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非財務情報の開示とその評価

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(1)

非財務情報の開示とその評価

非財務情報の開示とその評価

1. は じめに

2 .

非財務情報の意義

3.

非財務情報の開示状況 4.非財務情報の評価 と課題

5.

おわ りに

大田博樹

1. はじめに

1 9 9 9

年、社 会責任投 資

( SRI:S o c i a lRe s p o ns i b l el nve s t me n t )

の一つで あ るエ コフ ァン ドが 日本で初 めて発売 されてか ら

1 0

年以上が経 った。欧米で は 社会責任投 資の市場が大 き く、 フィランソロピーや メセナ

、CSR

まで積極 的 に活動 してい る企業への投 資が さかんに行 なわれてい る。最近で は、 国際社 会 において企業の社会的責任

( Co r p o r a t eS o c i a lRe s p o ns i b i l i t y;CSR)

を求め る声 が高 まった ことを背景 に、持続可能 な発展 のためには環境 とい う視点だ けで はな く、経 済 ・社会 ・環境 とい う

3

つの側面 か ら企業 を捉 える重要性 が 認識 され始 め、その情報 を開示す る非財務報告書が注 目されるようになって

きた。

非財務報告書

( CS R

報告書)は、企業 に よって呼 び名や 内容が様 々であ り理 論的に確 立 した ものではないが

、GRI( Gl o ba lRe p o r t i ngI n i t i a t i ve )

等か らガ イ ドライ ンが公表 されていることか ら、今後 も

CS R

報告書 の ような非財務情 報 を中心 とす る報告書 を作成す る企業が増加す る もの と考 え られ る。

本稿 では

、CS R

報告書 の ような非財務情報 の開示状況 について現状 を調査 す ることを 目的 と してい る

(2)

ProjectPaperNo.24

2. 非財務情 報の意義

1)非財務情報の概要

非財務情報 は、環境問題や雇用問題、地域社会 との関係の ように財薪情報 で認識することが難 しい要素についての情報 を認識 し、開示するという役割 が期待 されている。特 に最近では、企業規模が拡大 し、地域社会への影響力 が増 している現在で は、非財務情報 は欠かせ ない重要 な企業情報 の一つ と なって きた といえる

本稿で対象 とする非財務情報 とは、貸借対照表や損益計算書 を中心 とした 財務諸表によって開示 される会計情報以外 の情報で、物量や数量 といった定 量情報 と記述や図表 といった定性情報の両方が含 まれている。財務情報 と非 財務情報の範囲を示す と、図表1の ように表す ことがで きる

図表1 開示情報の範囲

内部 目的 .外部 目的意思決定情報

フィナ ンシャル .リポーテ ィング (財務報告)情報 非財務的情報 一般 目的外部財務報告情報 非会計的財務報告情報

強制開示会計情報 任意開示会計情報

基本財務諸表情報 補足情報

(出典 :照屋行雄 ・大 田博樹

、2 0 0 2

年)

図表1は、 アメ リカ財務会計基準委員会(FinancialAccountingStandard Board;FASB)が提唱 した財務報告書の範囲を表にまとめた もので、従来の 開示情報 よりも拡充 された内容 となっている。本稿で対象 としている非財務 情報は、図表

1

の網掛 けの 「非財務的情報」を中心 としている。 しか しなが ら、

非財務的情報 に限定するものではな く、必要 に応 じて非会計的財務報告情報 が含 まれる場合 もある。図表で も明 らかなように、非財務情報 は財務情報 を 補完する情報 となっているが、現在では企業規模が拡大 し財務情報だけで企 業の現状 を認識することが難 しくなっているため、今後 はさらに非財務情報 の果たす役割が大 きくなってい くもの と思われる。

(3)

非財叛 情報の開示とその評価

このような非財務情報の価値 は、財務情報では認識す ることが難 しい環境 や人権、地域社会 との関係 な ど企業や利害関係者 に重大 な影響 を及ぼす可能 性のある社会的な情報 を認識 し、開示す ることが出来る点にある。た とえば、

