厚生労働科学研究費補助金肝炎等克服緊急対策研究事業(肝炎分野)
分担研究報告書
Telaprevir三剤併用療法におけるPEG/RBV延長投与の有用性 研究分担者 豊田成司 札幌厚生病院 院長
[ 要旨 ]
Telaprevir 三剤併用療法において、患者背景や投与開始後の抗ウイルス効果などから再燃の可能性
が高いと判断した11例に12週あるいは24週のPEG/RBV延長投与をおこなった。その結果11例全 例がSVR12以上となり、IL28B minor alleleかつnon RVRであった3例でもSVRが得られた。これ らのことより、PEG/RBV延長投与は前治療無効例やIL28B minor allele症例でのSVR率向上に有用 であることが示唆された。
A. 研究目的
C 型 肝 炎 の 抗 ウ イ ル ス 療 法 は 、 PEG-IFN(PEG)お よ び Ribavirin(RBV)に
protease 阻害剤を加えた三剤併用療法の導入
によりその効果が飛躍的に向上した。また、
初回治療例および前治療再燃例では高率に SVR が得られる一方、前治療無効例および IL28B Genotypeがminor alleleの症例では その効果が低下することも明らかとなった。
そこで、三剤併用療法後の再燃例を減少させ ることを目的として PEG/RBV 延長投与の効 果について検討した。
B. 研究方法
PEG/RBV/Telaprevir 三剤併用療法を最長 48週まで延長投与した。なお、延長例は患者 背景や三剤併用中の抗ウイルス効果などから 再燃の可能性が高いと判断した症例を選択し、
当科での三剤併用療法24週投与例の抗ウイル ス効果と比較して検討した。
C. 研究結果
延長投与した11例の背景は、男性6例、女 性5例であり初回治療例2例、前治療再燃例4 例、前治療無効例3 例であり 2例は他院での
治療のため詳細な抗ウイルス効果は不明であ った。Core70 番変異は 6 例で認め IL28B Genotype(rs 80099917)はTT 5例、TG/GG 6 例であったが、TTの1例はDuke SNPでは CT でありtriple9との乖離のある症例であっ た。また、Telaprevir の投与量は1,000mg 1 例、1,500mg 4例、2,250mg 6例であった(表
―1)。
これらの症例にPEG/RBVを2例に12週、
9 例に 24 週追加して投与した。RNA の陰性 化時期は2週1例、4週4例、6週3例、8週 3 例と non RVR 例を 6 例含んでいたが、11 例全例が SVR12以上を達成した。また、症例 10 は IL28B TT,Core70/91 double wild,Intron/RBV24 週投与後再燃と良好な背 景 因 子 を 有 し て い た に も か か わ ら ず Simeprevir三剤併用療法でも再燃した症例で あったが、今回の Telaprevir三剤延長投与で はSVR12が得られていた(図―1、図―2)。
D. 考察
protease 阻害剤を加えた三剤併用療法の抗 ウイルス効果は極めて強力であり、今後は前 治療無効例およびIL28B minor allele症例の SVR 率をいかに向上させるかが課題となって
いる。
Telaprevir第三相試験の際のTG/GG 44例 の検討では半数の22例がnon SVRとなった が 、 そ の 詳 細 を み る と NVR,Viral Breakthrough はそれぞれ2 例と 3例の 5例 のみで残りの17 例は TVRであり TG/GGで あっても再燃例が大半を占めていた1)。また、
この第三相試験全体でTelaprevir12週完遂し たにもかかわらず再燃した症例を19例認めた が、これらの症例での再燃時のウイルス変異 をclonal sequence法でみると、wild typeの ま ま 再 燃 し た も の は 5 例 の み で あ り V36A/M/C and/or T54Aの耐性変異が10例、
A156S/Vの耐性変異が4例と19例中14例で は再燃時Telaprevir耐性ウイルスを主体に再 増殖していた。一方、Telaprevir 第三相試験 に先行してTelaprevir単剤投与の臨床試験が 行われた2)が、当院からも5例が本試験に参 加した。このうちviral breakthroughとなっ た4 例に間隔を空けずにPEG/RBVを追加投 与したがいずれもSVRとなり、Telaprevir耐 性変異株に対する PEG/RBV の抗ウイルス効 果は良好であると推察された3)。これらのこと を踏まえて再燃の可能性が高いと判断した Telaprevir三剤併用例11例にPEG/RBVを延 長投与した。その成績は11例全例SVR12以上 となり、Simeprevir三剤併用臨床試験でRNA が 2 週で陰性となったにもかかわらず再燃し た症例でもこの延長投与により SVR12を達成 した。
当科での効果判定可能なTelaprevir三剤併 用24週投与例79例のうちnon RVR例は13 例であったが、これらでSVRとなったのは5 例のみであった。うち TTの 5 例では 3例で SVR が得られたが、TG/GG では8 例中 2例 (25%)にしか SVR が得られていない。今回の 延長投与例のうちTG/GGかつnon RVRの3 例 が い ず れ も SVR と な っ た こ と か ら も
PEG/RBV 延長投与の再燃抑制効果が示唆さ
れた(図―3)。
E. 結論
Telaprevir 三剤併用療法において、その患 者背景や治療開始後の抗ウイルス効果などか ら判断して PEG/RBV を延長投与することは 効果向上に有用と考えられる。
「文献」
1) Chayama K. Nelson HC. Abe H. et al. : IL28B but not IPTA polymorphism is predictive of response to pegylated
interferon ,ribavirin and telaprevir triple therapy in patients with Genotype 1 hepatitis C. JID 204;84-93,2011 2) Toyota J.Ozeki I.Karino Y. et al :
Virological response and safety of 24-week telaprevir alone in Japanese patients infected with hepatitis C virus subtype 1b. J Viral Hep.
20;167-173,2013
3) Ozeki I.Akaike J.Karino Y. et al : Antiviral effects of peginterferon alpha-2b and ribavirin following 24-week monotherapy of telaprevir in Japanese hepatitis C patients. J Gastroenterol. 46;929-937 2011