAP細胞をめぐる騒動がひとつのきっかけでした.『嘘と絶望の生命科学』(榎木英介著,文春新書)や『研究を
1酪農学園大学 農食環境学群 循環農学類
2 土壌の物理性 第137号 (2017)
深める5つの問い』(宮野公樹著,講談社ブルーバックス)などを読み,教員として反省すべき点や研究者としての思 考を磨くことが不足していると感じました.某国立研究開発法人に所属する知人研究者の自嘲的な冗談「所管の省庁 からの指示や資金があり,常に成果と論文が求められる.自販機になったような気分だ」が,心に突き刺さったのも ひとつのきっかけでした.
現状では筆者も学生も自販機になりたくてもなれません.筆者が所属する学類では卒論は必修でなく(選択科目),
学生も多様です.「馬を水辺に連れて行くことはできても,水を飲ませることはできない」(卒論は面白いよ!と学生 に説明しても卒論を履修しない)ことが多々あります.しかし,意欲と根気がある学生をしっかりと指導し,細々と でも現場的な実証研究を行っていくことは可能であり,これを大切にしたいと改めて考えるようになりました.幸い にも本学は農家子弟など農業現場に近い学生が多く,学力が高くなくとも,時としてユニークな研究が展開できるか もしれないという強みがあるのではないかと考えるようになりました.
多くの大学に共通することかもしれませんが,初年次教育からはじまり大学院教育の実質化,学外との連携(高大 連携や研究プロジェクト等),学内行政など多くの業務があります.このような境遇で,身体的な体力を維持し,研究 者·教育者としての基礎体力を高めながら,零細個人商店として細々とでも実証的卒論研究を積み重ね,場合によっ ては先端的研究にかかわることができ,さらには学問の本質を深めることができるのかもしれないという希望的な
「解」があるのかもしれません.
学会員のみなさまはそれぞれ多様な環境に置かれていることと存じます.本巻頭言は一学会員の境遇や雑感として ご笑覧いただけましたら幸いです.また,ご批判や叱咤激励をいただく機会がありましたら,大変ありがたいことと 心から思っております.
最後になりますが,編集委員長となり,すべての原稿によく目を通し大変勉強になっております.改めて土壌物理 とその周辺領域の奥深さや重要性を感じています.ただ,今期の編集委員会が4月から発足してから約半年間ですが,
「土壌の物理性」への投稿数が例年と比較して極めて少ない状況となっています.その原因は不明ですが危機感を持っ ております.特集などを編集委員会で企画して誌面を充実させたいと考えています.
しかし,学会誌の基本は学会員からの投稿です.「土壌の物理性」は論文·研究ノート·総説·解説·研究紹介·資 料·土粒子といった多くの投稿原稿区分を持っています.学会員のみなさまからの積極的な投稿をお願いします.ま た,本年10月の土壌物理学会のポスターセッションを拝見しましたが,投稿論文とすることができそうなポスター 発表がいくつかあると感じました.特に,若手のみなさんからの積極的な投稿で業績のひとつとしていただき,学会 誌を盛り上げていただけたらありがたいと思っております.
∼
圃場における土壌水分量と電気伝導率の連続観測のための 5TE センサーの簡易な原位置キャリブレーション
武藤由子
1· 窪田有真
2· 桐山直盛
3· 渡辺晋生
4Simple calibration methods for the application of the 5TE sensor to field monitoring of soil water content and electrical conductivity
Yoshiko MUTO1, Yuma KUBOTA2, Naomori KIRIYAMA3and Kunio WATANABE4
Abstract: Feasible calibration methods are required for the application of commercial sensors to field monitoring of soil water content and solution concentration. Simple in situ calibration methods for the 5TE sensor are proposed for the estimation of soil water content (θ) and 1 : 5 soil to water extract electrical conductivity (EC1:5). θ can be obtained from 5TE sensor readings with a correction fac- torC, which is available from several soil samples taken during monitoring. EC1:5 can be obtained from a linear function of soil pore water electrical conductivity (ECp).
ECp is derived from 5TE sensor readings using the Hil- horst equation, and the gradient and intercept of the linear function are also calculable from a small number of soil samples taken during monitoring. The proposed calibra- tion methods were applied to monitoring of θ andEC1:5
in a tomato field under drip fertigation, and the efficacy of the methods was confirmed by comparison with methods using conventional lab-based calibration.