環境問題 に関 しては、環境報告書 を利用 しで情報開示することが可能である。

環境報告書に記載する項 目に関 しては、 日本企業の多 くは環境省が公表 して いる 「環境報告書ガイ ドライン」に準拠 した報告書 を作成 している。 このガ イ ドラインでは、環境報告書 に記載すべ きと考 えられる項 目として、①基本 的項 目、②事業活動 における環境配慮の方針 ・目標 ・実績等の総括、③環境 マネジメン トに関する状況、④事業活動に伴 う環境負荷及びその低減に向け た取組の状況、⑤社会的取組の状況の

5

項 目があげ られている。本 ガイ ドラ インに沿って環境報告書 を作成することで、経営者の環境対策への姿勢か ら 具体的な取組の成果 まで、環境情報 を網羅的に開示することが可能 となる。

環境省 は本 ガイ ドラインの中で、環境報告書の作成には次のような機能が あるとしている1

①事業者の社会 に対する説明責任 に基づ く情報開示機能 (勤利害関係者 に意思決定に有用 な情報 を提供するための横能 (勤事業者の社会 との誓約 と評価 による環境活動推進機能

④ 自らの環境配慮の取組に関す る方針 ・目標 ・行動計画等の策定 ・見直 し のための機能

(9経営者や従業員の意識付 け、行動促進のための機能

(D〜③の機能は、企業 と利害関係者 との間のコ ミュニケーシ ョンツールと しての役割 を果た している。それに対 して④ と⑤ の機能は、企業内部での管 理や意識改革などの内部機能 としての役割 を果たす ことになる。

また、環境情報 に限定せず に企業 を経済 ・社会 ・環境の

3

つの側面か ら捉 える

CS R

報告書のガイ ドライ ンを公表 している

GRI

も、非財務情報の重要性 とその潜在的効果について次のように指摘 している。

・高度に情報化 された社会 においては、過去並 びに将来のパ フォーマ ンス を測定 し報告することは、企業のマネジメン トにとって重要 なツールとなる。

1環境省編 r環境報告書ガイドライン」2003年、所収pふ8

(4)

PrqiectPaperNo.24

・CSR情報 を開示す ることで、企業 は多種多様 な利害関係者 と継続的な対 話 を行なうことが可能 とな り、 また単 に利害関係者か らの情報請求に応 じて いるだけの情報開示 よりも優れている。

・持続可能性 に関する今後の取組み計画などについてのオープンな対話は、

利害関係者 との信頼関係 を築 く手助けとなる。

・報告書の作成作業 は、 これ まで分離 ・独立 して きた研究開発やマーケテイ ングなどの経営戦略に関連性 を持たせ、 これまで企業内ではなかった ような 話 し合いが生 まれる。

・報告書の作成作業 によって、地域社会や企業 イメージ等の問題箇所 を事 前に察知することが可能 となるため、経営層は企業 に損害 をもた らす危険性 のある動 き ・情勢が取 り返 しのつかない事態 になる前に、精査することが出 来る。

・報告書の作成は、経営層が 自然 ・人 ・社会的資本への組織の貢献度 を評 価する能力 を強化す る。

・CSR情報 を開示す ることで、上場企業の株価の変動性や不確実性 を軽減 し、 また同時に資本 コス トを削減 させ る可能性がある

以上のように、非財務情報の開示 によって、多種多様 な利害関係者に有用 な情報 を開示するだけではな く、企業内部の経営意思決定者にとって も有用 な情報 になるとい うことが分かる。 このように、非財務情報 には様 々な効果 と役割が期待 されてお り、今後はさらに質 ・量 ともに拡充 してい くもの と考 えられる

2 )

