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360°揺れる椅子使用したオフィス業務の評価 Evaluation of Office Work Using 360

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Academic year: 2021

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360°揺れる椅子使用したオフィス業務の評価

Evaluation of Office Work Using 360° Swaying Chairs

1W153088-2 田中 知里 指導教員 河合 隆史 教授

TANAKA Chisato Prof. KAWAI Takashi

概要: 近年、働く環境の見直しに伴い、従来とは異なる新しいオフィス家具などの製品が登場している。本研究では、

その中で特に椅子に着目し、さらに360°揺れる椅子に焦点を当て、実際にオフィス業務で椅子を使用したときの影響に ついて調査・検討することを目的とした。具体的には実験参加者に対して、研究対象の椅子に1か月間着座してもらい、

使用前後にWebによる主観評価アンケートを行った。360°揺れる椅子を使用していた実験参加者には3か月後にも再度 アンケートをとり、継続使用の有無によって異なる質問内容のアンケートを実施した。その結果、360°揺れることで生 産性向上の可能性が得られ、座り心地の感じ方や業務内容の違いによって、椅子への適性の差異が見られることが示唆さ れた。

キーワード:揺れる椅子、オフィス、主観評価、労働生産性、身体的負担

Keywords: swaying chair, office, subjective evaluation, labor productivity, physical burdens

1. はじめに

近年、様々な環境において機械化・自動化が進み、世界的 に座位行動の時間が増加している。そのなかでも日本は、座 位時間が長いとされている[1]。座位時間の増加により、腰痛や 肩こりなどの身体的負担の増加、死亡リスクの増加といった 弊害を伴い、オフィス環境における労働生産性が低下するこ とが懸念される。オフィス環境での従業員の健康の保持増進 のために有効とされる行動の一つとして、身体を動かすこと があげられている[2]。そこで、近頃は各家具会社によって健康 維持のための机や椅子が販売されている。本研究の対象とな る椅子は、360°揺れるため、座りながら身体を動かすことが 可能となることから、身体的負担の緩和、労働生産性の向上 が見込めると考え、それを実験的に明らかにすることを研究 目的とした。具体的には、実際の職場のオフィス業務に椅子 を導入し、仮説と効果について実験参加者のアンケート等を 基に主観的に生産性への影響や要因の検討を行った。また、

本研究で使用した椅子について、3か月後にもアンケートを行 い、椅子に対する適性を測った。

2. 実験概要 2.1 実験条件

機能の異なる椅子3種類を実験条件とした。機能の違いは

椅子が360°揺れるか否かとし、それぞれの椅子のイメージ写

真と機能の有無を表1に表す。椅子AとBは背もたれの形状 の違いはあるが、本実験では360°揺れるか否かで判断するた め、同一条件として考える。

2.2 実験タスク

実験参加者21名にオフィスで使用していた椅子を、表1に 示した椅子のいずれかに変更し、椅子A、Bの使用者16名、

椅子Cの使用者を5名として約1か月間業務に従事すること を求めた。ただし、身体に痛みなどが生じた場合には、実験 を中断することを前提とした。また、1か月経過後に椅子変更 の希望を示さなかった場合には、継続して椅子を使用した状 態で、業務に従事してもらった。

2.3 評価指標

本実験の評価指標として客観指標には、実験参加者の座位 姿勢を横から静止画像を撮影し、姿勢の変化を確認した。主 観指標には、以下の3種類のアンケートを使用した。

(1) パフォーマンスアンケート

世界保健機関にある健康と労働パフォーマンスに関する質 問紙(短縮版)日本語版[3]である。

(2) 生産性に関わるアンケート

KJ法により作成した、生産性に関わる要因を調査するため の主観評価アンケートである。本研究では、37個の質問項目

(2)