Key Words : 5TE sensor, soil water content, electrical conductivity, on site monitoring, in situ calibration
1. はじめに
わが国では近年,畑地農業における灌水や,灌水と施 肥を同時に行う養液土耕栽培の導入が進んでいる.こう した作物の生育段階に応じた適切な肥培管理により,作 物の生育が安定し収穫量が増加すること,塩類集積が 防止されること等が期待される(吉田ら, 2011;坂口ら, 2013).灌水や施肥に関するより効果的な技術開発が求 められるなか,市販のセンサーを用いた体積含水率と土 壌溶液濃度の連続観測の需要が高まっている.体積含水
1Faculty of Agriculture, Iwate University, Ueda 3-18-8, Morioka 020- 8550, Japan. Corresponding author:武藤由子,岩手大学農学部.
2Hokkaido Government, Kita 3-jo, Nishi 6-chome, Chuo-ku, Sapporo 060-8588, Japan.
3Iwate Agricultural Research Center, 20-1, Narita, Kitakami 024-0003, Japan.
4Graduate School of Bioresources, Mie University, Kurima-machiya 1577, Tsu 514-8507, Japan.
2017年3月17日受稿 2017年6月28日受理
率の連続観測は,比較的安価な静電容量型土壌水分セン サーにより可能である.園芸学分野では,灌水技術と作 物の生育との関係を調べる研究に,それらのセンサーが 広く利用され始めている(安·池田, 2009;堀内ら, 2011;
吉田ら, 2011).静電容量型土壌水分センサーを用いて
現実に即した体積含水率を得るためには,対象となる土 壌各々について,センサーの出力値であるunprocessed dataや電圧値,土壌の比誘電率εとされる値のいずれか と体積含水率θ の関係式を導出する必要がある(例え
ば三石·溝口, 2014).しかし,推奨されるキャリブレー
ション法は室内試験に基づくものであり,乾燥から飽和 までの幅広い水分条件に対する複数個の土壌試料の作製 が必要で,関係式の導出作業は煩雑である.また,これ らの試料には撹乱土壌を用いることが多く,乾燥密度に 配慮しても必ずしも圃場の土壌構造や不均一性を反映し ない.このため,室内試験で導出した関係式は常に相応 の誤差を内包する.
一方,土壌溶液濃度については,溶液濃度と相関の高 い,4極センサーやTDRセンサーで測定される土壌の 見かけの電気伝導率ECaの連続観測が有用である.こ の際,ECaと土壌水の電気伝導率ECpや,農地で広く 測定されている1 : 5水浸出法による電気伝導率EC1:5 の関係式を導出する必要がある.静電容量型土壌水分セ ンサーには土壌水分量に関する測定値と併せてECaと 地温を同時に出力できる製品もあり,植物工場の施肥 管理に使用され始めている.土壌物理学分野では,小島 ら(2015)はキャベツ畑においてTEセンサー(5TEセ ンサー(Decagon Devies, Inc.)の旧タイプ)で測定した ECaをHilhorstモデル(Hilhorst, 2000)によりにECpに 換算した.また,宮本ら(2015)は,5TEセンサーで測 定した津波被災農地のECaからECpとEC1:5を推定し た.推定には,室内試験でECp-ECaおよびECp-EC1:5 の関係式を導出して用いている.
このように,農地における土壌の体積含水率と電気伝 導率の連続観測は技術的には可能である.今後,肥培管 理技術の開発·改良や,生産現場での農地管理における
4 土壌の物理性 第137号 (2017) センサー利用が広く普及するためには,簡単なキャリブ
レーション法や補正法の提案が重要であると考えられ る.体積含水率θ 観測のための補正法の提案について は,武藤ら(2015)が5TEセンサーについて,三石·溝口
(2015)がGS3センサー(Decagon Devies, Inc.)につい て,それぞれEm50データロガー(Decagon Devies, Inc.) との組み合わせで出力される θ の簡易補正法を提案し ている.また諸泉ら(2008)はADR法に基づくProbe PR1/6(Delta-T Devies, Ltd.)を用いて,坂井ら(2015) はFDR法に基づくDrill & Drop Probe(Sentek, Pty Ltd.) を用いて,それぞれ原位置キャリブレーションによるθ 観測を行っている.原位置キャリブレーションには,室 内試験によるキャリブレーションと比較して,試料のθ を任意に設定できないこと,関係式ε–θを導くための炉 乾法によるθ測定をε測定と同一の土壌試料で行えない こと等の欠点があるが,θの異なる複数個の試料作製が 不要なこと,キャリブレーション結果に圃場の土壌構造 特性が反映されるという利点がある.一方,電気伝導率 については,圃場における既存モデルを用いたECaから のECpの推定や,室内試験でのキャリブレーションによ るECaからEC1:5の推定が報告されているものの,特に 栽培分野·園芸学分野で需要の高いEC1:5について,農 業の現場で実践が容易な推定法はほとんど報告されてい ない.