非財務情報の範囲

非財務情報の中で も、事業の概況や従業員の状況 などの一般的な情報 は、

以前か ら有価証券報告書等で開示 されて きた。 しか し、環境問題の深刻化等 の企業環境の変化 などの非財務情報が企業経営 に与 える影響が大 きくなるに つれて、非財務情報の重要性が増 して きている。そのため、最近では企業の 社会的責任 を総合的に捉 えるCSR報告書が注 目されているのである0

この よ うな非 財 務 情 報 の発 展 過 程 に 関 して、 国 連 環 境 計 画(United NationsEnvironmentalProgramme:UNEP)とSustainAbility社 は、「持続 可能な発展のための報告‑の進化」 として、図表

2

の ような図を示 している。

(5)

非財粍ff報の開示とその評価

(この図表は、環境情報が中心 となっている。)

図表

2

持続可能な発展のための報告への進化

ステ イ クホル ダー の情 報 ニー ズ ‑ の適 合

第 1段階 年 次 報 告 書 に お け る簡 単 な 報告o体裁のよ いグ リー ン誌、

ニ ュー ズ レク

2段階 一 度 き りの報 告oしば しば最 初 の公 式 の方 針 声 明 に リン ク している○

3段 階 環 境 マ ネ ジ メ ン トシ ステ ム と リン ク した 年次報告o数字 よ りも文 章 に よっているo

4段階 完 全 なパ フ オ

‑ マ ンス デ ー タ の 提 供 (NPR/TRⅠ形 式)○ しば しば 独 立 した環 境 報告書○年次報 告 書 にお い て も言及 され るO

5段階 環境 .経済 .杜 会 的 なパ フ オ

‑ マ ンス に リ ン ク した持 続 可 能 な発 展 報 告○持続可能性 に指 標 に裏 付

持続 可能 な発 展 の た め の報 告 ‑ 向 けて の進 展

(出典 :カナダ勅許会計士協会編 F環境パ フォーマ ンス報告』 中央経済社、

1 9 9 7

年、所収

p . 3 1 )

図表

2

によると、 まず第

1

段階では、通常の年次報告書 における簡単な情報 開示か ら始 まるとい う。最終段 階の第

5

段 階では、環境情報だけでな く経済 や社会情報 まで求め られてお り

、CS R

報告書 とほぼ同 じ内容 となっている。

現在、企業が情報開示する際には独立 した報告書 を作成 しているとい うこと か ら、現在の非財務情報の レベルは第4段階にあ り、 さらに第5段階に向かっ てい くことになる。

このように、非財務情報が企業の概要 といった一般的な情報か ら環場情報 などの一部の社会情報に拡大 し、 さらにその範囲が経済や社会 まで拡大する ことで、企業の社会的影響 を総合的に認識することが可能 となる。

3 非財務情 報の開示状況

現在、非財務情報 として様 々な報告書が作成 されている。 日本では、環境 問題‑の関心の高 さを背景に、環境情報 を中心 とした 「環境報告書」 を作成

(6)