(うち一つは自由記述)を設定し、実験参加者にはそれぞれ の質問に対して7段階での回答を求めた。

(3) 3か月後アンケート

椅子A、Bを実験条件とした実験参加者に対するアンケート である。実験が開始されてから約3か月が経過した後、椅子A、

Bの継続使用の有無によって、継続理由または継続しなかった 理由など異なる質問内容を実施した。

2.4実験参加者

某IT企業に勤める心身ともに健康な男性12名、女性9名、

平均年齢35.4±5.37歳を実験参加者とした。

3. 結果

3.1静止画像による姿勢について

実験参加者ごとに、実験前と約1か月後に撮影した静止画 像をもとに姿勢を比較した。椅子A、Bを使用した実験参加者 16名のうち、5名が実験後に骨盤が立つようになり、5名中4 名に座面の前傾が確認された。

チェアB(左:実験前、右:実験後)

図1 実験参加者の姿勢の変化の一例 3.2パフォーマンスアンケート

実験条件ごとに、実験参加者の実験前・実験後の相対的プ レゼンティーズム、およびその変化率を(実験後-実験前)/

実験前で算出した。その結果、相対的プレゼンティーズムに 関して、椅子A、Bでは17%改善された一方で、椅子Cでは 3%悪化した。

3.3生産性に関わるアンケート

アンケート結果により、椅子A、Bを実験条件とした実験参 加者は、椅子Cを実験条件とした実験参加者に比べて、肩こ りや足の冷え、足のむくみの症状を感じていたことがわかっ た。また、「頭が重い」、「首の疲れ」、「食事に気を使っ ている」などのアンケート項目が椅子A、Bを使用したことで 改善された傾向がみられた。

3.6 3か月後アンケート

3か月後アンケートの各質問項目で、回答が得られた13名 について、回答結果の集計を行った。はじめに、椅子A、Bを 継続して使用している9名の実験参加者に着目すると、椅子A、

Bに継続して座っている理由については、心地よさや身体面へ の良い影響といったプラスな意見とともに、試しに使用して いるという意見も 2 名確認された。また、着座中の身体の動 きについては、考える際に動くと回答した実験参加者が 2 名 確認された。さらに、姿勢が良くなったと回答した実験参加 者のうち、3名については、骨盤が立つようになり、1名は後 傾姿勢をとることで背もたれを使用するようになっていた。

続いて、現在椅子A、Bを使用していない4名の実験参加者に 着目すると、4名全員が元の椅子に戻ってよかったと回答した

一方で、また揺れたいと思う時があると回答したことがわか った。

3.7 3か月後アンケートと生産性に関わるアンケートの関係 3カ月後アンケートの結果から、椅子A、Bの使用には適性 の差異があることがわかった。回答が得られた13名について、

適性の差異によって実験参加者を分類し、グループごとに実 験前・実験後の生産性に関わるアンケートの回答結果を比較 した。その際、実験参加者の分類には図7に示した方法を使 用した。これを用いて、グループごとに生産性に関わるアン ケートへの回答結果を箱ひげ図として表した。その結果、「椅 子の座り心地がいい」の項目において、適性ありのグループ では、実験後に5%水準で評点が有意に高くなっているのに対 し、なしのグループでは、実験後に5%水準で評点が有意に低 くなっていることがわかった。

図7 椅子A、Bへの適性の差異による実験参加者の分類方法

図8椅子の座り心地がいい

4. まとめ

本研究では、実際のオフィス業務に360°揺れる椅子を 導入し、評価を行った。その結果、360°揺れることで、

生産性の向上が認められた一方、座り心地の感じ方や業 務内容の違いによって、その椅子への適性の差異が見ら れた。

5. 参考文献

[1] 岡 浩一郎 他: 座位行動の科学-行動疫学の枠組みの応 用-; 日建教誌,第21巻,第2号(2013).

[2]健康経営オフィスレポート

http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthca re/downloadfiles/kenkokeieioffice_report.pdf (2018-07-16閲 覧).

[3] 世界保健機関 健康と労働パフォーマンスに関する質問 紙(短縮版)日本語版 (2013).

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