そこで本研究では,5TEセンサーを用いて畑地土壌 のθ とEC1:5を連続観測するための,センサー利用者 にとって容易なキャリブレーション方法を提案すること を目的とした.ここで,キャリブレーション方法の検討 は,室内試験での試料の作製を伴わない原位置キャリブ レーションに絞った.θ の推定には,武藤ら(2015)が 室内試験により提案した,5TEセンサーの出力値とし て得られる体積含水率θToppに補正係数Cを乗じる方法 を用い,この補正係数Cを原位置キャリブレーション で求めることとした.なお,武藤ら(2015)はCを,室 内試験によって導出したε-θ に5TEセンサーの出力値 εを代入して得た体積含水率θlabとθTopp の比としてい る(C=θlab/θTopp).EC1:5 の推定は,5TEセンサーの 測定値ECaから直接推定する方法とECpの推定を介す る方法がある.前者の場合,ECa-EC1:5の関係式を導出 する必要があるが,その関係はθに強く依存し線形近似 できない(Gupta and Hanks, 1972)ことから,現場での 実用性に欠ける.後者の場合は,ECa-ECpとECp-EC1:5 の2つの関係式が必要となる.ECaからECpへの換算
はHilhorstモデルにより概ね可能であり,この際θの影
響も考慮される(武藤ら,2015,小島ら,2015).また,
ECp-EC1:5関係はθにあまり依存しないため,ある程度 の誤差を許容すれば直線近似できることが室内試験で示 されている(宮本ら,2015).そこで,ここではHillhorst モデルによる圃場のECp(ECp Hilhorst)推定の妥当性を 先ずは確認し,次いでECp Hilhorst-EC1:5の関係式を原位 置キャリブレーションで求めることとした.
これらのキャリブレーションに基づく簡易推定法の妥
当性の検討は,室内試験でキャリブレーションした推定 式や圃場における実測値との比較により行った.
2. 方法
2.1原位置キャリブレーションと圃場条件
5TEセンサーを用いたθとEC1:5の観測と原位置キャ リブレーションは,岩手県農業研究センター(岩手県北 上市)のトマトの養液土耕栽培を行うパイプハウスにお いて,その栽培期間(2015年5 月18日 定植)に行っ た.試験区の土壌は非アロフェン質黒ボク土で,土性は シルト質埴土,土粒子密度は2.65 Mg m−3,観測開始時 に測定した乾燥密度は0.80 Mg m−3である.トマトの品 種は「桃太郎サニ−」で,栽植様式は畝幅180 cm,株間
45 cmの2条植えとし,地表面を黒ポリマルチで被覆し
た.試験区は1区画13.5 m2で,施肥条件の異なる4試 験区を設置した(Table 1).試験区1·2と試験区3·4間 では可給態窒素量が異なり,試験区1·3と試験区2·4 では化成肥料の施用量が異なった.可給態窒素量の違い は,事前に施用された有機質肥料の量に由来する.可給 態窒素量は,保温静置培養法(30◦C 4週間)で測定し,
測定には各試験区の表層(0∼20 cm)から採取した土壌 を40◦Cで乾燥後,その2 mmフルイ通過分を用いた.
2·4区の化成肥料の施用量は,岩手県の施肥基準で,基 肥は粒状肥料,追肥は液体肥料である.なお,灌水は灌 水チューブによるマルチ下散水とし,手動で行った.灌 水始点は深さ20 cmのpF(試験区4に設置したテンシ オメータ(大起理化工業DIK-8333)で測定)が2.3に達 した時点を目安とした.1回の灌水量は1株当たり1∼ 2 Lで,全試験区で同量とした.灌水頻度は,毎日午前 中に1回を基本とし天候に応じて調整した.追肥は灌水 同時施肥で,第3果房開花期から各段果房開花毎に,窒 素成分で15 kg ha−1を計12回(計180 kg ha−1)施用し た.この1回分の液肥が連続した3∼4回分の灌水に分 けて施用された.