PrqiectPaperNo.24

している企業が多かったが

、GRI

などが提唱す る経済 ・社会 ・環境 といった 総合的な非財務情報 を開示す る

「 CS R

報告書」や 「持続可能性報告書」など といった名称の報告書が増加 している。本項では

、KPMG

による 「企業責任 報告 に関す る国際調査」

2

を基 に非財務報告書の国際間比較 を行 ない、他方、

環境省 による 「環境 にや さしい企業行動調査」では国内企業の開示状況につ いて考察する。なお

、KPMG

の調査報告は

2 0 0 5

年 となっているため、情報 は 古 くなるが 日本国内の実態調査 も

2 0 0 5

年 に合 わせてある また、本稿 では、

これ らの名称の違 う非財務報告書 を

「 CS R

報告書」 として同等の物 として取 り扱 う。

まず

、CS R

報告書の世界的な動向を見てみると、グローバルフォーチュン と先進

1 6

カ国の2グループ平均で過去3年 間に開示企業が

8 . 5

ポイ ン ト増加 し ている。報告書の種類 については

、 2 0 0 2

年時点では「環境及び安全衛生報告書」

として情報開示 していたが

、 2 0 0 5

年 には

2

グループ平均で

5 8%

が「持続可能性」

で報告書 を作成 している。

これ らの国別の比較 について先進

1 6

カ国をみてみ る と、 日本企業の

8 0%

CS R

報告書 を発行 してお り、続いて英国が

7 1 %

、 カナダが

4 1 %

フランスが

4 0 %

となっている。一部の国で法制度の変更があ り、順位が入れ替わってい るが

、2 0 0 2

年度の調査で も日本が1位であることに変わ りはなかった。一方、

フォーチュー ンリス トでは、米国企業が

1 0 0

社 とな り、 日本が

4 0

社、 フラン スが

2 4

社 とな り、米国が際立 って多い ことが分かる。ただ し、 こち らの調査 に関 しては、 フォーチュー ンリス トに入 る企業数によって国別順位が変わる ことに注意が必要 となる

次に業種別の違いについては、前回の

2 0 0 2

年度の調査 と比較 して全ての業 種で報告書の作成企業が増加 している。先進

1 6

カ国を対象 とした調査で、半 数以上の企業が報告書 を作成 している業種 は、ユーティリティと鉱業、化学 ・ 合成化学、石油 ・ガス、林業 ・紙パルプとなっていた。業種 内の浸透率が低

2本 調査 はKPMGがグローバル ・フォーチューン500杜 のうち上 位250社 につ いてアムステルダム 大 学が調 査 を行 なったものと日本 やアメリカ、ドイツなど先 進16カ国における上位100杜 を対象 に KPMGが調査を行なったものである。調査対象となる社会責任 報告書 は2004年9月から2005年1月 の間に収集されたもので、宣伝用の資料 やWEBサイトは調査対象外 となっている。 回収率 は全体 98%。

(7)

非財務什報の開示 とその評価

い ものの増加率が高かったのが金融業で1700/.となっていた。一方、 フォー チュー ンリス トで もユーティリティや 自動車、石油 ・ガスなどの業種の関心 度が高 く、 また金融業の増加率 も138% と高 く先 ほ どの調査 と同 じ傾向が見

られた。

一方、 日本企業の状況 をみてみると、 まず、環境情報 を 「一般 に公開 して いる」、 または 「一部に公開 している」 日本企業は増加 している(図表3)3

図表

3

環境情報の開示企業数の推移

1800 1600 1400 1200 10800640020000000

lDIl

5

1

̲

A

◆ 1和一「ーr

(出典 :環境省編、2004年、p.79)

図表か らも明 らかなように、環境情報 を開示 している企業 は年々増加 して お り、企業の環境情報‑の関心の高 さが伺 える。環境情報の開示 目的 として は、「情報提供等の社会的な説明責任 を果たすために公 開 している」 と回答 した企業が最 も多 く72.4%となっている。次いで、「自社 における環境 に関す る取組みのPRのため」が67.3%、「利害関係者 との コミュニケーシ ョンのため

が65.2%となっている。情報内容に関 しては、「環境 に関する経営方針」が最 も多 く87.5%となっている 次いで、「環境 に関す る具体 的な取組みの状況」

の64.3%、「環境 に関する目標」の62.8%となっている4。以上のことか ら、企 業 は具体的な環境情報 を開示 し社会的責任 を果たす ことで、利害関係者 との

3ここでのデータは、環境省が毎年実施している 「環境にやさしい企業行動調査」 (平成13年度 版、14年度版、15年度版)を基に作成している。

4データは全て平成15年度のものである。

(8)

P r q j e c t Pa p e rNo . 2 4

関係 を良好 に保 とうとしてい ることが分か る。 ちなみ に、環境情報 を開示 し てい る企業 の中で、環境報告書 を 「作成 してい る」、 また は 「来年 は作成す る予定」 と回答 した企業 は、全体 の35.1%となっている。

環境情報 を開示 している企業の業種 別割合 は、図表

4

の ようになっている。

図表4 環境情報 開示企業 の業種 別割合

建設業 製造業

電気ガス供給 業小売業 .運輸 .金融 .サービス業不動産業通信 業卸売業飲食店保険業その他 l l 0

l

I I

l

l

l

t

I

l

i

l

I

l

I l

l

I

1l

l

(出典 :環境省編

、2 0 0 4

年、所収

p. 8 0 )

図表か らも明 らか なように、環境情報 を開示 してい る企業 の多 くは、環境 へ の影響が大 きい業種 となってい ることが分か る しか し、金融 ・保 険業や サー ビス業 な ど、環境問題‑の影響が少 ない と思 われ る業種 で も環境情報 を 開示 してお り、社会的に環境情報‑ の関心が高 まっている と考 え られ る。

次 に

CS R

に関す る調査5で は、上記 の環境報告書 を作 成 または作 成予 定 と 回答 した企業 の うち、独 立 した

CS R

報 告書 を作 成 してい る企 業 は、 わず か 8.5%6となってい る

。CS R

情報 に関 して最 も割合 が 多か ったのが、現在作成 している環境報告書 に 「現在 は記載 していないが、社会 ・経済的側面 につい

5データは全て平成15年度のものである。

6

このデータは、持続可能性報告書を作成 している企業

( 6 . 6 %)

CS R

報告書を作成 している企業 (1.9%)の割合を足 したものとなっている。

(9)

非財務情報の開示とその評価

ての記載 を検討 している」の40.6%で、次いで 「社会 ・経済的側面 について も可能な範囲で記載 している」の34.2%となっている。上記のことか ら日本 では、 まだ

CS R

報告書 を作成 している企業が少 な く、環境報告書の一部の情 報 として扱 っていることが分かる。

そ して

、CS R

を意識 した企業経営 を行 なっているか、 とい う問いに対 し て、平成15年度は全体の48.2%が 「行なっている」 と回答 している。次いで、

「今後行 なう予定である」が27.6%、「行 なっていない」が19%となっている。

CS R

を意識 した企業経営 を行 なう理由として一番多 くなっているのが、「様々 な社会的 リスクを回避、軽減するため」の59.2%となっている。次いで、「不 祥事発生防止の リスクマネジメン トのため」が56.6%、「多様 なステイクホル ダー との信頼性確保のため」が49.7%、「企業ブラン ドが確立で きるか ら」が 36.8%となっている。

このような

CS R

を意識 した企業経営 をしている企業 としていない企業の業 種別割合は、図表

5

のようになっている

図表

5 CS R

経営の業種別割合

建設 業 製 造 業 電気ガス供給業 運輸 ・通信業 卸売業 小売業 ・飲食店 金融 ・保険業 不動産業 サービス業 その他

一■■■■■

■ ■ ■ ■‑

コll■■■■■■■■

■‑

1‑ 璽璽璽璽llllllllllll■

0 20 40 60 80

ロ行なっていない □行なっている

(環境省編、2004年、所収p.120)

(10)

P r o j e c t Pa p e rNo , 2 4

業種別割合では、電気 ・ガス供給業が最 も多 く 「今後行 う予定」 を含める と100%とな り、「行 っていない」企業 はない ことが分かった。 また、その他 の業種 に関 しては、環境情報の開示状況 と比較すると業種別の偏 りは少 な く なっている。 このことか らも

CS R

とい う概念が、業種 に関係 な く企業経営に 浸透 し始めていることが分かる。

以上のことか ら、地域社会‑の影響の大 きさに関係 な く、全ての業種での

CS R

への関心 は高 まっていた ことが明 らか となった。 また、情報開示 に関 し て も、 日本企業は世界的に進んでいる事が分かった。

4. 非財務情 報の評価 と課題

前項で考察 した ように、非財務情報の開示傾向が強 まっている事が明 らか となったが、非財務情報 を開示することで、企業価値に どの程度の影響 を与 えるのか、 とい う点が明確 にされていない とい う問題がある