5TEセンサーは全長10 cm(回路部が約5 cm)のセ ンサーで,センサー先端より3.5 cmにEC測定用の電 極対を持つ.トマト定植後の2015年5月21日に5TE センサーを地表面と垂直に株間の中央に埋設した.こ の際,5TEセンサーの設置深を,回路部分とケーブル の繋目が地表面より10 cm深となるようにした.従っ て,測定値には10∼20 cm深の平均的な体積含水率と
Table 1 試験区の施肥条件.
Manuring condition of experimental plot.
試験区 可給態窒素
(mgN kg−1乾土 )
化成肥料 (kgN ha−1) 基肥 追肥
1区
47 0 0
2区 120 180
3区
100 0 0
4区 120 180
16.5 cm深の電気伝導率が反映される.また,地温の測
定位置は10 ∼14 cm 深である.測定にはEm50デー
タロガーを用い,測定間隔は1時間とした.5TEセン サーとEm50データロガーを組み合わせて使用した場 合,水分量に関する出力値としてε の50倍とされる 値が得られる.また,Topp 式(θTopp=−5.3×10−2+ 2.92×10−2ε−5.50×10−4ε2+4.3×10−6ε3, Topp et al., 1980)でεからθを算出した値θToppも出力される.電 気伝導率は25◦Cの値に補正されたECaが出力される
(Decagon Devices, 2014).記録されたデータを,フィー ルドルーター(X-Ability)を介して24時間間隔でイン ターネットサーバー上に保存した.観測は栽培を終了す る直前の2015年11月5日まで行った.
5月21日,8月5日,10月8日,11月5日に各試験 区の15 cm深から100 cm3の採土円筒を用いて不撹乱 土壌を,その近傍で撹乱土壌をそれぞれ採取した(4試 験区×4回,合計 不撹乱土壌16個,撹乱土壌16個).
採取土壌のθは,不撹乱土壌で炉乾法により測定した.
採取土壌のEC1:5は,乾燥土10 g相当の撹乱土壌と50 gの蒸留水を混合した懸濁液の電気伝導率とし,電気伝
導率計(HORIBA B-771)で測定した.原位置キャリブ
レーションには,これら採取土壌のθ とEC1:5,土壌採 取時の5TEセンサーの出力値εとθTopp,ECaを用いた.
キャリブレーションに用いるECpはHilhorstモデルに よりECaから換算した(式(1)).
ECp Hilhorst=ECa× εw
ε−ε0
(1) ここで,εwは水の 比誘電率で80.3(20◦C)とした.今 回の圃場で観測された土壌温度は15◦C∼30◦Cであっ た.水の比誘電率には温度依存性があるためこの温度範 囲ではεwに±4 %の差違が生じるが,ここではこれを 無視できると見なした.ε0は乾燥土壌の比誘電率を表す 補正値で(Decagon Devices, 2016),ハウスの試験区外 の一ヶ所(表層0∼20 cm)から採取した土壌を乾燥し 5TEセンサーで測定したところ2.57だった.また,比 較のため採取土壌(EC1:5を測定した撹乱土壌)から遠
心抽出(pF 4.2相当)した土壌水の電気伝導率も測定し,
これを本研究ではECpと見なすこととした.
2.2 室内試験
試験区の土壌に対するε–θ とECp-EC1:5 の関係式を 導出するための室内試験を,武藤ら(2015)の方法に準 じて行った.その際,試料にはハウスの試験区外の一ヶ 所(表層0∼20 cm)から採取した土壌の2 mmフルイ 通過分を用いた.試料の乾燥密度は,試験区の乾燥密度
に従い0.80 Mg m−3とした.試料の水分調整には蒸留
水と濃度が0.05,0.1,0.15 mol L−1(電気伝導率0.67, 1.27,1.855 S m−1)のKCl溶液を用いた.体積含水率 と電気伝導率が異なる試料を作製し,5TEセンサーと Em50データロガーでεとECaを測定した.また,遠心 分離機で抽出した土壌水のECpと土壌懸濁液のEC1:5の 測定も行った.