。CS R

報告書な どのガイ ドラインでは、非財務情報の開示 により 「利害関係者 とのコミュニ ケーションが円滑 になる」 ことや 「企業内部での意識改革」などの効果があ るとしているが、デー タで証明することは錐 しい。 しか し、 日本証券アナ リ ス ト協会が行 なった調査7では、「環境やガバナ ンスに適切 に対応 している企 業の利益率は高い」 ことが明 らか となってお り、情報開示 に敏感に反応する 投資家がいて もおか しくはない と考え られる。

この ような非財務情報 を実際に利用 しているのが、社会責任投資

( S R

I)で ある。 日本国内での

S RI

には、厚生年金基金連合会の 「コーポ レー ト・ガバ

7本調査は、日本証券アナリスト協会の検 定会員のうちメールアドレス登録済みの会員に対してオン ライン形式で行なわれた。調査期 間は、2009年 10月28日から2009年 119日までで有効 回答数は 17086名中599名で回答率は3.5%。この調査に関心のある者が回答 した可能性があり、情報の扱 いには注意が必要であるとの注記がある。

(11)

非財秩情報の開示とその評価

ナ ンスフアン ド」

8

や住信 アセ ッ トマネジメ ン トの 「グ ッ ド・カンパニー」

9

な どがある。それぞれのファン ドは、企業の社会的責任 を評価基準 としている が、た とえば厚生年金基金連合会の銘柄選定の際の評価基準は、下記のよう

になっている。

(∋株主価値重視の経営 (参情報開示 ・説明責任 (参取締役会

④役員報酬 システム

(勤コンプライアンスとリスク管理

この評価基準 によって実際に選ばれた上位

3 0

の企業 には、東芝や帝人、 オ ム ロンな ど大手企業が入 ってい る。 この

SRI

では、「情報 開示 ・説 明責任 」 が選定基準の一つに挙げ られているが、上記基準の中で情報開示が どの程度 のウェイ トを占めているのか、あるいはどの程度の情報 を開示 していれば評 価 されるのかは不明である

(卦や(9で選定 されているガバナ ンス項 目について

、2 0 0 4

9

月にアメリカ の格付 け機 関の

GMI( Go ve r na nc eMe t r i c sI nt e r na t i o na

l)が公表 した コーポ

レー ト・ガバナ ンスの格付 け評価10と比較 してみたい。

この格付 け評価 は、世界23カ国の2588社 を対象 に、「取締役 のアカウンタ

8厚生年金基金連合会のコーポレート ガバナンスファンドの詳細 については、http://www.pfa. or.jp/index.htmを参照されたい.

9グッド・カンパニーの評価基準は、次のようになっている。ここでもGMIの評価 基準と同じように、

企業の社会的費任と情報開示があげられている。詳しくは、日本総合研究所編 rわが国企業の CSR経営の動 向2004」2005年を参照されたい。

調査票 環境編 ̀調査票 社会編

1.環境に関する経営方針 1.法令の遵守 2.環境マネジメントシステム 2.説明者任と情報 開示

3.環境会計 3.顧客に対する誠実さ

4.環境コミュニケーション 4.人材の育成 .支援

5.環境パフォーマンス 5.グローバル市場‑の的確な対応 6.環境負荷削減の取組み 6.社会活動‑の積極 関与 7.環境リスク管理と環境ビジネス

(出典 :日本総合研 究所編 rわが国企業のCSR経営の動向2004j2005年、所収p.1) 10GMIの詳細に関しては、httpノ/www.gmiratings.com/を参照されたい。

(12)

P r o j e c t P a p e r No . 2 4

ビリティ」、「財務情報の開示 と内部統制機能」、「株主権利」、「役員報酬」、「企 業の支配権の構成」、「企業行動 と社会的責任」の6つの分析視点で行なわれ たものである。

図表

6

ガバナ ンス格付け評価順位

順位 国名 企莱数 平均点 順位 国名 企莱数 平均点

1 アメ リカ 1154 7.23 13 イ タ リア 39 5.41 2 カナ ダ 99 7,19 14 シンガポール 48 5.32 3 イギ リス 353 7.12 15 ノル ウェー 13 5.23 4 オース トラ リア 93 6.73 16 オース トリア 13 5.04 5 オ ランダ 30 6.58 17 フランス 57 4.94

6 フィンラン ド 20 6.05 18 香港 44 4.63

7 アイル ラン ド 14 6.04 19 デ ンマー ク 20 4.60

8 スイス 32 5.66 20 ポル トガル 10 4.55

9 ニュー ジー ラン ド 13 5.62 21 ベルギー 22 4.52

10 ドイツ 59 5.58 22 日本 356 3.57

ll スペイ ン 39 5.46 23 ギ リシャ 23 2.93

( 出 典 :

ht t p: / / www. gmi r a t i ng s . c o m/( 2 gp2 2 q 5 5 u 1 5 dhq 4 5 p j c hs n 4 5 )/

Re l e a s e 2 0 0 4 0 9 0 3 . ht m

l)

今回の調査で

1

0点満点を獲得 したのは、アメリカ企業

2 0

社 とカナダ企業

5

社、オース トラリア企業1社の合計

2 6

の企業であった

。 GMI

の報告書によると、

1

0点満点を獲得 した

2 6

社全体の平均株価 は

、S&P5 0 0

の平均株価指数を過去

(13)

非財耗什報の開示とその評価

1

年間で

4. 9 %、3

年間で

8 . 3 %、5

年間で

1 0 %

も上回っていたとしているIl。 こ のことか ら

GMI

は、 コーポ レー ト・ガバナ ンス と株価 には密接 な関係がある と指摘 している。

一方、 日本企業 は

、2 3

か国中

2 2

位 となっている

。1 0

点満点を獲得 した 日本 企業はな く、逆に最低の評価 を受けた

2 5

の企業の うち、日本企業が

1 3

社 も入 っ ていた。 日本企業の評価が低 くなっている理由は、社外取締役 の比率が低い 点 とCSRに関する方向性が不明確 な点をあげている。

GMI

のコーポ レー ト ガバナ ンスの格付 け評価では、日本 を代表す るソニー は上位 に入 っていない。 また、積極的な社会貢献 を行ない業績 も好調 な トヨ タ自動車 も上位 には入 って きていない とい う結果だった。 ガバナ ンス と株価 には密接 な関係があるとする

GMI

の調査報告がある。 しか し、 ガバナ ンスの 評価の低い 日本企業の調査当時の株価 は必ず しも低い ものではな く、 ガバナ

ll2004年8月31日時点10点満 点を獲 得 した企業 は、次のとおりである。詳 しくは、http:// www.gmiratings.com/(2gp22q55u15dhq45pjchsn45)/Release20040903.htmlを参 照 され た

い。

Con1渦TV Ticker CoLIft廿y 3MComE)any MMM USA

Aコriumlnc. AGU Celnada AJliantTechsvstemslnc. ATK USA BCEl∩C. 日CE Ca∩8d8 Coca‑ColeICo. KO USA Colqate‑PalmoiveCorTlPany CL USA CooperlndustresLtd. CBE USA E8Stm8nKodelkCompany EK USA Gener8lMotorsCorp. GM USA GilletteCompelnV ら USA JohnsonControslnc. JCl USA LockheedMelrti∩Corpo柑tion LMT USA Ma¶ellnc. MAT USA Nexenlnc. NXY C8neld8 Oo=ide「止8日⊃etrOleumCorp. 0XY USA PepsiCo.lnc. PEP USA PG&ECorpordion PCG USA PraX8lirlnc. PX USA PubljcSerVICeE∩terpriseGrt)uplnc. PEG USA Suno⊃rEnerqvnC. SU Celn8d8 TelrqetCorpo帽tion TGT USA TheDowChemic8lCompany DOVV USA TransC8nad8Corporation TRP Canadel UnitedTechnoocljesCorpor8tion UTX USA VVestpelCBelnknqCorp. BC Auslrali8