3. 結果と考察
3.1補正係数Cの決定
Fig. 1にεとθ の関係を示す.図中◆印は各試験区 に設置した5TEセンサーで原位置測定した ε とその 際に採取した不撹乱土壌について炉乾法で測定した体 積含水率θmesの関係,その他のマーカーは室内試験に おいて蒸留水(⃝印)やKCl溶液(×,+,△印)で 調整した試料のε と体積含水率θlabの関係である.こ れらの値はよく一致した.図中の点線はTopp 式,実 線(θlabm3m−3)は室内試験の測定値の内,蒸留水で 水分調整を行った結果を最小二乗法で三次式に近似し たものである(θlab=−2.8×10−2+3.8×10−2ε−6.5× 10−4ε2+2.4×10−6ε3).Topp式は,θmesとθlabを過少 評価した.また,θlab とθTopp の差はθ の増加に従い 大きくなり,θlab=0.56で最大となった.θmesとθTopp の比(θmes/θTopp)として求められるθTopp の補正係数 Cは,各試験区で得られた4つの平均値が試験区1で 1.50,2区で1.43,3区で1.41,4区で1.52であった.
試験区間での差が小さかったことから,全ての試験区の Cをこれらの平均値1.46で与えられるとした.図には,
θToppの補正値(C×θTopp=1.46θTopp)を破線で示した.
C×θTopp は採取土壌の測定値および室内試験の結果と ほぼ一致した.すなわち,武藤ら(2015)のθ の簡易 補正法は,原位置キャリブレーションにも有効であり,
C×θToppで圃場の体積含水率を推定することが概ね可能 といえる.ただし,C×θToppはθ>0.5で体積含水率を 過大評価するため,灌水始点など低い体積含水率の判定 には有用であるが,飽和近くの高い体積含水率を判定し たい場合には留意が必要である.
0 0.2 0.4 0.6 0.8
0 10 20 30 40 50
Volumetric water content,(m3m-3)
Relative Permitivity, Measured 0 molL ¹ 0.05 molL ¹ 0.1 molL ¹ 0.15 molL ¹ Calibrated Topp Corrected KCl 0 mol L-1
0.05 mol L-1 0.1 mol L-1 0.15 mol L-1 Measured (field)
(lab) θlab = -2.8 × 10-2 +3.8 × 10-2ε
-6.5 × 10-4ε2 + 2.4 × 10-6ε3 C × θ
lab
θTopp
Fig. 1 5TEセンサーで測定した比誘電率と炉乾法による
体積含水率の関係.
Relationship between relative permittivity, ε measured by 5TE and volumetric water content, θ obtained by oven method. Lines indicate the calibrated,θlab, Topp’s equations, θToppand corrected,C×θTopp.
6 土壌の物理性 第137号 (2017) 室内試験によるキャリブレーションで導出した試料の
θlabや原位置キャリブレーションで得られたC×θTopp は,KCl溶液で水分調整した試料のε-θlabの関係とも 概ね一致した.ただし,KCl濃度が0.15 mol L−1(1.85 S m−1)と高い溶液で水分調整をした試料については θ>0.5においてεが他の試料に比べ高くなった.5TE センサーで測定されるεの電気伝導率依存性はこれまで にも報告されている(安中·花山, 2015).εが影響を受け た2点のECpは0.89と1.07 S m−1,EC1:5は0.16と0.19 S m−1であった.黒ボク土では,EC1:5が0.129 S m−1 で作物への生育阻害が報告されている(土壌環境分析法 編集委員会, 1997).今回εの電気伝導率依存が確認され たEC1:5は,この値よりも若干大きいが,施肥の直後に 局所的に起こる可能性があると考えられる.このように 電気伝導率が高い場合,C×θToppは実際の圃場の体積含 水率を過大評価する.よって,εへの電気伝導率の影響 を評価するためにも,電気伝導率を同時に観測すること の重要性は高いといえる.
3.2 1:5水浸出法による電気伝導率EC1:51:51:5の推定式 試料のECp-EC1:5関係をFig. 2に示す.◆印が,試 験区からの土壌採取時の 5TEセンサーの出力値 ECa S m−1 から式(1)で求めた ECp Hilhorst S m−1と,採 取土壌で測定した EC1:5 の関係である.これを,最小 二乗法で一次式に近似してECp Hilhorst-EC1:5 の関係式
(EC1:5=0.098ECp Hilhorst+0.007 R2=0.647)を求め た(太い実線).図には,同じ採取土壌から抽出した土壌 水で測定したECp extract(field)S m−1(測定値は×印,近 似式は破線)と,室内試験で任意の濃度のKCl溶液と混 合した土壌から抽出した土壌水で測定したECp extract(lab)
S m−1(測定値は⃝印,近似式は細い実線)も併せて 示した.なお,室内実験の測定値は,θが0.3と0.4の 条件のものを用いた.これは,試験区からの採取土壌 のθ が0.30∼0.45(平均0.35)であったためである.
ECp extract(field)-EC1:5直線とECp extract(lab)-EC1:5直線は,
いずれも傾きがおよそ0.1で切片も同等であり,決定係 数は0.9以上だった.これに対し,ECp Hilhorst-EC1:5直 線の決定係数が0.647と低かったのは,ECp extract(field)>
0.15 S m−1 でのECp HilhorstとECp extract(field) の差が大 きいためである.この要因として,5TEセンサーによ るECaの測定精度,ECp HilhorstをECaから推定した際 の誤差,原位置キャリブレーションではECp Hilhorstと
ECp extract(field)を同一の試料から得られないことの影響
が考えられる.今回の原位置キャリブレーションでは,
ECp Hilhorst が0.2 S m−1以上の測定値は1 点しか得ら
れなかったが,ECp Hilhorst-EC1:5直線はECp extract(field)- EC1:5直線およびECp extract(lab)-EC1:5直線とよく一致し た.しかし,ECp Hilhorst>0.2 S m−1での測定値によっ
ては,ECp Hilhorst-EC1:5直線が大きく異なった可能性も
あるため,ECp Hilhorst>0.2 S m−1での測定点を増やす 必要があると考えられる.以上の結果,試料を採取する タイミングの選定に課題が残るものの,原位置キャリブ レーションによるECp-EC1:5 の関係式の導出が可能で
あったといえる.
3.3体積含水率の観測結果
ハウストマト栽培期間におけるθの観測結果をFig. 3 に示す(写真はトマトの生育状況).図は上から順に,5TE センサーのθの出力値(θTopp),原位置キャリブレーショ ンによる5TEセンサー出力値の補正値(C×θTopp),室 内試験で導出したε–θ の三次式を5TEセンサーのεの 出力値に適用して求めたθlabである.図中の◇印は,炉 乾法で求めた各試験区からの採取土壌のθ の実測値で,
3.1節(Fig. 1)でCの算出に用いたθmesである.θTopp は,全ての試験区で測定期間の全体においてθmesを下 回った(Fig. 3上段).これは,Fig. 1に示したように Topp式が試験区の土壌のε-θ関係を正しく表していな いためである.また,Fig. 1でθTopp とθlabの差はθに より異なった.こうしたθの差違は,例えばθToppを用 いて消費水分量を算出した場合に実際の消費水分量を 過小評価する原因となる.今回の場合は,θmes/θToppが 1.46であったことから7割程度に過少評価すると考えら れる.
原位置キャリブレーションによるC×θTopp(Fig. 3中 段)は,室内試験に基づくθlab(Fig. 3下段)と概ね同様の 値を推移し,θmesとよく一致した.C×θToppはθ>0.5 での過大評価が懸念されたが,θlabの推移から,今回の 各試験区ではθが0.5以下に保たれたと考えられ,問題 とならなかった.これは,灌水後の速やかな排水により 高含水率状態が継続しなかったためと考えられる.
試験区2·4 では,試験区1·3 に比べて灌水時のθ の振れ幅が大きかった.これは,3つの推定方法の全て
0 0.02 0.04 0.06
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 EC1:5(S m-1)
Pore-water electrical conductivity, ECp (S m-1) ECp_Hilhorst
ECp_extract (field)
ECp_extract (lab) EC1:5 = 0.098 ECp_Hilhorst + 0.007 R2 = 0.647
EC1:5 = 0.098 ECp_extract (lab) + 0.004 R2 = 0.959
EC1:5
= 0.090 ECp_extract (field) + 0.007 R2 = 0.920
Fig. 2 土壌水の電気伝導率と1 : 5水浸出法による電
気伝導率の関係.ECp HilhorstはHilhorstモデルを用いて ECaからの推定した土壌水の電気伝導率,ECp extractは 遠心抽出した土壌水の電気伝導率.