(14)

P r o j e c t P a p e r No . 2 4

ンスの適正性 と株価の関係 も明確 とは言えない。

以上のことか ら、環境や社会問題に積極的に対応 している企業 は利害関係 者の好感度が高 くなるが、非財務情報の評価その ものに対 しては、暖昧 さが 残 るという事が分かった。 しか し、 日本証券 アナ リス ト協会が行なった

ES G

( E:

環境

、S:

社会

、G:

ガバナ ンス)に関する調査 によると

、ES G

が収益 あ るいはリスクにどの程度影響 を与 えるのか とい う問いに対 して、「環境 はよ り長期的な収益要因」で 「ガバナ ンスはより短期的なリスク要因」、そ して 「社 会はその中間に位置す る」 とい う結果 となった。 さらに詳細 な調査結果によ ると、最 も重要祝 されるのは 「顧客への対応」で収益の視点か らだ と 「環境 配慮型製品 ・サー ビスの開発」 と 「気候変動への対応」 とな り、 リスクの視 点では 「海外サプライヤーの労働環境への取 り組み」 と 「安全衛生に関する 取 り組み」についての重要度が高い とい う結果が出ている。そ して、最後 に 非財務情報 を企業評価 に利用す るためには、 まず企業が情報開示 を行なう必 要があるとしている。現時点では、非財務情報の開示 と企業価値 との関連性 は明 らか となっていないが、少な くとも情報開示 は一部の利害関係者か ら評 価 されていることを踏 まえると、今後 も情報開示 を行 なう必要があると考 え

られる。

5. おわりに

本稿では、 まず非財務情報の意義について考察 し、非財務情報果たす役割 について明 らかに した。次に非財務情報の開示状況について

、KPMG

と環境 省の調査結果 を基 に分析 した。 日本は世界的にみて も非財務情報の開示 には 積極的で、 日本においては、環境情報‑の関心が高 く、環境会計の実施や環 境報告書の作成 をしている企業が多かった。特 に、環境への影響の大 きい電 気 ・ガス供給業や製造業での割合が高い という特徴があった。 しか し、非財 務情報の開示が企業価値 にどの ような影響 を与 えるのかが明確 にされていな いこともあ り、情報の利用 については限定的 となっていることを指摘 した。

しか し、企業評価 を行 なうアナ リス トを対象 とした調査では、①長期的に は環境問題は収益要因になる、(参短期的にはガバナ ンスの問題 はリスク要因 になる、 とい う結果が出ていることか らも、今後は非財務情報が果たす役割

(15)

非財務情報の開示とその評価

が大 き くなるこ とが予想 され る。

以上 の ように、非財務情報 の開示 には課題 も残 されて い るが、財務情報 で は認識 す る ことが難 しい様 々な情報 を多様化す る利 害 関係者 に提供 す る役割 が期待 されてい る。 したが って、今後 も企業規模 拡大 や企業環境 の変化 な ど に よ り

CSR

報告書 の ような非財務情報が果 たす役 割 は増大 してい くもの と思 われ る。

<参考文献 >

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、 1 9 9 3

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、2 0 0 0

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・谷本寛 治編著

r CSR

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,

Ev al uat i o n,a ndPr o s pe c t s ‑ ,Pr e a g e r , 1 9 7 9 .

(青柳 清 訳 Fソ シ ア ルデ ィス クロー ジャーの展 開』 中央経 済社

、1 9 8 0

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・Ma r t yFr e e ma n,Bi k k iJ a g g i ,Sus t ai nab i l i t y,Env i r o nme nt alPe r j T o r ma nc e andDi s cl os ur e s ( Advanc e si nEnvi ronment alAccount i ng

&

Mana ge me nt ) , Eme r a l dPu b l i s h i ngGr o up, 2 0 1 0

参照

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