Relationship between pore-water electrical conductiv- ity, ECp and electrical conductivity of 1 : 5 soil-water suspension,EC1:5. (R2is the coefficient of determination ) Calculated fromECaby Hilhorst model,ECp Hilhorst, elec- trical conductivity of the centrifugal extract of soil water, ECp extract.
0.1 0.3 0.5 0.7
May 21 11:29 June 12 12:11 Aug 30 11:12. Nov. 2 12:16
0.1 0.3 0.5
0.7 C θTopp
0.1 0.3 0.5 0.7
5/21 6/20 7/20 8/19 9/18 10/18 θlab
0.1 0.3 0.5 0.7
0.1 0.3 0.5 0.7
VWC, θ ( m3 m-3
P l o t 1 P l o t 2 P l o t 1 P l o t 2
θTopp 5TE
measured
0.1 0.3 0.5 0.7
C θTopp
θlab θTopp
5/21 6/20 7/20 8/19 9/18 10/18 P l o t 1
P l o t 2 P l o t 1 P l o t 2
5TE measured ) VWC, θ ( m3 m-3) VWC, θ ( m3 m-3)
Fig. 3 ハウストマト栽培期間の体積含水率と圃場の状態.θToppはTopp式による5TEの出力値,C×θToppは原 位置キャリブレーションによるθToppの補正値,θlabは室内試験による推定値.
Volumetric water content during tomato cropping and field images. 5TE output value by Topp s equations,θTopp, correction value ofθTopp,C×θTopp, estimated value from laboratory test,θlab.
で確認された.試験区2·4は灌水に液肥が混入してい るが,その濃度は後述のように ε測定に影響するほど ではなかった.よって,試験区2·4,試験区1·3の違 いは,センサーの設置状況やセンサー付近の土壌構造,
灌水の供給地点とセンサーの位置関係といった条件の違 いによるものと考えられる.実際の農地では様々な制約 もあり全てに配慮することは難しいが,土壌構造や水分 移動に影響を与えないようセンサーを設置する,複数の センサーを設置し相互確認するなど配慮することが望ま しい.
各試験区での灌水量は同じであったが,試験区2·4の θは試験区1·3区よりも低く推移した.トマト一株当た りの葉の合計乾燥重量(6株の平均)は,1区で152 g,2 区で279 g,3区で225 g,4区で276 gで,化成肥料が 施用された2区と4区で草勢が強かった.よって,2区 と4区では蒸散量が多かったために,θ が低く推移した と考えられる.以上の結果,5TEセンサーの原位置キャ リブレーションによる簡易利用法が,作物の生育状況に
対応した土壌水分量の推移の詳細な観測に有効であるこ とが確認できた.
3.4電気伝導率EC1:51:51:5の観測結果
電気伝導率の推定結果をFig. 4に示す.上から順に,
5TEセンサーの測定値ECa,ECaを用いてHilhorstモデ ルで推定したECp Hilhorst,ECp HilhorstをECp Hilhorst-EC1:5 の近似式(Fig. 2の太い実線)で換算したEC1:5である.
ECp Hilhorstの図には,液肥タンクを灌水システムに設置
した日時を×印で示した.すなわち,×印以後3∼4回 の灌水に液肥が混入している.また,その他のマーカー は採取土壌の抽出液のECp extract(field)と採取土壌懸濁液 のEC1:5で,後者は3.2節(Fig. 2)の原位置キャリブ レーションに用いた値に等しい.
ECaはθの変化と肥料成分濃度の影響を受けて変化す る(Fig. 4上段).これをECp Hilhorstに換算することで,
θ の影響を除外し土中水の電気伝導率の推移を把握で きる(Fig. 4中段).採取土壌で実測したECp extract(field) とEC1:5 より,試験区の電気伝導率は,初め基肥が施
8 土壌の物理性 第137号 (2017)
0 0.02 0.04 0.06 0.08
ECa (S m-1
P l o t 1 P l o t 2
0 0.2 0.4 0.6
P l o t 1 P l o t 2 P l o t 1 P l o t 2
5TE measured ECp_Hilhorst
ECp_extract(field)
P l o t 3 P l o t 4 P l o t 3 P l o t 4
0 0.02 0.04 0.06 0.08
5/21 6/20 7/20 8/19 9/18 10/18
0
P l o t 3 P l o t 4 P l o t 3 P l o t 4 ECp (S m-1 EC1:5 (S m-1
P l o t 1 P l o t 2 P l o t 1 P l o t 2
5TE measured EC1:5 = 0.098EC
p_Hilhorst + 0.007
5/21 6/20 7/20 8/19 9/18 10/18 0.02
0.04 0.06 0.08
0.2 0.4 0.6
0.02 0.04 0.06 0.08
P l o t 3 P l o t 4
5TE measured ECp_Hilhorst
ECp_extract(field)
5TE measured
)))
Fig. 4 ハウストマト栽培期間の電気伝導率.ECaは5TEで測定された土壌の見かけの電気伝導率,ECp Hilhorst
はHilhorstモデルを用いてECaからの推定した土壌水の電気伝導率,EC1:5は原位置キャリブレーションにより
ECaから換算した1 : 5水浸出法による電気伝導率.マーカーは採取土壌で測定した電気伝導率.
Electrical conductivity during tomato cropping. Bulk electrical conductivity measured by 5TE,ECa, pore-water elec- trical conductivity calculated by Hilhorst model, ECp Hilhorst, electrical conductivity of 1 : 5 soil-water suspension estimated fromECa,EC1:5. The markers indicate each electrical conductivity of the sample soils.
用された2区と4 区で高く,8月5日には低下して試 験区間の差が小さくなったことがわかる.ECp Hilhorstの 推移は実測値の推移と概ね一致した.ECp Hilhorstから推 定したEC1:5の推移も,実測値の推移と概ね一致した
(Fig. 4下段).このことから,原位置キャリブレーショ
ンによりEC1:5 の連続観測が可能と考えられる.ただ
し,ECp Hilhorstを介したEC1:5 の推定精度の向上には,
ECp Hilhorst>0.2 S m−1での測定値を増やす必要が示唆
された(3.2節).本観測においては,試験区2·4の5月 中が該当する(Fig. 4中段).しかし,この期間は基肥の 効果で電気伝導率分布が不均一な可能性が高く,この際 はこうした電気伝導率の土中分布への配慮も必要と考え られる.
4. おわりに
原位置キャリブレーションによる,5TEセンサーの簡 便なθの補正法とEC1:5の推定法を提案した.θの補正 法は,原位置キャリブレーションで求めた補正係数Cを 出力値θToppに乗じるものである.補正係数Cは,観測 期間に数回,圃場に設置した5TEセンサーの近くで採取 した土壌の炉乾法で求めたθmesと,土壌採取時の出力
値θToppとの比(θmes/θTopp)とした.本法は,飽和近く のθ推定に課題が残るが,室内試験に基づく推定法に遜 色なく圃場のθ変化を詳細に捉えることができ,灌水管 理の指標に有用と考えられる.一方,EC1:5の推定法は,
採取土壌で測定したEC1:5と,土壌採取時の出力値ECa からHilhorstモデル(式(1))で得たECp Hilhorstとの関 係を直線近似する方法である.本法で推定したEC1:5も 実測値とよく一致した.ただし,より良好な推定式の導 出にはECp Hilhorst>0.2 S m−1でのサンプリングの頻度 を増やす必要があると考えられた.このように,本論で 提案したキャリブレーション手法は,容易かつ省力であ るため圃場での実践が可能であり,5TEセンサーの出力 値θTopp,ε,ECaを用いた,現場で求められる精度の土 壌水分量と電気伝導率の連続観測に有用である.
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要 旨
市販のセンサーを用いた土壌水分量と土壌溶液濃度の連続観測の需要が高まっており,農業の現場で実 践可能な簡単なキャリブレーション法や補正法の提案が求められている.そこで本研究では,5TEセ ンサーを用いて畑地のθとEC1:5を観測するための原位置キャリブレーションによる簡便なθ の補正 法とEC1:5の推定法を提案した.その結果,θは数回の土壌採取で5TEセンサーの出力値を補正でき ることを示した.EC1:5は,採取土壌で測定したEC1:5 と,5TEセンサーの土壌の電気伝導率ECaを
Hilhorstモデルで換算した土壌水の電気伝導率ECpとの直線関係から推定できた.本法に基づき,トマ
トを養液土耕栽培するハウスでθとEC1:5を連続観測した結果,室内試験に基づく推定法に遜色なくθ とEC1:5の推移を詳細に捉えることができた.
キーワード:5TEセンサー,土壌水分量,電気伝導率,連続観測,原位置キャリブレーション